説明

インクジェットヘッドおよびその製造方法

【課題】インクジェットヘッドの液体撥水材料を提供する。
【解決手段】インクジェットヘッドは、フッ素含有基を有する加水分解性シラン化合物および光重合性樹脂組成物を含む縮合生成物から構成されるノズル材料から形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、より小さい小滴、より高い駆動周波数、およびより多数のノズルでの性能を改善し、インクジェット記録システムにおける記録特性をより進歩させるための技術的開発が継続している。画像記録は、液体を、紙に代表される記録媒体に付着する小滴として、射出開口部から射出することにより行われる。
【0003】
この場合、表面処理は、射出開口部表面(射出口;吐出口が開口する表面)を常に同じ条件に保つことにより、射出性能を維持することがさらに重要になる。さらに、一般に、表面に残るインクをたとえばゴムブレードで拭い去り、インクジェットヘッドにおける射出開口部表面の状態を定期的に維持している。液体撥水材料は、容易なワイピング(拭き取り)および耐ワイピング性の点で必要である。
【0004】
さらに、液体撥水層が表面に形成される際に、その液体撥水層はその下層に付着することが必要とされ、液体撥水層の剥離という問題が生じる。インクジェットヘッドに使用されるインクは、多くの場合は中性ではないため、液体撥水材料は更にインクに対する耐久性を有し、ノズルに対する付着力を有することが要求あれる。さらに、製造プロセスの単純化およびコストの削減という見地から、剥離を防止するほかに、ノズル材料および液体撥水層を一度に形成することが望まれている。つまり、ノズル材料自体が、液体撥水性を有することが望まれている。
【0005】
これまでに、インクジェットヘッドにおけるノズル表面の液体撥水処理として、様々な方法が示されてきた。しかし、こうした方法の殆どは、形成されたノズルを表面処理するだけであり、ノズル材料自体は液体撥水性を持たなかった。
【0006】
シラン化合物含有フッ化物を使用する表面処理法は、特表平10−505870号公報および米国特許第6283578号明細書に記載されている。
【0007】
しかし、これらの表面処理は、液体撥水性の付与を目的としており、液体撥水材料自体がパターン形成性を有する表面処理ではない。さらに、感光性を有する液体撥水材料は、特開平11−322896号公報、特開平11−335440号公報および特開2000−26575公報により示された。これらの材料は、ノズルのような固体構造を形成できなかった。
【0008】
代表的な液体撥水材料であるフッ素含有化合物を樹脂に添加すると、フッ素含有基が、表面エネルギーが低いために表面に配列され、液体撥水性を呈するという十分に周知されている現象が生じる。
【0009】
しかし、フッ素含有化合物は、一般に、他の樹脂に対する溶解性が低いため、感光性樹脂と混合して一緒に使用することは困難であった。
【0010】
フッ素含有基を有するブロックコポリマーは、特開2002−105152号公報にコーティング組成物として示されているが、ノズル形成のような高精度パターン形成に適用することはできなかった。特開2002−292878号公報は、フッ素含有樹脂から製造されたノズル構造を有するオリフィスプレートに言及している。フッ素樹脂には、フォトリソグラフィによるパターン形成に対応する感光特性がないため、ノズルは、乾式エッチングにより形成しなければならなかった。さらに、ノズルのインク通路の内側は、射出性能を得るために親水性である必要があり、親水性処理は、インク通路の内側、および基礎材料などとの付着側で行う必要がある。
【0011】
フッ素含有化合物を含むカチオン重合性樹脂組成物は、特開平08−290572号公報により示されている。しかし、この発明の目的は、材料の水分吸収率の減少であって、液体撥水性ではない。この発明の化合物は、樹脂組成物との溶解性のためにヒドロキシル基を有するため、組成物は液体撥水性を示さなかった。
【0012】
米国特許第5644014号明細書、欧州特許第587667号明細書および特許第3306442号明細書は、フッ素含有基を有する加水分解性シラン化合物を含む液体撥水材料に言及している。上記の材料は、光ラジカル重合に由来する光硬化性を指示しているが、フォトリソグラフィ技術を使用したパターン形成にも、インクジェットヘッドに対する適用にも触れていない。
【特許文献1】特表平10−505870号
【特許文献2】米国特許第6,283,578号
【特許文献3】特開平11−322896号
【特許文献4】特開平11−335440号
【特許文献5】特開2000−26575号
【特許文献6】特開2002−105152号
【特許文献7】特開2002−292878号
【特許文献8】特開平8−290572号
【特許文献9】米国特許第5,644,014号
【特許文献10】欧州特許第587667号
【特許文献11】日本国特許3306442号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記の多くの点を考慮してなされ、高液体撥水性、ワイピングに対する高耐久性(高液体撥水性を維持するため)、およびワイピングの容易さを同時に有し、高品質の画像記録を実現する、インクジェットヘッドの液体撥水材料を提供するために実施される。
【0014】
さらに他の目的は、上記のノズル材料自体に液体撥水性を与え、液体撥水処理プロセスを不要にすることにより、ノズルの射出出口部分の正確さの改善、および単純な製造プロセスを実現する製造方法を提供することにある。
【0015】
上記の目的を達成するために設計された本発明は、ノズル材料が、フッ素含有基を有する加水分解性シラン化合物および光重合性樹脂組成物を含む、インクジェットヘッドである。
【0016】
上記の目的を達成するために設計されたもう1つの発明は、ノズル材料を基板上でパターン露出して現像することで液体撥水性を有するノズルをインクジェットヘッドの表面に形成するインクジェットヘッド製造方法であって、ノズル材料が、フッ素含有基を有する加水分解性シラン化合物および光重合性樹脂組成物の縮合生成物を含むものである。
【発明の効果】
【0017】
つまり、液体撥水材料およびフォトレジスト組成物の相溶性は、上記の組成物を使用して改善される。したがって、ノズルのような高精度構造の形成に対応する良好なパターン形成特性、高液体撥水性および高ワイピング耐久性は、表面上で液体撥水処理を行うことなく実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明について、以下で詳細に説明する。
【0019】
本発明者らは、液体撥水処理を行わなかった場合でも、高液体撥水性および高ワイピング耐久性を有するノズル表面が、フッ素含有基を有する加水分解性シラン化合物および光重合性樹脂組成物を含有する縮合生成物を含む組成物をインクジェットヘッドのノズル材料として使用する結果として達成されることを発見した。
【0020】
本発明のノズル材料の組成物により、硬化材料は、加水分解性シランから形成されるシロキサンフレーム(無機フレーム)およびカチオン重合性基を硬化させることにより得られるフレーム(有機フレーム:エポキシ基を使用する場合、エーテル結合する)を有する。その際、硬化材料は、いわゆる有機および無機ハイブリッド硬化材料になり、ワイピングおよび記録液体に対する耐久性は、飛躍的に改善される。つまり、本発明の液体撥水層は有機フレームを有するため、シロキサンフレームのみにより形成された液体撥水層と比べて、フィルムとしての強度が改善し、ワイピング抵抗性が改善する。
【0021】
さらに、これは有機および無機ハイブリッド材料であるため、従来から問題であったフッ素含有化合物と光重合性樹脂組成物との相溶性が改善される。また、低表面自由エネルギーを有するフッ素含有化合物は、ノズル材料としての光重合性樹脂組成物と混合することが可能である。
【0022】
続いて、本発明の組成物材料について、具体的に説明する。フッ素含有基を有する加水分解性シラン化合物は、縮合生成物の開始材料であり、1つまたは複数の非加水分解性フッ素含有基および加水分解性置換基を有することが不可欠である。
【0023】
非加水分解性フッ素含有基として、直鎖または分枝鎖フルオロカーボン基を挙げることができる。分枝鎖フルオロカーボン基の場合、末端鎖または側鎖は、トリフルオロメチル基またはペンタフルオロエチル基であることが好ましい。フッ素含有基は、その表面自由エネルギーのために、表面に配列される傾向がある。
【0024】
一方、フルオロシランのフッ素含有基は、一般に、少なくとも1個、好ましくは少なくとも3個、特に少なくとも5個のフッ素原子、一般に30個以下、好ましくは25個以下のフッ素原子を含み、これらのフッ素原子は、1個または複数の炭素原子に結合している。炭素原子は、脂環式原子を含む脂肪族原子である。さらに、フッ素原子が結合する炭素原子は、少なくとも2個の原子によりシリコン原子、好ましくは炭素原子および/または酸素原子、たとえば、エチレンまたはエチレンオキシ連結部などのC1-4アルキレンまたはC1-4アルキレンオキシにより分離されることが好ましい。
【0025】
フッ素含有基を有する好ましい加水分解性シランは、一般式(1)の加水分解性シランであり:
【0026】
【化1】

【0027】
式中、Rfは、炭素原子に結合した1〜30個のフッ素原子を有する非加水分解性置換基であり、Rは非加水分解性置換基であり、Xは加水分解性置換基、bは、0〜2、好ましくは0または1、特に0の整数である。
【0028】
一般式(1)では、加水分解性置換基Xは、互いに同じでも異なっても良く、たとえば水素またはハロゲン(F、C1、BrまたはI)、アルコキシ(好ましくはC1-6アルコキシ、たとえばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、およびn−ブトキシ、sec−ブトキシ、イソブトキシ、およびtert−ブトキシ)、アリールオキシ(好ましくはC6-10アリールオキシ、たとえばフェノキシ)、アシルオキシ(好ましくはC1-6アシルオキシ、たとえばアセトオキシまたはプロピニルオキシ)、アルキルカルボニル(好ましくはC2-7アルキルカルボニル、たとえばアセチル)である。好ましい加水分解性置換基はハロゲン、アルコキシ基およびアシルオキシ基である。特に好ましい加水分解性置換基は、C1-4アルコキシ基、特にメトキシおよびエトキシである。
【0029】
非加水分解性置換基Rは、互いに同じであっても異なっても良く、官能基を含む非加水分解性置換基R、または官能基を含まない非加水分解性置換基Rで良い。一般式(1)では、置換基Rは、存在する場合、官能基を含まない基であることが好ましい。
【0030】
官能基がない非加水分解性置換基Rは、例を挙げるとアルキル(たとえばC1-8アルキル、好ましくはC1-6アルキル、たとえばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルおよびt−ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびオクチル)、シクロアルキル(たとえばC3-8シクロアルキル、たとえばシクロプロピル、シクロペンチルまたはシクロヘキシル)、アルケニル(たとえばC2-6アルケニル、たとえばビニル、1−プロペニル、2−プロペニルおよびブテニル)、アルキニル(たとえばC2-6アルキニル、たとえばアセチレニルおよびプロパギル)、シクロアルケニルおよびシクロアルキニル(たとえば、C2-6アルケニルおよびシクロアルキニル)、アリール(たとえばC6-10、たとえばフェニルおよびナフチル)、並びに対応するアリールアルキルおよびアルキルアリール(たとえばC7-15アリールアルキルおよびアルキルアリール、たとえばベンジルまたはトリル)である。置換基Rは、1個または複数の置換基、たとえばハロゲン、アルキル、アリールおよびアルコキシを含んでも良い。式(1)では、Rは、存在する場合、好ましくはメチルまたはエチルである。
【0031】
特に好ましい置換基Rfは、CF3(CF2n−Z−であり、nおよびZは、以下の一般式(4)で規定されるように規定される:
【0032】
【化2】

【0033】
式中、Xは、一般的な化合物1で規定されるとおりであり、好ましくはメトキシまたはエトキシであり、Zは二価有機基であり、nは0〜20、好ましくは3〜15、より好ましくは5〜10の整数である。好ましくは、Zは10個以下の炭素原子を含み、Zは、より好ましくは、6個以下の炭素原子を有する二価アルキレン基またはアルキレンオキシ基、たとえばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、メチレンオキシ、エチレンオキシ、プロピレンオキシ、およびブチレンオキシである。特に、エチレンが好ましい。
【0034】
特定の例は、CF3CH2CH2SiCl2(CH3)、CF3CH2CH2SiCl(CH32、CF3CH2CH2Si(CH3)(OCH32、CF3CH2CH2SiX3、C25CH2CH2SiX3、C49CH2CH2SiX3、n−C6l3CH2CH2SiX3、n−C8l7CH2CH2SiX3、n−C1021CH2CH2SiX3(X=OCH3、OC25 またはCl);i−C37O−CH2CH2CH2−SiCl2(CH3)、n−C6l3−CH2CH2−SiCl(OCH2CH32、n−C613−CH2CH2−SiCl2(CH3)およびn−C6l3−CH2CH2−SiCl(CH32である。特に好ましくは、C25−C24−SiX3、C49−C24−SiX3、C613−C24−SiX3、C817−C24−SiX3、C102l−C24−SiX3およびC1225−C24−SiX3、式中、Xはメトキシ基またはエトキシ基である。
【0035】
さらに、本発明者らは、異なる種類のフッ素含有基を有する少なくとも2種類の加水分解性シランを使用することにより、特に液体撥水特性、ワイピング耐久性、および記録液体などの化学薬品に対する抵抗性に関して、予想外に改善された結果が得られることを発見した。使用するシランは、好ましくは、そこに含まれるフッ素原子の数が異なるか、またはフッ素含有置換基の長さ(鎖中の炭素原子の数)が異なることが好ましい。
【0036】
こうした改善の根拠は明確ではないが、フルオロアルキル基は、最上面において最適な配列を取るはずであるため、異なる長さのフルオロアルキル基は、より高密度の構造配列を生じさせると考えられる。たとえば、C613−C24−SiX3、C8l7−C24−SiX3、およびC102l−C24−SiX3(Xは上記で定義するとおり)のうちの少なくとも2つを一緒に使用する場合、最上面における高フッ素濃度は、異なる長さのフルオロアルキル基により呈示され、単一のフルオロシランを添加する場合に比べて、指定された改善が得られる。
【0037】
さらに、フッ素含有基を有する上記のシラン化合物と異なるシラン化合物、つまりフッ素含有基を持たないシラン化合物を、縮合反応の開始材料として一緒に使用することは好適である。この場合、フッ素含有量、反応制御、および物理特性の制御が容易になる。
【0038】
本発明は、上記の縮合生成物および光重合性組成物を一緒に使用するが、耐久性の見地から、重合性基を縮合生成物中に導入することも適している。
【0039】
加水分解性シラン化合物の重合性置換基として、ラジカル重合性基およびカチオン重合性基を使用することができる。耐アルカリインクの見地から、この場合、カチオン重合性基が望ましい。
【0040】
カチオン重合性基を有する好ましい加水分解性シランは、一般式(2)の化合物である:
【0041】
【化3】

【0042】
式中、RCは、カチオン重合性基を有する非加水分解性置換基、Rは非加水分解性置換基、Xは加水分解性置換基、bは0〜2の整数である。
【0043】
カチオン重合性有機基として、エポキシ基およびオキセタン基で代表される環状エーテル基、ビニルエーテル基などを使用することができる。入用性および反応制御の見地から、エポキシ基が好ましい。
【0044】
前記置換基Rcの特定の例は、グリシジルまたはグリシジルオキシC1-20アルキル、たとえばグリシジルプロピル、β−グリシドキシエチル、δ−グリシドキシブチル、ε−グリシドキシペンチル、ω−グリシドキシヘキシル、および2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルである。最も好ましい置換基Rcは、グリシドキシプロピルおよびエポキシシクロヘキシルエチルである。対応するシランの特定の例は、g−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTS)、g−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、およびエポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシランである。ただし、本発明は、上記の化合物に限定されるわけではない。
【0045】
さらに、フッ素含有基または光重合性基を有する加水分解性シラン化合物に加えて、少なくとも1個のアルキル置換基を有する加水分解性シラン、少なくとも1個のアリール置換基を有するシラン、非加水分解性置換基を持たないシランは、液体撥水層の物理特性を制御するために、一緒に使用することができる。
【0046】
本発明に使用される好ましいその他の加水分解性シランは、一般式(3)のシランである:
【0047】
【化4】

【0048】
式中、Rは、置換または非置換アルキル基、および置換または非置換アリール基から選択される非加水分解性置換基であり、Xは加水分解性置換基、aは0〜3の整数である。
【0049】
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランなどが、特に挙げられる。本発明は、上記の化合物に限定されるわけではない。
【0050】
縮合生成物を調製するために使用されるシランの割合は、所望の用途に応じて選択され、無機重縮合物の製造の当業者の知識の範囲内である。フッ素含有基を有する加水分解性シランは、使用する加水分解性化合物全体の量に基づいて、0.5〜20モル%、好ましくは1〜10モル%の範囲の量で好適に使用される。これらの範囲内では、高度の液体撥水性および非常に均一な表面が得られる。得られる表面は、多くの場合、光の散乱に影響を与える凹および/または凸を形状有する傾向があるため、後者は、X線照射を伴う光硬化および/または記録用途には特に重要である。したがって、上記の範囲により、光硬化および/または記録用途に特に適する高度に撥水性かつ均一な表面が提供される。
【0051】
カチオン重合性基を有する加水分解性シランと、その他の加水分解性シランとの割合は、好ましくは10:1〜1:20の範囲である。
【0052】
一般に、上記加水分解性シランの縮合生成物は、当業者が周知しているゾル−ゲル法に従って、前記化合物の加水分解および凝縮により調製される。ゾル−ゲル法は、一般に、酸または塩基性触媒により任意に補助される加水分解性シランの加水分解を含む。加水分解種は、少なくとも部分的に凝縮する。加水分解および縮合反応により、たとえばヒドロキシ基および/またはオキソブリッジを有する縮合生成物が形成される。加水分解/縮合生成物は、所望の縮合程度および粘度を得るために、加水分解のための含水量、温度、期間、pH値、溶剤のタイプおよび溶剤の量などのパラメーターを好適に調節して制御される。
【0053】
さらに、加水分解に触媒作用を及ぼし、縮合程度を制御するために、金属アルコキシドを使用することも可能である。前記金属アルコキシドの場合、上記で定義されるその他の加水分解性化合物を使用することができ、特にアルミニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、および対応する錯体化合物(たとえば、錯体配位子としてアセチルアセトンを含む)が適している。
【0054】
この複合コーティング組成物は、少なくとも1つのカチオン重合性、好ましくはカチオン光重合性有機樹脂をさらに含む。有機フレームは、カチオン重合(代表的にはエーテル結合形成)により形成されるため、シロキサンフレームの再加水分解は抑制され、記録液体(代表的にはアルカリインク)に対する抵抗性は改善される。また、本発明では、シロキサンの無機フレームは、ワイピングに対して高度の機械的耐久性を示す。有機フレームと無機フレームとが共存する結果として、記録液体抵抗性およびワイピング耐久性の両方が意外なほど改善される。
【0055】
カチオン重合性樹脂は、好ましくは、当業者が周知しているカチオン重合性エポキシ樹脂である。カチオン重合性樹脂は、オキセタン、ビニルエーテル、ビニルアリールなどの電子が豊富な求核基を有するか、またはアルデヒド、ケトン、チオケトン、ジアゾアルカンなどの異核基を有するその他の樹脂でも良い。カチオン重合性環状基を有する樹脂、たとえば環式エーテル、環式チオエーテル、環式イミン、環式エステル(ラクトン)、1,3−ジオキサシクロアルカン(ケタール)、スピロオルソエステルまたはスピロオルソカルボネートも、特に関心が持たれる。
【0056】
「カチオン重合性樹脂」という用語は、本明細書では、モノマー、ダイマー、オリゴマーもしくはポリマー、またはこれらの混合物を含む少なくとも2個のカチオン重合性基を有する有機化合物を意味する。
【0057】
したがって、カチオン重合性有機樹脂は、好ましくは、モノマー、ダイマー、オリゴマーおよびポリマーなどのエポキシ化合物を含む。コーティング組成物に使用されるエポキシ化合物は、好ましくは室温(約20℃)で固体状態であり、より好ましくは、40℃以上の融点を有する。
【0058】
コーティング組成物のための前記エポキシ化合物の例としては、構造単位(1)および(2)の少なくとも1つを有するエポキシ樹脂である:
【0059】
【化5】

【0060】
【化6】

【0061】
その他の例としては、ビスフェノールタイプの樹脂(たとえば、ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル(Araldit GY 266(Ciba))、ビスフェノール−F−ジグリシジルエーテル)およびノボラックタイプのエポキシ樹脂、たとえばフェノールノボラック(たとえば、ポリ[(フェニル−2,3−エポキシプロピルエーテル)−ω−ホルムアルデヒド])およびクレゾールノボラック、並びに脂環式エポキシ樹脂、たとえば、4−ビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキサン−カルボン酸(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエステル)(UVR 6110、UVR 6128(Union Carbide))が挙げられる。その他の例としては、トリフェニロールメタントリグリシジルエーテル、N,N−ビス−(2,3−エポキシプロピル)−4−(2,3−エポキシプロポキシ)−アニリンおよびビス−{4−[ビス−(2,3−エポキシプロピル)−アミノ]−フェニル}メタンが挙げられる。
【0062】
エポキシ樹脂化合物に関して、エポキシ等量は、好ましくは2000未満、より好ましくは1000未満である。エポキシ等量が2000を超える場合、架橋度は、硬化反応において減少し、Tg、基板に対する付着力、およびインク抵抗性の低下などの問題が生じる場合がある。
【0063】
本発明によるコーティング組成物は、カチオン開始剤をさらに含む。使用する特定のタイプのカチオン開始剤は、たとえば、存在するカチオン重合性基、開始モード(熱または光分解)、温度、放射線のタイプ(光分解開始の場合)などによって決まる。
【0064】
好適な開始剤としては、すべての一般的な開始剤系が挙げられ、カチオン光開始剤、カチオン熱開始剤、およびこれらの組合せを含む。
【0065】
カチオン光開始剤が好ましい。使用可能なカチオン開始剤の代表的な例としては、オニウム塩、たとえばスルホニウム、ヨードニウム、カルボニウム、オキソニウム、シレセニウム(silecenium)、アリールジアゾニウム、セレノニウム、フェロセニウム、およびオイモニウム塩、ホウ酸塩、並びにルイス酸AlCl3、TiCl4、SnCl4の対応する塩、イミド構造またはトリアジン構造を含む化合物、アゾ化合物、過塩素酸、および過酸化物が挙げられる。カチオン光開始剤、芳香族スルホニウム塩または芳香族ヨードニウム塩は、感度および安定性の点で有利である。
【0066】
縮合生成物およびカチオン重合性有機樹脂の重量混合比は、好ましくは0.001〜1 :1、より好ましくは0.005〜0.5:1である。
【0067】
縮合生成物の重量混合比が比較的低い場合、表面の液体撥水性は不十分である。そして、重量混合比がより高い場合、光パターン形成特性および/または基板に対する付着力が低下する場合がある。
【0068】
一般に、インクジェットヘッドの液体撥水層では、凹凸が殆どない平らな表面を有することが望ましい。凹凸がある液体撥水層は、記録液体の飛沫に対して高度の液体撥水性(高度の前進接触角および高度の静止接触角)を示す。しかし、ワイピング動作などにおいて液体撥水層と記録液体とが摩擦する場合、記録液体は凹状部分に残り、その結果、液体撥水層の液体撥水性は損なわれる。この現象は、記録液体が顔料、つまり色材粒子を含む実施態様で著しく、色材粒子が凹状部分に入り、そこに付着するからである。したがって、液体撥水層の凹凸を示す表面粗さRaは5.0nm未満であることが望ましく、Raは1.0nm未満であれば、さらに望ましい。
【0069】
本発明では、フッ素含有基を有する加水分解性シラン化合物を含む縮合生成物の添加により、表面自由エネルギーが低下し、平坦な表面が得られる。
【0070】
上記のノズル形成材料には、架橋度の増加、感光性の改善、膨れの防止、コーティング特性の改善、基板に対する付着力の改善、可撓性の付与のために、様々な添加剤を一緒に使用して、機械的強度、化学薬品などに対する、より高い抵抗性を得ることが可能である。たとえば、上記の光カチオン開始剤は、銅(II)トリフルオロメタンフルフォネート、アスコルビン酸などの還元剤と共に使用して、より高い強度の架橋を得ることが可能である。さらに、インクでのノズル部分の膨れおよびサイズの変化を防止するため、特開平8−290572号公報での、フッ素化合物添加も有益である。さらに、基板に対する付着力の改善のために、カップリング剤(たとえば、シラン化合物)の添加も効果的である。
【0071】
次に、上記のノズル材料を使用するインクジェットヘッド製造方法について説明する。
【0072】
本発明は、パターン露出および現像によりノズルを形成する製造方法に適する。たとえば、この方法は、特開平4−10940号公報から特開平4−10942号公報、特開平6−286149号公報、および日本国特許第3143307号明細書に示されている感光性材料を使用するフォトリソグラフィを用いて正確なノズル構造を形成する方法に適用される。
【0073】
たとえば、以下の方法が挙げられる。つまり、インクジェットヘッド製造方法は、
ノズル材料樹脂を基板上にコーティングすることと、
ノズル材料をパターン露出および現像して、インク射出開口部を有するノズルプレートを形成することと、
インク射出圧力発生素子を有する基板上にノズルプレートを接着することとを含む。
【0074】
もう1つのインクジェットヘッド製造方法は、
溶解性樹脂材料を使って、インク射出圧力発生素子を有する基板上にインク通路パターンを形成することと、
本発明の重合性コーティング樹脂をインク通路壁として溶解性樹脂材料層上に塗布して、コーティング樹脂を形成することと、
インク射出圧力発生素子上方のコーティング樹脂層を除去することにより、インク射出開口部を形成することと、
溶解性樹脂材料パターンを溶解させることとを含み、
前記コーティング樹脂層は、加水分解性シラン化合物および重合性樹脂組成物の縮合生成物を含む。
【0075】
次に、本発明のインクジェットヘッドの実施例について説明する。
【0076】
図1は、インク射出圧力発生素子2を有する基板1の斜視図である。図2は、図1の2−2の断面図である。図3は、溶解性樹脂材料を使ってインク通路パターン3が形成された基板の図である。これは、ポジティブタイプレジスト、特に、比較的高分子量を有する光分解可能なポジティブタイプレジストを、ノズル形成処理時にインク通路パターンが崩壊するのを防止するために使用するのが好ましい。次に、図4は、本発明のコーティング樹脂層4がインク通路パターン上に配置されていることを示す。コーティング樹脂層は、光または熱エネルギーで重合可能、特にカチオン光重合可能である。コーティング樹脂層は、スピンコーティング、直接コーティングなどにより、好適に形成することが可能である。次に、射出開口部6は、図5に示すように、マスク5を通したパターン露出により形成され、図6に示すように現像される。
【0077】
次に、インク供給開口部7は、基板に好適に形成され(図7)、インク通路パターンを溶解させる(図8)。最後に、必要な場合、加熱処理を施し、ノズル材料を完全に硬化させると、インクジェットヘッドが完成する。
【0078】
本発明のコーティング樹脂層は、基板に2〜3回塗布され、所望のコーティング厚さを得ることができる。この場合、上記のコーティング樹脂組成物を最上層として使用することは不可欠である。下層に関して、上記のコーティング樹脂組成物、および加水分解性縮合生成物を含まない光重合性樹脂組成物を使用することも可能である。
【0079】
本発明のノズル製造プロセスでは、液体撥水性表面は、フッ素原子を含む加水分解性縮合生成物を使用して得られ、液体撥水性プロセスを行う必要はない。この液体撥水性は、塗布および乾燥時点で得られるが、後続の露出および現像プロセスにより形成される射出出口およびインク通路内部における液体撥水性は抑えることができ、インクジェットヘッドとしての性能に関する問題を生じない。
【0080】
本発明は、基板上にノズル材料を塗布することにより、ノズル表面でのみ液体撥水性を示す特徴を有する。したがって、成形、レーザ処理および乾式エッチングなどの機械的方法も有用である。この場合、親水性処理は不要であり、適宜使用される。
【0081】
本発明のノズル材料は、重合性基および加水分解性基などの反応基を有する。こうした反応基は、パターン露出および現像後も残るため、硬化反応は、付加的な露出または熱処理で促進することができる。付加的な硬化プロセスは、接着性、インク抵抗性、ワイピング耐久性などの材料性能に肯定的な影響を有する。
【実施例】
【0082】
(合成実施例1)
加水分解性縮合生成物は、以下の手順により調製した。
【0083】
グリシジルプロピルトリエトキシシラン28g(0.1mol)、メチルトリエトキシシラン18g(0.1mol)、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン6.6g(0.013mol、加水分解性シラン化合物の全量で6mol%当量)、水17.3g、およびエタノール37gを室温で攪拌し、次に24時間環流させると、加水分解性縮合生成物が得られた。
【0084】
さらに、縮合生成物は、2−ブタノールおよびエタノールで20重量%まで希釈して、加水分解性縮合生成物を得た。
【0085】
(実施態様1)
インクジェットヘッドは、図1〜図8の上記の方法に示す手順に従って製造した。
【0086】
最初に、インク射出圧力生成要素2として電熱変換要素を有するシリコーン基板1を作製し、シリコーン基板上でスピンコーティングすることにより、ポリメチルイソプロペニルケトン(ODUR−1010、東京応化工業株式会社)を塗布して、溶解性樹脂層を形成した。次に、120℃で6分間プリベーク後、マスクアライナーUX3000(USHIO Electrical Machinery)でインク通路のパターン露出を行った。
【0087】
露出時間は3分間で、現像は、メチルイソブチルケトン/キシレン=2/1で行い、キシレンで洗浄した。
【0088】
前記ポリメチルイソプロペニルケトンは、いわゆるポジティブタイプのレジストであり、UVX線照射により分解し、有機溶剤に対して溶解性になる。溶解性樹脂材料で形成されたパターンは、パターン露出の場合は露出せず、インク供給通路3(図3)になる部分だった。さらに、現像後の溶解性樹脂材料層の厚さは20μmだった。次に、表1に示すカチオン光重合性コーティング樹脂を、固形分として55重量%で、メチルイソブチルケトン/キシレン混合物溶剤中に溶解させ、スピンコーティングにより溶解性樹脂材料のインク通路パターン3を有する基板上に塗布し、90℃で4分間プリベークを行った。インク通路パターン上のコーティング樹脂層4の厚さは、この塗布およびプリベークを3回繰り返した後、55μmだった(図4)。
【0089】
【表1】

【0090】
その後、インク射出開口部のパターン露出には、CANONが製造したマスクアライナー「MPA600スーパー」(図5)を用いた。
【0091】
次に、射出開口部パターン6は、90℃で4分間加熱して形成し、メチルイソブチルケトン(MIBK)/キシレン=2/3により現像し、イソプロピルアルコールを使って洗浄した。コーティング樹脂層を、射出開口部パターンを除いて光カチオン重合により硬化させると、鋭利な縁部を有する射出開口部パターンが得られた(図6)。その後、基板の裏側にインク供給開口部を形成するためのマスクを好適に配置し、シリコーン基板の異方性異方性エッチングにより、インク供給開口部7を形成した。ノズルを有する基板表面は、シリコーンの異方性エッチング時にゴムフィルムにより保護した。ゴム保護フィルムは、異方性エッチングの完了後に除去し、更にインク通路パターンを形成する溶解性樹脂材料層を、表面全体に前記のUX3000を使用してUVを照射することで、分解した。その後、インク通路パターン3は、メチルラクテート中に1時間浸漬する一方、前記基板に超音波を与えることにより溶解した。次に、コーティング樹脂層4を完全に硬化させるため、200℃で1時間熱処理を施した(図8)。最後に、インクジェットヘッドは、インク供給部材をインク供給開口部上に接着して完了した。
【0092】
(実施態様2)
インクジェットヘッドは、実施態様1と同様に製造したが、組成物1の代わりに表2に示す組成物2を下層として塗布し、この下層の塗布およびプリベークを2回繰り返し、最上層として上記組成物1を塗布した。
【0093】
【表2】

【0094】
(実施態様3)
インクジェットヘッドは、実施態様1と同様に作製したが、組成物1の代わりに、表3に示す組成物3を使用した。
【0095】
【表3】

【0096】
(実施態様4)
表3に示す組成物3を使用して、インクジェットヘッドを実施態様1と完全に同様に作製したが、塗布およびプリベークは1回のみ行い、コーティング樹脂層の厚さは、インク通路パターン上で20μmだった。
【0097】
<印刷品質の評価>
実施態様1他で得られたインクジェット記録ヘッドにインクBCI−3Bk(Cannon)を充填し、印刷を行った。高品質の画像が得られた。
<ワイピング耐久性の評価>
このインクジェットヘッドのノズル表面にインクをスプレーして、HNBRゴムブレードを使ってワイピング動作を30000回実施した後に再度印刷すると、ワイピング以前と同じ高品質が得られた。したがって、ワイピング耐久性が優れていることが実証された。
【0098】
<保存特性>
さらに、このインクジェットヘッドに上記のインクを充填した後、60℃で2ヶ月間保存した。印刷品質は、保存以前と同じだった。
【0099】
<液体撥水性の評価>
さらに、インクジェットヘッド用のインクBCI−3Bkに対する前進および後退接触角は、どちらも大きい。また、液体撥水性は優れていた(表4)。
【0100】
<表面粗さ>
このインクジェットヘッドの表面粗さは、走査プローブモデルの顕微鏡JSPM−4210を使用して、接触モードで測定した。指数Raによる表面粗さは0.2〜0.3nmであり(10平方μm上を走査する)、このノズル材料の表面は非常に平坦かつ滑らかであることが確認された(表4)。
【0101】
<表面の実験的な分析>
さらに、ESCA(化学分析用の電子分光法)による表面分析は、Quantum 2000(Ulvac−phi)により6°の測定角度で行った。
【0102】
4つの元素C、O、SiおよびFを測定すると、F原子は、計算値6原子%より高い含有量で表面に配列された(表4)。
【0103】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明のインクジェットヘッドを製造するために使用する基板の斜視図である。
【図2】図1の断面2−2であり、本発明のインクジェットヘッドを製造する最初のステップを示す。
【図3】本発明のインクジェットヘッドを製造するためのステップを示す断面図である。
【図4】本発明のインクジェットヘッドを製造するためのステップを示す断面図である。
【図5】本発明のインクジェットヘッドを製造するためのステップを示す断面図である。
【図6】本発明のインクジェットヘッドを製造するためのステップを示す断面図である。
【図7】本発明のインクジェットヘッドを製造するためのステップを示す断面図である。
【図8】図2〜図7により製造された本発明のインクジェットヘッドを示す断面図である。
【符号の説明】
【0105】
1 基板
2 インク射出圧力生成要素
3 通路パターン
4 コーティング樹脂層
5 マスク
6 射出開口部
7 インク供給開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素含有基を有する加水分解性シラン化合物および光重合性樹脂組成物を含む縮合生成物から構成されるノズル材料から形成されるインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記光重合性樹脂組成物が、カチオン光重合性樹脂組成物である、請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記カチオン光重合性樹脂組成物がエポキシ化合物を含む、請求項2に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記カチオン光重合性樹脂組成物が、室温で固体であるエポキシ化合物を含む、請求項3に記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記縮合生成物が、フッ素含有基を有する加水分解性シラン化合物、およびフッ素含有基を持たない加水分解性シラン化合物を含む、請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
フッ素含有基を持たない加水分解性シラン化合物が光重合性基を有する、請求項5に記載のインクジェットヘッド。
【請求項7】
フッ素含有基を持たない加水分解性シラン化合物が、カチオン重合性基を有する、請求項5に記載のインクジェットヘッド。
【請求項8】
カチオン重合性基がエポキシ基である、請求項7に記載のインクジェットヘッド。
【請求項9】
フッ素含有基を持たない加水分解性シラン化合物が、少なくとも1つのアルキル置換基を有するシラン、少なくとも1つのアリール置換基を有するシラン、または非加水分解性置換基を持たないシランから選択される、請求項5に記載のインクジェットヘッド。
【請求項10】
縮合生成物が、フッ素含有基を有する加水分解性シラン化合物、光重合性基を有する加水分解性シラン化合物、および少なくとも1つのアルキル置換基を有するシラン、少なくとも1つのアリール置換基を有するシラン、または非加水分解性置換基を持たないシランから選択された加水分解性シラン化合物を含む、請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項11】
フッ素含有基を有する加水分解性シラン化合物が、一般式(1)で表わされ:
【化1】

式中、Rfは、炭素原子に結合した1〜30個のフッ素原子を有する非加水分解性置換基であり、Rは非加水分解性置換基であり、Xは加水分解性置換基、bは、0〜2の整数である、
請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項12】
非加水分解性置換基Rfが、炭素原子に結合した少なくとも5個のフッ素原子を有する、請求項11に記載のインクジェットヘッド。
【請求項13】
縮合生成物が、フッ素含有基を有する少なくとも2つの加水分解性シラン化合物を含み、これらのシラン化合物が異なる数のフッ素原子を有する、請求項11に記載のインクジェットヘッド。
【請求項14】
カチオン重合性基を有する加水分解性シラン化合物が、一般式(2)により表され:
【化2】

式中、RCは、カチオン重合性基を有する非加水分解性置換基、Rは非加水分解性置換基、Xは加水分解性置換基、およびbは0〜2の整数である、請求項7に記載のインクジェットヘッド。
【請求項15】
少なくとも1つのアルキル置換基を有するシラン、少なくとも1つのアリール置換基を有するシラン、または非加水分解性置換基を持たないシランから選択した加水分解性シラン化合物が、一般式(3)により表され:
【化3】

式中、Rは、置換または非置換アルキル基、および置換または非置換アリール基から選択される非加水分解性置換基であり、Xは加水分解性置換基、aは0〜3の整数である、請求項9に記載のインクジェットヘッド。
【請求項16】
フッ素含有基を有する加水分解性シラン化合物のモル割合が、加水分解性化合物の全量に基づいて、0.5〜20モル%である、請求項5に記載のインクジェットヘッド。
【請求項17】
(A)フッ素含有基を有する加水分解性シラン化合物を含む縮合生成物と、(B)光重合性樹脂組成物との重量混合比(A):(B)が、0.001:1〜1:1である、請求項1〜請求項16の何れかに記載のインクジェットヘッド。
【請求項18】
ノズル表面が液体撥水性を示すノズル材料から形成されたインクジェットヘッドであって、前記ノズル材料が、フッ素含有基を有する加水分解性シラン化合物および光重合性樹脂組成物を含む縮合生成物を含有するカチオン重合性組成物から構成されるインクジェットヘッド。
【請求項19】
ノズル表面の表面粗さRaが5.0nm以下である、請求項18に記載のインクジェットヘッド。
【請求項20】
前記ヘッドが、インク射出圧力発生素子と、その上に形成されたインク射出開口部およびインク通路を含むノズル構造とを有する基板を有する、請求項18に記載のインクジェットヘッド。
【請求項21】
フッ素含有基を有する加水分解性シラン化合物および光重合性樹脂組成物を含む縮合生成物から構成される、インクジェットヘッドを製造するための材料。
【請求項22】
インクジェットヘッドを製造する方法であって、
ノズル材料を基板上に塗布することと、
ノズル材料をパターン露出および現像することにより、インク射出開口部を形成することと、を含み、
前記ノズル材料が、フッ素含有基を有する加水分解性シラン化合物および光重合性樹脂組成物を含む縮合生成物から構成されるインクジェットヘッドを製造する方法。
【請求項23】
インクジェットヘッドを製造する方法であって、
インク射出圧力生成要素が設けられた基板上に、インク通路パターンとして溶解性樹脂材料層を形成することと、
溶解性樹脂材料層上のインク通路壁として、重合性コーティング樹脂を形成することと、
インク射出圧力生成要素上のコーティング樹脂層にインク射出開口部を形成することと、
溶解性樹脂材料を溶解させることを含み、
前記コーティング樹脂層が、フッ素含有基を有する加水分解性シラン化合物および光重合性樹脂組成物を含む縮合生成物から構成されるインクジェットヘッドを製造する方法。
【請求項24】
インクジェットヘッドを製造する方法であって、
ノズル材料を基板上に塗布することと、
前記ノズル材料をパターン露出および現像することにより、インク射出開口部を形成することを含み、
前記インク射出開口部の形成後、光または熱エネルギーにより硬化反応が促進され、前記ノズル材料が、フッ素含有基を有する加水分解性シラン化合物および光重合性樹脂組成物を含む縮合生成物から構成されるインクジェットヘッドを製造する方法。
【請求項25】
前記ノズル材料が、基板上に2回以上塗布され、少なくとも最上層が、フッ素含有基を有する加水分解性シラン化合物および光重合性樹脂組成物を含む縮合生成物から構成される、請求項24に記載のインクジェットヘッドを製造する方法。
【請求項26】
光重合性樹脂組成物がカチオン光重合性樹脂組成物である、請求項22から25のいずれかに記載のインクジェットヘッドを製造する方法。
【請求項27】
カチオン光重合性樹脂組成物がエポキシ化合物を含む、請求項26に記載のインクジェットヘッドを製造する方法。
【請求項28】
カチオン光重合性樹脂組成物が、室温で固体状態のエポキシ化合物を含む、請求項27に記載のインクジェットヘッドを製造する方法。
【請求項29】
前記縮合生成物が、フッ素含有基を有する加水分解性シラン化合物およびフッ素含有基を持たない加水分解性シラン化合物を含む、請求項22から25の何れかに記載のインクジェットヘッドを製造する方法。
【請求項30】
フッ素含有基を持たない加水分解性シラン化合物が、光重合性基を有する加水分解性シラン化合物である、請求項29に記載のインクジェットヘッドを製造する方法。
【請求項31】
前記光重合性基を有する加水分解性シラン化合物が、カチオン重合基を有する加水分解性シラン化合物である、請求項30に記載のインクジェットヘッドを製造する方法。
【請求項32】
前記光重合性基を有する加水分解性シラン化合物が、エポキシ基を有する加水分解性シラン化合物である、請求項30に記載のインクジェットヘッドを製造する方法。
【請求項33】
フッ素含有基を持たない加水分解性シラン化合物が、少なくとも1つのアルキル置換基を有するシラン、少なくとも1つのアリール置換基を有するシラン、または非加水分解性置換基を持たないシランから選択される、請求項29に記載のインクジェットヘッドを製造する方法。
【請求項34】
前記縮合生成物が、フッ素含有基を有する加水分解性シラン化合物と、光重合性基を有する加水分解性シラン化合物と、少なくとも1つのアルキル置換基を有するシラン、少なくとも1つのアリール置換基を有するシラン、または非加水分解性置換基を持たないシランから選択される加水分解性シラン化合物とを含む、請求項22から25の何れかに記載のインクジェットヘッドを製造する方法。
【請求項35】
前記フッ素含有基を有する加水分解性シラン化合物が、一般式(1)により表され:
【化4】

式中、Rfは、炭素原子に結合した1〜30個のフッ素原子を有する非加水分解性置換基であり、Rは非加水分解性置換基であり、Xは加水分解性置換基、bは、0〜2の整数である、請求項22から25の何れかに記載のインクジェットヘッドを製造する方法。
【請求項36】
非加水分解性置換基Rfが、炭素原子に結合した少なくとも5個のフッ素原子を有する、請求項35に記載のインクジェットヘッドを製造する方法。
【請求項37】
前記縮合生成物が、フッ素含有基を有する少なくとも2つの加水分解性シラン化合物を含み、これらのシラン化合物が異なる数のフッ素原子を有する、請求項35に記載のインクジェットヘッドを製造する方法。
【請求項38】
カチオン重合性基を有する加水分解性シラン化合物が、一般式(2)により表され:
【化5】

式中、RCは、カチオン重合性基を有する非加水分解性置換基、Rは非加水分解性置換基、Xは加水分解性置換基、およびbは0〜2の整数である、請求項31に記載のインクジェットヘッドを製造する方法。
【請求項39】
少なくとも1つのアルキル置換基を有するシラン、少なくとも1つのアリール置換基を有するシラン、または非加水分解性置換基を持たないシランから選択された加水分解性シラン化合物が、一般式(3)により表され:
【化6】

式中、Rは、置換または非置換アルキル基、および置換または非置換アリール基から選択される非加水分解性置換基であり、Xは加水分解性置換基、aは0〜3の整数である、請求
請求項33に記載のインクジェットヘッドを製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−518588(P2007−518588A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504392(P2005−504392)
【出願日】平成15年7月22日(2003.7.22)
【国際出願番号】PCT/JP2003/009246
【国際公開番号】WO2005/007411
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】