説明

アルミニウム被膜用組成物

式TG13−Rで表される組成物、及び、式TG14−Rで表される組成物。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属用被覆材の分野に関するものである。本発明の被膜はアルミニウム及びアルミニウム合金に有用である。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム及びアルミニウム合金は、大気及び湿気にさらされると、錆びるか、又はその他の望ましくない作用が生じるため、通常、被膜が必要となる。
【0003】
アルミニウム表面処理産業及び航空宇宙産業において、何十年もの間、あらゆる種類のアルミニウム合金に施す前処理の選択肢はクロメート処理であった。アルミニウムの表面上に形成されたクロメート化成皮膜には二つの目的がある。金属を単独で腐食から一時的に守ること、及び、上塗り塗料が付着する土台となることである。前者はAl−Crを混合した酸化層でアルミニウムを電気化学的及びバリアで不動態化することによって得られ、後者は、大部分において、クロメート処理した面の表面積の拡大によるものである。クロメート反応はCr(VI)が前記Alを酸化してAl(III)にすることによって開始し、アモルファス混合酸化層が形成される。この反応は化学量論的手段によるものではなく、しばしば過剰なCr(VI)が得られた酸化膜中に存在する。物理的衝撃を受けて何もない金属の表面が露出し、適度な湿度レベルにさらされると、被膜中に残ったCr(VI)がゆっくりと滲出して酸化し、「傷(wound)」をふさぐという「自己回復」現象が生じる。いずれにせよ、クロム酸塩(エステル)(chromate)はヒト発癌性物質であることが確認されているため、その使用は益々厳しく規制されている。
【0004】
人体や環境に害がなく、同程度の腐食防止性能を有するクロム代替品の探求は、十年以上もの間続けられている。これまでに調査した新しいタイプの化学成分は、目的を部分的に満たすだけである。これらの新たに提案された化成皮膜は、しばしばその他の遷移金属(毒性は少ない)を用いる必要があり、且つ/又は、単独による保護性及び塗料付着性のいずれの点においても、クロム酸塩(エステル)と同程度の性能基準を満たすことができない。
【0005】
その他に研究された化成被覆方式の中でも、シラン系のものはいくつかの有益な特徴を有している。シラン系コーティングは金属を全く含んでおらず(その結果、真に「環境に優しい」)、塗料を金属に共有結合させることができ、優れた塗料付着性がある。有機官能シラン類は、ガラス繊維とプラスチックに、又はゴムと金属など、異なる化学的性質の表面を結合させるためのカップリング剤として長い間用いられてきた。一般に「有機−無機ハイブリッド」化合物と称される有機官能シラン類は、一方の末端に反応性有機官能基(例えばエポキシ、アミノ、アクリル等)、他方の末端に加水分解性アルコキシシリル基を有する。塗料用樹脂への結合は、前記シランの有機官能基と樹脂分子の有機官能基の間の反応を通じて行われ、金属表面への結合は、金属−酸素−シリコン、又はM−O−Si結合が形成されることによって生じる。ここで、Mは金属に相当する。pHが酸性の水溶液から作られると、シランの疎水性アルコキシリル基は加水分解し、親水性の金属酸化物表面の金属と界面エネルギーの点において適合性の高い親水性のシラノール基となる。
【0006】
シランカップリング剤をクロム酸塩(エステル)の代替として用いる研究は、ファン オージ(Van Ooji)らが先駆けとなって行ってきた。他の研究グループによる初期の研究では、主に単官能シラン、すなわち、加水分解性アルコキシシリル基を1つ有するシランに限られていた。Xが有機官能基である単官能シラン−X−R−Si−(OR’)は、制御された加水分解において、ペンダントシラノール基を有する直鎖シロキサンポリマーを形成する傾向がある。これは、ペンダントシラノールを介した更なる縮合により、より架橋したバリア層が形成されることを示唆しているかもしれない。しかし、単官能シラン由来の被膜が有する性質は、テトラエトキシシラン(TEOS)又は四価Zrなどの架橋剤を用いることなしには満足なものにすることができず、コーティング溶液の有効寿命も非常に短いということが分かった。希釈水溶液中においても問題があり、単官能シランは、ヒドロキシル化された又はシランからなる面上にM−Si−O結合を介して単分子層を形成する傾向があるので、その結果、他のシラン分子と架橋する−Si(OR’)基が無くなってしまい、腐食防止に必要なより厚いコーティングの形成ができなくなってしまう。
【0007】
ファン オージ(Van Ooji)のグループは、多官能シラン(一以上のアルコキシシリル基を有するシラン)が、アルミニウム上に保護層を形成する上で大変有益であることを発見した。この発見は、塗装していない金属の腐食防止において、シランの成膜性が重要であることを強調するものである。これに限定されないが、塗膜した金属面の腐食は、環境由来の腐食性種が塗料/金属の接触面へ拡散することによって生じるものであり、塗膜における高度な架橋によって拡散路が曲がり、拡散性が低減すれば、該拡散は妨げられると考えられている。
【0008】
(R’O)−Si−R−Si−(OR’)で表される二官能シラン類の場合、大きく状況が異なる。ここで、Rはヘテロ原子を有する又は有しない架橋原子団である。この二官能シランは、2つのアルコキシシリル基の中の1つを介して金属表面にある固有の金属酸化物と共有結合することができ、他のアルコキシシリル基を介して、これらの間で縮合/架橋結合することができる。架橋したマトリックスの性質は、シロキサンの性質ではなく、有機/無機ハイブリッド材料の性質である。
【0009】
文献に記載の金属の腐食防止に使用するビス型シランとしては、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン(BTSPS)、ビス−1,2−[トリエトキシシリル]エタン(BTSE)、ビス−1,2−[トリメトキシルシリルプロピル]アミン(BTSPA)があり、全て市販されている。BTSEは最初に調査されたビス官能シランであり、塗料付着性に不可欠な反応性有機官能基が骨格エチレン基になかったことから、まもなく必要とされなくなった。スルフィドシラン−BTSPSは、様々なグレードのスチール及びアルミニウム合金の保護層として研究が行われてきた。各種の電気化学的性質に加え、中性・銅促進塩水噴霧、塗料付着性、温塩浸漬を含む一連の腐食試験により、BTSPSの全体的な性能は、クロメート化成皮膜の性能と等しい、又は、時によっては上回るものであることが実証された。スルフィド−(S)−とFe原子間の相互作用がスチールの電気化学的不動態化に大きく寄与し、S基とトップコートの官能性残基の相互作用が、シラン層の塗料やゴムへの付着性を高めているものと見られている。BTSPSは、アルミニウムの表面やジンケート処理された表面をスチールに対するのと同様に保護するが、二つの大きな欠点がある。溶液を媒介とする点と、高い疎水性により塗布する前に長時間の(しばしば数日間の)加水分解が必要となる点である。更に、ビスアミノ−シランBTSPAは、有機溶媒がなくても完全に水溶性であるが、塗装していないアルミニウムに対する腐食防止性能は、テトラスルフィドよりもはるかに劣っている。これは、親水性の第2級アミノ基の存在による低い疎水性によるものと部分的に説明することができる。BTSPA溶液にビニルトリアセトキシルシラン−VTASを添加することで、その性能を一定のレベルに上げることができるが、該ビニルシランは水中において不安定であり、ゆっくりと凝結し、やがて溶液の外へ沈殿することが確認されている。
【0010】
シラン系金属の前処理工程を成功させる重要な点としては、多官能シランにおいて、水溶性(実用上の問題)、疎水性(最も高い腐食防止)、高い架橋性(腐食性を有する種の拡散防止)、遅い縮合速度(溶液の寿命が長い)、及び反応性(塗料付着性)の理想的な組み合わせを特定することが挙げられる。しかしながら、テトラスルフィド及びビスアミノのいずれもこれら5つの要素すべてを満たすことはできず、現在市販されているシランも同様に満たすことができない。したがって、アルミニウム及びアルミニウム合金の被膜に有効な新しい金属被膜の特定が望まれている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1態様は、式TG13−Rで表されることを特徴とする組成物である。
【0012】
【化1】

【0013】
式中、Rは水素又は炭素数1〜6のアルキルである。
【0014】
本発明の第2態様は、式TG14−Rで表されることを特徴とする組成物である。
【0015】
【化2】

【0016】
式中、Rは水素又は炭素数1〜6のアルキルである。
【0017】
本発明の第3態様は、以下の工程を含む金属の被覆方法であって、
(a)洗浄剤を用いた金属表面の洗浄工程;
(b)コーティング混合物を用いた金属表面の被覆工程;及び
(c)該コーティング混合物を金属表面上に熱でアニーリングして架橋被膜を形成する工程;
該コーティング混合物が式TG13−Rで表される組成物、式TG14−Rで表される組成物、又はそれらの組み合わせを含み、
該金属がアルミニウム又はアルミニウム合金であることを特徴とする被覆方法である。
【0018】
【化3】

【0019】
式中、Rは水素又は炭素数1〜6のアルキルである。
【0020】
【化4】

【0021】
式中、Rは水素又は炭素数1〜6のアルキルである。
【本発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本願において、次の用語は指定された意味を有する。
【0023】
「アルキル」は1つの水素原子を取り除き、直鎖飽和炭化水素に由来する一価の基を意味する。炭素数1〜6のアルキルはメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル及びn−へキシルからなる群より選択されるアルキルを意味する。
【0024】
「ナルコ」はナルコカンパニー社(Nalco Company;住所:1601 W. Diehl Road, Naperville, IL 60563,アメリカ合衆国;電話番号:(630)305−1000)を意味する。
【0025】
本発明の第1態様は、式TG13−Rで表されることを特徴とする組成物である。
【0026】
【化5】

【0027】
式中、Rは水素又は炭素数1〜6のアルキルである。
【0028】
TG13−Rは、エポキシシランと脂肪族ジアミンを、モル比において3:1(エポキシシラン:脂肪族ジアミン)で反応して形成される。
【0029】
Rがメチルの時、前記エポキシシランは3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランであり、前記脂肪族ジアミンはC,C,C−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミンである。
Rがエチルの時、前記エポキシシランは3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランであり、前記脂肪族ジアミンはC,C,C−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミンである。
Rがn−プロピルの時、前記エポキシシランは3−グリシドキシプロピルトリプロポキシシランであり、前記脂肪族ジアミンはC,C,C−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミンである。
Rがn−ブチルの時、前記エポキシシランは3−グリシドキシプロピルトリブトキシシランであり、前記脂肪族ジアミンはC,C,C−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミンである。
Rがn−ペンチルの時、前記エポキシシランは3−グリシドキシプロピルトリペントキシシランであり、前記脂肪族ジアミンはC,C,C−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミンである。
Rがn−へキシルの時、前記エポキシシランは3−グリシドキシプロピルトリヘキソキシシランであり、前記脂肪族ジアミンはC,C,C−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミンである。
【0030】
C,C,C−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及び3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランは全て商業的に入手可能である。3−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリペントキシシラン、及び3−グリシドキシプロピルトリヘキソキシシランは、当業者に周知の技術によって合成することができる。
【0031】
前記反応は、同量の適切な溶媒、例えば適切なアルコールにおいて行われることが好ましい。適切なアルコール類にはメチルアルコール及びエチルアルコールが含まれるが、これらに限定されるものではない。より好ましいアルコールはメチルアルコールである。
【0032】
混合物を約21℃の室温で約24時間から48時間反応させる。時間が問題である場合には、約70℃で約3時間反応させてもよい。どちらの合成経路でも、収率は高く、通常は約95%(アミンベースで)である。
【0033】
TG13−R及びTG14−Rは、Rが水素(Hと略記する)である場合にも合成することができる。この合成においては、まず、Rが炭素数1〜6のアルキルであるTG13−R又はTG14−Rを生成し、次にこのTG13−R及びTG14−Rを水中で約2時間から約24時間加水分解する。Rが水素の組成物はシラノールであり、シラノール類は比較的不安定であることが知られている。そのため、もしRが水素の組成物を生成したいのであれば、この組成物は、合成完了後ただちに金属に塗布しなければならない。
【0034】
好ましい式TG13−Rで表される組成物は、Rがメチルのものである。この組成物を式TG13に示す。
【0035】
【化6】

【0036】
本発明の第2態様は、式TG14−Rで表されることを特徴とする組成物である。
【0037】
【化7】

【0038】
式中、Rは水素又は炭素数1〜6のアルキルである。
【0039】
式TG14−Rで表される組成物は、エポキシシランと脂肪族ジアミンをモル比において4:1(エポキシシラン:脂肪族ジアミン)で反応して形成される。このエポキシシランと脂肪族ジアミンはTG13−Rの合成のものと同じである。また、エポキシシランと脂肪族ジアミンのモル比の違い以外は、合成方法も、TG14−Rの合成方法と同様である。
【0040】
好ましい式TG14−Rで表される組成物は、Rがメチルのものである。この組成物を式TG14に示す。
【0041】
【化8】

【0042】
式TG13−Rで表される組成物、式TG14−Rで表される組成物、又はこれらの組み合わせを含むコーティング混合物は、アルミニウム又はアルミニウム合金のコーティングに有効である。
【0043】
本発明の第3態様は、以下の工程を含む金属の被覆方法であって、
(a)任意による洗浄剤を用いた金属表面の洗浄工程;
(b)コーティング混合物を用いた金属表面の被覆工程;及び
(c)該コーティング混合物を金属表面上に熱でアニーリングして架橋被膜を形成する工程;
該コーティング混合物が式TG13−Rで表される組成物、式TG14−Rで表される組成物、又はそれらの組み合わせを含み、
該金属がアルミニウム又はアルミニウム合金であることを特徴とする被覆方法である。
【0044】
【化9】

【0045】
式中、Rは水素又は炭素数1〜6のアルキルである。
【0046】
【化10】

【0047】
式中、Rは水素又は炭素数1〜6のアルキルである。
【0048】
金属は、アルミニウム及びアルミニウム合金からなる群より選択する。市販されているアルミニウム及びアルミニウム合金としては、これらに限定されるものではないが、次のものが挙げられる。シート形成用合金2024、7075、6061〜6111、1100、3003、3015、5086、5052、及び、キャスト形成用合金356。これらのアルミニウム及びアルミニウム合金はACTラボラトリーより入手できる。
【0049】
アルミニウム洗浄分野における公知の技術を用いて、任意で、金属表面を洗浄してもよい。実際には、金属をコーティング混合物で被覆する前に洗浄することが好ましい。
【0050】
式TG13−R、TG14−R又はこれらの組み合わせのいずれかの組成物を水溶性にするためには、化学量論量の適切な酸を用いて中和する必要がある。そのような適切な酸の一つとして酢酸が挙げられる。
【0051】
組成物がいったん水溶性になると、それから作り出されるいずれの被膜においても、揮発性有機化合物(“VOC”)の排出は低くなる。
【0052】
コーティング混合物は、式TG13R、TG14R又はこれらの組み合わせで表される組成物に加え、アルミニウム又はアルミニウム合金の被膜に一般に見られる他の成分を含んでいてもよい。これらの成分としては、殺生物剤、腐食防止剤、顔料、レオロジー調整剤、及び界面活性剤が挙げられる。また、被膜は、金属のコーティング産業において公知のその他の機能性成分を含んでいてもよい。
【0053】
浸漬法、噴霧法、ブラシを用いた塗布、又はその他の被覆方法など公知の被覆方法で、コーティング混合物を塗布して被膜とすることができる。
典型的なコーティング工程においては、金属を
(a)洗い、
(b)すすぎ、
(c)被覆し、そして
(d)熱硬化処理する。
【0054】
アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に、少なくとも約0.1ミクロンから約1.0ミクロンの厚さのコーティングを塗布することが望ましい。このコーティング混合物の非常に有益な特徴としては、既存のコーティング装置に適合するという点が挙げられる。
【0055】
塗布したアルミニウムを約10分から約16時間の間、熱に晒して金属表面のコーティング混合物を熱でアニーリングし、架橋被膜を形成する。アニーリング時間は、アニーリング温度によって、この範囲内で決まる。典型的なアニーリング温度は、約20℃の室温から約120℃の高温である。時間とアニーリング温度の関係は次のようなものである。アニーリング温度が高いほど被膜をアニーリングする時間は短くなり、アニーリング温度が低いほど被膜をアニーリングする時間は長くなる。
【0056】
前記コーティング混合物の他の有益な特徴は、本明細書に記載のコーティング混合物が、効果的なコーティング混合物とするために、いかなる金属クロムをも必要としないということである。
【0057】
前記コーティング混合物の他の有益な特徴としては、Rが炭素数1〜6のアルキルであって水素ではない場合のコーティング混合物の固形分5wt%水溶液が、塗装した金属において腐食防止性にいささかの劣化も無く、少なくとも約3週間、安定した保存性を示すということが挙げられる。
【0058】
本発明の他の有益な特徴としては、組成物TG14を含むコーティング混合物の固形分5wt%水溶液によって、薄く透明な被膜を形成することができ、該被膜が目に見えないため、金属の自然な光沢が損なわれないということが挙げられる。金属の自然な光沢の阻害は、クロムを含有する被膜を用いた場合に見られる。
【0059】
エポキシシランと脂肪族ジアミンのモル比を4:1としたコーティング混合物は、塩水噴霧腐食試験において良い結果を示した。本願のコーティング混合物で作成された被膜は、素地又は塗装した状態のある種類のアルミニウム合金に対し、クロム系化成皮膜と同程度の又はより優れた全体的性能を示す。
【0060】
前述した内容は、以下の実施例を参照することで、より理解されるものと思われる。以下の実施例は例示を目的としており、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0061】
実施例1a
TG13の合成
モル比が3:1の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPS)とC,C,C−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン(TMH)を同じ重量のエチルアルコールに添加する。この混合物を70℃で3時間反応させる。続いて反応生成物を20%過剰な(化学量論に基づいて)酢酸で中和する。
【0062】
実施例 1b
TG13の試験
実施例1aの中和したシラン濃縮物を、5%(重量)シランになるまで水で希釈し、浸漬塗装の方法によってアルミニウムパネルに塗布する。
【0063】
このコーティング混合物で浸漬塗装したパネルをまず120℃のオーブンで約0.5時間熱し、次にシャーウィン ウィリアムズ コーティング カンパニー(Sherwin Williams Coating Company)より調達した約20ミクロンの白色ポリエステル系塗料を塗布する。白く塗ったパネルにASTM B117の条件にて中性塩水噴霧腐食試験を行う。3,000時間の塩水噴霧後、刻み付けた線に沿って塗料の剥離や気泡は見られなかった。
【0064】
TG13を含むコーティング混合物は、アルミニウムを高湿度および腐食状態に置いた場合でも、塗料をアルミニウムによく付着させるという結論に達する。
【0065】
実施例2
実施例2a
TG14の合成
モル比が4:1の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPS)とC,C,C−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン(TMH)を同じ重量のエチルアルコールに添加する。この混合物を70℃で3時間反応させる。続いて反応生成物を20%過剰な(化学量論に基づいて)酢酸で中和する。
【0066】
実施例 2b
TG14の第1試験
実施例2aの中和したシラン濃縮物を、5%(重量)シランになるまで水で希釈し、浸漬塗装の方法によってアルミニウムパネルに塗布する。
【0067】
この被膜したアルミニウムパネルは腐食の兆候を見せることなく360時間以上の塩水噴霧に耐え(ASTM B117で試験した)、従来のクロム系化成皮膜と性能の面では等しいということが分かった。
【0068】
本発明のコーティング混合物を使用して得た結果に比べ、素地のままのAlパネルは6時間で腐食し始めた。その他の市販のシラン系被覆材は、96時間(ビス−[トリメトキシシリル]アミン及びビニルトリアセトキシシラン混合物の場合)、及び、240時間(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びN−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシランの構造の場合)で腐食した。
【0069】
実施例 2c
TG14の第2試験
第2試験においては、実施例2aの中和したシラン濃縮物を、5%(重量)シランになるまで水で希釈し、浸漬塗装の方法によってアルミニウムパネルに塗布する。このTG14コーティング混合物で浸漬塗装したパネルをまず120℃のオーブンで約0.5時間熱し、次にシャーウィン ウィリアムズ コーティング カンパニー(Sherwin Williams Coating Company)より調達した約20ミクロンの白色ポリエステル系塗料を塗布する。白く塗ったパネルにASTM B117の条件にて中性塩水噴霧試験を行う。3,000時間の塩水噴霧後、刻み付けた線に沿って塗料の剥離や気泡は見られなかった。
【0070】
本明細書に記載された現在好ましいとされている態様に対する種々の変更や改良は、当業者にとって明らかである。本発明の精神及び範囲から逸脱せず、付随する利点を損なわなければ、それらの変更及び改良を行うことができる。したがって、それらの変更や改良は添付した特許請求の範囲に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式TG13−Rで表されることを特徴とする組成物。
【化1】

式中、Rは水素又は炭素数1〜6のアルキルである。
【請求項2】
式TG14−Rで表されることを特徴とする組成物。
【化2】

式中、Rは水素又は炭素数1〜6のアルキルである。
【請求項3】
式TG13で表されることを特徴とする組成物。
【化3】

【請求項4】
式TG14で表されることを特徴とする組成物。
【化4】

【請求項5】
以下の工程を含む金属の被覆方法であって、
(a)任意による洗浄剤を用いた金属表面の洗浄工程;
(b)コーティング混合物を用いた金属表面の被覆工程;及び
(c)該コーティング混合物を金属表面上に熱でアニーリングして架橋被膜を形成する工程;
該コーティング混合物が式TG13−Rで表される組成物、式TG14−Rで表される組成物、又はそれらの組み合わせを含み、
該金属がアルミニウム又はアルミニウム合金であることを特徴とする被覆方法。
式TG13−R:
【化5】

式中、Rは水素又は炭素数1〜6のアルキルである。
式TG14−R:
【化6】

式中、Rは水素又は炭素数1〜6のアルキルである。
【請求項6】
前記組成物がTG13−Rであることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物がTG14−Rであることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
Rがメチルであることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
Rがメチルであることを特徴とする、請求項7に記載の方法。

【公表番号】特表2008−505218(P2008−505218A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519326(P2007−519326)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/022691
【国際公開番号】WO2006/004642
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(504233742)ナルコ カンパニー (3)
【氏名又は名称原語表記】NALCO COMPANY
【住所又は居所原語表記】1601 W. Diehl Road, Naperville, IL 60563−1198, United States of America
【Fターム(参考)】