説明

アレイ型センサの校正システム、方法及びプログラム

【課題】脱着可能な複数のセンサを備えるシステムにおいてセンサの配置を変更した場合であっても適切に信号処理の内容を校正することを可能にする。
【解決手段】センサユニット2が備えるセンサ部品、ステレオカメラユニット3が備える装着型ビデオカメラは、いずれも個別に脱着可能な部品として構成されている。また、センサ部品の構成情報を取得する配置情報取得手段31と、取得した構成情報に応じて信号処理の内容を変更する信号処理制御手段32と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレイ型センサの校正システム、方法及びプログラムに関し、特に、マイクロフォンアレイやステレオカメラなど複数のセンシング情報を統合して処理するシステムあるいはこれを搭載するロボットにおける、センサ情報入力部の校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のマイクロフォンを用いて、音の指向性を制御することで音質を向上する技術(ビームフォーム)や、音源の位置や方向を推定する技術がある。マイクロフォンアレイは、所望の音声信号に重畳されている妨害信号を消去する技術の一つである。マイクロフォンアレイでは、まず所望信号(目的信号)の到来信号に感度の高い方向(ビーム)を形成する。同時に、妨害信号の到来信号に応じて感度の低い方向(ヌル)を適応的に形成し、方向に依存するこれらの感度差によって、マイク入力信号に含まれる妨害信号を抑圧する。
【0003】
マイクロフォンアレイについては、例えば特許文献1にその詳細が開示されている。音源検出は、所望の音声発生源から複数のマイクの各々までの距離に応じて異なるマイクへの到達時間差を利用して、三角測量の原理に基づき音声発生源の位置や方向を推定する技術である。
【0004】
複数のマイクロフォンの校正方法としては、複数のマイクロフォン間の感度を均一に調整する方法として、調整対象となる複数のマイクロフォンに感度調整用の同じ校正信号を入力し、マイクロフォンの出力信号を比較することで調整する方法が特許文献2に開示されている。
【0005】
これらの技術では、アレイを構成するマイクの個数および配置は事前に設計することを前提としており、設計情報から得られる位置関係の情報を用いて、音の指向性を制御するための処理や音質を向上するための処理、あるいは音源の位置や方向を推定する処理などの音声信号処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−077731号公報
【特許文献2】特開2007−129373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記のように事前にマイクロフォンの個数および配置などのハードウェア仕様を決定する方式では、製造者しかマイクロフォンアレイ装置を製造することが出来ないため、次のような課題がある。
【0008】
・組み立て型ロボットキットの場合、ロボットの形状は自由に変更できるにも関わらず、複数のマイクロフォンの配置を変更出来ないため、組み立て型ロボットの形状変更の自由度を狭めてしまう。
【0009】
・前記音声信号処理はアレイを構成するマイクロフォンの数を増やすと性能向上につなげることが可能になるが、アレイの構成を変更できないため、これが行えない。
【0010】
上記の2つはいずれもマイクロフォンの配置を柔軟に変更できないことが共通的な課題であり、特に製品出荷後に変更できないことが大きな課題である。
【0011】
・その他にも、ロボットの種類毎に異なるマイクロフォンアレイ部品およびそれに対応するように信号処理アルゴリズムを仕向けた上で提供する必要があり、大量生産に向かず製造原価が高くなってしまうという問題がある。
【0012】
上記は組み立てロボットを想定した場合であるが、この場合以外にも部屋や施設などの環境に複数のマイクロフォンを設置して音声信号処理を行う場合にも同様の問題がある。また、複数のマイクロフォンを用いた音声信号処理と同様に、複数のカメラの配置情報を用いて、撮像された画像内の物体などへの距離情報を算出するなどの処理を行うステレオカメラなどにおいても同様の課題がある。
【0013】
そこで本発明は、上記実情に鑑みて、脱着可能な複数のセンサを備えるシステムにおいてセンサの配置を変更した場合であっても適切に信号処理の内容を校正することを可能にしたアレイ型センサの校正システム、方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明は、下記の特徴を備えるアレイ型センサの校正システム、方法及びプログラムを提供する。
【0015】
本発明に係るアレイ型センサの校正システムは、個別に脱着可能な部品として構成された複数のセンサ部品と、前記センサ部品の構成情報を取得する構成情報取得手段と、取得した構成情報に応じて信号処理の内容を変更する信号処理制御手段と、を有することを特徴とする。
【0016】
本発明に係るアレイ型センサの校正方法は、個別に脱着可能な部品として構成された複数のセンサ部品を有するアレイ型センサの校正方法であって、前記センサ部品の構成情報を取得する構成情報取得工程と、取得した構成情報に応じて信号処理の内容を変更する信号処理制御工程と、を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明に係る校正プログラムは、個別に脱着可能な部品として構成された複数のセンサ部品を有するアレイ型センサシステムを、前記センサ部品の構成情報を取得する構成情報取得手段と、取得した構成情報に応じて信号処理の内容を変更する信号処理制御手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、脱着可能な複数のセンサを備えるシステムにおいてセンサの配置を変更した場合であっても適切に信号処理の内容を校正することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態の構成例を示すシステム図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態のセンサユニットの外観構成図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態の機能ブロック図である。
【図4】センサユニットの1例としてマイクロフォンをセンサとした場合の外観構成図である。
【図5】センサユニットの1例としてビデオカメラをセンサとした場合の外観構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図1を参照すると、本発明の第1の実施の形態は、組み立て型のロボットであって、頭部上ユニット1Aと、頭部下ユニット1Bと、頭部上ユニット1Aと頭部下ユニット1Bとの間に挟み込む形で接続されたセンサユニット2と、頭部上ユニット1Aの球面側の表面に接続されたステレオカメラユニット3と、頭部接続用支柱ユニット4と、首ユニット5と、胴体ユニット6と、胴体ユニット6の右側面に接続された車輪右ユニット7Aと、胴体ユニット6の左側面に接続された車輪左ユニット7Bと、胴体ユニット6の背面に接続されたキャスターユニット8とを含む。
【0022】
図2は本発明の第1の実施の形態のセンサユニットの外観構成図である。図示の構成は、本発明におけるセンサユニット2の代表的な構成例の一つである。図2に示すように、センサユニット2は、センサ装着用台座21と、装着型センサ部品22Aと、装着型センサ部品22Bと、装着型センサ部品22Cとを備えている。センサ装着用台座21は、多数の装着型センサ部品を取り付けるための装着部を備えている。なお、図2では、センサ装着用台座21には3つの装着型センサ部品が台座の最も外側にのみしか取り付けられていないが、4つ以上の装着型センサ部品を取り付けることが可能であるとともに、台座の最も外側部以外の部分にも取り付けることが可能である。
【0023】
図3は、本発明の第1の実施の形態の機能ブロック図であり、センサアレイと、センサアレイの構成に対応するための処理部と、センサアレイを構成する複数センサ情報を統合する信号処理部とを含むブロック図である。
【0024】
配置情報取得手段31は、センサユニット2に装着されたそれぞれの装着型センサ部品の配置に応じて、その座標情報と装着されたセンサの合計数を算出する。センサユニット2のそれぞれのセンサ装着部に、例えばセンサ部品を装着型センサ部品を装着している状態では通電状態になり、装着型センサ部品を装着していない状態では非通電状態になる電気的スイッチを組込んでおき、通電状態の部品の位置に応じて、センサ装着用台座21上で予め定義していた基準点と座標系における座標値に変換する。ここでの基準点と座標位置の定義方法については、任意に定義することが可能であり、例えばセンサ装着用台座が円形の場合は円の中心を原点とする極座標系としてもよいし、センサ装着用台座が長方形の場合は長方形の対角線の交点を原点とするxy座標系としてもよい。
【0025】
信号処理制御手段32は、配置情報取得手段31から装着されたセンサの合計数と、装着された全てのセンサの座標情報を受け取り、センサ信号処理の処理内容を装着されたセンサの合計数と装着された全てのセンサの座標とに応じた所望の処理内容に適合させるための信号処理制御情報を生成する。
【0026】
センサ入力信号取得手段33は、センサユニット2に装着した全てのセンサ部品からの信号を取得する。信号処理コア部34は、センサ入力信号取得手段33の出力である複数センサのディジタル信号と信号処理制御手段32の出力である制御情報に基づき、信号処理内容を変更して、統合された信号処理結果を出力する。
【0027】
統合された信号処理結果は、信号処理コア部34の処理内容が例えば音源位置検出処理であれば音源までの距離と方向を出力することになり、また信号処理コア部34の処理内容が例えばマイクロフォンアレイであれば目的信号を増幅するとともに、妨害信号を抑圧した信号を出力することになる。
【0028】
図4は、センサユニットが図2の、装着型センサ部品22A〜22Cを、装着型マイクロフォン42A〜42Cに置き換えた場合の構成図である。図4に示す構成の場合、信号処理コア部34の処理内容は、音源方向検出信号処理又は目的音声強調処理である(両方の処理でもよい)。
【0029】
図5は、センサユニットが図2の、装着型センサ部品22A〜22Cを、装着型ビデオカメラ52A〜52Bに置き換えた場合の構成図である。図4に示す構成の場合、信号処理コア部34の処理内容は、ステレオ画像処理である。
【0030】
上記実施形態の概略構成及び当該構成が奏する効果について、以下に説明する。
【0031】
上記実施形態では、複数のマイクロフォンやステレオカメラなど複数のセンシング情報を統合して処理するシステムあるいはこのシステムを搭載するロボットにおいて、個々のマイクやカメラをブロックなどの脱着可能な部品として構成している。そして、上記実施形態は、前記部品を組み上げた際に個数や配置情報を取得する構成情報取得手段として機能する配置情報取得手段31と、取得した構成情報に応じて信号処理の内容を変更する信号処理制御手段32と、各部品が出力する信号を取り込むセンサ信号入力手段とを具備する。
【0032】
上述の構成によれば、複数のマイクロフォンやステレオカメラなどのセンサ部品の配置や個数を変更しても、変更後の位置情報や個数を時間差無しに自動的に取得することが可能になる。加えて、取得した情報に対応するように信号処理のパラメータなどを変更する仕組みを予め組み込んでおくことにより、センサ部品の配置や個数の変更に適応する信号処理を実現できるようになる。つまり、上述の構成によれば、脱着可能な部品を任意に組み合わせた場合でも、構成情報を手動で作成することなく配置から自動的に作成できる。
【0033】
したがって、信号処理機能を構成する元の信号を取得する部品の個数や配置を柔軟に変更することが可能になり、組み立てロボットなどのデザインの自由度を確保できるようになる。また、所望の信号処理の性能に応じて部品の個数を追加・削減することや、所望の外観デザインを実現するために部品の配置を変更することが可能になる。また副次的な効果としては、同一の部品を使って、多様な信号処理性能を実現でき、またさまざまな大きさ、形状のアレイセンサシステムが構成できるようになることから、部品の共通化による量産効果により、製造原価を低減化することも期待できる。
【0034】
なお、図3に示した各手段(配置情報取得手段31、信号処理制御手段32、センサ入力信号取得手段33、信号処理コア部34)は、図1に示したようなシステム若しくは組み立てロボットに内蔵させた図示しないマイコン等のハードウェアと、当該ハードウェアを利用するソフトウェアプログラムによって実現することができる。また、そのようなソフトウェアプログラムによっても上述した効果と同等の効果を奏することができる。また、そのようなソフトウェアプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶させて可搬性を高めることができる。
【符号の説明】
【0035】
1A 頭部上ユニット
1B 頭部下ユニット
2 センサユニット
3 ステレオカメラユニット
4 頭部接続用支柱ユニット
5 首ユニット
6 胴体ユニット
7A 車輪右ユニット
7B 車輪左ユニット
8 キャスターユニット
21 センサ装着用台座
22A〜22C 装着型センサ部品
31 配置情報取得手段
32 信号処理制御手段
33 センサ入力信号取得手段
34 信号処理コア部
42A〜42C 装着型マイクロフォン部品
52A、52B 装着型ビデオカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別に脱着可能な部品として構成された複数のセンサ部品と、
前記センサ部品の構成情報を取得する構成情報取得手段と、
取得した構成情報に応じて信号処理の内容を変更する信号処理制御手段と、
を有することを特徴とする、アレイ型センサの校正システム。
【請求項2】
前記センサ部品を2つ以上取り付けることが可能な台座部品を有し、
前記構成情報取得手段は、前記センサ部品の各々が前記台座部品に対してどのように配置されているかという情報に係る配置情報を、前記構成情報として取得することを特徴とする、請求項1記載のアレイ型センサの校正システム。
【請求項3】
前記台座部品は、前記センサ部品を取り付け可能な位置に、前記センサ部品の装着の有無を判断する手段を有し、
前記配置情報は、前記センサ部品の装着の有無を判断する手段による判断に基づいて決定することを特徴とする、請求項2記載のアレイ型センサの校正システム。
【請求項4】
前記配置情報は、予め定義しておく基準点と座標系における、前記複数のセンサ部品の座標値を含むことを特徴とする、請求項2又は3記載のアレイ型センサの校正システム。
【請求項5】
前記センサ部品がマイクであり、前記信号処理制御手段が内容を変更する前記信号処理が音源信号処理であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項記載のアレイ型センサの校正システム。
【請求項6】
前記音源信号処理が音源方向検出信号処理又は目的音声強調処理であることを特徴とする、請求項5記載のアレイ型センサの校正システム。
【請求項7】
前記センサ部品がビデオカメラであり、前記信号処理制御手段が内容を変更する前記信号処理がステレオ画像処理であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項記載のアレイ型センサの校正システム。
【請求項8】
個別に脱着可能な部品として構成された複数のセンサ部品を有するアレイ型センサの校正方法であって、
前記センサ部品の構成情報を取得する構成情報取得工程と、
取得した構成情報に応じて信号処理の内容を変更する信号処理制御工程と、
を含むことを特徴とする、アレイ型センサの校正方法。
【請求項9】
個別に脱着可能な部品として構成された複数のセンサ部品を有するアレイ型センサシステムを、
前記センサ部品の構成情報を取得する構成情報取得手段と、
取得した構成情報に応じて信号処理の内容を変更する信号処理制御手段として機能させることを特徴とする、校正プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−197296(P2010−197296A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44175(P2009−44175)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】