説明

インバータホイストの駆動制御装置及びインバータホイストの駆動制御方法

【課題】電源電圧が低下した場合や電動機の電圧特性により定格速度で出力電圧が飽和した場合でも、比較的簡易な処理で荷重の落下を回避し、安定したベクトル制御が可能なインバータホイストの駆動制御装置及びインバータホイストの駆動制御方法を提供する。
【解決手段】電源電圧低下などによる出力電圧飽和(過変調)を検出したとき、運転速度指令を、所要トルクを出力することができる周波数まで低減することで、誘導電動機2の運転速度を低減する。これにより、低速から高速までの全領域において、ホイストとしての機能を損ねることなく、安全でかつベクトル制御の持つ性能を十分に活用することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータホイストの駆動制御装置及びインバータホイストの駆動制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のインバータ駆動ホイストに使用されるインバータは、図8に示すような制御系により、電圧と周波数とを比例的に制御する所謂V/F一定制御インバータであった。図8において、符号130はインバータ120の制御部である。この制御部130は、加減速演算部131と、トルク(電圧)ブースト演算部132と、出力電圧演算部133と、変調率演算部134と、PWM制御部135とを備える。
【0003】
V/F一定制御インバータでは、商用周波数の1/10程度の低周波数において、ホイストが定格負荷状態での巻上げ時と巻下げ時とですべりによる速度差が生じるため、それぞれを補正しなければならない。また、商用周波数の1/10未満の低周波数領域においては、ホイストの駆動が不可能である。
また、始動時の荷重落下防止のために、図8に示すようにトルク(電圧)ブーストを付加した構成とすると、このトルク(電圧)ブーストにより過励磁となり、低周波数領域で出力電流が増加する。これに対応するためには、インバータ本体の容量を大きくしなければならず、巻上電動機の定格出力に対して大型化してしまう。
【0004】
そこで、速度センサレスベクトル制御インバータを用いて巻上電動機を駆動するものがある(例えば、特許文献1参照)。また、精度の良いフック位置検出や長尺の重量物の共吊りを行うために、速度センサ付きベクトル制御インバータを用いるものもある。
ところが、これら速度センサレス又は速度センサ付きベクトル制御インバータをホイストに適用した場合、ベクトル制御の持つ制御要素である電流調節器(ACR)の出力が電源電圧以上、つまり過変調状態となると、電動機の定格電流を越える電流が流れて電動機が過熱し、運転の継続が困難となる場合がある。最悪の場合には、電流制御が不能となり、荷重を吊荷するのに十分なトルクを確保できなくなり、荷重が落下してしまう。
【0005】
特に、トロリー給電を行っているホイストにおいて、走行中に荷重の懸架を行っている場合、レールの継ぎ目などを跨いだときの衝撃により給電部とトロリーの接触子とが離れると、一時的に給電がされず、電源電圧の低下が起こり定格速度内においても上記問題が起こりうる。
速度センサ付きベクトル制御の場合は、仮に制御不能となって荷重が落下を始めても、インバータ制御状態とは無関係に速度を検出できることから、速やかにこれを検出してアラームを出力し、機械ブレーキを投入することができる。ところが、速度センサレスベクトル制御の場合には、正しい速度推定ができなくなるため、推定速度では落下を検出できず安全性を確保することができない。
【0006】
また、制御不能状態で過大電流が流れ、その結果インバータが過電流トリップすれば問題ないが、電動機に対し、枠上の容量のインバータを使用している場合、過電流トリップには至らず、出力トルクのみが低下して荷重が落下してしまうおそれがある。
以上の電源電圧低下などによる出力電圧飽和(過変調)時のベクトル制御における課題の解決方法として、例えば特許文献2に記載の技術がある。この技術は、トルク分電流と励磁分電流の電流配分をインバータ電圧比較器の出力信号に応じて変化させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−69589号公報
【特許文献2】特開平9−294388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献2に記載の技術では、トルク分電流と励磁分電流との比率をベクトル制御の電流制御部で変えており、励磁分電流が小さく、トルク分電流が大きい特性を持つ電動機の場合、この処理を行うことで所望のトルクを得ることができる。しかしながら、トータルの電流が増加し、電動機の定格電流を超えてしまうという問題がある。
さらに、上記のように電動機の特性を把握していないと、電流配分をどのように決めるべきか判断することができない。そのため、調整にはベクトル制御の専門知識を要する。
そこで、本発明は、電源電圧が低下した場合や電動機の電圧特性により定格速度で出力電圧が飽和した場合でも、比較的簡易な処理で荷重の落下を回避し、安定したベクトル制御が可能なインバータホイストの駆動制御装置及びインバータホイストの駆動制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に係るインバータホイストの駆動制御装置は、荷重を昇降させる誘導電動機と、前記誘導電動機をベクトル制御により可変速制御するインバータとを備えるインバータホイストの駆動制御装置であって、前記インバータの出力電圧が飽和レベルに達している電圧飽和状態を検出する電圧飽和検出手段と、前記電圧飽和検出手段で電圧飽和状態を検出したとき、前記誘導電動機の運転速度を、前記荷重を吊荷できるだけのトルクを出力可能な運転速度まで低減する速度低減手段と、を備えることを特徴としている。
【0010】
これにより、電源電圧が低下した場合や誘導電動機の電圧特性により定格速度で出力電圧が飽和した場合でも、電圧飽和検出手段で電圧飽和状態を検出して、誘導電動機の運転速度を荷重が所望するトルクを出力可能な運転速度まで低減させることができる。したがって、荷重の落下を回避し、安定したベクトル制御を継続することができる。
【0011】
また、請求項2に係るインバータホイストの駆動制御装置は、請求項1に係る発明において、前記誘導電動機の運転速度指令を生成する運転速度指令生成手段と、前記運転速度指令生成手段で生成した運転速度指令と前記誘導電動機の運転速度信号とに基づいて、前記誘導電動機を可変速制御する制御手段と、を備え、前記速度低減手段は、前記電圧飽和検出手段で電圧飽和状態を検出したとき、前記運転速度指令生成手段で生成する前記運転速度指令を低減することで、前記誘導電動機の運転速度を低減することを特徴としている。
このように、比較的簡易な構成で、電圧飽和時に誘導電動機の運転速度を低減し、荷重の落下を回避することができる。
【0012】
さらに、請求項3に係るインバータホイストの駆動制御装置は、請求項2に係る発明において、前記速度低減手段は、前記電圧飽和検出手段で電圧飽和状態を検出したとき、前記誘導電動機のトルク指令及び電流検出値の何れか一方に基づいて前記荷重の大きさを判断し、前記運転速度指令の低減量を設定することを特徴としている。
このように、誘導電動機のトルク指令又は電流検出値を使用して荷重の大きさを判断するので、比較的簡易な処理で運転速度指令の低減量を設定することができる。このとき、誘導電動機のトルク指令又は電流検出値が大きいほど運転速度指令の低減量を大きく設定すれば、誘導電動機の運転速度を荷重が所望するトルクを出力可能な運転速度まで適切に低減させることができる。
【0013】
また、請求項4に係るインバータホイストの駆動制御装置は、請求項1に係る発明において、前記誘導電動機の運転速度指令と前記誘導電動機の運転速度信号とに基づいてトルク指令を生成するトルク指令生成手段と、前記トルク指令生成手段で生成したトルク指令の上限を所定のトルク制限値で制限するトルク指令制限手段と、前記トルク指令制限手段で制限したトルク指令に基づいて前記誘導電動機を可変速制御する制御手段と、を備え、前記速度低減手段は、前記電圧飽和検出手段で電圧飽和状態を検出したとき、前記トルク指令制限手段で使用する前記トルク制限値を小さくすることで、前記誘導電動機の運転速度を低減させることを特徴としている。
このように、比較的簡易な構成で、電圧飽和時に誘導電動機の運転速度を低減し、荷重の落下を回避することができる。
【0014】
さらに、請求項5に係るインバータホイストの駆動制御装置は、請求項4に係る発明において、前記速度低減手段は、前記電圧飽和検出手段で電圧飽和状態を検出したとき、前記トルク制限値を、インバータホイストが許容する最大荷重相当に設定することを特徴としている。
これにより、電圧飽和時には、運転速度指令とは無関係に、誘導電動機の運転速度をインバータホイストが許容する最大荷重相当が出力できる速度まで低減させることができる。
【0015】
また、請求項6に係るインバータホイストの駆動制御装置は、請求項4又は5に係る発明において、前記トルク制限値は、前記電圧飽和検出手段で電圧飽和状態を非検出であるとき、前記インバータが許容する最大電流及び最大電圧で決まる最大トルク相当に設定されることを特徴としている。
これにより、出力電圧が飽和レベルに達していない通常状態では、トルクリミット機能を実質的に無効とすることができる。
【0016】
さらにまた、請求項7に係るインバータホイストの駆動制御装置は、請求項1〜6の何れかに係る発明において、前記電圧飽和検出手段は、前記インバータの変調率が所定の電圧飽和判断閾値より大きいとき、電圧飽和状態であると判断することを特徴としている。
このように、電圧飽和検出手段で過変調状態を検出するので、確実に指令電圧値がインバータの出力可能な電圧以上となっている電圧飽和状態を検出することができる。
【0017】
また、請求項8に係るインバータホイストの駆動制御装置は、請求項1〜7の何れかに係る発明において、前記誘導電動機の回転速度を検出し、前記誘導電動機の運転速度信号として出力する速度センサを備え、前記インバータを速度センサ付きベクトル制御インバータで構成することを特徴としている。
このように、速度センサ付きベクトル制御インバータを適用した場合でも、安定した制御が可能となる。
【0018】
さらに、請求項9に係るインバータホイストの駆動制御装置は、請求項1〜7の何れかに係る発明において、前記誘導電動機の回転速度を推定し、前記誘導電動機の運転速度信号として出力する速度推定手段を備え、前記インバータを速度センサレスベクトル制御インバータで構成することを特徴としている。
このように、速度センサレスベクトル制御インバータを適用した場合でも、安定した制御が可能となる。
【0019】
また、請求項10に係るインバータホイストの駆動制御方法は、荷重を昇降させる誘導電動機と、前記誘導電動機を可変速制御するインバータとを備えるインバータホイストの駆動制御方法であって、前記インバータの出力電圧が飽和レベルに達している電圧飽和状態を検出したとき、前記誘導電動機の運転速度を、前記荷重を吊荷できるだけのトルクを出力可能な運転速度まで低減することを特徴としている。
これにより、電圧飽和状態(過変調状態)となった場合でも、荷重を落下させることなく安定したベクトル制御を継続することができるインバータホイストの駆動制御方法とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、誘導電動機の電圧特性や電源電圧低下、荷重の大きさなどにより、インバータ出力電圧が飽和することを検出した場合(過変調状態を検出した場合)には、誘導電動機の運転速度を、荷重を吊荷できるだけのトルクを出力可能な運転速度まで低減するので、比較的簡易な処理で電圧飽和を回避し、荷重の落下を防止することができる。したがって、電圧飽和時における制御の安定性とホイストの安全性の確保とを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るインバータ駆動ホイストを示す構成図である。
【図2】制御箱10の断面図である。
【図3】巻上用インバータ20の構成を示すブロック図である。
【図4】運転指令速度設定部31の構成を示す制御ブロック図である。
【図5】運転指令速度設定部31の変形例を示す制御ブロック図である。
【図6】ベクトル制御演算部33の構成を示す制御ブロック図である。
【図7】トルクリミッタパターン演算部33cの構成を示す図である。
【図8】従来のV/F一定制御の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
(構成)
図1は、本発明に係るインバータ駆動ホイストを示す構成図である。
図中、符号1はインバータ駆動ホイストである。このインバータ駆動ホイスト1は、巻上用電動機2及び横行用電動機3への給電をインバータにより行うものであり、インバータの出力周波数を変化させることで、巻上用電動機2及び横行用電動機3の回転速度を変化させるものである。これにより、巻上速度及び横行速度を制御する。
【0023】
図2は、制御箱10の断面図である。
この図2に示すように、制御箱10には、巻上用電動機2へ電力を供給する巻上用インバータ20と、横行用電動機3に電力を供給する横行用インバータ21と、制御回路22とが格納されている。制御回路22は、操作部9の操作に基づいて巻上用インバータ20、横行用インバータ21に運転指令や設定速度等を与えたり、巻上用インバータ20、横行用インバータ21からの信号によってブレーキ、各種ランプの点灯/消灯、警報などの制御を行ったりするものである。なお、ここでは巻上用インバータ20及び横行用インバータ21を制御箱10の中に格納する場合について説明するが、巻上用インバータ20及び横行用インバータ21をホイスト本体に直接搭載してもよい。
【0024】
巻上用インバータ20から巻上用電動機2へ電力を供給すると、巻上用電動機2が駆動する。そして、この巻上用電動機2の駆動により、図1に示すワイヤロープ4の繰り出し、巻き取りが行われ、フック5が昇降する。このとき、インバータのアラーム発生時、インバータ停止時、速度超過時、逆転検出時等となると、ブレーキユニット6が作動して非常ブレーキがかけられ、吊荷の落下を防止するようになっている。
【0025】
また、横行用インバータ21から横行用電動機3へ電力を供給すると、横行用電動機3が駆動する。この横行用電動機3の駆動により、インバータ駆動ホイスト1が図1に示すレール7に沿って横行する。
フック5の昇降指令やインバータ駆動ホイスト1の横行指令等は、作業者が操作部9を操作することで制御回路22を介して巻上用インバータ20、横行用インバータ21へ入力される。
【0026】
ここで、巻上用インバータ20は、速度センサ付きベクトル制御および速度センサレスベクトル制御の何れかを用いたインバータとする。本実施形態では、パルスエンコーダ等で構成される速度センサ8を設置し、巻上用インバータ20を、センサ付きベクトル制御を用いたインバータで構成した場合について説明する。
なお、以下の説明においては、巻上用電動機2を誘導電動機2と称し、巻上用インバータ20を単にインバータ20と称する。
【0027】
次に、センサ付きベクトル制御について具体的に説明する。
図3は、巻上用インバータ20の構成を示すブロック図である。
この図3に示すように、巻上用インバータ20の制御部30は、運転指令速度設定部31と、加減速演算部32と、ベクトル制御演算部33と、変調率演算部34と、PWM制御部35と、を備える。また、インバータ20は、三相交流電源11からの交流電圧を直流電圧に変換する整流回路20aと、当該直流電圧を可変周波数・可変電圧の交流電圧に変換する出力主回路20bとを備える。出力主回路22からの出力電圧は誘導電動機2に供給され、これにより誘導電動機2が駆動される。
【0028】
運転指令速度設定部31は、図4に示すように、過変調判断部31aと、切換スイッチ31bと、速度低減量設定部31cと、減算部31dと、を備える。
過変調判断部31aは、変調率演算部34から出力されるインバータ20の変調率Aと、電圧飽和判断閾値である運転速度低減開始変調率B(例えば、100%)との大小関係を比較する。ここで、変調率Aの算出式は次式のとおりである。
変調率=インバータ出力電圧指令÷(インバータ直流電圧÷2) ………(1)
【0029】
そして、A>Bであるときには、指令電圧値がインバータ20の出力可能な電圧以上、即ち過変調状態であると判断して、“TRUE”となる判断結果を切換スイッチ31bに出力する。一方、A≦Bであるときには、過変調状態ではない通常状態であると判断して、“FALSE”となる判断結果を切換スイッチ31bに出力する。なお、運転速度低減開始変調率Bは、パラメータ設定で可変とするようにしてもよい。
【0030】
切換スイッチ31bは、過変調判断部31aから出力される判断結果が“TRUE”であるとき、図4の実線に示す状態となり、過変調判断部31aから出力される判断結果が“FALSE”であるとき、図4の破線に示す状態となるスイッチである。
速度低減量設定部31cは、吊荷の荷重率[%]を算出し、当該荷重率に応じて速度低減量Cを算出する。ここでは、荷重率としてインバータ20のトルク指令またはインバータ20の出力電流の検出電流を使用する。
【0031】
そして、荷重率が速度低減開始トルク・電流に相当する所定の閾値α以下である場合には速度低減量Cを零とし、閾値αより大きい場合には荷重率の増加に伴って速度低減率ΔCで増加する速度低減量Cを算出する。ここで、速度低減量Cは、誘導電動機2の運転速度を、インバータ20が自身でそのときの荷重を吊荷できるだけのトルクを出力可能な運転速度まで低減することができる値に設定する。このようにして算出した速度低減量Cは、減算部31dに出力する。
【0032】
なお、閾値αや速度低減率ΔCは、可変とすることもできる。例えば、電圧飽和に対する運転速度操作により速い応答が必要な場合は、閾値αを小さく設定したり、速度低減率ΔCを大きく設定したりする。
減算部31dは、予め設定された設定運転速度ωr0から低減量Cを減算し、その結果を出力する。
このように、運転指令速度設定部31は、通常状態では設定運転速度ωr0を運転指令速度ωr0*として出力し、過変調状態では、減算部31dの出力結果を運転指令速度ωr0*として出力する。すなわち、過変調状態では、荷重の大きさに応じて通常状態に比して運転指令速度ωr0*が低減される。
【0033】
運転指令速度設定部31から出力される運転指令速度ωr0*は、図3の加減速演算部32に入力される。加減速演算部32は、加減速制限値に設定された傾斜で上昇・下降する運転指令速度ωr*を出力する。
ベクトル制御演算部33は、加減速演算部32から出力される運転指令速度ωr*と、速度センサ8で検出した検出速度ωrと、3相検出電流Iu,Iv,Iwとを入力し、公知のベクトル制御を行って3相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*を出力する。
具体的には、3相検出電流Iu,Iv,Iwを、トルク分電流検出値と励磁分電流検出値とに分割し、これらの指令値によりトルク分電圧指令と励磁分電圧指令とを算出する。そして、トルク分電圧指令と励磁分電圧指令とを3相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*に変換し出力する。
【0034】
変調率演算部34は、3相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*と直流検出電圧Vとに基づいて、変調率Aのパルス幅変調(PWM)信号を形成し出力する。
PWM制御部35は、変調率演算部34から出力されるPWM信号と3相検出電流Iu,Iv,Iwとに基づいて、インバータ20のIGBT等のスイッチング素子をON/OFFするゲート信号を出力する。
なお、過変調判断部31aが電圧飽和検出手段に対応し、切換スイッチ31b、速度低減量設定部31c及び減算部31dが速度低減手段に対応している。また、運転指令速度設定部31が運転速度指令生成手段に対応し、加減速演算部32、ベクトル制御演算部33、変調率演算部34及びPWM制御部35が制御手段に対応している。
【0035】
(動作)
次に、第1の実施形態の動作について説明する。
出力電圧が飽和レベルに達していない通常状態では、巻上用インバータ20の制御部30内で演算する変調率Aが運転速度低減開始変調率B以下となる。そのため、過変調判断部31aは、過変調状態ではないと判断して、“FALSE”となる判断結果を切換スイッチ31bに出力する。したがって、切換スイッチ31bは図4の破線に示す状態となり、運転指令速度演算部31は、設定運転速度ωr0を運転指令速度ωr0*として出力する。そして、運転指令速度ωr0*(=ωr0)に基づいてベクトル制御がなされ、誘導電動機2の速度が制御される。
【0036】
この通常状態から、誘導電動機2の電圧特性、電源電圧の低下、荷重の大きさなどにより出力電圧が飽和レベルに達すると、制御部30内で演算する変調率Aが運転速度低減開始変調率Bより大きくなる。そのため、過変調判断部31aは、過変調状態であると判断して、“TRUE”となる判断結果を切換スイッチ31bに出力する。したがって、切換スイッチ31bは図4の実線に示す状態となり、運転指令速度演算部31は、減算部31dの出力結果を運転指令速度ωr0*として出力する。
【0037】
このとき、減算部31dの出力結果は、設定運転速度ωr0から荷重の大きさに応じた速度低減量Cを減算したものとなっている。すなわち、変調率Aと荷重の大きさ(トルク指令または検出電流)をもとに、インバータ20が自身でその荷重を吊荷できるだけのトルクを出力可能な運転速度を判断し、その運転速度まで運転指令速度ωr0*を低減する処理を行う。そして、この過変調状態では、低減された運転指令速度ωr0*に基づいてベクトル制御がなされ、誘導電動機2の速度が制御される。
【0038】
ところで、従来の速度センサ付きベクトル制御インバータや速度センサレスベクトル制御インバータをホイストに適用した場合、過変調状態となると誘導電動機の定格電流を超える電流が流れて誘導電動機が過熱し、運転の継続が困難となる。また、最悪の場合には電流制御が不能となり、荷重を吊荷するのに十分なトルクを確保できなくなり、荷重が落下するおそれがある。特に、トロリー給電を行っているホイストにおいて、走行中に荷重の懸架を行っている場合、レールの継ぎ目などを跨いたときの衝撃により給電部とトロリーの接触子とが離れると、一時的に給電がされず、電源電圧の低下が起こり定格速度内においても上記問題が起こりうる。
【0039】
これに対して、本実施形態では、出力電圧飽和(過変調状態)検出機能を付加し、過変調状態を検出した場合には、運転速度指令を操作して、そのときの電源電圧、荷重で運転可能な速度まで誘導電動機2の運転速度を低減する。一般に、ホイストには定格速度が定められており、出力電圧が飽和するまでの領域ではベクトル制御により定格速度での運転が可能である。ところが、ひとたび出力電圧が飽和した場合は、定格速度を維持し続けることが困難となる。本実施形態のように、過変調状態を検出した場合に、吊荷に必要なトルクを出力可能な速度まで運転速度指令を低減することで、電源電圧が低下した場合や誘導電動機の電圧特性などにより定格速度で出力電圧が飽和した場合でも、荷重の落下を回避しつつ、誘導電動機2の運転を継続させることができる。
【0040】
(効果)
このように、第1の実施形態では、ベクトル制御インバータをホイストに適用するため、誘導電動機や負荷に合わせた最適な駆動が可能となり、V/F制御インバータに対し、出力電流を最適に制御することができる。そのため、巻上電動機の定格出力に適した容量のインバータを使用することができ、大型化を回避することができる。
さらに、誘導電動機の電圧特性、電源電圧低下、荷重の大きさなどにより、定格速度で出力電圧が飽和した場合でもこれを検知し、運転周波数を操作することで電圧飽和時のベクトル制御上の問題を回避することができ、制御の安定性を確保することができる。また、荷重落下を回避することができ、ホイストでの安全性を確保することができる。
したがって、低速から高速までの全領域において、ホイストとしての機能を損ねることなく、安全でかつベクトル制御の持つ性能を十分に活用することが可能である。
【0041】
特に、定格速度以上の高速領域においては、一般に、無負荷もしくは軽負荷による運転しか行わないため、電圧飽和による制御不能状態、トルク低下は元々問題になることはないが、ホイスト装置の誤設定や誤操作などにより、この領域で定格以上の荷重での運転が行われた場合でも、上記運転速度の低減処理により荷重落下を回避することができる。
本実施形態では、電圧飽和状態(過変調状態)を検出したとき、誘導電動機の運転速度指令を低減させることで、誘導電動機の運転速度を、そのときの荷重を吊荷できるだけのトルクが出力可能な運転速度まで低減させる。したがって、ベクトル制御の専門知識を必要とすることなく、比較的簡易な処理で電圧飽和時における荷重落下を回避することができる。
【0042】
また、運転速度指令の低減量を荷重の大きさに応じて設定するので、そのときの荷重を吊荷するのに十分なトルクを確保することができるなど、荷重が所望するトルクを出力することが可能となり、安定した運転が可能となる。
さらに、インバータの変調率を用い、当該変調率が所定の電圧飽和判断閾値より大きいときに、電圧飽和状態(過変調状態)であると判断するので、確実に電圧飽和状態(過変調状態)を検出することができる。
【0043】
(変形例)
なお、上記第1の実施形態においては、運転指令速度設定部31を、図5に示す構成とすることもできる。すなわち、運転指令速度設定部31を、過変調判断部31aと、スイッチ31eと、速度低減ゲイン演算部31fと、乗算部31gとで構成し、過変調状態を検出したとき、設定運転速度ωr0に速度低減ゲインD(<1)を乗算することで運転指令速度ωr0*を低減する。
ここで、スイッチ31eは、過変調判断部31aから出力される判断結果が“TRUE”であるときONとなり、過変調判断部31aから出力される判断結果が“FALSE”であるときOFFとなるスイッチである。
【0044】
速度低減ゲイン演算部31fは、誘導電動機2のトルク指令または検出電流を使用して求めた吊荷の荷重率[%]に応じて、速度低減ゲインDを算出する。例えば、荷重率が速度低減開始トルク・電流に相当する所定の閾値α以下である場合には速度低減ゲインDを1とし、閾値αより大きい場合には荷重率の増加に伴って速度低減率ΔDで減少する速度低減ゲインDを算出する。この速度低減ゲインDは乗算部31gに出力する。
【0045】
乗算部31gは、設定運転速度ωr0と速度低減ゲインDとを乗算し、その結果を運転指令速度ωr0*として出力する。
この場合にも、運転指令速度設定部31を図4に示す構成とした場合と同様の効果が得られる。
また、上記第1の実施形態においては、運転指令速度設定部31を加減速演算部32の前段に設ける場合について説明したが、加減速演算部32の後段に設けるようにしてもよい。この場合、加減速演算部32では設定運転速度ωr0を入力するようにし、その出力に対して、運転指令速度設定部31で過変調状態であるか否かに応じて運転速度指令の低減を行うようにすればよい。
【0046】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
この第2の実施形態は、前述した第1の実施形態において、過変調状態を検出したときに運転指令速度ωr0*を低減することで誘導電動機2の運転速度を低下させているのに対し、トルク指令の制限を行うトルクリミット機能を付加し、過変調状態を検出したときにトルクリミット機能を作動させることで誘導電動機2の運転速度を低下させるようにしたものである。
【0047】
(構成)
第2の実施形態の巻上用インバータ20の制御部30は、図3において運転指令速度設定部31を削除し、ベクトル制御演算部33の構成を変更したことを除いては、図3の制御部30と同様の構成を有する。そのため、ここでは構成の異なる部分を中心に説明する。
図6は、第2の実施形態におけるベクトル制御演算部33の構成を示す制御ブロック図である。
本実施形態の加減速演算部32には、運転指令速度ωr0*(=設定運転速度ωr0)を入力する。
【0048】
ベクトル制御演算部33は、減算部33aと、速度調節器33bと、トルクリミッタパターン演算部33cと、トルクリミッタ33dと、トルク分電流指令演算部33eと、減算部33fと、トルク分電流調節器33gと、磁束指令演算部33hと、励磁分電流指令演算部33iと、減算部33jと、励磁分電流調節器33kと、電圧ベクトル変換部33lと、すべり周波数演算部33mと、加算部33nと、角度演算部33oと、電流ベクトル変換部33pとを備える。
【0049】
減算部33aは、加減速演算部32から出力される運転指令速度ωr*と速度センサ8で検出した検出速度ωrとの偏差を求め、これを速度調節器33bに出力する。
速度調節器33bは、減算部33aから出力された速度偏差に基づいて、比例・積分演算あるいは比例・積分・微分演算等により速度偏差を零にする調節演算を行ってトルク指令Tq0*を算出する。
【0050】
トルクリミッタパターン演算部33cは、図7に示す構成を有し、図3の変調率演算部34から出力される変調率Aに応じたトルクリミット値Tlimを算出する。ここでは、変調率Aが運転速度低減開始変調率B以下であるときは、トルクリミット値Tlimをインバータ許容最大トルクに設定して出力する。一方、変調率Aが運転速度低減開始変調率Bより大きいときは、トルクリミット値Tlimをインバータ許容最大トルクよりも小さいトルクリミッタ設定値に設定して出力する。このトルクリミッタ設定値は、例えば、ホイストが許容している最大荷重相当(例えば、125%)に設定する。このように、A≦Bとなる通常状態では、トルクリミット値Tlimを最大としてトルクリミット機能を実質的に非作動状態(無効)とし、A>Bとなって過変調状態と検出した場合に、トルクリミット機能を作動状態(有効)とする。
【0051】
トルクリミッタ33dは、トルクリミッタパターン演算部33cから出力されるトルクリミット値Tlimを上限として、速度調節器33bから出力されるトルク指令Tq0*を制限し、その結果をトルク指令Tq*として出力する。
トルク分電流指令演算部33eは、トルクリミッタ33dから出力されるトルク指令Tq*と、後述する磁束指令演算部33hから出力される磁束指令Φ*とに基づいて、トルク分電流指令Iq*を算出し出力する。
【0052】
減算部33fは、トルク分電流指令演算部33eから出力されるトルク分電流指令Iq*と、後述する電流ベクトル変換部33pから出力されるトルク分電流検出値Iqとの偏差を算出し、これをトルク分電流調節器33gに出力する。
トルク分電流調節器33gは、減算部33fから出力されるトルク分電流偏差に基づいて比例・積分演算あるいは比例・積分・微分演算等によりトルク分電流偏差を零にする調節演算を行ってトルク分電圧指令Vq*を算出し、これを電圧ベクトル変換部33lに出力する。
【0053】
また、磁束指令演算部33hは、速度センサ8で検出した検出速度ωrに基づいて、磁束指令Φ*を算出する。
励磁分電流指令演算部33iは、磁束指令演算部33hから出力される磁束指令Φ*に基づいて、励磁分電流指令Id*を算出し出力する。
減算部33jは、励磁分電流指令演算部33iから出力される励磁分電流指令Id*と、後述する電流ベクトル変換部33pから出力される励磁分電流検出値Idとの偏差を算出し、これを励磁分電流調節器33kに出力する。
【0054】
励磁分電流調節器33kは、減算部33jから出力される励磁分電流偏差に基づいて比例・積分演算あるいは比例・積分・微分演算等により励磁分電流偏差を零にする調節演算を行って励磁分電圧指令Vd*を算出し、これを電圧ベクトル変換部33lに出力する。
電圧ベクトル変換部33lは、トルク分電圧指令Vq*と励磁分電圧指令Vd*とを、座標変換を行って3相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*に変換し出力する。
【0055】
さらに、すべり周波数演算部33mは、トルク分電流指令演算部33eから出力されるトルク分電流指令Iq*と、磁束指令演算部33hから出力される磁束指令Φ*とに基づいて、すべり周波数ωs*を算出し、これを加算部33nに出力する。
加算部33nは、すべり周波数ωs*と検出速度ωrとを加算し、その結果を出力角周波数ω1として角度演算部33oに出力する。
【0056】
角度演算部33oは、出力角周波数ω1に基づいて出力角度θ1を算出し、これを電圧ベクトル変換部33l及び電流ベクトル変換部33pに出力する。
電流ベクトル変換部33pは、3相検出電流Iu,Iv,Iwを、座標変換を行って2相のトルク分電流検出値Iq及び励磁分電流検出値Idに変換し出力する。
なお、速度調節器33bがトルク指令生成手段に対応し、トルクリミッタ33dがトルク指令制限手段に対応している。また、トルクリミッタパターン演算部33cが速度低減手段に対応している。
【0057】
(動作)
次に、第2の実施形態の動作について説明する。
出力電圧が飽和レベルに達していない通常状態では、巻上用インバータ20の制御部30内で演算する変調率Aが運転速度低減開始変調率B以下となる。そのため、トルクリミッタパターン演算部33cは、トルクリミット値Tlimを、インバータ20が許容できる最大電流及び最大電流で決まるトルク相当のインバータ許容最大トルクに設定する。通常の運転では、トルク指令がリミッタの最大値まで到達することは無いため、この通常状態ではトルクリミット機能が実質的に無効となっている状態である。したがって、この場合には、速度調節器33bから出力されるトルク指令Tq0*が制限されることなく、そのままトルク指令Tq*として出力される。そして、このトルク指令Tq*に基づいて誘導電動機2の速度が制御される。
【0058】
この通常状態から、誘導電動機2の電圧特性、電源電圧の低下、荷重の大きさなどにより出力電圧が飽和レベルに達すると、制御部30内で演算する変調率Aが運転速度低減開始変調率Bより大きくなる。そのため、トルクリミッタパターン演算部33cは、トルクリミット値Tlimを、上記インバータ許容最大トルクよりも小さいホイストが許容している最大荷重相当に切り替える。すなわち、この過変調状態では、トルクリミット機能を作動して、速度調節器33bから出力されるトルク指令Tq0*を上記トルクリミット値Tlimで制限し、その結果をトルク指令Tq*として出力する。そして、低減されたトルク指令Tq*に基づいて誘導電動機2の速度が制御される。
【0059】
このように、通常はトルクリミット機能を使用しないが、トルクリミット状態となると出力電流一定のまま運転指令速度とは無関係に電動機速度が低下することを利用して、出力電圧飽和時にのみトルクリミット機能を作動させるようにする。このトルクリミット機能により、設定運転速度とは無関係に、ホイストが許容している最大荷重相当が出力できる速度まで運転速度を自動的に低下させることができる。
【0060】
(効果)
このように、第2の実施形態では、出力電圧飽和(過変調状態)を検出したとき、トルクリミット機能を作動してトルク指令を通常状態に比して低減させるので、比較的簡易な処理で誘導電動機の運転速度を低減することができ、適切に電圧飽和による不具合を回避することができる。
このとき、出力電圧飽和時には、トルクリミット機能で用いるトルクリミット値をホイストが許容している最大荷重相当に切り替えるので、荷重の落下を回避して安定した運転を継続することができる。
【0061】
(応用例)
上記各実施形態においては、巻上用インバータ20を、速度センサ付きベクトル制御を用いたインバータとする場合について説明したが、速度センサ8に代えて、誘導電動機2の回転速度を推定する速度推定手段を設け、速度センサレスベクトル制御を用いたインバータとすることもできる。
また、上記各実施形態においては、誘導電動機2として、定格速度において電源電圧に対し電圧余裕を持って設計されたベクトル制御専用誘導電動機を適用してもよいし、商用電源により駆動されるいわゆる汎用誘導電動機のように、定格速度で電源電圧と等しい電圧特性をもつ誘導電動機を適用してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…インバータ駆動ホイスト、2…巻上用電動機(誘導電動機)、3…横行用電動機、4…ワイヤロープ、5…フック、6…ブレーキユニット、7…レール、8…速度センサ、9…操作部、10…制御箱、11…三相交流電源、20…巻上用インバータ(インバータ)、21…横行用インバータ、22…制御回路、30…制御部、31…運転指令速度設定部、31a…過変調判断部、31b…切換スイッチ、31c…速度低減量設定部、31d…減算部、31e…スイッチ、31f…速度低減ゲイン演算部、31g…乗算部、32…加減速演算部、33…ベクトル制御演算部、33a…減算部、33b…速度調節器、33c…トルクリミッタパターン演算部、33d…トルクリミッタ、33e…トルク分電流指令演算部、33f…減算部、33g…トルク分電流調節器、33h…磁束指令演算部、33i…励磁分電流指令演算部、33j…減算部、33k…励磁分電流調節器、33l…電圧ベクトル変換部、33m…すべり周波数演算部、33n…加算部、33o…角度演算部、33p…電流ベクトル変換部、34…変調率演算部、35…PWM制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重を昇降させる誘導電動機と、前記誘導電動機をベクトル制御により可変速制御するインバータとを備えるインバータホイストの駆動制御装置であって、
前記インバータの出力電圧が飽和レベルに達している電圧飽和状態を検出する電圧飽和検出手段と、
前記電圧飽和検出手段で電圧飽和状態を検出したとき、前記誘導電動機の運転速度を、前記荷重を吊荷できるだけのトルクを出力可能な運転速度まで低減する速度低減手段と、を備えることを特徴とするインバータホイストの駆動制御装置。
【請求項2】
前記誘導電動機の運転速度指令を生成する運転速度指令生成手段と、
前記運転速度指令生成手段で生成した運転速度指令と前記誘導電動機の運転速度信号とに基づいて、前記誘導電動機を可変速制御する制御手段と、を備え、
前記速度低減手段は、
前記電圧飽和検出手段で電圧飽和状態を検出したとき、前記運転速度指令生成手段で生成する前記運転速度指令を低減することで、前記誘導電動機の運転速度を低減することを特徴とする請求項1に記載のインバータホイストの駆動制御装置。
【請求項3】
前記速度低減手段は、
前記電圧飽和検出手段で電圧飽和状態を検出したとき、前記誘導電動機のトルク指令及び電流検出値の何れか一方に基づいて前記荷重の大きさを判断し、前記運転速度指令の低減量を設定することを特徴とする請求項2に記載のインバータホイストの駆動制御装置。
【請求項4】
前記誘導電動機の運転速度指令と前記誘導電動機の運転速度信号とに基づいてトルク指令を生成するトルク指令生成手段と、
前記トルク指令生成手段で生成したトルク指令の上限を所定のトルク制限値で制限するトルク指令制限手段と、
前記トルク指令制限手段で制限したトルク指令に基づいて前記誘導電動機を可変速制御する制御手段と、を備え、
前記速度低減手段は、
前記電圧飽和検出手段で電圧飽和状態を検出したとき、前記トルク指令制限手段で使用する前記トルク制限値を小さくすることで、前記誘導電動機の運転速度を低減させることを特徴とする請求項1に記載のインバータホイストの駆動制御装置。
【請求項5】
前記速度低減手段は、
前記電圧飽和検出手段で電圧飽和状態を検出したとき、前記トルク制限値を、インバータホイストが許容する最大荷重相当に設定することを特徴とする請求項4に記載のインバータホイストの駆動制御装置。
【請求項6】
前記トルク制限値は、前記電圧飽和検出手段で電圧飽和状態を非検出であるとき、前記インバータが許容する最大電流及び最大電圧で決まる最大トルク相当に設定されることを特徴とする請求項4又は5に記載のインバータホイストの駆動制御装置。
【請求項7】
前記電圧飽和検出手段は、
前記インバータの変調率が所定の電圧飽和判断閾値より大きいとき、電圧飽和状態であると判断することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のインバータホイストの駆動制御装置。
【請求項8】
前記誘導電動機の回転速度を検出し、前記誘導電動機の運転速度信号として出力する速度センサを備え、
前記インバータを速度センサ付きベクトル制御インバータで構成することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のインバータホイストの駆動制御装置。
【請求項9】
前記誘導電動機の回転速度を推定し、前記誘導電動機の運転速度信号として出力する速度推定手段を備え、
前記インバータを速度センサレスベクトル制御インバータで構成することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のインバータホイストの駆動制御装置。
【請求項10】
荷重を昇降させる誘導電動機と、前記誘導電動機を可変速制御するインバータとを備えるインバータホイストの駆動制御方法であって、
前記インバータの出力電圧が飽和レベルに達している電圧飽和状態を検出したとき、前記誘導電動機の運転速度を、前記荷重を吊荷できるだけのトルクを出力可能な運転速度まで低減することを特徴とするインバータホイストの駆動制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−65463(P2012−65463A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207863(P2010−207863)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】