説明

アルミニウムドープされた酸化亜鉛で基板をコーティングする方法

本発明は、アルミニウムドープされた酸化亜鉛で基板をコーティングする方法であって、固体ターゲットのアトマイゼーションによって、酸化亜鉛、またはドープされた、特にアルミニウムドープされた酸化亜鉛を含有する5nm〜400nm厚の核形成層を基板表面上に形成するステップと、アルミニウムドープされた酸化亜鉛を含有し、核形成層上に準エピタキシャルで継続成長するトップ層を形成するステップと、トップ層を湿式化学エッチングするステップとを含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムドープされた酸化亜鉛で基板をコーティングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術から、いわゆるpin「スーパーストレート型」構造を有してなるシリコン薄層太陽電池は、透明導電性酸化物層(略してTCO層、TCO=transparent conductive oxide、透明導電性酸化物)を必要とすることが知られている。これらのTCO層は、アモルファスシリコン(a−Si:H)からなる太陽電池については、可視スペクトル範囲(400〜800nm)において、微結晶粒シリコン(μc−Si:H)からなる太陽電池については、1100nmまでにおいて高い透明性とともに低いシート抵抗を有することが必要である。さらに、光を散乱によって効果的に太陽電池に結びつけ、それによって、シリコン層へのより強い吸収を達成するためには、特に表面粗さの観点から、適切な表面構造および側方構造サイズが必要である。
【0003】
TCO層を形成するために、特にはいわゆるアトマイゼーション法(別名でスパッタリング法とも称される)を使用することができる。アトマイゼーションでは、エネルギーリッチな希ガスイオンとの衝突によって、固体ターゲットから原子が溶出して、気相に移行する。原子が溶出する固体ターゲット付近に、基板が用意されており、その上に原子が濃縮して、基板の表面上に層が形成され得る。
【0004】
シリコン薄層太陽電池で使用するために、アルミニウムドープされた酸化亜鉛(ZnO:AI層)からなる層は特に適している。スパッタリング法で形成されるZnO:Al層は通常、比較的平滑である。すなわち、その粗さは、数ナノメートルであるにすぎない。湿式化学エッチングステップによって、これらの層を粗くして、クレーター様の構造を比較的広いスペクトルで構造サイズに生じさせることができる(非特許文献1〜3および特許文献1参照)。これによって、平均粗さ(英語:root mean square roughness(二乗平均粗さ)、後記ではRMS粗さ)を約200nmまで高めることができる。そのような表面テクスチャー化層は、非常に良好な光散乱特性を有し、特に、セラミックZnO固体ターゲットの高周波マグネトロンスパッタリング法(略して:HFマグネトロンスパッタリング法)によって、形成することができる(非特許文献4および5参照)。非特許文献6には、水溶液から形成され、高周波マグネトロンスパッタリングによって形成された1.2μm厚のZnO核形成層上に施与されているZnO層を有する種々の基板が開示されている。その際、いわゆる「ナノロッド」の形成が明らかに重要である。ZnO層はこの文献では、ナノロッドの配向および画一性を促進するために使用される。
【0005】
原則的に、基板を高周波マグネトロンスパッタリングによって、アルミニウムドープされた酸化亜鉛で被覆して、適切な層特性を得ることが有利である。ただし、高周波マグネトロンスパッタリングは、DCマグネトロンスパッタリングと比較して比較的遅いアトマイゼーションプロセスであるので、基板上でのアルミニウムドープされた酸化亜鉛層の形成は、非常に長時間かかり得る。
【0006】
さらに、アトマイゼーションの間のプロセス条件が、ZnO層で生じる光学的および電気的物質特性を決定的に定めることが判明している。湿式化学エッチングによって形成され得る表面構造は、この場合に特に、プロセスパラメーター、温度および析出圧力によって、かつ選択された基板材料によって影響を受ける。さらなる重要なパラメーターは、アルミニウムでの固体ターゲットのドープである。したがって、ドープ濃度および温度次第で、HFマグネトロンスパッタリング法によって形成され、湿式化学エッチングステップによって最適化された光透過構造を有する層に最適な「コーティングウィンドウ」を見つけ出すことが可能である(非特許文献7および8参照)。光沢面の最適な形態はこの場合、太陽電池の効率にかなりの影響を有する。このことに関連して、側方および垂直寸法に関して粗さの最適化が重要である。この場合、側方寸法が、散乱する光の波長の長さ程度であり、したがって微結晶粒シリコン(μc−Si:H)からなる太陽電池またはいわゆるタンデム電池(a−Si:H/μc−Si:H)ではμm範囲であり、約100nm〜約200nmの平均粗さが達成されると有利であることが判明している。
【0007】
ZnO:Al層系のテクスチャーエッチングは、結晶ZnO層のエッチング速度のアニソトロピーを利用して、従来の平滑に析出された層を円柱状成長(側方寸法約50〜100nm)で粗い界面に移行させるが、その際、その側方寸法は、最適化されたプロセス条件でμm範囲である。テクスチャーエッチングでは、通常は困難な大きな微結晶の形成を回避することがとりわけ重要である。その方法は、ZnO:Al層を希酸(たとえば0.5%HCl)中でエッチングすることに基づく。エッチングはその場合、異方性に行われるので、O末端でc軸配向で析出されている微結晶が、大きさの程度において、対応するZn末端微結晶よりも早くエッチングされる。それに対して直行ではさらに、40倍のエッチング速度の上昇も観察され得る(非特許文献9参照)。
【0008】
原則的に、セラミック固体ターゲットのDCマグネトロンアトマイゼーション方法を用いても、さらに金属固体ターゲットの反応性中間周波数アトマイゼーション(MFアトマイゼーション)によっても、最適化された高周波アトマイゼーション条件の場合と比肩し得るエッチングモルホロジーを見出し得る(非特許文献10および11参照)。ただし、これらのエッチングモルホロジーは非常に僅かな再現性しかなく、したがって比較的大きな面で反応させることは、多大な困難を伴うことが判明している。
【0009】
ZnO:Alを反応性中間周波数(MF)マグネトロンスパッタリングする場合、所望のエッチングモルホロジーは、プロセス制御によって調節することができる(非特許文献12参照)。過剰の亜鉛が高い蒸気圧によって表面から脱離する場合に、高い基板温度で金属モードで運転制御することによって、ZnO微結晶の所望のZn末端を達成することができることは公知である。このことに関連して、高い基板温度が一般に有利であることが判明している。高い酸素分圧では、粗くギザギザの構造が小さな側方寸法とともに生じる。エッチング形状は、深い開口部を示す。この場合、O末端微結晶は速いエッチング速度でエッチングされ、これに対して、周囲の粒子の側面を介してのエッチング攻撃は明らかに生じないと推定することができる。このことを説明するために考え得る手がかりは、熱力学的に有利な結晶粒界でのアルミニウムの偏析であり、このことがこの場合、エッチング抵抗性のAl蓄積をもたらす。低い酸素分圧では、平坦な構造が生じ、これは、均一なZn末端を示す。さらに、完全エッチング(Durchaetzen)の欠陥を抑えるために、複数回のオーバーフロー(Ueberlauf)が陰極の前で必要であることが判明している
層の成長および終端は、種々のエネルギー供給によって(特に基板温度、中性粒子エネルギー、イオンエネルギーによって)決定される。アルミニウムドープされた酸化亜鉛を製造する際のイオン電流測定によって、プラズマ励起に応じて種々のイオンエネルギーの寄与が示されている。太陽電池に適したエッチング構造を達成するためにはしたがって、主にZn末端表面が、わずかなO末端微結晶とともに存在するように、層成長に影響を及ぼすことが重要である。
【0010】
特許文献2は、a軸またはc軸配向を有する単結晶サファイア(Al)からなる基板およびエピタキシャル結晶構造を有するZnO層からなる酸化亜鉛薄膜を開示している。これらの酸化亜鉛薄膜は、紫外線スペクトル範囲での特に強力で迅速な光放出(発光)を室温で可能にする。これらの酸化亜鉛薄膜は、レーザーをベースとして、レーザープラズマ析出によって形成される。
【0011】
非特許文献13では、インジウム酸化亜鉛基板(ITO基板)上のZnOからなる200nm厚の核形成層が使用されており、これは、水溶液からスピンコーティングによって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】ドイツ国特許第10 2004 017 680 B4号明細書
【特許文献2】ドイツ国特許公開第10 2004 048 378 A1号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】J. Mueller、G. Schoepe、O. Kluth、B. Rech、V. Sittinger、B. Szyszka、R. Geyer、P. Lechner、H. Schade、M. Ruske、G. Dittmar、H.-P. Bochem著、Thin Solid Films 442(2003年)、158頁
【非特許文献2】J. Mueller、B. Rech、J. Springer、M. Vanecek著、”TCO and light trapping in Silicon thin film solar cells”、Solar Energy 77(2004年)、917〜930頁
【非特許文献3】J. Mueller、G. Schoepe、H. Siekmann、B. Rech、T. Rebmann、W. Appenzeller、B. Sehrbrock著、”Verfahren zur Behandlung von Substraten mit vorstrukturierter Zinkoxidschicht”
【非特許文献4】B. Rech、O. Kluth、T. Repmann、T. Roschek、J. Springer、J. Mueller、F. Finger、H. StiebigおよびH. Wagner著、Sol. Energy Mater. Sol. Cells 74、439頁(2002年)
【非特許文献5】O. Kluth、G. Schoepe、J. Huepkes、C. Agashe、J. Mueller、B. Rech著、Thin Solid Films 442(2003年)、80〜85頁
【非特許文献6】M. Breedonら著、”ZnO Nanostructured Arrays Grown from Aqueous Solutions on Different Substrates”(“Conference Proceedings, International Conference on Nanoscience and Nanotechnology”中)、ICONN 2008、9〜12頁
【非特許文献7】M. Berginski、B. Rech、J. Huepkes、H. Stiebig、M. Wuttig著、”Design of ZnO:Al films with optimized surface texture for Silicon thin-film solar cells”、SPIE 6197(2006)、61970Y 1〜10頁
【非特許文献8】M. Berginski、J. Huepkes、M. Schulte、G. Schoepe、H. Stiebig、B. Rech著、”The effect of front ZnO:Al surface texture and optical transparency on efficient light trapping in Silicon thin-film solar cells”、Journal of Applied Physics 101、74903頁(2007年)
【非特許文献9】F.S. Hickernell著、”The microstructural properties of sputtered zinc oxide SAW transducers.”、Review Phys. Appl. 20(1985年)、319〜324頁
【非特許文献10】B. Rech、T. Repmann、J. Huepkes、M. Berginski、H. Stiebig、W. Beyer、V. Sittinger、F. Ruske著、”Recent progress in amorphous and microcrystalline Silicon based solar cell technology”、Proceedings of 20th European Photovoltaic Solar Energy Conference(Barcelona)(2005年)、1481〜1486頁
【非特許文献11】J. Huepkes、B. Rech、O. Kluth、T. Repmann、B. Zwaygardt、J. Mueller、R. Drese、M. Wuttig著、”Surface textured MF-sputtered ZnO films for microcrystalline silicon-based thin-film solar cells”、Solar Energy Materials and Solar Cells 90(2006年)、3054〜3060頁
【非特許文献12】Szyszka, B著、”Magnetron sputtering of ZnO films”、Transparent Conductive Zinc Oxide: Basics and Applications in: Thin Film Solar Cells.、Ellmer, K.; Rech, B.; Klein, A.編、Springer Series in Materials Science, 2007年、187〜229頁
【非特許文献13】J.T. Chenら著、”The effect of Al doping on the morphology and optical property of ZnO nanostructures prepared by hydrothermal process”(Applied Surface Science 255(2009年)、3959〜3964頁)
【発明の概要】
【0014】
本発明の課題は、改良された層特性、高いプロセス安全性および速い析出速度でZnO:Al層をその方法によって形成することができる、アルミニウムドープされた酸化亜鉛で基板をコーティングする方法を提供することである。
【0015】
この課題は、請求項1の特徴を有する方法によって解決される。従属請求項は、発明の有利なさらなる実施形態に関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
アルミニウムドープされた酸化亜鉛で基板をコーティングするための本発明に従う方法は、
固体ターゲットのアトマイゼーションによって、酸化亜鉛、またはドープされた、特にアルミニウムドープされた酸化亜鉛を含有する5nm〜400nm厚の核形成層を基板表面上に形成するステップと、
アルミニウムドープされた酸化亜鉛を含有し、核形成層上に準エピタキシャルで継続成長する(weiterwachsenden)トップ層を形成するステップと、
トップ層を湿式化学エッチングするステップとを含む。
【0017】
本発明による方法によって基板上に形成されたZnO:Al層は有利には、光透過構造を有し、その結果、特にシリコン薄層太陽電池のためのフロント接点として適していることが判明している。本発明では、酸化亜鉛、またはドープされた、特にアルミニウムドープされた酸化亜鉛を含有する核形成層を、固体ターゲットのアトマイゼーションによって形成する。ドープされた酸化亜鉛は原則として、任意のドーパントを有してよい。アルミニウムの他に、この場合は特にガリウム、インジウムまたはホウ素を用いたドープも挙げることができる。この核形成層は、同様にアルミニウムドープされた酸化亜鉛を含有するトップ層が準エピタキシャルで核形成層の上に継続成長するために最適化された前提条件をもたらす。基板材料として、特にガラス、プラスチック、金属またはセラミックを使用することができる。トップ層を構造化するトップ層の湿式化学エッチングは好ましくは、希塩酸を用いて行う。核形成層は有利には、<300nmの厚さを有してよい。核形成層は第一に、ZnO:Alを含有する後で成長する層の電気的特性およびそのエッチング特性にプラスに影響を及ぼすために役立つ。核形成層は特に、たとえばガラスなどのアモルファス基板上でも使用することができる。さらに、多結晶質層であって、単結晶質層ではないので、この場合、エピタキシーではなく、準エピタキシーのみが存在する。
【0018】
特に有利な一実施形態では、核形成層を5nm〜30nmの厚さで基板上に形成することを提案する。意外にも、比較的薄い核形成層(特に約5〜約30nm厚の核形成層)でも、核形成層上でのトップ層の準エピタキシャル継続成長を促進するために充分であることが判明している。
【0019】
核形成層上でトップ層の最適化された成長を得るために、特に好ましい一実施形態では、ZnO、ならびにAlおよび/または任意の他のドーパントの含有分を含有するセラミック固体ターゲットを高周波マグネトロンスパッタリングすることによって核形成層が形成され、核形成層が、特に格子構造を保持しているか、または少なくともほぼ保持している(したがって非本質的な変化のみ)ことを提案する。その際、そのような高周波マグネトロンスパッタリングによって形成された核形成層は、有利にはたとえばDCマグネトロンスパッタリングまたは中間周波数マグネトロンスパッタリングによって行われ得る続くZnO:Al層の析出の際に、その主なZn末端を準エピタキシャルでさらに進め得ることが確認され得た。そうして形成されたトップ層は、特には希塩酸を用いて実施され得る湿式化学エッチングステップの後に、改良された光透過入射構造(Lichtleitfallenstruktur)を有する。このことは特に、クレーター幅が主に、近赤外スペクトル範囲で入射する光の波長の範囲(約1μm)にあることによって優れている。さらに、クレーターの深さは、一定程度まで、エッチング期間によって変えることができることが判明している。
【0020】
有利な一実施形態では、核形成層を形成するために、セラミック固体ターゲットが使用され、該セラミック固体ターゲットは、ZnOおよび0重量%超であり1重量%未満であるAlの含有分を有し、高周波マグネトロンアトマイゼーションによって温度T>300℃でアトマイゼーションされてなることを提案する。Alの含有分(0重量%超および1重量%未満)を調節することによって、温度T>300℃で、核形成層を形成するためのセラミック固体ターゲットをアトマイゼーションするための最適化された「コーティングウィンドウ」を得ることができることが確認され得た。
【0021】
別の一実施形態では、核形成層を形成するために、セラミック固体ターゲットが使用され、該セラミック固体ターゲットは、ZnOおよび1〜2重量%の間のAlの含有分を有し、高周波マグネトロンアトマイゼーションによって温度T≦300℃でアトマイゼーションされてなるものを使用することが可能である。温度T≦300℃ではAlの含有分を1〜2重量%の間に調節することによって、セラミック固体ターゲットをアトマイゼーションして核形成層を形成するためのさらなる最適化された「コーティングウィンドウ」を得ることができることが判明している。
【0022】
この場合、基板をアトマイゼーションの間に一定の速度で、原子が溶出する固体ターゲットの側を通り過ぎさせる動的コーティング方法が重要である。基板上での核形成層の成長および核形成層の品質をさらに改良するために、特に有利な一実施形態では、核形成層が基板に施与される析出速度が、20nmm/分未満であることを企図している。
【0023】
さらに別の一実施形態では、核形成層を形成するために、セラミック固体ターゲットが使用され、該セラミック固体ターゲットは、ZnOならびにAlおよび/または任意の他のドーパントの含有分を有し、DCマグネトロンスパッタリングによってアトマイゼーションされてなるものを使用可能であり、核形成層を基板に施与する析出速度は20nmm/分未満であってもよい。したがって、有利には、核形成層をセラミック固体ターゲットのDCマグネトロンスパッタリングによって形成してもよい。その場合、トップ層が核形成層の上に準エピタキシャルで継続成長し得るような対応する性質を核形成層が有するように、20nmm/分未満であるように析出速度を調節する必要がある。
【0024】
有利な一実施形態では、核形成層の上に継続成長するトップ層が、ZnOおよびAlの含有分を含有するセラミック固体ターゲットをDCマグネトロンアトマイゼーションまたはDCパルスマグネトロンアトマイゼーションによってアトマイゼーションすることによって得られることを提案する。セラミック固体ターゲットのDCマグネトロンアトマイゼーションまたはDCパルスマグネトロンアトマイゼーションによって、核形成層上にトップ層を迅速に成長させることができる。さらに、これらのアトマイゼーション法は、テクニカルプロセスの観点から非常に頑強である。
【0025】
別の有利な一実施形態では、核形成層上に継続成長するトップ層が、アルミニウムドープされた酸化亜鉛(Zn:Al)を含有する金属固体ターゲットを反応性ガスプロセス中で、DCマグネトロンアトマイゼーションまたは中間周波数マグネトロンアトマイゼーションによってアトマイゼーションすることによって形成されることを提案する。この方法も、迅速な層成長を可能にし、これは、対応する迅速な酸素分圧調節でのその頑強性によって優れている。
【0026】
核形成層上に継続成長するトップ層は他にも、
中空陰極ガス流アトマイゼーションまたは
蒸発または
湿式化学析出または
大気圧化学気相成長(英語:chemical vapour deposition、CVD)または
低圧CVD(LP−CVD)または
大気圧プラズマ化学気相成長(PECVD)または
低圧PECVDによって形成することができる。
【0027】
本明細書に記載の方法は、良好なエッチング特性および優れた電気的移動度を有する酸化亜鉛層を形成するための新種の手法を提供している。この場合、ゆっくりと成長する核形成層が成長を決定するので、層全体の析出速度を有利に、著しく上げることができる。
【0028】
本発明のさらなる特徴および利点は、下記の好ましい実施例の記載によって明らかになる。
【実施例】
【0029】
実施例1
第1の実施例では、いくつかの試料を調べたが、その際、高周波マグネトロンアトマイゼーション(HFマグネトロンスパッタリング)によって形成された核形成層(英語:seedlayer)を段階的に390nmから25nmまで薄くした。核形成層上にそれぞれ、ZnO:Alからなるトップ層をDCマグネトロンアトマイゼーションによって析出させたが、その際、全厚は約1μmであった。こうして析出された層を全て、0.5%塩酸(HCl)でエッチングした。
【0030】
試料のエッチングモルホロジーを引き続き、走査電子顕微鏡(REM)で調べた。その際、トップ層は全て、核形成層の厚さとは関わりなく、同様のエッチングモルホロジーを有することが確認され得た。全てのREM写真が、約1μmのクレーター幅を有する同様のエッチング構造を示した。エッチング構造は、純粋にHFマグネトロンスパッタリングによって形成されたトップ層に比肩し得る。
【0031】
比較的薄い核形成層を施与することによって、後でDCマグネトロンスパッタリングによって形成される層の成長が持続的に影響を受け得る。初めに基板上に施与される核形成層は明らかに、継続して成長するZnO:Al層の準エピタキシャル成長をもたらす。
【0032】
さらに、こうして形成されたZnO:Al層は、286〜338μOhmcmの間の優れた固有抵抗を有することが確認され得た。このことも、核形成層上でのZnO:Al層の準エピタキシャル継続成長に起因する。
【0033】
実施例2
異なる核形成層厚(種層厚)を有する2つの層を、スパッタリング装置から取り出し、標準大気に曝露した。次いで、層を未コーティングのガラスディスクとともに、ZnO:Alトップ層をDCマグネトロンスパッタリングによって形成するために、スパッタリング装置に装入した。これらの実験は、真空度の低下(Vakuumbruch)(層への水分などの付着)を原因として起こり得るエッチング構造の変化についての試験として役立つ。さらに、DC析出の場合の種々のエッチング構造を、HFマグネトロンスパッタリングによって形成された核形成層と比較して検証した。
【0034】
REM検査によって、純粋なDC層のエッチングモルホロジーは、かなり小さい構造サイズのエッチング溝を示すことが判明した。それに対して、高周波マグネトロンスパッタリングによって形成された核形成層を備えた基板は、明らかに特徴的なエッチングクレーターを示し、その際、層は、大気圧に達しなかった試料と比較して同じエッチング深さで、やや平坦な構造を有する。これらの構造は、エッチング期間を適合させることによって最適化することができる。
【0035】
試料特性決定
走査フォース顕微鏡によって、本明細書に提示されている方法で形成されたいくつかの層の表1に示されている平均粗さ(RMS粗さ)を決定した。こうして、REM写真で示された構造を量的にも把握することができた。
【0036】
【表1】

【0037】
真空度の低下を伴わない核形成層を有する試料(試料番号2〜5)は、核形成層の厚さにかかわらず、その純粋に高周波マグネトロンスパッタリングによって形成された層(試料番号1)に比肩し得るトップ層の平均粗さ(平均して約150nm)を示した。真空度の低下の影響下にある試料番号7および8のトップ層は、純粋なDC層(試料番号6)と比較して改良された粗さを示した。ただし、粗さは、約100nmを示す真空度の低下を伴わない層と比較すると、約50nmほど少ない。AFM写真では、REM写真の場合と同様に、個々のクレーターの側方面積が識別可能である。この場合、純粋なHF層の場合に達成され得るものに比肩し得る側方構造サイズが観察され得た。それに加えて、核形成層を用いずに同じ条件下で施与された層(平行コーティング)は、かなり極小の側方構造サイズを示した。
【0038】
試料を特性決定する追加的な可能性は、角度分解散乱光測定であり、これは、種々の角度範囲で散乱する光の割合を示す。使用に最適化されたモルホロジーは、赤から近赤外光のうちの可能な限り大きな割合を、大きな角度で散乱させるべきである。
【0039】
実験で、種々の厚さの核形成層(25nm、80nm、155nmおよび390nm)上のエッチングされたZnO:Al層の光散乱を700nmの波長で調べた。試料を層側から、垂直入射下で照明し、検出器の間で、透過光を様々な角度で受けた。調査によって、全ての試料が光を実質的に非常に良好に散乱することが判明した。その場合、形態も強度も、純粋な高周波マグネトロンスパッタリング析出で得られ得る値に類似している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムドープされた酸化亜鉛で基板をコーティングする方法であって、
固体ターゲットのアトマイゼーションによって、酸化亜鉛、またはドープされた、特にアルミニウムドープされた酸化亜鉛を含有する5nm〜400nm厚の核形成層を基板表面上に形成するステップと、
アルミニウムドープされた酸化亜鉛を含有し、核形成層上に準エピタキシャルで継続成長するトップ層を形成するステップと、
トップ層を湿式化学エッチングするステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
核形成層を5nm〜30nmの厚さで基板上に形成することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ZnO、ならびにAlおよび/または任意の他のドーパントの含有分を含有するセラミック固体ターゲットを高周波マグネトロンスパッタリングすることによって核形成層が形成され、核形成層が、格子構造を保持しているか、または少なくともほぼ保持していることを特徴とする、請求項1または2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
核形成層を形成するために、セラミック固体ターゲットが使用され、該セラミック固体ターゲットは、ZnOおよび0重量%超であり1重量%未満であるAlの含有分を有し、高周波マグネトロンアトマイゼーションによって温度T>300℃でアトマイゼーションされてなることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
核形成層を形成するために、セラミック固体ターゲットが使用され、該セラミック固体ターゲットは、ZnOおよび1〜2重量%の間のAlの含有分を有し、高周波マグネトロンアトマイゼーションによって温度T≦300℃でアトマイゼーションされてなることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
核形成層が基板に施与される析出速度が、20nmm/分未満であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
核形成層を形成するために、セラミック固体ターゲットが使用され、該セラミック固体ターゲットは、ZnOならびにAlおよび/または任意の他のドーパントの含有分を有し、DCマグネトロンスパッタリングによってアトマイゼーションされてなり、核形成層を基板に施与する析出速度が20nmm/分未満であることを特徴とする、請求項1または2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
核形成層の上に継続成長するトップ層が、ZnOおよびAlの含有分を含有するセラミック固体ターゲットをDCマグネトロンアトマイゼーションまたはDCパルスマグネトロンアトマイゼーションによってアトマイゼーションすることによって得られることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
核形成層上に継続成長するトップ層が、アルミニウムドープされた酸化亜鉛を含有する金属固体ターゲットを反応性ガスプロセス中で、DCマグネトロンアトマイゼーションまたは中間周波数マグネトロンアトマイゼーションによってアトマイゼーションすることによって形成されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
核形成層上に継続成長するトップ層を、
中空陰極−ガス流アトマイゼーションまたは
蒸発または
湿式化学析出または
大気圧化学気相成長(CVD)または
低圧CVD(LP−CVD)または
大気圧プラズマ化学気相成長(PECVD)または
低圧PECVDによって形成することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項の記載によってアルミニウムドープされた酸化亜鉛でコーティングされた基板の、シリコン薄層太陽電池のフロント接点としての使用。

【公表番号】特表2013−515851(P2013−515851A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545346(P2012−545346)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070655
【国際公開番号】WO2011/076921
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(510327219)フラウンホッファー−ゲゼルシャフト ズル フェルデルング デア アンゲヴァントテン フォルシュング エー.ヴェー. (2)
【出願人】(511091209)シュコー テーエフ ゲーエムベーハー ウント コー.カーゲー (2)
【Fターム(参考)】