説明

アレルギー性疾患改善用ペプチド組成物及びアレルギー性疾患改善用ペプチド組成物含有食品

【課題】アレルギー性疾患、殊にアトピー性皮膚炎に対するペプチド組成物投与の影響について検討し、アレルギー性疾患の症状を改善するペプチド組成物及びアレルギー性疾患の症状を改善するペプチド組成物含有食品を提供する。
【解決手段】少なくとも、Gly-Ala-Gly-R(式中、RはAla-Gly-Ala-Gly-Ser、Ala-Gly-Ser、Tyr、Ala-Gly-Tyr、Ala-Gly-Ala、Ala、Val又はAla-Gly-Valを意味する。)からなる群から選択される1種以上のペプチドを含むことを特徴とするアレルギー性疾患改善用ペプチド組成物により解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルギー疾患改善用ペプチド組成物及びアレルギー性疾患改善用ペプチド組成物含有食品に関し、特に、特定のアミノ酸配列を含むペプチドを有効成分として含有するアレルギー性皮膚炎改善用のペプチド組成物及び該ペプチド組成物含有食品に関する。
【背景技術】
【0002】
アレルギー性皮膚炎、殊にアトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰返す、註痒のある湿疹を主病変とするアレルギー疾患であり、その患者数は、世界的に増加傾向にある。この疾患は完治が困難であるため、発症が抑えられた状態を維持することを目的として、アレルギー反応を低減させる食品や薬剤組成物の開発が盛んに行われている。
【0003】
現在、アトピー性皮膚炎の薬剤療法としては、ステロイドを用いた外用療法が中心である。しかしながら、ステロイドは長期間にわたって投与しなければ効果が発揮できない。また、外用した部位に生じる局所性の副作用と、吸収されて血中に入り、他臓器に影響を及ぼして生じる全身性の副作用があることが知られている。
【0004】
一方、絹ペプチドの生理活性作用が近年注目されてきている。絹ペプチドは、家蚕又は天蚕由来の絹タンパク質を酵素分解して得られるポリペプチドであり、飲食品、化粧料又は医薬品への応用が期待されている(例えば、特許文献1など)。
【特許文献1】特開平11−139986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
絹ペプチドの生理活性に関する研究は近年始まったばかりであり、明らかにされていない部分も多い。また、アレルギー性疾患に対する絹ペプチドの作用効果はこれまで報告されていない。
【0006】
そこで、本発明は、アレルギー性疾患、殊にアトピー性皮膚炎に対するペプチド組成物投与の影響について検討し、アレルギー性疾患の症状を改善するペプチド組成物及びアレルギー性疾患の症状を改善するペプチド組成物含有食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、アレルギー反応を低減させる食品素材を探索し、特定のアミノ酸配列を有するペプチドを含むペプチド組成物がアトピー様皮膚炎発症マウスの血中IgE及びその皮膚炎症状(スコア)を低減させるとの知見を得た。本発明は係る知見に基づくものであり、少なくとも、配列番号:1〜8のいずれかに記載されるアミノ酸配列からなる群から選択される1種以上のペプチドを含むことを特徴とするアレルギー性疾患改善用ペプチド組成物を提供するものである。
【0008】
上記発明の好ましい態様は次の通りである。前記ペプチドは、絹タンパク質を加水分解して得られたものであることが好ましい。
【0009】
前記ペプチドは、合成して得られたものであることが好ましい。
【0010】
前記アレルギー性疾患改善用ペプチド組成物は、少なくとも配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:8に記載されるアミノ酸配列からなる群から選択される1種以上のペプチドを含むことが好ましい。
【0011】
前記アレルギー性疾患は、アトピー性皮膚炎、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性気管支炎のいずれかであることが好ましい。
【0012】
前記アレルギー性疾患改善用ペプチド組成物は、更に、パントテン酸、ビタミンB6、αリノレン酸、荏胡麻油からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。
【0013】
また、本発明は、上記のアレルギー性疾患改善用ペプチド組成物を含有してなるアレルギー性疾患改善用ペプチド組成物含有食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るアレルギー性疾患改善用ペプチド組成物及びアレルギー性疾患改善用ペプチド組成物含有食品は、有効成分として特定のペプチドを含有するため、アレルギー性疾患による免疫反応をつかさどるIgE産生を抑制し、アレルギー性疾患の症状の改善を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について説明する。本実施形態のアレルギー性疾患改善用ペプチド組成物において使用されるペプチドは、例えば、セリシンを除去した絹タンパク質をプロテアーゼにより加水分解し、乾燥することにより得ることができる。
【0016】
絹タンパク質は、カイコガ科Bombyciae種(いわゆる家蚕)、ヤママユガ科Saturniidae種(いわゆる天蚕)のいずれの種由来の絹タンパク質を用いることができる。
【0017】
カイコガ科種の具体例としては、クワコBombyx mandarina、カイコBombyx mori、オオクワゴモドキOberthueria falcigera、カギバモドキPseudandraca gracilis、スカシサンPrismosticta hyalinata、テンオビシロカサンErnolatia moorei、イチジクカサンTrilocha varians等を挙げることができる。
【0018】
ヤママユガ種の具体例としては、ヨナグニサンAttacus atlas ryukyuensis、シンジュサン本州以西対馬以外亜種Samia cynthia pryeri、エリサンSamia cynthia ricini、シンジュサン北海道・対馬亜種Samia cynthia walkeri、サクサンAntheraea pernyi、ヤママユ北海道亜種Antheraea yamamai ussuriensis、ヤママユ本州以南屋久島以北亜種Antheraea yamamai yamamai、ヤママユ奄美以南亜種Antheraea yamamai yoshimotoi、クスサン屋久島以北亜種Saturnia japonica japonica、クスサン奄美以南亜種Saturnia japonica ryukyuensis、ヒメヤママユ北海道亜種Saturnia jonasii fallax、ヒメヤママユ本州以南亜種Saturnia jonasii jonasii、ウスタビガ北海道亜種Rhodinia fugax diana、ウスタビガ本州以南亜種Rhodinia fugax fugax、クロウスタビガ本州亜種Rhodinia jankowskii hattoriae、クロウスタビガ北海道亜種Rhodinia jankowskii hokkaidoensis、ハグルマヤママユLoepa sakaei、オオミズアオ本州・四国・九州・対馬亜種Actias artemis aliena、オオミズアオ北海道亜種Actias artemis artemis、オオミズアオ屋久島亜種Actias artemis yakushimaensis、オナガミズアオ本州九州亜種Actias gnoma gnoma、オナガミズアオ北海道亜種Actias gnoma mandschurica、オナガミズアオ伊豆諸島亜種Actias gnoma miyatai、エゾヨツメ北海道亜種Aglia japonica japonica、エゾヨツメ本州以南亜種Aglia japonica microtau等を挙げることができる。
【0019】
プロテアーゼとしては、種々のものを使用することが可能であるが、本実施形態にかかる絹ペプチド組成物が体内に摂取されることを考慮すれば、安全性の観点から植物由来プロテアーゼを用いることが好ましい。植物由来プロテアーゼとしては、例えば、パパイン、フィシン、ブロメライン等のエンドプロテアーゼから選択された1種又は2種以上を用いることができる。本実施形態においては、特定のペプチド配列を効率よく得る観点からは、パパインを用いることが好ましい。
【0020】
本実施形態において、前記ペプチドのアミノ酸配列は、少なくとも、配列番号:1〜8のいずれかに記載されるアミノ酸配列である。この中でも、特に、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:8に記載されるアミノ酸配列からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。
【0021】
なお、上記のアミノ酸配列を含むペプチドとして、市販のものを使用することもできる。市販のものとしては、例えば、韓国FINECO LTD社製Fine-Silk PEPEを用いることができる。
【0022】
上記ペプチドは、タンパク質工学の分野において一般的に採用されているペプチド合成方法を用いて、人工的に合成することもできる。ペプチド合成により得られた上記ペプチドは、不純物を含む余地が少ないため、純度を高める必要がある場合などにおいて好ましい。
【0023】
本実施形態にかかるアレルギー性疾患改善用ペプチド組成物が有効なアレルギー性疾患の具体例としては、アトピー性皮膚炎、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性気管支炎等を挙げることができる。
【0024】
本実施形態にかかるアレルギー性疾患改善用ペプチド組成物は、アレルギー性疾患の症状を改善する効果をより高めるために、天然物由来の種々の添加物を添加することが好ましい。天然物由来の添加物としては、アレルギーの諸症状を抑制する効果を有することが知られている化合物や食品を用いることが好ましい。具体的には、例えば、パントテン酸、ビタミンB6、αリノレン酸、荏胡麻油等を挙げることができ、これらは1種又は2種以上用いることができる。
【0025】
本実施形態にかかるアレルギー性疾患改善用ペプチド組成物を治療目的で使用するためには、前述のペプチドを有効成分とし、経口または非経口的に投与される。投与量は症状、年齢、性別、体重、投与形態等により異なるが、例えば成人に経口的に投与する場合には、通常1日量は0.01−500gであることが好ましく、0.1−300gであることがより好ましく、1−100gであることが更に好ましい。
【0026】
本実施形態にかかるアレルギー性疾患改善用ペプチド組成物を製剤化するための剤型に制限はなく、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等の固形剤、溶液、懸濁液、乳剤などの液状製剤を経口的に使用することができる。また、静脈内、筋肉内、皮下などの注射剤、坐剤、貼付剤などを非経口的に使用することもできる。
【0027】
固形剤となす場合には澱粉、乳糖、グルコース、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、カルボキシメチルセルロースなどの賦形剤を用いることができ、必要であれば滑沢剤、崩壊剤、被覆剤、着色剤なども使用することができる。注射剤、及び液状製剤になす場合には安定化剤、溶液助剤、懸濁化剤、乳化剤、緩衝剤、保存剤などを含有させることができる。
【0028】
上述のアレルギー性疾患改善用ペプチド組成物は、食品中に添加してアレルギー性疾患改善用ペプチド組成物含有食品として摂取することができる。ここで、「食品」とは、その形態を問わず広く人又は動物が日常的に食物として摂取する物をいう。
【0029】
上述のアレルギー性疾患改善用ペプチド組成物は、高温又は低温並びに酸又はアルカリに対して安定性があるため、食品の加工前に添加しても、加工後に添加してもよい。上述の絹ペプチド組成物は水溶性であるため、液体に溶解して飲料として摂取することも可能である。
【0030】
アレルギー性疾患改善用ペプチド組成物の添加量は、上述したように、症状、年齢、性別、体重、投与形態等により適宜決定することができる。
【0031】
[試験例1]
アトピー性疾患モデルマウスに対し、アレルギー性疾患改善用ペプチド組成物(以下、「絹ペプチド組成物」と称する)のアトピー様皮膚炎抑制効果の評価を以下の要領で行った。
【0032】
1.被験物質および対照物質の調製
基本飼料として、オリエンタル酵母社製CR-LPFを用いた。これに、絹ペプチド組成物として、韓国FINECO LTD社製Fine-Silk PEPE(パパインによる絹タンパク質の加水分解物)を5%添加混合したものを被験物質とした。なお、対照物質として、絹ペプチド組成物に替えてオリエンタル酵母社製精製カゼインを用いたものを調製した。
【0033】
2.使用動物および飼育条件
動物は5週令NC/NgaTndCrjマウスを日本チャールズ・リバー株式会社から購入した。入手後、訓化のため、1週間の飼育を行い、一般状態に異常を認めない動物を試験に供した。飼育環境としては温度:20〜26℃、湿度:40〜70%、照明時間:明暗各12時間に設定した動物飼育室で動物を飼育した。
【0034】
飼料には前述の被験物質及び対照物質を使用し、自由に摂取させた。飲料水は上水道を自由に与えた。動物の取り扱いは大阪府立大学動物実験規定に基づいて行った。
【0035】
3.群構成および投与期間
群構成は、感作および誘発を行わず被験物質および対照物質を摂取しない群(非投与非処理群)、試験物質を摂取する群(絹摂取非処理群)、対照物質を摂取する群(カゼイン摂取非処理群)、並びに感作および誘発を行い被験物質および対照物質を摂取しない群(非投与処理群)、試験物質を摂取する群(絹摂取処理群)、対照物質を摂取する群(カゼイン摂取処理群)の計6群を設定した。投与期間は、感作後1週間を経過した時点から、解剖検査までとした。
【0036】
4.試験方法及び結果
1)感作および誘発
感作は7週令に達した動物に1回実施した。すなわち、エーテル麻酔した動物腹部の毛刈りをバリカンで行い、毛刈りした腹部および後肢の両側に、5重量% 2,4,6−トリニトロクロロベンゼン(Lot. No. V4H2690、ナカライテスク社製。以下「ピクリルクロリド」と称する)溶液(エタノール:アセトン=4:1)を塗布した。
【0037】
誘発は、感作翌週から開始し、7日間隔で合計8回繰り返した。すなわち、エーテル麻酔したマウス背部の毛刈りを行い、毛刈りした背部および左右の耳(両側)に、食用オリーブオイルに溶解した誘発用1%ピクリルクロリド溶液を塗布した。なお、ピクリルクロリド溶液の塗布は遮光条件で行った。
【0038】
ピクリルクロリド処理3回目以降、背部にアトピー様皮膚炎を認めた。また、ピクリルクロリドによる誘発を行わなかった群では背部に皮膚炎様の症状を認めなかった。
【0039】
2)一般状態観察
一般状態観察は、感作日から解剖まで1日1回行った。絹ペプチド組成物の摂取による剖検時体重への影響を表1に示す。5重量%絹ペプチドを含む飼料を摂取した動物の剖検時体重(g)は、5重量%カゼインを含む群と有意な差が見られず、動物の生育に及ぼす影響はないと思われた。
【0040】
【表1】

【0041】
3)皮膚所見(皮膚炎の状態)
皮膚炎所見は、剖検時に皮膚の状態を観察して、ヒトの臨床症状の評価基準(Leung, D.Y.M. et al., J. Allergy Clin. Immunol., 85:927, 1990.)に基づき、a)掻痒、b)発赤・出血、c)浮腫、d)擦創・糜爛、e)瘡皮形成・乾燥の5項目について、無症状、軽度、中等度、高度の4段階に分類し、それぞれを0〜3とし、その合計を重篤度の指標とした。また、5名の判定員の評価を平均化した。
【0042】
結果を図1に示す。絹ペプチド組成物摂取によって、ピクリルクロリドによって誘発された皮膚炎は、外見上、発赤や出血の抑制が見られた。また、絹ペプチド組成物摂取群において、皮膚症状スコアの低減が認められた。特に発赤・出血が抑制される傾向にあった。
【0043】
4)免疫グロブリン測定および病理組織学的検査
4-1)絹ペプチド組成物の摂取が血中IgEに及ぼす影響
エーテル麻酔下で動物の腹大動脈から採血を行い、遠心分離(4℃、3,000rpm、15分)した後、血漿を分取し、免疫グロブリンE(IgE)を市販の測定キット(マウスIgE測定キット「ヤマサ」EIA 生化学工業)を用いて測定した。
【0044】
血中IgE量を測定した結果を図2に示す。絹ペプチド組成物を摂取するとピクリルクロリドの誘発の有無に関わらずIgE量は低かった。特にピクリルクロリドの誘発処理群間において、絹ペプチド組成物摂取群はIgE量が有意に低かった。血中IgE含量が絹ペプチド組成物摂取群において、有意に低下していたことから、発赤・出血の抑制は、動物が痒みを比較的軽度なものと感じたことに起因する可能性がある。
【0045】
4-2)病理組織学的検査
エーテル麻酔下で動物の腹大動脈から採血を行い、採血後に頸背部及び外耳の皮膚を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定した。固定した頸背部及び外耳の皮膚は、定法に従ってHE染色とTB染色標本を作製して病理組織学的検査を行った。
【0046】
ピクリルクロリド処理によって、明らかな肥厚が観察され、様々な細胞の浸潤が確認できた。それぞれの切片を病理的指標から数値化し、無症状、軽度、中等度、高度の4段階に分類し、それぞれを0〜3とし評価した。
【0047】
結果を図3に示す。その結果、ピクリルクロリドによって誘発された皮膚炎症状に差異は認められなかった。病理学的評価に変化が見られないのは、化学物質によって誘発された皮膚炎症状が同一であることを意味し、絹ペプチド組成物の摂取による抑制とは関係性がないことによると思われる。
【0048】
[試験例2]絹ペプチドの添加量の検討
1.被験物質および対照物質の調製
基本飼料として、オリエンタル酵母社製CR-LPFを用いた。これに、絹ペプチド組成物として、韓国FINECO LTD社製Fine-Silk PEPE(絹タンパク質のパパインによる加水分解物)を下記表2に示す配合量で添加混合したものを被験物質とした。なお、対照物質として、絹ペプチド組成物に替えてオリエンタル酵母社製精製カゼインを用いたものを調製した。
【0049】
【表2】

【0050】
「使用動物および飼育条件」及び「群構成および投与期間」並びに「感作および誘発」については、試験例1と同様に行った。
【0051】
2.試験方法及び結果
1)一般状態観察
一般状態観察は、感作日から解剖まで1日1回行った。絹ペプチド組成物摂取による剖検時体重への影響を図4に示す。
【0052】
2)免疫グロブリン測定および病理組織学的検査
2-1)絹ペプチド摂取が血中IgEに及ぼす影響
エーテル麻酔下で動物の腹大動脈から採血を行い、遠心分離(4℃、3,000rpm、15分)した後、血漿を分取し、免疫グロブリンE(IgE)を市販の測定キット(マウスIgE測定キット「ヤマサ」EIA 生化学工業)を用いて測定した。血中IgE量を測定した結果を図5に示す。
【0053】
[試験例3]絹ペプチド水のアトピー性疾患モデルマウスのアトピー様皮膚炎抑制効果
1.被験物質および対照物質の調製
水道水に絹ペプチド組成物(韓国FINECO LTD社製Fine-Silk PEPE、パパインによる絹タンパク質の加水分解物)を0.1重量%添加したもの(以下「絹ペプチド水」という)を被験試料として、マウスに被験試料を自由摂取させ、血中IgE量に与える影響および病理組織学的検査を行った。対照として、絹ペプチド組成物を添加しない水を自由摂取させた。なお、「使用動物および飼育条件」及び「群構成および投与期間」並びに「感作および誘発」については、試験例1と同様に行った。
【0054】
2.試験方法及び結果
1)一般状態観察
一般状態観察は、感作日から解剖まで10日毎に行った。絹ペプチド水摂取による剖検時体重への影響を図6に示す。
【0055】
2)免疫グロブリン測定(絹ペプチド摂取が血中IgEに及ぼす影響)
エーテル麻酔下で動物の腹大動脈から採血を行い、遠心分離(4℃、3,000rpm、15分)した後、血漿を分取し、免疫グロブリンE(IgE)を市販の測定キット(マウスIgE測定キット「ヤマサ」EIA 生化学工業)を用いて測定した。
【0056】
血中IgE量を測定した結果を図7及び図8に示す。なお、図7における「1回目採血」とは、試験開始から4週目に採血したことを意味し、図8における「2回目採血」とは、試験開始から8週目に採血したことを意味する。図7及び図8に示すように、ピクリルクロリド処理群では、絹ペプチド水を摂取した場合と対照との間で明らかに血中IgE濃度に有意差が認められ、絹ペプチド水を摂取した場合に顕著に血中IgE濃度の低下が認められた。一方、ピクリルクロリド非処理群では、対照と絹ペプチド水との間で血中IgE濃度に有意差は認められなかった。
【0057】
[試験例4]
和歌山市内の某病院にアトピー性皮膚炎の治療で通院しているボランティア被験者20名(成人男性10名、成人女性10名)の協力を得て、以下の要領で本発明に係るペプチド組成物のアレルギー性皮膚炎に対する効果を検討した。
【0058】
絹ペプチド組成物としては、韓国FINECO LTD社製Fine-Silk PEPE(パパインによる絹タンパク質の加水分解物)を用い、これをカプセル(0.2g/カプセル)に詰めたもの(表3中、「絹ペプチド組成物A」と表記する)と、これに更にパントテン酸36mgを添加したもの(表3中、「絹ペプチド組成物B」と表記する)を調製した。
【0059】
摂取方法は、5週間、毎日、該カプセル5粒(絹ペプチド組成物1gに相当)を摂取することにより行った。なお、摂取時間や1回の摂取量は自由とした。
【0060】
5週間経過後、各被験者におけるアトピー性皮膚炎の改善状況を、「著効」、「有効」、「やや有効」、「無効」に分けて評価した。結果を表3に示す。
【0061】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】絹ペプチド組成物の摂取が皮膚症状に及ぼす影響を検討した結果を示す図である。
【図2】絹ペプチド組成物の摂取が血中IgEに及ぼす影響を検討した結果を示す図である。
【図3】絹ペプチド組成物の摂取が皮膚組織に及ぼす影響を検討した結果を示す図である。
【図4】絹ペプチド組成物の濃度の相違が皮膚症状に及ぼす影響を検討した結果を示す図である。
【図5】絹ペプチド組成物の濃度の相違が血中IgEに及ぼす影響を検討した結果を示す図である。
【図6】絹ペプチド水が体重に及ぼす影響を検討した結果を示す図である。
【図7】絹ペプチド水が血中IgE濃度に及ぼす影響を検討した結果を示す図である。
【図8】絹ペプチド水が血中IgE濃度に及ぼす影響を検討した結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、配列番号:1〜8のいずれかに記載されるアミノ酸配列からなる群から選択される1種以上のペプチドを含むことを特徴とするアレルギー性疾患改善用ペプチド組成物。
【請求項2】
前記ペプチドは、絹タンパク質を加水分解して得られたものである請求項1に記載のアレルギー性疾患改善用ペプチド組成物。
【請求項3】
前記ペプチドは、合成して得られたものである請求項1に記載のアレルギー性疾患改善用ペプチド組成物。
【請求項4】
前記アレルギー性疾患改善用ペプチド組成物が、少なくとも配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:8に記載されるアミノ酸配列からなる群から選択される1種以上のペプチドを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のアレルギー性疾患改善用ペプチド組成物。
【請求項5】
前記アレルギー性疾患が、アトピー性皮膚炎、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性気管支炎のいずれかである請求項1〜4のいずれか1項に記載のアレルギー性疾患改善用ペプチド組成物。
【請求項6】
前記アレルギー性疾患改善用ペプチド組成物が、更に、パントテン酸、ビタミンB6、αリノレン酸、荏胡麻油からなる群から選択される1種以上を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のアレルギー性疾患改善用ペプチド組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のアレルギー性疾患改善用ペプチド組成物を含有してなるアレルギー性疾患改善用ペプチド組成物含有食品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−191448(P2007−191448A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−13122(P2006−13122)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(591112142)株式会社東農園 (8)
【出願人】(506024238)ファインコ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】