説明

ウィンドシールドガラスの位置決め構造

【課題】ストッパと車体外板との接触を防ぎ、容易な設計でウィンドシールドガラスの接着時における浮き上がりを防止又は抑制することができるウィンドシールドガラスの位置決め構造を得る。
【解決手段】リヤウィンドシールドガラス12の自重及びモール上部26Aの反力によって、ストッパ30にガラス上下方向(矢印12X方向)における下方側への荷重が作用すると、ストッパ30のピン部34がクリップ40のコーナ部42Xを支点として撓み、ピン部34の先端側の爪部38がクリップ40の被係止部50に係止される。これによって、リヤウィンドシールドガラス12の浮き上がりが防止又は抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体外板の開口部を閉塞するウィンドシールドガラスの接着にあたって、該ウィンドシールドガラスの位置決めに用いられるウィンドシールドガラスの位置決め構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ウィンドシールドガラスを車体外板の開口部に接着する際には、接着剤が硬化するまでの間にウィンドシールドガラスが浮き上がってしまうのを防止する必要がある。このため、ウィンドシールドガラスに取り付けられたガラスストッパの爪部を、前記開口部の縁部に形成された取付孔に挿入して係止させる場合がある(例えば、特許文献1参照)。しかし、このガラスストッパは、接着剤が硬化した後も除去されずに取り付けられたままとなるので、車両振動時には、ガラスストッパの脚部(差込部)や爪部と取付孔の孔縁とが擦れて異音(スティックスリップ音)が発生する場合がある。
【0003】
一方、開口縁部の取付孔にプラスチック製の雌部材を装着する場合がある(例えば、特許文献2参照)。このような構造では、例えば、ガラスストッパ用のクリップに錨形状や球形状の嵌合部を形成すると共に、雌部材には、クリップの嵌合部よりも小径の入口部分を形成しかつクリップの嵌合部と嵌合可能な被嵌合部を形成しており、クリップの嵌合部と雌部材の被嵌合部とを嵌合させている。しかし、この場合には、嵌合部と被嵌合部とを良好に嵌合させるための設計が煩雑になる。
【特許文献1】特開平8−310233号公報
【特許文献2】特開平10−44764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、ストッパと車体外板との接触を防ぎ、容易な設計でウィンドシールドガラスの接着時における浮き上がりを防止又は抑制することができるウィンドシールドガラスの位置決め構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載する本発明のウィンドシールドガラスの位置決め構造は、ウィンドシールドガラスによって閉塞される開口部が形成され、前記開口部の上端部に取付孔が貫通形成された車体外板と、前記ウィンドシールドガラスの上端部側に取り付けられ、弾性変形された状態で前記車体外板に接触して、前記ウィンドシールドガラスを、当該ウィンドシールドガラスの上端部と下端部とを結ぶ方向であるガラス上下方向における下方側へ付勢するモール部と、前記ウィンドシールドガラスの上端部の内面側に取り付けられ、前記取付孔を貫通する差込部を備えると共に、前記差込部の先端側でかつ前記ガラス上下方向における上方側に係止部が形成されたストッパと、前記取付孔に配設され、前記ストッパの前記差込部によって挿通される挿通部が形成されると共に、前記取付孔の下方側でかつ前記ガラス上下方向における上方側に前記係止部が係止される被係止部が形成されたクリップと、を有することを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載する本発明のウィンドシールドガラスの位置決め構造によれば、自重が作用するウィンドシールドガラスには、さらにモール部によってガラス上下方向における下方側へ付勢力が作用するので、ウィンドシールドガラスの上端部の内面側に取り付けられたストッパには、ガラス上下方向における下方側への荷重が作用する。ストッパの差込部は、クリップの挿通部に挿通されることで取付孔を貫通するので、ストッパの差込部に作用する荷重は、クリップを介して車体外板側に支持され、クリップの支持点を支点として、ストッパの差込部の先端側がガラス上下方向における上方側へ変位する。ここで、ストッパの差込部の先端側でかつガラス上下方向における上方側には、係止部が形成されており、クリップには、取付孔の下方側でかつガラス上下方向における上方側に係止部が係止される被係止部が形成されているので、ストッパの差込部の先端側がガラス上下方向における上方側へ変位すると、係止部が被係止部に係止される。
【0007】
このように、ウィンドシールドガラスの配置時における差込部の変位を利用して係止部を被係止部に係止させているので、係止部を被係止部に係止させるための設計も容易になる。この構造によれば、ウィンドシールドガラスに接着剤を塗布して車体外板の開口部に押し付けた場合、接着剤が硬化するまでの間に、ウィンドシールドガラスの上端部側に浮き上がろうとする荷重が作用しても、係止部が被係止部に係止されることによって、ウィンドシールドガラスの上端部側における浮き上がりは、防止又は抑制される。また、ストッパの差込部や係止部は、車体外板には直接当らないので、車両振動時におけるストッパと車体外板との擦れによる異音の発生が防止される。
【0008】
請求項2に記載する本発明のウィンドシールドガラスの位置決め構造は、請求項1記載の構成において、前記ストッパにおける前記差込部及び前記係止部は、前記挿通部への挿通時に撓み変形させないで当該挿通部に挿通可能な寸法に設定されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載する本発明のウィンドシールドガラスの位置決め構造によれば、ストッパにおける差込部及び係止部は、挿通部への挿通時に撓み変形させないで挿通部に挿通可能な寸法となっているので、ウィンドシールドガラスを配置する際に、ストッパの差込部がクリップの挿通部にスムーズに挿通される。差込部が挿通部に挿通された後には、ストッパの差込部の先端側がガラス上下方向における上方側へ変位して、係止部が被係止部に係止される。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載のウィンドシールドガラスの位置決め構造によれば、ストッパと車体外板との接触を防ぎ、容易な設計でウィンドシールドガラスの接着時における浮き上がりを防止又は抑制することができるという優れた効果を有する。
【0011】
請求項2に記載のウィンドシールドガラスの位置決め構造によれば、ストッパの差込部をクリップの挿通部にスムーズに挿通することができ、かつ、容易な設計でウィンドシールドガラスの接着時における浮き上がりを防止又は抑制することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(実施形態の構成)
本発明の一実施形態に係るウィンドシールドガラスの位置決め構造(位置決めストッパ構造)について図1〜図3を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印Wは車幅方向を示している。
【0013】
図1に示されるように、車両10の後部側かつ上部側には、ウィンドシールドガラスとしての略矩形板状のリヤウィンドシールドガラス(バックガラス)12が配設されており、車体外板14には、リヤウィンドシールドガラス12によって閉塞される略矩形枠状の開口部16が形成されている。開口部16の下側部分(車両後方側部分)は、アッパーバックリインフォースメント18が構成し、開口部16の上側部分(車両前方側部分)は、ルーフ20が構成し、開口部16の車幅方向両側部分は、クオータピラー22が構成している。クオータピラー22は、車両上方側へ向かうに従って車両前方側へ向かう方向へ傾斜されている。開口部16を閉塞するリヤウィンドシールドガラス12は、クオータピラー22と同様に車両上方側へ向かうに従って車両前方側へ向かう方向へ傾斜されている。なお、図中において、リヤウィンドシールドガラス12の上端部12Aと下端部12Bとを結ぶ方向であるガラス上下方向を矢印12Xで示す。
【0014】
リヤウィンドシールドガラス12の内面12C(図2参照)は、外周縁全体の近傍で接着剤(例えばウレタン接着剤)24(図2参照)により車体外板14に接着され、接着剤24による接着位置よりもさらに外周縁側には、図2に示されるモール26(ウインドシールドモール)が取り付けられている。モール26は、ダムを兼ね、ゴム製とされてシール性及び弾性を有しており、広義にはシール手段として把握される要素である。モール26は、弾性変形された状態で車体外板14(図2では、ルーフ20)に接触されており、車体外板14(図2では、ルーフ20)とリヤウィンドシールドガラス12との間をシールしている。
【0015】
ルーフ20における開口部16の上部側を示す図2に示されるように、ルーフ20は、リヤウィンドシールドガラス12における上端部12Aの車両下方側を含んで構成された開口部16の上端部としてのルーフフランジ20Aと、このルーフフランジ20Aにおける車両前方側の端部から略直角に立ち上がった立上部20Cと、を備えている。図2及び図3に示されるように、ルーフフランジ20Aには、車幅方向を長手方向とした取付孔(長孔)20Bが貫通形成されている。この取付孔20Bは、詳細後述するようにリヤウィンドシールドガラス12の位置決め用として用いられる。
【0016】
図2に示されるように、ルーフ20の車両下方側には、ルーフトリム28が配設されている。ルーフトリム28の後端部28Aは、車両後方側へ向かうに従って車両上方側へ向かう方向へ傾斜しながら開口部16を貫通している。
【0017】
また、前述したモール26の上部を構成するモール部としてのモール上部26Aは、接着テープやウレタン接着剤等のような固定手段25によって、リヤウィンドシールドガラス12の上端部12A側の内面12Cに取り付けられ、弾性変形された状態でリップ126Aがルーフ20(車体外板14)の立上部20Cに接触し、リップ126Aの反力によってリヤウィンドシールドガラス12をガラス上下方向(矢印12X方向)における下方側へ付勢するようになっている。なお、図中では、リップ126Aが立上部20Cに接触する前の形状を二点鎖線で示す。
【0018】
リヤウィンドシールドガラス12の上端部12Aの内面12C側には、可撓性を備えた樹脂製のストッパ30が取り付けられている。図3に示されるように、ストッパ30は、車幅方向を長手方向として配置される略矩形板状の取付板部32を備えている。図2に示されるように、取付板部32の上向き面32Aは、接着テープやウレタン接着剤等のような固定手段29によってリヤウィンドシールドガラス12の上端部12Aの内面12Cに固定されている。
【0019】
図3に示されるように、取付板部32の下向き面32Bにおける中央部からは、差込部としてのピン部34が立設されており、取付板部32の下向き面32Bにおいてピン部34の両側には、取付板部32の長手方向に沿ってリブ36が形成されている。図2に示されるように、ピン部34は、取付孔20Bを貫通して配置されるようになっており、ピン部34の先端側でかつガラス上下方向における上方側に係止部としての爪部38が形成されている。爪部38は、ピン部34の先端側の一部が切り欠かれて鉤状に形成されている。
【0020】
また、取付孔20Bには、樹脂製のクリップ40が配設されている。クリップ40は、取付孔20Bに挿入されてルーフフランジ20Aに装着されており、上部を構成するフランジ部42と、フランジ部42の下方側において互いに対向して配置された一対の脚部44A、44Bと、を含んで構成されている。一対の脚部44A、44Bには、互いに離間する方向へ膨らむ弾性爪46A、46Bが形成されている。脚部44A、44Bが取付孔20Bに挿入されてフランジ部42がルーフフランジ20Aに面接触した状態では、取付孔20Bへの挿入時に一旦互いに接近する方向へ撓んだ一対の脚部44A、44Bが、互いに離間する方向へ突出するように復元し、ルーフフランジ20Aの裏面側に弾性爪46A、46Bが配設される。これによって、フランジ部42と弾性爪46A、46Bとがルーフフランジ20Aを挟持することになり、クリップ40がルーフフランジ20Aに装着される。
【0021】
図2及び図3に示されるように、クリップ40には、ストッパ30のピン部34によって挿通される挿通部48が形成されている。挿通部48は、フランジ部42における平面視で長円状の内周面部48A、及び一対の脚部44A、44Bの対向部48Bによって形成されている。ここで、挿通部48の内径はピン部34の外径に比べて大きく設定され、換言すれば、ストッパ30におけるピン部34及び爪部38は、挿通部48への挿通時に撓み変形させないで挿通部48に挿通可能な寸法に設定されている。なお、挿通部48における内周面部48Aが平面視で車幅方向を長手方向とした長円状(長孔状)になっているのは、リヤウィンドシールドガラス12(図2参照)と取付板部32との組付誤差、クリップ40とルーフフランジ20Aとの組付誤差、及び取付孔20Bの寸法誤差等のような種々の誤差を考慮したものである。
【0022】
また、フランジ部42においては、一対の脚部44A、44Bのうちガラス上下方向の下方側に配設される脚部44Aの上方部を構成する部分が肉厚部42Aとされ、その他の部分が薄肉部42Bとなっている。これによって、フランジ部42の上面142は、肉厚部42Aが薄肉部42Bに比べて一段高い段差状に形成されている。
【0023】
図2に示されるように、ストッパ30のピン部34が挿通部48に挿通された状態で、かつ、リヤウィンドシールドガラス12の接着時にリヤウィンドシールドガラス12の自重及びモール上部26Aの付勢力によって、ストッパ30の取付板部32にガラス上下方向(矢印12X方向)の下方側への荷重が作用した状態では、フランジ部42における肉厚部42Aの上面142と内周面部48Aとの境目となるコーナ部42Xがストッパ30のピン部34を支持する支持点(支え点)になっている。本実施形態では、コーナ部42Xの位置をリヤウィンドシールドガラス12側に近付けることで、ピン部34からの荷重を効率良く受けることができる構成になっている。
【0024】
また、クリップ40においては、取付孔20Bの下方側でかつガラス上下方向(矢印12X方向)における上方側となる脚部44Bには、ストッパ30の爪部38が係止される被係止部50が形成されている。この被係止部50は、本実施形態では、脚部44Bの突端部(車幅方向へ延在する先端部)の一部で構成されている。ストッパ30の取付板部32にガラス上下方向(矢印12X方向)の下方側への荷重が作用した状態では、ストッパ30のピン部34がコーナ部42Xを支点として若干撓んでストッパ30の爪部38が被係止部50に係止(嵌合)される構成である。なお、図中では、撓みがないと仮定した場合のピン部34の下部位置を二点鎖線で示すと共に、撓み方向を矢印Aで示す。
【0025】
ストッパ30及びクリップ40は、リヤウィンドシールドガラス12を車体外板14に取り付ける際の位置決め用とされている。すなわち、ストッパ30及びクリップ40は、リヤウィンドシールドガラス12の外周縁全体の近傍に接着剤24を塗布して車体外板14に押し付けた際に、リヤウィンドシールドガラス12と車体外板14との間に強力な接合が得られるまでの間、リヤウィンドシールドガラス12を車体外板14に対して位置決めして保持するのに適用されている。
【0026】
(実施形態の作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0027】
リヤウィンドシールドガラス12を車体外板14に取り付ける際には、リヤウィンドシールドガラス12の外周縁全体の近傍に接着剤24が塗布されてリヤウィンドシールドガラス12が車体外板14に押し付けられる。このとき、自重が作用するリヤウィンドシールドガラス12には、さらにモール上部26Aによってガラス上下方向(矢印12X方向)における下方側へ付勢力が作用するので、リヤウィンドシールドガラス12の上端部12Aの内面12C側に取り付けられたストッパ30には、ガラス上下方向(矢印12X方向)における下方側への荷重が作用する。
【0028】
ストッパ30のピン部34は、クリップ40の挿通部48に挿通されることで取付孔20Bを貫通するので、ストッパ30のピン部34に作用する荷重は、クリップ40を介してルーフ20(車体外板14)側に支持される。このとき、ストッパ30のピン部34は、撓みながら、クリップ40のコーナ部42Xを支点として、ピン部34の先端側がガラス上下方向(矢印12X方向)における上方側へ(矢印A方向へ)変位する。ここで、ストッパ30のピン部34の先端側でかつガラス上下方向(矢印12X方向)における上方側には、爪部38が形成されており、クリップ40には、取付孔20Bの下方側でかつガラス上下方向(矢印12X方向)における上方側に爪部38が係止される被係止部50が形成されているので、ストッパ30のピン部34の先端側がガラス上下方向(矢印12X方向)における上方側へ(矢印A方向へ)変位すると、爪部38が被係止部50に係止される(引っ掛けられる)。
【0029】
このように、リヤウィンドシールドガラス12の配置時におけるピン部34の変位(撓み)を利用して爪部38を被係止部50に係止させているので、爪部38を被係止部50に係止させるための設計も容易になる。すなわち、例えば、係止部を所謂錨形状とするような対比構造と比較すると、対比構造の場合、係止のために必要な係止部における撓み量等を設計しなければならないが、本実施形態の構造では、このような煩雑な設計はしなくて済み、設計がしやすい。また、本実施形態では、ストッパ30におけるピン部34及び爪部38は、挿通部48への挿通時に撓み変形させないで挿通部48に挿通可能な寸法に設定されているので、リヤウィンドシールドガラス12を配置する際に、ストッパ30のピン部34がクリップ40の挿通部48にスムーズに挿通される。
【0030】
また、取付孔20Bに配設されるクリップ40の挿通部48の車両前後方向における寸法が許容範囲内で最大に設定されて、ピン部34と挿通部48との間にある程度の所謂アソビ(ガタ)があったとしても、ピン部34が撓んで、ピン部34の上部がコーナ部42Xで支持されると共に、ピン部34の先端側の爪部38が被係止部50に係止される二点支持構成になっている。このため、多少の製造誤差(バラツキ)は、許容される。
【0031】
また、このような構造によれば、リヤウィンドシールドガラス12の外周縁全体の近傍に接着剤24を塗布して車体外板14の開口部16に押し付けた場合、接着剤24が硬化するまでの間に、リヤウィンドシールドガラス12の上端部12A側に浮き上がろうとする荷重が作用しても、爪部38が被係止部50に係止されることによって、リヤウィンドシールドガラス12が車両前方向及び車両上下方向における所定位置で保持され、リヤウィンドシールドガラス12の上端部12A側における浮き上がりは、防止又は抑制される。
【0032】
また、取付孔20Bにクリップ40を配設することで、ストッパ30がクリップ40を介してルーフフランジ20Aに支持されることになるので、ストッパ30とルーフフランジ20Aとの間の直接の摩擦を防ぐと共に、クリップ40がストッパ30とルーフフランジ20Aとの相対移動を吸収するので、車両振動時の擦れ異音の発生を防止することができる。補足すると、例えば、樹脂製のストッパが直接ボデーフランジ面で受けられている対比構造では、車両振動時にボデーフランジ面の塗面とストッパとの間でスティックスリップ音が発生して異音不具合が生じることになる。ここで、ボデーフランジ面の塗面での摩擦係数は、ボデー塗装の種類によって千差万別であり、このような千差万別の塗装と常に相性が良い樹脂材料はない。また、仮に、ある樹脂材料によって、現在の塗装に対応させることができても、塗装開発によって今後生み出される新たな塗装に対しても相性が良いとの保証はない。これに対して、本実施形態の構造では、上記不具合(車両振動時のストッパと車体外板との擦れ異音の発生)を防止することができる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態に係るウィンドシールドガラスの位置決め構造によれば、ストッパ30とルーフフランジ20A(車体外板14)との接触を防ぎ、容易な設計でリヤウィンドシールドガラス12の接着時における浮き上がりを防止又は抑制することができる。
【0034】
なお、ピン部34が撓むことを予め見込んで設計するので、ルーフフランジ20Aの取付孔20Bの孔位置(ないしは車両前方側となる孔縁の位置)は、ピン部34が撓まないと仮定した場合の孔の想定位置よりも車両前方上側に設定することができる。このように、取付孔20Bの孔位置及びピン部34の先端部側の位置が従来より車両前方上側になることで、ルーフトリム28をより小型化して車両上方側へ配置できるので、車室内側における視覚が広がるというメリットもある。
【0035】
(実施形態の補足説明)
なお、上記実施形態では、ウィンドシールドガラスの位置決め構造がリヤウィンドシールドガラスの位置決めに適用されているが、ウィンドシールドガラスの位置決め構造は、フロントウィンドシールドガラスの位置決めに適用されてもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、ストッパ30の係止部としての爪部38は、ピン部34の先端側の一部が切り欠かれて鉤状に形成されているが、ストッパの係止部は、例えば、ピン部の先端側でかつガラス上下方向における上方側において凸状とされて凹状の被係止部に係止されるような他の係止部であってもよい。
【0037】
さらに、上記実施形態では、ストッパ30におけるピン部34及び爪部38は、挿通部48への挿通時に撓み変形させないで挿通部48に挿通可能な寸法に設定されているが、例えば、ストッパにおける係止部がガラス上下方向における上方側へ張り出すような構成で、差込部及び係止部の挿通部への挿通時に係止部が若干撓み変形しないと挿通部に挿通できないような寸法に設定されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態に係るウィンドシールドガラスの位置決め構造が適用される車両の後部を示す斜視図である。
【図2】図1の2−2線に沿う断面の拡大断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るウィンドシールドガラスの位置決め構造の一部を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
12 リヤウィンドシールドガラス(ウィンドシールドガラス)
12A リヤウィンドシールドガラスの上端部
12B 下端部
12C 内面
12X ガラス上下方向
14 車体外板
16 開口部
20A ルーフフランジ(開口部の上端部)
20B 取付孔
26A モール上部(モール部)
30 ストッパ
34 ピン部(差込部)
38 爪部(係止部)
40 クリップ
48 挿通部
50 被係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウィンドシールドガラスによって閉塞される開口部が形成され、前記開口部の上端部に取付孔が貫通形成された車体外板と、
前記ウィンドシールドガラスの上端部側に取り付けられ、弾性変形された状態で前記車体外板に接触して、前記ウィンドシールドガラスを、当該ウィンドシールドガラスの上端部と下端部とを結ぶ方向であるガラス上下方向における下方側へ付勢するモール部と、
前記ウィンドシールドガラスの上端部の内面側に取り付けられ、前記取付孔を貫通する差込部を備えると共に、前記差込部の先端側でかつ前記ガラス上下方向における上方側に係止部が形成されたストッパと、
前記取付孔に配設され、前記ストッパの前記差込部によって挿通される挿通部が形成されると共に、前記取付孔の下方側でかつ前記ガラス上下方向における上方側に前記係止部が係止される被係止部が形成されたクリップと、
を有することを特徴とするウィンドシールドガラスの位置決め構造。
【請求項2】
前記ストッパにおける前記差込部及び前記係止部は、前記挿通部への挿通時に撓み変形させないで当該挿通部に挿通可能な寸法に設定されていることを特徴とする請求項1記載のウィンドシールドガラスの位置決め構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−51258(P2009−51258A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217432(P2007−217432)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】