説明

インクジェットプリントヘッドのノズル機能を保持又は回復するためのシステム及び方法

ノズル機能を保持又は回復するために、振動エネルギーを生成できる変換器をインクジェットカートリッジに対して配置し、インクジェットカートリッジのプリントヘッド内の複数のノズルに関連する複数のインク流体柱の各々の少なくとも一部を同時に振動させるための振動力を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2008年5月1日に出願された米国仮特許出願第61/049,490号の利益を主張するものであり、該特許出願はその全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、一般に、射出チャンバと流体連通している複数のノズルを含み、媒体上に印刷するためにこのチャンバからノズルを通じて液滴の形でインクを射出するインクジェットプリンタのインクジェットプリントヘッドに関する。より具体的には、本発明は、ノズルにおけるインクの目詰まりの影響を受けたノズル機能を保持又は回復するためのシステム又は方法に関する。
【0003】
インクジェット印刷システムのためのインクジェットプリントヘッドは複数のノズルを含み、印刷媒体上に印刷するためのコントローラからの印刷命令に応答して、これらのノズルを通じてインクを液滴の形で射出する。プリントヘッドが、印刷システム上に恒久的に装着されインク供給源に接続されたタイプのものであるか、或いはインク溜めを支持するカートリッジを含む使い捨てタイプのものであるかに関わらず、ノズルの各々は、インク射出チャンバと流体連通した状態でプリントヘッド上に配置される。サーマルインクジェットプリンタ及びプリントヘッドの場合、印刷命令に応答して射出チャンバ内のインクに熱を印加することによりインクが液滴の形で射出される。個々の射出チャンバは1又はそれ以上の抵抗ヒータを伴い、これが熱を発生させ、この熱がインク内の溶媒を気化させて射出チャンバ内に気泡を生じる。急速に膨張した気泡が、ノズルを通じてインクを液滴の形で押し出す。
【0004】
その他の種類の印刷システム及びプリントヘッドは、プリントヘッド内に統合されてインク射出チャンバ又はインクを保持する他の何らかのチャンバ内の壁を形成する圧電変換器を有し、この圧電変換器は射出チャンバと流体連通する。印刷命令に応答して壁又は圧電変換器が膨張及び収縮し、印刷のために射出チャンバからインクを液滴の形で押し出す。
【0005】
上述したいずれのインクジェットプリントヘッド内でも、インク溶媒がノズルにおいて蒸発しがちであることにより、プリントヘッド及びノズルが印刷動作を行っていない時にノズルの又はノズル内のインクの粘性が増すようになる。ノズル領域における粘性の増したインクはノズルを塞ぎがちになり、プリントヘッドの性能及び印刷品質に直接影響を及ぼす。ノズル機能を保持又は回復するためのいくつかのシステム又は方法として、ノズル板に蓋をかぶせること、プリントヘッドを弾性ブレードで拭き取ること、及びノズルを通じてインクを吐き出すことが挙げられ、これらは全てプリントヘッドが印刷動作を行っていない時に行われる。
【0006】
通常、このような方法を組み入れた印刷システムは、印刷動作中にキャリッジ上で前後に移動するプリントヘッドを含み、このプリントヘッドは、印刷動作を終了又は停止した時に所定位置へ移動する。ノズルに蓋をかぶせることにより、ノズル内の流体の蒸発及び粘性プラグの形成が防がれる。ノズル板を弾性ブレードで拭き取ることにより、ノズルから粘性プラグ及び乾いたインクかすが除去される。吐出処理により、ノズルからインクが洗い流されて、射出チャンバを含むノズル内の粘性インクの流体柱が除去される。しかしながら、印刷中にプリントヘッドが静止してキャリッジ上で移動しない印刷システムではこのような処理を実際に使用することができない。拭き取り又は吐出法は、印刷媒体及び印刷域周辺の領域を汚す恐れがある。製品のパッケージ上にバーコード、日付、又はその他のデータを印刷するための生産ライン印刷では、拭き取り及び吐出技術が生産ラインを中断させる可能性がある。また、場合によっては、静止印刷システムのためのプリントヘッドは印刷媒体の非常に近くに位置するので、ノズル板上に蓋を設置することが困難である。
【0007】
拭き取り及び吐出処理は、ノズルから粘性プラグを除去するには有効であるかもしれないが、射出されたインクは印刷に使用されないので本質的に無駄が多い。しかも、プリントヘッドから射出されたインク滴を数えることにより印刷に利用できるインク量をモニタする印刷システムは、クリーニング動作中に使用されるインクを計算に入れていない可能性がある。従って、残留インク量が過大評価される可能性があり、インクカートリッジに、印刷動作を実行又は完了するのに不十分な量の残留インクで印刷動作を行うように命令が出される可能性がある。この結果、プリントヘッドのノズルにおいて空発射が行われる恐れがあることにより、プリントヘッドが損傷を受ける可能性がある。また、生産ライン印刷では、残留インク量の過大評価により、印刷システムがパッケージ上のコード又は印刷を欠落させる可能性がある。
【0008】
米国特許第5,329,293号及び日本国特許第57061576号には共に、コントローラからの最初の信号に応答して印刷のためにインク滴を放出するように作動する圧電素子を組み込んだプリントヘッドが開示されている。2番目の予備発射、すなわちインクを放出するのに必要な閾値電圧信号未満の電圧信号が圧電素子を作動させてノズル内のインクの目詰まりを防ぐ。また、米国特許第6,431,674号(「‘674特許」)には、ノズル開口部にあるインクメニスカスを印刷動作の前又は後に微振動させてプリントヘッドノズルの目詰まりを防ぐインクジェットプリントヘッドが開示されている。より具体的には、‘674特許には、上述した圧電変換器及び圧力発生チャンバとも呼ばれる射出チャンバを利用するタイプのインクジェットプリントヘッドが開示されている。プリントヘッドは複数の圧力発生チャンバを含み、個々のチャンバはノズルを伴うとともに独自の変換器を有する。圧電変換器は、印刷のためにそれぞれのチャンバを加圧してチャンバからインク滴を射出するように作動する。また、非印刷活動中、個々の圧電変換器はそれぞれのチャンバを加圧して、インク滴を射出するには足りない程度にメニスカスを振動させることができる。インクを射出すること及びメニスカスを微振動させることの両方のために変換器を使用してチャンバを加圧するので、変換器を複数の連続する期間にわたって作動させて変換器の疲労を避けるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,329,293号公報
【特許文献2】日本国特許第57061576号公報
【特許文献3】米国特許第6,431,674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
実際にこのような上述の圧電変換器システムをサーマルインクジェットプリントヘッドに組み込むことはできない。個々の印刷カートリッジごとに圧電変換器を組み込むと、サーマルインクジェットカートリッジ又はプリントヘッドの製造に桁違いなコストがかかる。また、圧電インク射出技術と比較した場合、サーマルインクジェットプリントヘッドに組み込まれる抵抗ヒータを実際に使用してインクを射出せずにメニスカスを振動させることはできない。サーマルインクジェットプリントヘッドでは、個々の発射チャンバ及びノズルに関連する抵抗ヒータに電圧を印加し、発射チャンバ内のインクを加熱してインク気泡の急速な膨張を引き起こし、ノズルを通じてインク滴を押し出す。圧電変換器インクジェットプリントヘッドと比較した場合、サーマルインクジェットプリントヘッドからインク滴を射出できるかどうかの閾値電圧は極めて予測しにくい。実際に、サーマルインクジェットプリントヘッドを組み込んだ印刷システムでは、インク滴を放出するのに必要な電圧を予測するアルゴリズムが使用される。このアルゴリズムは、使用するインクの物理特性(蒸気圧)、及びインクチャネル、発射チャンバ及びノズルの寸法などのパラメータを考慮する。閾値電圧が決定されると、アルゴリズムは、抵抗ヒータに電圧信号が印加された際にインク滴が射出されることを確実にするために、計算した閾値を所定のパーセンテージだけ上回る電圧を選択するように構成される。閾値電圧又はこれ未満の電圧を印加しても、メニスカスを振動させるかどうかが分からず、或いはインクを放出してしまう可能性もある。しかも、印刷を終了又は停止した時に発射チャンバ内のインクが加熱されることにより、発射チャンバ内のインクが乾燥してノズルを詰まらせる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
インクジェット印刷システムのノズル機能を保持するためのシステム又は方法が、インク供給源と流体連通する、印刷媒体上に印刷を行うためのプリントヘッドを備える。プリントヘッドは複数のノズルを有し、個々のノズルはインク射出チャンバに関連し、このチャンバ内には、チャンバからノズルを通じてインク滴を射出するためのインクが貯溜される。個々のノズルはインク流体柱を伴い、このインク流体柱は、1又はそれ以上のノズルにおいて形成されたインクメニスカス、及び射出チャンバ内のインクを含むことができる。カートリッジのノズル機能を保持又は回復するために、流体柱に振動エネルギーを伝達して複数のインク流体柱の各々の少なくとも一部を同時に振動させるための変換器が設けられる。変換器は印刷システムのコントローラに連結され、このコントローラは、非印刷活動期間中又は印刷動作中に変換器を作動させるための信号を生成する。ある実施形態では、プリントヘッドがカートリッジ上に装着され、振動エネルギーをカートリッジの外部にある場所から流体柱に伝達することができる。他の実施形態では、変換器をカートリッジハウジングの内部に装着することができ、或いはプリントヘッド回路の構成要素として設けることができる。
【0012】
ある実施形態では、インクジェットカートリッジが、カートリッジを受け入れるとともに印刷用の印刷媒体と離隔した関係に保持するように構成された壁を有するポケット内に装着される。ポケットの壁に振動力を印加することができ、ポケット壁とカートリッジ表面との接触面が振動エネルギーをプリントヘッドに結合する。別の実施形態では、カートリッジの外面に振動力を直接印加することができる。このようにして、振動エネルギーをプリントヘッド内の流体柱に伝達し、流体柱を振動させてノズル機能を保持又は回復する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】インクジェットカートリッジの斜視図である。
【図2】プリントヘッドのノズル及び発射チャンバの配列を示すプリントヘッドの部分的な正面図である。
【図3】ノズル内に形成されたメニスカスを示す、図2のプリントヘッドの略断面図である。
【図4】膨張するインクジェット気泡及びノズルを通じて射出されるインク滴を示す、プリントヘッドの略断面図である。
【図5】印刷システムのポケット内に配置されるように位置合わせされたインクジェットカートリッジの斜視分解図である。
【図6】カートリッジ及びプリントヘッドに振動力を印加する変換器の概略図を含む、印刷システムポケット内に配置されたインクジェットカートリッジの正面概略図である。
【図7】15分間の非印刷活動期間にわたって蓋をしなかったテスト用インクジェットカートリッジを使用して生成した印刷列の写真である。
【図8】テストカートリッジを音波励起に曝した後に、図6の列を印刷するのに使用したものと同じテストカートリッジを使用して生成した印刷列の写真である。
【図9】サーマルインクジェットプリントヘッドのノズル内のインクメニスカスの揺動又は振動を示す写真である。
【図10】サーマルインクジェットプリントヘッドのノズル内のインクメニスカスの揺動又は振動を示す写真である。
【図11】流体柱に振動エネルギーを印加したカートリッジによって生成した印字サンプルを、振動エネルギーを印加しなかった同じカートリッジによって生成した印字サンプルと比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付図面に示す本発明の特定の実施形態を参照することにより、上記で簡潔に説明した本発明のより具体的な説明を行う。これらの図面は本発明の代表的な実施形態のみを示すものであり、従って本発明の範囲を限定するとみなすべきではないという理解の下で本発明を記述及び説明する。本発明の実施形態を説明するために、図面及び明細書ではサーマルインクジェットカートリッジ用のプリントヘッドに言及するが、本発明はこのように限定されるものではない。本発明を、プリントヘッドからインク滴を射出するために熱以外の手段を組み込んだインクジェットカートリッジとともに使用することもできる。例えば、説明する発明を、印刷又はその他の動作のためにインク滴を射出するための圧電変換器技術を組み込んだカートリッジに使用することができる。また、ノズル機能を保持又は回復するための説明するシステム及び方法は、使い捨てカートリッジであってもなくてもよい図1に示すカートリッジハウジングに装着されるプリントヘッドアセンブリと使用することに限定されるものではない。本発明を印刷システム内に恒久的に装着されたプリントヘッドとともに使用して、必要に応じて印刷のためにインク供給源を設けることもできる。従って、カートリッジという用語は、恒久的に装着されたプリントヘッドのみを含むこともでき、及び/又はプリントヘッドとインク供給源との組み合わせを含むこともできる。本明細書で使用する振動エネルギーは、振動エネルギーの連続印加、或いは周期的なバースト、パルス又はサイクルで印加される、若しくは単一の又は反復する波形として印加される振動エネルギーを含むことができる。
【0015】
図1には、バルクインク供給源を保持するインク溜め(図示せず)を内部に固定したハウジング11を有するインクジェットカートリッジ10を示している。ハウジング11に取り付けられたプリントヘッドアセンブリ12が、スナウト13に装着されたプリントヘッド14を含み、このスナウト13がプリントヘッド14をインク溜めと流体連通させる。本明細書で使用するスナウトという用語は、プリントヘッド14を装着し、通常は印刷システムと相互接続して印刷のためにプリントヘッドの見当を合わせるようにされた、カートリッジハウジング11の延長部を含むカートリッジ10の構成要素のことを意味する。図1に示すスナウト13は、カートリッジハウジング11に取り付けられた別個の構成要素であるが、スナウト13をハウジング11と一体形成することもできる。また、本発明は、軸外供給源からインクを受け取ることができる恒久的に装着されたプリントヘッドのような、スナウトに装着されたプリントヘッドに限定されるものではない。このような場合、カートリッジ10はスナウトを有していなくてもよく、またプリントヘッドアセンブリは、プリントヘッドと、プリントヘッドを取り付ける面とを含むことができる。
【0016】
本明細書で使用するプリントヘッドという用語は、インク滴を射出するためにバルクインク供給源からインクの供給を受けるカートリッジ10の構成要素を含むものとする。本明細書で説明するサーマルインクジェットカートリッジのための実施形態では、プリントヘッド14は、インクスロット16と、流体チャネル17と、発射チャンバ18と、ノズル22と、必要な集積回路とを上部に形成したシリコン基板15、及びノズル板23を備える。例えば、インクスロットを有していない他のタイプのプリントヘッドでは、プリントヘッドが、ノズルに隣接する射出チャンバ、圧力チャンバ、又は発射チャンバ、及びこれらの構成要素を定める構造部分を備える。また、少なくとも圧電技術を利用するインクジェットカートリッジでは、プリントヘッドが、インク滴を発生させるためにプリントヘッドと一体化された圧電素子も含む。
【0017】
図2及び図3には、サーマルインクジェットカートリッジ用のプリントヘッド14の構成要素をより詳細に示している。より具体的には、プリントヘッド14は、抵抗ヒータ20及びトランジスタ21などの構成要素を、不活性化層、中間誘電体層、絶縁層、接合パッド、識別回路などの、その他の集積回路の構成要素とともに上部に形成する基板を含む。インクバリア層19が、構成要素20及び21並びにその他の基板領域を覆い、これがエッチング又は別様に加工されて発射チャンバ18及び流体チャネル17を形成する。流体チャネル17の各々は、プリントヘッド14の中心に位置するインクスロット16と流体連通して配置される。このようにして、カートリッジ10内のバルク供給源からのインクが、インクスロット16及びそれぞれの流体チャネル17を介して発射チャンバ18に供給される。上述したプリントヘッド14は、本主題発明を説明するために一例として提供するものであり、説明する実施形態に限定されるものではないことに留意されたい。例えば、サーマルインクジェットプリントヘッドには、インクスロットを含まないものもある。代わりに、インクは、インク供給源からプリントヘッドの端部に沿って射出チャンバに供給される。また、全てのプリントヘッドが、プリントヘッド回路上に統合されたトランジスタを有しているわけではなく、これらのトランジスタを印刷システムのコントローラに組み込むこともできる。
【0018】
バリア層19にはノズル板23が付着され、このノズル板23は複数のノズル22を有し、これらの各々はそれぞれの発射チャンバ18に対応する。バルク供給源からインクスロット16を介して供給されるインクは、ノズル22のインク、並びに発射チャンバ18、流体チャネル17及びインクスロット16内のインクを含むインク流体柱を形成する。インクバルク供給源において陰圧が発生し、これが保持されてノズル22に(図3に示す)メニスカス33が形成され、プリントヘッド14が印刷動作を行っていない時にインクがプリントヘッド14からあふれ出るのを防ぐ。本主題発明は、インク供給源内に陰圧を発生させることによりメニスカスを形成するための機構を含むカートリッジを使用することに限定されるものではないことに留意されたい。当業者であれば、このような機構を伴わずにメニスカスを形成できることを理解するであろう。
【0019】
個々の発射チャンバ18ごとに、対応する抵抗ヒータ20が存在する。コントローラからの印刷命令に応答して抵抗ヒータ20に給電を行うことにより、ヒータ20が発射チャンバ18内のインクを加熱するようになる。図4に概略的に示すように、(図6に示す)コントローラ29からの印刷命令に応答して、インク発射チャンバ18内で急激に膨張した気泡24がノズル22を通じてインク滴31を押し出す。しかしながら、非印刷活動期間中にインクが乾燥したり、又はインク内の溶媒が蒸発したりすることにより、ノズル22においてインクの粘性が増してノズル22が塞がれることがある。印刷を開始した際に、ある時間が経過するまでノズル22が発射を行うことができず、これがカートリッジ10及び印刷システムにより作成される印刷品質に直接影響を及ぼす。
【0020】
本発明では、振動エネルギーを、好ましくは音波又は超音波エネルギーを介して外部発振源からインクジェットカートリッジの外部を通じて流体柱に伝達させ、流体柱及び/又は複数のノズル22におけるメニスカス33を振動又は揺動させることによりインクジェットカートリッジのノズル機能を保持又は回復させる。本発明の説明の都合上、本明細書で使用する音波エネルギー(<20kHz)という用語は超音波エネルギー(>20kHz)を含み、これらの両方が流体柱の少なくとも一部におけるインクの揺動又は振動を誘発するものとする。本明細書で使用する流体柱は、インクバルク供給源とノズル22との間に存在するインク、或いはノズル22及びインク射出チャンバ18における、又はこれらの中のインクを含むものとする。本明細書で説明する本例では、流体柱は、ノズル22(メニスカス33を含む)、発射チャンバ18、流体チャネル17、及びインクスロット16内に存在するインクを含む。流体柱を素早く振動又は揺動させることで、流体柱内のインク溶媒が補充されることによりインクの組成及び特性が保持され、ノズルを塞ぐ又は詰まらせる可能性のあるインクのクラスト化が防がれる。
【0021】
図5及び図6では、インクジェットカートリッジ10、及びカートリッジ10を受け入れて印刷用の印刷媒体と離隔した関係に保持するための印刷システムのポケット26を示している。ある実施形態では、印刷システムを、印刷媒体が印刷動作のためにプリントヘッド14の側を通過する時にカートリッジ10が静止したままであるタイプのものとすることができる。プリントヘッド14は、プリントヘッド14の側を通過する媒体上に印刷するための印刷命令を受け取るために、スナウト13上の電気的相互接続部30を介してコントローラ29と電気的に連結される。プリントヘッド14の流体柱内のインクを振動させるために、変換器25が、カートリッジ10の外部に振動力を与えるようにカートリッジ10又はポケット26に対して配置される。この振動力の印加又は振動エネルギーの伝達を、非印刷活動期間中に、又は印刷動作中に、或いは非印刷活動期間中及び印刷動作中に連続して行って、インクの粘性がノズルを詰まらせる状態まで増加するのを防ぎ、或いは目詰まりに起因するノズル機能を回復させる。また、本明細書で例示及び説明する実施形態は、カートリッジの外部に振動力を印加する変換器を示しているが、いくつかの実施形態は、カートリッジ内部(例えばスナウト領域内)に装着された変換器、及び/又はプリントヘッドの構成要素として一体化された変換器を含むこともできる。
【0022】
変換器25を印刷システム上に配置して、変換器25がポケット26に振動力を与えるようにすることができる。変換器25をポケット26又はカートリッジ10の外部に接触させて配置して、インク滴を射出せずに流体柱及び/又はメニスカス33を振動又は揺動させるために必要な周波数の又は周波数範囲内の振動力を与えるようにすることができる。図5及び図6に示すように、ポケット26は、カートリッジ10及び/又はスナウト13を受け入れるための複数の相互接続された及び/又は離隔された壁27を含むことができ、変換器25は、この壁27の1つと接して配置される。ポケット壁27とカートリッジ10及び/又はスナウト13との接触面により、矢印28で表す変換器25からノズル22への結合路が提供される。また、変換器25の作動中にポケット26内のカートリッジ10の動きが最小限に抑えられるように、ポケット26とカートリッジ10及び/又はスナウト13との接触面は十分に密着させる必要がある。従って、カートリッジ10及び/又はスナウト13は、ポケット26内の受け入れ面と嵌合関係で存在する1又はそれ以上の基準面を含むことができる。変換器25はいずれの圧電変換器であってもよく、又は容認できる周波数の音波エネルギー又は超音波エネルギーを発生させることができるその他の変換器であってもよい。
【0023】
また、本システム及び方法を適用する際には、ポケット26、カートリッジハウジング11、及びスナウト13を構成する材料の組成を考慮する必要がある。より具体的には、これらの構成要素の材料組成は、変換器25により発生する振動力又は振動エネルギーを流体柱に十分に結合させるものでなければならない。例えば、スチールなどの金属、又はポリエチレンテレフタレートなどのガラス充填プラスチック、或いはこれらの2つの組み合わせが十分な結合を与えることができる。
【0024】
変換器25がプリントヘッド14及びノズル22に対してポケット26又はカートリッジ10と接触する地点、流体柱内の又はノズル22のインクを揺動又は振動させるために必要な周波数又は周波数範囲、或いは振幅又は振幅範囲は、カートリッジのタイプによって異なり得る。接触点又はエネルギー周波数を決定する際に考慮すべき変数又はパラメータとして、カートリッジハウジング11、スナウト13、及びポケット26の材料組成を挙げることができ、流体柱の構成要素の構造概念には、インクスロット16、流体チャネル17、発射チャンバ18、及びノズル22の寸法が含まれ、インクの特性、すなわちインク粘度を考慮することができる。また、振動エネルギーの周波数又は振幅、或いは変換器25の適用範囲を決定する際には、インク特性を考慮することができる。このようなインク特性は、インクの乾燥時間(インクがノズルで乾くのに必要な時間量)、インク粘度、及び音速(音がインク媒体中を進むことができる速度)を含むことができる。
【0025】
また、これらのパラメータは、音波振動又は音波エネルギーの印加に必要な継続時間に影響を与える可能性もあり、この継続時間がさらに、非印刷活動期間又は印刷動作期間の継続時間により影響を受ける可能性がある。例えば、上述のパラメータを考慮に入れて、所定の継続時間T1が経過する間に印刷システムが印刷動作を行わなかった場合、インクジェットカートリッジ10に振動力を印加すべきであると判断することができ、この場合ノズル機能を保持するために所定の継続時間T2にわたって振動力が印加される。継続時間T1が経過したら変換器25を作動させる信号を生成するようにコントローラ29をプログラムすることができる。ノズル機能を保持するために、コントローラ29が別の印刷命令を生成するまで変換器25を作動したままにしておくことができる。或いは、カートリッジ10のノズル機能を保持するために、コントローラ29は、変換器25を非作動期間中又は印刷中に離れた期間で作動させるための複数の信号を生成することができる。
【0026】
上述したこれらのパラメータは、考慮できるパラメータの一例として提供したものであり、完全なリストを提供することを意図するものではない。実際には、変換器25の接点及びインク揺動周波数を、個々のカートリッジ又はカートリッジタイプごとに経験的に決定しなければならない可能性がある。この目的のために、同じ又は同様のインクを充填した同様の物理特性を有するタイプのカートリッジに関して、変換器の接点の場所及びインクの揺動周波数又は振動周波数を予測して絞り込むことができる。
【0027】
本発明では、ノズル保持モード及びノズル回復モードの両方においてテストを行った。ノズル保持モードは、ノズル22を塞ぐ時点までインクが乾いたり又はインクの粘性が増したりするのを防ぐためにカートリッジを音波励起に曝すことができる非印刷活動期間を含む。回復モードは、ノズルを塞ぐ時点までインクが乾いたり又はインクの粘性が増したりするようになる長い非印刷活動期間を含むことができる。
【0028】
カートリッジをメチルエチルケトン(MEK)/メタノール溶媒型インク(Videojet製品番号D6−5614)で満たし、音波励起を行わずに15分間蓋をしないままにすることにより比較テストを行った。テストの試料に関しては、図5に示すものと同様の一体型スナウト構造のHP45Aサーマルインクジェットカートリッジを利用した。カートリッジ10及びスナウト13はガラス充填プラスチック材料からなり、ポケット26は合金鋼からなるものとした。15分の時間が経過した後に印刷を開始し、大半のノズルが印刷開始後までインク滴を発射しなかった。図7を参照すると、印刷列を含む印刷イメージの写真を示している。1kHzの周波数で印刷を行った場合、テストカートリッジ内の大半のノズルが、46列目前後が印刷されるまで発射を開始しなかった。
【0029】
次に、同じカートリッジをさらに15分間音波励起に曝した。圧電変換器を作動させて、15分間の非印刷活動期間にわたって音波振動力を印加した。圧電変換器25を、プリントヘッド14の約1と1/2”上にあるスナウト13に隣接する領域でポケット26に接触させて配置した。図8を参照すると、音波励起に曝した後にカートリッジが生成した印刷列を含む印刷イメージの写真を示している。1kHzの周波数で印刷を行った場合、テストカートリッジ内の大半のノズルが先頭列で発射及び印刷を開始した。
【0030】
他のテストでは、ノズルのインクメニスカスの動きを観察するために、ストロボ照明源を使用するビデオシステムを使用してHP45Aのプリントヘッド上のノズルを観察した。Video Jet製品番号D6−5614のインクで満たした上述のHP45Aインクジェットカートリッジを、音波励起を行わずに15分間蓋をしないままにしておいたら、ノズル上の乾燥膜がビデオシステムにより容易に観察された。カートリッジに音波エネルギーを印加すると、クラスト化したノズルが約30秒で再溶解した。2時間蓋をしないままにしたカートリッジを使用して同様のテストを行った。この場合、クラスト化したノズルは約60秒で再溶解した。
【0031】
ストロボ照明源を使用して、ノズル内のメニスカス位置の「スナップショット」を観察することができた。照明源を音波エネルギーの印加に対して遅らせることにより、この遅らせた量に応じて様々な位置にあるメニスカスを観察することができる。このようにして、ノズルの底部から頂部までの範囲に及ぶ位置の流体、さらにはノズルの上で僅かに膨らむ流体をも観察することができる。図9及び図10は、ノズルにおけるメニスカス揺動の短編ビデオのスチール写真である。より具体的には、図9では、インクメニスカスがノズルの頂部にあって、或いはここから飛び出ており、図10では、インクメニスカスが引っ込んでおり、従ってノズルを確認することができる。
【0032】
上述したビデオ観察のテスト構成を使用して、各々がメニスカス揺動を生じる約2.5kHz〜約30kHzの周波数の範囲の振動を評価した。約2.0KHzの周波数の振動エネルギーも効果的となり得る。しかしながら、メニスカス揺動の周波数は、この入力周波数とは一致しない。むしろ、メニスカス揺動は、カートリッジの流体柱の構造概念に関連する共振周波数により一定であるように見えた。すなわち、揺動は、流体柱がバルクインク供給源とメニスカスとの間で移動できる速さと同じ速さでしか進むことができない。流体柱のメニスカスは、振動、揺動、又は変調できる一方で、ノズルの局所領域周辺で若干の氾濫が発生する可能性もあり、この氾濫もノズル機能の保持に役立つことができる。
【0033】
これに加えて、或いはこれとは別に、プリントヘッドが印刷動作を行っている最中又は場合に流体柱に振動エネルギーを印加することができる。MEK又はメタノール溶媒含有MEKを含むインクを含み、40μm×40μmの流体チャネルを有するカートリッジをテストした。プリントヘッドにインクを供給するインク溜め内のインク量は、約15cc〜約45ccの範囲であった。プリントヘッドは、2KHz及び/又は8KHzの印刷周波数で印刷を行い、6KHzの周波数及び10%の振幅で振動エネルギーを流体柱に印加した。
【0034】
印刷動作中及び非印刷活動期間中に振動エネルギーを連続して印加した。印刷動作と印刷動作との間の非印刷活動期間として、6秒、32秒、169秒(3分)、及び893秒(15分)を含めた。これらのカートリッジから生成された印字サンプルを、印刷作動中又は同じ長さの非印刷活動期間中のいずれにおいても振動エネルギーを印加しなかった同じカートリッジから得た印字サンプルと比較した。図11を参照すると、振動エネルギーを印加しなかったカートリッジの印字サンプルの下に、振動エネルギーを印加したカートリッジの印字サンプルの比較を示している。上の行にある印字サンプルは、振動エネルギーを印加しなかったカートリッジから得たものであり、下の行にある印字サンプルは、振動エネルギーを印加したカートリッジから得たものである。6秒の非印刷活動期間では、印刷品質の改善は統計学的に有意ではなかったが、32秒、169秒、及び893秒の非印刷活動期間では印刷品質が改善し、統計学的に有意なものであった。169秒及び893秒の非印刷活動期間では、振動エネルギーを印加しなかった場合のカートリッジは印刷を行わず、これについては×印を付けた四角形で表している。
【0035】
上述したように、メニスカスが振動又は揺動できる周波数、及びノズル機能を保持又は回復するのに必要な振動力を印加する継続時間は、異なるカートリッジタイプ又はインクタイプによって異なり得る。従って、コントローラ29は、複数のインクジェットカートリッジタイプの独自性及び/又は複数のインクタイプの独自性に関するデータを含むデータベース32にアクセスすることができる。また、データベース32は、個々のカートリッジタイプ及び/又はインクタイプに関連する1又はそれ以上の周波数又は周波数の範囲、並びに非印刷活動期間中又は印刷動作中に変換器25を作動させるための1又はそれ以上の期間のスケジュールに関するデータを含むことができる。上述したように、カートリッジに関連するいくつかのパラメータにより、流体柱を揺動させるように選択される周波数又は周波数の範囲が制御されることがある。例えば、カートリッジタイプが異なれば、使用するインクも異なる(すなわち水性対溶媒型、又は粘性の異なるインク)可能性があり、又は流体柱の構造概念も異なる可能性がある。また、カートリッジ又は印刷システムのために選択する印刷モードも流体柱内のインクの揺動周波数に影響を及ぼす可能性がある。例えば、ドラフト印刷モードの印刷品質基準は、高速印刷モードとしてそれほど厳しくないと考えられ、従って流体柱内のインクを低周波数で又は短い期間にわたって揺動させることができる。従って、データベース32は、1又はそれ以上の印刷モードに関連する1又はそれ以上の周波数又は周波数の範囲に関するデータを含むことができる。
【0036】
カートリッジ10は、カートリッジ10がポケット26内に装着されてコントローラ29と電気的に相互接続される時に、カートリッジタイプ及び/又はインクタイプを示す信号を生成する識別回路を有することが好ましい。このようにして、非印刷活動期間中又は印刷動作中にカートリッジ10のノズル機能を保持又は回復するために、コントローラ29は、データベース32にアクセスして、カートリッジに関連する周波数又は周波数の範囲、作動のための1又はそれ以上の継続時間を選択して変換器25の作動を制御するように構成される。
【0037】
この印刷システムはまた、プリントヘッドからインクが射出されているかどうかを検出するための光学センサ又はその他の感知システムを使用してノズル機能を継続的にモニタする閉ループシステムを含むこともできる。このような光学センサは当業者に公知であるとともに、光ビームを通過するインク滴を検出する1又はそれ以上のスルービームセンサを含むことができる。別の光学システムは、所定の画像に基づいて及び印刷命令に応答してインク滴又は媒体上に印刷されるスポットを検出するセンサを組み込むことができる。また、静電システムが電荷板を利用し、この電荷板が電荷板上に印刷された所定の画像に基づいて特定の電気特性を表示するようにすることができる。上記の例では、インク滴が印刷のために射出される際に通過するノズルが印刷命令に応答して選択され、或いは予め決定される。印刷命令に基づいてインク滴がノズルを通じて射出されるかどうかを判定するための1又はそれ以上のセンサが設けられる。ノズルが要求通りに発射を行わない場合、センサがコントローラ29へ信号を送信し、これに応答してコントローラ29が変換器25を作動させ、ノズル回復モードを開始してノズルの塞がりを取り除くことができる。
【0038】
本明細書では本発明の好ましい実施形態を図示し、これについて説明したが、このような実施形態は一例として提供したものにすぎず、限定として提供したものでないことが明らかであろう。当業者には、本発明の教示から逸脱することなく数多くの変形、変更、及び置換が思い浮かぶであろう。例えば、変換器をカートリッジの内部に装着し、及び/又はプリントヘッドの構成要素として含めることができる。従って、添付の特許請求の範囲の最大限の思想及び範囲内において本発明を解釈すべきであることが意図される。
【符号の説明】
【0039】
10 インクジェットカートリッジ
11 ハウジング
12 プリントヘッドアセンブリ
13 スナウト
14 プリントヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク射出チャンバに各々が関連する複数のノズルを有し、前記チャンバから前記ノズルを通じてインク滴を射出するためのインクを前記チャンバ内に蓄えたプリントヘッドと、
少なくとも前記射出チャンバ内のインクを含む個々のノズルごとのインク流体柱と、
複数の前記流体柱に振動エネルギーを伝達して、複数の前記インク流体柱の各々の少なくとも一部を同時に振動させる変換器と、
前記変換器を作動させるための信号を生成するコントローラと、
を備えることを特徴とするインクジェット印刷システム。
【請求項2】
インク供給源と流体連通した前記プリントヘッドを含むインクジェットカートリッジを備え、印刷媒体上に印刷するために前記インクジェットカートリッジを前記印刷システム上に装着することができる、
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット印刷システム。
【請求項3】
個々のノズルに関連する前記流体柱がメニスカスを含み、前記流体柱に前記振動エネルギーを伝達すると、複数の前記ノズルの個々のノズル内の前記メニスカスが同時に振動する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット印刷システム。
【請求項4】
前記変換器が、前記カートリッジの外部にある場所から前記振動エネルギーを伝達する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット印刷システム。
【請求項5】
前記変換器が、前記振動エネルギーを前記カートリッジの内部にある場所から伝達する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット印刷システム。
【請求項6】
前記変換器が、プリントヘッド回路の構成要素として統合される、
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット印刷システム。
【請求項7】
前記変換器が、印刷動作中に前記振動エネルギーを前記流体柱に伝達する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット印刷システム。
【請求項8】
前記変換器が、印刷休止中に前記振動エネルギーを前記流体柱に伝達する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット印刷システム。
【請求項9】
前記変換器が、印刷動作が完了した直後に開始して、コントローラが印刷命令を生成するまでの連続した途切れない時間にわたって音波エネルギーを伝達する、
ことを特徴とする請求項8に記載のインクジェット印刷システム。
【請求項10】
印刷のために前記インクジェットカートリッジを内部に装着するポケットをさらに備え、前記振動エネルギーが、前記ポケット及びカートリッジを通じて複数の前記流体柱に伝達される、
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット印刷システム。
【請求項11】
前記変換器が、前記カートリッジの外面上の領域に振動力を直接印加することにより、前記振動エネルギーが前記カートリッジを通じて複数の前記流体柱に伝達されるようになる、
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット印刷システム。
【請求項12】
前記変換器が、前記振動力を前記プリントヘッドに印加する、
ことを特徴とする請求項11に記載のインクジェット印刷システム。
【請求項13】
前記変換器が、前記プリントヘッドにより定められていないカートリッジ上の領域に前記振動力を印加する、
ことを特徴とする請求項11に記載のインクジェット印刷システム。
【請求項14】
前記振動エネルギーが、約2.0kHz〜約30kHzの範囲の周波数の音波エネルギー及び超音波エネルギーを伝達することにより発生する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット印刷システム。
【請求項15】
前記コントローラが、印刷命令を開始するための信号を生成するとともに、前記変換器を作動させるための前記信号を生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット印刷システム。
【請求項16】
1又はそれ以上のサーマルインクジェットカートリッジを印刷に利用するサーマルインクジェット印刷システムであって、
インク供給源と流体連通するプリントヘッドを有し、印刷媒体上に印刷するために印刷システム上に装着できるインクジェットカートリッジと、
プリントヘッド基板に装着され複数のノズルを有するノズル板を備え、前記基板上に、各々が前記インク供給源と流体連通する複数の発射チャンバを伴い、個々の発射チャンバがノズルに関連し、コントローラからの印刷命令に応答して前記発射チャンバ内でインクが加熱されることにより前記ノズルを通じて前記インク滴が液滴の形で射出される前記プリントヘッドと、
少なくとも個々のノズルごとの前記発射チャンバ内のインクを含む、個々のノズルに関連するインク流体柱と、
前記流体柱に振動エネルギーを伝達して、前記インク流体柱の1又はそれ以上の少なくとも一部を振動させるための変換器と、
前記変換器を作動させるための信号を生成するコントローラと、
を備えることを特徴とするサーマルインクジェット印刷システム。
【請求項17】
個々のノズルに関連する前記流体柱がメニスカスを含み、前記流体柱に前記振動エネルギーを伝達すると、複数の前記ノズルの個々のノズル内の前記メニスカスが同時に振動する、
ことを特徴とする請求項16に記載のサーマルインクジェット印刷システム。
【請求項18】
前記変換器が、前記振動エネルギーを複数の前記流体柱に伝達して複数の前記流体柱を同時に振動させる、
ことを特徴とする請求項16に記載のサーマルインクジェット印刷システム。
【請求項19】
前記変換器が、前記印刷システム上の前記カートリッジの外部にある場所に位置する、
ことを特徴とする請求項16に記載のサーマルインクジェット印刷システム。
【請求項20】
前記変換器が、前記プリントヘッドに振動力を印加して、前記振動エネルギーを前記流体柱に伝達する、
ことを特徴とする請求項16に記載のサーマルインクジェット印刷システム。
【請求項21】
前記カートリッジが、前記インク供給源を内部に含むカートリッジハウジングを備え、該ハウジング内に、前記インク供給源内に陰圧を発生させて前記ノズルに前記メニスカスを形成するための機構が支持される、
ことを特徴とする請求項16に記載のサーマルインクジェット印刷システム。
【請求項22】
前記カートリッジが、前記プリントヘッドを装着したスナウトを含むプリントヘッドアセンブリをさらに備え、前記スナウトの前記プリントヘッドを含まない領域に前記振動力を印加することにより、前記振動エネルギーを前記流体柱に伝達する、
ことを特徴とする請求項16に記載のサーマルインクジェット印刷システム。
【請求項23】
前記カートリッジが、前記プリントヘッドを装着したスナウトを含むプリントヘッドアセンブリをさらに備え、前記カートリッジが前記印刷システムのポケット内に装着され、前記変換器が、前記ポケットの、前記スナウトの少なくとも一部に接する部分に振動力を印加する、
ことを特徴とする請求項16に記載のサーマルインクジェット印刷システム。
【請求項24】
前記プリントヘッド内にインクスロットが形成され、これを通じて前記インク供給源からのインクが前記発射チャンバへ移動し、前記プリントヘッドが、各々が前記インクスロットと流体連通するとともに各々が発射チャンバに関連する複数の流体チャネルをさらに備え、該複数の流体チャネルが、前記発射チャンバにインクを供給するために前記インクスロットと前記発射チャンバとの間に配置され、前記流体柱が、前記ノズル、前記発射チャンバ、前記流体チャネル及び前記インクスロット内のインクを含む、
ことを特徴とする請求項16に記載のサーマルインクジェット印刷システム。
【請求項25】
インクジェット印刷システム内のプリントヘッドのノズル機能を保持又は回復する方法であって、
インク供給源と流体連通するプリントヘッドを有するインクジェットカートリッジを設けるステップであって、前記プリントヘッドが複数のノズルを有し、メニスカスと射出チャンバ内のインクとを含むインク流体柱が個々のノズルごとに存在するステップと、
前記複数のインク流体柱に振動エネルギーを伝達することによって、前記インク流体柱の1又はそれ以上の少なくとも一部を振動させるステップとを含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項26】
前記インク流体柱を振動させるステップが、前記インクジェットカートリッジの外面に振動力を印加するステップを含む、
ことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記振動力が、前記インクジェットカートリッジ上の前記プリントヘッドにより定められていない領域に印加される、
ことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記振動力が前記プリントヘッドに印加される、
ことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記メニスカスを振動させるステップが、印刷のために前記インクジェットカートリッジを内部に装着したポケットを通じて前記振動エネルギーを伝達するステップを含む、
ことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記振動ステップが、印刷動作中に前記振動エネルギーを前記流体柱に伝達するステップを含む、
ことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記振動ステップが、印刷休止期間中に前記振動エネルギーを前記流体柱に伝達するステップを含む、
ことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記振動ステップが、印刷動作が完了した直後に開始して、コントローラが印刷命令を生成するまでの連続した途切れない時間にわたって音波エネルギー又は超音波エネルギーを伝達するステップを含む、
ことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項33】
前記振動エネルギーを伝達することに応答してインクジェットカートリッジの前記流体柱が振動するようになる所定の周波数又は所定の周波数の範囲を設けるステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項34】
前記印刷システム内に装着された前記インクジェットカートリッジを識別するステップと、該識別したカートリッジの前記メニスカスが振動するようになる1又はそれ以上の周波数又は周波数の範囲をデータベース内に設けるステップと、該データベースから選択した1又はそれ以上の周波数の前記振動エネルギーを伝達するステップとをさらに含む、
ことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項35】
複数の異なるタイプのインクジェットカートリッジの識別に関するデータ、及び個々のインクジェットカートリッジタイプに関連する1又はそれ以上の周波数又は周波数の範囲に関するデータを含むデータベースを設けるステップと、インクジェットカートリッジタイプに関連する前記1又はそれ以上の周波数又は周波数の範囲を選択するステップと、識別したインクジェットカートリッジタイプの前記流体柱に前記選択した1又はそれ以上の周波数又は周波数の範囲で前記振動エネルギーを伝達するステップとをさらに含む、
ことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項36】
複数の異なるタイプのインクジェットカートリッジの識別に関するデータ、及び個々のインクジェットカートリッジタイプに関連する1又はそれ以上の振幅又は振幅の範囲に関するデータを含むデータベースを設けるステップと、インクジェットカートリッジタイプに関連する前記1又はそれ以上の振幅又は振幅の範囲を選択するステップと、識別したインクジェットカートリッジタイプの前記流体柱に前記選択した1又はそれ以上の振幅又は振幅の範囲で前記振動エネルギーを伝達するステップとをさらに含む、
ことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項37】
複数の異なるタイプのインクジェットカートリッジの識別に関するデータ、及び個々のインクジェットカートリッジタイプに関連する1又はそれ以上の継続時間又は継続時間の範囲に関するデータを含むデータベースを設けるステップと、インクジェットカートリッジタイプに関連する前記1又はそれ以上の継続時間又は継続時間の範囲を選択するステップと、識別したインクジェットカートリッジタイプの前記流体柱に前記選択した1又はそれ以上の継続時間又は継続時間の範囲にわたって前記振動エネルギーを伝達するステップとをさらに含む、
ことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項38】
複数の異なるタイプのインクの識別に関するデータ、及び個々のインクタイプに関連する1又はそれ以上の周波数又は周波数の範囲に関するデータを含むデータベースを設けるステップと、インクタイプに関連する前記1又はそれ以上の周波数又は周波数の範囲を選択するステップと、識別したインクタイプを使用するプリントヘッドの前記流体柱に前記選択した1又はそれ以上の周波数又は周波数の範囲で前記振動エネルギーを伝達するステップとをさらに含む、
ことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項39】
複数の異なるタイプのインクカートリッジの識別に関するデータ、及び個々のインクタイプに関連する1又はそれ以上の振幅又は振幅の範囲に関するデータを含むデータベースを設けるステップと、インクタイプに関連する前記1又はそれ以上の振幅又は振幅の範囲を選択するステップと、識別したインクタイプを使用するプリントヘッドの前記流体柱に前記選択した1又はそれ以上の振幅又は振幅の範囲で前記振動エネルギーを伝達するステップとをさらに含む、
ことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項40】
複数の異なるタイプのインクカートリッジの識別に関するデータ、及び個々のインクタイプに関連する1又はそれ以上の継続時間又は継続時間の範囲に関するデータを含むデータベースを設けるステップと、インクタイプに関連する前記1又はそれ以上の継続時間又は継続時間の範囲を選択するステップと、識別したインクタイプを使用するプリントヘッドの前記流体柱に前記選択した1又はそれ以上の継続時間又は継続時間の範囲にわたって前記振動エネルギーを伝達するステップとをさらに含む、
ことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項41】
印刷命令に応答して1又はそれ以上のノズルを通じてインク滴が射出されるかどうかを検出するための1又はそれ以上のセンサを設けるステップと、前記印刷命令に応答して前記ノズルを通じて1又はそれ以上のインク滴が射出されない場合、コントローラへ信号を送信するステップと、前記センサにより送信された前記信号に応答して複数の前記ノズルの各々の中の前記流体柱の少なくとも一部を振動させるステップとをさらに含む、
ことを特徴とする請求項25に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公表番号】特表2011−521803(P2011−521803A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507672(P2011−507672)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/042466
【国際公開番号】WO2009/135099
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(502153385)ヴィデオジェット テクノロジーズ インコーポレイテッド (22)
【Fターム(参考)】