説明

アルミニウム膜の形成方法

【課題】 多くの電子デバイスに好適に使用できる配線や電極として用いられるアルミニウム膜を容易かつ安価に形成しうる方法を提供する。
【解決手段】 表面にチタン化合物の塗膜を備えた基体と、水素化アルミニウム化合物とアミン化合物との錯体または下記式(1) R,R,RAl・・・(1) ここで、R、RおよびRは、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、フェニル基、炭素数7〜12のアラルキル基である、で表わされるアルミニウム化合物を含有するアルミニウム溶液組成物とを準備し、(i)基体を、予め加熱したアルミニウム溶液組成物中に浸漬するか、(ii)予め加熱した基体を、アルミニウム溶液組成物中に浸漬するか、あるいは(iii)基体をアルミニウム溶液組成物中に浸漬したままで加熱するか、により、チタン化合物の塗膜上にアルミニウム膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム膜の形成方法に関する。さらに詳しくは、電子デバイスの配線の形成に好適に用いられるアルミニウム膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池や半導体デバイス、電子ディスプレイデバイスなど多くの電子デバイスに使用されている配線材料としてアルミニウムが使用されている。従来このようなアルミニウム膜はスパッタリング法、真空蒸着法、CVD法などの真空プロセスで形成し、そのアルミニウム膜を、レジストを用いるフォトエッチング法でアルミニウムのパターンに形成するのが一般的であった。この方法には大がかりな真空蒸着装置が必要なため消費エネルギー上不利であるばかりでなく、大面積基板に均一にアルミニウム配線を形成することが困難であるため歩留まりが悪くコスト高の一因となっていた。
【0003】
これに対して近年、アルミニウム微粒子をバインダーに分散したペーストが開発され、このペーストをスクリーン印刷法などでパターン印刷し、焼成することによりアルミニウムのパターンを形成する方法が報告されている。この方法はアルミニウムペーストを印刷により直接パターニングする方法であるためコスト的には安価であるが、得られたアルミニウムは不純物を有するので低抵抗のものを得ることが困難であるとともに、微細パターンの形成は技術上困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情を鑑みなされたもので、その目的は、多くの電子デバイスに好適に使用できる配線や電極として用いられるアルミニウム膜を容易かつ安価に形成しうる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、上記目的は、
表面にチタン化合物の塗膜を備えた基体と、
水素化アルミニウム化合物とアミン化合物との錯体または下記式(1)
,R,RAl・・・(1)
ここで、R、RおよびRは、同一もしくは異なり、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、フェニル基、炭素数7〜12のアラルキル基である、
で表わされるアルミニウム化合物を含有するアルミニウム溶液組成物とを準備し、次いで
(i)上記基体を、予め加熱した上記アルミニウム溶液組成物中に浸漬するか、
(ii)予め加熱した上記基体を、場合により予め加熱した、上記アルミニウム溶液組成物中に浸漬するか、あるいは
(iii)上記基体を上記アルミニウム溶液組成物中に浸漬したままで加熱するか、
により、チタン化合物の塗膜上にアルミニウム膜を形成する、
ことを特徴とする、アルミニウム膜の形成方法によって達成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来のスパッタリング法、真空蒸着法、CVD法などの真空プロセスによるアルミニウム膜の形成方法と異なり、特定のアルミニウム化合物を含む溶液組成物と特定の基体とを準備し、これらのいずれか一方を加熱して両者を接触させる簡単な方法により、アルミニウム膜を容易に形成することができる。また、従来のCVD法のような気粗からの推積ではなく、アルミニウム化合物を含む溶液組成物を用いることにより低コストでしかも均一かつ緻密な膜質のアルミニウム膜を形成することができる。
【発明の好ましい実施形態】
【0007】
以下、本発明について詳述する。
【0008】
本発明で用いられるアルミニウム溶液組成物は、水素化アルミニウム化合物とアミンとの錯体または上記式(1)で表わされるアルミニウム化合物を含有する。
水素化アルミニウムとアミンとの錯体は、例えば水素化リチウムアルミニウムのジエチルエーテル懸濁液にアミンの塩化水素酸塩を添加し、例えばNガス中室温で撹拌しながら反応させて合成することができる。反応温度、反応溶媒等は、所望するアミンと水素化アルミニウムとの錯体の種類に応じて適宜に選択されるべきである。
本発明において用いられるアミンは、モノアミン又はポリアミンであることができる。上記ポリアミンとしては、例えばジアミン、トリアミン、テトラアミン等を挙げることができる。
【0009】
上記モノアミンとしては、例えば下記式(2)
N ・・・(2)
(ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、環式アルキル基またはアリール基である。)
【0010】
で表されるモノアミン、それ以外のモノアミンを挙げることができる。式(2)中のR、RおよびRとしてのアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基は直鎖状でも環状でもよく、また分岐していてもよい。
【0011】
上記アルキル基としては、例えば炭素数1〜12のアルキル基を挙げることができ、その具体例としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等を挙げることができる。
上記アルケニル基としては、例えば不飽和基を有するアルケニル基を挙げることができ、その具体例としては例えばメタアリル基等を挙げることができる。
上記アルキニル基の具体例としては、例えばフェニルエチニル基等;
上記環式アルキル基の具体例としては、例えばシクロプロピル基等;
上記アリール基の具体例としては、例えばフェニル基、ベンジル基等を、それぞれ挙げることができる。
【0012】
式(2)で示される化合物の具体例としては、例えばアンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリーイソプロピルアミン、トリシクロプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−t−ブチルアミン、トリ−2−メチルブチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリ(2−エチルヘキシル)アミン、トリオクチルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、ジメチルフェニルアミン、ジエチルフェニルアミン、ジイソブチルフェニルアミン、メチルジフェニルアミン、エチルジフェニルアミン、イソブチルジフェニルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジシクロプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、メチルエチルアミン、メチルブチルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、ジオクチルアミン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、メチルフェニルアミン、エチルフェニルアミン、イソブチルフェニルアミン、メチルメタクリルアミン、メチル(フェニルエチニル)アミン、フェニル(フェニルエチニル)アミン、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、シクロプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミン、2−メチルブチルアミン、n−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、オクチルアミン、フェニルアミン、ベンジルアミン等を挙げることができる。
【0013】
上記式(2)で表されるモノアミン以外のモノアミンの具体例としては、例えば1−アザ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン(キヌクリジン)、1−アザシクロヘキサン、1−アザ−シクロヘキサン−3−エン、N−メチル−1−アザシクロヘキサン−3−エン等を挙げることができる。
【0014】
上記ジアミンとしては、例えばエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミン、N,N’−ジフェニルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノベンゼンモルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ピペラジン等を挙げることができる。
【0015】
上記トリアミンとしては、例えばジエチレントリアミン、1,7−ジメチル−1,4,7−トリアザヘプタン、1,7−ジエチル−1,4,7−トリアザヘプタン、N,N’,N''−トリメチル−1,3,5−トリアザシクロヘキサン等を挙げることができる。
上記テトラアミンとしては、例えばトリメチレンテトラアミン、トリエチレンテトラアミン等を挙げることができる。これらのアミンは、単独でも、あるいは2種以上の化合物を混合して使用することもできる。
【0016】
これらアミンのうち、式(2)で表されるモノアミンを使用することが好ましく、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリーイソプロピルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−t−ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、メチルエチルアミン、メチルブチルアミン、メチルフェニルアミン、エチルフェニルアミン、イソブチルフェニルアミン、メチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、シクロプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミン、2−メチルブチルアミン、n−ヘキシルアミン又はフェニルアミンを使用することがより好ましく、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−イソプロピルアミン、トリイソブチルアミン又はトリ−t−ブチルアミンを使用することが更に好ましい。
これらのアミンは、単独でも、あるいは2種以上の化合物を混合して使用することもできる。
【0017】
上記式(1)で表わされる化合物について、 式(1)中のR、RおよびRの具体例としては、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基の如きアルキル基、メタアリル基の如きアルケニル基、フェニルエチニル基の如きアルキニル基、シクロプロピル基の如き脂環式アルキル基、フェニル基、ベンジル基の如きアラルキル基などを好適に使用することができる。またこれらアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアラルキル基は直鎖状でも、環状でも、また分岐していてもよい。
【0018】
式(1)で示される化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリシクロプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリ2−メチルブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリ(2−エチルヘキシル)アルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリベンジルアルミニウム、ジメチルフェニルアルミニウム、ジエチルフェニルアルミニウム、ジイソブチルフェニルアルミニウム、メチルジフェニルアルミニウム、エチルジフェニルアルミニウム、イソブチルジフェニルアルミニウム、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジフェニルアルミニウムヒドリド、ジメチルメタクリルアルミニウム、ジメチル(フェニルエチニル)アルミニウム、ジフェニル(フェニルエチニル)アルミニウム等を用いることができる。これらのアルミニウム化合物は、単独でも、あるいは2種以上の化合物を一緒に使用することもできる。
【0019】
式(1)で表される化合物の製造法は特に限定されない。例えば、ジアルキルハロゲン化アルミニウムと金属ナトリウムとの反応[A.V.Grosseら、J. Org. Chem., 5巻, p106、1940年]、アルミニウムとオレフィンと水素との反応[K.Zieglerら, Ann., 629巻,p1、1960年]、オレフィンと水素化アルミニウムとの反応[K. Zieglerら, Ann., 589巻, p91、1954年]、有機水銀とアルキルアルミニウムとの反応[D. A. Sandersら, J. Amer. Chem. Soc., 90巻、p5910、1968年]、有機水銀とアルミニウムとの反応[J. J. Eischら, J. Amer. Chem. Soc., 88巻、p2976、1966年]、アルキルボランとアルキルアルミニウムとの反応[L. Lardicciら, J. Organometal. Chem., 39巻、p245、1972年]、有機アルミニウムとアセチレン誘導体との反応[T. Moleら, Aust. J. Chem., 17巻、p1229、1964年]、アルキルリチウムと塩化アルミニウムとの反応[H. Lehmkuhl, Ann., 719巻、p40、1968年]等を用いることができる。
上記アルミニウム溶液組成物は、水素化アルミニウム化合物とアミンとの錯体または上記式(1)で表わされるアルミニウム化合物を溶媒に溶解して形成される。
【0020】
かかる溶媒としては、例えばn−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘプタン、n−オクタン、シクロオクタン、デカン、シクロデカン、ジシクロペンタジエン水素化物、ベンゼン、トルエン、キシレン、ドデジルベンゼン、デュレン、インデン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、1,4−ジメチルナフタレン、テトラヒドロナフタレン、α−メチルナフタレン、β−メチルナフタレン、ビフェニル、スクワラン、流動のパラフィンなどの炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサン、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、ジフェニルサルファイドなどのエーテル系溶媒、および塩化メチレン、クロロホルムなどの極性溶媒を用いることができる。これらのうち、溶解性と該溶液の安定性の点で炭化水素系溶媒または炭化水素系溶媒とエーテル系溶媒との混合物を用いるのが好ましい。これらの溶媒は、単独でも、あるいは2種以上の混合物としても使用することができる。
【0021】
本発明で用いられる基体は、表面にチタン化合物の塗膜を備えている。用いられる基板の材質、形状等は特に制限はない。材質は次工程の熱処理に耐えられるものが好ましく、また塗膜を形成する基体は平面でもよく、段差のある非平面、例えばトレンチを有していてもよく、曲面をなしていてもよく、全体が筒状であってもよく、その形態は特に限定されるものではない。これらの基体の材質の具体例としては、ガラス、金属、プラスチック、セラミックスなどを挙げることができる。ガラスとしては、例えば石英ガラス、ホウ珪酸ガラス、ソーダガラス、鉛ガラスが使用できる。金属としては、例えば金、銀、銅、ニッケル、シリコン、アルミニウム、鉄の他ステンレス鋼などが使用できる。プラスチックとしては、例えばポリイミド、ポリエーテルスルホン等を挙げることができる。さらにこれらの材質形状はバルク形状、板状、フィルム形状などで特に制限されるものではない。
【0022】
また、本発明において、上記基体は、予めチタン化合物の塗膜(下地層)を有する基板として準備される。このような下地層を有することにより、基体とアルミニウム膜との接着が安定に保持される。
チタン化合物の塗膜は基体に有機チタン化合物を含有するチタン溶液組成物を塗布することによって形成することができる。
有機チタンとしては、例えば下記式(3)乃至(6)で表される化合物を挙げることができる。
【0023】
Ti(OR(CHCOCHCOOR4−x ・・・(3)
ここで、R及びRは、同一又は異なり、アルキル基又はフェニル基であり、xは0〜4の整数である。
【0024】
Ti(OR(X)4−y ・・・(4)
ここで、Rはアルキル基又はフェニル基であり、Xはハロゲン原子であり、yは0〜3の整数である。
【0025】
Ti(OR10(NHR114−z ・・・(5)
ここで、R10及びR11は、同一又は異なり、アルキル基又はフェニル基であり、zは0〜3の整数である。
【0026】
Ti(Cp)(Y)4−n ・・・(6)
ここで、Cpはシクロペンタジエニル基であり、Yはハロゲン原子又はアルキル基でありそしてnは1〜4の整数である。
【0027】
上記(3)式で表されるチタン化合物の具体例としては、例えばチタニウムメトキシド、チタニウムエトキシド、チタニウム−n−プロポキシド、チタニウム−n−ノニルオキシド、チタニウムステアリルオキシド、チタニウムイソプロポキシド、チタニウム−n−ブトキシド、チタニウムイソブトキシド、チタニウム−t−ブトキシド、チタニウムテトラキス(ビス2,2−(アリルオキシメチル)ブトキシド、チタニウムトリメチルシロキシド、チタニウム−2−エチルヘキソオキシド、チタニウムメタクリレートトリイソプロポキシド、チタニウムメトキシプロポキシド、チタニウムフェノキシド、チタニウムメチルフェノキシド、チタニウムトリス(ドデシルベンゼンスルホネート)イソプロポキシド、チタニウムトリメタクリレートメトキシエトキシエトキシド、チタニウムラクテート、チタニウムビス(エチルアセトアセテート)ジイソプロポキシド、トリス(2,2,6,6−テトラメチルー3,5−ヘプタンジオネート)チタニウム、チタニウムオキシドビス(ペンタンジオネート)、チタニウムオキシド(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタニウムメタクリルオキシアセトアセテートトリイソプロポキシド、チタニウムジ−n−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキシドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムテトラエチルアセトアセテート、チタニウムテトラメチルアセトアセテート、ジ(イソプロポキシド)ビス(2,2,6,6−テトラメチルー3,5−ヘプタンジオネート)チタニウム、チタニウムアリルアセトアセテートトリイソプロポキシド等;
【0028】
上記(4)式で表されるチタン化合物の具体例としては、例えばインデニルチタニウムトリクロライド、ペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリクロライド、ペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリメトキシド、塩化チタニウム等;
上記(5)式で表されるチタン化合物の具体例としては、例えばテトラキス(ジメチルアミノ)チタニウム、テトラキス(ジエチルアミノ)チタニウム、テトラキス(ジ−t−ブトキシアミノ)チタニウム、テトラキス(ジ−i−プロポキシアミノ)チタニウム、チタニウムビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキシド等;
上記(6)式で表されるチタン化合物の具体例としては、例えばジシクロペンタジエニルチタニウムジクロライド、ジシクロペンタジエニルチタニウムジブロマイド、シクロペンタジエニルチタニウムトリクロライド、シクロペンタジエニルチタニウムトリブロマイド、ジシクロペンタジエニルジメチルチタニウム、ジシクロペンタジエニルジエチルチタニウム、ジシクロペンタジエニルジ−t−ブチルチタニウム、ジシクロペンタジエニルフェニルチタニウムクロライド、ジシクロペンタジエニルメチルチタニウムクロライド、(トリメチル)ペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウム、ジメチルビス(t−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウム等を、それぞれ挙げることができる。
【0029】
また、上記チタン溶液組成物の基体への塗布に際しては、塗布方法は特に限定されず、スピンコート、ディップコート、カーテンコート、ロールコート、スプレーコート、インクジェット、印刷法などにより実施することができる。塗布は1回で、または複数回、重ね塗りすることもできる。好適な塗膜の厚みは塗布方法、固形分濃度に依存して適宜変動するが、膜厚として0.001〜10μmが好ましく、0.005〜1μmであるのがさらに好ましい。厚すぎると膜の平坦性が得られ難く、薄すぎると基板または接する膜との密着性に劣ることがある。下地層は上記溶液を塗布したのち加熱して溶媒を除去することによって形成される。加熱温度は、好ましくは30〜350℃、より好ましくは40〜300℃である。また、上記下地膜は一様の塗膜を形成していても、パターンを形成していてもよい。下地膜は好ましくは酸化チタンからなる。
【0030】
本発明方法は、上記の如くして、表面にチタン化合物の塗膜を備えた基体と、アルミニウム溶液組成物を先ず準備する。
【0031】
本発明方法は次いで
(i)上記基体を、予め加熱した上記アルミニウム溶液組成物中に浸漬するか、
(ii)予め加熱した上記基体を、場合により予め加熱した、上記アルミニウム溶液組成物中に浸漬するか、あるいは
(iii)上記基体を上記アルミニウム溶液組成物中に浸漬したままで加熱するか、
により、チタン化合物の塗膜上にアルミニウム膜を形成する。
【0032】
上記工程(i)、(ii)および(iii)は、上記アルミニウム溶液組成物が水素化アルミニウム化合物とアミン化合物の錯体であるときには、工程(i)では60〜200℃に予め加熱したアルミニウム溶液組成物を用いるか、工程(ii)では60〜200℃に予め加熱した基体を用いるか、あるいは工程(iii)では加熱を60〜200℃とする、ことにより好ましく実施される。同様に、上記アルミニウム溶液組成物が上記式(1)で表わされるアルミニウム化合物であるときには、工程(i)では100〜300℃に予め加熱したアルミニウム溶液組成物を用いるか、工程(ii)において100〜300℃に予め加熱した基体を用いるか、あるいは工程(iii)における加熱を100〜300℃とする、ことにより好ましく実施される。
【0033】
また、上記工程(i)、(ii)および(iii)は、設定温度における溶媒の蒸気圧を超える圧力下で実施することが好ましい。そのために例えば常圧で実施する際には、アルミニウム溶液組成物の溶媒としてジフェニルエーテル、ドデシルベンゼン、流動パラフィン、ジフェニルサルファイド、1,4−ジメチルナフタレン、テトラヒドロナフタレン、ジベンジルエーテル、α−メチルナフタレン、β−メチルナフタレン、ビフェニルを用いるのが好ましく、ジフェニルエーテル、ドデシルベンゼン、流動パラフィンを用いるのがより好ましい。
【0034】
上記方法により、基体上のチタン化合物の塗膜上にアルミニウム膜を形成することができる。例えばチタン化合物の塗膜をパターンになしておけばアルミニウム膜をパターンに形成することができるので、例えば電子デバイスに使用できる配線や電極を容易に形成することができる。
【実施例】
【0035】
以下において、基板上に形成された膜の厚さは、α step(Tenchor社製)で測定した。
【0036】
また、以下の操作中で使用した窒素ガスは、酸素濃度が0.1重量%以下に制御されたものを使用した。
【0037】
実施例1
<トリエチルアミンと水素化アルミニウムとの錯体の合成>
トリエチルアミン20gをエチルエーテル(100mL)に溶解した溶液に、5倍モルの塩化水素ガスをバブリングして反応させ、生成した不溶物をフィルターで濾別した。この不溶物を100mLのエチルエーテルで洗浄し、エチルエーテルを除去することにより、24gのトリエチルアミンの塩化水素酸塩を得た。得られたトリエチルアミンの塩化水素酸塩のうち、14gをテトラヒドロフラン500mLに溶解し、3.8gのリチウムアルミニウムハイドライドと500mLのエチルエーテルからなる懸濁液中へ窒素下、室温で攪拌しつつ1時間かけて滴下し、滴下終了後更に6時間室温で攪拌を継続した。その後、反応混合物を孔径0.2μmのメンブレンフイルターで濾過し、濾液を窒素下で半量になるまで濃縮した。生成した析出物を孔径0.2μmのメンブレンフイルターで濾別した後、更に濃縮を続け、続いて減圧にて揮発分を除去することにより、液状のトリエチルアミンと水素化アルミニウムとの錯体10.3gを得た。
【0038】
<チタン化合物で処理した基板の調製>
大きさ3cm×10cm、厚さ3mmのガラス基板の片面に、チタニウムビス(エチルアセトアセタト)ジイソプロポキシドの2重量%トルエン溶液を厚さ20nmに塗布し、窒素雰囲気下、200℃で30分間加熱することにより、チタン化合物で処理したガラス基板を調製した。
なお、この基板のチタン化合物で処理した面には、厚さ10nmの透明の膜が形成されていた。この膜のESCAを測定したところ、459.0eVにTi2p3/2に帰属されるピーク及び530.8eVにO1sに帰属されるピークがが観察され、酸化チタンであることがわかった。
【0039】
<アルミニウム膜の形成>
窒素下、室温で100mLのセパラブルフラスコ中に、上記で合成したトリエチルアミンとアランとの錯体10gをとり、40mLのジフェニルエーテルに溶解して濃度20重量%の溶液とした。この溶液を窒素下、オイルバス中で100℃に加温した。
この加温した溶液中に、上記で調製したチタン化合物で処理したガラス基板を静かに投入し、30秒間浸漬後、引き上げた。このガラス基板には、チタン化合物で処理した面にのみ金属光沢を有する膜が形成されていた。
この基板上の膜の厚さは500nmであった。また、この膜の導電性を調べたところ、6μΩ・cmの比抵抗値を示す導電性を有する膜であることがわかった。この膜のESCAを測定した所、73.5eVにAl2pに帰属されるピークが観察され、この膜はアルミニウムであることがわかった。
【0040】
実施例2
実施例1において、トリエチルアミンとアランとの錯体のジフェニルエーテル溶液の加熱温度を120℃とした他は実施例1と同様にして実施したところ、ガラス基板のチタン化合物で処理した面にのみ金属光沢を有する膜が形成された。
この基板上の膜の厚さは900nmであった。また、この膜の導電性を調べたところ、比抵抗値は10μΩ・cmであった。この膜のESCAを測定した所、73.5eVにAl2pに帰属されるピークが観察され、この膜はアルミニウムであることがわかった。
【0041】
実施例3
実施例1において、チタン化合物で処理した基板の浸漬時間を60秒とした他は実施例1と同様にして実施したところ、ガラス基板のチタン化合物で処理した面にのみ金属光沢を有する膜が形成された。
この基板上の膜の厚さは1000nmであった。また、この膜の導電性を調べたところ、比抵抗値は13μΩ・cmであった。この膜のESCAを測定した所、73.5eVにAl2pに帰属されるピークが観察され、この膜はアルミニウムであることがわかった。
【0042】
実施例4
実施例1において、トリエチルアミンとアランとの錯体の代わりに、トリオクチルアルミニウムを使用し、トリオクチルアルミニウムのジフェニルエーテル溶液の加熱温度を200℃とした以外は実施例1と同様にして実施したところ、ガラス基板のチタン化合物で処理した面にのみ金属光沢を有する膜が形成された。
この基板上の膜の厚さは100nmであった。また、この膜の導電性を調べたところ、比抵抗値は20μΩ・cmであった。この膜のESCAを測定した所、73.5eVにAl2pに帰属されるピークが観察され、この膜はアルミニウムであることがわかった。
【0043】
実施例5
<チタン化合物でパターン状に処理した基板の調製>
チタニウムビス(エチルアセトアセタト)ジイソプロポキシドの2重量%トルエン溶液をマイクロジェット(株)製のインクジェット式パターニング塗布装置(型式「MJP−1500V」)に充填し、大きさ3cm×10cm、厚さ3mmのガラス基板の片面に、線幅2μm、スペース10μmのラインアンドスペースパターンを、長さ30mm、厚さ20nmでインクジェット塗布した。この塗布後のガラス基板を窒素雰囲気下、200℃で30分加熱することにより、チタン化合物でパターン状に処理したガラス基板を調製した。
なお、この基板のチタン化合物でパターン状に処理した面には、厚さ10nmの透明のパターンが形成されていた。
【0044】
<アルミニウム膜の形成>
実施例1において、チタン化合物で処理した基板の代わりに上記で調製したチタン化合物でパターン状に処理した基板を用いた他は、実施例1と同様にして実施した。浸漬後の基板を光学顕微鏡で観察したところ、ガラス基板のチタン化合物で処理したパターンの上にのみ金属光沢を有する膜が形成された。
この基板上のパターン(ラインの部分)の厚さは100nmであった。また、このパターンの導電性を調べたところ、比抵抗値は20μΩ・cmであった。
【0045】
実施例6
実施例5において、トリエチルアミンと水素化アルミニウムとの錯体を溶解する溶媒として、ジフェニルエーテルの代わりに流動パラフィンを用いた他は、実施例5と同様にして実施した。浸漬後の基板を光学顕微鏡で観察したところ、ガラス基板のチタン化合物で処理したパターンの上にのみ金属光沢を有する膜が形成された。
この基板上のパターン(ラインの部分)の厚さは200nmであった。また、このパターンの導電性を調べたところ、比抵抗値は8μΩ・cmであった。
【0046】
実施例7
実施例5において、トリエチルアミンと水素化アルミニウムとの錯体を溶解する溶媒として、ジフェニルエーテルの代わりにドデシルベンゼンを用いた他は、実施例5と同様にして実施した。浸漬後の基板を光学顕微鏡で観察したところ、ガラス基板のチタン化合物で処理したパターンの上にのみ金属光沢を有する膜が形成された。
この基板上のパターン(ラインの部分)の厚さは200nmであった。また、このパターンの導電性を調べたところ、比抵抗値は10μΩ・cmであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にチタン化合物の塗膜を備えた基体と、
水素化アルミニウム化合物とアミン化合物との錯体または下記式(1)
,R,RAl ・・・(1)
ここで、R、RおよびRは、同一もしくは異なり、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、フェニル基または炭素数7〜12のアラルキル基である、
で表されるアルミニウム化合物を含有するアルミニウム溶液組成物とを準備し、
次いで
(i)上記基体を、予め加熱した上記アルミニウム溶液組成物中に浸漬するか、
(ii)予め加熱した上記基体を、場合により予め加熱した、上記アルミニウム溶液組成物中に浸漬するか、あるいは
(iii)上記基体を上記アルミニウム溶液組成物中に浸漬したままで加熱するか、
により、チタン化合物の塗膜上にアルミニウム膜を形成する、
ことを特徴とする、アルミニウム膜の形成方法。
【請求項2】
表面にチタン化合物の塗膜を備えた基体における該塗膜がパターンをなしている請求項1に記載の方法。
【請求項3】
表面にチタン化合物の塗膜を備えた基体における該塗膜が実質的に酸化チタンからなる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
表面にチタン化合物の塗膜を備えた基体が基体に有機チタン化合物を含むチタン溶液組成物を塗布する工程を経て形成された請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記アルミニウム溶液組成物が水素化アルミニウム化合物とアミン化合物の錯体でありそして工程(i)において60〜200℃に予め加熱したアルミニウム溶液組成物を用いるか、工程(ii)において60〜200℃に予め加熱した基体を用いるか、あるいは工程(iii)における加熱を60〜200℃とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
上記アルミニウム溶液組成物が上記式(1)で表されるアルミニウム化合物でありそして工程(i)において100〜300℃に予め加熱したアルミニウム溶液組成物を用いるか、工程(ii)において100〜300℃に予め加熱した基体を用いるか、あるいは工程(iii)における加熱を100〜300℃とする、請求項1に記載の方法。


【公開番号】特開2006−213943(P2006−213943A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−25514(P2005−25514)
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】