説明

インク流路構造及びこれを含むインクジェットヘッド

【課題】圧力チャンバ内に残留する残留圧力波を短時間で減殺させてインク吐出特性を向上させるインク流路構造及びこれを含むインクジェットヘッドを提供する。
【解決手段】インク流路構造は、流入されたインクのノズルへの吐出のためにインクを格納する圧力チャンバ210及び圧力チャンバ210から発生する圧力によってインクを吐出した後、圧力チャンバ210にインクを供給し、圧力チャンバ210内に残留する残留圧力波を減殺させるために、圧力チャンバ210に向かう方向に拡張と縮小を繰り返す流路230を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク流路構造及びこれを含むインクジェットヘッドに関し、より詳細には、インクを吐出した後、残留する残留圧力波を減殺させるようにマニホ−ルドを構成する流路の構造を変更したインク流路構造及びこれを含むインクジェットヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、インクジェットヘッドとは、電気信号を物理的な力で変換して小さなノズルを通じてインクが液滴(droplet)の形態で吐出されるようにする構造体である。
【0003】
このようなインクジェットヘッドは、インク吐出方式によって大きく二つに分けられることができる。その一つは、熱源を利用してインクにバブル(bubble)を発生させて、そのバブルの膨張力によってインクを吐出させる熱駆動方式のインクジェットヘッドであり、もう一つは、圧電体を用いてその圧電体の変形に伴ってインクに加えられる圧力によってインクを吐出させる圧電方式のインクジェットヘッドである。
【0004】
特に、圧電方式のインクジェットヘッドは、最近産業用インクジェットプリンターで広範囲に使用されている。例えば、フレキシブル印刷回路基板(FPCB)上に、金、銀などの金属を溶かして作ったインクを噴射して、回路パターンを直接形成させたり、産業グラフィックや液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオード(OLED)の製造及び太陽電池などに使用される。
【0005】
このような圧電方式のインクジェットヘッドは、圧力チャンバ内のインクをノズルを通じて外部に吐出させるために圧電体からなるアクチュエータを装着することになるが、この場合、前記アクチュエータで発生した圧力波がノズルの方に伝播されてインクが吐出されるという原理である。
【0006】
しかし、この時発生した圧力波は、液滴が吐出された後も完全には消えず、以後、液滴を吐出する場合に次の圧力波と重畳されて、非理想的な液滴吐出を引き起こすという問題がある。
【0007】
即ち、液滴吐出のための圧力波がインクを吐出した後、インクを格納する圧力チャンバ内に残留することで、次の液滴吐出に影響を及ぼすことになる。
【0008】
特に、アクチュエータによる吐出周波数が一定周波数以上に上がると、残留圧力波の影響はさらに大きくなり、吐出される液滴速度をさらに不安定にする。
【0009】
従って、液滴が吐出されて圧力チャンバ内に残留する残留圧力波を短時間に消滅させて、インクが安定的に吐出されるようにする研究が至急な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、圧力チャンバ内に残留する残留圧力波を短時間で減殺させてインク吐出特性を向上させるインク流路構造及びこれを含むインクジェットヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施例によるインク流路構造は、流入されたインクのノズルへの吐出のために前記インクを格納する圧力チャンバ;及び前記圧力チャンバから発生する圧力によって前記インクを吐出した後、前記圧力チャンバに前記インクを供給し、前記圧力チャンバ内に残留する残留圧力波を減殺させるために、前記圧力チャンバに向かう方向に拡張と縮小を繰り返す流路;を含むことができる。
【0012】
本発明の一実施例によるインク流路構造の前記流路は、前記圧力チャンバに対応して多数のラインで形成され、前記圧力チャンバに前記インクを供給することを特徴とすることができる。
【0013】
本発明の一実施例によるインク流路構造の前記流路ユニットは、前記圧力チャンバに向かう方向に断面積が次第に拡大される断面積拡張部と、前記断面積拡張部の一端部から次第に縮小される断面積縮小部とを備える流路ユニットを複数連通して形成されたことを特徴とすることができる。
【0014】
本発明の一実施例によるインク流路構造の前記流路の前記断面積拡張部と前記断面積縮小部は、境界を基準として互いに対称的であることを特徴とすることができる。
【0015】
本発明の一実施例によるインク流路構造の前記流路は、前記流路ユニットが流路方向に直列に配置されて連通して形成されたことを特徴とすることができる。
【0016】
本発明の他の一実施例によるインクジェットヘッドは、流入されたインクのノズルへの吐出のために前記インクを格納する圧力チャンバ;前記圧力チャンバに対応する外部面に位置し、前記圧力チャンバに前記インク吐出駆動力を提供するアクチュエータ;及び前記アクチュエータによって発生する前記圧力チャンバにおける圧力によって前記インクを吐出した後、前記圧力チャンバに前記インクを供給し、前記圧力チャンバ内に残留する残留圧力波を減殺させるために、前記圧力チャンバに向かう方向に拡張と縮小とを繰り返す流路を備えるマニホ−ルド;を含むことができる。
【0017】
本発明の他の一実施例によるインクジェットヘッドの前記流路は、前記圧力チャンバに対応する多数のラインで形成され、前記圧力チャンバに前記インクを供給することを特徴とすることができる。
【0018】
本発明の他の一実施例によるインクジェットヘッドの前記流路は、前記圧力チャンバに向かう方向に断面積が次第に拡大される断面積拡張部と、前記断面積拡張部の一端部から次第に縮小される断面積縮小部とを備える流路ユニットを複数連通して形成されたことを特徴とすることができる。
【0019】
本発明の他の一実施例によるインクジェットヘッドの前記流路ユニットの前記断面積拡張部と前記断面積縮小部とは、境界を基準として互いに対称的であることを特徴とすることができる。
【0020】
本発明の他の一実施例によるインクジェットヘッドの前記流路は、前記流路ユニットが流路方向に直列に配置されて連通して形成されたことを特徴とすることができる。
【0021】
本発明のまた他の一実施例によるインクジェットヘッドは、流入されたインクのノズルへの吐出のために前記インクを格納する圧力チャンバが形成される上部基板;前記圧力チャンバに対応する前記上部基板の一面に位置し、前記圧力チャンバに前記インク吐出駆動力を提供するアクチュエータ;前記圧力チャンバと連通して前記インク吐出のために形成されるノズルを備える下部基板;及び前記上部基板に形成され、前記アクチュエータによって発生する前記圧力チャンバにおける圧力によって前記インクを吐出した後、前記圧力チャンバに前記インクを供給し、前記圧力チャンバ内に残留する残留圧力波を減殺させるために、前記圧力チャンバに向かう方向に拡張と縮小を繰り返す流路を備えるマニホ−ルド;を含むことができる。
【0022】
本発明のまた他の一実施例によるインクジェットヘッドの前記流路は、前記圧力チャンバに対応する多数のラインで形成され、前記圧力チャンバに前記インクを供給することを特徴とすることができる。
【0023】
本発明のまた他の一実施例によるインクジェットヘッドの前記流路は、前記圧力チャンバに向かう方向に断面積が次第に拡大される断面積拡張部と、前記断面積拡張部の一端部から次第に縮小される断面積縮小部とを備える流路ユニットを複数連通して形成されたことを特徴とすることができる。
【0024】
本発明のまた他の一実施例によるインクジェットヘッドの前記流路ユニットの前記断面積拡張部と前記断面積縮小部とは、境界を基準として互いに対称的であることを特徴とすることができる。
【0025】
本発明のまた他の一実施例によるインクジェットヘッドの前記流路は、前記流路ユニットが流路方向に直列に配置されて連通して形成されたことを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によるインク流路構造及びこれを含むインクジェットヘッドによると、圧力チャンバ内に残留する残留圧力波を短時間で減殺させてインク吐出特性を向上させることができる。
【0027】
また、マニホ−ルドの流路断面積を確保して、圧力チャンバへのインク供給を円滑にすることができる。
【0028】
また、前記圧力チャンバにインクを流入する時にバブル発生の頻度を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施例によるインクジェットヘッドを部分切断して示した分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施例によるインクジェットヘッドの一ユニットを示した概略斜視図である。
【図3】本発明の一実施例によるインクジェットヘッドの一ユニットを示した概略分解斜視図である。
【図4】本発明の一実施例によるインクジェットヘッドの一ユニットを示した概略断面図で、図1のA−A線の断面図である。
【図5】本発明の一実施例によるインクジェットヘッドに提供されるインク流路構造を示した概略斜視図である。
【図6】本発明の一実施例によるインクジェットヘッドに提供されるインク流路構造を示した概略平面図である。
【図7】本発明の一実施例によるインクジェットヘッドに提供されるインク流路構造の圧力チャンバ内における残留圧力波の変化を示したグラフである。
【図8a】本発明の一実施例によるインク流路構造に提供される流路を示した概略平面図である。
【図8b】本発明の一実施例によるインク流路構造に提供される流路を示した概略平面図である。
【図8c】本発明の一実施例によるインク流路構造に提供される流路を示した概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳しく説明する。但し、本発明の思想は、提示される実施形態に限らず、本発明の思想を理解する当業者は同一の思想の範囲内で他の構成要素を追加、変更、削除などを通じて、退歩的な他の発明や本発明思想の範囲内に含まれる他の実施形態を容易に提案することができ、これも本願発明思想の範囲内に含まれるとする。
【0031】
また、各実施形態の図面に示される同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素は、同一の参照符号を使用して説明する。
【0032】
図1は、本発明の一実施例によるインクジェットヘッドを部分切断して示した分解斜視図であり、図2は、本発明の一実施例によるインクジェットヘッドの一ユニットを示した概略斜視図であり、図3は、本発明の一実施例によるインクジェットヘッドの一ユニットを示した概略分解斜視図であり、図4は、本発明の一実施例によるインクジェットヘッドの一ユニットを示した概略断面図で、図1のA−A線の断面図である。
【0033】
図1から図4を参照すると、本発明の一実施例によるインクジェットヘッド400は、上部基板100、下部基板200、前記上部基板100内に形成されるインク流路構造350及びアクチュエータ300を含むことができる。
【0034】
上部基板100は、複数の圧力チャンバ210が規則的に形成され、インクが流入されるためのインク流入口280が設けられる。この時、前記インク流入口280は、マニホ−ルド270と直接的に連結されるように提供され、前記マニホ−ルド270は、リストリクター220を媒介として前記圧力チャンバ210にインクを供給する役割をする。
【0035】
前記インク流入口280は、インク貯蔵庫(図示せず)から流入されるインクを前記マニホ−ルド270に供給する機能をし、複数の前記マニホ−ルド270と対応して前記インク流入口280も複数形成されることができるが、単一個で形成されて複数の前記マニホ−ルド270と連通することも可能である。
【0036】
ここで、複数の前記マニホ−ルド270に対応してそれぞれ前記インク流入口280が形成される場合、各マニホ−ルド270に形成される前記インク流入口280は、直径が非常に小さい孔285が数多く集まって形成されることができる。
【0037】
これは、非常に小さい孔285で前記インク流入口280を構成することで、前記インクジェットヘッド400に異物が流入されることを防ぐフィルターの機能をすることができる。
【0038】
また、前記圧力チャンバ210は、前記アクチュエータ300が装着される位置の下部に設けられることができる。この時、前記上部基板100の中で前記圧力チャンバ210の天井をなす部分は、メンブレインの役割をする。
【0039】
従って、インク吐出のために前記アクチュエータ300に駆動信号を印加すると、前記アクチュエータ300と共にその下のメンブレインが変形されながら前記圧力チャンバ210の体積が減少する。
【0040】
これによる前記圧力チャンバ210内の圧力増加によって、前記圧力チャンバ210内のインクは、ノズル部250を構成するダンパとノズルとを通じて外部に吐出される。
【0041】
前記上部基板100は、前記圧力チャンバ210の正確な高さ設定のために、エッチング停止層の役割をする中間酸化膜が形成されるSOI(silicon on insulator)基板を使用することができる。
【0042】
ここで、前記マニホールド270は、前記インク流入口280からインクの供給を受けて格納する格納部240と、リストリクター220と連結される流路230とを含むことができる。
【0043】
即ち、前記圧力チャンバ210に前記インクを供給するためには、前記マニホ−ルド270を構成する前記流路230を媒介として供給されるべきである。
【0044】
前記流路230を通過したインクは、リストリクター220を通過し、前記圧力チャンバ210に到逹した後、アクチュエータ300の駆動力によって外部に吐出されることができる。
【0045】
但し、前記流路230と前記リストリクター220との間には連結部260が備えられることができるが、必ずしも必須な構成ではない。
【0046】
そして、ノズル部250は、前記圧力チャンバ210から前記アクチュエータ300によって吐出されるインクの伝達を受けて外部に吐出させる。
【0047】
即ち、前記インクは、ノズル部250を構成するダンパとノズルとを通じて外部に吐出される。
【0048】
この時、前記ノズル部250を構成するダンパは、湿式エッチング(wet etching)で製作する場合、台形状に製作され、前記下部基板200を SOI(silicon on insulator)基板で製作する場合、乾式エッチング(dry etching)を通じた円筒状ダンパも適用されることができる。
【0049】
但し、ダンパの形状は、前記言及した形状に限らず、本発明の思想を理解する当業者の水準で変更可能であることは明らかである。
【0050】
ここで、前記ノズル部250は、前記下部基板200に形成され、前記インクジェットヘッド400内に形成された流路を通じて移動するインクを液滴で噴射するようになる。
【0051】
この時、前記下部基板200は、半導体集積回路に広く使用されるシリコン基板が使用されることができるが、必ずしもシリコン基板に限らず、多様な材料が適用されることができる。
【0052】
前記アクチュエータ300は圧電体を含むことができ、前記圧電体の変形で前記インクを前記下部基板200に形成されたノズル部250を通じて外部に吐出することができる。
【0053】
即ち、前記圧電体は、前記圧力チャンバ210の上面であるメンブレインを変形させて、インク吐出のための駆動力を発生させることができる。前記圧電体に電圧が印加されれば、前記メンブレインの上下変形で駆動力が垂直方向に伝達され、この時の駆動力で前記圧力チャンバ210内のインクが前記ノズル部250を通じて外部に吐出されることができる。
【0054】
ここで、前記圧電体は、電気的エネルギーを機械的エネルギーに、または逆に変換することができる要素であり、その材料として、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr、Ti)O3:PZT)セラミックス材料からなることができる。
【0055】
また、インク吐出のために圧電体を用いた圧電方式ではなく、バブルジェット(登録商標)またはサーマルジェット方式が利用されることもできる。
【0056】
図5は、本発明の一実施例によるインクジェットヘッドに提供されるインク流路構造を示した概略斜視図であり、図6は、本発明の一実施例によるインクジェットヘッドに提供されるインク流路構造を示した概略平面図であり、図7は、本発明の一実施例によるインクジェットヘッドに提供されるインク吐出流路構造の圧力チャンバ内における残留圧力波の変化を示したグラフである。
【0057】
図5、及び図6を参照すると、本発明の一実施例によるインクジェットヘッドに提供されるインク流路構造350は、圧力チャンバ210、リストリクター220及びマニホ−ルド270を含むことができる。
【0058】
ここで、前記圧力チャンバ210は、前記圧力チャンバ210内の圧力変化によって外部にインクを吐出させる機能をするもので、前記一実施例と同一の構成及び効果を有するため、以下に説明は省略する。
【0059】
前記マニホ−ルド270は、前記インク流入口280からインクの供給を受けて格納する格納部240と、リストリクター220と連結される流路230とを含むことができる。
【0060】
前記流路230は、前記リストリクター220を媒介として前記圧力チャンバ210にインクを供給する管で、前記圧力チャンバ210に向かう方向に拡張と縮小とを繰り返す内部空間を備えることができる。
【0061】
即ち、前記流路230は、前記圧力チャンバ210に向かう方向に拡大と縮小とを繰り返した断面積を備えることができる。
【0062】
つまり、前記流路230は、断面積が次第に拡大される断面積拡張部235aと、前記断面積拡張部235aの一端部から次第に縮小される断面積縮小部235bとを備えた流路ユニット235が複数連結されてなることができる。
【0063】
この時、前記流路ユニット235は、流路方向に直列に配置され、連通して前記流路230を構成することができ、等間隔で連通してもかまわない。
【0064】
このように構成された前記流路230は、多数のラインで形成され、前記圧力チャンバ210に前記インクを供給することができる。
【0065】
但し、前記流路230は、2個のラインで形成されることが好ましいが、必ずしもこれに限らず、当業者の水準で変更可能であることは明らかである。
【0066】
一般的に、インクジェットヘッド400の性能はアクチュエータ300によって高周波が印加される場合に問題になるので、インクジェットヘッド400の高周波吐出特性がインクジェットヘッドの性能を決める非常に重要な要素となる。
【0067】
前記インクジェットヘッド400は、アクチュエータ300から発生した圧力波がノズル部250の方に伝播された後、前記圧力波の陽圧で液滴のヘッド部分がノズル部250の外に出て、陰圧で液滴の末尾部分が途切れながら液滴が吐出されるという原理である。
【0068】
しかし、この時発生した前記圧力波は直ぐには消えず、前記圧力チャンバ210を含んだインク流路構造350を通じて伝播、反射され、一定時間が経ってから完全に消散されてなくなる。
【0069】
この時、前記圧力チャンバ210を含んだインク流路構造350内に残っている圧力波を残留圧力波と定義すると、前記残留圧力波の消散がインクジェットヘッド400の性能を決める重要な要素となる。
【0070】
即ち、残留圧力波の消散がインクジェットヘッド400の高周波駆動安定性を決めることになる。
【0071】
つまり、液滴吐出のために外部電源から印加されたパルスがアクチュエータ300の圧電体を駆動させて発生する圧力波によって液滴が吐出され、次の液滴が吐出されるための次の順番のパルスが印加される前に前記圧力波が完全に消滅されてはじめて、高性能のインクジェットヘッド400になる。
【0072】
しかし、次の順番のパルスが印加される前に完全に消散されていない残留圧力波が存在するようになると、これが、次のパルスの圧力波と重畳されて非理想的な液滴吐出を引き起こすことになる。
【0073】
低周波領域(5kHz以下の範囲)では、前波形の残留圧力波が次のパルスが印加される前に大部分消滅されて安定した吐出特性を見せるが、高周波になると残留圧力波と次に印加される圧力波とが重畳されて、インク吐出に問題が起こる。
【0074】
特に、残留圧力波によってノズル部250の界面が不安定になる場合、液滴吐出特性はさらに不安定になる。
【0075】
しかし、本発明の一実施例によるインクジェットヘッド400に提供されるインク流路構造350は、断面積が拡大と縮小とを繰り返した流路230を備えて、残留圧力波を次のパルスの圧力波の印加前に消滅させることができる。前述したように、圧力波は、圧力チャンバ210を含んだインク流路構造350を通じて伝播、反射されることにより消散される。流路構造350に含まれる流路230に流路ユニット235が存在すると、存在しない場合と比較して、圧力波は流路230において反射され易くなり、圧力波を速く消滅させることができる。
【0076】
図7は、圧力チャンバ210内の内部圧力を時間によって無次元化して示している。薄い実線が流路ユニット235がない場合の圧力変化であり、太い実線(本発明のインク流路構造:350)が流路ユニット235が存在する時の圧力変化であり、本実験結果は、熱流体解釈プログラムであるFluentを使って解釈した結果である。
【0077】
本発明によるインク流路構造350は、インク吐出のためのパルス360が印加されて、次の順番のパルスが印加される前に、前パルスによる残留圧力波が完全に消散370されることが分かる。
【0078】
即ち、20KHzで吐出する場合、パルス間の間隔は50μsであるが、20μs360で初めて印加されたパルスによる残留圧力波が70μs370で完全に消散されるので、高性能のインクジェットヘッド400になることができる。
【0079】
また、前記インク流路構造350は、前記マニホ−ルド270を構成する前記流路230と前記圧力チャンバ210との間にリストリクター220を備えることができる。
【0080】
前記リストリクター220は、前記圧力チャンバ210の断面積より小さいことを特徴とすることができ、前記リストリクター220の断面積の幅と長さの変化によってインク吐出性能が変わることができる。
【0081】
但し、前記リストリクター220の流路の幅を大きく減らすと残留圧力波を減殺させることには効果的であるが、流動抵抗が大きくなって、高周波領域でマニホ−ルド270から圧力チャンバ210へのインク供給が非常に遅くなる。
【0082】
従って、前記リストリクター220の流路の幅は、マニホ−ルド270から圧力チャンバ210へのインク供給と前記言及した残留圧力波を減殺させることができる程度での調律が必要である。
【0083】
ここで、前記流路230に対しては、図8を参照して後述する。
【0084】
図8は、本発明の一実施例によるインク流路構造に提供される流路を示した概略平面図である。
【0085】
図8を参照すると、本発明の一実施例によるインク流路構造350に提供される流路230は、複数の流路ユニット235を含むことができる。
【0086】
前記流路ユニット235は、断面積拡張部235a及び断面積縮小部235bで構成された前記流路230の構成単位であり、前記断面積拡張部235aは、格納部240から前記圧力チャンバ210方向に断面積が増加する部分であり、前記断面積縮小部235bは、前記断面積拡張部235aの一端から断面積が減少する部分である。
【0087】
前記流路ユニット235は、図8aのように2個のラインで形成されることができるが、必ずしもこれに限らず、図8b及び図8cのように、単一個ラインで形成されることもできる。
【0088】
従って、前記流路230は、前記流路ユニット235が等間隔で配置されて連通することで形成され、前記流路ユニット235は、13個程度で形成されることが好ましいが、必ずしもこれに限らず、当業者の水準で変更可能である。
【0089】
また、図8a及び8bのように、前記流路ユニット235の前記断面積拡張部235aと前記断面積縮小部235bとは、境界を基準として互いに対称的に形成されることができるが、図8cのように非対称的であってもかまわない。
【0090】
ここで、前記流路ユニット235で構成された前記流路230構造は、音響学的に低域通過フィルター(low−pass filter)の役割をするが、これは低周波は通過させて高周波は減殺・遮断する役割をする。
【0091】
即ち、瞬間的に圧力ピーク(peak)のように急激に圧力が上昇する高周波成分を速やかに除去して緩やかな形態の低周波成分に変換させる役割をする。
【0092】
従って、高周波領域で残留圧力波を短時間に消滅させて前記インクジェットヘッド400の高周波吐出特性を向上させることができる。
【0093】
これは、前記流路230の内部壁面のパターンが、圧力チャンバ210に向かう方向に垂直な方向の流路230の断面積を周期的に拡張および縮小させる形状であることによって、残留圧力波を速やかに減殺させることができる。
【0094】
また、前記流路ユニット235で構成された流路230は、インク流入時にバブルが発生する確率を低くし、バブルが発生しても前記流路230の内部壁面に固着せず、前記インクがうまく排出されるようにすることができる。
【0095】
以上の実施例を通じて、断面積拡張部235aと断面積縮小部235bとを備える流路ユニット235を複数連通して連結された流路230を利用してインク流路構造350を形成し、残留圧力波を減殺させることができるので、インクジェットヘッド400の高周波吐出特性を向上させることができる。
【0096】
また、マニホ−ルド270を構成する流路230の断面積を確保して、圧力チャンバ210へのインク供給を円滑にすることができ、インク流入時のバブル発生頻度を減らすことができる。
【符号の説明】
【0097】
100 上部基板
200 下部基板
210 圧力チャンバ
220 リストリクター
230 流路
235 流路ユニット
235a 断面積拡張部
235b 断面積縮小部
240 格納部
270 マニホ−ルド
300 アクチュエータ
350 インク流路構造
400 インクジェットヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入されたインクのノズルへの吐出のために前記インクを格納する圧力チャンバ;及び
前記圧力チャンバに向かう方向に沿って断面積が拡張と縮小とを繰り返す形状を有し、前記圧力チャンバから発生する圧力によって前記インクが吐出された後、前記圧力チャンバに前記インクを供給するとともに、前記圧力チャンバ内に残留する残留圧力波を減殺させる流路;
を含むインク流路構造。
【請求項2】
前記流路は、前記圧力チャンバに対応して形成され、複数のラインを有し、前記圧力チャンバに前記インクを供給することを特徴とする請求項1に記載のインク流路構造。
【請求項3】
前記流路は、前記圧力チャンバに向かう方向に断面積が次第に拡大される断面積拡張部と、前記断面積拡張部の一端部から次第に縮小される断面積縮小部とを備える流路ユニットを複数連通して形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載のインク流路構造。
【請求項4】
前記断面積拡張部と前記断面積縮小部とは、前記断面積拡張部と前記断面積縮小部との境界を基準として互いに対称的であることを特徴とする請求項3に記載のインク流路構造。
【請求項5】
前記流路は、前記流路ユニットが流路方向に直列に配置されて連通して形成されたことを特徴とする請求項3または4に記載のインク流路構造。
【請求項6】
流入されたインクのノズルへの吐出のために前記インクを格納する圧力チャンバ;
前記圧力チャンバに対応する外部面に位置し、前記圧力チャンバに前記インクを吐出させるための駆動力を提供するアクチュエータ;及び
前記圧力チャンバに向かう方向に沿って断面積が拡張と縮小とを繰り返す形状を有し、前記アクチュエータによって発生する前記圧力チャンバにおける圧力によって前記インクが吐出された後、前記圧力チャンバに前記インクを供給するとともに、前記圧力チャンバ内に残留する残留圧力波を減殺させる流路を備えるマニホ−ルド;
を含むインクジェットヘッド。
【請求項7】
流入されたインクのノズルへの吐出のために前記インクを格納する圧力チャンバが形成される上部基板;
前記圧力チャンバに対応する外部面に位置し、前記圧力チャンバに前記インクを吐出させるための駆動力を提供するアクチュエータ;
前記圧力チャンバと連通して前記インクの吐出のために形成されるノズルを備える下部基板;及び
前記上部基板に形成され、前記圧力チャンバに向かう方向に沿って断面積が拡張と縮小とを繰り返す形状を有し、前記アクチュエータによって発生する前記圧力チャンバにおける圧力によって前記インクが吐出された後、前記圧力チャンバに前記インクを供給するとともに、前記圧力チャンバ内に残留する残留圧力波を減殺させる流路を備えるマニホ−ルド;
を含むインクジェットヘッド。
【請求項8】
前記流路は、前記圧力チャンバに対応して形成され、複数のラインを有し、前記圧力チャンバに前記インクを供給することを特徴とする請求項6または7に記載のインクジェットヘッド。
【請求項9】
前記流路は、前記圧力チャンバに向かう方向に断面積が次第に拡大される断面積拡張部と、前記断面積拡張部の一端部から次第に縮小される断面積縮小部とを備える流路ユニットを複数連通して形成されたことを特徴とする請求項6から8の何れか1項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項10】
前記断面積拡張部と前記断面積縮小部とは、前記断面積拡張部と前記断面積縮小部との境界を基準として互いに対称的であることを特徴とする請求項9に記載のインクジェットヘッド。
【請求項11】
前記流路は、前記流路ユニットが流路方向に直列に配置されて連通して形成されたことを特徴とする請求項9または10に記載のインクジェットヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【公開番号】特開2012−6373(P2012−6373A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6090(P2011−6090)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】