説明

インバータ発電装置

【課題】過負荷となった場合においてもエンジンをストールさせることがないように制御することが可能なインバータ発電装置を提供する。
【解決手段】回転数監視回路22により、エンジン11の回転数を監視し、該回転数がゲートオフ回転数を下回った場合には、インバータ15による電圧出力を停止させる。また、エンジン11の回転数が上昇し、ゲートオン回転数を上回った場合には、インバータ15による電圧出力が可能な状態とする。その結果、負荷の消費電力が増大した場合であってもエンジン11がストールすることを防止でき、且つ、過電流による回路の損傷を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン等の原動機により駆動される同期モータで発電されたの交流電力を一旦直流電力に変換した後、インバータにより所定周波数の交流電力に変換するインバータ発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン等の原動機を駆動させて電力を発生させる発電機として、インバータ発電装置が多く用いられている。インバータ発電装置は、エンジンの出力軸に同期モータの回転軸を接続して該同期モータを回転駆動させ、この同期モータで発電された交流電力をコンバータで直流電力に変換し、更に、この直流電力をインバータで交流電力に変換して、所望する電圧及び周波数の電力を出力する。そして、インバータの後段側に設けられるモータ、ランプ等の負荷に交流電力を供給することができる。
【0003】
このような従来のインバータ発電装置では、負荷として誘導電動機等のモータ(以下「負荷モータ」という)を接続した場合に、負荷モータの起動時に生じる突入電流によりインバータの制御ユニットに設けられる半導体素子に最大定格電流を超えるような過大電流が流れ、制御ユニットを損傷する可能性がある。
【0004】
そこで、特開2003−111428号公報(特許文献1)には、出力電流の大きさに応じて、出力電圧を垂下させることにより、負荷電流を抑制して制御ユニットに流れる電流を抑えることが開示されている。また、該特許文献1では、負荷に供給する電力が過大になった場合には、負荷電流が増加したことを検出してインバータのゲートを遮断し、負荷回路を過電流から保護することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−111428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された従来例では、省エネ運転のためにエンジンの回転数を低回転とした場合には、出力電流が増大しない場合であってもエンジンの回転数が低下して、最終的にはエンジンがストールするという問題が発生する。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、負荷の消費電力が増大した場合においてもエンジンをストールさせることがないように制御することが可能なインバータ発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、原動機(11)と、該原動機と連結した同期モータ(13)と、該同期モータと連結したコンバータ(14)と、該コンバータと連結したインバータ(15)と、前記コンバータと前記インバータとの間に設けられる蓄電手段(例えば、主回路コンデンサ19)と、を備え、前記原動機により前記同期モータを回転させて交流電力を出力し、該同期モータで発電された交流電力を前記コンバータで直流化し、この直流電力を前記インバータで所望周波数の交流電力に変換するインバータ発電装置において、前記原動機の回転数を監視する回転数監視手段(22)を有し、前記回転数監視手段は、前記原動機の回転数が予め設定した第1閾値回転数(ゲートオフ回転数)以下となった場合に、前記インバータに出力停止指令(ゲートオフ信号)を出力し、前記インバータは、前記出力停止指令が与えられた際に、交流電力の出力を停止することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1の発明において、前記回転数監視手段は、前記インバータが出力を停止している際に、前記原動機が予め設定した第2閾値回転数(ゲートオン回転数)以上となった場合に、前記インバータに、出力開始指令(ゲートオン信号)を出力することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2の発明において、前記第2閾値回転数は、前記第1閾値回転数よりも大きいことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項2の発明において、前記第2閾値回転数と前記第1閾値回転数は、同一の値であることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の発明において、前記出力停止指令が出力された際に、過負荷が発生していることをユーザに報知する報知手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るインバータ発電装置では、原動機の回転数が第1閾値回転数以下に低下した場合には、インバータに出力停止指令を出力して、該インバータによる電力の出力を停止させるので、負荷が過負荷状態となった場合には、速やかに電力供給を停止して、負荷回路全体を保護することができると共に、原動機がストールすることを防止することができる。また、インバータによる出力が停止された後、原動機の回転数が第2閾値回転数以上に上昇した場合には、インバータによる電力出力が可能とされるので、再度インバータを駆動させて負荷に電力を供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るインバータ発電装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るインバータ発電装置の、インバータの詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るインバータ発電装置の、PWM信号生成部、及び電流検出変換部の詳細な構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るインバータ発電装置の、電圧指令生成部の詳細な構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るインバータ発電装置の、ローパスフィルタの詳細な構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るインバータ発電装置の、周波数指令生成部の詳細な構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るインバータ発電装置で用いられる回転数対応テーブルを示す説明図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るインバータ発電装置の、各信号の変化を示すタイミングチャートである。
【図9】本発明の一実施形態に係るインバータ発電装置の、インバータより出力される電流の変化を示すタイミングチャートであり、電圧指令の変更を実施した場合と実施しない場合の特性を示す。
【図10】本発明の一実施形態に係るインバータ発電装置の、インバータより出力される電流の変化を示すタイミングチャートであり、周波数倍率を変化させた場合の特性を示す。
【図11】本発明の一実施形態に係るインバータ発電装置の、スイッチング回路の詳細な構成を示す回路図である。
【図12】本発明の一実施形態に係るインバータ発電装置の、エンジンの回転数と各種信号の変化を示すタイミングチャートである。
【図13】本発明の一実施形態に係るインバータ発電装置の、処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るインバータ発電装置100の構成を示すブロック図である。同図に示すように、このインバータ発電装置100は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等のエンジン(原動機)11と、エンジン11の回転によりU相、V相、W相の3相交流の誘起電圧を発生する同期モータ13と、エンジン11の出力軸と同期モータ13の回転軸を結合するカップリング12と、同期モータ13に接続され該同期モータ13より出力されるU相、V相、W相の各誘起電圧をPN直流電圧に変換するコンバータ14と、該コンバータ14より出力されるPN直流電圧からR相、S相、T相の3相交流電圧を生成するインバータ15と、コンバータ14とインバータ15とを接続するPN結線の間に介置される主回路コンデンサ19(蓄電手段)と、前記インバータに接続されスイッチングノイズを軽減するためのLCフィルタ16と、を備えている。
【0016】
また、コンバータ14とインバータ15との間には、コンバータ14で検出されるエンジン11の回転数を監視し、この回転数に応じてインバータ15にゲート信号(後述するゲートオン信号、ゲートオフ信号)を出力する回転数監視回路22(回転数監視手段)が設けられている。
【0017】
更に、LCフィルタ16は、遮断機17を介して誘導電動機等の負荷18に接続されている。なお、図1では、1つの遮断機17及び負荷18を記載しているが、実際には、LCフィルタ16の後段側に、複数の遮断機及び負荷が設けられる場合が多い。また、例えば負荷が誘導電動機の場合は、モータの起動・停止を操作するためのコンタクタ(18a)が電源接続の初段に設置されていることが多い。また、同期モータ13として、例えば回転子に永久磁石が埋め込まれたIPMモータを用いることができる。
【0018】
回転数監視回路22は、CPU、RAM、ROM等の構成要素から成り、ECU20より出力されるエンジン11の回転数を検出し、エンジン11の回転数が予め設定したゲートオフ回転数(第1閾値回転数;例えば、800回転/分)以下に低下した場合には、インバータ15にゲートオフ信号(出力停止指令)を出力する。これにより、インバータ15は、電力の出力を停止することとなる。更に、該回転数監視回路22は、インバータ15が電力の出力を停止しているときに、エンジン11の回転数が予め設定したゲートオン回転数(第2閾値回転数;例えば、1000回転/分)以上に上昇した場合には、インバータ15にゲートオン信号(出力開始指令)を出力する。これにより、インバータ15は電力の出力が可能となる。
【0019】
即ち、回転数監視回路22は、エンジン11の回転数が予め設定した第1閾値回転数以下となった場合に、インバータ15に出力停止指令を出力し、インバータ15が出力を停止している際に、エンジン11が予め設定した第2閾値回転数以上となった場合に、インバータ15に、出力開始指令を出力する回転数監視手段としての機能を備える。
【0020】
また、回転数監視回路22は、警報器(報知手段)21に接続され、回転数監視回路22は、ゲートオフ信号によりインバータ15の出力が停止した場合に、警報器21に過負荷信号を出力する。
【0021】
また、エンジン11には、該エンジン11の回転を制御するECU(Engine Control Unit)20が接続されている。
【0022】
コンバータ14は、半導体素子であるトランジスタ、IGBT、或いはMOSFET等のスイッチング素子、及びダイオードを複数個備え、各スイッチング素子をスイッチング動作させることにより、U相、V相、W相の3相交流電圧をPN直流電圧に変換する。更に、コンバータ14は、負荷18に出力する電力に応じて、同期モータ13に適宜電流を流すことにより、エンジン11の回転数を頻繁に変化させることなく、所望の電力を発生させるようにしている。つまり、コンバータ14は、通常の整流器とは異なり、同期モータ13より出力される3相交流電圧から所望の大きさのPN直流電圧を生成すると共に、負荷に出力する電力に応じて同期モータ13に電流を流すことにより、負荷変動に応じた安定した電力を発生させている。
【0023】
主回路コンデンサ19は、PN直流電圧を平滑化し、且つ、インバータ15が大電力を出力する際の電力を蓄積する機能を有する。
【0024】
インバータ15は、上述のコンバータ14と同様に、半導体素子であるトランジスタ、IGBT、MOSFETのスイッチング素子、及びダイオードを複数備え、各スイッチング素子をスイッチング動作させることによりR相、S相、T相の3相交流電圧を生成する。また、各スイッチング素子のスイッチングのパターンにより、インバータ15の出力電圧及び出力周波数を任意の値に設定することができる。
【0025】
図2は、インバータ15の詳細な構成を示すブロック図である。同図に示すように、インバータ15は、半導体素子によりPN直流電圧をスイッチングして3相交流電圧を生成するスイッチング回路150と、主回路コンデンサ19に生じる電圧を検出するPN電圧検出部151と、スイッチング回路150にて生成する3相交流電圧の周波数指令値を出力する周波数指令生成部153と、スイッチング回路150にて生成する3相交流電圧の電圧指令値を出力する電圧指令生成部154と、を有している。
【0026】
また、周波数指令生成部153より出力される周波数指令値と、電圧指令生成部154より出力される電圧指令値、及びPN電圧検出部151で検出されるPN電圧検出値に基づいて、PWM信号を生成し、生成したPWM信号をスイッチング回路150に出力するPWM信号生成部152と、を備えている。
【0027】
更に、スイッチング回路150より出力されるR相、S相、T相の線電流をそれぞれ検出する電流計157と、該電流計157にて検出される各相の線電流IR,IS,ITを取得し、更にPWM信号生成部152より出力されるPWM信号に基づいて、3相の線電流IR,IS,ITを2相(d軸、q軸)の軸電流信号に変換する電流検出変換部156と、該電流検出変換部156で変換された2相の軸電流信号に基づいて、負荷18(図1参照)にて消費される消費電力を算出する消費電力計算部155と、を備えている。
【0028】
スイッチング回路150は、図11に示すように、6個のトランジスタTr1〜Tr6と、各トランジスタTr1〜Tr6に対して並列に接続されるダイオードD1〜D6を備えている。そして、トランジスタTr1とTr2は直列接続され、トランジスタTr1の一端(コレクタ)はプラス側電極(P極)に接続され、トランジスタTr2の一端(エミッタ)はマイナス側電極(N極)に接続されている。そして、各トランジスタTr1とTr2の接続点はR相電圧Vrの出力点とされている。同様に、トランジスタTr3とTr4は直列に接続され、その接続点はS相電圧Vsの出力点とされ、トランジスタTr5とTr6は直列に接続され、その接続点はT相電圧Vtの出力点とされている。
【0029】
また、6個のアンド回路AND1〜AND6を備えており、各アンド回路AND1〜AND6の一方の入力端子には、電力供給を制御するためのゲート信号が供給され、他方の入力端子には、アンド回路AND1〜AND6に対してそれぞれPWM信号生成部152より出力されるPWM信号、即ち、sigRu、sigSu、sigTu、sigRd、sigSd、sigTdが供給される。従って、ゲート信号がオン(「H」レベル)とされている場合には、各PWM信号により各トランジスタTr1〜Tr6が駆動され、3相交流電圧が生成されて出力されることとなる。また、ゲート信号がオフ(「L」レベル)とされている場合には、PWM信号に関わらず、各トランジスタTr1〜Tr6は駆動されない。
【0030】
ゲート信号は、図1に示した回転数監視回路22より出力される信号であり、該回転数監視回路22より出力停止指令(ゲートオフ信号)が出力された際には、ゲート信号は「L」レベルとなり、出力開始指令(ゲートオン信号)が送信された際には、ゲート信号は「H」レベルとなる。なお、以下では上側のトランジスタTr1,Tr3,Tr5、及びダイオードD1,D3,D5を上側アーム、下側のトランジスタTr2,Tr4,Tr6、及びダイオードD2,D4,D6を下側アームと称する。
【0031】
図2に示す消費電力計算部155は、消費電力とエンジン回転数との対応関係を示す回転数対応テーブル155aを備えており、該消費電力計算部155では消費電力を算出すると、この消費電力に基づいて、回転数対応テーブル155aを参照してエンジン11の回転数データを求める。そして、求めた回転数データをエンジン11のECU20に送信する。エンジン11は、ECU20の制御により、求められた回転数となるように制御されることとなる。
【0032】
回転数対応テーブルは、図7に示すようにエンジン11の燃費曲線に基づき、消費電力に所定の余裕値を加えた電力を発生させるために最も少ない燃料消費量となる消費電力とエンジン11の回転数指示値との関係が設定されており、アイドル回転数、最高回転数に基づき、消費電力が低い又は0の場合には、エンジン11の回転数がアイドル回転数となるように設定され、その後、本実施形態では消費電力が増加するにつれてエンジン11の回転数が直線的に増加し、最高回転数にてクランプされるように設定される。
【0033】
次に、図2に示すPWM信号生成部152、及び電流検出変換部156の詳細について、図3に示すブロック図を参照して説明する。図3に示すように、PWM信号生成部152は、インバータ15の外部より入力される2相(d軸、q軸)の電圧指令値のうちq軸電圧を補正する電圧補正部31と、2相・3相変換部32と、R相、S相、T相の各電圧信号に基づいて、3相のPWM信号を生成するPWM波形変換部33と、電気角生成部34と、を備えている。
【0034】
電圧補正部31は、電圧指令値に、PN設定電圧とPN電圧のフィードバック値との比率(PN電圧設定/PN電圧検出値)を乗じることにより、該q軸電圧を補正し、補正後のq軸電圧を2相・3相変換部32に出力する。
【0035】
2相・3相変換部32は、d軸電圧及び補正後のq軸電圧に基づいて2相・3相変換を行い、3相(R相、S相、T相)で6アームのPWM信号を生成する。該PWM信号生成部152で生成されるPWM信号は、図2に示すスイッチング回路150に出力されて、図11に示した各トランジスタTr1〜Tr6の駆動に用いられる。
【0036】
電気角生成部34は、図2に示す周波数指令生成部153より出力される周波数指令値に基づいて、3相電圧(R相、S相、T相の各電圧)の電気角を求め、この電気角を2相・3相変換部32、及び電流検出変換部156に出力する。電気角は、電気的な1周期が0〜360degとなるように設定する。例えば、周波数指令値が50Hzの場合には電気的な1周期は20msecとなるので、電気角は20msecで0〜360degとなるように生成する。
【0037】
また、図3に示す電流検出変換部156は、電流計157(図2参照)で検出されるR相、S相、T相の各相電流IR,IS,IT、及び電気角生成部34より出力される電気角に基づいて、R相、S相、T相の3相電流を、d軸、q軸の2相電流に変換する3相・2相変換部35を備え、変換後のd軸電流、及びq軸電流を図2に示す消費電力計算部155に出力する。
【0038】
次に、図2に示した消費電力計算部155における消費電力の計算手順について説明する。インバータ15の外部より入力される電圧指示値をVa、電圧指令生成部より出力される電圧指令値(インバータ15の出力電圧)をVb、3相の線電流をI1、q軸電流をIq、d軸電流をId、とすると、瞬時の消費電力P1は、次の(1)式で示すことができる。
【数1】

【0039】
そして、(1)式の右辺の分母は、有効電力のインピーダンスを示すから、該インピーダンスをZとすると、(1)式は次の(2)式で示すことができる。
【数2】

【0040】
(2)式に示すように、負荷18の瞬時の消費電力P1を演算する際に、外部から入力される電圧指示値Va及び有効電力のインピーダンスZを使用している。従って、負荷の駆動時等に突入電流が発生し、インバータ15の出力電圧が急激に低下した場合であっても、消費電力計算部155にて求められる消費電力が急激に低下することが無い。即ち、出力電圧が急激に変動した場合であっても、エンジン11の回転数が急激に変動することを防止し、該エンジン11を安定的に運転できることとなる。また、消費電力P1の演算にスイッチング回路150の電圧出力値を用いないので、リップルの影響を受けることがない。
【0041】
次に、図2に示す電圧指令生成部154の詳細な構成について、図4に示すブロック図を参照して説明する。図4に示すように、電圧指令生成部154は、インバータ15の外部より電圧指示値、最低出力電圧、インバータ15より出力される線電流(即ち、(Iq+Id1/2で求められる電流)、及び電流上限閾値が入力される。そして、該電圧指令生成部154は、外部より与えられる電圧指示値に対して係数G1を乗じる乗算部41と、乗算部41の出力信号に対して係数G2を乗じる乗算部42と、演算部43、及びローパスフィルタ44を備えている。
【0042】
ここで、最低出力電圧は、電圧指示値よりも低い値であって負荷に付属して例えばモータの起動や停止を制御するコンタクタが遮断しない電圧に設定される。
【0043】
乗算部41は、インバータ15の外部より入力された電圧指示値に対して、次の(3)式で示す係数G1を乗じる。
【0044】
G1=1/{1−(PWM周波数×デッドタイム×2)} …(3)
(3)式は、スイッチング回路150が有する各相の上側アーム、即ち、図11に示すトランジスタTr1,Tr3,Tr5、及び下側アーム、即ちトランジスタTr2,Tr4,Tr6が駆動するときのデッドタイムを補正するための係数を示している。つまり、上側アーム、及び下側アームは、双方が同時にオンとなることを防止するために、オン、オフの切り替え時に双方を同時にオフとするデッドタイムを設けており、この分の電圧を補正するために電圧指示値に係数G1を乗じている。なお、上記のデッドタイムには、上側アーム及び下側アームに使用するトランジスタのオンとオフの時間差を含めるようにしても良い。
【0045】
更に、乗算部42は、乗算部41の出力信号に対して、次の(4)式で示す係数G2を乗じる。
【0046】
G2=(PN電圧検出値)/(PN電圧設定値)
(但し、0≦G2≦1) …(5)
(5)式に示すPN電圧検出値は、主回路コンデンサ19に生じる電圧値であり、PN電圧設定値は、主回路コンデンサ19に充電する電圧の設定値である。そして、(5)式で算出する係数G2は、主回路コンデンサ19に生じるPN電圧の検出値が、PN電圧設定値に対して大きく減少した場合に小さい値となる。従って、PN電圧検出値が低下しているときに、負荷18の消費電力が増加した場合であっても、係数G2を乗じることにより、電圧指令値が急激に増加することを防止できる。
【0047】
即ち、主回路コンデンサ19に生じる電圧(PN電圧)が低下しているときに、インバータ15が負荷変動に応じた電力をそのまま出力すると、主回路コンデンサ19に電力を供給するためにコンバータ14の負荷が増大し、エンジン11がストールする原因となる場合がある。そこで、本実施形態では、電圧指示値に係数G2を乗じることにより、PN電圧検出値がPN電圧設定値に対して低下している場合には、乗算部42の出力信号を低下させることにより、インバータ15の出力電圧を低下させて、エンジン11がストールすることを防止する。
【0048】
また、図4に示す演算部43は、入力端子IN1〜IN4、及び出力端子OUT1を備えており、入力端子IN1には、乗算部42の出力信号d1が入力され、入力端子IN2には、インバータ15が出力可能な最低電圧である最低出力電圧d2が入力され、入力端子IN3には、負荷18に流れる線電流d3が入力され、入力端子IN4には、過電流の発生を定義する電流上限閾値d4が入力される。そして、演算部43は、これらの各データに基づいて、「d3>d4」が成立した場合に出力端OUT1より最低出力電圧d2を出力し、それ以外の場合には信号d1を出力する。
【0049】
上記の処理では、線電流d3が電流上限閾値d4を上回った場合、換言すれば、負荷18に流れる電流が増大して過電流に達する場合には、最低出力電圧d2に基づく電圧指令値を出力することにより、負荷18に供給する電圧を低下させて、過電流が流れることを防止する。
【0050】
そして、演算部43の出力信号(d1またはd2)はゲイン(後述する係数G3,G4)を変更可能なローパスフィルタ44に供給される。
【0051】
ローパスフィルタ44は、負荷18に起動時等の突入電流を抑制するために設けられており、突入電流が発生した際にはインバータ15の出力電圧を即時に低下させ、その後、低下した出力電圧を電圧指示値に上昇させる際には緩やかに電圧を上昇する電圧指令値を出力する。そして、該ローパスフィルタ44から出力された電圧指令値は、図2に示すPWM信号生成部152、及び消費電力計算部155に出力されることとなる。以下、ローパスフィルタ44について詳細に説明する。
【0052】
図5は、ローパスフィルタ44の詳細な構成を示すブロック図である。該ローパスフィルタ44は、演算部43の出力信号(d1またはd2)、及び最低出力電圧d2に基づいて、電圧指令値をフィルタ処理して出力する。
【0053】
図5に示すように、ローパスフィルタ44は、係数G3を乗じる乗算部51と、係数G4(但し、G4>G3;G4はG3の10〜30倍程度とする)を乗じる乗算部52と、演算部53と、遅延部54と、減算部55と、加算部56、及びスイッチSW1を備えている。
【0054】
減算部55は、入力信号(図4に示す演算部43の出力端子OUT1の出力信号)とフィードバック信号(前回の演算部53の出力)との差分を演算し、これを偏差として出力する。
【0055】
乗算部51は、偏差Errに係数G3を乗じてスイッチSW1の端子T1に出力する。乗算部52は、偏差Errに係数G4を乗じて端子T2に出力する。
【0056】
スイッチSW1は、偏差Errが正の値(Err>0)である場合にはスイッチSW1を端子T1側に接続することにより、乗算部51の出力信号を出力端子OUT2より出力し、偏差Errがゼロまたは負の値(Err≦0)の場合には、スイッチSW1を端子T2側に接続することにより、乗算部52の出力信号を出力端子OUT2より出力する。そして、出力端子OUT2は、加算部56に接続され、更に、該加算部56は、演算部53の入力端子IN5に接続されている。また、演算部53の入力端子IN6には、図4に示す最低出力電圧d2が入力される。
【0057】
加算部56は、スイッチSW1の出力端子OUT2より出力される信号と、遅延部54より出力される前回の出力値とを加算し、加算した信号d5を演算部53の入力端子IN5に出力する。
【0058】
演算部53は、d5<d2の場合には、出力端子OUT3よりd2を出力する。他方、d5≧d2の場合には、出力端子OUT3よりd5を出力する。つまり、出力信号を最低出力電圧d2にクランプする。そして、この出力信号は、電圧指令値として図2に示すPWM信号生成部152、及び消費電力計算部155に出力される。また、この出力信号は、フィードバック信号として図5に示す遅延部54に供給される。
【0059】
遅延部54より出力される一サンプリング遅れ信号は、減算部55、及び加算部56に出力される。そして、上述したようにスイッチSW1は、偏差Errが正の値である場合(Err>0)には、該偏差Errに対して係数G3を乗じ、偏差Errがゼロまたは負の値である(Err≦0)には、該偏差Errに対して係数G4(G4>G3)を乗じるので、電圧指令値が増加傾向にある場合には、減少傾向にある場合よりも、より小さい係数を乗じて出力端子OUT2より出力することとなる。このため、突入電流が流れた後の場合等において、電圧指令値(OUT1)が増加する場合にはその増加速度を遅くすることができる。即ち、電圧指令値(OUT1)が低下する傾向に変化する場合には、係数G4を乗じることにより、電圧指令値を第1の追随速度で変化させ、電圧指令値(OUT1)が増加する傾向に変化する場合には、係数G3を乗じることにより、電圧指令値を第1の追随速度よりも遅い第2の追随速度で変化させることとなる。
【0060】
また、演算部53は、加算部56の出力信号d5と最低出力電圧d2を比較し、d5がd2よりも低い場合、即ち、加算部56の演算結果が最低出力電圧d2よりも低い場合には、出力端子OUT3より出力する電圧指令値を最低出力電圧d2とする。従って、電圧指示値が最低出力電圧d2にクランプされるので、例えば、負荷に付属してモータの起動や停止を制御するコンタクタの遮断を防ぐことができる。
【0061】
次に、図6に示すブロック図を参照して、図2に示した周波数指令生成部153の詳細について説明する。図6に示すように周波数指令生成部153は、周波数指示値を所定の範囲内でスイープするスイープ演算部61と、所定の係数K(0<K≦1の範囲の数値)を乗じる乗算部62と、減算部63と、を備えている。
【0062】
スイープ演算部61は、インバータ15の外部より入力される周波数指示値に基づいて、下記の(6)式に示す演算により倍率Bを算出し、算出した倍率Bを乗算部62に出力する。
【0063】
B=1−{(電圧指令値V2)/(電圧指示値V1)} …(6)
また、出力する周波数指令値(減算部63の出力)は、以下の(7)式により求められる。
【0064】
(周波数指令値)=f1*(1−K*B) …(7)
但し、(7)式において「f1」は入力される周波数指令値、「K」は、乗算部62に設定されている係数であり0<K≦1である。
【0065】
(6)式において、例えば、電圧指示値V1が200ボルト、電圧指令値V2が140ボルトで、入力される周波数指示値がf1である場合にはB=0.3となり、スイープ演算部61の出力信号は、0.3*f1となる。また、乗算部62で設定される係数Kが0.5である場合には、該乗算部62の出力信号は0.15*f1となって、減算部63に供給される。従って、減算部63の出力信号は、0.85*f1となり、外部より入力される周波数指示値f1よりも15%低い周波数が周波数指令値となって出力される。
【0066】
その後、電圧指令値V2が上昇して電圧指示値V1と一致すると、(6)式で示すBがゼロとなるので、周波数指示値f1は減算部63で減算されることなく、そのまま出力されることとなる。つまり、「0.85*f1」〜「f1」の範囲で周波数指令値がスイープされることとなる。このように、周波数指令値をスイープさせながら周波数指令値f1まで増加させることにより、例えば、誘導電動機の様な誘導負荷の場合、効率良く負荷にエネルギーを注入することができることから、起動時間を短くすることができ、コンバータやエンジンの負担の軽減に寄与することとなる。
【0067】
次に、上述のように構成された本実施形態に係るインバータ発電装置100の作用について説明する。
【0068】
図8は、時間経過に伴う各波形の変化を示すタイミングチャートであり、図8(a)は負荷18に接続される電線に流れる線電流を示し、(b)はPN電圧(主回路コンデンサ19の端子間電圧)の変化を示し、(c)はインバータ15の出力電圧を示し、(d)はインバータ15より出力される電圧の周波数を示し、(e)は消費電力推定値を示す。なお、以下では、負荷18として、誘導電動機を用いた場合について説明する。
【0069】
図8において、時刻t1にて誘導電動機の起動スイッチ(図示省略)をオンとすると、図8(a)に示すように、q軸電流Iq、及びd軸電流Idが流れる。また、線電流はq軸電流Iqとd軸電流Idをベクトル的に加算した電流となり、起動スイッチのオンの直後に電流上限閾値を超える。つまり、図4に示したd3>d4が成立するので、演算部43の出力端子OUT1は、出力信号として最低出力電圧を出力することになる。その結果、図8(b)に示すように、PN電圧はPN電圧設定値に対して若干低下し、更に、図8(c)に示すように、インバータ15の出力電圧は、最低出力電圧まで低下する。
【0070】
また、電圧指示値に対して電圧出力値は小さくなるので、図6に示したスイープ演算部61の出力信号は、例えば、「0.3*f1」程度の信号を出力することになり、減算部63の出力信号は「0.85*f1」程度となるので、図8(d)に示すように、インバータ15の出力周波数は、周波数指示値f1よりも若干低い数値(例えば、15%低い数値)となる。
【0071】
その結果、図8(e)に示すように、消費電力計算部155で演算される消費電力(消費電力推定値)は、消費電力の実測値よりも大きくなる。そして、この消費電力推定値に基づき、回転数対応テーブル155a(図7参照)を参照してエンジン11の回転数を決定する。つまり、実際の負荷18の消費電力よりも大きい値となる消費電力推定値を用いて、エンジン11の回転数を制御するので、負荷18が起動を開始した直後は、実際の消費電力に対応する回転数よりも高い回転数でエンジン11が回転駆動することとなり、エンジン11のストールを防止することができる。
【0072】
その後、誘導電動機に流れる電流(線電流)が低下し、例えば時刻t2において電流上限閾値を下回る。すると、インバータ15の出力電圧が電圧指示値となる方向に変化する。
【0073】
しかし、このとき、急峻に電圧を復帰させると、誘導電動機での消費電力が急激に増加して、線電流が再度電流上限閾値を上回る可能性がある。また、PN電圧も負荷18の起動終盤では、未だPN電圧設定値に達しておらず、低い電圧にとどまっている(図8(b)参照)。そこで、本実施形態では、インバータ15の出力電圧を徐々に復帰させるために、図4に示した乗算部42(係数G2)を用いている。即ち、乗算部41の出力信号に係数G2(上述した(5)式参照)を乗じることにより、PN電圧の上昇に応じて、出力電圧を電圧指示値に復帰させるので、線電流が急激に上昇することを防止し、誘導電動機に接続されているコンタクタが遮断されることを防止することができる。
【0074】
図9は、時間経過に対する線電流の変化を示すタイミングチャート(図8(a)に対応)であり、曲線S1は駆動開始時に出力電圧を低下させた場合であり、曲線S2は出力電圧を低下させなかった場合を示している。曲線S1,S2を対比すると、曲線S1はS2よりも最大値が小さく抑えられていることが理解される。即ち、負荷18の駆動開始時にインバータ15の出力電圧を低下させることにより、負荷18に流れる電流値(線電流)の増加を抑制することができる。従って、インバータの制御ユニットに設けられる半導体素子の小型化に寄与することとなる。
【0075】
図10は、インバータ15の出力周波数をスイープさせたときの突入電流の変化を示すタイミングチャートを示している。図10に示す曲線S11は、図6に示す周波数指示値f1に電圧指令値V2と電圧指令値V1の比で決定されるBを乗じたものに、乗算部62で設定される係数Kを1.0とした場合を示し、曲線S12は、係数Kを0.5とした場合を示し、曲線S13は係数Kを0.3とした場合の特性を示している。
【0076】
そして、各曲線S11〜S13から理解されるように、係数Kが大きい場合には、負荷18の起動時間は早くなるが、その反面、突入電流は大きくなる。一方、係数Kが小さい場合には、突入電流は小さいが、起動時間は遅くなる。本実施形態では、係数Kを適宜設定することにより、負荷18の起動時における突入電流を抑制することができる。
【0077】
次に、負荷18が過負荷状態となってエンジン11の回転数が低下した場合動作について、図13に示すフローチャート、及び図12に示すタイミングチャートを参照して説明する。図13は、回転数監視回路22による制御手順を示すフローチャート、図12は、エンジン11の回転数の変化に対する各信号の変化を示すタイミングチャートである。図12に示す(a)はエンジン11の回転数の変化を示し、(b)は回転数監視回路22より出力されるゲート信号の変化を示し、(c)は負荷18に接続される遮断機17に出力するトリップ信号の変化を示し、(d)はユーザに知らせるための過負荷信号の変化を示し、(e)はトリップ信号、及び過負荷信号を解除するためのリセット信号の変化を示している。
【0078】
図13に示すステップS11において、回転数監視回路22は、インバータ15のゲート状態を確認する。そして、ゲートがオンとされている場合、即ち、回転数監視回路22より出力されるゲート信号が「H」である場合(図11に示す各アンド回路AND1〜AND6に供給されるゲート信号が「H」である場合)には(ステップS11でオン)、ステップS12において回転数監視回路22は、エンジン11の回転数が予め設定したゲートオフ回転数(例えば、800回転/分)以上であるか否かを判断する。
【0079】
そして、エンジン11の回転数がゲートオフ回転数以上である場合には(ステップS12でYES)、ステップS13において回転数監視回路22は、引き続きゲートンオン信号を送信して、インバータ15による電力出力状態を維持する。
【0080】
他方、エンジン11の回転数がゲートオフ回転数未満に低下した場合には(ステップS12でNO)、ステップS14において回転数監視回路22は、インバータ15のゲートをオフとし(即ち、図11に示す各アンド回路AND1〜AND6に供給されるゲート信号を「L」とし)、図1に示す遮断機17をオフとし、更に、過負荷警報をオンとする。これにより、負荷18への電力供給を停止して負荷18を保護し、且つ、インバータ15が出力を停止したことをユーザに報知する。その後、本処理を終了する。
【0081】
また、ステップS11の処理において、インバータ15のゲートがオフとされている場合、即ち、回転数監視回路22より出力されるゲート信号が「L」である場合(図11に示す各アンド回路AND1〜AND6に供給されるゲート信号が「L」である場合)には(ステップS11でオフ)、ステップS15において回転数監視回路22は、エンジン11の回転数が予め設定したゲートオン回転数(例えば、1000回転/分)未満であるか否かを判断する。
【0082】
そして、エンジン回転数がゲートオン回転数未満である場合には(ステップS15でYES)、ステップS16において回転数監視回路22は、引き続きインバータのゲートオフ状態を維持する。即ち、ゲートオン信号の送信を行わず、インバータ15の出力停止状態を維持する。
【0083】
他方、エンジン回転数がゲートオン回転数以上に上昇した場合には(ステップS15でYES)、ステップS17において回転数監視回路22は、インバータ15のゲートをオンとして(即ち、図11に示す各アンド回路AND1〜AND6に供給されるゲート信号を「H」として)、インバータ15が作動可能な状態とする。従って、ユーザは手動操作により、負荷18を作動させることができる。その後、本処理を終了する。
【0084】
次に、上記の処理手順を図12に示すタイミングチャートを参照して説明すると、図12(a)に示すように、エンジン11が通常の回転数で回転しているときには(時刻t11以前の状態)、同図(b)に示すようにゲート信号はオンとされ、同図(c)に示すように遮断機17を遮断するためのトリップ信号はオフとされ、同図(d)に示すように過負荷信号はオフとされ、同図(e)に示すようにリセット信号はオフとされている。
【0085】
そして、過負荷が発生する等の原因でエンジン11の回転数が低下し、時刻t11にてゲートオフ回転数(例えば、800回転/分)を下回った場合には、これ以上エンジン11よりの電力供給が継続されるとエンジン11がストールするので、図12(b)に示すように、ゲート信号をオフとする。その結果、図11に示したゲート信号が「L」レベルとなり、各アンド回路AND1〜AND6の出力信号が全て「L」レベルとなって、インバータ15による電力供給が停止する。その結果、誘導電動機を含む負荷18は全て停止することとなる。即ち、エンジン11に加えられる負荷が大きくなり、エンジン11の回転数が低下した場合には、インバータ15による電力供給を停止することにより、エンジン11がストールすることを防止することができる。
【0086】
更に、図12(c)に示すように、時刻t11において、誘導電動機の遮断機17をオフとするためのトリップ信号をオンとし、且つ、図12(d)に示すように、過負荷信号をオンとして、エンジン11が過負荷状態となっていることをユーザに報知する。
【0087】
そして、インバータ15による電力供給が停止したことにより、エンジン11の回転数は上昇に転じる。そして、時刻t12でエンジン11の回転数がゲートオン回転数を上回ると、ゲート信号がオンとなり、インバータ15の駆動が可能となる。即ち、図11に示したゲート信号が「H」レベルとなり、各アンド回路AND1〜AND6が出力可能な状態となるので、スイッチング回路150はPWM動作が可能となる。その後、時刻t13にてユーザによりリセット信号が入力されると、トリップ信号及び過負荷信号はオフとなり、再度負荷18(誘導電動機等)を駆動させることが可能となる。
【0088】
このようにして、本実施形態に係るインバータ発電装置100では、負荷18が過負荷状態となって負荷18に過電流が流れ、これに伴ってエンジン11の回転数が低下する場合には、エンジンの回転数が第1閾値回転数(例えば、800回転/分)を下回った場合に、インバータ15にゲートオフ信号(出力停止指令)を送信して、インバータ15による電力の出力を停止させる。その結果、負荷18への電力供給が停止するので、過負荷の発生による負荷18の損傷を防止することができる。また、エンジン11は回転を継続することができるので、エンジン11がストールすることを防止できる。
【0089】
また、その後エンジン11の回転数が上昇し、第2閾値回転数(例えば、1000回転/分)を上回った場合には、インバータ15にゲートオン信号(出力開始指令)を送信して、インバータ15による電力出力を可能とする。即ち、操作者がリセットスイッチ等を操作することにより、インバータ15による出力が可能となり、負荷18を再度駆動させることができることとなる。
【0090】
従って、負荷18が過負荷状態となった場合においてもエンジン11をストールさせることなく運転することができるので、負荷18に大きな負担をかけることを防止でき、更に、エネルギー効率を向上させることができる。
【0091】
以上、本発明のインバータ発電装置100を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0092】
例えば、上述した実施形態では、第1閾値回転数と第2閾値回転数がそれぞれ異なる回転数となるように設定したが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1閾値回転数と第2閾値回転数とを同一の回転数(例えば、800回転/分)とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、インバータ発電機の効率を向上させることに利用することができる。
【符号の説明】
【0094】
11 エンジン
12 カップリング
13 同期モータ
14 コンバータ
15 インバータ
16 LCフィルタ
17 遮断機
18 負荷
19 主回路コンデンサ
20 ECU
21 警報器
22 回転数監視回路
31 電圧補正部
32 2相・3相変換部
33 PWM波形変換部
34 電気角生成部
35 3相・2相変換部
41 乗算部
42 乗算部
43 演算部
44 ローパスフィルタ
51 乗算部
52 乗算部
53 演算部
54 遅延部
55 減算部
56 加算部
61 スイープ演算部
62 乗算部
63 減算部
100 インバータ発電装置
150 スイッチング回路
151 PN電圧検出部
152 PWM信号生成部
153 周波数指令生成部
154 電圧指令生成部
155 消費電力計算部
155a 回転数対応テーブル
156 電流検出変換部
157 電流計
SW1 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機と、該原動機と連結した同期モータと、該同期モータと連結したコンバータと、該コンバータと連結したインバータと、前記コンバータと前記インバータとの間に設けられる蓄電手段と、を備え、前記原動機により前記同期モータを回転させて交流電力を出力し、該同期モータで発電された交流電力を前記コンバータで直流化し、この直流電力を前記インバータで所望周波数の交流電力に変換するインバータ発電装置において、
前記原動機の回転数を監視する回転数監視手段を有し、
前記回転数監視手段は、前記原動機の回転数が予め設定した第1閾値回転数以下となった場合に、前記インバータに出力停止指令を出力し、
前記インバータは、前記出力停止指令が与えられた際に、交流電力の出力を停止することを特徴とするインバータ発電装置。
【請求項2】
前記回転数監視手段は、前記インバータが出力を停止している際に、前記原動機が予め設定した第2閾値回転数以上となった場合に、前記インバータに、出力開始指令を出力することを特徴とする請求項1に記載のインバータ発電装置。
【請求項3】
前記第2閾値回転数は、前記第1閾値回転数よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載のインバータ発電装置。
【請求項4】
前記第2閾値回転数と前記第1閾値回転数は、同一の値であることを特徴とする請求項2に記載のインバータ発電装置。
【請求項5】
前記出力停止指令が出力された際に、過負荷が発生していることをユーザに報知する報知手段を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のインバータ発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−191803(P2012−191803A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54591(P2011−54591)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【出願人】(000241795)北越工業株式会社 (86)
【Fターム(参考)】