説明

インホイールモータ駆動装置

【課題】インホイールモータ駆動装置をトレーリングアーム等のサスペンション部材に連結する場合であっても、駆動モータの変形を回避することができるインホイールモータ駆動装置を提供する。
【解決手段】インホイールモータ駆動装置21は、モータ部Aと減速部Bとの間に配置されて径方向に広がるフランジ部22eを具備する。フランジ部22eは、インホイールモータ駆動装置21を車体側メンバに連結するための連結部61,62を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪を駆動するインホイールモータ駆動装置に関し、特にトレーリングアーム、ロアアーム、またはショックアブソーバといったサスペンション部材との取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の技術分野において、車輪のロードホイールの内空領域に一部あるいは全部配置されて、車輪を駆動するインホイールモータ駆動装置が注目を浴びている。従来のインホイールモータ駆動装置は、例えば、特開2008−44537号公報(特許文献1)に記載されている。特許文献1に記載されているインホイールモータ駆動装置は、駆動モータと、この駆動モータから駆動力を入力されて回転数を減速して車輪側に出力する減速機と、減速機の出力軸と結合する車輪のハブ部材とが同軸かつ直列に配置されている。この減速機はサイクロイド減速機構であり、従来の減速機として一般的な遊星歯車式減速機構と比較して高減速比が得られる。したがって、駆動モータの要求トルクを小さくすることができ、インホイールモータ駆動装置のサイズおよび重量を低減することができるという点で頗る有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−44537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車輪を車体に取り付ける必要から、車輪と結合するインホイールモータ駆動装置は、車体側メンバと結合する。具体的には、車輪をサスペンション装置で車体に懸架するため、車輪と結合するインホイールモータ駆動装置を、サスペンション装置のサスペンション部材と結合する。これにより、車輪は車体に懸架される。車輪の懸架方式として、トーションビーム方式、セミトレーリングアーム方式、フルトレーリングアーム方式、ストラット方式、ダブルウィッシュボーン方式といったものがあり、選択された懸架方式に応じて、トーションビーム、トレーリングアーム、ロアアーム、アッパアーム、ショックアブソーバといったサスペンション部材に、インホイールモータ駆動装置を結合する。
【0005】
車両自体の重量や走行中の路面からの外乱、旋回時のモーメント荷重などタイヤにかかる輪荷重によってサスペンション部材は上下方向にストロークする。その際、サスペンション部材およびインホイール駆動装置それぞれに変形が発生するが、この変形によってインホイール駆動装置内部の部材に悪影響が及ぶ懸念がある。
【0006】
トレーリングアームを例に具体的に説明すると、かかるインホイールモータ駆動装置を備えた車両の走行安定性を実現するため、トレーリングアームの基端と車体とを連結し、トレーリングアームの遊端と各車輪に設けられたインホイールモータ駆動装置とを連結する。具体的には、インホイールモータ駆動装置のうち、ロードホイールの内空領域から突出する部位ないしは内空領域に存在するものの内空領域の開口部近傍の部位と、トレーリングアームの遊端とを結合する。すなわち、なるべくインホイールモータ駆動装置全体を支えるようにインホイールモータ駆動装置の駆動モータ部分およびサイクロイド減速機部分が、車両前後方向に延在するトレーリングアームの後端部に取り付けられるのが一般的である。
【0007】
しかし、上記のような取り付け構造にあっては、車輪からハブ部材に入力する輪荷重によって、トレーリングアームおよびそれに連結されているインホイール駆動装置全体に変形が発生する。そのため、駆動装置内部においても減速機や駆動モータに変形が発生する。駆動モータはモータケーシング両端面に設けられた軸受によって軸両端部で支持され高速回転するロータと、ケーシング側に固定されるステータとが僅かな半径方向隙間を介して対面しているためインホイール駆動装置の変形の影響を受けやすく、ロータがステータと接触するという問題が生じやすい。この問題を解決するには、モータケーシングを鋼製にしたり肉厚にしたりして剛性を高めることが考えられる。
【0008】
一方、走行安定性の更なる向上のため、サスペンション装置よりも路面側に配置されるインホイールモータ駆動装置を含めた下部構造を軽量化する要求がある。インホイール駆動装置自体の軽量化手段としてケーシング部材の薄肉化が挙げられるが、上記の問題から実施が難しい。
【0009】
本発明は、上述の実情に鑑み、インホイールモータ駆動装置の薄肉化、軽量化の要求のもとで、インホイールモータ駆動装置をサスペンション部材等の車体側メンバに連結する場合であっても、駆動モータの変形を回避することができるインホイールモータ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のため本発明によるインホイールモータ駆動装置は、モータ部と、モータ部の軸線方向一方に配置されてモータ部の回転を減速して出力する減速部と、減速部のさらに軸線方向一方に配置されて減速部から出力される減速回転を車輪側へ伝達する車輪ハブおよび車輪ハブを回転自在に支持する車輪ハブ軸受とを有する車輪ハブ軸受部とを備えるインホイールモータ駆動装置であって、モータ部と減速部との間に配置されて径方向に広がるフランジ状部材を具備し、フランジ状部材は、インホイールモータ駆動装置を車体側メンバに連結するための連結部を有する。
【0011】
かかる本発明によれば、モータ部と減速部との間に配置されるフランジ状部材が、車体側メンバと連結するための連結部を有することから、輪荷重が、車輪ハブ軸受部と、減速部と、フランジ状部材とを経由し、モータ部を経由しない。したがって、モータ部には輪荷重が入力することなく、モータ部は変形せず、モータ内部でロータとステータとが接触することを防止することができる。本発明のフランジ状部材とは、内向きフランジや外向きフランジといった軸線直角方向に広がる部材であればよく、互いに異なる外径を有するモータ部と減速部と接続する場合の他、これらモータ部および減速部よりも外径方向へ張り出した外向きフランジを含むと理解されたい。
【0012】
また車体側メンバが変形可能なトレーリングアームである場合、本発明のフランジ状部材の剛性を大きくすることにより、トレーリングアームの変形がインホイールモータ駆動装置に入力されない。したがって本発明はインホイールモータ駆動装置の薄肉化および軽量化に資する。
【0013】
本発明の連結部は、回動可能なボールジョイントであったり、密着固定される座部であったり、車体側に取り付けられる車体側メンバに連結するための部分であれば、その適用範囲は限定されない。本発明の連結部は、車体側に取り付けられて車輪およびインホイールモータ駆動装置を懸架するサスペンション部材に連結されることにより、路面からの外力および加減速時のショックがインホイールモータ駆動装置に入力されても、モータ部の変形を防止することができる。またモータ部の構造は、ラジアルギャップであっても、アキシャルギャップであってもよく、特に限定されない。減速部の構造は、遊星歯車機構であっても、サイクロイド減速機構であってもよく、特に限定されない。
【0014】
本発明のフランジ状部材は、モータ部と減速部との間に配置されるものであれば特に限定されない。ここで好ましくは、モータ部は、当該モータ部の外郭を形成するモータ部ケーシングを含み、前記減速部は、当該減速部の外郭を形成して軸線方向一方で車輪ハブ軸受の外輪と結合する減速部ケーシングを含む。そしてフランジ状部材は、モータ部ケーシングおよび減速部ケーシングの双方に固定される。かかる実施形態によれば、輪荷重をインホイールモータ駆動装置のケーシングで好適に支持することが可能となる。本発明のフランジ状部材は、モータ部ケーシングおよび減速部ケーシングとは別部材であってボルト等により固定される場合の他、モータ部ケーシングまたは減速部ケーシングのうちの少なくとも一方と一体に結合する場合も含むと理解されたい。
【0015】
本発明の車体側メンバは、一般的にサスペンション装置のサスペンション部材を想定する。そして連結部は、あらゆるサスペンション部材と連結可能であり、軸線よりも前側に配置されたり、軸線よりも後側に配置されたりする。あるいは軸線よりも上側に配置されたり、軸線よりも下側に配置されたりする。例えばサスペンション部材として車両前後方向に延びるトレーリングアームに対して適用可能な実施形態として、連結部は、軸線よりも前側に配置されて下方へ突出する前側連結部と、軸線よりも後側に配置されて下方へ突出する後側連結部とを含む。かかる実施形態によれば、連結部が軸線の前後にそれぞれ配置されて下方へ突出することから、トレーリングアームがインホイールモータ駆動装置を下方から支持することが可能となる。したがって、トレーリングアームを備えるサスペンション装置に適用可能となる。
【0016】
あるいはサスペンション部材としてストラットおよびロアアームを備えるストラット式サスペンション装置に対して適用可能な実施形態として、連結部は、軸線よりも上側に配置される上側連結部と、軸線よりも下側に配置される下側連結部とを含む。かかる実施形態によれば、上側連結部をストラットの下端に連結し、下側連結部をロアアームの遊端に連結することにより、ストラット式サスペンション装置に適用可能となる。また実施形態によれば、上側連結部をアッパアームの遊端に連結し、下側連結部をロアアームの遊端に連結することにより、ダブルウィッシュボーン式サスペンション装置に適用可能となる。
【0017】
本発明によれば、フランジ状部材が輪荷重を受け持つが、モータ部の変形を生じない程度に、モータ部が輪荷重の一部を受け持つものであってもよい。例えばモータ部は、減速部とは反対側の軸線方向他方に位置するモータ端部に、車体側緩衝装置と連結するためのモータ側連結部をさらに有する。かかる実施形態によれば、サスペンション装置の自由度が大きくなり、様々なサスペンション装置でインホイールモータ駆動装置を懸架することができる。
【0018】
具体的には、連結部は軸線よりも下側に配置され、モータ部は減速部とは反対側の軸線方向他方に位置するモータ端部の上部に、車体側メンバと連結するためのモータ側連結部をさらに有する。あるいは、連結部は軸線よりも上側に配置され、モータ部は減速部とは反対側の軸線方向他方に位置するモータ端部の下部に、車体側メンバと連結するためのモータ側連結部をさらに有する。
【0019】
好ましくは、フランジ状部材は、ブレーキキャリパを取り付け固定するためのキャリパ連結部を有する。かかる実施形態によれば、フランジ状部材にブレーキキャリパを取り付け固定することが可能となり、ブレーキキャリパのレイアウト配置に資することができる。
【0020】
好ましくは、減速部は、モータ部の回転軸に連結固定される入力軸と、入力軸の端部に当該入力軸の回転軸線から偏心して結合した円盤形状の偏心部材と、内周が偏心部材の外周に相対回転可能に取り付けられ、入力軸の回転に伴って回転軸線を中心とする公転運動を行う公転部材と、公転部材の外周部に係合して公転部材の自転運動を生じさせる外周係合部材と、公転部材の自転のみを取り出して車輪ハブに伝達する運動変換機構とを有するサイクロイド減速機構である。かかるサイクロイド減速機構を有する実施形態によれば、非常に大きな減速比を得ることができる。
【0021】
運動変換機構は一実施形態に限定されるものではないが、公転部材に、自転軸心を中心として周方向等間隔に形成される複数の孔と、車輪ハブと結合する出力軸と、出力軸の端部に、出力軸の軸線を中心として周方向等間隔に設けられ、孔とそれぞれ係合する複数の内側係合部材とで構成される。
【0022】
あるいは他の実施形態として、運動変換機構は、車輪ハブと結合する出力軸と、出力軸の端部に、出力軸の軸線を中心として周方向等間隔に形成される複数の孔と、公転部材に、自転軸心を中心として周方向等間隔に設けられて孔とそれぞれ係合する複数の内側係合部材とで構成される。
【発明の効果】
【0023】
このように本発明は、モータ部と前記減速部との間に配置されて径方向に広がるフランジ状部材を具備し、該フランジ状部材はインホイールモータ駆動装置を車体側メンバと連結するための連結部を有する。これにより、モータ部に輪荷重が入力することがなく、モータ部の変形を好適に防止することができる。またモータ部および減速部にトレーリングアームの変形が入力されない。さらに、モータ部ケーシングに薄肉部材を使用するなどしてモータ部の軽量化を図ることができる。この結果、サスペンション装置のばね下重量を軽減して車両の乗り心地性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施例になるインホイールモータ駆動装置を示す縦断面図である。
【図2】同実施例の減速部を示す横断面図である。
【図3】同実施例の正面図である。
【図4】本発明の第2実施例になるインホイールモータ駆動装置を示す縦断面図である。
【図5】本発明の第3実施例になるインホイールモータ駆動装置を示す縦断面図である。
【図6】同実施例をサスペンション装置に懸架した状態を模式的に示す斜視図である。
【図7】本発明の第4実施例になるインホイールモータ駆動装置を示す縦断面図である。
【図8】本発明の第5実施例になるインホイールモータ駆動装置を示す縦断面図である。
【図9】同実施例をサスペンション装置に懸架した状態を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。図1は、本発明の一実施例になるインホイールモータ駆動装置を示す縦断面図である。図2は、同実施例の減速部を示す横断面図である。図3は、同実施例を軸線方向一方から見た状態を示す縦断面図である。
【0026】
車輪のロードホイール内空領域に配置されて、当該車輪を駆動するインホイールモータ駆動装置21は、駆動力を発生させるモータ部Aと、モータ部Aの回転を減速して出力する減速部Bと、減速部Bからの出力を図示しない車輪に伝える車輪ハブ軸受部Cとを備える。そして、モータ部A、減速部B、車輪ハブ軸受部Cの順に直列かつ同軸に配置される。インホイールモータ駆動装置21は、例えば電気自動車またはハイブリッド駆動車両のホイールハウジング内に取り付けられる。
【0027】
モータ部Aは、外郭を形成するモータ部ケーシング22aと、モータ部ケーシング22aに固定されるステータ23と、ステータ23の内側に径方向に開いた隙間を介して対面する位置に配置されるロータ24と、ロータ24の内側に固定連結されてロータ24と一体回転するモータ回転軸35とを有するラジアルギャップモータである。
【0028】
モータ部ケーシング22aは、円筒形状であり、軸線O方向一方(図1の左方)で減速部ケーシング22bの他端と結合する。モータ部ケーシング22aの内周はステータ23を支持する。モータ部ケーシング22aの軸線O方向一方には、径方向に広がる内向きフランジ状のフランジ部22eが形成される。本実施例ではフランジ部22eがモータ部ケーシング22aと結合するが、フランジ部22eがモータ部ケーシング22aとは別部材であって、ボルト等により固定されるものであってもよい。またフランジ部22eはボルトによって減速部ケーシング22bの他端に固定される。
【0029】
径方向に広がるフランジ部22eは、モータ部ケーシング22aと減速部ケーシング22bとの間に配置されて、相対的に外径が大きなモータ部ケーシング22aと相対的に外径が小さな減速部ケーシング22bとを接続する。内向きフランジ22eの内周は転がり軸受36bを介してモータ回転軸35の一方端部を回転自在に支持する。モータ部ケーシング22aの軸線O方向他方には、円盤形状のモータカバー22vが固定される。モータカバー22vの中心部は、転がり軸受36aを介してモータ回転軸35の他方端部を回転自在に支持する。
【0030】
減速部Bは、外郭を形成する減速部ケーシング22bと、モータ回転軸35の回転を減速して出力する出力軸28とを有し、モータ部Aの軸線O方向一方に配置される。具体的には、減速部Bはサイクロイド減速機構である。減速部Bの入力軸25は、軸線Oに沿って延び、モータ部A側へ突出して、突出端がモータ回転軸35の軸線方向一方端に連結固定される。モータ部Aのモータ回転軸35および減速部Bの入力軸25は、一体回転することから、モータ側回転部材とも称する。モータ部Aとは反対側に位置する入力軸25の一方端部は、減速部B内で転がり軸受36cによって支持される。
【0031】
入力軸25の外周には、2枚の円盤形状の偏心部材25a,25bが固定される。モータ回転軸35および入力軸25はインホイールモータ駆動装置21の回転軸線Oと一致して延在するが、偏心部材25a,25bの中心は軸線Oと一致しない。さらに、2つの偏心部材25a,25bは、偏心運動による遠心力で発生する振動を互いに打ち消し合うために、180°位相を変えて設けられている。
【0032】
偏心部材25a,25bの外周には、公転部材としての曲線板26a,26bがそれぞれ回転自在に保持される。波状に屈曲した形状である曲線板26a,26bの外周部は、外周係合部材としての複数の外ピン27が係合する。外ピン27は減速部ケーシング22bの内周に取り付けられる。曲線板26a,26bの隙間には、これら曲線板26a,26bの傾きを防止するセンターカラー29が設けられる。
【0033】
減速部ケーシング22bは、モータ部ケーシング22aよりも小さな径の円筒形状であり、軸線O方向他方(図1の右方)でモータ部ケーシング22aの一端側と結合し、軸線O方向一方(図1の左方)で車輪ハブ軸受外輪22cの他端側と結合する。これらケーシング22a,22bおよび外輪22cは1つのケーシング22を構成する。ケーシング22は、前述した転がり軸受36aや、後述する車輪ハブ軸受33等の各種軸受を介してケーシング22内部の回転要素を回転自在に支持する。したがって減速部ケーシング22bの内周は、後述する曲線板26a,26b等の回転要素と離隔しており、回転要素と接触しない。
【0034】
減速部Bの出力軸28は、回転軸線Oに一致して減速部Bから軸線O方向一方へ突出して車輪ハブ軸受部Cまで延在し、フランジ部28aと軸部28bとを有する。減速部Bに配置されるフランジ部28aの端面には、出力軸28の回転軸線Oを中心とする円周上の等間隔に内ピン31を固定する穴が形成されている。車輪ハブ軸受部Cに配置される軸部28bの外周面には、車輪ハブ32が連結固定されている。減速部Bの出力軸28および車輪ハブ軸受部Cの車輪ハブ32は、一体回転することから、車輪側回転部材とも称する。フランジ部28aに植設された内ピン31は、軸線O方向他方へ向かって突出し、先端部が曲線板26a,26bの径方向中央領域と係合する。フランジ部28aの中心穴28cは、入力軸25の一方端部を受け入れるとともに、転がり軸受36cを介して入力軸25の一端を相対回転自在に支持する。
【0035】
図2を参照して、曲線板26aは、外周部にエピトロコイド等のトロコイド系曲線で構成される複数の波形を有し、一方側端面から他方側端面に貫通する複数の貫通孔30a,30bを有する。貫通孔30aは、曲線板26bの中心(自転軸心)を中心とする円周上に等間隔に複数個設けられており、曲線板26bの外周縁と内周縁との間になる径方向中央領域に形成されて、後述する内ピン31を受入れる。また、貫通孔30bは、曲線板26bの中心(自転軸心)に設けられており、曲線板26bの内周になる。曲線板26aは、偏心部材25aの外周に相対回転可能に取り付けられる。
【0036】
すなわち曲線板26aは、転がり軸受41によって偏心部材25aに対して回転自在に支持されている。この転がり軸受41は、内周面が偏心部材25aの外周面に嵌合し、外周面に内側軌道面42aを有する内輪部材42と、曲線板26aの貫通孔30bの内周面に直接形成された外側軌道面43と、内側軌道面42aおよび外側軌道面43の間に配置される複数の円筒ころ44と、周方向で隣り合う円筒ころ44の間隔を保持する保持器(図示省略)とを備える円筒ころ軸受である。あるいは深溝玉軸受であってもよい。内輪部材42は、円筒ころ44が転走する内輪部材42の内側軌道面42aを軸線方向に挟んで向かい合う1対の鍔部をさらに有し、円筒ころ44を1対の鍔部間に保持する。曲線板26bについても同様である。
【0037】
外ピン27は、入力軸25の回転軸線Oを中心とする円周軌道上に等間隔に設けられる。外ピン27は、軸線Oと平行に延び、その両端が、ケーシング22のうち減速部Bを収容する減速部ケーシング22bの内壁面に嵌合固定されている外ピン保持部45に保持されている。より具体的には、外ピン27の軸線O方向両端部が、外ピン保持部45に取り付けられた針状ころ軸受27aによって回転自在に支持されている。
【0038】
曲線板26a,26bが入力軸25の回転軸線Oを中心に公転運動すると、曲線形状の波形と外ピン27とが係合して、曲線板26a,26bに自転運動を生じさせる。また外ピン27の両端に設けられた針状ころ軸受27aにより、外ピン27が曲線板26a,26bの外周面に当接する際、曲線板26a,26bとの摩擦抵抗が低減される。
【0039】
運動変換機構は、出力軸28のフランジ部28aに植設された内側係合部材としての複数の内ピン31と、曲線板26a,26bに設けられた貫通孔30aとで構成される。内ピン31は、出力軸28の回転軸線を中心とする円周軌道上に等間隔に設けられており、出力軸28の軸線と平行に延び、内ピン31の基端が出力軸28に固定されている。また内ピン31の外周には中空円筒体および針状ころからなる針状ころ軸受31aが設けられている。かかる針状ころ軸受31aにより、内ピン31が曲線板26a,26bの貫通孔30aの内周面に当接する際、曲線板26a,26bとの摩擦抵抗が低減される。
【0040】
内ピン31の先端には、内ピン31を補強する内ピン補強部材31bが圧入で連結固定されている。内ピン補強部材31bは、複数の内ピン31先端同士を連結する円環形状のフランジ部31cと、フランジ部31cの内径部と結合し内ピン31から離れるよう軸線方向に延びる円筒形状の筒状部31dとを含む。複数の内ピン31を補強する内ピン補強部材31bは、曲線板26a,26bから一部の内ピン31に負荷された荷重を全ての内ピン31に均一に分散する。
【0041】
内ピン31は、曲線板26a,26bのうち外周部と入力軸25の軸線との間の径方向部位に設けられた貫通孔30aを貫通する。貫通孔30aは、複数の内ピン31それぞれに対応する位置に設けられる。また、貫通孔30aの内径寸法は、内ピン31の外径寸法(「針状ころ軸受31aを含む最大外径」を指す。以下同じ。)より所定分大きく設定されている。したがって、曲線板26a,26bに設けられた貫通孔30aを貫通して延びる内ピン31は、貫通孔30aとそれぞれ係合する内側係合部材になる。
【0042】
筒状部31dは、潤滑油ポンプ51を駆動結合する。複数の内ピン31が出力軸28とともに回転すると、内ピン31に連れ回される筒状部31dが潤滑油ポンプ51を駆動する。ケーシング22の内部に設けられる潤滑油ポンプ51は、モータ部Aの出力によって駆動され、インホイールモータ駆動装置21の内部に潤滑油を循環させる。
【0043】
車輪ハブ軸受部Cは、出力軸28に固定連結された車輪ハブ32と、車輪ハブ32を回転自在に支持する車輪ハブ軸受外輪と、車輪ハブ32を車輪ハブ軸受外輪22cに対して回転自在に保持する車輪ハブ軸受33とを有する。また、車輪ハブ軸受部Cは、減速部Bのさらに軸線方向一方に配置される。これにより、モータ部A、減速部B、および車輪ハブ軸受部Cは、軸線Oに沿って同軸かつ直列に順次配置される。
【0044】
車輪ハブ軸受33は複列アンギュラ玉軸受であって、その内側軌道面が車輪ハブ32の外周面に形成される。車輪ハブ軸受33の外側軌道面は、ケーシング22のうち略円筒形状の車輪ハブ軸受外輪22cの内周面に形成される。車輪ハブ32は、出力軸28の一方端と結合する円筒形状の中空部32aと、減速部Bから遠い側の端部に形成されるフランジ部32bとを有する。フランジ部32bにはボルト32cによって図示しない車輪のロードホイールが固定連結される。
【0045】
図3を参照して、フランジ部22eは、車体側メンバと連結するための連結部61,62を有する。フランジ部22eと一体結合する連結部61は、軸線Oよりも前側に位置し、モータ部ケーシング22aよりも外径方向へ突出して下方へ指向する。そして、その先端に下端面61uが形成される。フランジ部22eと一体結合する連結部62は、軸線Oよりも後側に位置し、モータ部ケーシング22aよりも外径方向へ突出して下方へ指向する。そして、その先端に下端面62uが形成される。下端面61u,62uは、軸線Oよりも下側に位置し、モータ部ケーシング22aの外径よりも下方で、共通する平面を形成する。
【0046】
連結部61,62は、車体側メンバとしてのサスペンション部材と結合して、図示しない車輪とともにインホイールモータ装置21を車体に懸架する。本実施例ではフランジ部22eが、軸線よりも前側に配置されて下方へ突出する前側の連結部61と、軸線よりも後側に配置されて下方へ突出する後側の連結部62とを有する。
【0047】
かかる本実施例によれば、連結部61と連結部62とが車輪ハブ32の前後に離隔してそれぞれ配置される。これにより連結部61および連結部62は、前後方向に延びるサスペンション装置のトレーリングアームに好適に取付固定される。具体的には、連結部61,62が下端面から上方へ向けて延びるボルト孔を有し、下端面61u,62uが図示しないトレーリングアームと接触した状態でボルト締結される。
【0048】
このようにフランジ部22eは、インホイールモータ駆動装置21を車体側メンバに連結するための連結部61,62を有する。したがって、モータ部Aはフランジ部22eにより片持ち支持される。また、減速部Bおよび車輪ハブ軸受部Cは、車輪と車体側メンバとの間に介在する。
【0049】
車体を支持する車輪が受け持つ輪荷重は、車体側から連結部61,62を経由し、フランジ部22eと、減速部ケーシング22bと、外輪22cと、車輪ハブ軸受33と、車輪ハブ32とを順次介して支えられる。これにより、モータ部Aに輪荷重が入力されない。また、急激な加減速や路面の凹凸による外力も、モータ部Aに入力されない。したがって、モータ部Aの変形を好適に防止することができる。さらに、モータ部ケーシング22aに薄肉部材を使用するなどしてインホイールモータ駆動装置21の軽量化を図ることができる。この結果、サスペンション装置のばね下重量を軽減して車両の乗り心地性能を向上させることができる。
【0050】
またトレーリングアームは輪荷重の変化に追従して弾性変形するところ、フランジ部22eの剛性を大きくすることにより、トレーリングアームの変形がインホイールモータ駆動装置21に入力されない。
【0051】
上記構成のインホイールモータ駆動装置21の作動原理を詳しく説明する。
【0052】
モータ部Aは、例えば、ステータ23のコイルに交流電流を供給することによって生じる電磁力を受けて、永久磁石または磁性体によって構成されるロータ24が回転する。
【0053】
これにより、ロータ24に接続されたモータ回転軸35は回転を出力し、モータ回転軸35および入力軸25が回転すると、曲線板26a,26bは入力軸25の回転軸線Oを中心として公転運動する。このとき、外ピン27が、曲線板26a,26bの曲線形状の波形と転がり接触するよう係合して、曲線板26a,26bを入力軸25の回転とは逆向きに自転運動させる。
【0054】
貫通孔30aに挿通される内ピン31は、貫通孔30aの内径よりも十分に細く、曲線板26a,26bの自転運動に伴って貫通孔30aの孔壁面と当接する。これにより、曲線板26a,26bの公転運動が内ピン31に伝わらず、曲線板26a,26bの自転運動のみが出力軸28を介して車輪ハブ軸受部Cに伝達される。かくして、貫通孔30aおよび内ピン31は運動変換機構としての役目を果たす。
【0055】
この運動変換機構を介して、入力軸25に突き合わせて同軸配置された出力軸28は、曲線板26a,26bの自転を減速部Bの出力として取り出す。この結果、入力軸25の回転が減速部Bによって減速されて出力軸28に伝達される。したがって、低トルク、高回転型のモータ部Aを採用した場合でも、駆動輪に必要なトルクを伝達することが可能となる。
【0056】
なお、上記構成の減速部Bの減速比は、外ピン27の数をZ、曲線板26a,26bの波形の数をZとすると、(Z−Z)/Zで算出される。図2に示す実施例では、Z=12、Z=11であるので、減速比は1/11と、非常に大きな減速比を得ることができる。
【0057】
このように、多段構成とすることなく大きな減速比を得ることができるサイクロイド減速機構を減速部Bに採用することにより、コンパクトで高減速比のインホイールモータ駆動装置21を得ることができる。
【0058】
図4の縦断面図を参照して、本発明の第2実施例を説明する。この第2実施例につき、上述した実施例と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。第2実施例では、フランジ部22eが車体側メンバと連結するための連結部63,64を有する。フランジ部22eと一体結合する連結部63は、軸線Oよりも上側に位置し、モータ部ケーシング22aよりも外径方向へ突出する。そして上方へ突出するその先端部に連結部63a、63bが形成される。フランジ部22eと一体結合する連結部64は、軸線Oよりも下側に位置し、モータ部ケーシング22aよりも外径方向へ突出する。そして下方へ突出するその先端に連結部64aが形成される。
【0059】
これら連結部63a,63b,64aは車体側メンバとなるサスペンション部材と連結する。図4に示す実施例のインホイールモータ駆動装置21は、ストラット式サスペンション装置に好適に取り付けられる。具体的には、連結部63a,63bが上下方向に延びる図示しないストラットの下端部と連結する。連結部64aは例えばボールジョイントなどを含み、車幅方向に延びる図示しないロアアームの遊端と連結する。ロアアームは車幅方向内側端を基端とし、車幅方向外側端を遊端とする周知のものでよい。
【0060】
図5の縦断面図を参照して、本発明の第3実施例を説明する。この第3実施例につき、上述した実施例と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。第3実施例では、フランジ部22eが車体側メンバと連結するための連結部63,64を有する。また第3実施例では、モータ部Aのうち減速部Bとは反対側の軸線O方向他方に位置するモータ端部に、車体側メンバと連結するためのモータ側連結部65をさらに有する。
【0061】
図5に示す実施例のインホイールモータ装置21では、上側の連結部63がその先端に連結部63aを有し、下側の連結部64がその先端に連結部64aを有する。そして図5のインホイールモータ装置21は、ダブルウィッシュボーン式サスペンション装置に好適に取り付けられる。
【0062】
図6は、図5のインホイールモータ装置21を懸架するサスペンション装置を、模式的に示す斜視図である。図6を参照して、上側の連結部63aは例えばボールジョイントなどを含み、車幅方向に延びるアッパアーム105の遊端と連結する。アッパアーム105は車幅方向内側端106を基端として上下方向に揺動する。下側の連結部64aは例えばボールジョイントなどを含み、車幅方向に延びるロアアーム107の遊端と連結する。ロアアーム107は車幅方向内側端108を基端として上下方向に揺動する。
【0063】
モータ側連結部65は、車体側緩衝装置(ダンパーともいう)と連結するための連結部であって、モータ端部の下部に設けられる。モータ側連結部65はモータカバー22vと一体結合し、モータカバー22vから減速部Bとは反対側へ突出する。そしてその先端に連結部65aを有する。なおモータ側連結部65はモータ部Aの外周縁に形成されていればよく、モータ部ケーシング22aと一体結合してもよい。
【0064】
連結部65aは例えばボールジョイントなどを含み、少なくとも車幅方向に延びる直線状のリンク部材109の外方端と連結する。リンク部材109の内方端は、略L字状のリンク部材111の一方端と連結する。リンク部材111の中央部はピボット112で支持される。これによりリンク部材111はピボット112で回動可能である。リンク部材111の他方端は、ダンパー115の前端と連結する。ダンパー115は、車体前後方向に伸縮可能となるよう横置に配置され、ダンパー115の後端で車体117に取り付けられる。
【0065】
図6に示すサスペンション装置の機能につき説明する。上向きの衝撃荷重Fが、路面から車輪を介してインホイールモータ駆動装置21に入力されて、インホイールモータ装置21が元の高さ位置よりも上方へ移動する場合を代表して説明する。この場合、矢で示すようにアッパアーム105およびロアアーム107が上方へ揺動する。この際、インホイールモータ駆動装置21は車幅内方へ引き込まれるため、リンク部材109に軸力Nが作用する。リンク部材109とリンク部材111の前方端部とは交差していることから、軸力Nはリンク部材111に作用するモーメントMに変換される。ダンパー115は車両前後方向に延びてリンク部材111の後方端部と交差していることから、モーメントMはダンパー115に作用する衝撃荷重Fに変換される。衝撃荷重Fがダンパー115の前端を車両後方へ押し込む際、ダンパー115は衝撃荷重Fを吸収し、リンク部材111の後方端をゆっくりと押し戻す。かくしてインホイールモータ装置21は、元の高さ位置に復帰する。図示はしなかったが下向きの衝撃荷重がインホイールモータ駆動装置21に入力される場合もダンパー115で同様に吸収される。
【0066】
図7の縦断面図を参照して、本発明の第4実施例を説明する。この第4実施例につき、上述した実施例と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。第4実施例では、モータ側連結部65がモータ端部の上部に設けられる。上側の連結部63および下側の連結部64は第3実施例(図5)と共通する。図7のインホイールモータ装置21も、ダブルウィッシュボーン式サスペンション装置に好適に取り付けられる。また図示はしなかったが、横置きのダンパー115によって上下方向の衝撃荷重を吸収可能である。
【0067】
図8の縦断面図を参照して、本発明の第5実施例を説明する。この第5実施例につき、上述した実施例と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。第5実施例では、連結部64が車輪ハブよりも下側に配置される。モータ部Aは、減速部Bとは反対側の軸線方向他方に位置するモータ端部の上部に、車体側メンバと連結するためのモータ側連結部66を有する。モータ側連結部66はモータカバー22vと一体結合し、モータカバー22vから減速部Bとは反対側へ突出する。そしてその先端に連結部66aを有する。なおモータ側連結部66はモータ部Aの外周縁に形成されていればよく、モータ部ケーシング22aと一体結合してもよい。図8のインホイールモータ駆動装置21は、ダブルウィッシュボーン式サスペンション装置に好適に取り付けられる。
【0068】
図9は、図8のインホイールモータ装置21を懸架するサスペンション装置を、模式的に示す斜視図である。図9を参照して、上側の連結部66aは例えばボールジョイントなどを含み、車幅方向に延びるアッパアーム105の遊端と連結する。下側の連結部64aは例えばボールジョイントなどを含み、車幅方向に延びるロアアーム107の遊端と連結する。ダンパー116は、車体上下方向に伸縮可能となるよう縦置に配置され、ダンパー116の下端がロアアーム107の車幅方向中央部と連結する。またダンパー116の上端が車体に取り付けられる。
【0069】
図9に示すサスペンション装置によれば、ダンパー116がアッパアーム105を貫通するよう延びることから、インホイールモータ駆動装置21およびサスペンション装置を含む車体床下の配置レイアウトをコンパクトにまとめることが可能となる。
【0070】
また図9に示すサスペンション装置によれば、路面から車輪を介してインホイールモータ駆動装置21に入力される上下方向の衝撃荷重を、車輪ハブ32と、車輪ハブ軸受33と、外輪22cと、減速部ケーシング22bと、フランジ部22eとを順次を介して、ダンパー116で吸収することが可能となり、モータ部Aに衝撃荷重が作用しない。したがって、モータ部Aの変形を好適に防止することができる。さらに、モータ部ケーシング22aに薄肉部材を使用するなどしてインホイールモータ駆動装置21の軽量化を図ることができる。この結果、サスペンション装置のばね下重量を軽減して車両の乗り心地性能を向上させることができる。
【0071】
なお図には示さなかったが、図8に示す実施例の変形例として、下側の連結部64に代えて連結部63を軸線よりも上側に配置する。そしてモータ側連結部66を、モータ端部の上部に代えて、モータ端部の下部に配置する。かかる変形例も、ダブルウィッシュボーン式サスペンション装置に好適に取り付けられる。具体的には、フランジ部22eの上側の連結部63はアッパアームに連結し、このアッパアームはダンパーと連結する。モータ端部下側のモータ側連結部は、ロアアームに連結する。
【0072】
かかる変形例によれば、モータ部ケーシング22aに薄肉部材を使用するなどしてインホイールモータ駆動装置21の軽量化を図ることができる。
【0073】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【0074】
上述した各実施例において、フランジ部22eは車輪の近傍に位置することから、車輪を制動するブレーキキャリパを設けてもよい。この場合においてフランジ部22eは、ブレーキキャリパを取り付けるためのキャリパ連結部を有する。これにより、車輪ブレーキおよびインホイールモータ駆動装置21を含むユニットのコンパクト化に資する。
【産業上の利用可能性】
【0075】
この発明になるインホイールモータ駆動装置は、電気自動車およびハイブリッド車両において有利に利用される。
【符号の説明】
【0076】
21 インホイールータ駆動装置、22 ケーシング、22a モータ部ケーシング、22b 減速部ケーシング、22c 車輪ハブ軸受部ケーシング、22e フランジ部、23 ステータ、24 ロータ、25 入力軸、25a,25b 偏心部材、26a,26b 曲線板、27 外ピン、28 出力軸、28c 中心穴、31 内ピン、32 車輪ハブ、33 車輪ハブ軸受、35 モータ回転軸、61,62,63,64 連結部、65,66 モータ側連結部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ部と、前記モータ部の軸線方向一方に配置されてモータ部の回転を減速して出力する減速部と、前記減速部のさらに軸線方向一方に配置されて前記減速部から出力される減速回転を車輪側へ伝達する車輪ハブおよび前記車輪ハブを回転自在に支持する車輪ハブ軸受とを有する車輪ハブ軸受部とを備えるインホイールモータ駆動装置であって、
前記モータ部と前記減速部との間に配置されて径方向に広がるフランジ状部材を具備し、
前記フランジ状部材は、インホイールモータ駆動装置を車体側メンバに連結するための連結部を有する、インホイールモータ駆動装置。
【請求項2】
前記モータ部は、当該モータ部の外郭を形成するモータ部ケーシングを含み、
前記減速部は、当該減速部の外郭を形成して軸線方向一方で前記車輪ハブ軸受の外輪と結合する減速部ケーシングを含み、
前記フランジ状部材は、モータ部ケーシングおよび減速部ケーシングの双方に固定される、請求項1に記載のインホイールモータ駆動装置。
【請求項3】
前記連結部は、軸線よりも前側に配置されて下方へ突出する前側連結部と、軸線よりも後側に配置されて下方へ突出する後側連結部とを含む、請求項1または2に記載のインホイールモータ駆動装置。
【請求項4】
前記連結部は、軸線よりも上側に配置される上側連結部と、軸線よりも下側に配置される下側連結部とを含む、請求項1または2に記載のインホイールモータ駆動装置。
【請求項5】
前記モータ部は、前記減速部とは反対側の軸線方向他方に位置するモータ端部に、車体側緩衝装置と連結するためのモータ側連結部をさらに有する、請求項4に記載のインホイールモータ駆動装置。
【請求項6】
前記連結部は、軸線よりも下側に配置され、
前記モータ部は、前記減速部とは反対側の軸線方向他方に位置するモータ端部の上部に、車体側メンバと連結するためのモータ側連結部をさらに有する、請求項1または2に記載のインホイールモータ駆動装置。
【請求項7】
前記連結部は、軸線よりも上側に配置され、
前記モータ部は、前記減速部とは反対側の軸線方向他方に位置するモータ端部の下部に、車体側メンバと連結するためのモータ側連結部をさらに有する、請求項1または2に記載のインホイールモータ駆動装置。
【請求項8】
前記フランジ状部材は、ブレーキキャリパを取り付けるためのキャリパ連結部を有する、請求項1〜7のいずれかに記載のインホイールモータ駆動装置。
【請求項9】
前記減速部は、前記モータ部の回転軸に連結固定される入力軸と、
前記入力軸の端部に当該入力軸の回転軸線から偏心して結合した円盤形状の偏心部材と、
内周が前記偏心部材の外周に相対回転可能に取り付けられ、前記入力軸の回転に伴って前記回転軸線を中心とする公転運動を行う公転部材と、
前記公転部材の外周部に係合して前記公転部材の自転運動を生じさせる外周係合部材と、
前記公転部材の自転のみを取り出して前記車輪ハブに伝達する運動変換機構とを有するサイクロイド減速機構である、請求項1〜8のいずれかに記載のインホイールモータ駆動装置。
【請求項10】
前記運動変換機構は、前記公転部材に、自転軸心を中心として周方向等間隔に形成される複数の孔と、
前記車輪ハブと結合する出力軸と、
前記出力軸の端部に、出力軸の軸線を中心として周方向等間隔に設けられ、前記孔とそれぞれ係合する複数の内側係合部材とで構成される、請求項9に記載のインホイールモータ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−162034(P2011−162034A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26398(P2010−26398)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】