説明

アンテナ共用器及び通信システム

【課題】状況に応じてフィルタを通す経路と通さない経路を選択して通信性能の低下を抑える技術を提供する。
【解決手段】異なる周波数帯の無線波である第一無線波及び第二無線波を送信又は受信可能なアンテナと前記第一無線波又は第二無線波を用いる複数の通信機との間に介設され、前記第一無線波を通過させ、前記第二無線波を通過させないフィルタと、前記アンテナから通信機に送られる前記無線波の経路或いは通信機からアンテナに送られる前記無線波の経路を前記フィルタが介在する経路或いは前記フィルタが介在しない経路に切り替える切換部とを備えたアンテナ共用器が、位置情報或いは無線波の受信状況を検出し、検出した前記位置情報或いは無線波の受信状況に応じて前記切換部による経路の切り替えを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ共用器及びこれを用いた通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両には、携帯電話網を用いた通信モジュールや、ITS(Intelligent Transport Systems)用の車載機、地上波デジタル用のTV(television)といった種々の通信機が
搭載されるようになってきている。これに伴い種々の通信機用のアンテナがそれぞれ車両に装着される。
【0003】
また、先行技術としては、以下の文献が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−282582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アンテナを車両に装着する場合、電波を効率良く送受信できることや、カーキャリアや開閉部とのコンフリクトが生じないこと、駐車時等に他の構造物と容易に接触して破損しないことなどの条件を考慮すると、車両上部の後端など、ある程度装着位置が限られてしまい、あまり多くのアンテナを設置するのは困難である。また、乱雑に沢山のアンテナを装着したのでは、美観を損ねることになる。
【0006】
このため、複数の通信機でアンテナを共用して、装着するアンテナを少なくすることが考えられる。
【0007】
しかし、複数の通信機でアンテナを共有した場合、電波の干渉による悪影響が生じることがある。例えば、ITSでは、715M〜725MHzの10MHz幅の電波を用い、地上波デジタル
では13〜52ch(周波数470〜710MHz)の電波を用いており、710M〜715MHzのガードバンド
を挟んでいるもののITSと地上波デジタル放送の使用帯域が隣接している。このため、ITSの電波を受信する際に、地上波デジタル放送の電波が影響を与える場合や、ITSの電波を出力する際に地上波デジタルTVに影響を与えることがある。
【0008】
このように周波数が近接する電波の影響を抑える手法としては、周波数フィルタで所望波のみを通過させることが考えられる。例えば、図6のようにITS用無線機101と地上波デジタルTV102とでアンテナ103を共用している場合、アンテナ103とITS用無線機101の間にハイパスフィルタ104を挿入し、ITSの電波(710MHzより高
い周波数)を通し、710MHz以下の電波を減衰させることで、ITSの電波を送受信する際
、地上波デジタル放送の電波との干渉を抑えることができる。
【0009】
しかしながら、ハイパスフィルタ104を挿入することで、所望周波数であるITSの電波についても挿入損出が生じ、NF劣化を招くことがある。
【0010】
特に、地上波デジタルの放送波のうち、ITSとの干渉が懸念されるのは、最も高い周波数帯(周波数704M〜710MHz)を利用する52chであるので、52chの放送を行っている地域を車両が走行している場合には、干渉を防ぐためにフィルタリングが必要であるが、52chの放送を行っていない地域を車両が走行している場合には、フィルタリングが不要であり
、ハイパスフィルタ104の挿入損失によって無駄にITSの電波の受信感度の低下や送信出力の低下を招くことになる。
【0011】
そこで、本発明では、状況に応じてフィルタを通す経路と通さない経路を選択して通信性能の低下を抑える技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する一実施形態としてのアンテナ共用器は、
異なる周波数帯の無線波である第一無線波及び第二無線波を送信又は受信可能なアンテナと前記第一無線波又は第二無線波を用いる複数の通信機との間に介設されるアンテナ共用器であって、
前記第一無線波を通過させ、前記第二無線波を通過させないフィルタと、
前記アンテナから通信機に送られる前記無線波の経路或いは通信機からアンテナに送られる前記無線波の経路を前記フィルタが介在する経路或いは前記フィルタが介在しない経路に切り替える切換部と、
位置情報或いは無線波の受信状況に応じて前記切換部による経路の切り替えを制御する制御部と、を備えた。
【0013】
上記課題を解決する開示の一実施形態としての通信システムは、
異なる周波数帯の無線波である第一無線波及び第二無線波を送信又は受信可能なアンテナと、
前記第一無線波を用いる通信機と、
前記第二無線波を用いる通信機と、
前記第一無線波又は第二無線波を用いる複数の通信機と前記アンテナとの間に介設されるアンテナ共用器とを備え、
前記アンテナ共用器が、
前記第一無線波を通過させ、前記第二無線波を通過させないフィルタと、
前記アンテナから通信機に送られる前記無線波の経路或いは通信機からアンテナに送られる前記無線波の経路を前記フィルタが介在する経路或いは前記フィルタが介在しない経路に切り替える切換部と、
位置情報或いは無線波の受信状況に応じて前記切換部による経路の切り替えを制御する制御部と、を備えた。
【0014】
上記課題を解決する開示の一実施形態としての通信方法は、
異なる周波数帯の無線波である第一無線波及び第二無線波を送信又は受信可能なアンテナと前記第一無線波又は第二無線波を用いる複数の通信機との間に介設され、
前記第一無線波を通過させ、前記第二無線波を通過させないフィルタと、
前記アンテナから通信機に送られる前記無線波の経路或いは通信機からアンテナに送られる前記無線波の経路を前記フィルタが介在する経路或いは前記フィルタが介在しない経路に切り替える切換部とを備えたアンテナ共用器が、
位置情報或いは無線波の受信状況を検出し、
検出した前記位置情報或いは無線波の受信状況に応じて前記切換部による経路の切り替えを制御する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、状況に応じてフィルタを通す経路と通さない経路を選択して通信性能の低下を抑える技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】通信システムの利用環境を説明する図
【図2】通信システムの概略構成図
【図3】通信方法の説明図
【図4】切換テーブルの一例を示す図
【図5】通信システムの変形例を示す図
【図6】従来例の説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。以下の実施の形態の構成は例示であり、本発明は実施の形態の構成に限定されない。
【0018】
<システムの概略構成>
図1は本実施形態の通信システムの利用環境を説明する図、図2は本実施形態の通信システムの概略構成図である。本実施形態の通信システム10は、ITS用の通信を行うITS装置2や地上波デジタル放送を受信するチューナ3、ナビゲーション装置40マルチメディアシステム4を備え、車両60に搭載されている。
【0019】
ITS装置2は、周波数715M〜725MHzの電波(無線波)を用いて、他車との車車間通信や、路側機61との路車間通信を行う。地上波デジタル放送(以下地デジとも称す)のチューナ3は、周波数470〜710MHzの電波を放送局62から受信してテレビ番組を表示する。
【0020】
本実施形態において、アンテナ5は、図2に示すように、ITS装置2と地デジ用チューナ3といった複数の通信機で共用しており、周波数470〜725Mzの電波が送受信可能となっている。このためアンテナ5が、ITS装置2やチューナ3にとって、所望周波数以外の電波も送受信することになり、この電波の干渉により悪影響が生じることがある。
【0021】
例えば、ITS装置2が所望周波数715M〜725MHzの信号を送信する際、出力回路で715MHz未満のノイズ成分が出力されることがあり、このノイズ成分が地デジの電波と干渉し、近隣の家屋63等における地デジの受信に悪影響を与えることがある。
【0022】
また、放送局62から地上デジの電波(52ch: 704M〜710MHz)を送信する際、710MHz以上のノイズ成分が出力されることがあり、このノイズ成分がITSの電波と干渉し、受信機2における受信に悪影響を与える。
【0023】
このため、アンテナ5とITS装置2,チューナ3との間に介設されたアンテナ共用器1は、ノイズを除去するフィルタ11を有してする。
【0024】
本実施形態のフィルタ11は、ITS装置2の所望周波数の電波(第一無線波)を通し、それ未満の周波数の電波(第二無線波)を通さない、所謂ハイパスフィルタである。
【0025】
また、アンテナ共用器1は、切換部12と、切換制御部13を備えている。
【0026】
切換部12は、アンテナ5からITS装置2,チューナ3或いはITS装置2,チューナ3からアンテナ5に送られる電波の経路をフィルタ11が介在する経路A或いは前記フィルタ11が介在しない経路Bに切り換えるスイッチSW1,SW2や、アンテナ5とITS装置2を接続するか又はアンテナ5とチューナ3を接続するかを切り換えるスイッチSW3を備えている。
【0027】
本実施形態では、スイッチSW1〜SW3としてPINダイオードスイッチを用いているが、これに限らず、FETスイッチやMEMSスイッチなど、無線波の経路を切り換えられるスイッチであれば良い。
【0028】
切換制御部13は、位置情報或いは無線波の受信状況に応じて切換部12による経路の切り替えを制御する。例えば切換制御部13は、経路Aを選択する場合、スイッチSW1の端子1sと端子1a間のPINダイオードに順方向バイアスを印加してON状態とし、端子1sと端子1b間に逆方向バイアスを印加してOFF状態とする。また、切換制御部13は、経路Aを選択する場合、スイッチSW2の端子2sと端子2a間のPINダイオードに順方向バイアスを印加してON状態とし、端子2sと端子2b間に逆方向バイアスを印加してOFF状態とする。
【0029】
一方、切換制御部13は、経路Bを選択する場合、スイッチSW1の端子1sと端子1b間のPINダイオードに順方向バイアスを印加してON状態とし、端子1sと端子1a間に逆方向バイアスを印加してOFF状態とする。また、切換制御部13は、経路Bを選択する場合、スイッチSW2の端子2sと端子2b間のPINダイオードに順方向バイアスを印加してON状態とし、端子2sと端子2a間に逆方向バイアスを印加してOFF状態とする。
【0030】
更に、切換制御部13は、アンテナ5とITS装置2を接続する場合、スイッチSW3の端子3sと端子3c間のPINダイオードに順方向バイアスを印加してON状態とし、端子3sと端子3d間に逆方向バイアスを印加してOFF状態とする。また、切換制御部13は、アンテナ5とチューナ3を接続する場合、スイッチSW3の端子3sと端子3d間のPINダイオードに順方向バイアスを印加してON状態とし、端子3sと端子3c間に逆方向バイアスを印加してOFF状態とする。
【0031】
ITS装置2は、RF信号とIF信号を変換するRF/IF部21、アナログ信号とデジタル信号を変換するA/D変換部22、送信する信号の変調及び受信した信号の復調を行うモデム23を備えている。また、モデム23は、通信部2とマルチメディアシステム4との間でシリアル通信を行うために、パラレル信号とシリアル信号を変換する機能も有している。
【0032】
チューナ3は、受信したRF信号をIF信号に変換するRF/IF部31、受信したアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部32、送受信した信号の復調を行う復調部33を備えている。また、復調部33は、チューナ3からマルチメディアシステム4への間でシリアル通信を行うために、パラレル信号をシリアル信号に変換する機能も有している。
【0033】
マルチメディアシステム4は、ナビゲーション装置40や、制御部41、表示装置42、スピーカ43、操作部44を備えている。
【0034】
ナビゲーション装置40は、複数のGPS衛星からの信号や車速パルス、ジャイロを利用することで自車位置(緯度・経度)を求め、表示装置42上に現在位置や目的地への走行経路を表示させる。
【0035】
表示装置42は、ITS装置2によって受信したITSの情報や、チューナ3によって受信した地デジ放送、ナビゲーション装置40による案内画像などの表示を行う。
【0036】
スピーカ43は、ITS装置2によって受信したITSの情報の音出力や、チューナ3によって受信した地デジ放送の音声出力、ナビゲーション装置40による音声案内の出力といった音の出力を行う。
【0037】
操作部44は、運転者(ユーザ)の操作に応じ、操作情報を制御部41へ入力する操作
ボタン、タッチパネル、マイクなどの入力デバイスである。例えば操作部44は、ITS装置2、チューナ3、ナビゲーション装置40の何れかを選択するボタンを押すなど、運転者が選択操作を行った場合に、この選択結果を示す選択信号を制御部41へ入力する。
【0038】
制御部41は、ITS装置2、チューナ3、ナビゲーション装置40などのマルチメディアの画像信号に基づいて表示装置42に表示させる表示制御や、該メディアからの音信号に基づきスピーカから音を出力させる音声制御、操作部44から入力された選択信号に基づき、選択されたメディアを起動させる或いは終了させる起動制御、選択信号に基づいてアンテナ共用器1に切換部12の切り替えを行わせる切換制御などの制御を行う。なお、制御部41は、位置情報或いは無線波の受信状況に応じて第一無線波及び第二無線波の干渉の可能性を判定し、干渉の可能性があれば第一無線波をフィルタ11を介して送受信し、干渉の可能性がなければフィルタ11を介さずに第一無線波を送受信するように前記切換部による経路の切り替えを制御する。
【0039】
本システムの構成要素のうち、切換部12と、切換制御部13、RF/IF部21、A/D変換部22、モデム23、RF/IF部31、A/D変換部32、復調部33などの信号を処理する要素は、基本的な回路を組み合わせて各々の機能を実現したハードウェアである。
【0040】
これら情報を処理する要素であるハードウェアは、例えば、FPGA[Field Programmable Gate Array]、ASIC[Application Specific Integrated Circuit]、LSI[Large Scale Integration]といった基本的な回路を備えても良い。また、当該ハードウ
ェアは、IC[Integrated Circuit]、ゲートアレイ、論理回路、信号処理回路、アナログ回路といった基本的な回路を備えても良い。
【0041】
論理回路としては、例えば、AND回路、OR回路、NOT回路、NAND回路、NOR回路、フリップフロップ回路、カウンタ回路がある。信号処理回路には、信号値に対し、例えば、加算、乗算、除算、反転、積和演算、微分、積分を実行する回路が、含まれていてもよい。アナログ回路には、例えば、信号値に対して、増幅、加算、乗算、微分、積分を実行する回路が、含まれていてもよい。
【0042】
なお、これら信号を処理する要素の一部或いは全部は、汎用のプロセッサがソフトウェアとしての切換プログラムを実行することによって、上記各機能を実現するものであっても良い。
【0043】
〈通信方法〉
図3は、上記構成の通信システム10において、RF信号の経路を切り替えて通信する方法の説明図である。
【0044】
まず、運転者の選択操作によって操作部44から選択信号が制御部41に入力され(S1)、制御部41が選択信号に基づきITSのITS装置2が選択されたと判定した場合(S2)、制御部41は、ITS装置2の電源をONしてITS装置2を起動させる(S3)。
【0045】
また、制御部41は、位置情報或いは無線波の受信状況に応じて干渉の可能性を判定する(S4)。例えば、アンテナ共用器1の経路Bを介してチューナ3で地デジ放送の52ch(周波数704M〜710MHz)の無線波を受信し、この52chの無線波の強度(RF信号)が所定値以上であれば、制御部41は干渉の可能性有りと判定し(S4,Yes)、この干渉の可能性が有ることとITS装置2が選択されたことを示す信号を切換制御部13に通知する。
【0046】
切換通知部13は、図4に示すように、通信機(ITS装置2、チューナ3)の何れが選択されたかや、干渉の可能性の有無と、各スイッチSW1〜SW3の状態との対応関係を定めたテーブルを有し、当該テーブルに従い、制御部41からの通知に応じた切り換えを行う。例えば、制御部41は、ITS装置2が選択され、干渉の可能性が有る場合、これに応じた切り換えを行うモード(モード1)を切換制御部13に通知し(S5)、切換制御部13がモード1に応じた切り換えを行う(S6)。
【0047】
即ち切換制御部13は、スイッチSW1の端子1s−1a間をON、端子1s−1b間をOFF、そしてスイッチSW2の端子2s−2a間をON、端子2s−2b間をOFF状態とし、無線波の経路を経路Aとする。そして、切換制御部13は、スイッチSW3の端子3s−3c間をON、端子3s−3d間をOFF状態とすることで、フィルタ11を介してITS装置2とアンテナ5とを接続させる。
【0048】
一方、アンテナ共用器1の経路Bを介してチューナ3で受信した52chの無線波(RF信号)の強度が所定値未満或いは52chの無線波が受信できない場合、制御部41は干渉の可能性無しと判定し(S4,No)、この干渉の可能性が無いこととITS装置2が選択されたことを示す信号(モード2)を切換制御部13に通知する(S7)。切換制御部13は、図4のテーブルに従い、モード2に応じた切り換えを行う(S8)。即ち、切換制御部13は、スイッチSW1の端子1s−1b間をON、端子1s−1a間をOFF状態、スイッチSW2の端子2s−2b間をON、端子2s−2a間をOFF状態とし、無線波の経路を経路Bとする。そして、切換制御部13は、スイッチSW3の端子3s−3c間をON、端子3s−3d間をOFF状態とすることで、フィルタ11を介さずにITS装置2とアンテナ5とを接続させる。
【0049】
また、ステップ2において、操作部44によって入力された選択信号が、地デジのチューナ3を選択する信号であると制御部41が判定した場合、制御部41は、チューナ3を起動し(S9)、切換制御部13にモード3を通知する(S10)。切換制御部13は、図4のテーブルに従い、モード3に応じた切り換えを行う(S11)。即ち、切換制御部13は、スイッチSW1の端子1s−1b間をON、端子1s−1a間をOFF状態、スイッチSW2の端子2s−2b間をON、端子2s−2a間をOFF状態とし、無線波の経路を経路Bとする。そして、切換制御部13は、スイッチSW3の端子3s−3c間をOFF、端子3s−3d間をON状態とすることで、フィルタ11を介さずにチューナ3とアンテナ5とを接続させる。
【0050】
このように本実施形態の通信システム10では、地デジの52chの無線波が受信されるエリアでは、ITS装置2の起動が選択された場合に、ハイパスフィルタ11を介してアンテナ5とITS装置2を接続するので、ITS装置2から送信したITS用の無線波から725MHz未満のノイズ成分が除去され、近隣の家屋等での地デジの受信に悪影響を与えることを防止できる。更に、ITS装置2が受信するRF信号から、725MHz未満のノイズ成分がハイパスフィルタ11によって除かれるので、地デジの無線波がITS装置2による受信に悪影響を与えることを防止できる。
【0051】
なお、ノイズを取り除くためにフィルタ11を用いた場合、希望周波数の無線波であっても僅かながら減衰することになるため、本実施形態の通信システム10では、地デジの52chの無線波が受信されないエリアで、ITSのITS装置2の仕様が選択された場合、ハイパスフィルタ11を介さずにアンテナ5とITS装置2を接続するように経路を切り替える。これにより、地デジの52chの放送エリア外に位置し、干渉の可能性が無い場合には、フィルタ11の挿入損失によって無駄に無線波が減衰されることを防止できる。
【0052】
〈変形例1〉
前述の実施形態1では、一本のアンテナ5を共用した例を示したが、ダイバシティのため複数のアンテナ5を備え、これを共用しても良い。図5は、複数のアンテナ5を備えた例を示す図である。なお、本変形例は、前述の実施形態1と比べ、アンテナ5を複数備えてダイバシティを行う構成が異なり、その他の構成は同じである。このため、同一の要素には同符号を付すなどして、再度の説明を省略する。
【0053】
切換制御部13は、複数の切換部12に対し、図4に従って同一の切り換え制御を行う。即ち、通信機(ITS装置及びチューナ)2,3と複数のアンテナ5との間の接続は同
じになる。通信機(ITS装置及びチューナ)2,3は、複数のアンテナ5から夫々受信
した複数のRF信号について、電波状況の優れたアンテナ5からの信号を優先的に用いたり、受信した信号を合成してノイズを除去したりすることによって、通信の質や信頼性の向上を図る。
【0054】
このように、本変形例によれば、ダイバシティで通信する場合にも、前述と同様に、アンテナと通信機(ITS装置及びチューナ)2,3との間の経路を切り換え、適切に通信
することができる。
【0055】
〈変形例2〉
前述の例では、ITS装置2とチューナ3を択一的に起動させる例を示したが、これに限らず、ITS装置2とチューナ3を同時に利用しても良い。
【0056】
例えば、運転席用と後席用の複数の表示装置42が備えられている場合、運転席用の表示装置42にナビゲーション装置40及びITS装置2の画像を表示し、後席用の表示装置にチューナ3の画像を表示する。
【0057】
この場合、切換制御部13は、通常時、アンテナ5とチューナ3とを接続させておき、ITS装置2が送信或いは受信する時だけアンテナ5とITS装置2とを接続させる。
【0058】
チューナ3は、受信信号に基づいて復調したフレームを格納するバッファを復調部33に備え、数秒分のフレームをバッファに格納しておき、アンテナ5がITS装置2と接続されている間は、バッファから読み出したフレームを制御部41へ送る。そして、バッファ内のフレームを送りきる前にアンテナ5をチューナ3に接続し直してバッファへの格納を再開させる。
【0059】
このように、本変形例によれば、アンテナ5を共用しつつ、チューナ3とITS装置2を同時に利用できる。
【0060】
なお、上記実施形態及び変形例においては、受信した第二無線波の受信状況に応じて干渉の有無を判断したが、干渉の有無は、これに限らず位置情報に応じて判断しても良い。
【0061】
例えば、地デジの52chの放送エリアを予め制御部41の記憶領域(メモリ)に記憶させておき、ナビゲーション装置40から求めた自車の走行位置(緯度・経度)が前記放送エリアに入っているか否かを判定し、放送エリア内であれば干渉有りと判定し、放送エリア外であれば干渉無しと判定しても良い。
【0062】
また、ITS装置2により、ETCのゲートを通過して高速道路に入ったことを検出した場合や、ナビゲーション装置40によって高速道路上を走行していることを検出した場合、家屋等との距離が十分に取れているものとして干渉無しと判定しても良い。
【符号の説明】
【0063】
10 通信システム
1 アンテナ共用器
2 ITS装置
3 チューナ
4 マルチメディアシステム
40 ナビゲーション装置
60 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる周波数帯の無線波である第一無線波及び第二無線波を送信又は受信可能なアンテナと前記第一無線波又は第二無線波を用いる複数の通信機との間に介設されるアンテナ共用器であって、
前記第一無線波を通過させ、前記第二無線波を通過させないフィルタと、
前記アンテナから通信機に送られる前記無線波の経路或いは通信機からアンテナに送られる前記無線波の経路を前記フィルタが介在する経路或いは前記フィルタが介在しない経路に切り替える切換部と、
位置情報或いは無線波の受信状況に応じて前記切換部による経路の切り替えを制御する制御部と、
を備えたアンテナ共用器。
【請求項2】
異なる周波数帯の無線波である第一無線波及び第二無線波を送信又は受信可能なアンテナと、
前記第一無線波を用いる通信機と、
前記第二無線波を用いる通信機と、
前記第一無線波又は第二無線波を用いる複数の通信機と前記アンテナとの間に介設されるアンテナ共用器とを備え、
前記アンテナ共用器が、
前記第一無線波を通過させ、前記第二無線波を通過させないフィルタと、
前記アンテナから通信機に送られる前記無線波の経路或いは通信機からアンテナに送られる前記無線波の経路を前記フィルタが介在する経路或いは前記フィルタが介在しない経路に切り替える切換部と、
位置情報或いは無線波の受信状況に応じて前記切換部による経路の切り替えを制御する制御部と、
を備えた通信システム。
【請求項3】
異なる周波数帯の無線波である第一無線波及び第二無線波を送信又は受信可能なアンテナと前記第一無線波又は第二無線波を用いる複数の通信機との間に介設され、
前記第一無線波を通過させ、前記第二無線波を通過させないフィルタと、
前記アンテナから通信機に送られる前記無線波の経路或いは通信機からアンテナに送られる前記無線波の経路を前記フィルタが介在する経路或いは前記フィルタが介在しない経路に切り替える切換部とを備えたアンテナ共用器が、
位置情報或いは無線波の受信状況を検出し、
検出した前記位置情報或いは無線波の受信状況に応じて前記切換部による経路の切り替えを制御する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−70254(P2012−70254A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213976(P2010−213976)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】