説明

インデックスガイド型埋め込みヘテロ構造窒化物レーザダイオード構造

【課題】より強いモード安定性及び低閾値電流動作を有するレーザダイオードの提供。
【解決手段】インデックスガイド型埋め込みヘテロ構造窒化物レーザダイオード構造100は、第1、第2及び第3の面を有し、クラッド構造121及びクラッド層125並びに前記クラッド構造121と前記クラッド層125との間に配置された多重量子井戸構造145を有するリッジ構造111と、前記リッジ構造111の前記第1、第2及び第3の面の上に存在し、電気的接触のために前記リッジ構造111の前記第3の面への開口を有する埋め込み層155とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物ベースの青色レーザダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント及び光学データ記憶への適用のための、窒化物ベースの青色レーザダイオードが開発されている。最初のAlGaInN青色レーザダイオードは、レーザダイオードの様々な空間モードに対する制御を行えない、広面積レーザであった。しかし、ほとんどの用途では、レーザダイオードは単一の空間モードでの動作が要求される。AlGaInN青色レーザダイオードの単一空間モード動作を達成する1つの方法は、ナカムラ等(S. Nakamura et al.)の“リッジ形状InGaN多重量子井戸構造レーザダイオード(Ridge-geometry InGaN multi-quantum-well-structure laser diodes)”(Applied Physics Letters 69 (10), pp. 1477-1479)で述べられているように、横方向の導波路を定めるリッジ導波路構造を用いることである。リッジ導波路は青色レーザの単一空間モード発光を提供するものであるが、導波性は比較的弱い。横方向の屈折率のステップは小さく、発熱及びキャリアの注入による影響を受ける。更に、リッジがレーザ活性領域の近くまで十分に延びるように、リッジをエッチングしなければならないが、GaN材料には化学エッチングを適用できないことから、レーザ活性領域に材料の損傷を防ぐためのエッチストップを使用できないので、製造上の困難がある。
リッジウエーブガイド(導波管)は半導体レーザの横方向の光学的閉じ込め構造を形成することができるので、リッジは半導体レーザのエッジエミッション(端部からの光放射)源を正確に画定する。リッジウエーブガイドは典型的には、半導体レーザ構造の活性半導体層の上部の、概ね平らな上面と傾斜した側壁を有する半導体材料の小型のリッジである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−289190号公報
【特許文献2】特開平10−093198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
より強いモード安定性及び低閾値電流動作を提供するために、一般的にInGaAsP光ファイバー通信レーザに用いられる埋め込みヘテロ構造、又は、高出力単一モードAlGaAsレーザダイオードに用いられる不純物誘導層が不規則な導波路構造を有するもののような、より強くインデックス(屈折率)ガイドされた(index-guided)ダイオードレーザが必要である。更に、埋め込みヘテロ構造を用いると、ある製造上の困難が回避される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
インデックスガイド型埋め込みヘテロ構造AlGaInNレーザダイオード、及び自己整合インデックスガイド型埋め込みヘテロ構造AlGaInNレーザダイオードの両方は、従来のリッジ導波路構造と比べて、改善されたモード安定性及び低閾値電流を提供する。本発明に従ったインデックスガイド型埋め込みヘテロ構造AlGaInNレーザダイオードの構造は、一般的に、横方向の閉じ込めのために、絶縁性のAlN、AlGaN又はp型ドープAlGaN:Mgを用いるとともに、リッジ上に画定されるレーザダイオードの狭い活性ストライプの配置位置である狭い(一般的に約1から5μm幅の)リッジを有する。この狭いリッジは、リッジ上にp型電極コンタクト用のウィンドウを有する、エピタキシャルに蒸着された膜によって囲まれている。このリッジは、レーザダイオード構造の活性領域を完全に貫通して短周期超格子n型クラッド層に至るまでエッチングされる。この短周期超格子は、閉じ込めのために十分な厚さのクラッド層をひび割れを生じずに実現するために用いられる。一般的に、短周期超格子を用いると、ひび割れを生じずにクラッド層の厚さを2倍にできる。これは、従来の構造と比べて、漏洩によって失われる光の強さを約2桁低減するとともに、遠視野放射像を改善する。リッジのエッチングによって接合面が露出され、これらの接合面は、注入されたキャリアが、反転分布に必要な伝導帯や価電子帯の状態を満たす(飽和させる)のを防ぐ表面状態を提供する。しかし、オーバーグロースした材料とリッジ構造との間の境界面は完全に密着するので、高バンドギャップ材料のエピタキシャル再成長は表面状態を不活性化する。
【0006】
自己整合インデックスガイド型埋め込みヘテロ構造AlGaInNレーザダイオードの構造は、強い横方向での光の閉じ込め及び強い横方向でのキャリアの閉じ込めを提供するための埋め込み層としても機能するp型クラッド層を用いる。このp型クラッド層/埋め込み層は一般的にAlGaN:Mgである。この自己整合インデックスガイド型埋め込みヘテロ構造レーザダイオードの構造は、インデックスガイド型埋め込みヘテロ構造AlGaInNレーザダイオードの構造よりもシンプルである。活性量子井戸及び導波路領域を通ってレーザ構造を成長させ、次に、n型バルククラッド層まで到る狭いレーザリッジをエッチングする。次に、リッジの周りに、p型コンタクト層に沿って、p型クラッド/埋め込み層をオーバーグロースさせる。この2段階成長プロセスによって、コンタクトウィンドウを作る必要がない横方向の導波路及びキャリア閉じ込め構造ができるので、後続のレーザ形成プロセスは単純である。故に、必要なレーザ形成プロセスは、基本的には広面積レーザ製造シーケンスである。更に、自己整合アーキテクチャにより可能となる比較的大きなp型接触面積によって、レーザダイオードの連続波動作中のダイオード電圧がより低くなるとともに、熱の発生がより少なくなる。
【0007】
本発明の第1の態様は、第1、第2及び第3の面を有し、クラッド構造及びクラッド層並びに前記クラッド構造と前記クラッド層との間に配置された多重量子井戸構造を有するリッジ構造と、前記リッジ構造の前記第1、第2及び第3の面の上に存在し、電気的接触のために前記リッジ構造の前記第3の面への開口を有する埋め込み層とを有する、インデックスガイド型埋め込みヘテロ構造窒化物レーザダイオード構造である。本発明の第2の態様は、第1、第2及び第3の面を有し、クラッド構造及びクラッド層並びに前記クラッド構造と前記クラッド層との間に配置された多重量子井戸構造を有するリッジ構造と、前記リッジ構造の前記第1、第2及び第3の面の上に存在し、電気的接触のために前記リッジ構造の前記第3の面への開口を有する第1埋め込み層と、前記リッジ構造の前記第3の面と接触するように、前記第1埋め込み層の上に存在する第2埋め込み層とを有する、インデックスガイド型埋め込みヘテロ構造窒化物レーザダイオード構造である。
【0008】
当業者には、以下の本発明の詳細説明、好ましい実施の形態、説明目的であり実物大ではない添付の図面、及び添付の特許請求の範囲から、本発明の長所及び目的が明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に従ったインデックスガイド型埋め込みヘテロ構造レーザダイオード構造の一実施形態を示す図である。
【図2】本発明に従ったインデックスガイド型埋め込みヘテロ構造レーザダイオード構造の一実施形態を示す図である。
【図3】本発明に従った自己整合インデックスガイド型埋め込みヘテロ構造レーザダイオード構造の一実施形態を示す図である。
【図4】図3に示されている実施の形態でのキャリアの注入路を示す図である。
【図5】本発明に従った自己整合インデックスガイド型埋め込みヘテロ構造レーザダイオード構造の一実施形態を示す図である。
【図6】本発明に従った自己整合インデックスガイド型埋め込みヘテロ構造レーザダイオードを作るためのプロセスステップを示す図である。
【図7】本発明に従った自己整合インデックスガイド型埋め込みヘテロ構造レーザダイオードを作るためのプロセスステップを示す図である。
【図8】本発明に従った自己整合インデックスガイド型埋め込みヘテロ構造レーザダイオードを作るためのプロセスステップを示す図である。
【図9】本発明に従った自己整合インデックスガイド型埋め込みヘテロ構造レーザダイオードを作るためのプロセスステップを示す図である。
【図10】本発明に従った自己整合インデックスガイド型埋め込みヘテロ構造レーザダイオードを作るためのプロセスステップを示す図である。
【図11】本発明に従った自己整合インデックスガイド型埋め込みヘテロ構造レーザダイオードを作るためのプロセスステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明に従った、インデックスガイド型埋め込みヘテロ構造AlGaInNレーザダイオード構造100を示している。Al23成長基体110上にGaN:Si層115が配置され、一実施形態では、光漏れを低減するために、層115はAlGaN:Siでできていてもよい。各々が一般に約20Åの厚さを有する一般的にはAl0.15Ga0.85N:Si及びGaN:Siの交互の層でできている短周期超格子n型クラッド構造121が、GaNのn型導波層(図1には示さない)の下方のInGaN多重量子井戸構造145の底部に配置される。短周期超格子n型クラッド構造121の導入により、クラッド層の厚さを増して、横光学モードの漏洩(リーク)を顕著に低減することが可能となり、その結果、レーザダイオード構造100の横遠視野像が改善される。例えば、一般的な約7%の漏洩が0.5%にまで低減され得る。この遠視野ビーム像はガウシアン遠視野ビームに近づく。
【0011】
InGaN多重量子井戸構造145の上に存在する一般的にAl0.2Ga0.8N:Mgであるトンネルバリア層(図1には示さない)に隣接したGaNのp型導波層(図1には示さない)の上に、一般的にAl0.07Ga0.93N:Mgであるp型クラッド層125が配置される。層185はオーミック接触を容易にするためのキャップ層として働く。一般的にGaN:Mgであるキャップ層185の上に、埋め込み層155が配置され、埋め込み層155には、p型電極190をGaN:Mg層185と接触させるとともにn型電極195をGaN:Si層115と接触させるためのウィンドウが貫通している。
【0012】
一般的に絶縁性のAlN又はAlGaNである埋め込み層155は低い屈折率を有し、屈折率のステップは一般的に0.1前後であるので、結果として強い横方向のインデックスガイドが得られる。横方向の屈折率ステップがそのように大きいと、インデックスガイド型埋め込みヘテロ構造AlGaInNレーザダイオード構造100における横方向の導波は、熱又はキャリア注入の影響を圧倒し、より安定し且つ非点収差の程度がより小さいビーム像を提供する。埋め込み層155は又、高いバンドギャップエネルギーを有し、その結果、高い横方向のキャリアの閉じ込めが得られる。
【0013】
アンドープAlN膜は絶縁性であり、InGaN多重量子井戸構造145の周囲に分路(シャント)が形成されるのを防ぐ。アンドープAlGaNは、成長条件及びアルミニウム含有量によっては絶縁性ではない場合があるので、本発明に従ったインデックスガイド型埋め込みヘテロ構造AlGaInNレーザダイオード構造100の一実施形態では、埋め込み層155はAlGaN:Mgドープ層である。AlGaNの光電子特性は成長条件に依存する。例えば、低温(約900℃)で絶縁性のGaNを成長させることは可能であるが、より高い成長温度ではGaNはn型バックグラウンド導電性を有する傾向がある。n型導電性のための精密な機構は、元々の欠陥及び/又は不純物から生じると思われる。酸素及びシリコンは両方とも、GaN内の浅い部分に存在する意図しないドナーとして見つかることがよくある。マグネシムをドープした低アルミニウム含有AlGaNは、GaNと同様の挙動をするが、但し、マグネシウムアクセプタの活性化エネルギーは、アルミニウム含有量が20%までの合金に添加されるアルミニウムの量が1%増すごとに約3meVの率で増加する。アルミニウム含有量が20%を超えると、意図しない酸素の混入が、制御不可能な高いn型バックグラウンド導電性を生じ得る。アルミニウムは酸素に対する親和性が高く、酸素不純物は一般的にMOCVD成長中に様々なソースから導入され得るので、酸素は容易にAlGaNに混入される。酸素不純物をマグネシウムアクセプタによって補償することもできるが、これは実際には困難であり、絶縁性の高アルミニウム含有AlGaN埋め込み層を作ることは困難であろうことが示唆される。高いアルミニウム含有量は、より良好な光及びキャリアの閉じ込めを提供する。
【0014】
マグネシウムアクセプタとともに中性の複合物を生成する原子状態の水素が容易に得られるというMOCVD成長の特徴に起因して、AlGaN:Mg膜は成長するにつれて絶縁性となり、p型の導電性を活性化するために熱アニールを必要とする。一般的には絶縁性の埋め込み層が好ましいが、絶縁性の埋め込み層の蒸着が困難又は不可能な場合は、活性化されたAlGaN:Mg(p型の導電性を有する)も埋め込み層として適している。埋め込み層155がp型である場合は、短周期超格子n型クラッド層121との境界面にp−n接合が形成される。しかし、このp−n接合のオン電圧は、InGaN多重量子井戸構造145内のp−n接合よりも大きい。このことは、電流路がInGaN多重量子井戸構造145を通り易くする。埋め込み層155の上にはp型GaNキャップは蒸着されないので、埋め込み層155へのp型電極190のコンタクトは、p型GaN:Mg(層)185へのp型電極190のコンタクトよりも、遥かに抵抗が高い。これは、多重量子井戸構造145への電流の注入を更に促進する。
【0015】
自由キャリアの損失がn型材料に対してはより低いことを理由として、光の損失を更に低減するために、又はn型AlGaN材料を成長させることだけが可能な場合には、n型埋め込み層を用いてもよい。図2は、本発明の一実施形態に従ったn型埋め込み層255を有する、インデックスガイド型埋め込みヘテロ構造AlGaInNレーザダイオード構造200を示している。n型埋め込み層255の再成長の後、再成長した埋め込み層を、一般的にはCAIBE(chemicallyassisted ion beam etch) 法によるエッチングによりパターン形成する。2度目の再成長では、n型埋め込み層255は、一般的なドーピングレベルの約1020Mg原子/cm3の高濃度でp型ドープされた、コンタクト層としても機能するGaN:Mg層250で埋められる。或いは、埋め込み層255はドーピングされなくてもよい。p型ドープGaN:Mg層250は、p型電極290がn型埋め込み層255に接触するのを防止するために必要である。
【0016】
図3は、本発明に従った、自己整合インデックスガイド型埋め込みヘテロ構造AlGaInNレーザダイオード構造300を示している。Al23成長基体310上にGaN:Si層315が配置され、一実施形態では、層315はAlGaN:Siでできていてもよい。一般的にはAl0.07Ga0.93N:Siであるバルクn型クラッド層320が、GaNのn型導波層(図3には示さない)の下方のInGaN多重量子井戸構造345の底部であってn型クラッド短周期超格子321の上に配置される。n型クラッド短周期超格子321は、各々が一般に約20Åの厚さを有する一般的にAlGaN:Si及びGaN:Siの交互の層でできている。バルクn型クラッド層320は、一般的にはAl0.07Ga0.93N:Mgであるオーバーグロース層325からのキャリアの注入を防ぎ、n型クラッド短周期超格子321の低バンドギャップ部内への最適な横導波を提供する。オーバーグロース層325は、埋め込み層及び上部p型クラッド層の両方として機能する。故に、GaNのp型導波層(図3には示さない)の上方に配置されるオーバーグロース層325及び、InGaN多重量子井戸構造345の上に配置される一般的にはAl0.2Ga0.8N:Mgであるトンネルバリア層(図3には示さない)における、AlGaNの全体的な厚さは、従来の窒化物レーザに用いられる厚さと同じくらいである。一般的にGaN:Mgである層385は、p型電極390へのオーミック接触を容易にするためのキャップ層として働く。点線303は、レーザダイオード構造300のp−n接合部の位置を示す。
【0017】
オーバーグロース層325は、p型クラッド層と、強い横方向の電流の閉じ込め及び光の閉じ込めを生じるための埋め込み層との、両方として機能する。オーバーグロース層325によって提供される強い横方向のインデックスガイド(一般的には0.1台の屈折率ステップ)は、低閾値電流及びビーム安定性を可能とする。強いインデックスガイドによって、レーザストライプを非常に狭くでき、それによって横方向の熱の消散が容易になり、必要な閾値電流が低減される。強いインデックスガイドによって、InGaN多重量子井戸構造345の横方向の幅を、一般的に2μm未満と、非常に狭くでき、低閾値電流及び横方向のモードの識別を提供する。図3に示されている自己整合インデックスガイド型埋め込みヘテロ構造AlGaInNレーザダイオード構造300は、図1に示されているインデックスガイド型埋め込みヘテロ構造AlGaInNレーザダイオード構造100よりも大きなp型接触域を与える。p型接触域がより大きいと、接触抵抗がより小さくなる。接触抵抗を低くすることで、特に連続波動作におけるレーザダイオードの発熱が低減されるとともに、より広いp型コンタクトは、より良好に熱を消散する働きもする。p−n接合部のバンドギャップは点線303に沿った部分で最も低いので、電流はInGaN多重量子井戸構造345を優先的に通って流れる。
【0018】
図4は、図3のInGaN多重量子井戸構造345の拡大図であり、自己整合インデックスガイド型埋め込みヘテロ構造AlGaInNレーザダイオード構造300のキャリア注入路401及び402を示している。一般的にGaNであるp型ドープ導波層407及び一般的にGaNであるn型ドープ導波層408も示されている。点線303はp−n接合部の位置を示す。約400nmの波長で動作する本発明に従った一実施形態では、InGaN多重量子井戸構造345は、約3.1eVのバンドギャップエネルギーを有し、その下のn型導波層408は約3.4eVのバンドギャップエネルギーを有する。故に、InGaN多重量子井戸領域414と関連するp−n接合部のオン電圧は、n型導波層408と関連するp−n接合部のオン電圧よりも低く、レーザダイオード構造300が順方向にバイアスされたときに、キャリアは優先的に注入路401に沿ってInGaN多重量子井戸領域414へと注入される。
【0019】
InGaN多重量子井戸領域414のバンドギャップエネルギーとn型導波層408のバンドギャップエネルギーとの300meVの差は、あるケースでは、キャリアの注入を注入路401に制限するのに不十分なことがあり、一部のキャリアが注入路402に沿って、n型導波層408の側壁のp−n接合部を横切って注入され得る。n型導波層408の側壁のp−n接合部を横切って注入されたキャリアは量子井戸に溜まらないので、これらのキャリアはより高い光学ゲインに貢献せず、より高い閾値電流の必要性を生じる。約430nmといった約400nmより高い波長での動作は、バンドギャップエネルギーの差を増加させ、それにより、n型導波層408の側壁のp−n接合部を横断するキャリアの注入は顕著に低減される。
【0020】
GaNのn型導波層408の側壁のp−n接合部を横切る横方向のキャリア注入は、n型導波層408をなくした、図5に示されている逆転非対称導波路構造を用いることによって低減され得る。これは、図4に示されている注入路402に沿ったキャリア注入を解消する。InGaN多重量子井戸領域514の上にトンネルバリア層546が存在し、この層546は一般的に5から15パーセントのアルミニウムを含有するAlGaNである。トンネルバリア層546の上に、一般的にGaNであるp型導波層507が配置される。一般的にAlGaN:Mgであるp型クラッド層525がp型導波層507を覆うとともに、レーザリッジ構造511全体を埋める。一般的にGaN:Mgであるキャップ層585は、p型コンタクト590への接触を提供する。
【0021】
InGaN多重量子井戸領域514は、一般的にAlGaN:Siであるバルクn型クラッド層520の上に配置される。バルクn型クラッド層520は、各々が一般に20Åの厚さを有する一般的にはAlGaN:Si及びGaN:Siの交互の層できている短周期超格子n型クラッド構造521の上に配置される。バルクn型クラッド層520は、p型クラッド層525から、短周期超格子n型クラッド構造521の一般的により低いバンドギャップのGaN:Si層へと電荷キャリアが注入されるのを、阻止する。バルクn型クラッド層520がひび割れを生じない厚さは、通常、約0.5μmの一般的な厚さまでに限られるが、短周期超格子クラッド構造521の導入により、バルクn型クラッド層520と同じ一般的に約8パーセントの平均アルミニウム含有量のクラッド層を、1ミクロンを超える厚さまで成長させることができる。短周期超格子クラッド構造521によって与えられた厚さの増加により、横光学モードの漏洩が顕著に低減され、その結果、レーザダイオード構造500の横遠視野像が改善される。例えば、一般的な約7%の漏洩が0.5%にまで低減され得る。遠視野ビーム像はガウシアン遠視野ビームに近づく。短周期超格子クラッド構造521の下で、一般的にAl23である基体510の上に、一般的にAlGaN:Si又はGaN:Siであるn型層515がある。
【0022】
図1のインデックスガイド型埋め込みヘテロ構造AlGaInNレーザダイオード構造100を製造するには、n型電極195の蒸着のためにn型層115を露出するために、まず、層185、125、145、及び121を貫通するCAIBEエッチングをしてもよい。p型材料の成長に関して問題となり得るのは、Cp2Mgがリアクタに入らずにガスラインに留まることに起因するマグネシウムの供給の遅れ(turn on delay)である。マグネシウムの供給の遅れは、加熱及び成長の前にCp2Mgをリアクタ内に予め流しておくことによって補償できる。マグネシウムは、加熱中はベントへと切り替えられ、マグネシウムドーピングが望まれるときに、供給の遅れを生じることなく、リアクタ内へと切り替えて戻される。
【0023】
本発明に従った一実施形態では、リッジ構造111の上面を画定するために、GaN:Mg層185にフォトレジストが塗布される。しかし、フォトレジストを塗布する前に、GaN:Mg層185を活性化するのが好ましい。この活性化は、処理中にフォトレジストの下に気泡を生じさせる水素が発生する可能性を回避するものである。活性化は、一般的に2つの方法のうちの一方で行われる。窒素環境で約850℃まで5分間加熱することによる、通常の熱による活性化を用いてもよい。或いは、GaN:Mg層185を強いUV光に曝して水素を放出させ、熱による表面の劣化が生じるのを防止してもよい。フォトレジストのストライプは、GaN層185の<1100>結晶方向に沿って揃うように、リソグラフィーでパターン形成される。次に、このストライプをエッチングし、一般的に1から5μmの幅を有するリッジ構造111を作る。リッジ構造111は、層185、125、145を通って短周期超格子n型クラッド構造121に至るCAIBEエッチングによって形成される。エッチングの前のフォトレジストストライプの配向によって、リッジ構造111の長さ方向の軸が{1100}平面の組に対して垂直に配向され、<1100>結晶方向に沿って揃っていることに注目されたい。この向きは表面のピッチング(点食)を低減することがわかっている。
【0024】
エピタキシャル再成長の前に、アセトン中での溶解及び酸素プラズマ中での灰化の組み合わせを用いるフォトレジスト除去を含むクリーニングが行われる。更に、王水を用いて、次にH2SO4:H22:H2Oを4:1:1の比率で混合してそのまま(熱い状態で)用いて、クリーニングされる。最終的に脱イオン水ですすがれ、次に純粋な窒素中で乾燥される。
【0025】
900℃の安定した温度でアンモニア/水素ガス流中で再成長が起きる。成長温度が安定すると、反応物質であるトリメチルアルミニウム、トリメチルガリウム、及びビスシクロペンタジエチルマグネシウムがリアクタに導入される。低温(Tgrowth<900℃)でアンドープ膜を成長させることにより、埋め込み層155の絶縁性のオーバーグロースが達成される。リッジ構造を囲むために、一般的にAlN又はAlGaNでできている埋め込み層155のエピタキシャル再成長が行われる。或いは、一般的にAlGaN:Mgであるp型ドープ埋め込み層155を成長せてもよい。p型キャップ層185とp型電極190とを接触させるための狭いウィンドウを開けるために、埋め込み層155に、下方のp型キャップ層185に至る開口がCAIBE法を用いてエッチングされる。
【0026】
インデックスガイド型埋め込みヘテロ構造AlGaInNレーザダイオード構造100の更なるプロセシングは、窒素環境において850℃で5分間のアニールによるp型ドーパントの活性化を含む。パラジウムp型コンタクト金属が蒸着され、535℃で5分間、アロイ(合金化)される。クリービング又はエッチングによりミラーファセット(図示せず)が形成される。ミラーファセットをエッチングする場合は、第1ミラーファセットのエッチングはメサエッチングと一緒に行われる。Ti/Alのn型金属の蒸着が行われ、最後に、n型電極195及びp型電極190が蒸着され、第1及び第2ミラーに高反射コーティングTiO2/SiO2が塗布される。
【0027】
レーザ構造200のプロセシングはレーザ構造100のプロセシングと類似している。しかし、図2では、一般的にAlGaN:Siであるn型埋め込み層255を再成長させ、続いて一般的にGaN:Mgであるp型埋め込み層250を再成長させる。更に、n型金属の蒸着を行った後で、表面全体に、PECVD(プラズマ化学気相蒸着)を用いて、高温で、一般的にSiN又はSiO2である誘電体の蒸着が行われる。次に、蒸着された誘電体に、n型電極195及びp型電極190用のウィンドウを作るためのパターン形成を行う。誘電体の蒸着温度は約250℃であり、フォトレジストの使用は約120℃未満の温度に限られるので、フォトレジストマスクの代わりにパターン形成を用いる。これは、レーザストライプの外側の電流の注入を回避するために、p型電極290がp型埋め込み層250に接触するための、制限されたコンタクトウィンドウを作る。或いは、一般的に約80から120keVのエネルギーでのイオン注入を用いて、ウィンドウ領域をマスキングしてからイオン注入を行うことにより、制限されたウィンドウを作ってもよい。
【0028】
自己整合インデックスガイド型埋め込みヘテロ構造AlGaInNレーザダイオード構造300(図3参照)及び500(図5参照)のプロセシングは、レーザダイオード構造100及び200のプロセシングと類似している。自己整合インデックスガイド型埋め込みヘテロ構造AlGaInNレーザダイオード構造300及び500の主な違いは、蒸着されたp型ドープ層325及び525が、p型クラッド層及び埋め込み層の両方として働くことである。レーザダイオード300及び500の自己整合構造に起因して、個々の埋め込み層325及び525を貫通するエッチングもない。表面のピッチングを低減するために、リッジ構造311(図3参照)及びリッジ構造511(図5参照)の両方の長さ方向の軸が<1100>結晶方向に沿って揃うようにプロセシングが行われることに注目されたい。
【0029】
図6から図11は、自己整合インデックスガイド型埋め込みヘテロ構造AlGaInNレーザダイオード構造300と同じようなレーザダイオード構造を作るためのプロセスステップを示している。所望であれば、多重量子井戸領域345とp型ドープ導波層407との間にトンネルバリア層646があってもよい。
【0030】
図6は、p型ドープ導波領域407までの(p型ドープ導波領域407を含む)、蒸着されたエピタキシャル構造を示している。p型クラッド層やキャップ層が存在しないことを留意されたい。図7は、一般的に約1から2μm幅のリッジ720を囲む一般的に約10μm幅のトレンチ710のCAIBEエッチングを示している。エッチングは、バルクn型クラッド層320の中まで達しなければなければならないが、貫通してはならない。この結果、多重量子井戸領域345並びに導波層407及び408の一般的な厚さの約300nmのエッチングとなる。図8は、p型クラッド層325の一般的な約0.5から1.0μmの厚さまでのMOCVD成長を示している。構成された面の上に、p型クラッド層385(図3参照)も、一般的な約0.1μmの厚さまで成長させられる。残りのプロセスシーケンスは、リッジエッチングステップが行われないことを除き、従来のリッジ型導波路窒化物レーザと同様である。
【0031】
図9は、窒素雰囲気で535℃で5分間での、一般的にパラジウム合金であるp型金属層390の蒸着を示している。図10は、p型金属層390のCAIBEエッチング、及びn型クラッド短周期超格子321を貫通してGaN:Si層315中に至る約2μmの深さまでのCAIBEエッチングを示している。このエッチングは、n型側方コンタクト1101のためのエリアを露出させる。第1及び第2ミラー(図示せず)も、このステップでCAIBEエッチングされる。n型コンタクトパッド395(図3参照)の形成のためにリフトオフメタライゼーション(一般的にTi−Al)が行われる。図11は、n型コンタクト1101及びp型コンタクト1102上に厚い金属を積層するための、一般的にTi−Auの、メタライゼーションを示している。最後に、SiO2/TiO2ミラーコーティングの蒸着が行われる。
【符号の説明】
【0032】
100 レーザダイオード構造
110 成長基体
121 短周期超格子n型クラッド構造
125 p型クラッド層
145 多重量子井戸構造
155 埋め込み層
185 キャップ層
190 p型電極
195 n型電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1、第2及び第3の面を有し、クラッド構造及びクラッド層並びに前記クラッド構造と前記クラッド層との間に配置された多重量子井戸構造を有するリッジ構造と、
前記リッジ構造の前記第1、第2及び第3の面の上に存在し、電気的接触のために前記リッジ構造の前記第3の面への開口を有しかつMgドープAlGaN層である第1埋め込み層と、
前記リッジ構造の前記第3の面と前記開口を介して接触するように、前記第1埋め込み層の上に存在する第2埋め込み層と、
を有する、インデックスガイド型埋め込みヘテロ構造窒化物レーザダイオード構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−89895(P2012−89895A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−22808(P2012−22808)
【出願日】平成24年2月6日(2012.2.6)
【分割の表示】特願2000−287812(P2000−287812)の分割
【原出願日】平成12年9月22日(2000.9.22)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】