説明

アーム搭載ロボット

【課題】アーム部を複雑かつ大型化することなく、アーム部を安全確実に初期位置および初期姿勢に復帰できるようにする。
【解決手段】ロボット本体1は、アーム部2の全体を収納可能な収納スペース3を備えており、ロボット本体1の側面には、ロボット本体1とアーム部2の動作を制御するためのコントロール基板4と、アーム部2の各関節位置を検出するためのセンサ5とが取り付けられている。アーム部2をロボット本体1内の収納スペース3に収納できるため、作業をしていないときにアーム部2が誤動作して人間に危害を与える等の不具合を確実に防止できる。アーム部2の位置や姿勢を検出するセンサ5をアーム部2ではなく、ロボット本体1に設けるため、アーム部2の構造を簡略化でき、かつセンサ5からの検出信号をロボット本体1に送信する配線も不要となる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット本体にアーム部が取り付けられたアーム搭載ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業用を目的とするだけでなく、周囲に人間がいるような施設や家庭内での作業を行うことを想定したアーム搭載ロボットが開発されている。
【0003】
この種のロボットでは、アーム部が誤動作を起こした場合の安全対策が重要であり、人間に危害を加えないような安全で確実な処理動作が求められている。安全対策を図る上では、ロボットが作業を終えた場合やアーム部が誤動作を起こした場合に、アーム部を初期位置や初期姿勢に戻す原点復帰動作が必要となる。
【0004】
原点復帰動作を確実に行うには、アーム部の各関節位置を正確に検出しなければならない。具体的な検出方法として、例えば各関節に位置検出センサを設け、位置検出センサからの検出信号に基づいて各関節を原点位置に戻す手法が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、安全性を確保するために、作業を行わないときにはアーム部をカバーで覆うことも提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平8-141972号公報
【特許文献2】特開2004-230509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のようにアーム部の各関節内に位置検出センサを設けるには、アーム部の各間接にセンサを配置するための場所を予め用意しておかなければならず、関節自体の構造が複雑かつ大型になってしまう。
【0007】
また、センサの検出信号をロボット本体内のコントローラまで伝達するための配線も必要となり、関節数が増えるほど、配線の数や長さが増大して、配線を引き回す場所の確保が困難になるとともに、配線によりアーム部の回転や移動が制限され、断線などの不具合も起きやすくなる。
【0008】
安全性を確保する観点からは、アーム部の原点復帰動作は欠かせないが、その際、アーム部が周囲の人間に接触しないようにアーム部の現在位置を常に把握しておく必要がある。例えば、特許文献2では、各関節の出力軸にアブソリュートエンコーダ等を取り付けて、各関節の絶対角度を検出しているが、この種のエンコーダ等も関節の構造を複雑にして、配線数も増やす要因になる。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、アーム部を複雑かつ大型化することなく、アーム部を安全確実に初期位置および初期姿勢に復帰させることができるアーム搭載ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、ロボット本体に取り付けられ回転及び移動の少なくとも一つの動作を行うアーム部と、前記ロボット本体の内部に設けられ前記アーム部の全体を収納可能な収納部と、前記ロボット本体の内部に設けられ前記アームの位置および姿勢を検出する検出部と、前記アーム部を前記収納部に収納する際、前記検出部の検出結果に基づいて、前記アーム部を初期位置および初期姿勢に復帰させる原点復帰制御部と、を備えることを特徴とするアーム搭載ロボットが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アーム部を複雑かつ大型化することなく、アーム部を安全確実に初期位置および初期姿勢に復帰させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係るアーム搭載ロボットの斜視図、図2はその側面図である。本実施形態のロボットは、多関節のアーム部の全体をロボット本体に収納することができることを特徴とし、図1および図2はアーム部をロボット本体に収納した状態を示している。これに対して、図3はアーム部をロボット本体から引き出して展開した状態を示す斜視図である。
【0014】
これらの図に示すように、ロボット本体1は、アーム部2の全体を収納可能な収納スペース3を備えており、ロボット本体1の側面には、ロボット本体1とアーム部2の動作を制御するためのコントロール基板4と、アーム部2の各関節位置を検出するためのセンサ5とが取り付けられている。また、ロボット本体1の下部にはロボット内の各部に電源電圧を供給する電源基板6と、ロボット本体1を前後左右に移動させるための車輪7とが取り付けられている。車輪7の数には特に制限はないが、本実施形態では、独立に駆動可能な同じサイズの車輪7を左右に2つ備えており、これら車輪7により、直進や後退、左右への移動を可能とし、かつ各車輪7を同じ速度で逆方向に回転させることにより、車輪7の中間点を回転軸として回転可能としている。
【0015】
ロボット本体1の上部には視覚ユニット8が取り付けられている。視覚ユニット8は、一つ以上のカメラ9と、各カメラ9の光軸方向を制御する機構10とを備え、広範囲の状況を視認できるようにしている。
【0016】
アーム部2の関節数には特に制限はないが、以下では、図2に示すように、6つの関節数を有する例について説明する。図2のアーム部2は、ロボット本体1に接続される根元側の第1腕部11と、第1腕部11に回転可能に接続される第2腕部12と、第2腕部12に回転可能に接続される第3腕部13と、第3腕部13に回転可能に接続される先端側の第4腕部14とを有する。第4腕部14の先端側端部には把持動作を行うグリッパ15が接続されており、グリッパ15の基端部を左右に移動させることにより、グリッパ15の先端部は開閉動作を行い、これによりグリッパ15は把持動作を行う。
【0017】
第1腕部11と第2腕部12との間の関節部には、第2腕部12を第1腕部11の中心軸周りに回転させる第1関節回転軸16と、第2腕部12を第1腕部11の中心軸とは90度異なる方向に回転させる第2関節回転軸17とが設けられている。第2腕部12と第3腕部13との間の関節部には、第3腕部13を第2腕部12の中心軸周りに回転させる第3関節回転軸18と、第3腕部13を第2腕部12の中心軸とは90度異なる方向に回転させる第4関節回転軸19とが設けられている。第3腕部13と第4腕部14との間の関節部には、第4腕部14を第3腕部13の中心軸周りに回転させる第5関節回転軸20と、第4腕部14を第3腕部13の中心軸とは90度異なる方向に回転させる第6関節回転軸21とが設けられている。
【0018】
アーム部2をロボット本体1内の収納スペース3に収納する際には、第1〜第4腕部11〜14を第1〜第6関節回転軸16〜21の周りに回転させて、図2のような姿勢にする。
【0019】
図4は本実施形態によるアーム搭載ロボットの制御系30の概略構成を示すブロック図である。図示のように、アーム搭載ロボットの制御系30は、本ロボット自身の動作や処理を決定するシステム制御部31と、システム制御部31の指示に従って所定の動作や処理を行うサブシステム制御部とを有する。サブシステム制御部の中には、視覚ユニット8を制御する画像処理部32と、アーム部2の動作を制御するアーム制御部33と、車輪7の動作を制御する移動制御部34とが含まれている。
【0020】
画像処理部32は、視覚ユニット8内の各カメラ9で撮像された画像を取り込んで画像認識処理を行い、その処理結果をシステム制御部31に供給する。また、画像処理部32は、複数のカメラ9で撮像された画像に基づいて三角測量法により撮像対象物の位置測定を行ってもよい。さらに、画像処理部32は、撮像対象物(例えば、アーム部2)の方向を常に追跡しつつ撮像対象物を撮像し続けるトラッキング処理を行ってもよい。
【0021】
音声処理部36は、マイク35で聞き取った人からの音声指示を音声認識して、指示内容をシステム制御部に供給する。
【0022】
アーム制御部33は、システム制御部31からの指示により、アーム部2の各関節の物理的な駆動量を決定して、アーム部2を動作させる。移動制御部34は、システム制御部31からの指示により、各車輪7の回転数および回転方向を決定して、車輪7を回転させる。
【0023】
システム制御部31は、外部から音声等により与えられた情報とロボット内の各種情報(例えば、ロボット自身の位置や姿勢、バッテリ残量など)を制御入力情報として、予め定めたルールに従ってロボット自身の動作や処理を決定し、少なくとも一つのサブシステム制御部31に指示信号を供給する。
【0024】
図4に示した各部は、図1のコントロール基板4内に設けられる。コントロール基板4は必ずしも一つの基板である必要はなく、複数の基板で構成されていてもよい。
【0025】
本実施形態では、アーム部2の位置と姿勢を検出するためのセンサ5をロボット本体1に設け、センサ5と一体に用いられる検出機構をアーム部2に設けている。図5は検出機構の一例を示す図である。
【0026】
図2に示したように、本実施形態のアーム部2は6つの関節を有し、そのうち3つの関節の回転軸(第1関節回転軸16、第3関節回転軸18、第5関節回転軸20)はいずれも、アーム部2の全体をロボット本体1に収納したときに、ロボット本体1の側面に平行な方向(図2の紙面方向)に配置される。これら3つの回転軸の周りを第1腕部11、第2腕部12および第3腕部13は回転するため、これら腕部の回転を検出できる位置にセンサ5と検出機構が設けられる。
【0027】
この場合の検出機構は、図5(a)に示すように第1腕部11、第2腕部12および第3腕部13の外周縁部に取り付けられる半円状の反射板41を有する。ロボット本体1の反射板41に対向する位置には、センサ5が配置されている。このセンサ5は互いに近接配置された発光部と受光部を有する。発光部から発光された光が反射板41で反射すると、その反射光が受光部で受光されるようになっている。反射板41は、腕部の外周部の一部のみに配置されているため、反射板41が配置されていない部分に照射された光は反射されず、受光部で受光されない。したがって、各腕部が原点位置42に到達した時点で、受光部での受光状態が切り替わるように反射板41を配置しておけば、各腕部が原点位置42に復帰したか否かを簡易かつ迅速に検出できる。また、回転方向によって受光部での受光状態の変化が逆になるため、回転方向も簡易に検出できる。
【0028】
一方、図2に示す6つの関節のうち残りの3つの関節の回転軸(第2関節回転軸17、第4関節回転軸19、第6関節回転軸21)はいずれも、アーム部2の全体をロボット本体1に収納したときに、ロボット本体1の側面に直角の方向(図2の紙面の表裏方向)に配置される。これら3つの回転軸に沿って、第2腕部12〜第4腕部14のそれぞれが回転するため、これら腕部の回転を検出できる位置にセンサ5と検出機構が設けられる。
【0029】
この場合の検出機構は、図5(b)に示すように、3つの関節回転軸上にそれぞれ取り付けられて、対応する腕部とともに回転する遮光板43を有する。遮光板43には外周に沿って段差44が設けられており、遮光板43は段差44を境として径が互いに異なる2つの半円板を接続した形状になっている。
【0030】
ロボット本体1に取り付けられるセンサ5は、遮光板43を挟んで互いに反対側に配置される発光部と受光部を有する。発光部から発光された光のうち、遮光板43の径の小さい半円板領域に照射された光は、遮光板43で遮光されずに受光部に到達する。一方、遮光板43の径の大きい半円板領域に照射された光は、遮光板43で遮断されて、受光部には到達しない。したがって、各腕部が原点位置45に到達した時点で受光部の受光状態が切り替わるように遮光板43の段差44の位置を予め設定しておけば、各腕部が原点位置に復帰したか否かを簡易かつ迅速に検出できる。また、回転方向によって受光部での受光状態の変化が逆になるため、回転方向も簡易に検出できる。
【0031】
電源投入時のアーム部2の各関節部の角度(以下、関節角度)がわかっていないと、アーム部2を所定の位置に移動させるためにアーム部2をどの方向にどれだけ動かせばよいかがわからず、作業時にアーム部2の正確な位置決めができなくなる。アーム部2の関節角度の絶対値を検出するには、例えばアブソリュートエンコーダやポテンシャルメータ等の絶対角度を検出するセンサ5を用いる手法がある。一般に、アブソリュートエンコーダを用いると、アーム部2の位置決め機構が大きくなったり、配線が複雑になるため、小型のアーム搭載ロボットには向かない。また、ポテンシャルメータを用いると、ノイズ等の影響により正確に角度検出ができないおそれがある。
【0032】
本実施形態のセンサ5と検出機構を用いれば、検出機構を構成する反射板41のエッジや遮光板43の段差44を通過した回数をセンサ5の受光部で正確に検出できるため、アーム部2の関節角度も精度よく検出できる。
【0033】
ロボット本体1内に、アーム部2を収納するための収納スペース3をあまり広くとれない場合がある。このような場合、収納スペース3にアーム部2を収納する際には、アーム部2の各関節を所定の角度に設定して、アーム部2の全体のサイズをできるだけ小さくする必要がある。すなわち、収納時のアーム部2の姿勢を予め設定しておく必要がある。このような場合、予めロボット本体1の内部にアーム部2を案内するガイド部材を設けておけば、アーム部2を所望の位置に所望の姿勢で容易に収納できるため都合がよい。
【0034】
図6はこの種のガイド部材51の一例を示す斜視図である。図6のガイド部材51は、開口部が幅広になったU字状の部材であり、アーム部2の腕部をガイド部材51の開口部からその内壁に沿って底部まで案内する。腕部がガイド部材51に当接したか否かは、腕部を駆動するモータの負荷の変化により容易に検出できる。図4の移動制御部34は、腕部がガイド部材51の開口部に当接したことを検出すると、ガイド部材51の内壁に沿って腕部をU字状のガイド部材51の底部まで移動させる。
【0035】
ガイド部材51のU字状の内壁部分は、腕部が当接する際の衝撃を緩和し、かつ腕部を内壁に沿って容易に移動させることができるように、滑りやすい弾性部材(例えば、ゴム)で形成するのが望ましい。アーム部2の各腕部ごとに、対応するガイド部材51を設けることにより、各腕部を簡易かつ正確に所望の場所に収納することができる。
【0036】
上述したように、ガイド部材51を設けることで、ガイド部材51をロボット本体1内の収納スペース3に収納できるが、ロボットに何らかの衝撃が加わったときに、アーム部2が収納スペース3内で移動するおそれがある。そこで、アーム部2を収納スペース3内に確実に固定する固定機構を設けてもよい。図6は、第3腕部13と第4腕部14の間の関節部を固定する固定機構52を設けた例を示している。この固定機構52は、図7に拡大して示すように、関節部を嵌合可能なサイズの凹部53を有する。収納スペース3内で、凹部53に第4腕部14の関節を嵌合した状態では、多少の衝撃がロボット本体1に加わっても、第4腕部14の位置がずれるおそれはない。なお、図6に示す固定機構52は、他の関節部に設けてもよい。
【0037】
図8は本実施形態によるアーム搭載ロボットの処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、アーム部2を用いた作業を終えてアーム部2をロボット本体1に収納するまでの処理手順を示している。
【0038】
作業を終えた場合には、視覚ユニット8にてアーム部2の位置を確認する(ステップS1)。図9は視覚ユニット8でアーム部2の位置を確認する例を示す図である。この例では、視覚ユニット8に首振り機構を設けて、視覚ユニット8を斜め下方に傾けてアーム部2を撮像する例を示している。
【0039】
視覚ユニット8の首振り機構は、カメラ9の光軸を任意の方向に切替可能な構造になっている。図4の画像処理部32とシステム制御部31は、視覚ユニット8で取り込んだ画像により、アーム部2の位置を検出して、アーム部2をロボット本体1に収納するのに必要なアーム部2の移動方向と移動量を検出する。
【0040】
アーム部2に位置検出用のマーカ54を付けておけば、このマーカ54を視覚ユニット8で検出して、マーカ54の位置を基準としてアーム部2の位置を正確に検出することができる。
【0041】
視覚ユニット8は、アーム部2の収納時の位置検出に用いられるだけでなく、アーム部2を展開する際のアーム部2の位置決めにも用いられる。この場合、上述したマーカ54の位置を基準として、アーム部2を所望の位置に移動させればよい。
【0042】
アーム部2の位置が確認できると、次に、アーム部2の各関節を回転制御して、アーム部2を収納スペース3の方向まで移動させる(ステップS2)。
【0043】
収納スペース3内にはガイド部材51が設けられているため、ガイド部材51の開口部に到達した腕部は、ガイド部材51に案内されて所定の位置に収納される(ステップS3)。
【0044】
アーム部2が収納スペース3内の所定の位置に収納されると、次にアーム部2の原点復帰処理を行う(ステップS4)。この原点復帰処理を行うことで、アーム部2の各腕部は初期位置および初期姿勢に復帰する。したがって、その後にアーム部2を展開するとき、アーム部2の駆動方向および駆動量を正確かつ簡易に検出できる。
【0045】
図10は図8のステップS4における原点復帰処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。まず、原点復帰を行った関節回転軸の数をカウントするための変数Nを0に初期設定し(ステップS11)、次に、変数Nを1だけインクリメントする(ステップS12)。次に、まだ原点復帰動作を行っていないN番目の関節回転軸に取り付けられたセンサ5からの検出信号を取得する(ステップS13)。センサ5は、図5(a)の反射板41や図5(b)の遮光板43に対向して設けられており、原点位置を通過するか否かにより、センサ5の検出信号が変化する。また、センサ5の検出信号の変化の仕方により、どの方向に回転したかを検出することができる。
【0046】
次に、センサ5の検出信号に基づいて、対応する腕部が原点位置よりも正方向(例えば、右方向)に位置するか否かを判定する(ステップS14)。正方向に位置すると判定されると、N番目の関節回転軸を負の方向に回転させる(ステップS15)。一方、ステップS14の判定がNoの場合には、同じ関節回転軸を正の方向に回転させる(ステップS16)。
【0047】
次に、ステップS15,S16の処理を行った結果として、センサ5の検出信号が変化したか否かを判定し(ステップS17)、変化しなければステップS13以降の処理を繰り返し、センサ5の検出信号が変化した場合には原点位置に復帰したと判断して、N番目の関節回転軸の回転を停止させる。(ステップS18)。
【0048】
次に、すべての関節回転軸が原点に復帰したか否かを判定する(ステップS19)。まだ、原点に復帰していない関節回転軸が存在していれば、ステップS2以降の処理を繰り返す。
【0049】
このように、第1の実施形態では、多関節のアーム部2をロボット本体1内の収納スペース3に収納できるようにしたため、作業をしていないときにアーム部2が誤動作して人間に危害を与える等の不具合を確実に防止できる。また、アーム部2を収納スペース3に収納する際、ロボット本体1に設けられたセンサ5によりアーム部2を原点位置に復帰させるため、その後にアーム部2を展開するとき、アーム部2の駆動方向と駆動量を原点位置を基準として簡易かつ正確に算出できる。さらに、アーム部2の位置や姿勢を検出するセンサ5をアーム部2ではなく、ロボット本体1に設けるため、アーム部2の構造を簡略化でき、かつセンサ5からの検出信号をロボット本体1に送信する配線も不要となるため、アーム部2をより小型化できる。
【0050】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、収納スペース3のアーム出し入れ口に開閉自在な扉を設けて、アーム部2をロボット本体1内に収納した後やアーム部2を展開した状態で、扉を閉めて収納部スペース内が露出しないようにしたものである。
【0051】
第2の実施形態によるアーム搭載ロボットは、収納スペース3のアーム出し入れ口に扉が新たに設けられている他には第1の実施形態と同様のため、以下では、扉の構造を中心に説明する。
【0052】
図11(a)はロボット本体1内の収納スペース3にアーム部2を収納した状態を示す斜視図、図11(b)はアーム部2を展開した状態を示す斜視図である。図示のように、アーム部2を収納し終わった状態とアーム部2を展開した状態のいずれにおいても、扉61を閉じている。これにより、収納スペースが露出しなくなり、ロボット本体1の内部に異物が混入するおそれや、何らかの衝撃を受けた際に収納したはずのアーム部2が飛び出す等の不具合を防止できる。
【0053】
扉61は、図11の点線を境界として、左右に開閉可能とされている。図11(a)に示すように、アーム部2とロボット本体1とを接続する関節60は、収納部に収納されずに扉61の上に配置されている。この関節60を収納スペース3に収納することも可能であるが、収納スペース3が余計に必要となるとともに、アーム部2を展開した際に扉61を閉められなくなるため、本実施形態では、上述した関節60は扉61の上部に配置している。
【0054】
図12および図13は扉61の開閉機構を示す図であり、図12は扉61を閉じた状態、図13は扉61を開いた状態を示している。これらの図では、開閉機構の構造を把握しやすいように扉61に隣接配置される本体外装カバー62を省略している。扉61とその開閉機構は収納スペース3に隣接して配置されるが、収納スペース3の開口部を狭くしないように扉61を両開きとし、かつ扉61を本体外装カバー62に沿って移動させることで、扉61が収納スペース3を犠牲にしないようにしている。
【0055】
扉61の開閉機構は、扉61に固定されたスライド部材63と、スライド部材63を扉61とともに左右に駆動するモータ64と、モータ64をロボット本体1に固定するモータ固定部材65とを有する。スライド部材63は、矩形状の部材であり、内部は軽量化のために肉抜きされて、梯子状になっている。スライド部材63の裏面には、ロボット本体1に固定されたリニアガイドブロックに沿って移動可能な2本のリニアガイドレールが左右方向に取り付けられている。
【0056】
モータ64の回転軸にはピニオン66が取り付けられ、このピニオン66はスライド部材63に固定されたラック67と噛み合っている。ラック67は、スライド部材63の左右方向に延在している。モータ64を回転させると、ピニオン66が回転し、その回転力がラック67に伝達される。ラック67はスライド部材63の左右方向に形成されているため、モータ64の回転に応じてスライド部材63が左右に移動し、扉61が開閉される。
【0057】
このように、第2の実施形態では、ロボット本体1の収納スペース3のアーム出し入れ口に扉61を設けたため、アーム部2を収納した状態でも展開した状態でも、扉61を閉じることができ、収納スペース3が露出されなくなり、ロボット本体1の内部に異物が混入するおそれもなくなる。また、扉61をロボット本体1の外装カバーに沿って開閉させ、厚さが薄くて軽量のスライド部材63により扉61を開閉させるようにしたため、扉61の開閉機構を設けても収納スペース3が狭くなることがない。
【0058】
(その他の変形例)
上述した図8のステップS1では、視覚ユニット8を用いてアーム部2の位置確認を行った後にアーム部2の収納動作を行っているが、アーム部2の位置を予め把握している場合には、このステップS1の処理動作は省略してもよい。
【0059】
また、図8のステップS3におけるガイド部材51を設けなくてもアーム部2を収納スペース3に収納できる場合には、ガイド部材51は設けなくてもよい。
【0060】
上述した第1の実施形態では、図5に示す反射板41や遮光板43を利用してアーム部2の各腕部の位置を検出したが、センサ5をロボット本体1に設ける構造であれば、検出機構の具体的な形状や構造は特に問わない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るアーム搭載ロボットの斜視図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るアーム搭載ロボットの側面図。
【図3】アーム部をロボット本体から引き出して展開した状態を示す斜視図。
【図4】本実施形態によるアーム搭載ロボットの制御系30の概略構成を示すブロック図。
【図5】検出機構の一例を示す図。
【図6】ガイド部材51の一例を示す斜視図。
【図7】固定機構の拡大斜視図。
【図8】本実施形態によるアーム搭載ロボットの処理手順を示すフローチャート。
【図9】視覚ユニット8でアーム部2の位置を確認する例を示す図。
【図10】図8のステップS4における原点復帰処理の詳細な処理手順を示すフローチャート。
【図11】(a)はロボット本体1内の収納スペース3にアーム部2を収納した状態を示す斜視図、(b)はアーム部2を展開した状態を示す斜視図。
【図12】扉61を閉じた状態の開閉機構を示す図。
【図13】扉61を開けた状態の開閉機構を示す図。
【符号の説明】
【0062】
1 ロボット本体
2 アーム部
3 収納スペース
4 コントロール基板
5 センサ
6 電源基板
7 車輪
8 視覚ユニット
31 システム制御部
32 画像処理部
33 アーム制御部
34 移動制御部
41 反射板
43 遮光板
51 ガイド部材
52 固定機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット本体と、
前記ロボット本体に取り付けられ回転及び伸縮の少なくとも一つの動作を行うアーム部と、
前記ロボット本体の内部に設けられ前記アーム部の全体を収納可能な収納部と、
前記ロボット本体の内部に設けられ前記アームの収納時の位置および姿勢を検出する検出部と、
前記アーム部を前記収納部に収納する際、前記検出部の検出結果に基づいて、前記アーム部を初期位置および初期姿勢に復帰させる原点復帰制御部と、を備えることを特徴とするアーム搭載ロボット。
【請求項2】
前記ロボット本体の内部に設けられ、前記アーム部を前記収納部に収納する際に前記アーム部を前記収納部の方向にガイドするガイド部を備えることを特徴とする請求項1に記載のアーム搭載ロボット。
【請求項3】
前記ロボット本体内の前記アーム部の出し入れ口に設けられ、前記アーム部を前記収納部に収納した状態と前記アーム部を前記収納部から展開して取り出した状態とで開閉可能な扉を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のアーム搭載ロボット。
【請求項4】
前記アーム部が前記収納部に収納されたことが前記検出部により検出されたときに、前記扉を閉じることが可能となり、扉を閉じる制御を行い、かつ前記収納部に収納されている前記アーム部が初期位置および初期姿勢にあることが前記検出部により検出された後に、前記扉を開けることが可能となり、扉を開く制御を行う開閉制御部を備えることを特徴とする請求項3に記載のアーム搭載ロボット。
【請求項5】
前記アーム部は、
前記収納部に収納する際に前記ロボット本体の側面に対して平行な方向の回転軸を有する第1腕部と、
前記第1腕部の外周縁部に沿って取り付けられる円弧状の反射板と、を有し、
前記検出部は、前記反射板に対向する位置に隣接配置される発光部および受光部を有し、
前記検出部は、前記発光部から発光された光が前記反射板で反射して前記受光部にて受光されるか否かにより、前記第1腕部の位置および姿勢を検出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のアーム搭載ロボット。
【請求項6】
前記第1腕部が初期位置および初期姿勢に達するときに前記受光部での受光状態が切り替わるように前記反射板の取り付け位置が決定されることを特徴とする請求項5に記載のアーム搭載ロボット。
【請求項7】
前記アーム部は、
前記収納部に収納する際に前記ロボット本体の側面に対して直角方向の回転軸を有する第2腕部と、
前記回転軸の周りを前記第2腕部ととともに回転可能とされ、前記回転軸からの径が互いに異なる二つの半円板を有する遮光板と、を有し、
前記検出部は、前記遮光板を間に挟んで両側に配置される発光部および受光部を有し、
前記検出部は、前記発光部から発光された光が前記遮光板にて遮断されて前記受光部により受光されなくなるか否かにより、前記第2腕部の位置および姿勢を検出することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のアーム搭載ロボット。
【請求項8】
前記第2腕部が初期位置および初期姿勢に達するときに前記受光部での受光状態が切り替わるように前記段差の位置が決定されることを特徴とする請求項7に記載のアーム搭載ロボット。
【請求項9】
前記アーム部を撮像可能な撮像装置を備え、
前記原点復帰制御部は、前記撮像装置で前記アーム部を撮像して得られる画像に基づいて前記アーム部を前記収納部に収納する制御を行うことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のアーム搭載ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−90493(P2007−90493A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284024(P2005−284024)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】