説明

インク吐出装置およびインク吐出制御方法

【課題】インク吐出対象に対して正確にインクを吐出することのできるインク吐出装置およびインク吐出制御方法を提供する。
【解決手段】本発明のインク吐出装置は、インク吐出部、判定部、インク吐出制御部等を備えており、インク吐出部は、媒体に対して主走査方向Yおよび副走査方向Xに相対的に移動可能である。媒体である基板4に複数の画素印字対象部2(インク吐出対象)が点在する場合には、上記判定部は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに移動する時間YtおよびXtを計算し、Xt≦Ytとなるか否かを判断して、次順のインク吐出標的またはインク吐出標的候補の選別に用いる。さらに、インク吐出制御部は、インク吐出部が静定状態にあるか否か(振動がないか否か)を判定するようになっていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク吐出対象に対して正確にインクを吐出することのできるインク吐出装置およびインク吐出制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インクを吐出する技術は、民生用のプリンタのみならず、液晶用のCF(Color filter)パネル生産装置やその他生産装置にも幅広く転用されるようになり、その用途が多様化している。
【0003】
その一例として、インクを吐出する技術を利用して基板上にパターンを形成するインクジェットパターニング技術が挙げられる。インクジェットパターニング技術は、インク吐出装置からインクをはじめとする微量液体を吐出し、基板上に直接微細なパターンを印字する技術である。このインクジェットパターニング技術は、従来のフォトリソグラフィーによる真空プロセスを用いたパターン生成方法に代わり、脱真空プロセスに使用可能な技術として注目が高まっている。
【0004】
近年、このインクジェットパターニング技術を用いた、CFパネルを形成するための装置の開発が進められている。この装置は、赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色からなるインクを、ガラス基板上に形成されたRGB用画素内に着弾させることによって各画素を埋め、CFパネルを形成する。この装置は、特に、近年益々大面積化が進んでいる液晶用のCFパネルの製造において用いられる。そして、この装置は、その処理時間が厳重に管理され、確実に一定の短い時間内で処理を成し遂げることが要求される。
【0005】
従来のCFパネルでは、図7に示すように、その印字対象の画素101が、主走査方向Yおよび副走査方向Xに対して格子状に配列されている。そのため、従来のCFパネルの全面画素の印字方法では、吐出ヘッドは、画素の行列方向に相当する主走査方向Yと副走査方向Xとの直交方向に交互に繰返しながら移動し、目的位置に移動してからインクを吐出する方法が一般的である(例えば、特許文献1参照)。なお、同図中、吐出ヘッドの移動経路は矢印にて示す。
【0006】
また、インクジェットパターニング技術は、画素の全面印字技術としてのみならず、混色、夾雑物の混入または付着といった欠陥画素を修復するための技術として広く用いられている。(例えば、特許文献2参照)。欠陥画素の修復方法として、インクのリークなどによって隣接画素間でインクの混色が発生した欠陥画素のインク層をレーザ装置などを用いて取り除き、その取り除いた部分に再度RGBの内、指定された色のインクをインクジェットパターニング技術によって吐出して修復する方法が用いられている。
【0007】
上記修復に際しての欠陥画素へのインク吐出装置の吐出ヘッドの移動方法としては、修復位置のXY座標に基づき2次元方向に吐出ヘッドを移動させ、目的位置に到着したらインク滴を所定数吐出して欠陥画素の穴埋めを行う方法が用いられている。この2次元方向へ吐出ヘッドを移動させる方法として、XYプロッタ法や、主走査方向への移動と副走査方向への移動とを交互に繰り返す方法が広く用いられている。
【0008】
XYプロッタ法は、主走査方向をY座標軸方向とした場合、単純にY座標値に基づいて欠陥箇所を並び替え、並び替えられた欠陥箇所を昇順や降順にしたがって修復をしていく方法である。例えば、図8に示すように、基板204上には、複数の画素印字対象部202が存在する。このとき、XYプロッタ法では、例えば各画素印字対象部202のY座標値の最も大きな欠陥箇所から順に、吐出ヘッドが移動しながら修復をしていく。このとき、主走査方向Yおよび副走査方向Xへの加速および減速が繰り返される。なお、同図における矢印は、吐出ヘッドの移動経路を示す。同図に示すように、上記方法によれば、吐出ヘッドは、画素印字対象部202間を一直線に移動することとなる。
【0009】
また、主走査方向への移動と副走査方向への移動とを交互に繰り返す方法は、主走査方向へ移動しながら欠陥箇所を修復し、その後、副走査方向へ移動する。副走査方向への移動が終了した後、再び、主走査方向へ移動しながら欠陥箇所を修復する。上記方法は、このように、主走査方向への移動と副走査方向への移動とを交互に繰り返す方法である。例えば、図9に示すように、基板304上には、複数の画素印字対象部302が点在する。このとき、上記方法では、主走査方向Yへのみ移動しながら画素印字対象部302を修復する。修復が終了したとき、主走査方向Yへの移動を行うことなく、副走査方向Xへのみ移動する。したがって、上記方法では、主走査方向Yおよび副走査方向Xへの加速および減速が繰り返される。なお、同図における矢印は、吐出ヘッドの移動経路を示す。同図に示すように、上記方法によれば、吐出ヘッドは、画素印字対象部302間をジグザグに移動することとなる。
【特許文献1】特開2004−306617号公報(平成16年(2004)11月4日公開)
【特許文献2】特開2003−66218号公報(平成15年(2003)3月5日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の構成では、インク吐出対象へインク吐出装置の吐出ヘッドが移動する場合、吐出ヘッドの移動速度の変化が大きいために、装置にかかる負荷が大きいとともに、インクの着弾精度を保とうとすれば、修復処理時間が長くなるという問題を生じる。
【0011】
具体的には、上記XYプロッタ法および上記主走査方向への移動と副走査方向への移動を交互に繰り返す方法では、吐出ヘッドが、加速および減速を伴いながら、基板上を移動することとなる。
【0012】
しかしながら、インク吐出対象に対して、精度良くインクを着弾させるためには、吐出ヘッドは、加速および減速が少ない状態でインクを吐出することが必要である。したがって、上記2つのいずれの方法においても、吐出ヘッドは、印字する直前に、速度を一定にする必要が生じる。その結果、吐出ヘッドは、加速および減速を伴う動作、換言すれば負荷を伴う動作を繰り返さなくてはならないという問題を生じる。さらに、速度を一定にするための時間を必要とし、その結果、処理時間が長くなるという問題を生じる。
【0013】
例えば、大型の生産装置においては、上記吐出ヘッドの代わりに、ステージ駆動によって基板が移動する装置が存在する。上記生産装置の場合、重量のある基板は、極力、加速および減速を伴わずに移動することが重要である。液晶用CFパネル生産に用いられる大型の生産装置では、近年、数メートル四方の大型ガラス基板上の数十から数百μm四方の画素領域内に数ピコリットルの液量の液滴を複数滴着弾させ、画素内をインクで充填することが要求される。そのためには、非常に高い精度で基板の位置を維持するとともに、非常に高い精度でインクを着弾させることが必須である。したがって、移動する方向や速度を急激に変更することは、インクの高い着弾精度を必要とするパターニングにおいては大きな問題を生じる。
【0014】
また、上記従来の構成では、処理時間を短縮化するために、非常に高速で吐出ヘッドを目的の位置へ移動させることが重要である。このように高速で吐出ヘッドの位置を変化させる場合、インクを吐出中の吐出ヘッドの状態を、静定状態とすることが非常に好ましい。具体的には、吐出ヘッドが振動している状態でインクを吐出すれば、インクの着弾精度は低下する。特に、インクの着弾精度を高くする必要がある場合には、吐出ヘッドにおけるインク吐出時の安定性は重要な条件となる。例えば、本発明者らによる検討では、吐出ヘッドが僅かに振動した状態であっても、吐出されるインクの着弾位置は、数μmから数10μm程度、場合によっては数100μmものずれを生じることが判明している。
【0015】
したがって、吐出ヘッドの状態が静定状態にないとすれば、目的のインク吐出対象以外の位置にインクを滴下する可能性が高くなる。その結果、インク吐出対象である基板を不良品にしてしまう可能性が高くなるので、歩留まりが低下し、製造コストが上昇するなどの問題を生じる。
【0016】
更に、上記従来の構成では、主走査方向へ非常に早く移動する1つのノズルを用い、インク吐出対象にインクを吐出する。この場合、ノズルの根づまりなどの原因によって、吐出するインク量が不足するという問題を生じるときがある。この問題を解決するために、主走査方向の印字速度を落とす方法があるが、この方法では、処理時間の増加を招くという問題を生じる。また、複数回に分けて同一のインク吐出対象にインクを吐出する方法があるが、この方法も処理時間の増加を招くという問題を生じる。さらに、1つのノズルから吐出するインクの液適量を多くする方法があるが、この方法では、小さなインク吐出対象に対して、精度良くインクを着弾させることが困難になるという問題を生じる。
【0017】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、点在する複数のインク吐出対象に対して、精度良くインクを着弾させることができ、かつ短い処理時間でインク吐出処理を行うことを可能とするインク吐出装置およびインク吐出制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のインク吐出装置は、上記課題を解決するために、媒体上に点在する複数のインク吐出対象にインクを吐出すべく、複数のインク吐出対象間を移動可能に設けられたインク吐出手段を有するインク吐出装置において、上記インク吐出手段は、主走査方向および副走査方向において、上記媒体に対して相対的に移動可能であるとともに、さらに、任意のインク吐出対象である第1のインク吐出標的に次いでインクが吐出される次順のインク吐出標的またはインク吐出標的候補を選別する処理を少なくとも行う判定手段を備えており、上記判定手段では、上記第1のインク吐出標的から他のインク吐出対象へ相対的に移動する場合に、上記インク吐出手段が主走査方向および副走査方向に移動する時間を計算し、副走査方向移動時間が主走査方向移動時間以下となるか否かを判断して、少なくともこの判断結果を次順のインク吐出標的またはインク吐出標的候補の選別に用いることを特徴としている。
【0019】
また、本発明のインク吐出制御方法は、上記課題を解決するために、インク吐出手段を備えるインク吐出装置の制御方法であって、上記インク吐出手段は、媒体上に点在する複数のインク吐出対象にインクを吐出すべく、複数のインク吐出対象間を移動可能に設けられるとともに、主走査方向および副走査方向において、上記媒体に対して相対的に移動可能となっており、上記インク吐出手段がインクを吐出する前段において、任意のインク吐出対象である第1のインク吐出標的に次いでインクが吐出される次順のインク吐出標的またはインク吐出標的候補を選別する処理を少なくとも行う判定ステップを含んでおり、上記判定ステップでは、上記第1のインク吐出標的から他のインク吐出対象へ相対的に移動する場合に、上記インク吐出手段が主走査方向および副走査方向に移動する時間を計算し、副走査方向移動時間が主走査方向移動時間以下となるか否かを判断して、少なくともこの判断結果を次順のインク吐出標的またはインク吐出標的候補の選別に用いることを特徴としている。
【0020】
上記構成によれば、判定手段は、副走査方向移動時間(Xt)が主走査方向移動時間(Yt)以下となるインク吐出対象を次順のインク吐出標的候補として判定するので、インク吐出手段が2つのインク吐出対象間を移動する場合、当該インク吐出手段は、主走査方向への移動を終了するまえに、副走査方向への移動を終了することになる。この場合、インク吐出手段は、インク吐出対象へインクを吐出するとき、主走査方向へのみ一定速度にて移動している。つまり、速度変化の無い状態でインクを吐出する。したがって、インク吐出対象に対して、加速および減速が少ない状態でインクを吐出できるので、精度良くインクを吐出することができる。また、インク吐出手段は、主走査方向に対して、移動速度の増減がないことから、インク吐出手段に加わる負荷を軽減することが可能となる。
【0021】
本発明のインク吐出装置では、前記判定手段は、インク吐出手段の主走査方向移動時間をYtとし、副走査方向移動時間をXtとしたときに、XtがYt以下(Xt≦Yt)となるインク吐出対象を、次順のインク吐出標的候補として判定するとともに、さらに、上記次順のインク吐出標的候補の中から、上記第1のインク吐出標的から最も短い時間で到達できるインク吐出対象を、次順のインク吐出標的として決定する吐出順番決定手段を備えていることが好ましい。
【0022】
また、本発明のインク吐出制御方法では、前記判定ステップは、インク吐出手段の主走査方向移動時間をYtとし、副走査方向移動時間をXtとしたときに、XtがYt以下(Xt≦Yt)となるインク吐出対象を、次順のインク吐出標的候補として判定し、さらに、上記次順のインク吐出標的候補の中から、上記第1のインク吐出標的から最も短い時間で到達できるインク吐出対象を、次順のインク吐出標的として決定する吐出順番決定ステップを含んでいることが好ましい。
【0023】
上記構成によれば、判定手段は、副走査方向移動時間(Xt)が主走査方向移動時間(Yt)以下となるインク吐出対象を次順のインク吐出標的候補として判定するので、インク吐出手段が2つのインク吐出対象間を移動する場合、当該インク吐出手段は、主走査方向への移動を終了するまえに、副走査方向への移動を終了することになる。この場合、インク吐出手段は、インク吐出対象へインクを吐出するとき、主走査方向へのみ一定速度にて移動している。つまり、速度変化の無い状態でインクを吐出する。したがって、インク吐出対象に対して、加速および減速が少ない状態でインクを吐出できるので、精度良くインクを吐出することができる。また、インク吐出手段は、主走査方向に対して、移動速度の増減がないことから、インク吐出手段に加わる負荷を軽減することが可能となる。
【0024】
また、吐出順番決定手段は、次順のインク吐出標的候補の中から、上記第1のインク吐出標的から最も短い時間で到達できるインク吐出対象を次順のインク吐出標的として決定する。したがって、時間を基準にしてより早く到達できる次順のインク吐出標的を決定するので、短い処理時間でインク吐出処理を行うことを可能とする。この結果、点在する複数のインク吐出対象に対して、精度良くインクを着弾させることができ、かつ短い処理時間でインク吐出処理を行うことを可能とするインク吐出装置およびインク吐出制御方法を提供することができる。
【0025】
本発明のインク吐出装置では、前記判定手段は、インク吐出手段の主走査方向移動時間をYtとし、副走査方向移動時間をXtとしたときに、第1のインク吐出標的から近い位置に存在するインク吐出対象から順に、YtおよびXtを計算してXtがYt以下(Xt≦Yt)となるか否かを判定するとともに、Xt≦Ytの条件を満たすインク吐出対象を、次順のインク吐出標的として決定することが好ましい。
【0026】
また、本発明のインク吐出制御方法では、前記判定ステップは、インク吐出手段の主走査方向移動時間をYtとし、副走査方向移動時間をXtとしたときに、第1のインク吐出標的から近い位置に存在するインク吐出対象から順に、YtおよびXtを計算してXtがYt以下(Xt≦Yt)となるか否かを判定するとともに、Xt≦Ytの条件を満たすインク吐出対象を、次順のインク吐出標的として決定することが好ましい。
【0027】
上記構成によれば、判定手段は、副走査方向移動時間(Xt)が主走査方向移動時間(Yt)以下となるインク吐出対象を次順のインク吐出標的候補として判定するので、インク吐出手段が2つのインク吐出対象間を移動する場合、当該インク吐出手段は、主走査方向への移動を終了するまえに、副走査方向への移動を終了することになる。この場合、インク吐出手段は、インク吐出対象へインクを吐出するとき、主走査方向へのみ一定速度にて移動している。つまり、速度変化の無い状態でインクを吐出する。したがって、インク吐出対象に対して、加速および減速が少ない状態でインクを吐出できるので、精度良くインクを吐出することができる。また、インク吐出手段は、主走査方向に対して、移動速度の増減がないことから、インク吐出手段に加わる負荷を軽減することが可能となる。
【0028】
また、判定手段は、第1のインク吐出標的から近い位置に存在するインク吐出対象から順番に、それぞれ、Xt≦Ytの条件を満たすか否かを計算し判定してゆくので、最初にXt≦Ytの条件を満たす位置に存在するインク吐出対象が見出されたとき、そのインク吐出対象を、次順のインク吐出標的として決定することとなる。ゆえに、吐出順番決定手段を必要とすることなく次順のインク吐出標的を決定することができる。
【0029】
また、次順のインク吐出標的が決定された時点においてXt≦Ytの条件を満たすか否かを計算し判定されていないインク吐出対象については、計算し判定する必要がない。その結果、処理時間を短縮することが可能となる。
【0030】
この結果、点在する複数のインク吐出対象に対して、精度良くインクを着弾させることができ、かつ短い処理時間でインク吐出処理を行うことを可能とするインク吐出装置およびインク吐出制御方法を提供することができる。
【0031】
本発明のインク吐出装置では、Y座標軸方向への移動距離をY(mm)、Y座標軸方向への等速移動速度をa(mm/秒)、X座標軸方向への加速、減速および停止に要する時間をそれぞれd、dおよびc(秒)、加速および減速時にX座標軸方向へ移動する距離をともにX(mm)、X座標軸方向へ等速移動を行うときの速度をb(mm/秒)とするとき、前記判定手段は、インク吐出対象のなかで、(I)および(II)によって求められるXtおよびYtが、(III)の条件を満たすものを次順のインク吐出標的候補または次順のインク吐出標的として判定することが好ましい。
Xt=(X−2×X)/b+(d+d)+c (I)
Yt=Y/a (II)
Xt≦Yt (III)
また、本発明のインク吐出制御方法では、Y座標軸方向への移動距離をY(mm)、Y座標軸方向への等速移動速度をa(mm/秒)、X座標軸方向への加速、減速および停止に要する時間をそれぞれd、dおよびc(秒)、加速および減速時にX座標軸方向へ移動する距離をともにX(mm)、X座標軸方向へ等速移動を行うときの速度をb(mm/秒)とするとき、前記判定ステップは、インク吐出対象のなかで、(I)および(II)によって求められるXtおよびYtが、(III)の条件を満たすものを次順のインク吐出標的候補または次順のインク吐出標的として判定することが好ましい。
Xt=(X−2×X)/b+(d+d)+c (I)
Yt=Y/a (II)
Xt≦Yt (III)
上記構成によれば、(I)および(II)に基づいて、複数存在するインク吐出対象について、それぞれのXtおよびYtを計算し、その大小を比較することができる。その結果、上記(III)の条件を満たすインク吐出対象が、次順のインク吐出標的候補または次順のインク吐出標的として判定される。換言すれば、インク吐出装置が、一定の速度で移動しながらインクを吐出することができるインク吐出対象を選択することが可能となる。
【0032】
本発明のインク吐出装置は、インクを吐出する順番にしたがって、前記インク吐出手段をインク吐出対象へ相対的に移動させてから、上記インク吐出手段からインク吐出対象にインクを吐出する制御を、少なくとも行うインク吐出制御手段を有することが好ましい。
【0033】
また、本発明のインク吐出制御方法は、インクを吐出する順番にしたがって、前記インク吐出手段をインク吐出対象へ相対的に移動させてから、上記インク吐出手段からインク吐出対象にインクを吐出する制御を、少なくとも行うインク吐出制御ステップを含むことが好ましい。
【0034】
上記構成によれば、インクを精度良くインク吐出対象に吐出するために必要な、インク吐出手段に関する様々な情報を得ることができる。
【0035】
本発明のインク吐出装置では、前記インク吐出制御手段は、前記インク吐出手段が静定状態であるかを監視するヘッド静定状態監視手段と、上記インク吐出手段の位置を検出できるヘッド位置観測手段とを有することが好ましい。
【0036】
また、本発明のインク吐出制御では、前記インク吐出制御ステップは、前記インク吐出手段が静定状態であるかを監視するヘッド静定状態監視ステップと、インク吐出手段の位置を検出できるヘッド位置観測ステップとを含むことが好ましい。
【0037】
上記構成によれば、インク吐出手段が、インクの着弾精度に影響を与えない程度の静定状態にあるかどうかを確認することができる。
【0038】
本発明のインク吐出装置では、前記ヘッド静定状態監視手段の監視結果と、前記ヘッド位置観測手段の観測結果とに基づき、前記インク吐出手段がインク吐出開始位置に到達した際にインク吐出の可否を判断するインク吐出判断手段を有することが好ましい。
【0039】
また、本発明のインク吐出制御方法では、前記ヘッド静定状態監視ステップの監視結果と、前記ヘッド位置観測ステップの観測結果とに基づき、前記インク吐出手段がインク吐出開始位置に到達した際にインク吐出の可否を判断するインク吐出判断ステップを含むことが好ましい。
【0040】
上記構成によれば、インク吐出時にインク吐出手段が静定状態にない場合は、インクの着弾精度が劣化すると判断でき、インク吐出判断手段によりインク吐出を中断させることができる。
【0041】
本発明のインク吐出装置では、前記インク吐出判断手段の判断結果と、前記ヘッド位置観測手段の観測結果とに基づき、インク吐出位置とインク吐出中断位置とを管理するインク吐出中断位置管理手段を有することが好ましい。
【0042】
また、本発明のインク吐出制御方法では、前記インク吐出判断ステップの判断結果と、前記ヘッド位置観測ステップの観測結果とに基づき、インク吐出位置とインク吐出中断位置とを管理するインク吐出位置管理ステップを含むことが好ましい。
【0043】
上記構成によれば、ヘッドが静定できなかった場合などインク吐出が中断した位置を保存することができ、媒体上に点在したインク吐出対象の中から、インクを吐出しなかった位置のインク吐出対象を管理できる。
【0044】
本発明のインク吐出装置では、前記インク吐出制御手段は、インク吐出が中断されたインク吐出対象を抽出するインク未吐出対象抽出手段を有することが好ましい。
【0045】
また、本発明のインク吐出制御方法では、前記インク吐出制御ステップは、インク吐出が中断されたインク吐出対象を抽出するインク未吐出対象抽出ステップを含むことが好ましい。
【0046】
上記構成によれば、インク吐出を中断し、インク吐出が未対応なインク吐出対象を抽出することができる。
【0047】
本発明のインク吐出装置は、前記インク未吐出対象抽出手段によって抽出されたインク吐出対象に対して、再度インク吐出手段を移動させ、インクを吐出することが好ましい。
【0048】
また、本発明のインク吐出制御方法は、前記インク未吐出対象抽出ステップによって抽出されたインク吐出対象に対して、再度インク吐出手段を移動させ、インクを吐出することが好ましい。
【0049】
上記構成によれば、インク未吐出であるインク吐出対象に対して再度ヘッドを移動させインクを吐出させることができる。
【0050】
本発明のインク吐出装置では、前記インク吐出手段が、前記インク吐出対象に対向した状態で、主走査方向または副走査方向に傾くことが好ましい。
【0051】
また、本発明のインク吐出制御方法では、前記インク吐出手段が、前記インク吐出対象に対向した状態で、主走査方向または副走査方向に傾くことが好ましい。
【0052】
上記構成によれば、上記インク吐出手段が、インク吐出対象に対向した状態で、主走査方向または副走査方向に傾くことによって、副走査方向における各ノズル間の距離を小さくすることが可能となる。換言すれば、一つのインク吐出対象の上を通過するノズルの数を増減させることが可能となる。その結果、同一のインク吐出対象に対して、複数のノズルを用いてインクを吐出することができる。例えば、1つのインク吐出対象に対して多量のインクを吐出する場合、インク吐出手段を傾けることによって、必要とするインク量を吐出するために必要な個数のノズルを用いて、一度に必要量のインクを吐出することができる。また、複数のノズルを用いて同一のインク吐出対象に対してインクを吐出することができるため、インクを吐出するノズルの一部が不吐出状態となっても、残りの正常に吐出しているノズルによって、インクを吐出対象に吐出することができる。
【0053】
本発明のインク吐出装置では、前記インク吐出手段が、複数のインク吐出対象に対して、同一走査中にインクを吐出することが好ましい。
【0054】
また、本発明のインク吐出制御方法では、前記インク吐出手段が、複数のインク吐出対象に対して、同一走査中にインクを吐出することが好ましい。
【0055】
上記構成によれば、例えば隣接した複数のインク吐出対象に対して、同一走査中にインクを吐出することが可能となる。その結果、全体処理時間を短縮することが可能となる。
【発明の効果】
【0056】
本発明のインク吐出装置およびインク吐出制御方法は、以上のように、インク吐出手段は、主走査方向および副走査方向において、上記媒体に対して相対的に移動可能であるとともに、さらに、任意のインク吐出対象である第1のインク吐出標的に次いでインクが吐出される次順のインク吐出標的またはインク吐出標的候補を選別する処理を少なくとも行う判定手段(判定ステップ)を備えており、上記判定手段(判定ステップ)では、上記第1のインク吐出標的から他のインク吐出対象へ相対的に移動する場合に、上記インク吐出手段が主走査方向および副走査方向に移動する時間を計算し、副走査方向移動時間が主走査方向移動時間以下となるか否かを判断して、少なくともこの判断結果を次順のインク吐出標的またはインク吐出標的候補の選別に用いるものである。
【0057】
その結果、点在する複数のインク吐出対象に対して、精度良くインクを着弾させることができ、かつ短い処理時間でインク吐出処理を行うことを可能とするインク吐出装置およびインク吐出制御方法を提供するという効果を奏する。
【0058】
更に、本発明のインク吐出装置およびインク吐出制御方法は、装置上の何らかの原因により、インク吐出手段がインク吐出開始位置に到着したときに静定状態にない場合、インク吐出を中断することができる。その結果、着弾精度が劣化した状態でのインク吐出を防ぐことができ、基板を不要にインクで汚さないという効果を奏する。
【0059】
しかも、インク吐出が中断されたインク吐出対象を抽出することができ、その後当該インク吐出対象にインクを吐出し充填することできる。その結果、インク吐出が中断されたインク吐出対象を基板上に残さないで、全てのインク吐出対象にインクを充填した良質な基板を形成することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1〜図6に基づいて説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0061】
なお、本実施の形態において、主走査方向をY座標軸方向、副走査方向をX座標軸方向として説明する。また、本発明の一実施形態として、基板上に点在したCFパネルの修正画素部分をインクジェットによって吐出穴埋めを行うCF欠陥画素の修復を例として説明する。そのため、使用するインクとしては赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の3色のインクとし、修正箇所は画素部に相当する略矩形領域とする。尚、パネル基板の配置によって、インク吐出装置が走査する方向との関係で、前記粗矩形領域は図4で示すように縦長および横長の場合が存在し、本発明は何れの場合にも対応できるものである。なお、図4において、インク吐出装置が走査する方向は、矢印3にて示す。
【0062】
まず、本実施の形態のインク吐出装置の各構成について、図2を用いて説明する。
【0063】
本実施の形態のインク吐出装置は、情報入力部10、処理部11、インク吐出制御部15およびインク吐出部16(インク吐出手段)を有している。さらに、上記処理部11は、データ入力部12、判定部13(判定手段)および順番決定部14(吐出順番決定手段)を有している。
【0064】
本発明のインク吐出装置では、上記インク吐出部16は、媒体(図示されず)に対して相対的に移動可能である。言い換えれば、本発明のインク吐出装置では、(1)公知の固定部材によって固定された媒体に対して、公知の移動部材によってインク吐出部16が移動可能となっている構成、あるいは、(2)公知の固定部材によって固定されたインク吐出部16に対して、公知の移動部材によって媒体が移動可能になっている構成、さらには、(3)公知の移動部材によって、インク吐出部16および媒体の双方が移動可能になっている構成の何れであってもよい。なお、固定部材や移動部材の具体的構成は特に限定されるものではなく、本発明の技術分野において公知の構成を適宜採用することができる。
【0065】
媒体に対するインク吐出部16の相対的な移動は、インク吐出制御部15によって制御される。例えば、上記(1)の構成であれば、移動部材によるインク吐出部16の移動が制御され、上記(2)の構成であれば、移動部材による媒体の移動が制御され、上記(3)の構成であれば、移動部材によるインク吐出部16および媒体の双方の移動が制御される。なお、具体的な移動の制御と、媒体に対するインク吐出部16の位置を決定する制御とについては、上記(1)の構成を挙げて後述する。
【0066】
本実施の形態のインク吐出装置では、情報入力部10からインク吐出対象に関する情報などが入力される。上記情報入力部10は、点在する複数のインク吐出対象に関する情報などを、データ入力部12へ入力する。情報としては、媒体上に点在する複数のインク吐出対象へのインクを吐出する順番を決定するための情報であればよく、特に限定するものではない。例えば、インク吐出対象のCFパネル上での位置情報などが挙げられる。また、情報入力部10としては、公知の構成を用いることが可能であり、特に限定するものではないが、例えば、カメラを搭載する画像認識装置などによってインク吐出対象を認識し、その位置情報を得、その情報をデータ入力部12へ入力する構成であってもよい。
【0067】
データ入力部12は、上記情報入力部10からの情報を受信する。受信された情報は、判定部13へ入力される。データ入力部12としては、特に限定するものではなく、公知の構成を適宜使用することができるものとする。
【0068】
判定部13は、データ入力部12から入力される情報に基づいて、最初にインクを吐出するインク吐出対象を決定し、それを始点とする。上記始点の選択方法としては特に限定するものではない。例えば、媒体上に点在する複数のインク吐出対象の中で、Y座標値が1番大きなものを選択してもよいし、1番小さなものを選択してもよい。あるいは、インク吐出部16から1番近い位置に存在するインク吐出対象を始点として選択することも可能である。
【0069】
また、判定部13は、データ入力部12から入力される情報に基づいて、任意のインク吐出対象を、第1のインク吐出標的とする場合、上記インク吐出部16が上記第1のインク吐出標的から他のインク吐出対象へ移動する場合における主走査方向移動時間(Yt)と副走査方向移動時間(Xt)とを計算し、該副走査方向移動時間(Xt)が主走査方向移動時間(Yt)以下となるインク吐出対象を次順のインク吐出標的候補として判定する。
【0070】
また、上記判定部13は、データ入力部12から入力される情報に基づいて、任意のインク吐出対象を、第1のインク吐出標的とする場合、上記第1のインク吐出標的から近い位置に存在するインク吐出対象から順に、上記インク吐出部16が上記第1のインク吐出標的から他のインク吐出対象へ移動する場合における主走査方向移動時間(Yt)と副走査方向移動時間(Xt)とを計算し、該副走査方向移動時間(Xt)が主走査方向移動時間(Yt)以下となるか否かを判定し、かつXt≦Ytの条件を満たすインク吐出対象を、次順のインク吐出標的として決定する。
【0071】
順番決定部14は、上記次順のインク吐出標的候補の中から、上記第1のインク吐出標的から最も短い時間で到達できるインク吐出対象を次順のインク吐出標的として決定する。なお、上記順番決定部14は、上記判定部13が、上記第1のインク吐出標的から近い位置に存在するインク吐出対象から順に判定を行う場合には、一番はじめに次順のインク吐出標的候補として判定されたものを、次順のインク吐出標的候補として決定する。したがって、この場合には、上記順番決定部14は、省略されることも可能である。
【0072】
インク吐出制御部15は、インクを吐出する順番にしたがって、インク吐出部16をインク吐出対象に対して移動させたり、インク吐出部16をインク吐出対象に対向した状態で、主走査方向または副走査方向に傾けることが可能である。また、インク吐出制御部15は、インク吐出部16を移動させることもできるし、インク吐出対象を含む基板を移動させることも可能であり、特に限定するものではない。
【0073】
インク吐出部16は、インクをインク吐出対象に対して吐出する。上記インク吐出部16としては、特に限定するものではなく、適宜、公知の構成を用いることが可能である。
【0074】
次に、本実施の形態のインク吐出装置の動作手順および制御方法について、図3に従って説明する。
【0075】
(S1の処理について)
まず、情報入力部10は、媒体上に点在する複数のインク吐出対象へインクを吐出する順番を決定するための情報を入手する(S1)。先ず基板上に点在した各インク吐出対象について、基板上の各XY座標値、インク吐出対象を矩形とした場合の上記インク吐出対象のX座標軸方向およびY座標軸方向の長さ、並びにインク吐出部16がX座標軸方向およびY座標軸方向に移動する速度などを入力情報とする。さらに、インク吐出対象にインクを吐出する際、Y座標軸方向に移動する長さ(上記インク吐出対象のY座標軸方向の長さ)に加え、インク吐出部16がインク吐出位置のX座標値に到達したときに停止に要する時間や、その停止に要する時間でY座標軸方向に移動する距離や、X座標軸方向に向かって移動する際の加減速も加味するものとする。
【0076】
インク吐出順番が未決定であるインク吐出対象の集合を集合R1とし、その要素をP(i),i=1〜n(nはインク吐出対象箇所数)で示す。また、吐出ヘッド20が、Y座標軸方向の一方向に向かって移動する間にインク吐出可能な対象としてインク吐出順を決定したインク吐出対象の集合を集合R2とし、その要素をPP(j)(k),j=1〜s、k=1〜mで示す。なお、吐出ヘッド20が、Y座標軸の一方向に向かって移動を開始し、次に移動方向を変えるまでの移動を「1回の主走査方向への移動」と規定した場合、上記jは、PP(j)(k)にインクが吐出されるときの、吐出ヘッド20の移動回数を示し、sは、全移動回数を表す。また、kは、jによって規定される移動中にインクが吐出されるインク吐出対象のインク吐出順を示し、mは、jによって規定される移動中にインクが吐出されるインク吐出対象の個数を示す。なお、jとkとの初期値を、それぞれ1とする。
【0077】
(S2の処理について)
次いで、判定部13によって、入力された情報に基づいて始点を決定する(S2)。始点の決定方法としては、例えば、各インク吐出対象の基板上でのY座標値に基づいて、各インク吐出対象を並び替える。このとき、例えば、Y座標値の大きな順または小さな順でデータを並べ替えることが可能である。このとき、Y座標軸のマイナス方向を主走査方向とする場合はY座標値を大きなものから順に並べ、Y座標軸のプラス方向を主走査方向とする場合はY座標を小さいものから順に並べるものとする。また、各インク吐出対象を並び替える方法として、インク吐出部16から直線距離として近いものから順に、並べ替えることも可能である。なお、インク吐出対象を並べ替える基準には様々な基準があり、特に限定するものではない。
【0078】
並べ替えたインク吐出対象全体を含む集合を集合R1とすると、各インク吐出対象は、集合R1の要素としてP(i),i=1〜n(nはインク吐出対象箇所数)として並び替えられる。そして、この集合R1の中から、最初の要素P(1)を選択して取り出し、集合R1から取り除き、新たに集合R2に入れる。このとき、集合R1の要素は、P(i)、i=2〜nとなり、集合R2の要素は、PP(j)(k)=P(1)となる。そして、このPP(j)(k)を始点とする。
【0079】
(S3の処理について)
次いで、判定部13によって、インク吐出標的候補の選択を行う(S3)。具体的には、インク吐出部16が、PP(j)(k)から、集合R1の要素である各インク吐出対象、つまりP(i)、i=2〜nに向かって移動して到達するために要する、X座標軸方向およびY座標軸方向への移動時間を算出する。そして、X座標軸方向への移動時間がY座標軸方向への移動時間以下となる集合R1中の要素を、インク吐出標的候補として判断する。
【0080】
なお、このとき、集合R1の要素である各インク吐出対象が判定される順番は、特に限定するものではない。判定する順番として、上記始点から近いものから順に判定してもよい。この場合、全てのインク吐出対象についてXt≦Ytの条件を満たすか否かを判定する必要がなく、最初にXt≦Ytの条件を満たすものが、次順のインク吐出標的として決定される。
【0081】
以下に、PP(j)(k)から、集合R1の各要素に向かって移動して到達するために要する、X座標軸方向およびY座標軸方向への移動時間の算出方法を示す。
【0082】
まず、Y座標軸方向への移動時間の算出方法について示す。ここで、Y座標軸方向への移動時間をYt(秒)、Y座標軸方向への移動距離をY(mm)、Y座標軸方向への等速移動速度をa(mm/秒)とすると、Ytは、以下の(1)式によって示される。
Yt=Y/a (1)式
次に、X座標軸方向への移動時間の算出方法について示す。X座標軸方向への移動は、加速、等速移動、減速、および停止の4種類の過程を含む。X座標軸方向への移動時間をXtとすると、Xtは、加速、等速移動、減速、および停止の4種類の過程に要する時間の和である。そこで以下に、それぞれの過程に要する時間を示す。なお、ここで停止とは減速が終了したインク吐出部16が、X座標軸方向に対して静止する過程である。
【0083】
まず、加速、減速および停止に要する時間をそれぞれd、dおよびc(秒)とし、加速および減速時にX座標軸方向へ移動する距離をともにX(mm)とする。このときX座標軸方向への移動距離をXとすると、等速移動する距離Xは(2)式によって示される。
=X−2×X (2)式
このとき、等速移動を行うときの速度をb(mm/秒)とすると、等速移動を行う時間dは(3)式によって示される。
=(X−2×X)/b (3)式
ここでXtは、加速、等速移動、減速、および停止の4種類の過程に要する時間の和であり、(4)式によって示される。
Xt=d+d+d+c=(X−2×X)/b+(d+d)+c (4)式
したがって、(1)式および(2)式によって示されるYtおよびXtが、(5)式の条件を満たすものが、インク吐出標的候補として選択される。
Xt≦Yt (5)式
なお、X座標軸方向に対する速度が等速度b(mm/秒)に到達するまでの時間dは、X座標軸方向への加速度をK(mm/秒)とすると(6)式によって示される。
=b/K (6)式
同様に、減速に要する時間dは、X座標軸方向への減速度をK(mm/秒)とすると(7)式によって示される。
=b/K (7)式
また、停止に要する時間cは、実際に本発明のインク吐出装置を動作させ、その値を実験的に測定することによって求めることが可能である。
【0084】
なお、X座標軸方向への移動時間およびY座標軸方向への移動時間は、上記変数を用い、(1)式〜(7)式によって算出したが、その算出方法は、限定されるものではない。例えば、他の変数をも考慮し、X座標軸方向への移動時間およびY座標軸方向への移動時間を算出することも可能である。あるいは、上記d、d2、およびcのうち、その値が非常に小さいものに関しては、省略することも可能である。
【0085】
(S4の処理について)
次いで、順番決定部14が、上記インク吐出標的候補の中から、上記始点から最も短い時間で到達できるインク吐出対象を次順の始点として決定する(S4)。なお、S3において、上記始点から近いインク吐出対象から順に判定した場合、最初にXt≦Ytの条件を満たすものが、次順のインク吐出標的として決定される。この場合には、上記判定部13が、次順のインク吐出標的を決定することも可能である。
【0086】
(S5の処理について)
S4において、選択できる要素が集合R1に存在する場合は、その選択されたインク吐出対象の要素P(j),(2≦j≦n)を集合R1から取り除き、集合R2に追加する(PP(j)(k),(k=k+1))。そして、その要素を新たな始点とし、S3の処理に進む。
【0087】
S4において、選択できる要素が集合R1に存在しない場合は、1回の主走査方向への移動中にインクを吐出することが可能なインク吐出対象が無くなったことになり、S6の処理に進む。(S5)
(S6の処理について)
全てのインク吐出対象が集合R2の要素として選択された場合、全ての点在するインク吐出対象の処理順が決定したことになり、S1からS5の処理を終了し、S7の処理に進む。一方、集合R2に選択されていないインク吐出対象が存在する場合は、S2に戻る。S2に戻り、新たな始点を決定したあと、吐出ヘッド20が、主走査方向に対して前回とは逆向きに移動しながらインクを吐出することのできるインク吐出対象を選択する。その際、吐出ヘッド20の主走査方向への移動回数を示すjの値を加算し、j=j+1とする。また、インク吐出順番を示すkを初期値に戻し、k=1とする(S6)。
【0088】
以上のように、上記S2からS6までの処理を、順番決定部14が行う。順番決定部14は、全ての点在するインク吐出対象にインクを順次吐出する際に、処理時間を最小化するように、点在するインク吐出対象へのインク吐出順番を決定する。
【0089】
(S7の処理について)
インク吐出制御部15およびインク吐出部16は、S1〜S6によって決定した集合R2に含まれる要素の順番にしたがって、主走査方向への移動回数に応じてインク吐出対象にインクを吐出する(S7)。その結果、例えば図1に示すように複数のインク吐出対象が基板上に点在する場合、図1の矢印で示す順番にしたがってインクを吐出する。
【0090】
図1に、本実施の形態のインク吐出装置およびインク吐出制御方法によるインクの吐出順路を示す。基板4上には、点在した複数の画素印字対象部2が存在する。インク吐出部16は、同図中、矢印によって示される経路を通りながら、画素印字対象部2に向かってインクを吐出する。上記インク吐出部16は、2つのインク吐出対象間を移動する場合、主走査方向Yへの移動を終了するまえに副走査方向Xへの移動を終了する。したがって、本実施の形態のインク吐出装置およびインク吐出制御方法では、インク吐出部16がインクを吐出するとき、上記インク吐出部16は主走査方向Yへ等速移動を行っており、それゆえ画素印字対象部2へ、正確にインクを吐出することが可能となる。
【0091】
このとき、インク吐出制御部15によって、インク吐出部16を、インク吐出対象に対向した状態で、主走査方向または副走査方向に傾けることが可能である。これによって、副走査方向における各ノズル間の距離を小さくすることが可能となる。その結果、同一のインク吐出対象に対して、複数のノズルを用いてインクを吐出することができる。副走査方向における各ノズル間の距離は、インク吐出部16の傾き角度によって決定することができる。なお、インク吐出部16の傾き角度は、特に限定するものではなく、選択可能である。例えば、上記傾き角度は、インク吐出対象の大きさ、特にX座標軸方向の長さとインク液滴の大きさとに応じて設定することができる。
【0092】
例えば、図5(a)(b)に示すように、本実施の形態のインク吐出装置およびインク吐出制御方法は、インク吐出部16を、インク吐出対象に対向した状態で、主走査方向または副走査方向に傾けることが可能である。以下に、インク吐出部16を、主走査方向または副走査方向に傾ける前後のノズルの配置について説明する。なお、図5および図6では、吐出ヘッド20が、インク吐出部16に相当する。
【0093】
図5(a)に示すように、吐出ヘッド20は、ノズル21・22・23を有し、基板4に対向して配置されている。なお、吐出ヘッド20は、矢印3に示される方向に移動しながらインクを吐出するものとする。また、基板4は、複数の画素1を有している。上記画素1のなかで、赤色(R)、緑色(G)および青色(B)のインクを吐出される画素は、それぞれ画素5・6・7によって示されている。吐出ヘッド20は、赤色(R)、緑色(G)および青色(B)のインクを吐出するために、それぞれ複数のノズル21・22・23を有している。上記ノズルのなかで、画素5・6・7に対してインクを吐出するノズルは、黒色にて示されている。つまり、図5(a)に示すように、画素5・6・7は、それぞれ1個のノズル21・22・23によって、インクが吐出される。
【0094】
また、図5(b)に示すように、吐出ヘッド20は、基板4に対向した状態で、主走査方向または副走査方向に傾けることが可能である。図5(b)に示すように、吐出ヘッド20を傾けることによって、画素5・6・7は、それぞれ2個のノズル21・22・23によって、インクを吐出されることが可能となる。
【0095】
一方、吐出ヘッド20の傾きを例えば80度と固定している場合は、隣接するインク滴の間隔は一定であるため、吐出させる液滴数を各ノズル単位で調整し、欠陥画素を穴埋めさせるためのインク滴量を決定する。ちなみに、150dpi相当のノズル間隔を有すインク吐出装置の吐出ヘッド20を約80度傾けることで、副走査方向におけるノズル間の距離は約30μmとなる。画素幅を100μmとすると、少なくとも2個のノズルからインクを吐出することにより、同一画素内を印字することができる。この2個のノズルから吐出される液滴数を制御して欠陥画素を生めるために必要な液滴総量を確保することも可能である。
【0096】
また、図4(b)に示すように、画素幅が300μmとなった場合、上記の場合、9個のノズルが画素幅内に収まることとなる。この場合、9個のノズルの内、例えば1個のノズルの状態が不良状態となった場合でも残り8個のノズルを用いて所望の液滴量のインクを吐出することが可能となる。なお、図4(b)において、インク吐出装置が走査する方向は、矢印3にて示す。
【0097】
また、図6に示すように、本実施の形態のインク吐出装置を用いれば、欠陥画素を修復する際、例えばRGB画素のうち、画素色抜けなど1色の欠陥画素を修正する場合のほか、ダストなどの異物による画素間の色リークなどによって生じるRGやGB、BRなどの隣接した2個の欠陥画素、またはRGB、GBR、BRGなど隣接した3個の欠陥画素の修正を同時に行うことが可能となる。
【0098】
そのため、各色用のインク吐出装置の吐出ヘッド20を近接させ、少なくとも主走査方向に対して各吐出ヘッド20のノズル位置がオーバラップするようにし、さらに前述のように吐出ヘッド20を傾けることで、仮想的に副走査方向におけるインク吐出間隔を狭くすることができる。隣接する欠陥画素を異なる色のインクを用いて修復できるように隣接画素位置に合わせて吐出ヘッド20のノズル位置を微調整し、複数の異なるインクを用いて同一走査中に欠陥画素を修復することが可能である。
【0099】
例えば、図6(a)に示すように、本実施の形態のインク吐出装置およびインク吐出制御方法は、隣接する2個の画素を、同一走査中に修復することができる。この場合、隣接する画素5・6を、それぞれノズル21・22を用いて修復することが可能となる。また、図6(b)に示すように、本実施の形態のインク吐出装置およびインク吐出制御方法は、隣接する3個の画素を、同一走査中に修復することができる。この場合、吐出ヘッド20を傾けることによって、隣接する画素5・6・7を、それぞれノズル21・22・23を用いて修復することが可能となる。
【0100】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施形態について図10ないし図12に基づいて説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、説明の便宜上、実施の形態1で用いた部材と同一の機能を有する部材には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
【0101】
前記実施の形態1では、前述したように、インク吐出制御部15は、インクを吐出する順番にしたがって、インク吐出部16の位置を移動させたり、主走査方向または副走査方向に傾けたりする等の制御、言い換えれば、インク吐出部16のインク吐出対象に対する相対的な位置または配置の制御を行っていた。
【0102】
これに対して本実施の形態では、上記位置または配置の制御に加えて、インク吐出部16におけるインク吐出状態を監視して、インク吐出の判断等に利用する制御、言い換えれば、インク吐出部16の状態監視を行った上で、インク吐出の制御を行うようになっている。
【0103】
具体的には、図10に示すように、本実施形態のインク吐出装置は、情報入力部10、処理部11、インク吐出制御部15、インク吐出部16を備えている点は、前記実施の形態1と同様であるが、さらに、インク吐出制御部15が、ヘッド静定状態監視部24、ヘッド位置観測部25、インク吐出判断部26、インク吐出中断位置管理部27、インク吐出対象抽出部28、およびインク吐出部移動制御部29を備えている構成を挙げることができる。
【0104】
インク吐出制御部15では、ヘッド静定状態監視部24によって、インク吐出部16が基板上を走査している間、当該インク吐出部16が静定状態にあるのかどうかを監視する。そして、ヘッド位置観測部25によって、インク吐出部16の基板上での位置を常に観測している。なお、本明細書において「静定状態」とは、インク吐出部16の媒体に対する相対的な振動が、予め指定された距離の範囲内に収まっている状態が意図される。上記「予め指定された範囲」とは、インク吐出部16が、インク吐出対象に精度良くインクを着弾させることができる程度の範囲を意図し、特に限定されるものではない。上記範囲は、例えば、必要とされる着弾精度やインク吐出対象の大きさなどによって、適宜選択することができる。
【0105】
上記振動距離は、例えば、以下のようにして求めることができる。例えば、図12に示すように、インク吐出部16(図12には図示せず)が媒体40に対して振動していないときの、インク吐出部16のノズル30(図中太線で図示)から上記媒体40に垂直に線をおろしたとき(図12では破線で示す)の上記媒体40上の地点をT1(基準点)とする。次いで、ヘッド静定状態監視部24(図12には図示せず)によって監視されているときの、インク吐出部16の上記ノズル30を、図中細線で図示するように、監視状態ノズル30aと仮定して、この監視状態ノズル30aから上記媒体40に垂直に線をおろしたときの上記媒体40上の地点をT2とする。このとき、上記振動距離は、T2とT1との間の距離Tとして規定し得る。換言すれば、T2とT1との間の距離T(T=T2−T1)が、予め指定された距離の範囲内に収まっている状態を静定状態と規定することができる。なお、振動の無い理想的な静定状態とは、基準点にある上記ノズル30と監視状態ノズル30aとが重なり、振動距離T=T2−T1=0の状態にあることを意図する。
【0106】
上述したように、上記振動距離としては特に限定されないが、1μm以内であることが好ましい。また、インク吐出部16からのインクの着弾精度を±5μmの範囲内に制御するためには、上記振動距離が0.3μm以内であることが更に好ましい。
【0107】
インク吐出制御部15では、ヘッド位置観測部25によって、インク吐出部16が目的のインク吐出対象へインク吐出を開始するインク吐出開始位置に到達したことが観測された時点で、ヘッド静定状態監視部24によりインク吐出部16が基板上で静定状態にあるかどうかを監視する。そして、インク吐出判断部26により、インク吐出部16が静定状態にあると判断された場合は、インク吐出部16よりインク吐出を開始してインク吐出対象に対してインクを着弾させる。一方、インク吐出判断部26により、インク吐出部16が非静定状態にある(振動している)と判断された場合は、インク吐出を停止し、目的のインク吐出対象へのインク吐出を取りやめる。
【0108】
その際、ヘッド吐出中断位置管理部27では、インク吐出を中断した位置に関する情報をヘッド位置観測部25から取り出し、中断位置として管理する。なお、ここで「管理する」とは、インク吐出を中断した場合のインク吐出部16の媒体上での位置情報を記憶することを意図する。
【0109】
そして、インク未吐出対象抽出部28は、ヘッド吐出中断位置管理部27にて管理される中断位置とデータ入力部12によって入力されている各インク吐出対象の位置情報に基づき、インク吐出が中断されたインク吐出対象を抽出する。本発明のインク吐出装置は、上記抽出されたインク吐出対象に対して再度インク吐出するため、ヘッド吐出部16を移動させ、インクが未吐出であるインク吐出対象にインクを吐出して着弾させる。なお、この再度行うインク吐出部16の移動やインクの吐出は、インク未吐出対象抽出部28にて抽出したインク吐出対象に関する情報を新たにデータ入力部12に入力することで対応できるものである。
【0110】
次に、本実施の形態のインク吐出装置の動作手順および制御方法について、図11に従って説明する。なお、本実施の形態のインク吐出装置の動作手順および制御方法は、S1〜S6は、実施の形態1にて説明したものと同じである。したがって、S1〜S6については、その説明を省略する。また、S7では、実施の形態1と同じように、インク吐出制御部15およびインク吐出部16が、S1〜S6によって決定した集合R2に含まれる要素の順番にしたがって、主走査方向への移動回数に応じてインク吐出対象にインクを吐出する。更に、本実施の形態におけるS7では、インク吐出部16の状態監視を行った上で、インク吐出の制御を行うことができる。本実施の形態のインク吐出装置の動作手順および制御方法におけるS7について、図11のフローチャート図を用いて、その工程をより詳細に説明する。なお、本実施の形態にけるS7は、S7−1〜S7−8の工程を含む。したがって、S7−1〜S7−8の各工程について、以下に説明する。
【0111】
(S7−1の処理について)
インク吐出制御部15は、インク吐出部16を、順番決定部14に格納された各インク吐出対象の処理順番に従って、目的のインク吐出対象に向かって基板上を移動させる(S7−1)。その際、インク吐出制御部15は、インク静定状態監視部24とヘッド位置観測部25とによって、常にインク吐出部16の静定状態の監視とインク吐出部16位置の観測とを行う。
【0112】
(S7−2の処理について)
インク吐出制御部15では、インク吐出部16がインク吐出開始位置に到着したら、ヘッド静定状態監視部24からの静定状態に関する情報に基づき、インク吐出判断部26が、インク吐出部16によるインク吐出が可能かどうかを判断する。インク吐出判断部26は、インク吐出部16が静定状態にある場合に、インク吐出が可能であると判断し、インク吐出部16が静定状態にない場合に、インク吐出を停止すると判断する。なお、「静定状態にある」とはヘッド吐出部16の振動が予め指定された範囲内(例えば、1μm)に収まっている場合などが該当するものとする(S7−2)。
【0113】
(S7−3の処理について)
インク吐出制御部15は、インク吐出判断部26によって、インク吐出部16が静定状態にあると判断された場合、インク吐出部16は目的のインク吐出対象に対してインクを吐出し着弾させる(S7−3)。
【0114】
(S7−4の処理について)
一方、インク吐出判断部26によって、インク吐出部16が静定状態にないと判断された場合、インク吐出部16はインク吐出行わないで目的のインク吐出対象を通過して、次の目標となるインク吐出対象位置へ移動を行う(S7−4)。
【0115】
(S7−5の処理について)
上記インク吐出を行わなかった場合、ヘッド吐出中断位置管理部27にヘッド位置観測部25によって観測されたインク吐出を行わなかったインク吐出対象のインク吐出開始位置を入力し保存管理する(S7−5)。
【0116】
(S7−6の処理について)
インク吐出制御部15は、順次、インク吐出対象についてS7−1からS7−5の処理を行い、全てのインク吐出対象に対してインク吐出部16を移動させ、一連のインク吐出を終了する(S7−6)。
【0117】
(S7−7の処理について)
インク吐出制御部15では、ヘッド吐出中断位置管理部27に、インク吐出を行わなかったインク吐出開始位置に関する情報が保管されているか否かを判断し、保管のない場合はS7の処理を終了する(S7−7)。
【0118】
(S7−8の処理について)
ヘッド吐出中断位置管理部27に、インク吐出を行わなかったインク吐出開始位置に関する情報が保管されている場合は、ヘッド吐出中断位置管理部27に保管された情報に基づきインク未吐出対象抽出部28によってデータ入力部12に入力できるデータを生成する。そして、当該データを情報として用いるS1の処理に戻り、再度インク吐出部16を移動させて、インク吐出を行わなかったインク吐出対象に対してインクを吐出着弾させる処理を行うものである。(S7−8)
以上、実施の形態1および2を最良の実施形態の例として本発明のインク吐出装置およびインク吐出制御方法を説明したが、もちろん本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、実施の形態1で説明した制御と実施の形態2で説明した制御とを必要に応じて切り替える制御を行う構成であってもよいし、実施の形態2で挙げたインク吐出制御部15が備える各手段の一部を欠いたり、他の手段を追加したりする構成であってもよい。さらに、本発明は以下のように構成することも可能である。
【0119】
本発明のインク吐出装置は、上記課題を解決するために、媒体上に点在する複数のインク吐出対象にインクを吐出すべく、該複数のインク吐出対象間を移動可能に設けられたインク吐出手段を有するインク吐出装置において、上記インク吐出手段は、主走査方向および副走査方向に移動可能であり、かつ主走査方向には一定速度で移動するとともに、上記インク吐出手段が、任意のインク吐出対象である第1のインク吐出標的から他のインク吐出対象へ移動する場合における主走査方向移動時間(Yt)と副走査方向移動時間(Xt)とを計算し、該副走査方向移動時間(Xt)が主走査方向移動時間(Yt)以下となるインク吐出対象を次順のインク吐出標的候補として判定する判定手段と、上記次順のインク吐出標的候補の中から、上記第1のインク吐出標的から最も短い時間で到達できるインク吐出対象を次順のインク吐出標的として決定する吐出順番決定手段と、を有することを特徴としている。
【0120】
また、本発明のインク吐出制御方法は、上記課題を解決するために、媒体上に点在する複数のインク吐出対象にインクを吐出すべく、該複数のインク吐出対象間を移動可能に設けられたインク吐出手段を有するインク吐出制御方法において、上記インク吐出手段は、主走査方向および副走査方向に移動可能であり、かつ主走査方向には一定速度で移動するとともに、上記インク吐出手段が、任意のインク吐出対象である第1のインク吐出標的から他のインク吐出対象へ移動する場合における主走査方向移動時間(Yt)と副走査方向移動時間(Xt)とを計算し、該副走査方向移動時間(Xt)が主走査方向移動時間(Yt)以下となるインク吐出対象を次順のインク吐出標的候補として判定する判定ステップと、上記次順のインク吐出標的候補の中から、上記第1のインク吐出標的から最も短い時間で到達できるインク吐出対象を次順のインク吐出標的として決定する吐出順番決定ステップと、を有することを特徴としている。
【0121】
上記構成によれば、判定手段は、副走査方向移動時間(Xt)が主走査方向移動時間(Yt)以下となるインク吐出対象を次順のインク吐出標的候補として判定するので、インク吐出手段が2つのインク吐出対象間を移動する場合、当該インク吐出手段は、主走査方向への移動を終了するまえに、副走査方向への移動を終了することになる。この場合、インク吐出手段は、インク吐出対象へインクを吐出するとき、主走査方向へのみ一定速度にて移動している。つまり、速度変化の無い状態でインクを吐出する。したがって、インク吐出対象に対して、加速および減速が少ない状態でインクを吐出できるので、精度良くインクを吐出することができる。また、インク吐出手段は、主走査方向に対して、移動速度の増減がないことから、インク吐出手段に加わる負荷を軽減することが可能となる。
【0122】
また、吐出順番決定手段は、次順のインク吐出標的候補の中から、上記第1のインク吐出標的から最も短い時間で到達できるインク吐出対象を次順のインク吐出標的として決定する。したがって、時間を基準にしてより早く到達できる次順のインク吐出標的を決定するので、短い処理時間でインク吐出処理を行うことを可能とする。この結果、点在する複数のインク吐出対象に対して、精度良くインクを着弾させることができ、かつ短い処理時間でインク吐出処理を行うことを可能とするインク吐出装置およびインク吐出制御方法を提供することができる。
【0123】
本発明のインク吐出装置は、上記課題を解決するために、媒体上に点在する複数のインク吐出対象にインクを吐出すべく、該複数のインク吐出対象間を移動可能に設けられたインク吐出手段を有するインク吐出装置において、上記インク吐出手段は、主走査方向および副走査方向に移動可能であり、かつ主走査方向には一定速度で移動するとともに、任意のインク吐出対象である第1のインク吐出標的から近い位置に存在するインク吐出対象から順に、上記インク吐出手段が該第1のインク吐出標的から他のインク吐出対象へ移動する場合における主走査方向移動時間(Yt)と副走査方向移動時間(Xt)とを計算し、該副走査方向移動時間(Xt)が主走査方向移動時間(Yt)以下となるか否かを判定し、かつ該Xt≦Ytの条件を満たすインク吐出対象を、次順のインク吐出標的として決定する判定手段を有することを特徴としている。
【0124】
また、本発明のインク吐出制御方法は、上記課題を解決するために、媒体上に点在する複数のインク吐出対象にインクを吐出すべく、該複数のインク吐出対象間を移動可能に設けられたインク吐出手段を有するインク吐出制御方法において、上記インク吐出手段は、主走査方向および副走査方向に移動可能であり、かつ主走査方向には一定速度で移動するとともに、任意のインク吐出対象である第1のインク吐出標的から近い位置に存在するインク吐出対象から順に、上記インク吐出手段が該第1のインク吐出標的から他のインク吐出対象へ移動する場合における主走査方向移動時間(Yt)と副走査方向移動時間(Xt)とを計算し、該副走査方向移動時間(Xt)が主走査方向移動時間(Yt)以下となるか否かを判定し、かつ該Xt≦Ytの条件を満たすインク吐出対象を、次順のインク吐出標的として決定する判定ステップを有することを特徴としている。
【0125】
上記構成によれば、判定手段は、副走査方向移動時間(Xt)が主走査方向移動時間(Yt)以下となるインク吐出対象を次順のインク吐出標的候補として判定するので、インク吐出手段が2つのインク吐出対象間を移動する場合、当該インク吐出手段は、主走査方向への移動を終了するまえに、副走査方向への移動を終了することになる。この場合、インク吐出手段は、インク吐出対象へインクを吐出するとき、主走査方向へのみ一定速度にて移動している。つまり、速度変化の無い状態でインクを吐出する。したがって、インク吐出対象に対して、加速および減速が少ない状態でインクを吐出できるので、精度良くインクを吐出することができる。また、インク吐出手段は、主走査方向に対して、移動速度の増減がないことから、インク吐出手段に加わる負荷を軽減することが可能となる。
【0126】
また、判定手段は、第1のインク吐出標的から近い位置に存在するインク吐出対象から順番に、それぞれ、Xt≦Ytの条件を満たすか否かを計算し判定してゆくので、最初にXt≦Ytの条件を満たす位置に存在するインク吐出対象が見出されたとき、そのインク吐出対象を、次順のインク吐出標的として決定することとなる。ゆえに、吐出順番決定手段を必要とすることなく次順のインク吐出標的を決定することができる。
【0127】
また、次順のインク吐出標的が決定された時点においてXt≦Ytの条件を満たすか否かを計算し判定されていないインク吐出対象については、計算し判定する必要がない。その結果、処理時間を短縮することが可能となる。
【0128】
この結果、点在する複数のインク吐出対象に対して、精度良くインクを着弾させることができ、かつ短い処理時間でインク吐出処理を行うことを可能とするインク吐出装置およびインク吐出制御方法を提供することができる。
【0129】
本発明のインク吐出装置では、Y座標軸方向への移動距離をY(mm)、Y座標軸方向への等速移動速度をa(mm/秒)、X座標軸方向への加速、減速および停止に要する時間をそれぞれd、dおよびc(秒)、加速および減速時にX座標軸方向へ移動する距離をともにX(mm)、X座標軸方向へ等速移動を行うときの速度をb(mm/秒)とするとき、前記判定手段は、前記インク吐出対象のなかで、(I)および(II)によって求められる副走査方向移動時間(Xt)および主走査方向移動時間(Yt)が、(III)の条件を満たすものを次順のインク吐出標的候補として判定することが好ましい。
Xt=(X−2×X)/b+(d+d)+c (I)
Yt=Y/a (II)
Xt≦Yt (III)
また、本発明のインク吐出制御方法では、Y座標軸方向への移動距離をY(mm)、Y座標軸方向への等速移動速度をa(mm/秒)、X座標軸方向への加速、減速および停止に要する時間をそれぞれd、dおよびc(秒)、加速および減速時にX座標軸方向へ移動する距離をともにX(mm)、X座標軸方向へ等速移動を行うときの速度をb(mm/秒)とするとき、前記判定ステップは、前記インク吐出対象のなかで、(I)および(II)によって求められる副走査方向移動時間(Xt)および主走査方向移動時間(Yt)が、(III)の条件を満たすものを次順のインク吐出標的候補として判定することが好ましい。
Xt=(X−2×X)/b+(d+d)+c (I)
Yt=Y/a (II)
Xt≦Yt (III)
上記の構成によれば、(I)および(II)に基づいて、複数存在するインク吐出対象について、それぞれのXtおよびYtを計算し、その大小を比較することができる。その結果、上記(III)の条件を満たすインク吐出対象が、次順のインク吐出標的候補として判定される。換言すれば、インク吐出装置が、一定の速度で移動しながらインクを吐出することができるインク吐出対象を選択することが可能となる。
【0130】
本発明のインク吐出装置では、前記インク吐出手段が、前記インク吐出対象に対向した状態で、前記主走査方向または前記副走査方向に傾くことが好ましい。
【0131】
また、本発明のインク吐出制御方法では、前記インク吐出手段が、前記インク吐出対象に対向した状態で、前記主走査方向または前記副走査方向に傾くことが好ましい。
【0132】
上記の構成によれば、上記インク吐出手段が、インク吐出対象に対向した状態で、主走査方向または副走査方向に傾くことによって、副走査方向における各ノズル間の距離を小さくすることが可能となる。換言すれば、一つのインク吐出対象の上を通過するノズルの数を増減させることが可能となる。その結果、同一のインク吐出対象に対して、複数のノズルを用いてインクを吐出することができる。例えば、1つのインク吐出対象に対して多量のインクを吐出する場合、インク吐出手段を傾けることによって、必要とするインク量を吐出するために必要な個数のノズルを用いて、一度に必要量のインクを吐出することができる。また、複数のノズルを用いて同一のインク吐出対象に対してインクを吐出することができる。このため、インクを吐出するノズルの一部が不吐出状態となっても、残りの正常に吐出しているノズルによって、インクを吐出対象に吐出することができる。
【0133】
本発明のインク吐出装置では、前記インク吐出手段が、複数のインク吐出対象に対して、同一走査中にインクを吐出することが好ましい。
【0134】
また、本発明のインク吐出制御方法では、前記インク吐出手段が、複数のインク吐出対象に対して、同一走査中にインクを吐出することが好ましい。
【0135】
上記の構成によれば、例えば隣接した複数のインク吐出対象に対して、同一走査中にインクを吐出することが可能となる。その結果、全体処理時間を短縮することが可能となる。
【0136】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明では、インク吐出部が、印字方向に該当する主走査方向に対して一定の速度で移動しながらインク吐出対象に対してインクを吐出する。その結果、点在する複数のインク吐出対象に対して、精度良くインクを着弾させることができ、かつ短い処理時間でインク吐出処理を行うことを可能とする。そのため、本発明は、プリンタや液晶用のCFパネル生産装置に代表される各種インク吐出装置やその部品を製造する分野に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明の実施形態を示すものであり、インク吐出装置およびインク吐出制御方法における、インク吐出対象にインクを吐出する順序を示す模式図である。
【図2】上記インク吐出装置における各構成を示すブロック図である。
【図3】上記インク吐出制御方法を示すフローチャートである。
【図4】上記インク吐出装置およびインク吐出制御方法における、(a)縦長インク吐出対象および(b)横長インク吐出対象へのインク吐出処理を示す模式図である。
【図5】上記インク吐出装置における、(a)吐出ヘッドを傾かせない場合のノズルの位置、および(b)吐出ヘッドを傾かせた場合のノズルの位置を示す模式図である。
【図6】上記インク吐出装置における、(a)隣接2画素、および(b)隣接3画素を同時に修復する場合のノズルの位置を示す模式図である。
【図7】従来の主走査方向および副走査方向に交互に走査する方法によって行われる欠陥箇所の修正処理の順序を示す模式図である。
【図8】従来のXYプロッタ法によって行われる欠陥箇所の修正処理の順序を示す模式図である。
【図9】従来の主走査方向および副走査方向に交互に走査する方法によって行われる欠陥箇所の修正処理の順序を示す模式図である。
【図10】本発明の他の実施形態を示すものであり、他の実施形態のインク吐出装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【図11】上記インク吐出装置にけるインク吐出制御部の動作を説明するフローチャートである。
【図12】上記インク吐出制御部により監視される、インク吐出部の静定状態を、インク吐出部のノズルと媒体との相対的な位置関係により説明する模式図である。
【符号の説明】
【0139】
1 画素
2 画素印字対象部
4 基板
10 情報入力部
11 処理部
12 データ入力部
13 判定部(判定手段)
14 順番決定部(吐出順番決定手段)
15 インク吐出制御部
16 インク吐出部(インク吐出手段)
20 吐出ヘッド
24 ヘッド静定状態監視部
25 ヘッド位置制御部
26 インク吐出判定部
27 ヘッド吐出中断位置管理部
28 インク未吐出対象抽出部
29 インク吐出部移動制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体上に点在する複数のインク吐出対象にインクを吐出すべく、複数のインク吐出対象間を移動可能に設けられたインク吐出手段を有するインク吐出装置において、
上記インク吐出手段は、主走査方向および副走査方向において、上記媒体に対して相対的に移動可能であるとともに、
さらに、任意のインク吐出対象である第1のインク吐出標的に次いでインクが吐出される次順のインク吐出標的またはインク吐出標的候補を選別する処理を少なくとも行う判定手段を備えており、
上記判定手段では、上記第1のインク吐出標的から他のインク吐出対象へ相対的に移動する場合に、上記インク吐出手段が主走査方向および副走査方向に移動する時間を計算し、副走査方向移動時間が主走査方向移動時間以下となるか否かを判断して、少なくともこの判断結果を次順のインク吐出標的またはインク吐出標的候補の選別に用いることを特徴とするインク吐出装置。
【請求項2】
前記判定手段は、インク吐出手段の主走査方向移動時間をYtとし、副走査方向移動時間をXtとしたときに、XtがYt以下(Xt≦Yt)となるインク吐出対象を、次順のインク吐出標的候補として判定するとともに、
さらに、上記次順のインク吐出標的候補の中から、上記第1のインク吐出標的から最も短い時間で到達できるインク吐出対象を、次順のインク吐出標的として決定する吐出順番決定手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のインク吐出装置。
【請求項3】
前記判定手段は、インク吐出手段の主走査方向移動時間をYtとし、副走査方向移動時間をXtとしたときに、第1のインク吐出標的から近い位置に存在するインク吐出対象から順に、YtおよびXtを計算してXtがYt以下(Xt≦Yt)となるか否かを判定するとともに、
Xt≦Ytの条件を満たすインク吐出対象を、次順のインク吐出標的として決定することを特徴とする請求項1に記載のインク吐出装置。
【請求項4】
Y座標軸方向への移動距離をY(mm)、Y座標軸方向への等速移動速度をa(mm/秒)、X座標軸方向への加速、減速および停止に要する時間をそれぞれd、dおよびc(秒)、加速および減速時にX座標軸方向へ移動する距離をともにX(mm)、X座標軸方向へ等速移動を行うときの速度をb(mm/秒)とするとき、
前記判定手段は、インク吐出対象のなかで、(I)および(II)によって求められるXtおよびYtが、(III)の条件を満たすものを次順のインク吐出標的候補または次順のインク吐出標的として判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインク吐出装置。
Xt=(X−2×X)/b+(d+d)+c (I)
Yt=Y/a (II)
Xt≦Yt (III)
【請求項5】
インクを吐出する順番にしたがって、前記インク吐出手段をインク吐出対象へ相対的に移動させてから、上記インク吐出手段からインク吐出対象にインクを吐出する制御を、少なくとも行うインク吐出制御手段を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインク吐出装置。
【請求項6】
前記インク吐出制御手段は、前記インク吐出手段が静定状態であるかを監視するヘッド静定状態監視手段と、上記インク吐出手段の位置を検出できるヘッド位置観測手段とを有することを特徴とする請求項5に記載のインク吐出装置。
【請求項7】
前記ヘッド静定状態監視手段の監視結果と、前記ヘッド位置観測手段の観測結果とに基づき、前記インク吐出手段がインク吐出開始位置に到達した際にインク吐出の可否を判断するインク吐出判断手段を有することを特徴とする請求項6に記載のインク吐出装置。
【請求項8】
前記インク吐出判断手段の判断結果と、前記ヘッド位置観測手段の観測結果とに基づき、インク吐出中断位置を管理するインク吐出中断位置管理手段を有することを特徴とする請求項7に記載のインク吐出装置。
【請求項9】
前記インク吐出制御手段は、インク吐出が中断されたインク吐出対象を抽出するインク未吐出対象抽出手段を有することを特徴とする請求項8に記載のインク吐出装置。
【請求項10】
前記インク未吐出対象抽出手段によって抽出されたインク吐出対象に対して、再度インク吐出手段を移動させ、インクを吐出することを特徴とする請求項9に記載のインク吐出装置。
【請求項11】
前記インク吐出手段が、前記インク吐出対象に対向した状態で、主走査方向または副走査方向に傾くことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のインク吐出装置。
【請求項12】
前記インク吐出手段が、複数のインク吐出対象に対して、同一走査中にインクを吐出することを特徴とする請求項11に記載のインク吐出装置。
【請求項13】
インク吐出手段を備えるインク吐出装置の制御方法であって、
上記インク吐出手段は、媒体上に点在する複数のインク吐出対象にインクを吐出すべく、複数のインク吐出対象間を移動可能に設けられるとともに、主走査方向および副走査方向において、上記媒体に対して相対的に移動可能となっており、
上記インク吐出手段がインクを吐出する前段において、任意のインク吐出対象である第1のインク吐出標的に次いでインクが吐出される次順のインク吐出標的またはインク吐出標的候補を選別する処理を少なくとも行う判定ステップを含んでおり、
上記判定ステップでは、上記第1のインク吐出標的から他のインク吐出対象へ相対的に移動する場合に、上記インク吐出手段が主走査方向および副走査方向に移動する時間を計算し、副走査方向移動時間が主走査方向移動時間以下となるか否かを判断して、少なくともこの判断結果を次順のインク吐出標的またはインク吐出標的候補の選別に用いることを特徴とするインク吐出制御方法。
【請求項14】
前記判定ステップは、インク吐出手段の主走査方向移動時間をYtとし、副走査方向移動時間をXtとしたときに、XtがYt以下(Xt≦Yt)となるインク吐出対象を、次順のインク吐出標的候補として判定し、
さらに、上記次順のインク吐出標的候補の中から、上記第1のインク吐出標的から最も短い時間で到達できるインク吐出対象を、次順のインク吐出標的として決定する吐出順番決定ステップを含んでいることを特徴とする請求項13に記載のインク吐出制御方法。
【請求項15】
前記判定ステップは、インク吐出手段の主走査方向移動時間をYtとし、副走査方向移動時間をXtとしたときに、第1のインク吐出標的から近い位置に存在するインク吐出対象から順に、YtおよびXtを計算してXtがYt以下(Xt≦Yt)となるか否かを判定するとともに、
Xt≦Ytの条件を満たすインク吐出対象を、次順のインク吐出標的として決定することを特徴とする請求項13に記載のインク吐出制御方法。
【請求項16】
Y座標軸方向への移動距離をY(mm)、Y座標軸方向への等速移動速度をa(mm/秒)、X座標軸方向への加速、減速および停止に要する時間をそれぞれd、dおよびc(秒)、加速および減速時にX座標軸方向へ移動する距離をともにX(mm)、X座標軸方向へ等速移動を行うときの速度をb(mm/秒)とするとき、
前記判定ステップは、インク吐出対象のなかで、(I)および(II)によって求められるXtおよびYtが、(III)の条件を満たすものを次順のインク吐出標的候補または次順のインク吐出標的として判定することを特徴とする請求項13〜15のいずれか1項に記載のインク吐出制御方法。
Xt=(X−2×X)/b+(d+d)+c (I)
Yt=Y/a (II)
Xt≦Yt (III)
【請求項17】
インクを吐出する順番にしたがって、前記インク吐出手段をインク吐出対象へ相対的に移動させてから、上記インク吐出手段からインク吐出対象にインクを吐出する制御を、少なくとも行うインク吐出制御ステップを含むことを特徴とする請求項13〜16のいずれか1項に記載のインク吐出制御方法。
【請求項18】
前記インク吐出制御ステップは、前記インク吐出手段が静定状態であるかを監視するヘッド静定状態監視ステップと、インク吐出手段の位置を検出できるヘッド位置観測ステップとを含むことを特徴とする請求項17に記載のインク吐出制御方法。
【請求項19】
前記ヘッド静定状態監視ステップの監視結果と、前記ヘッド位置観測ステップの観測結果とに基づき、前記インク吐出手段がインク吐出開始位置に到達した際にインク吐出の可否を判断するインク吐出判断ステップを含むことを特徴とする請求項18に記載のインク吐出制御方法。
【請求項20】
前記インク吐出判断ステップの判断結果と、前記ヘッド位置観測ステップの観測結果とに基づき、インク吐出位置とインク吐出中断位置とを管理するインク吐出位置管理ステップを含むことを特徴とする請求項19に記載のインク吐出制御方法。
【請求項21】
前記インク吐出制御ステップは、インク吐出が中断されたインク吐出対象を抽出するインク未吐出対象抽出ステップを含むことを特徴とする請求項20に記載のインク吐出制御方法。
【請求項22】
前記インク未吐出対象抽出ステップによって抽出されたインク吐出対象に対して、再度インク吐出手段を移動させ、インクを吐出することを特徴とする請求項21に記載のインク吐出制御方法。
【請求項23】
前記インク吐出手段が、前記インク吐出対象に対向した状態で、主走査方向または副走査方向に傾くことを特徴とする請求項13〜22のいずれか1項に記載のインク吐出制御方法。
【請求項24】
前記インク吐出手段が、複数のインク吐出対象に対して、同一走査中にインクを吐出することを特徴とする請求項23に記載のインク吐出制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−22059(P2007−22059A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−6672(P2006−6672)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】