説明

ウイルス感染の予防および治療用の薬剤の製造のためのヒドロキシ安息香酸エステルおよび類似体の使用

ウイルス感染の予防および治療用の薬剤の製造のためのヒドロキシ安息香酸エステルおよびその類似体の使用であって、特に、ヒトおよび動物におけるHBV、HPVまたはHSV感染に使用される。これらウイルス感染は、B型肝炎、単純ヘルペス、尖圭コンジローマ、膣炎、子宮頸管炎および子宮頸部びらんである。その他、ヒドロキシ安息香酸エステルおよびその類似体および補助薬によって調整された種々の薬剤やパーソナルケア商品が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルス感染の予防および治療用の薬剤の製造のためのヒドロキシ安息香酸エステルおよびその類似体の使用に関する。特に、本発明は、ヒトおよび動物におけるB型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルスおよび単純ヘルペスウイルス関連疾患(B型肝炎、尖圭コンジローマ、単純ヘルペス、膣炎、子宮頸管炎および子宮頸部びらん等)の治療用の薬剤の製造のためのヒドロキシ安息香酸エステルおよびその類似体の使用、ならびに子宮頸癌の治療を助けるためのかかる薬剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシ安息香酸エステルおよびその類似体の中で、p−ヒドロキシ安息香酸エステルが、食品および薬物保存料として、しばしば使用された。没食子酸エステル(「3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸エステル」)は、トロンボキサンA2(TXA2)の合成を阻害することができる。これは、血小板凝集に対して、アスピリン(ASP)よりも強力で速い効果を有し、注射用溶液中で使用されてきた。没食子酸は、B型肝炎ウイルス複製を阻害することが証明されている(Journals of Guangzhou Liberation Army High Specialized School、1998年、26(2):5〜7頁参照)。今までのところ、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸エステルを含むヒドロキシ安息香酸エステルおよびその類似体を使用してヒトにおけるウイルス感染、例えばB型肝炎または皮膚粘膜ウイルス感染を治療することは、報告されていない。
【0003】
中国特許第CN1411339A号および米国特許第6,294,186号は、抗菌組成物を開示している。組成物は、安全かつ有効な量の安息香酸類似体を含み、これは以下の構造(II)を有する。
【0004】
【化1】

【0005】
式中、R、R、RおよびRは、独立して、H、OH、F、I、Br、Cl、SH、NH、CN、アルキル、アルコキシ、NR、OR、NO、COR、CONR、CORまたはSORであり、ここでRは、独立して、H、アルキルまたはアルコキシであり、一方Rは、独立して、H、OH、F、I、Br、Cl、SH、CN、アルキル、アルコキシ、OR、NO、COR、CONR、CORまたはSORであり、ここでRは、独立して、H、アルキルまたはアルコキシであった。前述の特許参考文献は、最も好ましい実施形態を、サリチル酸(「2−ヒドロキシ安息香酸」)、安息香酸またはそれらの組合せとして指摘し、これらの化合物を使用することができるpH範囲も、1〜7に限定した。
【0006】
ウイルスは最も小さい公知の病原性微生物であるが、それらは最も広く蔓延する。今日では、世界の伝染性疾患のほぼ4分の3がウイルスによって引き起こされる。臨床上の診断において、多くの疾患がウイルス感染に関連する。
【0007】
尖圭コンジローマは性器疣贅または性病性疣贅とも呼ばれ、ヒトパピローマウイルス(HPV)によって誘導される良性の皮膚粘膜増殖である。これは最も頻繁に見られる性感染症の1つであり、生殖器の炎症および癌に密接に関連している。現在、ポドフィロキシンが、性器疣贅を治療するための薬物の1つである。その利点は、治療期間が短いことであり、不利な点は、皮膚刺激、および疼痛、浮腫、びらん等を含む深刻な副作用があることである。組換えインターフェロンα−2βゲルは、性器疣贅を治療するための効果的な外用薬として認識されている。
【0008】
最近の研究から、子宮頸部びらんの患者の29.3%が、HPV陽性であると試験されたが、正常な集団中の陽性率はわずか11.1%であることが示された(Fuqiang Chen、Tumor Prevention Magazine、2001年、8(4)342〜344頁、Chenkang Xu、Journal of Zhongshan Medical University、1998年、19(3):223〜226頁)。慢性子宮頸管炎患者の約69%において、高リスクHPV16およびHPV18が発現されたこと、および子宮頸部びらんの程度が増大すると、増加する割合でこれらのサブタイプが検出されたことが報告されている(Ahn ws他、J Cell Biochem Suppl、1997年;28〜29:133〜139頁)。顆粒状または乳糖状びらんと正常な子宮頸部との間のHPV16およびHPV18の検出率の違いは有意であった。子宮頸癌におけるHPV16およびHPV18の陽性率は、PCRによって検出した場合、83.33%と高くあり得た。高リスクHPVのDNAは、宿主細胞の染色体に組み込むことができ、その際、E6およびE7腫瘍タンパク質を生成することができた。E6およびE7は、それぞれ、抗癌遺伝子p53およびRbを阻害することができた。結果として、細胞はp53およびRbの制御を失い、定常状態の細胞の活発な増殖を引き起こして、癌性になることがあろう。細胞中にHPV16が残る場合、これは子宮頸病変を癌に変えることができた。外陰部感染と異なり、子宮頸HPV感染は主にHPV16/18を伴い、通常、疣贅を引き起こさない。これは長時間潜伏感染として存在し、最初に異型過形成を誘導し、他の因子が加わったときに癌性になる。
【0009】
単純ヘルペスウイルス(HSV)は二本鎖DNAウイルスであり、口、呼吸経路、生殖路粘膜、損傷を受けた皮膚および多くの他の経路によって、標的生物に入ることができる。これはヒトの間で極めて一般的な感染であり、感染率は80〜90%と高い。典型的な症状としては、粘膜および皮膚のある部分での水疱の集まりが挙げられるが、時々、深刻な全身性疾患が起こる場合があり、内臓を害する。以前の研究者らは、HSV−1およびHPV−2が、別々に、口唇癌、外陰癌および子宮頸癌に関連するかもしれないと示し、それらに多くの関心が集まった(Sunhe、China practical gynaecology and obstetrics journal、2001年、17(7):407〜409頁)。現在、HSV感染を治療するための薬物としては、イドクスウリジン、シトシンアラビノシド、ビダラビン、ブロモビニル、ウリジン、アシクロビル等が挙げられる。しかし、これらの薬物の治療時間は非常に長く、約5〜7日間である。
【0010】
ビダラビン、ビダラビンリン酸、アシクロビルおよびジドブジン等の、B型肝炎ウイルス(HBV)感染を治療するのに有用な抗ウイルス薬は、1980年代に試されているが、深刻な副作用および高い毒性のために、B型肝炎の治療にはもはや使用されていない。最近、ラミブジン、ファムシクロビル、ロブカビル、アデホビル、FTC、FMAU、FDDC、BMS 200475等の多くのヌクレオシド薬が開発され、それらは、HBVに対して有意な阻害効果を有した。不幸にも、ウイルスは変異することがあり、これらの薬物の長期使用の後に薬物耐性になることがある。さらに、これらの薬物は短期間の使用では一時的効果しか有さないため、長期間摂取する必要がある。
【0011】
したがって、HBV、HPV及び/又はHSV感染を予防および治療するための新薬が、常に研究および開発されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の主な目的は、ウイルス感染の予防および治療用の薬剤の製造のため、特に、ヒトおよび動物におけるHBV、HPV及び/又はHSV関連疾患の予防および治療用の薬剤の製造のためのヒドロキシ安息香酸エステルおよびその類似体の使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以下の一般式(I)によってあらわされるヒドロキシ安息香酸エステルおよびその類似体を提供する。
【0014】
【化2】

【0015】
式中、RはC1−11アルキルであり、R、R、R、R、Rは、独立して、OHまたはHであり、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つはOHであるが、サリチル酸塩は排除される。
【0016】
好ましくは、RはC1−8アルキル、すなわちCH、C、C、C、C11、C13、C15、C17であり、最も好ましい炭素原子の数は1〜3、すなわち、CH、CおよびCである。
【0017】
、R、R、R、Rは、ともに、好ましくは、2つ以上のOH基を含み、さらに好ましくは3つ以上のOH基を含む。
【0018】
ひとつの好ましい実施形態において、式(I)のヒドロキシ安息香酸エステルおよびその類似体としては、以下の化合物が挙げられる。4−ヒドロキシ安息香酸エステル、2,4−ジヒドロキシ安息香酸エステル、3,4−ジヒドロキシ安息香酸エステル、2,3,4−トリヒドロキシ安息香酸エステル、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸エステルまたは3,4,6−トリヒドロキシ安息香酸エステルである。好ましい実施形態において、本発明の化合物としては、2,3,4−トリヒドロキシ安息香酸エステル、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸エステルおよび3,4,6−トリヒドロキシ安息香酸エステルが挙げられる。最も好ましい実施形態において、本発明の化合物としては、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸エステルが挙げられる。
【0019】
本発明の化合物及び/又はかかる化合物を有効成分として含む組成物を用いて、ヒトおよび動物におけるウイルス関連疾患の治療のため、特に、B型肝炎、尖圭コンジローマ、単純ヘルペス、膣炎、子宮頸管炎、子宮頸部びらんおよび子宮頸癌を含むがこれらに限定するものではない、HPV、HBV、HSV関連疾患の治療のための薬剤を製造することができる。
【0020】
治療薬として、本発明の化合物及び/又は有効成分としてかかる化合物を有効量含む組成物は、人体および皮膚におけるウイルス感染を予防および治療するための製品の、主な成分である。これは、保存料、抗酸化剤等のアジュバント成分として使用されるだけではない。化合物及び/又はかかる化合物を有効成分として含む組成物の濃度が減少して製品の抗ウイルス効果が減少すると、皮膚粘膜ウイルス関連疾患の予防および治療のための有効成分として作用する。前述の有効量は、かかる化合物または組成物がウイルス感染を効果的に排除または予防することができる用量を意味する。
【0021】
本発明の化合物のほとんどは、公知の化合物である。それらのいくつかは、食品添加物の製造に使用され、いくつかは補助薬である。さらにいくつかは、市場で購入することができるか、天然の植物から抽出することができるか、または公知の方法で製造することができる医薬品中間体である。
【0022】
本発明の化合物及び/又はかかる化合物を含む組成物は、注射または経口製剤用の種々のアジュバントとともに、粉末、溶液、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、液体、または他の薬学的に許容され得る調製物にすることができる。
【0023】
本発明の化合物及び/又はかかる化合物を含む組成物は、皮膚粘膜製剤用の種々のアジュバントとともに、軟膏、ゲル、洗液、錠剤、坐剤、ペッサリー、スプレーまたは他の薬学的に許容され得る調製物等の、種々の調製物にすることができる。
【0024】
本発明の化合物及び/又はかかる化合物を含む組成物を使用して、抗ウイルスパーソナルケア製品を製造することができる。パーソナルケア製品としては、滅菌溶液、ハンドソープ、手の滅菌用ローション、ボディクレンザー、ボディクレンジングゲル、ボディウォッシングソープ、パーソナルケアティッシュ、ティッシュペーパー、点鼻薬が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
本発明の単一の化合物または1以上の化合物の組合せは、本発明の薬剤を製造するために使用することができる。化合物(複数の化合物を含む)を、種々の薬学的に許容され得る支持体と組み合わせて、薬学的に許容され得る製剤の形成を容易にすることができる。これらの支持体としては、デンプン、デキストリン、Tween−80、カルボマー、セルロース、カルボキシメチルセルロースアルギン酸ナトリウム、グリセリン、プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ラウロカプラム、イソプロパノール、トロラミンおよびスパン60(モノステアリン酸ソルビタン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
また、単一の化合物または化合物の組合せは有効成分であり、この有効成分を滅菌溶液、ハンドソープ、手の滅菌用ローション、ボディクレンザー、ボディクレンジングゲル、ボディウォッシングソープ、パーソナルケアティッシュ、ティッシュペーパーまたは点鼻薬に加えて、皮膚上のウイルスを死滅させることができる。
【0027】
本発明の製剤およびパーソナルケア製品は、当該分野で公知の従来の方法で製造することができる。
【0028】
化合物及び/又はかかる化合物を含む組成物は、HPV6/11、16/18ウイルスを効果的に死滅させるか、または予防することができ、HPVウイルス感染の治療薬剤を製造するために使用して、尖圭コンジローマ、膣炎、子宮頸管炎、子宮頸部びらんを治療し、子宮頸癌の治療を助けることができる。本発明は、リアルタイム定量的蛍光PCRを用いて、試料中のHPVの量を検出して、化合物およびそれらの治療効果をスクリーニングする。この方法は、いくつかの刊行物において報告されている(Youling、Cai、Prevention of Chinese venereal disease and cancer、2002年、8:2、108頁、Yuansheng、Wu、Ruiqiang、Qu、Practical Chinese and western medicine clinics、2003年、3:2、1頁)。
【発明の効果】
【0029】
生体外で長時間培養することができる肝臓腫瘍細胞系2.2.15は、最も一般的に使用されるB型肝炎の細胞アッセイモデルである。これは、本発明において、HBsAgおよびHBeAgの細胞分泌に対する本発明の化合物の効果を試験するために使用される。試験結果から、本発明のヒドロキシ安息香酸エステルおよびその類似体の効果が、ヒドロキシ安息香酸およびその類似体のものより優れていることが示される。
【0030】
本発明の化合物のいくつかは、その用量範囲において非毒性の食品添加物である。HPVまたはHSVに感染した患者の臨床試験から、ヒドロキシ安息香酸エステルおよびその類似体が、ウイルス感染に対して、ヒドロキシ安息香酸およびその類似体よりも高い治療効果を有することが示された。
【0031】
ヒドロキシ安息香酸エステルは、ヒドロキシ安息香酸よりも安定している。実験から、没食子酸プロピルが、特に人体の弱アルカリ性条件(pH7.4)または腸のアルカリ性条件(pH8.6)にあるときに、没食子酸よりも安定していることが示された。分光分析によって示されるように、pH6.8〜8.6の条件下で、ヒドロキシ安息香酸溶液は、ヒドロキシ安息香酸エステルよりも短い時間で、無色から黄色に変化した。
【0032】
一方で、ヒドロキシ安息香酸エステルの抗ウイルス活性は、その対応する酸のものよりも高い。例えば、没食子酸プロピルの抗ウイルス活性は、没食子酸のものよりも約1倍高い。本願の実施例中に示されるデータから、ヒドロキシ安息香酸エステルが、ヒドロキシ安息香酸のプロドラッグほど効かなかったことが実証された。したがって、本発明の化合物は、品質が調整され顕著な治療効果を利点とする抗ウイルス薬またはパーソナルケア製品にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するために示すものであるが、これによって本発明の範囲を限定するものと解釈されるものてはない。
【0034】
本発明において使用される物質(>99%の含有量)およびそれらの供給業者は以下のとおりである。
物質/供給業者
p−ヒドロキシ安息香酸/Sinopharm Chemical Reagent Co., Ltd.
p−ヒドロキシ安息香酸エチル/GuangZhou Gases Factory Co., Ltd.
2,3−ジヒドロキシ安息香酸/Taizhou Zhongda Chemical Co., Ltd.
2,3−ジヒドロキシ安息香酸メチル/Taizhou Zhongda Chemical Co., Ltd.
2,4−ジヒドロキシ安息香酸/Taizhou Zhongda Chemical Co., Ltd.
2,4−ジヒドロキシ安息香酸メチル/Taizhou Zhongda Chemical Co., Ltd.
3,4−ジヒドロキシ安息香酸/Taizhou Zhongda Chemical Co., Ltd.
3,4−ジヒドロキシ安息香酸メチル/Taizhou Zhongda Chemical Co., Ltd.
2,3,4−トリヒドロキシ安息香酸/Nanjing Longyuan Natural Polyphenol Synthesis Factory
没食子酸/Zhejiang Ouhai Chemical Reagent Co., Ltd.
没食子酸プロピル/Lianyungang Hongqi Chemical Plant
没食子酸エチル/Nanjing Longyuan Natural Polyphenol Synthesis Factory
没食子酸メチル/Nanjing Longyuan Natural Polyphenol Synthesis Factory
没食子酸オクチル/Nanjing Longyuan Natural Polyphenol Synthesis Factory
没食子酸ドデシル/Nanjing Longyuan Natural Polyphenol Synthesis Factory
組換えヒトインターフェロンα−2βゲル/SIU-FUNG USTC Pharmaceutical Co.,Ltd.
ポリイノシン酸/Guangdong Kaiping Biochemical Pharmaceutical Co., Ltd.
【実施例1】
【0035】
抗HPVマイクロエマルションの調製
20mlの1,2−プロピレングリコール、15mlのTween−80および5mlのアゾンを混合し、適当な量の滅菌蒸留水を加えて、外用のための溶液100mlを得た。各10gの安息香酸、サリチル酸、安息香酸およびサリチル酸の組合せ、p−ヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、3,4−ジヒドロキシ安息香酸メチル、没食子酸、没食子酸ドデシル、没食子酸オクチル、没食子酸プロピル、没食子酸エチル、没食子酸メチル、2,4−ジヒドロキシ安息香酸メチルを、50mlのそれぞれの外用のための溶液に加えた。溶液のpH値を5.5に調節した。次いで、適量の外用のための溶液を加えて、本発明の化合物または対照群を10%の含む100mlのマイクロエマルションを得た。
【実施例2】
【0036】
没食子酸プロピルを含む抗HPV注射液の調製
10gの没食子酸プロピル、8.5gの塩化ナトリウム、10mlの1,2−プロピレングリコールおよび10mlのTween−80を混合し、滅菌蒸留水中に溶解させて最終体積を100mlとした。溶液のpH値を7.4に調節した。次いで、溶液をろ過し、カプセル化し、100℃で30分間滅菌して、没食子酸プロピルの注射のための溶液を得た。
【実施例3】
【0037】
没食子酸エチルを含む発泡錠の調製
0.25gの没食子酸エチル、0.01gのポリイノシン酸および0.45gの酒石酸を、80メッシュ篩で別々に篩い分け、95%エタノールで軟らかい物質にし、次いで、12メッシュ篩で篩い分けた。得られた湿った粒子を50℃で乾燥させた。0.65gの炭酸水素ナトリウム、0.02gのデキストリンおよび滅菌蒸留水を混合して、軟らかい物質を生成し、次いで、これを12メッシュ篩で篩い分け、50℃で乾燥させた。得られた物質を、最初に生成した乾燥した粒子と混合した。最後に、滅菌蒸留水を混合物に加え、加熱し、0.01gのPEG6000と混合して発泡錠にした。
【実施例4】
【0038】
定量的蛍光PCR分析による薬物スクリーニング
試料
実施例1で得られたマイクロエマルションを試験試料として使用し、生理食塩水を対照として使用した。
【0039】
HPV試料:尖圭コンジローマ試料を、臨床患者から採取した。試料を生理食塩水で洗浄して、血液を洗い流した。次いで、無菌条件下でそれらを小片に切断し、3倍体積の生理食塩水と混合し、均質化し、その後の使用のために−40℃で保存した。
【0040】
実験方法
50μlの各試験化合物のマイクロエマルションまたは50μlの生理食塩水を、50μlのHPV試料のホモジネートに加えた。混合物を、37℃で24時間、温浴中でインキュベートした。次いで、HPV6/11およびHPV16/18DNAの量を、Da An Gene Diagnostics Centerから購入したFQ−PCR診断キットを用いて検出した。従来のアルカリ開裂法によって0.2mlのDNAを各試料から抽出し、薄肉管にいれた。適当な量のプライマー、F−PROBE、DNTP、DNAポリメラーゼおよびバッファー溶液を当該管に加えた。ABI PRISM(商標)7700定量的蛍光PCR機械を用いた。以下の条件下で反応を行った。最初に93℃で2分間変性し、さらに変性及びアニーリングを93°で45秒間、55℃で120秒間行い、これを40回繰り返す。最後に、コンピュータによって結果を分析および計算し、表1に示した。
【0041】
【表1】

実験結果
試験化合物を加えた24時間後に、没食子酸オクチル、没食子酸プロピル、没食子酸エチル、没食子酸メチル、没食子酸がテストすると、FQ−PCRによってHPV6/11またはHPV16/18は検出されなかった。p−ヒドロキシ安息香酸エチルの群についても、HPV16/18は検出されなかった。しかし、p−ヒドロキシ安息香酸での試験において、HPV16/18が検出された。2,4−ジヒドロキシ安息香酸メチルおよび3,4−ジヒドロキシ安息香酸メチルでの試験において、少量のHPV16/18が検出された。対照的に、対照群、ならびに安息香酸、サリチル酸ならびに安息香酸およびサリチル酸の混合物、没食子酸ドデシルならびに3,4−ジヒドロキシ安息香酸での試験において、多量のHPV6/11およびHPV16/18が見られた。この結果から、本発明の化合物が、生体外において、HPVを効果的かつ迅速に排除することができることが示された。ヒドロキシ安息香酸エステルのアルコールアルキルの炭素原子の数は、12より少ないのがよい。
【実施例5】
【0042】
尖圭コンジローマの治療におけるヒドロキシ安息香酸エステルの臨床的使用
診断基準
以下の基準は、中華人民共和国衛生局の衛生防疫局(Health and Epidemic Prevention Bureau)発行の「性病防治手帳 (Handbook for Venereal Disease Prevention and treatment)」(第2版)から取った。
乳頭もしくはカリフラワーの形状または他の形状をした疣贅を有する軟らかい過形成が、陰門または肛門の皮膚の周りに見られた。5%酢酸ホワイト試験の結果は陽性であった。
【0043】
患者選択基準
臨床観察のために選択された患者は、上述の基準を満たさなければならない。その上、それらの皮膚病変の直径は、1cmに等しいか、または1cm未満であるべきである。また、患者は、観察前の2週間、疾患のためのいかなる治療も受けなかった。真菌、トリコモナス、細菌感染もしくは他の合併症、慢性疾患、深刻な肝疾患および腎疾患を有する患者、または妊娠もしくは授乳中の女性は選択しなかった。女性に対する治療は、月経期間には行わなかった。
【0044】
実験方法
50人の認定された患者を選択し、無作為に5つの群に分けて、それぞれp−ヒドロキシ安息香酸、没食子酸、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、没食子酸プロピルおよび組換えヒトインターフェロンα−2βゲルで試験した。p−ヒドロキシ安息香酸、没食子酸、p−ヒドロキシ安息香酸エチルおよび没食子酸プロピルの試料を、実施例1に記載されているように調製した。患部に1日3回、朝、正午および夜に、試験試料で患者を処置した。試料を適用して疣贅を覆い、患者に、治療部位を露出させ、20分間動かないよう指示した。
【0045】
治療効果の基準
観察時間:8日間。8日後に治癒しなかった患者は試験試料をさらに12週間使用し続け、その予後を12週間の間追跡した。
【0046】
観察項目:治療の前に、疣贅の位置、形状、大きさおよび数を注意深く観察し、書き留めた。
【0047】
「回復した」:全ての皮膚病変が消えた
「明らかな効果」:70%を超える皮膚病変が消えた
「改善された」:30%を超える皮膚病変が消えた
「効果なし」:30%未満の皮膚病変が消えるか、または元々の皮膚病変が変化しない、もしくはさらに拡大した
臨床結果を表2に示した。
【表2】

結果から、尖圭コンジローマの治療における最良の薬物と考えられた組換えヒトインターフェロンα−2βゲルでも、疣贅を排除するのに少なくとも4週間を要することが示された。統計分析から、p−ヒドロキシ安息香酸エチルおよび没食子酸プロピルの効果が、p−ヒドロキシ安息香酸および没食子酸のものよりも有意に優れていることが示された。組換えヒトインターフェロンα−2βゲルと比較した場合、p−ヒドロキシ安息香酸エチルおよび没食子酸プロピルは、より明らかな効果を有した。また、本発明の化合物は、いかなる明らかな皮膚刺激も引き起こさなかった。唯一の副作用は、何人かの患者が、化合物を使用したときに灼熱感を経験する場合があったことであった。
【実施例6】
【0048】
B型肝炎2.2.15細胞系によるHBsAgの分泌に対する、ヒドロキシ安息香酸エステル類似体の阻害効果
実験材料
B型肝炎2.2.15細胞系を、HBV DNA(Institute of Biochemistry and Cell Biology of Shanghai Institute for Biological SciencesまたはNational Center for Drug Screeningから購入した)で形質転換し、抗HBV薬化合物をスクリーニングするための細胞モデルとして使用した(Chinese Journal Of Integrated Traditional and Western Medicine on Liver Diseases、2004年、14(3):158頁参照)。細胞培地DMEM(GIBCO Company)、ウシ胎仔血清(Hangzhou Siji Qing Biochemical Manufacturer)、G418(GIBCO Company)、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド(Sigma)、HBsAgおよびHBeAg診断キット(Shanghai Kehua Bio−engineering Co.、Ltd)。
【0049】
実験方法
毒性試験の結果に従って、下記の表3に挙げられるヒドロキシ安息香酸エステル類似体を、20mlの1,2−プロピレングリコールおよび15mlのTween−80を含む混合物に溶解させ、滅菌生理食塩水で希釈して、2μmol/mlの試験化合物にした。次いで、これを、等しい体積で細胞培地と混合して、1μmol/mlの試験化合物を含む溶液を得た。1mlあたり1×10個の細胞の濃度の細胞を、24ウェルプレートに、1ml/ウェルで接種した。試験の3日後に、細胞培養混合物由来の上清を収集した。HBsAgおよびHBeAgの阻害率の結果を、表3に挙げる。
【0050】
実験結果
没食子酸、没食子酸プロピル、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸エチルは、2.2.15細胞によるHBsAgおよびHBeAgの分泌に対して、阻害効果を有した。没食子酸プロピルおよび3,4−ジヒドロキシ安息香酸エチルによる阻害は、没食子酸および3,4−ジヒドロキシ安息香酸よりも効果的であった。
【表3】

【実施例7】
【0051】
臨床試験におけるHSV感染の外用治療
HSV感染があると臨床的に診断された22人の患者を、無作為に選択し、2つの群に分けた。アシクロビル軟膏、および実施例1に記載されているように調製した没食子酸プロピルを含むマイクロエマルションを、1日3回、それぞれ2つの群の患者の患部に適用した。
【0052】
結果から、没食子酸プロピルを用いることによる回復の平均時間は3日間であるが、アシクロビル軟膏での治療の回復の平均時間は5.5日間であることが示された。HSV感染の治療において、没食子酸プロピルマイクロエマルションは、アシクロビル軟膏よりも効果的であった。
【実施例8】
【0053】
液体ハンドクレンザーの調製
下記の表4に挙げられる割合に従って、ミリスチル硫酸ナトリウム、1,2−プロピレングリコール、4−クロロ−3,5−ジメチルフェノール、トリクロサンおよび芳香物質を混合し、5%まで混合物に水を加えた。次いで、成分が完全に溶解するまで、撹拌しながら混合物を80℃に加熱した。得られた溶液を室温まで冷却した。p−ヒドロキシ安息香酸エチルを加え、撹拌しながら溶液に溶解させた。NaOHまたはHClで、溶液のpH値を5.0に調節した。次いで、滅菌蒸留水を加えて、生成物を得た。
【表4】

【実施例9】
【0054】
没食子酸プロピルおよび没食子酸の安定性試験
20mlの1,2−プロピレングリコール、15mlのTween−80および5mlのアゾンを混合し、滅菌蒸留水を加えて体積を100mlにした。NaOHまたはHClで溶液のpH値をpH6.8に調節して、マイクロエマルションを得た。10gの没食子酸プロピルおよび10gの没食子酸を、それぞれマイクロエマルションに溶解させ、十分混合した。10mlの各マイクロエマルションを、ふた付きの透明ガラスチューブに加えた。溶液は両方とも透明であった。400〜500nmでの2つの溶液の吸光度を分光光度法で測定し、それらの吸光度は0.15未満であった。2つの溶液は室温で30日間維持されると、没食子酸溶液は淡褐色に変化したが、没食子酸プロピル溶液は無色のままであった。再度分光光度法によって測定すると、没食子酸溶液の吸光度は1.2であり、没食子酸プロピル溶液のものは0.4であった。このことから、没食子酸プロピルが、溶液中で、没食子酸よりも安定していることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のヒドロキシ安息香酸エステルおよびその類似体を用いて、ウイルス感染を予防および治療するため、特に、B型肝炎、単純ヘルペス、尖圭コンジローマ、膣炎、子宮頸管炎および子宮頸部びらん等の、ヒトおよび動物におけるHBV、HPVまたはHSV感染に関連した疾患のための、医薬組成物を調製することができる。本発明において開示されるヒドロキシ安息香酸エステルおよびその類似体は、公知のヒドロキシ安息香酸およびその類似体よりも効果的で安定している。ヒドロキシ安息香酸エステルおよびその類似体を補助薬とともに調製すると、種々の医薬およびパーソナルケア製品にすることができる。
【0056】
本発明を、一般的用語および特定の実施例で詳細に上述してきた。当業者は、本願の記載に基づいて、容易に改変または改良することができる。したがって、本発明に基づいた関連のある改変形態および改良形態は、本発明の範囲に属するものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(I)によって示され、
【化2】

式中、RはC1−11アルキル基であり、R、R、R、R、Rは、独立して、OHまたはHであり、少なくとも1つはOHであるが、サリチル酸塩は排除される、ウイルス感染の予防および治療用の薬剤の製造のためのヒドロキシ安息香酸エステルおよびその類似体の使用。
【請求項2】
前記ウイルス感染が、ヒトおよび動物におけるHBV、HPVまたはHSV感染であることを特徴とする請求項1記載のウイルス感染の予防および治療用の薬剤の製造のためのヒドロキシ安息香酸エステルおよびその類似体の使用。
【請求項3】
前記ウイルス感染が、B型肝炎、尖圭コンジローマ、単純ヘルペス、膣炎、子宮頸管炎および子宮頸部びらんであることを特徴とする請求項1又は2記載のウイルス感染の予防および治療用の薬剤の製造のためのヒドロキシ安息香酸エステルおよびその類似体の使用。
【請求項4】
前記ウイルス感染の予防および治療のための薬剤が子宮脛癌の治療に使用されるものであることを特徴とする請求項1又は2記載のウイルス感染の予防および治療用の薬剤の製造のためのヒドロキシ安息香酸エステルおよびその類似体の使用。
【請求項5】
前記RはC1−8アルキル基であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のウイルス感染の予防および治療用の薬剤の製造のためのヒドロキシ安息香酸エステルおよびその類似体の使用。
【請求項6】
前記RはC1−3アルキル基であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のウイルス感染の予防および治療用の薬剤の製造のためのヒドロキシ安息香酸エステルおよびその類似体の使用。
【請求項7】
前記、R、R、R、R、Rの少なくとも二つがOHであること特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のウイルス感染の予防および治療用の薬剤の製造のためのヒドロキシ安息香酸エステルおよびその類似体の使用。
【請求項8】
前記、R、R、R、R、Rの少なくとも三つがOHであること特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載のウイルス感染の予防および治療用の薬剤の製造のためのヒドロキシ安息香酸エステルおよびその類似体の使用。
【請求項9】
前記ヒドロキシ安息香酸エステルおよびその類似体が、4−ヒドロキシ安息香酸エステル、2,4−ジヒドロキシ安息香酸エステル、3,4−ジヒドロキシ安息香酸エステル、2,3,4−トリヒドロキシ安息香酸エステル、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸エステルまたは3,4,6−トリヒドロキシ安息香酸エステルからなるグループから選択されるものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のウイルス感染の予防および治療用の薬剤の製造のためのヒドロキシ安息香酸エステルおよびその類似体の使用。
【請求項10】
前記ヒドロキシ安息香酸エステルおよびその類似体が、2,3,4−トリヒドロキシ安息香酸エステル、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸エステルまたは3,4,6−トリヒドロキシ安息香酸エステルからなるグループから選択されるものであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のウイルス感染の予防および治療用の薬剤の製造のためのヒドロキシ安息香酸エステルおよびその類似体の使用。
【請求項11】
前記ヒドロキシ安息香酸エステルおよびその類似体が、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸エステルであることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のウイルス感染の予防および治療用の薬剤の製造のためのヒドロキシ安息香酸エステルおよびその類似体の使用。
【請求項12】
前記化合物および/またはかかる化合物を有効成分として含む組成物は、注射または経口製剤のための種々のアジュバントとともに、粉末、溶液、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、液体に調整され、あるいは、皮膚粘膜製剤のための種々のアジュバントとともに、軟膏、ゲル、洗液、錠剤、坐剤、ペッサリー、スプレーまたは他の薬学的に許容され得る調製物に調製されているものであることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のウイルス感染の予防および治療用の薬剤の製造のためのヒドロキシ安息香酸エステルおよびその類似体の使用。
【請求項13】
前記化合物および/またはかかる化合物を有効成分として含む組成物が、パーソナルケア製品として使用されるものであり、かかるパーソナルケア製品がハンドソープ、手の滅菌用ローション、ボディクレンザー、ボディクレンジングゲル、ボディウォッシングソープ、パーソナルケアティッシュ、ティッシュペーパー、点鼻薬またはこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のウイルス感染の予防および治療用の薬剤の製造のためのヒドロキシ安息香酸エステルおよびその類似体の使用。



【公表番号】特表2009−502985(P2009−502985A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524341(P2008−524341)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【国際出願番号】PCT/CN2006/001792
【国際公開番号】WO2007/014515
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(508034820)ションホア (グアーンジョウ) ファーマスーティカル サイエンス アンド テクノロジー カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】