説明

インサート成形品の製造方法

【課題】磁性体からなるインサート部材を均一に加熱させ、その均一に加熱させたインサート部材を樹脂内に成形するインサート成形品の製造方法を提供することである。
【解決手段】電磁誘導加熱によって磁性体からなるインサート部材M1を加熱する加熱工程と、前記加熱工程によって加熱されたインサート部材M1を樹脂内に成形する成形工程とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート成形品の製造方法に関し、詳しくは、磁性体からなるインサート部材を樹脂内にインサートさせてインサート成形品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、磁性体(例えば、鉄、ステンレス、マグネシウムなど)からなるインサート部材を樹脂内にインサートさせてインサート成形品を製造する方法として、例えば、図3に示す技術が既に知られている。この技術では、所望する温度となるように、インサート部材(例えば、鉄板)M1を電気炉30によって予め加熱している。そして、その加熱したインサート部材M1を樹脂成形機20の金型21のキャビティ(図示しない)内にセットした状態で金型21の型締めをおこなうと共に金型21のキャビティ内に溶融樹脂を充填させている。その後、金型21内の溶融樹脂を固化させて、出来上がったインサート成形品(図示しない)を取り出している。このようにインサート部材M1を予め加熱しておくことで、インサート部材M1と固化させた後の樹脂との接合に不具合(例えば、剥れなど)が生じることを防止している。
【特許文献1】特開2006−81251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したインサート成形品の製造方法では、インサート部材M1を電気炉30によって加熱しているため、例えば、加熱後のインサート部材M1の表面は非均一な温度状態となることがあった。すなわち、加熱後のインサート部材M1の表面において、所望する温度となっている部位と所望する温度となっていない部位が混在していた。このように所望する温度となっていない部位が存在すると、その部位と固化させた後の樹脂との接合に不具合が生じるだけでなく、樹脂の固化不良もしくは硬化不良が生じることとなっていた。これらの不具合によって、固化させた後の樹脂からインサート部材M1が脱落してしまうという問題が発生していた。
【0004】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、磁性体からなるインサート部材を均一に加熱させ、その均一に加熱させたインサート部材を樹脂内に成形するインサート成形品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、電磁誘導加熱によって磁性体からなるインサート部材を加熱する加熱工程と、前記加熱工程によって加熱されたインサート部材を樹脂内に成形する成形工程とを備えてなるインサート成形品の製造方法である。
この製造方法によれば、加熱後のインサート部材の表面を均一な温度状態に且つ所望する温度状態とさせることができる。そのため、従来技術で説明した固化させた後の樹脂からインサート部材が脱落してしまうという問題が発生することはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を用いて説明する。
(実施例1)
まず、図1によって実施例1を説明する。なお、以下の説明をするにあたって、従来技術で説明した部材と同一もしくは均等な構成の部材には、図面において同一符号を付すことで重複する説明は省略する。このことは、後述する実施例2〜3においても同様である。図1は、実施例1の概略構成を説明する図である。
【0007】
この実施例1は、インサート部材M1を加熱するための加熱手段を従来技術で説明した電気炉30から電磁誘導加熱装置10に変更した実施形態である。この電磁誘導加熱装置10は、公知の装置であり、プレート11内に埋め込まれた加熱コイル(図示しない)から発生する磁力線によってプレート11上に置かれたインサート部材M1を加熱するものである。この記載が、特許請求の範囲に記載の加熱工程に相当する。
【0008】
そして、加熱後のインサート部材M1を樹脂成形機20の金型21のキャビティ内にセットした状態で金型21の型締めをおこなうと共に金型21のキャビティ内に溶融樹脂を充填させている。この記載が、特許請求の範囲に記載の成形工程に相当する。その後、金型21内の溶融樹脂を固化させて、出来上がったインサート成形品(図示しない)を取り出している。
【0009】
上述したようにインサート成形品を製造すると、加熱後のインサート部材M1の表面を均一な温度状態に且つ所望する温度状態とさせることができる。そのため、従来技術で説明した固化させた後の樹脂からインサート部材M1が脱落してしまうという問題が発生することはない。
【0010】
また、電気炉30を使用する場合と比較すると、インサート部材M1の加熱時間を短縮することができる。これにより、加熱工程の作業性を向上させることができる。また、電気炉30を使用する場合と比較すると、加熱に要する電力消費量を低減することができる。これにより、加熱工程のコスト安を図ることができる。
【0011】
(実施例2)
図2は、実施例2の概略構成を説明する図である。既に説明した実施例1では、インサート部材M1の形状が平板形状のものであった。それに対し、これから説明する実施例2では、インサート部材M2の形状が積層リング形状のもの(例えば、モータのロータコアを構成する複数枚積層された電磁鋼板)である。そのため、この実施例2の電磁誘導加熱装置10は、プレート11の代わりに円筒形状の外プレート12とこの外プレートの内部に同芯となるように挿入された内プレート13とを備えている。もちろん、これら内外プレート12、13には、プレート11と同様に加熱コイルが埋め込まれている。
【0012】
このように構成された内外プレート12、13の隙間にインサート部材M2を挿入してインサート部材M2を加熱することができる。そして、実施例1と同様にして、加熱後のインサート部材M2を樹脂成形機20の金型21のキャビティ内にセットした状態で金型21の型締めをおこなうと共に金型21のキャビティ内に溶融樹脂を充填させている。その後、金型21内の溶融樹脂を固化させて、出来上がったインサート成形品(図示しない)を取り出している。
【0013】
上述したようにインサート成形品を製造すると、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。また、この実施例2のように、インサート部材M2の形状が積層リング形状のものである場合、実施例1で説明した電磁誘導加熱装置10のプレート11を使用する場合と比較すると、インサート部材M2の加熱時間を短縮することができる。これにより、さらに加熱工程の作業性を向上させることができる。
【0014】
(実施例3)
既に説明した実施例1、2では、インサート部材M1、M2を加熱させる目的で電磁誘導加熱装置10を使用するものであった。それに対し、これから説明する実施例3では、熱硬化樹脂を硬化させる目的で電磁誘導加熱装置10を使用するものである。
【0015】
例えば、モータのロータコアを構成する複数枚積層された電磁鋼板に形成された切欠溝に永久磁石を埋め込む場合、埋め込んだ永久磁石と切欠溝との隙間に接着剤を充填させ、充填させた接着剤を硬化させるためにロータコアを電気炉によって加熱させていた。そのため、この加熱に多くの時間を必要としていた。しかし、この加熱を、実施例1で説明したように電磁誘導加熱装置10によって実施すると、ロータコアの加熱時間を短縮することができる。
【0016】
上述した構成であれば、熱硬化樹脂を硬化させる目的で電磁誘導加熱装置10を使用することができる。そのため、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【0017】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
実施例1では、インサート部材M1の下面にのみプレート11を配置する場合を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、インサート部材M1の上面にもプレート11を配置する構成であっても構わない。その場合、インサート部材M1の加熱時間をさらに短縮することができる。
【0018】
実施例1〜2では、インサート部材M1、M2を樹脂成形機20の金型21のキャビティ内にセットした状態で金型21の型締めをおこなうと共に金型21のキャビティ内に溶融樹脂を充填させる構成を説明した。このとき、インサート部材M1、M2は溶融樹脂に完全に覆われる構成でも構わない。また、インサート部材M1、M2は溶融樹脂に完全に覆われることなく、その一部が露出する構成でも構わない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の一実施形態の概略構成を説明する図である(実施例1)。
【図2】図2は、本発明の他の実施形態の概略構成を説明する図である(実施例2)。
【図3】図3は、従来技術の概略構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0020】
10 電磁誘導加熱装置
11 プレート
12 外プレート
13 内プレート
20 樹脂成形機
21 金型
30 電気炉
M1 インサート部材(鉄板)
M2 インサート部材(電磁鋼板)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁誘導加熱によって磁性体からなるインサート部材を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程によって加熱されたインサート部材を樹脂内に成形する成形工程とを備えてなるインサート成形品の製造方法。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−93969(P2008−93969A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278412(P2006−278412)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000225577)内浜化成株式会社 (21)
【Fターム(参考)】