説明

エアバッグ、エアバッグ装置及びエアバッグの排気方法

【課題】エアバッグの膨張展開中における圧力損失を低減することができる、又は乗員の体格に合わせてエアバッグ装置の衝撃吸収力を効率よく発揮させることができるエアバッグ、エアバッグ装置及びエアバッグの排気方法を提供する。
【解決手段】本発明のエアバッグ装置は、所定の条件でガスを発生させるガス発生器1と、ガス発生器1に接続されて膨張展開されるエアバッグ2と、エアバッグ2を収容するリテーナ3と、を備え、エアバッグ2は、エアバッグ2の一部に外部に突出した部分を形成する凸部4と、凸部4に形成されたベントホール5と、一端が凸部4に接続され他端がエアバッグ2の内部に接続されたストラップ6と、ストラップ6の他端をエアバッグ2の内部に案内するための挿通孔7と、を備え、ベントホール5が、ストラップ6で凸部4を引っ張った時に、凸部4とエアバッグ2とが重なり合う領域に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に搭載されるエアバッグ、エアバッグ装置及びエアバッグの排気方法に関し、特に、エアバッグのベントホールの開閉手段に特徴を有するエアバッグ、エアバッグ装置及びエアバッグの排気方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、衝突時や急減速時等にエアバッグを車内で膨張展開させて乗員に生ずる衝撃を吸収するためのエアバッグ装置が搭載されているのが一般的になってきている。かかるエアバッグ装置には、ステアリングに内装された運転席用エアバッグ装置、インストルメントパネルに内装された助手席用エアバッグ装置、車両側面部又はシートに内装されたサイドエアバッグ装置、ドア上部に内装されたカーテンエアバッグ装置、乗員の膝部に対応したニーエアバッグ装置、フード下に内装された歩行者用エアバッグ装置等、種々のタイプが開発・採用されている。これらのエアバッグ装置は、一般に、所定の条件でガスを発生させるガス発生器と、ガス発生器に接続されて膨張展開するエアバッグと、エアバッグを収容するリテーナと、を備えている。また、エアバッグを形成する外殻には、ベントホールと呼ばれる排気口が形成されている場合もある。このベントホールは、エアバッグの内圧が高くなり過ぎないようにしたり、乗員がエアバッグに接触した際にエアバッグ内のガスを排気して衝撃を緩和したりする機能を有する。
【0003】
かかるベントホールが形成されたエアバッグ装置では、エアバッグの膨張展開中にベントホールからガスが排気されてしまうため圧力損失が大きいという問題があった。かかる問題点を解決するためのエアバッグ装置には、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載されたものが既に提案されている。
【0004】
特許文献1に記載されたエアバッグ装置は、一端をエアバッグの天井部の内周面に固着し、他端をベントホールの近傍でエアバッグの内周面側から外周面側に挿通させてベントホールを塞ぐようにベントホールの周縁部に固着したストラップを有している。このストラップは、エアバッグの膨張展開中は引っ張られてベントホールを塞ぐように作用し、エアバッグに乗員が接触すると緩んでベントホールを開口するように作用している。
【0005】
また、特許文献2に記載されたエアバッグ装置は、特許文献1に記載されたものと類似の構成のもの(例えば、FIG.5)の他に、エアバッグの外殻に排気用チューブを接続したものも開示されている(例えば、FIG.11A,11B)。この排気用チューブは、ストラップによりエアバッグの内側に引っ張られており、ストラップを固定するアンカーを解除すると排気用チューブがエアバッグの外側に開放されてベントホールとして作用するようになっている。
【特許文献1】特開平6−127330号公報
【特許文献2】US6,648,371B2号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題の一つは、特許文献1や特許文献2と同様に、エアバッグの膨張展開中における圧力損失を低減することであり、特許文献1や特許文献2に開示された構成とは異なる構成のエアバッグ、エアバッグ装置及びエアバッグの排気方法を提供することにある。
【0007】
ところで、エアバッグ装置の衝撃吸収力を効率よく発揮させるためには、乗員の体格の大小(特に体重の軽重)に合わせてエアバッグを膨張展開させたり、エアバッグ内のガスを排気させたりすることが必要となる。例えば、体格が大きく体重が重い乗員の場合には、エアバッグに衝突する際の荷重が大きいため、エアバッグの内圧を高くしておく必要があり、またベントホールからガスを排気する量も少なくしておく必要がある。一方、体格が小さく体重が軽い乗員の場合には、エアバッグに衝突する際の荷重が小さいため、エアバッグの内圧を低くしておく必要があり、またベントホールからガスを排気する量も多くしておく必要がある。そこで、エアバッグにガスを供給するガス発生器を二段式にして、体重が軽い乗員の場合には一段目のガス発生器を作動させ、体重が重い乗員の場合には両方のガス発生器を作動させるようにしているエアバッグ装置も存在している。しかしながら、エアバッグ内のガスの排気に関しては、両方のケースに対応しうるベントホールの径の大きさを折衷案的に設計しているのが現状である。
【0008】
すなわち、本発明が解決しようとする別の課題は、乗員の体格に合わせてエアバッグ装置の衝撃吸収力を効率よく発揮させることができるエアバッグ、エアバッグ装置及びエアバッグの排気方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、内部にガスが供給されて膨張展開するエアバッグにおいて、前記エアバッグに形成されたベントホールと、一端が前記エアバッグに接続され他端が前記エアバッグの構成部品又は取付部品に接続されたストラップと、を備え、前記ベントホールは、前記ストラップで前記エアバッグを引っ張った時に、前記エアバッグの表面が重なり合う領域に配置されている、ことを特徴とするエアバッグが提供される。ここで、前記エアバッグが変形して前記ベントホールが開くように構成されていることが好ましい。
【0010】
また、本発明によれば、内部にガスが供給されて膨張展開するエアバッグにおいて、前記エアバッグの一部に外部に突出した部分を形成する凸部と、該凸部又は前記エアバッグに形成されたベントホールと、一端が前記凸部に接続され他端が前記エアバッグの構成部品又は取付部品に接続されたストラップと、を備え、前記ベントホールは、前記ストラップで前記凸部を引っ張った時に、前記凸部と前記エアバッグとが重なり合う領域に配置されている、ことを特徴とするエアバッグが提供される。ここで、前記凸部が起立して前記ベントホールが開くように構成されていることが好ましい。また、前記凸部内に前記エアバッグからガスが流入して前記凸部の内圧が高まり、前記凸部が起立するように構成されていてもよい。
【0011】
前記凸部は、前記ベントホールが形成された第一パネルと該第一パネルに連接された第二パネルとを有し、該第一パネル及び該第二パネルが前記エアバッグに形成された取付孔に縫合されることによって形成されていてもよい。また、前記凸部は、前記エアバッグが、乗員側に配置されるフロントパネルと車両構造物側に配置されるリアパネルとを有し、該フロントパネル及び該リアパネルの外周部に形成された突出部を縫合することによって形成されていてもよい。
【0012】
また、前記エアバッグの外面には前記ストラップの他端を前記エアバッグの内部に案内するための挿通孔が形成されていてもよいし、前記エアバッグの内面には前記ストラップの他端を案内するための挿通部が形成されていてもよい。また、前記エアバッグは、乗員の左側に膨張展開される左半側エアバッグと、乗員の右側に膨張展開される右半側エアバッグと、を有し、該左半側エアバッグ及び該右半側エアバッグのそれぞれに前記ベントホールが形成されていてもよい。さらに、前記エアバッグは、前記領域以外の場所に形成された第二ベントホールを有していてもよい。なお、前記構成部品は、例えば、前記エアバッグを形成するアウターパネル、前記エアバッグ内に配置されるテザー又は前記エアバッグ内に配置されるインナーパネルのいずれかである。また、前記取付部品は、例えば、前記エアバッグを収容するリテーナ、該リテーナに連結されたバックプレート又は前記リテーナに連結されたカバーのいずれかである。
【0013】
また、本発明によれば、所定の条件でガスを発生させるガス発生器と、該ガス発生器に接続されて膨張展開されるエアバッグと、該エアバッグを収容するリテーナと、を備えたエアバッグ装置において、前記エアバッグは、前記エアバッグに形成されたベントホールと、一端が前記エアバッグに接続され他端が前記エアバッグの構成部品又は取付部品に接続されたストラップと、を備え、前記ベントホールは、前記ストラップで前記エアバッグを引っ張った時に、前記エアバッグの表面が重なり合う領域に配置されている、ことを特徴とするエアバッグが提供される。ここで、前記エアバッグが変形して前記ベントホールが開くように構成されていることが好ましい。
【0014】
また、本発明によれば、所定の条件でガスを発生させるガス発生器と、該ガス発生器に接続されて膨張展開されるエアバッグと、該エアバッグを収容するリテーナと、を備えたエアバッグ装置において、前記エアバッグは、前記エアバッグの一部に外部に突出した部分を形成する凸部と、該凸部又は前記エアバッグに形成されたベントホールと、一端が前記凸部に接続され他端が前記エアバッグの構成部品又は取付部品に接続されたストラップと、を備え、前記ベントホールは、前記ストラップで前記凸部を引っ張った時に、前記凸部と前記エアバッグとが重なり合う領域に配置されている、ことを特徴とするエアバッグが提供される。ここで、前記凸部が起立して前記ベントホールが開くように構成されていることが好ましい。また、前記凸部内に前記エアバッグからガスが流入して前記凸部の内圧が高まり、前記凸部が起立するように構成されていてもよい。
【0015】
前記凸部は、前記ベントホールが形成された第一パネルと該第一パネルに連接された第二パネルとを有し、該第一パネル及び該第二パネルが前記エアバッグに形成された取付孔に縫合されることによって形成されていてもよい。また、前記凸部は、前記エアバッグが、乗員側に配置されるフロントパネルと車両構造物側に配置されるリアパネルとを有し、該フロントパネル及び該リアパネルの外周部に形成された突出部を縫合することによって形成されていてもよい。
【0016】
また、前記エアバッグの外面には前記ストラップの他端を前記エアバッグの内部に案内するための挿通孔が形成されていてもよいし、前記エアバッグの内面には前記ストラップの他端を案内するための挿通部が形成されていてもよい。また、前記エアバッグは、乗員の左側に膨張展開される左半側エアバッグと、乗員の右側に膨張展開される右半側エアバッグと、を有し、該左半側エアバッグ及び該右半側エアバッグのそれぞれに前記ベントホールが形成されていてもよい。さらに、前記エアバッグは、前記領域以外の場所に形成された第二ベントホールを有していてもよい。なお、前記構成部品は、例えば、前記エアバッグを形成するアウターパネル、前記エアバッグ内に配置されるテザー又は前記エアバッグ内に配置されるインナーパネルのいずれかである。また、前記取付部品は、例えば、前記エアバッグを収容するリテーナ、該リテーナに連結されたバックプレート又は前記リテーナに連結されたカバーのいずれかである。
【0017】
前記エアバッグ装置は、前記ストラップの長さを一定に保持可能かつ前記ストラップを開放可能なストラップ保持装置と、該ストラップ保持装置に前記ストラップを開放する解除信号を発信する制御装置と、を備えていてもよい。
【0018】
前記制御装置は、乗員が前記エアバッグに接触した時又は乗員の体重が所定の基準値よりも軽い場合に前記ガス発生器が作動した時に前記解除信号を発信するようにしてもよい。また、前記制御装置は、前記エアバッグが前記第二ベントホールを有し、乗員の体重が所定の基準値よりも重い場合に、前記解除信号を発信しないようにしてもよい。また、前記制御装置は、前記ガス発生器が第一ガス発生器と第二ガス発生器とを有し、該第一ガス発生器のみ作動した場合に、略同時に前記解除信号を発信するようにしてもよい。さらに、前記制御装置は、前記エアバッグが前記第二ベントホールを有し、前記ガス発生器が第一ガス発生器と第二ガス発生器とを有し、該第一ガス発生器及び該第二ガス発生器の両方が作動した場合に、前記解除信号を発信しないようにしてもよい。
【0019】
前記ストラップ保持装置は、前記ストラップに形成された係合孔に係合可能なキャップと、該キャップを固定可能なホルダーと、該ホルダーに接続され前記キャップの固定を解除可能な解除装置と、該解除装置を作動させる解除信号を前記制御装置から受信するコネクタと、から構成されていてもよい。ここで、前記解除装置はガス発生器により構成してもよい。
【0020】
また、本発明によれば、内部にガスが供給されて膨張展開するエアバッグの排気方法において、前記エアバッグにベントホールを形成し、前記エアバッグを変形させることにより前記エアバッグの表面で前記ベントホールを閉じ、前記エアバッグを変形させることにより前記ベントホールを開いて前記エアバッグ内のガスを排気する、ことを特徴とするエアバッグの排気方法が提供される。
【0021】
また、本発明によれば、内部にガスが供給されて膨張展開するエアバッグの排気方法において、前記エアバッグの一部に外部に突出した凸部を形成し、該凸部又は前記エアバッグにベントホールを形成し、前記凸部を前記エアバッグの表面に押し付けて前記ベントホールを閉じ、前記凸部を前記エアバッグの表面から離して前記ベントホールを開き、前記エアバッグ内のガスを排気する、ことを特徴とするエアバッグの排気方法が提供される。
【発明の効果】
【0022】
上述した本発明のエアバッグ及びエアバッグ装置によれば、ベントホールをエアバッグの表面が重なり合う領域に配置したことにより、エアバッグをストラップで引っ張るだけでベントホールを閉じることができる。したがって、エアバッグの膨張展開中における圧力損失を低減することができる。また、前記エアバッグが変形して前記ベントホールが開くように構成したことにより、ストラップの張力を調整するだけでベントホールの開閉を調整することができる。したがって、乗員の体格に合わせてエアバッグの衝撃吸収力を調整することができる。
【0023】
また、上述した本発明のエアバッグ及びエアバッグ装置によれば、ベントホールをエアバッグと凸部とが重なり合う領域に配置したことにより、凸部をストラップで引っ張るだけでベントホールを閉じることができる。したがって、エアバッグの膨張展開中における圧力損失を低減することができる。また、前記凸部が起立して前記ベントホールが開くように構成したことにより、ストラップの張力を調整するだけでベントホールの開閉を調整することができる。したがって、乗員の体格に合わせてエアバッグ装置の衝撃吸収力を調整することができる。また、凸部の起立に際しエアバッグのガスを利用したことにより、ストラップを弛めるだけで凸部は自動的に起立し、ベントホールを開くことができる。
【0024】
また、凸部を第一パネルと第二パネルで構成してエアバッグに取り付けるようにしたことにより、容易にエアバッグにベントホールを備えた凸部を形成することができる。また、エアバッグがフロントパネルとリアパネルとから構成される場合に、フロントパネル及びリアパネルに突出部を形成して縫合したことによっても、容易にエアバッグにベントホールを備えた凸部を形成することができる。
【0025】
また、エアバッグに挿通孔又は挿通部を形成したことにより、ストラップを所定の接続位置まで案内することができるとともに、ベントホールを閉じる領域を容易に形成することができる。また、左半側エアバッグと右半側エアバッグを有するエアバッグ(いわゆるツインエアバッグ)の各バッグにベントホールを形成したことにより、エアバッグがツインエアバッグの場合であっても効果的にガスを排気することができる。さらに、本発明の手段によりベントホールを閉じる領域以外の場所に第二ベントホールを形成すれば、ベントホールの開閉及び第二ベントホールによりエアバッグ内のガス排気量を容易に調整することができ、乗員の体格に合わせてエアバッグ装置の衝撃吸収力を効率よく発揮させることができる。また、ストラップをエアバッグの構成部品又は取付部品に接続することにより、ベントホールを閉じる領域を容易に形成することができる。
【0026】
また、上述した本発明のエアバッグ装置によれば、ストラップ保持装置及び制御装置を設けたことにより、任意のタイミングでストラップを開放することができ、ベントホールのガス排気機能を発揮させることができる。
【0027】
また、制御装置が解除信号を発信するタイミングを乗員がエアバッグに接触した時と設定することにより、乗員がエアバッグに接触すると同時にエアバッグ内のガスを排気することができ、エアバッグの膨張展開中における圧力損失を低減しつつ衝撃吸収力を効果的に発揮させることができる。また、制御装置が解除信号を発信するタイミングを乗員の体重が軽い場合にエアバッグ装置のガス発生器が作動した時と設定することにより、エアバッグの内圧及びガス排気量を体重が軽い乗員に適した状態にすることができ、エアバッグ装置の衝撃吸収力を効率よく発揮させることができる。また、エアバッグが第二ベントホールを有するとともに乗員の体重が重い場合に、制御装置が解除信号を発信しないようにすることにより、エアバッグの内圧及びガス排気量を体重が重い乗員に適した状態にすることができ、エアバッグ装置の衝撃吸収力を効率よく発揮させることができる。
【0028】
また、エアバッグ装置のガス発生器が第一ガス発生器と第二ガス発生器とを有する場合において、第一ガス発生器のみが作動した場合に制御装置が解除信号を発信するように設定することにより、エアバッグの内圧及びガス排気量を体重が軽い乗員に適した状態にすることができ、エアバッグ装置の衝撃吸収力を効率よく発揮させることができる。また、エアバッグ装置のガス発生器が第一ガス発生器と第二ガス発生器とを有するとともにエアバッグが第二ベントホールを有する場合において、第一ガス発生器と第二ガス発生器の両方が作動した場合に制御装置が解除信号を発信しないように設定することにより、エアバッグの内圧及びガス排気量を体重が重い乗員に適した状態にすることができ、エアバッグ装置の衝撃吸収力を効率よく発揮させることができる。
【0029】
また、ストラップ保持装置を、キャップ、ホルダー、解除装置及びコネクタで構成したことにより、簡便な構造で、任意のタイミングでストラップを開放することができ、ベントホールのガス排気機能を発揮させることができる。また、解除装置をガス発生器で構成することにより、ストラップ保持装置を容易に製造することができるとともに、ストラップ保持装置を小型化することができる。
【0030】
上述した本発明のエアバッグの排気方法によれば、エアバッグの表面又は凸部でベントホールを閉じるようにしたことにより、容易にベントホールの開閉を調整することができ、エアバッグの膨張展開中における圧力損失を低減することができ、乗員の体格に合わせてエアバッグ装置の衝撃吸収力を発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図1〜図20を用いて説明する。ここで、図1は、本発明に係るエアバッグ装置の第一実施形態を示す側面断面図である。また、図2は、凸部の拡大図であり、(A)はベントホールが孔形状の場合、(B)はベントホールがスリット形状の場合、(C)は縫合部にベントホールを形成した場合、を示している。また、図3は、ストラップ保持装置を示す概略断面図であり、(A)は加圧タイプ、(B)はピストンタイプ、を示している。
【0032】
図1に示すエアバッグ装置は、所定の条件でガスを発生させるガス発生器1と、ガス発生器1に接続されて膨張展開されるエアバッグ2と、エアバッグ2を収容するリテーナ3と、を備え、エアバッグ2は、エアバッグ2の一部に外部に突出した部分を形成する凸部4と、凸部4に形成されたベントホール5と、一端が凸部4に接続され他端がエアバッグ2の内部に接続されたストラップ6と、ストラップ6の他端をエアバッグ2の内部に案内するための挿通孔7と、を備え、ベントホール5が、ストラップ6で凸部4を引っ張った時に、凸部4とエアバッグ2とが重なり合う領域に配置されている。ここで、ストラップ6の他端は、ストラップ6の長さを一定に保持可能かつストラップ6を開放可能なストラップ保持装置8に接続されている。なお、図1はベントホール5を閉じた状態を示している。
【0033】
ここで、図1に示すエアバッグ装置は、助手席用エアバッグ装置であり、助手席の前面に配置されたインストルメントパネル9の内部に格納されている。エアバッグ2は、ガス発生器1の作動により内部にガスが供給されると膨張展開を開始し、インストルメントパネル9の扉部9aを突き破ってフロントウィンドウ10に接触しながら車内に膨張展開するようになっている。リテーナ3は、インストルメントパネル9に形成されたフランジ部9bの係合孔にフック3bを引っ掛けることによって支持されている。また、リテーナ3は、固定金具3cによりインストルメントパネル9内の車内構造物に固定されている。なお、かかる構成は、助手席用エアバッグ装置の一例であり、本発明のエアバッグ装置はかかる構成に限定されるものではない。
【0034】
前記ガス発生器1は、一般にインフレータと称される部品であり、略円柱形状の外形をなし、エアバッグ2に内包された先端部の側周面にガス噴出口が形成されている。また、ガス発生器1は、リテーナ3の外形とリテーナ3に固定されるカバー3aとにより形成される空間に収容され固定されている。リテーナ3におけるカバー3a上部の空間にはエアバッグ2が収容される。なお、ガス発生器1とリテーナ3との間にバックプレート(図示せず)を介在させてガス発生器1をリテーナ3に固定する場合もある。ここで、リテーナ3、バックプレート、カバー3a等のエアバッグ2の取付に関与する部品を取付部品と称する。
【0035】
かかるガス発生器1は、図示しないECU(電子制御ユニット)に接続されており、加速度センサ等の計測値に基づいて制御されている。ECUが車両の衝突や急減速を感知又は予測すると、ガス発生器1はECUからの点火電流により点火され、ガス発生器1の内部に格納された薬剤を燃焼させてガスを発生させ、エアバッグ2にガスを供給する。また、乗員の体格が大きい場合や体重が重い場合と乗員の体格が小さい場合や体重が軽い場合とを区別し、エアバッグ2の内圧を変化させて体格差に応じた衝撃吸収力を作用させるために、ガス発生器1を2段式(第一ガス発生器と第二ガス発生器)で構成する場合もある。2段式のガス発生器1を採用した場合、乗員の体格が大きい場合や体重が重い場合には、1段目の第一ガス発生器と2段目の第二ガス発生器の両方を同時に作動させ、乗員の体格が小さい場合や体重が軽い場合には、1段目の第一ガス発生器のみを作動させるようになっている。なお、乗員の体格差はECUに接続されたシート荷重センサやシート位置センサ等により判断される。
【0036】
前記エアバッグ2は、膨張展開時に、乗員側に配置されるフロントパネル2aと、インストルメントパネル9(車両構造物)側に配置されるリアパネル2bと、から構成されるのが一般的である。フロントパネル2a及びリアパネル2bは、それぞれ略円板形状をなしており、これらの周縁部が内側から縫合されている。したがって、フロントパネル2a及びリアパネル2bが、エアバッグ2の内圧保持要素である外殻(アウターパネル)を形成している。なお、図示しないが、エアバッグ2の内部に、エアバッグ2の形状を整形するテザーや複数の連通した部屋に区切るインナーパネルを配設するようにしてもよい。ここで、エアバッグ2の外殻を形成するアウターパネル(例えば、フロントパネル2aやリアパネル2b)、テザー、インナーパネル等のエアバッグ2を構成する又は接続される部品を構成部品と称する。
【0037】
そして、図1に示すエアバッグ2は、外部に突出した部分を形成する凸部4を有し、凸部4にベントホール5が形成されている。凸部4は、図1に示すように、エアバッグ2のリアパネル2bに設けるようにするのが好ましい。勿論、エアバッグ2の形状によっては、凸部4をフロントパネル2aに設けるようにしてもよい。なお、ベントホール5は、凸部4とエアバッグ2の表面とが重なり合う領域に設けられていればよく、エアバッグ2側にベントホール5が設けられていてもよい。
【0038】
ここで、凸部4の構造について、図2を参照しつつ説明する。図2(A)に示す凸部4は、図1に示した凸部4のベントホール5を開いた状態を拡大したものである。図2(A)に示すように、凸部4は、ベントホール5が形成された第一パネル4aと、第一パネル4aに連接された第二パネル4bとを有し、第一パネル4a及び第二パネル4bがエアバッグ2に形成された取付孔2cに縫合されている。具体的には、第一パネル4a及び第二パネル4bは、各周縁部に形成された縫代4cどうしを重ね合わせて縫合されている。また、第一パネル4a及び第二パネル4bは、各裾部に形成された縫代4dと取付孔2cの周縁部とをそれぞれ重ね合わせて縫合されている。したがって、第一パネル4a及び第二パネル4bにより形成される凸部4の内部空間は、取付孔2cを介してエアバッグ2と連通している。また、ストラップ6は、第一パネル4a及び第二パネル4bの周縁部の縫合部に挟まれて一緒に縫い付けられている。このとき、ストラップ6の縫い付け位置は、ベントホール5が形成された第一パネル4aをバランスよくエアバッグ2の表面に押し付けるために、凸部4の頂部近傍にすることが好ましい。かかる構造の凸部4によれば、ストラップ6が開放されると、凸部4の内部空間にエアバッグ2内のガスが流入し、凸部4内の内圧が高まることで、凸部4はエアバッグ2の表面上で起立し、ベントホール5が開いた状態となり、ベントホール5からエアバッグ2内のガスを排気することができる。なお、凸部4の個数は任意であるが、図4〜図7の説明で述べるように、左右両側の2ヶ所に設けるのが一般的である。
【0039】
また、図2(A)に示すベントホール5は、凸部4を構成する第一パネル4aの表面の一部を切り欠いた丸孔形状をなしている。勿論、ベントホール5は、角孔形状やスロット形状に形成するようにしてもよい。ベントホール5の大きさは、エアバッグ2の大きさ等により任意に設計される。ここで、ベントホール5と第一パネル4aの周縁部との間の余肉は、ベントホール5を閉じた場合(ストラップ6の張力により凸部4をエアバッグ2の表面に押し付けた場合)のシール性能を向上させるために、例えば、10mm以上の幅とすることが好ましい。
【0040】
また、図2(B)に示す凸部4のベントホール5は、凸部4を構成する第一パネル4aの表面の一部に切り込みをいれたスリット形状をなしている。このように、ベントホール5をスリット形状にした場合であっても、凸部4の内圧によりスリットが開いた状態となり、図2(A)に示したベントホール5と同様の作用を奏する。なお、その他の部分については、図2(A)に示したものと基本的に同じ構成であるため詳細な説明を省略する。
【0041】
また、図2(C)に示す凸部4は、凸部4の外形を構成する第一パネル4aと第二パネル4bの縫合部の一部に縫合しない部分を形成することによってスリット形状のベントホール5を形成したものである。このように、凸部4の表面にスリット形状のベントホール5をした場合であっても、凸部4の内圧によりスリットが開いた状態となり、図2(A)に示したベントホール5と同様の作用を奏する。図2(C)に示した凸部4は、第一パネル4aと第二パネル4bの縫合部にベントホール5を形成したものであるため、図2(A)に示した凸部4を取付孔2cに沿って90°回転させた状態でエアバッグ2に取り付けている。なお、その他の部分については、図2(A)に示したものと基本的に同じ構成であるため詳細な説明を省略する。
【0042】
また、図1に示すエアバッグ2は、凸部4に接続されたストラップ6を内部に案内するための挿通孔7を有している。ここで、ストラップ6は、紐材又は織布材により構成されており、例えば、エアバッグ装置に一般的に使用されるテザーやシートベルト装置に使用されるウェビングにより構成される。挿通孔7は、ストラップ6を通すことができる大きさ・形状であればよく、孔形状であってもスリット形状であってもよい。エアバッグ2の外部から挿通孔7を経由して内部に案内されたストラップ6は、図1に示すように、ストラップ保持装置8に接続されている。ストラップ保持装置8はリテーナ3に固定されているため、ストラップ6はストラップ保持装置8を介してリテーナ3に接続されていることとなる。なお、最終的に、ストラップ6の他端は、図4,図6,図7の説明で述べるように、エアバッグ2の内面に接合されていてもよい。また、図示しないが、エアバッグ2の外周面にベルト通しを設け、ストラップ6をエアバッグ2の外周面に沿ってリテーナ3側に案内し、その端部をエアバッグ2又はリテーナ3に固定するようにしてもよい。
【0043】
ここで、ストラップ保持装置8の構造について、図3を参照しつつ説明する。図3(A)及び図3(B)に示すストラップ保持装置8は、ストラップ6に形成された係合孔6cに係合可能なキャップ31と、キャップ31を固定可能なホルダー32と、ホルダー32に接続されキャップ31の固定を解除可能な解除装置33と、解除装置33を作動させる解除信号を制御装置34から受信するコネクタ35と、から構成されている。なお、制御装置34は、ガス発生器1を制御するECU(電子制御ユニット)であってもよいし、ストラップ保持装置8専用のものであってもよい。
【0044】
図3(A)に示すストラップ保持装置8は、キャップ31の外周面に形成された突起31aと、ホルダー32の内周面に形成された略L字状の溝32aと、を有し、突起31aを溝32aに係合させることによってキャップ31をホルダー32に固定している。また、ホルダー32の内部には解除装置33を構成するマイクロガスジェネレータ(以下、「MGG」と称する。)が埋設されている。ホルダー32の内周面と解除装置33(MGG)の外周面には、それぞれネジが切れらており、それらを螺合させることによって解除装置33(MGG)をホルダー32に固定している。また、ホルダー32の内部には段差部が形成されており、段差部に解除装置33(MGG)を当接させることによって、キャップ31と解除装置33(MGG)との間に所定の隙間32bを形成している。この隙間32bに解除装置33(MGG)の先端部からガスを吹き込むことによってキャップ31を加圧し、突起31aを溝32aから離脱させ又は突起31aをせん断し、キャップ31をホルダー32から開放するようになっている。このように解除装置33(MGG)により直接的にキャップ31を加圧して開放するストラップ保持装置8を加圧タイプと称する。
【0045】
MGGは、小型のガス発生器であり、基本的にガス発生器1と同じ構造である。すなわち、MGGは、制御装置34からの点火電流(解除信号)により点火され、内部に格納された薬剤を燃焼させてガスを発生させる。また、コネクタ35は、解除装置33(MGG)の後端部の窪みに押込又は螺合により固定されており、制御装置34からの点火電流(解除信号)を解除装置33(MGG)に伝達するようになっている。なお、コネクタ35と制御装置34とは、ハーネス36により電気的に接続されている。また、ホルダー32の中間部にはフランジ部32cが形成されており、フランジ部32cとリテーナ3とをボルト・ナット等の固定具37で連結することによって、ホルダー32をリテーナ3に固定している。
【0046】
図3(B)に示すストラップ保持装置8は、キャップ31の固定方法と解除装置33の構造が図3(A)に示したストラップ保持装置8と異なるものである。図3(B)に示す解除装置33は、ホルダー32に連接されたケース33aと、ケース33aに固定されたMGG33bと、ケース33aにスライド可能に配置されたピストン33cと、ピストン33cとケース33aとを連結するバネ33dと、ピストン33cの先端に接続されたピン33eと、から構成されている。ピストン33cは、ケース33a内に形成された略筒状のシリンダ部33fに収容されており、バネ33dの作用によりピン33eを突出する方向に付勢されている。MGG33bとピストン33cとの間には隙間33gが形成されており、この隙間33gにMGG33bのガスが供給される。また、キャップ31には、ピン33eを挿通可能な留孔31bが形成されている。また、ホルダー32の外周面には、留孔31bに挿通されたピン33eの先端を支持する係合穴32dが形成されている。したがって、隙間33gにガスが供給される前は、ピン33eによりキャップ32を保持することができる。そして、隙間33gにガスが供給されると、ガスはピストン33cを押圧し、ピン33eを引き込む方向にピストン33cをスライドさせ、ピン33eがキャップ31から引き抜かれることとなり、キャップ31が開放される。その他の部分については、図3(A)に示したものと基本的に同じ構成であるため詳細な説明を省略する。このように解除装置33(MGG)によりピストン33cを加圧してキャップ31を開放するストラップ保持装置8をピストンタイプと称する。
【0047】
次に、ストラップ保持装置8の作用について、図4及び図5を参照しつつ説明する。ここで、図4は、ストラップの端部をエアバッグに固定した場合におけるストラップ保持装置の作用を示す説明図であり、(A)はベントホールを閉じた状態、(B)はベントホールを開いた状態を示している。また、図5は、ストラップの端部をストラップ保持装置に接続した場合におけるストラップ保持装置の作用を示す説明図であり、(A)はベントホールを閉じた状態、(B)はベントホールを開いた状態を示している。
【0048】
図4(A)及び図4(B)に示すエアバッグ装置は、エアバッグ2の左右両側に凸部4,4が形成されている。各凸部4に端部6aが接続されたストラップ6は、各挿通孔7を経由してエアバッグ2の内部に案内されており、ストラップ保持装置8に接続された後、各端部6bがエアバッグ2の内面に縫合されている。また、ストラップ保持装置8と各端部6bとの間には、ストラップ保持装置8を解除して各ストラップ6を開放した場合に、各凸部4がエアバッグ2上で起立することができる程度の弛みが設けられている。なお、図4(A)及び図4(B)において、リテーナ3に固定されたガス発生器の図は省略してある。
【0049】
図4(A)に示すように、各ベントホール5を閉じたい場合には、ストラップ保持装置8を作動させないようにしておけばよい。エアバッグ2が膨張展開するにつれて、各ストラップ6は凸部4により引っ張られた状態となる。ストラップ6が伸びきると、凸部4がストラップ6により引っ張られ、エアバッグ2の表面の領域αに押し付けられる。このとき、各凸部4は、エアバッグ2の内圧により外側に向かって押圧されるとともに、凸部4に流入したガスにより、ベントホール5の周縁部のパネルをエアバッグ2側に押圧する。したがって、エアバッグ2の膨張展開時に、ストラップ6の長さを一定に保持しておくだけで、ベントホール5をエアバッグ2の表面で閉じることができ、ガスの排気を抑制することができる。なお、ベントホール5が領域αのエアバッグ2側に設けられている場合も同様の作用を奏する。
【0050】
また、図4(B)に示すように、各ベントホール5を開きたい場合には、ストラップ保持装置8を作動させて各ストラップ6を開放するだけでよい。ストラップ保持装置8を作動させてキャップ31を開放すると、ストラップ保持装置8に係合していたストラップ6は開放される。そして、凸部4を引っ張っていた張力が低下し、凸部4は内部に流入するガスにより内圧が高まり、エアバッグ2の表面で起立した状態となり、ベントホール5が開いた状態となり、エアバッグ2内のガスを排気することができる。なお、ベントホール5が領域αのエアバッグ2側に設けられている場合も同様の作用を奏する。
【0051】
図5(A)及び図5(B)に示すエアバッグ装置は、各ストラップ6の端部6bをストラップ保持装置8に接続し、エアバッグ2に接続しないようにしたものである。その他の部分については、図4(A)及び図4(B)に示したものと基本的に同じ構成であるため詳細な説明を省略する。図5(A)に示すように、各ベントホール5を閉じたい場合には、ストラップ保持装置8を作動させないようにしておけばよい。また、図5(B)に示すように、ベントホール5を開きたい場合には、ストラップ保持装置8を作動させて各ストラップ6を開放するだけでよい。この場合、各ストラップ6の端部6bはどこにも接続されていないため張力を失い、凸部4は内部に流入するガスにより内圧が高まり、エアバッグ2の表面で起立した状態となり、ベントホール5が開いた状態となり、エアバッグ2内のガスを排気することができる。
【0052】
次に、積極的にストラップを保持・開放するストラップ保持装置を使用しないエアバッグ装置について、図6及び図7を参照しつつ説明する。ここで、図6は、本発明に係るエアバッグ装置の第二実施形態を示す概略断面図であり、(A)はベントホールを閉じた状態、(B)はベントホールを開いた状態を示している。また、図7は、第二実施形態の変形例を示す概略断面図であり、(A)はベントホールを閉じた状態、(B)はベントホールを開いた状態を示している。
【0053】
図6(A)及び図6(B)に示すエアバッグ装置は、エアバッグ62の左右両側に凸部64,64が形成されている。各凸部64に端部66aが接続されたストラップ66は、各挿通孔67を経由してエアバッグ62の内部に案内されており、各ストラップ66の端部66bはエアバッグ62の内面に縫合されている。また、ストラップ66の端部66bが、エアバッグ62の頂部側に接続されているため、凸部64は、図4や図5に記載したものとは反対向きにエアバッグ2に取り付けられている。なお、ストラップ66は一本のストラップで構成されていてもよく、この場合にはストラップの中間部分がエアバッグ62に縫合されることとなる。また、ここでは各凸部64にベントホール65が形成されている場合を図示したが、ベントホール65は凸部64とエアバッグ62の表面とが重なり合う領域αに設けられていればよく、エアバッグ62側にベントホール65が設けられていてもよい。
【0054】
図6(A)に示すように、ガス発生器61が作動し、エアバッグ62が膨張展開すると、エアバッグ62の頂部の移動に伴って、各ストラップ66は引っ張られた状態となる。そして、各ストラップ66は、凸部64を引っ張ることとなり、ベントホール65をエアバッグ62の表面の領域αに押し付けることとなる。このとき、凸部64は、エアバッグ62の内圧により外側に向かって押圧されるとともに、凸部64に流入したガスにより、ベントホール65の周縁部のパネルをエアバッグ62側に押圧する。したがって、エアバッグ62の膨張展開時に、ストラップ66の長さを一定に保持しておくだけで、ベントホール65をエアバッグ62の表面で閉じることができ、ガスの排気を抑制することができる。なお、ベントホール65が領域αのエアバッグ62側に設けられている場合も同様の作用を奏する。
【0055】
図6(B)に示すように、乗員60がエアバッグ62に接触すると、エアバッグ62の頂部はリテーナ63側に移動することとなり、各ストラップ66は弛んだ状態となり、ストラップ66の張力が低下する。また、同時に、エアバッグ62の変形による圧力変動により各凸部64の内部にガスが流入し内圧が高まる。そして、これらの作用により、各凸部64は、エアバッグ92の表面で起立した状態となり、各ベントホール65が開き、エアバッグ62内のガスを排気することができる。なお、ベントホール65が領域αのエアバッグ62側に設けられている場合も同様の作用を奏する。
【0056】
図7(A)及び図7(B)に示すエアバッグ装置は、凸部74,74をエアバッグ62に取り付ける向きを反転させて、図4や図5に記載したものと同じ向きに取り付けたものである。したがって、ベントホール75はリテーナ63側に開閉されることとなる。この場合、挿通孔77の位置もリテーナ63側に配置される。なお、その他の部分については、図6(A)及び図6(B)に示したものと基本的に同じ構成であるため詳細な説明を省略する。図7(A)に示すように、エアバッグ62の膨張展開時にはベントホール75はストラップ66により引っ張られて閉じた状態となる。図7(B)に示すように、乗員60がエアバッグ62に接触すると、ストラップ66の張力が低下するとともに、各凸部74の内部に流入するガスにより内圧が高まり、各凸部74は、エアバッグ62の表面で起立した状態となり、各ベントホール75が開き、エアバッグ62内のガスを排気することができる。なお、ベントホール75が領域αのエアバッグ62側に設けられている場合も同様の作用を奏する。
【0057】
次に、運転席用エアバッグ装置に本発明を適用した場合について、図8を参照しつつ説明する。ここで、図8は、本発明に係るエアバッグ装置の第三実施形態を示す説明図であり、(A)は背面図、(B)は側面断面図である。なお、図8(A)及び図8(B)において、ベントホール85を開いた状態を実線で示し、閉じた状態を一点鎖線で示している。
【0058】
図8(A)及び図8(B)に示すエアバッグ装置は、所定の条件でガスを発生させるガス発生器81と、ガス発生器81に接続されて膨張展開されるエアバッグ82と、エアバッグ82を収容するリテーナ83と、を備え、エアバッグ82は、エアバッグ82の一部に外部に突出した部分を形成する凸部84と、凸部84に形成されたベントホール85と、一端の端部86aが凸部84に接続され他端の端部86bがエアバッグ82の内部に接続されたストラップ86と、ストラップ86の他端をエアバッグ82の内部に案内するための挿通孔87と、を備え、ベントホール85が、ストラップ86で凸部84を引っ張った時に、凸部84とエアバッグ82とが重なり合う領域αに配置されている。ここで、ストラップ86の端部86bは、ストラップ86の長さを一定に保持可能かつストラップ86を開放可能なストラップ保持装置88に接続されている。また、ここでは凸部84にベントホール85が形成されている場合を図示したが、ベントホール85は凸部84とエアバッグ82の表面とが重なり合う領域αに設けられていればよく、エアバッグ82側にベントホール85が設けられていてもよい。
【0059】
第三実施形態に係るエアバッグ装置は、エアバッグ82が、乗員側に配置されるフロントパネル82aと車両構造物側に配置されるリアパネル82bとを有し、フロントパネル82a及びリアパネル82bの外周部に形成された突出部84a,84bを縫合することによって凸部84が形成されていることを特徴とする。また、図8に示したエアバッグ装置は、運転席用エアバッグ装置であり、一般にステアリングホイール(図示せず)の中央部に格納される。したがって、図1に示したエアバッグ装置とは、ガス発生器81やリテーナ83の形状が異なっているが、エアバッグ装置としての基本的な構成は同じであり、その他の部分の詳細な説明は省略する。
【0060】
図8に示したエアバッグ装置においても、ストラップ保持装置88によりストラップ86を保持することによって、ベントホール85を閉じることができ、ストラップ保持装置88のキャップ88aを開放することによってストラップ86を開放することができ、ベントホール85を開くことができる。ここでは、凸部84を1ヶ所に形成する場合について説明したが、左右又は上下の2箇所に凸部84を形成してもよいし、3箇所以上の部分に凸部84を形成するようにしてもよい。また、ストラップ86の端部86bの固定方法は、図4に示したものを採用してもよい。
【0061】
次に、積極的にストラップを保持・開放するストラップ保持装置を使用しない運転席用エアバッグ装置について、図9を参照しつつ説明する。ここで、図9は、本発明に係るエアバッグ装置の第四実施形態を示す説明図であり、(A)は背面図、(B)は側面断面図である。なお、図9(A)及び図9(B)において、ベントホール95を閉じた状態を実線で示し、開いた状態を一点鎖線で示している。
【0062】
図9(A)及び図9(B)に示すエアバッグ装置は、所定の条件でガスを発生させるガス発生器91と、ガス発生器91に接続されて膨張展開されるエアバッグ92と、エアバッグ92を収容するリテーナ93と、を備え、エアバッグ92は、エアバッグ92の一部に外部に突出した部分を形成する凸部94と、凸部94に形成されたベントホール95と、一端の端部96aが凸部94の内側に接続され他端の端部96bがエアバッグ92の内部に接続されたストラップ96と、ストラップ96の他端をエアバッグ92の内部で案内するための挿通部97と、を備え、ベントホール95が、ストラップ96で凸部94を引っ張った時に、凸部94とエアバッグ92とが重なり合う領域αに配置されている。ここでは凸部94にベントホール95が形成されている場合を図示したが、ベントホール95は凸部94とエアバッグ92の表面とが重なり合う領域αに設けられていればよく、エアバッグ92側にベントホール95が設けられていてもよい。なお、挿通部97は、板状の織布材により構成されており、その両端をエアバッグ92に縫合することによって中間部にストラップ96を通すための隙間を形成したものである。
【0063】
第四実施形態に係るエアバッグ装置は、エアバッグ92が、乗員側に配置されるフロントパネル92aと車両構造物側に配置されるリアパネル92bとを有し、フロントパネル92a及びリアパネル92bの外周部に形成された突出部94a,94bを縫合することによって凸部94が形成されている。また、ストラップ96は、凸部94を内側から引っ張るように構成されており、エアバッグ92の頂部近傍に縫合された挿通部97によって案内されている。なお、図9に示したエアバッグ装置は、運転席用エアバッグ装置であり、図1に示したエアバッグ装置とは、ガス発生器91やリテーナ93の形状が異なっているが、エアバッグ装置としての基本的な構成は同じであり、その他の部分の詳細な説明は省略する。
【0064】
図9(A)及び図9(B)において実線で示すように、ガス発生器91が作動し、エアバッグ92が膨張展開すると、エアバッグ92の頂部の移動に伴って、各ストラップ96は引っ張られた状態となる。そして、各ストラップ96は、凸部94を引っ張ることとなり、凸部94をエアバッグ92の内部に引き込む。このとき、ベントホール95は、引き込まれた凸部94の表面及びエアバッグ92の表面により重ね合わされた領域αに押し付けられることとなる。したがって、エアバッグ92の膨張展開時に、ストラップ96の長さを一定に保持しておくだけで、ベントホール95を閉じることができ、ガスの排気を抑制することができる。なお、ベントホール95が領域αのエアバッグ92側に設けられている場合も同様の作用を奏する。
【0065】
図9(A)及び図9(B)において一点鎖線で示すように、乗員(図示せず)がエアバッグ92に接触すると、エアバッグ92の頂部はリテーナ93側に移動することとなり、ストラップ96は弛んだ状態となり張力が低下する。また、同時に、エアバッグ92の変形による圧力変動により凸部94の内部にガスが流入し内圧が高まる。そして、これらの作用により、凸部94は、エアバッグ92の表面で起立した状態となり、ベントホール95が開き、エアバッグ92内のガスを排気することができる。なお、ベントホール95が領域αのエアバッグ92側に設けられている場合も同様の作用を奏する。
【0066】
次に、側突用エアバッグ装置に本発明を適用した場合について、図10及び図11を参照しつつ説明する。ここで、図10は、本発明に係るエアバッグ装置の第五実施形態を示す概略断面図であり、(A)はベントホールを閉じた状態、(B)はベントホールを開いた状態、(C)は変形例を示している。
【0067】
図10(A)及び図10(B)に示すエアバッグ装置は、所定の条件でガスを発生させるガス発生器101と、ガス発生器101に接続されて膨張展開されるエアバッグ102と、エアバッグ102を収容するリテーナ103と、を備え、エアバッグ102は、エアバッグ102の一部に外部に突出した部分を形成する凸部104と、凸部104に形成されたベントホール105と、一端の端部106aが凸部104の内側に接続され他端の端部106bがエアバッグ102の内部に接続されたストラップ106と、ストラップ106の他端をエアバッグ102の内部で案内するための挿通部107と、を備え、ベントホール105が、ストラップ106で凸部104を引っ張った時に、凸部104とエアバッグ102とが重なり合う領域αに配置されている。ここでは凸部104にベントホール105が形成されている場合を図示したが、ベントホール105は凸部104とエアバッグ102の表面とが重なり合う領域αに設けられていればよく、エアバッグ102側にベントホール105が設けられていてもよい。また、ここではストラップ106の端部106bがエアバッグ102の頂部側に接続されており、挿通部107がリテーナ103側に配置されている場合について図示したが、図9(B)に示したように、端部106bをリテーナ103側に接続し、挿通部107をエアバッグ102の頂部側に配置してもよい。なお、リテーナ103は、車体ドア部又はシート側面部に配置されているのが一般的である。
【0068】
図10(A)に示すように、ガス発生器101が作動し、エアバッグ102が膨張展開すると、エアバッグ102の頂部の移動に伴って、ストラップ106は挿通部107を介して引っ張られた状態となる。そして、ストラップ106は、凸部104を引っ張ることとなり、凸部104をエアバッグ102の内部に引き込む。このとき、ベントホール105は、引き込まれた凸部104の表面及びエアバッグ102の表面により重ね合わされた領域αに押し付けられることとなる。したがって、エアバッグ102の膨張展開時に、ストラップ106の長さを一定に保持しておくだけで、ベントホール105を閉じることができ、ガスの排気を抑制することができる。なお、ベントホール105が領域αのエアバッグ102側に設けられている場合も同様の作用を奏する。ここで、乗員100はシート109に着座しており、図10(A)は乗員100がエアバッグ102に衝突する前の状態を示している。なお、乗員100はシートベルトを締めているのが一般的であるが、ここでは図を省略している。
【0069】
図10(B)に示すように、乗員100がエアバッグ102に接触すると、エアバッグ102の頂部はリテーナ103側に移動することとなり、ストラップ106は弛んだ状態となり張力が低下する。また、同時に、エアバッグ102の変形による圧力変動により凸部104の内部にガスが流入し内圧が高まる。そして、これらの作用により、凸部104は、エアバッグ102の表面で起立した状態となり、ベントホール105が開き、エアバッグ102内のガスを排気することができる。ここでは、凸部104は1箇所に設けられているが、複数箇所に設けるようにしてもよい。なお、ベントホール105が領域αのエアバッグ102側に設けられている場合も同様の作用を奏する。
【0070】
図10(C)は、図10(A)及び図10(B)に示したエアバッグ装置の変形例であり、ストラップ106の接続方法が異なるものである。図10(C)に示すエアバッグ装置では、挿通部107がエアバッグ102の頂部側とリテーナ103側の2箇所に配置されており、ストラップ106は各挿通部107に通されて端部106bがリテーナ3に接続されている。このようにストラップ106を取り付けることにより、乗員100がエアバッグ102に接触した時のストラップ106の弛み量をエアバッグ102の頂部がリテーナ103側に移動した量の2倍にすることができ、凸部104の起立にゆとりを持たせることができる。
【0071】
次に、ストラップ保持装置を備えた側突用エアバッグ装置について説明する。ここで、図11は、本発明に係るエアバッグ装置の第六実施形態を示す概略断面図であり、(A)はベントホールを閉じた状態、(B)はベントホールを開いた状態を示している。
【0072】
図11(A)及び図11(B)に示すエアバッグ装置は、所定の条件でガスを発生させるガス発生器111と、ガス発生器111に接続されて膨張展開されるエアバッグ112と、エアバッグ112を収容するリテーナ113と、を備え、エアバッグ112は、エアバッグ112の一部に外部に突出した部分を形成する凸部114と、凸部114に形成されたベントホール115と、一端の端部116aが凸部114の内側に接続され他端の端部116bがエアバッグ112の内部に接続されたストラップ116と、ストラップ116の端部116bをエアバッグ2の内部に案内するための挿通孔117,117と、を備え、ベントホール115が、ストラップ116で凸部114を引っ張った時に、凸部114とエアバッグ112とが重なり合う領域αに配置されている。そして、ストラップ116の端部116bは、ストラップ116の長さを一定に保持可能かつストラップ116を開放可能なストラップ保持装置118に接続されている。ここでは凸部114にベントホール115が形成されている場合を図示したが、ベントホール115は凸部114とエアバッグ112の表面とが重なり合う領域αに設けられていればよく、エアバッグ112側にベントホール115が設けられていてもよい。なお、ここではエアバッグ112の頂部側とリテーナ113側の2箇所に挿通部117を配置しているが、いずれか一方を省略してもよい。
【0073】
図11(A)に示すように、ガス発生器111が作動し、エアバッグ112が膨張展開すると、エアバッグ112の頂部の移動に伴って、ストラップ116は挿通部117を介して引っ張られた状態となる。そして、ストラップ116は、凸部114を引っ張ることとなり、凸部114をエアバッグ112の内部に引き込む。このとき、ベントホール115は、引き込まれた凸部114の表面及びエアバッグ112の表面により重ね合わされた領域αに押し付けられることとなる。したがって、エアバッグ112の膨張展開時に、ストラップ116の長さを一定に保持しておくだけで、ベントホール115を閉じることができ、ガスの排気を抑制することができる。なお、ベントホール115が領域αのエアバッグ112側に設けられている場合も同様の作用を奏する。ここで、乗員110はシート119に着座しており、図11(A)は乗員110がエアバッグ112に衝突する前の状態を示している。なお、乗員110はシートベルトを締めているのが一般的であるが、ここでは図を省略している。
【0074】
図11(B)に示すように、乗員110がエアバッグ112に接触した場合に、所定のタイミングでストラップ保持装置118を作動させキャップ118aを開放すると、ストラップ116も開放され、エアバッグ112内のガスが凸部114に流入して、凸部114の内圧が高まり、凸部114はエアバッグ114の表面で起立した状態となり、ベントホール115が開き、エアバッグ112内のガスを排気することができる。ここでは、凸部114は1箇所に設けられているが、複数箇所に設けるようにしてもよい。なお、ベントホール105が領域αのエアバッグ102側に設けられている場合も同様の作用を奏する。
【0075】
図10及び図11に示した側突用エアバッグ装置では、ストラップ106,116の端部106a,116aを凸部104,114の内側に接続した場合について説明したが、図4〜図8に示した実施形態のように、ストラップ106,116の端部106a,116aを凸部104,114の外側に接続し、エアバッグ112に挿通孔を形成して端部106b,116bをエアバッグ112内に案内して接続するようにしてもよい。
【0076】
次に、ストラップ保持装置に接続された制御装置の構成及び作用について、図12〜図14を参照しつつ説明する。ここで、図12は、本発明に係るエアバッグ装置の制御装置の構成を示す図である。また、図13は、エアバッグ装置のガス発生器が1段の場合における制御装置の作用を示すフロー図であり、(A)は乗員がエアバッグに接触した場合にベントホールを開く場合のフロー図であり、(B)は乗員の体重に応じてベントホールを開閉させる場合のフロー図である。また、図14は、エアバッグ装置のガス発生器の作動とストラップ保持装置の作動とを連動させる場合のフロー図である。
【0077】
図12に示すように、本発明の制御装置121は、ガス発生器122及びストラップ保持装置123に電気的に接続されており、制御装置121が発信する信号に基づいてガス発生器122及びストラップ保持装置123を作動させるようになっている。この制御装置121は、図3に示した制御装置34に相当し、一般的にはECU(電子制御ユニット)がその役割を果たしている。また、ガス発生器122は、エアバッグ装置のガス発生器であり、例えば、図1等に示したガス発生器1,61,81,91,101,111に相当する。また、ストラップ保持装置123は、例えば、図1等に示したストラップ保持装置8,88,118に相当するものである。さらに、制御装置121は、車体構造物に配置された、加速度センサ124、シート荷重センサ125、シート位置センサ126、エアバッグ圧力センサ127、乗員位置センサ128、車体圧力センサ129等の各種センサに接続されている。なお、これらのセンサは必ずしも全てのセンサが制御装置121に接続されている必要はなく、単なる例示である。
【0078】
加速度センサ124は、車体に生じた急減速を検出するセンサである。制御装置121は、加速度センサ124の検出値が所定値以上の急減速であると認識した場合には車両が衝突したものと判断し、ガス発生器122を作動させてエアバッグを膨張展開させる。また、車体圧力センサ129は車体表面に物体が衝突した時に生じる圧力を検知するセンサである。制御装置121は、加速度センサ124と車体圧力センサ129の検出値の両方を参酌して車両が衝突したと判断し、ガス発生器122を作動させてエアバッグを膨張展開させる場合もある。
【0079】
シート荷重センサ125は、車両シートに着座した乗員の体重を検出するセンサである。また、シート位置センサ126は、車両シートの前後位置を検出するセンサである。制御装置121は、シート荷重センサ125の出力に基づいて乗員の体重の軽重を判断し、シート位置センサ126の出力を参酌して必要に応じて乗員の体格の大小を判断する。
【0080】
エアバッグ圧力センサ127は、エアバッグの内圧を検出するセンサであり、乗員がエアバッグに接触したか否かを判断するために使用するセンサである。また、乗員位置センサ128は、例えば、CCDカメラ等から構成されるセンサであり、視覚的に乗員の位置を把握し、乗員がエアバッグに接触したか否かを判断するために使用するセンサである。
【0081】
まず、図13(A)及び図13(B)を用いて、エアバッグが膨張展開を開始してからのフローを説明する。図13(A)に示すように、制御装置121の信号によりエアバッグ膨張展開開始(S1)すると、制御装置121は「乗員がエアバッグに接触したか否か?」(S2)を判断する。乗員がエアバッグに接触したか否かは、例えば、エアバッグ圧力センサ127や乗員位置センサ128の出力に基づいて判断される。そして、乗員がエアバッグに接触していない(N)と判断した場合には、制御装置121は、ストラップ保持(S3)の状態を維持する。また、乗員がエアバッグに接触している(Y)と判断した場合には、制御装置121は、ストラップ開放(S4)の解除信号をストラップ保持装置123に発信し、ベントホール開(S5)の状態に移行させる。
【0082】
また、図13(B)に示すように、エアバッグ膨張展開開始(S1)の後、「乗員の体重は?」(S6)のステップを挿入し、乗員の体重の軽重を判断してストラップ保持装置123に解除信号を発信するか否かを判断するようにしてもよい。乗員の体重が軽い場合には、エアバッグ膨張展開時の初期段階でエアバッグに接触する場合や体重の軽い乗員に対する衝撃吸収力を向上させるためにエアバッグの内圧を低くしておきたい場合があるためである。そして、乗員の体重が所定の基準値(例えば、40〜50kgの範囲の値)よりも軽い場合には、制御装置121は、ストラップ開放(S4)の解除信号をストラップ保持装置123に発信し、ベントホール開(S5)の状態に移行させる。また、乗員の体重が所定の基準値よりも重い場合には、制御装置121は、ストラップ保持(S3)の状態を維持する。その後、「乗員がエアバッグに接触したか否か?」(S7)を判断するステップを挿入してもよい。乗員がエアバッグに接触していない(N)と判断した場合には、制御装置121は、ストラップ保持(S3)の状態を維持する。また、乗員がエアバッグに接触している(Y)と判断した場合には、制御装置121は、ストラップ開放(S4)の解除信号をストラップ保持装置123に発信し、ベントホール開(S5)の状態に移行させる。
【0083】
また、制御装置121は、図12に示したように、ガス発生器122とストラップ保持装置123の制御装置を兼用している場合もある。かかる場合には、ガス発生器122とストラップ保持装置123の制御を連動させることもできる。特に、乗員の体重や体格に応じてガス発生器122の作動を変化させる場合に有効である。
【0084】
図14に示すように、乗員が車両に乗車(S11)すると、制御装置121は、「乗員の体重は?」(S12)のステップにより、シート荷重センサ125の出力に基づいて乗員の体重の軽重を判断する。そして、制御装置121は、乗員の体重が軽い場合にはストラップ開放設定(S13)を行い、乗員の体重が重い場合にはストラップ保持設定(S14)を行う。また、このとき、制御装置121は、乗員の体重が軽い場合には、ガス発生器122のガス発生量が少なくなるように設定(例えば、ガス発生器が2段式の場合には第一ガス発生器のみを作動させる)し、乗員の体重が重い場合には、ガス発生器122のガス発生量が多くなるように設定(例えば、ガス発生器が2段式の場合には第一ガス発生器及び第二ガス発生器の両方を作動させる)しているが、かかる処理は本発明とは直接的に関係ないため、図14では処理フローを省略してある。なお、ストラップ開放設定(S13)とは、エアバッグが膨張展開した時にストラップ保持装置123のストラップを開放するように処理する設定であり、ストラップ保持設定(S14)とは、エアバッグが膨張展開した時にストラップ保持装置123のストラップを保持するように処理する設定である。
【0085】
そして、制御装置121は、「車両の衝突を検知したか?」(S15,S16)のステップにおいて、加速度センサ124や車体圧力センサ129の出力に基づいて車両が衝突したか否かを判断し、車両が衝突したと判断した場合(Y)には、エアバッグ膨張展開開始(S17,S18)のステップに移行する。なお、車両が衝突していないと判断した場合(N)には、次のステップ(S17,S18)には移行しない。そして、制御装置121は、ストラップ開放設定(S13)がされている場合、すなわち、乗員の体重が軽い場合には、エアバッグ膨張展開開始(S17)と同時にストラップ開放(S19)の処理を行い、ベントホール開(S20)の状態に移行させる。一方、ストラップ保持設定(S14)がされている場合、すなわち、乗員の体重が重い場合には、ストラップ保持(S21)の状態を維持する。この場合、更に、「乗員がエアバッグに接触したか否か?」(S22)を判断するステップを挿入してもよい。制御装置121は、乗員がエアバッグに接触していない(N)と判断した場合には、ストラップ保持(S21)の状態を維持し、乗員がエアバッグに接触している(Y)と判断した場合には、ストラップ開放(S19)の解除信号をストラップ保持装置123に発信し、ベントホール開(S20)の状態に移行させる。
【0086】
次に、エアバッグに第二ベントホールを設けたエアバッグ装置について説明する。ここで、図15は、本発明に係るエアバッグ装置の第七実施形態を示す側面断面図である。なお、図15において、図1に示した第一実施形態と同じ部品には同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0087】
図15に示すエアバッグ装置は、エアバッグ2のリアパネル2bに第二ベントホール150を形成したものである。すなわち、第二ベントホール150は、凸部4を引っ張った時に凸部4とエアバッグ2とが重なり合う領域以外の場所に形成されている。かかる第二ベントホール150を設けることにより、凸部4のベントホール5とは別にエアバッグ2内のガスを排気することができる。したがって、エアバッグ2の膨張展開中における圧力損失を低減する効果は低いが、ベントホール5の開閉を制御することにより乗員の体格に適した衝撃吸収力を発揮させることができる。なお、図示していないが、凸部4及び第二ベントホール150は、エアバッグ2の左右両側に設けられている。
【0088】
例えば、乗員の体格が大きい場合や乗員の体重が重い場合には、凸部4のベントホール5を常時閉じた状態としてエアバッグ2の内圧を保持しつつ、乗員がエアバッグ2に接触した場合に第二ベントホール150からガスを排気して乗員の衝撃を緩和することができる。また、乗員の体格が小さい場合や乗員の体重が軽い場合には、凸部4のベントホール5をエアバッグ2の膨張展開と同時に開いた状態としてエアバッグ2の内圧を低下しつつ、乗員がエアバッグ2に接触した場合にベントホール5と第二ベントホール150の両方からガスを排気して乗員の衝撃を緩和することができる。このように、本発明の第七実施形態では、乗員の体格に適した衝撃吸収力を発揮させることを優先させているため、ガス発生器1にも2段式のガス発生器を採用することが好ましい。例えば、乗員の体格が大きい場合や乗員の体重が重い場合には、第一ガス発生器及び第二ガス発生器の両方を同時に作動させてガス発生量を多くし、乗員の体格が小さい場合や乗員の体重が軽い場合には、第一ガス発生器のみ作動させてガス発生量を少なくすることによって、エアバッグ2の内圧を調整することができる。
【0089】
次に、ベントホールを有する凸部を複数配置したエアバッグ装置について説明する。ここで、図16は、本発明に係るエアバッグ装置の第八実施形態を示す側面断面図である。なお、図16において、図1に示した第一実施形態と同じ部品には同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0090】
図16に示すエアバッグ装置は、ベントホール5を有する凸部4の他に、ベントホール165を有する凸部164を第二ベントホールとして追加したものである。したがって、図16に示すエアバッグ2は、エアバッグ2の一部に外部に突出した部分を形成する凸部4,164と、凸部4,164に形成されたベントホール5,165と、一端が凸部4,164に接続され他端がエアバッグ2の内部に接続されたストラップ6,166と、ストラップ6,166の他端をエアバッグ2の内部に案内するための挿通孔7,167と、を備え、ベントホール5,165が、ストラップ6,166で凸部4,164を引っ張った時に、凸部4,164とエアバッグ2とが重なり合う領域αに配置されている。ここで、ストラップ6,166の他端は、ストラップ6,166の長さを一定に保持可能かつストラップ6,166を開放可能なストラップ保持装置8,168に接続されている。なお、図示していないが、凸部4,164は、エアバッグ2の左右両側に設けられている。
【0091】
この第八実施形態のエアバッグ装置は、第七実施形態のエアバッグ装置の第二ベントホール150に開閉手段を設けたものということもできる。すなわち、乗員の体格が大きい場合や乗員の体重が重い場合には、ベントホール5,165を閉じた状態としてエアバッグ2の内圧を保持しつつ、乗員がエアバッグ2に接触した場合にベントホール5,165のいずれか一方を開いてガスを排気させることができる。したがって、第八実施形態のエアバッグ装置によれば、乗員の体格に応じて衝撃吸収力を発揮することができるだけでなく、エアバッグ2の膨張展開中における圧力損失をも低減することができる。一方、乗員の体格が小さい場合や乗員の体重が軽い場合には、ベントホール5,165の両方を開いた状態にすれば、エアバッグ2の内圧を低くすることができるとともに、乗員がエアバッグ2に接触した場合のガス排気量を多くすることができる。また、第七実施形態のエアバッグ装置の場合と同様に、ガス発生器を2段式にしてもよい。なお、第二ベントホールに相当するベントホール165には、従来技術のようなベントホールとストラップ等により構成される開閉手段を採用してもよい。また、ベントホール165は、凸部164とエアバッグ2とが重なり合う領域のエアバッグ2側に設けられていてもよい。
【0092】
次に、本発明のエアバッグ装置をいわゆるツインエアバッグに適用した場合について説明する。ここで、図17は、本発明に係るエアバッグ装置の第九実施形態を示す概略断面図であり、(A)はストラップ保持装置を有する場合、(B)はストラップ保持装置を有しない場合を示している。各図において、ベントホールを閉じた状態を実線で示し、ベントホールを開いた状態を一点鎖線で示している。
【0093】
図17(A)に示すエアバッグ装置は、所定の条件でガスを発生させるガス発生器171と、ガス発生器171に接続されて膨張展開されるエアバッグ172と、エアバッグ172を収容するリテーナ173と、を備え、エアバッグ172は、乗員の左側に膨張展開される左半側エアバッグ172Lと、乗員の右側に膨張展開される右半側エアバッグ172Rと、を有し、左半側エアバッグ172L及び右半側エアバッグ172Rのそれぞれにベントホール175L,175Rが形成されている。具体的には、各半側エアバッグ172L,172Rの一部に外部に突出した部分を形成する凸部174L,174Rと、凸部174L,174Rに形成されたベントホール175L,175Rと、一端が凸部174L,174Rに接続され他端がエアバッグ172の内部に接続されたストラップ176L,176Rと、ストラップ176L,176Rの端部をエアバッグ172の内部に案内するための挿通孔177L,177Rと、を備え、ベントホール175L,175Rが、ストラップ176L,176Rで凸部174L,176Rを引っ張った時に、凸部174L,174Rとエアバッグ172とが重なり合う領域αに配置されている。そして、ストラップ176の端部は、ストラップ176の長さを一定に保持可能かつストラップ176を開放可能なストラップ保持装置178に接続されている。ここでは各凸部174L,174Rにベントホール175L,175Rが形成されている場合を図示したが、ベントホール175L,175Rは凸部174L,174Rと各半側エアバッグ172L,172Rの表面とが重なり合う領域αに設けられていればよく、各半側エアバッグ172L,172R側にベントホール175L,175Rが設けられていてもよい。
【0094】
各ベントホール175L,175Rを閉じたい場合には、実線で示すように、ストラップ保持装置178を作動させないようにしておけばよい。また、各ベントホール175L,175Rを開きたい場合には、一点鎖線で示すように、ストラップ保持装置178を作動させてキャップ178aを開放し、各ストラップ176L,176Rを開放するだけでよい。この場合、各ストラップ176L,176Rは張力を失い、凸部174L,174Rは内部に流入するガスにより内圧が高まり、各半側エアバッグ172L,172Rの表面で起立した状態となり、各ベントホール175L,175Rが開き、エアバッグ172内のガスを排気することができる。なお、ベントホール175L,175Rが領域αのエアバッグ172側に設けられている場合も同様の作用を奏する。
【0095】
図17(B)に示すエアバッグ装置は、ストラップ保持装置178を有しないツインエアバッグに本発明を適用した場合を示している。具体的には、各ストラップ176L,176Rの端部は、各半側エアバッグ172L,172Rの接合部172aに縫合されている。なお、その他の部分については、図17(A)に示したものと基本的に同じ構成であるため詳細な説明を省略する。図17(B)において実線で示すように、エアバッグ172の膨張展開時には各ベントホール175L,175Rは各ストラップ176L,176Rにより引っ張られて閉じた状態となる。図17(B)において一点鎖線で示すように、乗員(図示せず)がエアバッグ172に接触すると、ストラップ176L,176Rの張力が低下し、各凸部174L,174Rは内部に流入するガスにより内圧が高まり、各半側エアバッグ172L,172Rの表面で起立した状態となり、各ベントホール175L,175Rが開き、エアバッグ172内のガスを排気することができる。なお、ベントホール175L,175Rが領域αの各半側エアバッグ172L,172R側に設けられている場合も同様の作用を奏する。また、各ストラップ176L,176Rの端部を各半側エアバッグ172L,172Rの接合部172aに縫合しないで、各半側エアバッグ172L,172Rの内面に接続するようにしてもよい。
【0096】
上述した第一実施形態〜第九実施形態のエアバッグ又はエアバッグ装置によれば、エアバッグの一部に外部に突出した凸部を形成し、凸部又はエアバッグにベントホールを形成したことにより、凸部をエアバッグの表面に押し付けてベントホールを閉じ、凸部をエアバッグの表面から離してベントホールを開き、エアバッグ内のガスを排気するようにすることができる。なお、各実施形態において、凸部及びエアバッグの両方にベントホールを形成するようにしてもよい。
【0097】
次に、エアバッグに凸部を設けずにベントホールを開閉できるようにした本発明に係るエアバッグ装置について図18〜図20を参照しつつ説明する。ここで、図18は、本発明に係るエアバッグ装置の第十実施形態を示す概略断面図であり、(A)はエアバッグを頂部側に引っ張る場合、(B)はエアバッグをリテーナ側に引っ張る場合を示している。各図において、ベントホールを閉じた状態を実線で示し、ベントホールを開いた状態を一点鎖線でしめしている。
【0098】
図18(A)に示すエアバッグ装置は、所定の条件でガスを発生させるガス発生器181と、ガス発生器181に接続されて膨張展開されるエアバッグ182と、エアバッグ182を収容するリテーナ183と、を備え、エアバッグ182は、エアバッグ182に形成されたベントホール185,185と、一端がエアバッグ182に接続され他端がエアバッグ182の内部に接続されたストラップ186と、を備え、各ベントホール185は、ストラップ186でエアバッグ182を引っ張った時に、エアバッグ182の表面が重なり合う領域αに配置されている。具体的には、ストラップ186の端部186aは、エアバッグ182の内面に接合されており、端部186bはエアバッグ182の頂部近傍に接続されている。また、ストラップ186の長さは、図18(A)に示したように、エアバッグ182の膨張展開が完了した状態でエアバッグ182の表面が重なり合う領域αを形成できるように設計されている。この領域αの面積は、ベントホール185の大きさ等によって任意に設計されるものであり、それに合わせてストラップ186の長さも設計される。
【0099】
図18(A)において実線で示すように、ガス発生器181が作動し、エアバッグ182が膨張展開すると、エアバッグ182の頂部の移動に伴って、各ストラップ186は引っ張られた状態となる。そして、各ストラップ186は、エアバッグ182の表面を内側からエアバッグ182の頂部側に引っ張ることとなり、ベントホール185の周囲のエアバッグ182を内側に引き込むようにエアバッグ182を変形させる。引き込まれたエアバッグ182の領域αは、内圧により互いに押し付け合ってベントホール185を閉じることとなる。したがって、エアバッグ182の膨張展開時に、ストラップ186の長さを一定に保持しておくだけで、ベントホール185をエアバッグ182の表面で閉じることができ、ガスの排気を抑制することができる。
【0100】
図18(A)において一点鎖線に示すように、乗員(図示せず)がエアバッグ182に接触すると、エアバッグ182の頂部はリテーナ183側に移動することとなり、各ストラップ186は弛んだ状態となり張力が低下する。また、同時に、エアバッグ182の変形による圧力変動により内側に引き込まれていた領域αがエアバッグ182の表面に現れてベントホール185が開き、エアバッグ182内のガスを排気することができる。
【0101】
図18(B)に示すエアバッグ装置は、リテーナ183側に挿通部187を設け、ストラップ186の端部186bを挿通部187を介してエアバッグ182の頂部近傍に接続したものである。このようにストラップ186を接続すると、エアバッグ182をリテーナ3側に引っ張って変形させて重なり合う領域αを形成することができる。なお、その他の構成及び作用については、図18(A)に記載したものと同じであるため詳細な説明を省略する。
【0102】
次に、ストラップ保持装置を設けた場合について説明する。ここで、図19は、本発明に係るエアバッグ装置の第十一実施形態を示す概略断面図であり、(A)はストラップをエアバッグの外側に接続した場合、(B)はストラップをエアバッグの内側に接続した場合を示している。各図において、ベントホールを閉じた状態を実線で示し、ベントホールを開いた状態を一点鎖線で示している。
【0103】
図19(A)に示すエアバッグ装置は、所定の条件でガスを発生させるガス発生器191と、ガス発生器191に接続されて膨張展開されるエアバッグ192と、エアバッグ192を収容するリテーナ193と、を備え、エアバッグ192は、エアバッグ192に形成されたベントホール195,195と、エアバッグ192に形成された挿通孔197,197と、一端の端部196aがエアバッグ182の表面に接続され他端の端部196bが挿通孔197を通過してエアバッグ192の内部に案内されたストラップ196と、を備え、各ベントホール195は、ストラップ196でエアバッグ192を引っ張った時に、エアバッグ192の表面が重なり合う領域αに配置されている。そして、ストラップ196の端部196bは、ストラップ196の長さを一定に保持可能かつストラップ196を開放可能なストラップ保持装置198に接続されている。
【0104】
図19(A)において実線で示すように、ガス発生器191が作動し、エアバッグ192が膨張展開すると、エアバッグ192の頂部の移動に伴って、各ストラップ196は引っ張られた状態となる。そして、各ストラップ196は、エアバッグ182の表面を外側から引っ張ることとなり、ベントホール185の周囲のエアバッグ182をエアバッグ182の表面に押し付けるようにエアバッグ182を変形させる。変形して折り畳まれたエアバッグ182の領域αは、内圧により互いに押し付け合ってベントホール195を閉じることとなる。したがって、エアバッグ192の膨張展開時に、ストラップ196の長さを一定に保持しておくだけで、ベントホール195をエアバッグ192の表面で閉じることができ、ガスの排気を抑制することができる。
【0105】
図19(A)において一点鎖線に示すように、ベントホール195を開いてガスを排気したい場合には、ストラップ保持装置198を作動させてキャップ198aを開放し、ストラップ196を開放すればよい。乗員(図示せず)がエアバッグ192に接触する前や接触した時にストラップ保持装置198を作動させると、ストラップ196の開放によりエアバッグ192の容量を一時的に増量させることができるとともに、ベントホール195からガスを排気することができる。かかる作用により、乗員に対する衝撃を効果的に低減することもできる。
【0106】
図19(B)に示すエアバッグ装置は、ストラップ196の端部196aをエアバッグ192の内側に接続した場合を示している。この場合、図19(A)に示した挿通孔197を設ける必要はない。この場合も、図19(A)の場合と同様に、エアバッグ192の膨張展開時に、エアバッグ192の表面が重なり合う領域αを形成することができ、ベントホール195を閉じることができる。また、ストラップ保持装置198を作動させることにより、エアバッグ192を内圧により変形させてベントホール195を開き、エアバッグ192内のガスを排気することができる。なお、その他の構成及び作用については、図19(A)に記載したものと同じであるため詳細な説明を省略する。
【0107】
最後に、図18(A)に示したエアバッグ装置の変形例について説明する。ここで、図20は、図18(A)に示したエアバッグ装置の変形例であり、(A)はストラップをテザーに接続した場合、(B)はストラップをインナーパネルに接続した場合を示している。各図において、ベントホールを閉じた状態を実線で示し、ベントホールを開いた状態を一点鎖線で示している。なお、図18(A)に示したエアバッグ装置と同じ部品には同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0108】
図20(A)に示すエアバッグ装置は、エアバッグ182の内部にエアバッグの形状を調整するテザー201,201をエアバッグ192の頂部近傍とリテーナ3側に接続したものである。そして、ストラップ186の端部186bは、このテザー201に接続している。このようにストラップ186を接続した場合も、図18(A)に示したエアバッグ装置と同様の作用を奏する。
【0109】
図20(B)に示すエアバッグ装置は、エアバッグ182の内部にエアバッグの形状を調整するとともに、エアバッグ182の内部を区画してインナーバッグを形成するインナーパネル202a,202bを接続したものである。インナーパネル202a,202bは、一体に形成されている場合もあるし、別部材で構成されて略中央部で接合されている場合もある。また、インナーパネル202a,202bは、略筒形状をなしており、外周に連通した空間を形成するための開口が形成されている。そして、ストラップ186の端部186bは、このインナーパネル202bの表面に接続している。このようにストラップ186を接続した場合も、図18(A)に示したエアバッグ装置と同様の作用を奏する。なお、ストラップ186の端部186bは、インナーパネル202aの表面に接続してもよいし、インナーパネル202aとインナーパネル202bの接合部に接続してもよい。
【0110】
上述した第十実施形態及び第十一実施形態に示したエアバッグ又はエアバッグ装置によれば、エアバッグにベントホールを形成し、エアバッグを変形させることによりエアバッグの表面でベントホールを閉じ、エアバッグを変形させることによりベントホールを開いてエアバッグ内のガスを排気するようにすることができる。なお、各実施形態において、エアバッグの表面が重なり合う領域αに複数のベントホールを形成するようにしてもよい。
【0111】
本発明は上述した実施形態に限定されず、(1)ベントホールを有する全てのエアバッグに適用することができ、例えば、カーテンエアバッグ装置、ニーエアバッグ装置、歩行者用エアバッグ装置等にも適用することができる、(2)各実施形態を適宜組み合わせたエアバッグ及びエアバッグ装置を採用してもよい等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明に係るエアバッグ装置の第一実施形態を示す側面断面図である。
【図2】凸部の拡大図であり、(A)はベントホールが孔形状の場合、(B)はベントホールがスリット形状の場合、(C)は縫合部にベントホールを形成した場合、を示している。
【図3】ストラップ保持装置を示す概略断面図であり、(A)は加圧タイプ、(B)はシリンダタイプ、を示している。
【図4】ストラップの端部をエアバッグに固定した場合におけるストラップ保持装置の作用を示す説明図であり、(A)はベントホールを閉じた状態、(B)はベントホールを開いた状態を示している。
【図5】ストラップの端部をストラップ保持装置に接続した場合におけるストラップ保持装置の作用を示す説明図であり、(A)はベントホールを閉じた状態、(B)はベントホールを開いた状態を示している。
【図6】本発明に係るエアバッグ装置の第二実施形態を示す概略断面図であり、(A)はベントホールを閉じた状態、(B)はベントホールを開いた状態を示している。
【図7】第二実施形態の変形例を示す概略断面図であり、(A)はベントホールを閉じた状態、(B)はベントホールを開いた状態を示している。
【図8】本発明に係るエアバッグ装置の第三実施形態を示す説明図であり、(A)は背面図、(B)は側面断面図である。
【図9】本発明に係るエアバッグ装置の第四実施形態を示す説明図であり、(A)は背面図、(B)は側面断面図である。
【図10】本発明に係るエアバッグ装置の第五実施形態を示す概略断面図であり、(A)はベントホールを閉じた状態、(B)はベントホールを開いた状態、(C)は変形例を示している。
【図11】本発明に係るエアバッグ装置の第六実施形態を示す概略断面図であり、(A)はベントホールを閉じた状態、(B)はベントホールを開いた状態を示している。
【図12】本発明に係るエアバッグ装置の制御装置の構成を示す図である。
【図13】エアバッグ装置のガス発生器が1段の場合における制御装置の作用を示すフロー図であり、(A)は乗員がエアバッグに接触した場合にベントホールを開く場合のフロー図であり、(B)は乗員の体重に応じてベントホールを開閉させる場合のフロー図である。
【図14】エアバッグ装置のガス発生器の作動とストラップ保持装置の作動とを連動させる場合のフロー図である。
【図15】本発明に係るエアバッグ装置の第七実施形態を示す側面断面図である。
【図16】本発明に係るエアバッグ装置の第八実施形態を示す側面断面図である。
【図17】本発明に係るエアバッグ装置の第九実施形態を示す概略断面図であり、(A)はストラップ保持装置を有する場合、(B)はストラップ保持装置を有しない場合を示している。
【図18】本発明に係るエアバッグ装置の第十実施形態を示す概略断面図であり、(A)はエアバッグを頂部側に引っ張る場合、(B)はエアバッグをリテーナ側に引っ張る場合を示している。
【図19】本発明に係るエアバッグ装置の第十一実施形態を示す概略断面図であり、(A)はストラップをエアバッグの外側に接続した場合、(B)はストラップをエアバッグの内側に接続した場合を示している。
【図20】図18(A)に示したエアバッグ装置の変形例であり、(A)はストラップをテザーに接続した場合、(B)はストラップをインナーパネルに接続した場合を示している。
【符号の説明】
【0113】
1,61,81,91,101,111,122,171,181,191 ガス発生器
2,62,82,92,102,112,172,182,192 エアバッグ
2a,82a,92a フロントパネル
2b,82b,92b リアパネル
2c 取付孔
3,63,83,93,103,113,173,183,193 リテーナ
3a カバー
3b フック
3c 固定金具
4,64,74,84,94,104,114,164,174L,174R 凸部
4a 第一パネル
4b 第二パネル
4c,4d 縫代
5,65,75,85,95,105,115,165,175L,175R,185,195 ベントホール
6,66,86,96,106,116,166,176L,176R,186,196 ストラップ
6a,6b,66a,66b,86a,86b,96a,96b,106a,106b,116a,116b,186a,186b,196a,196b 端部
6c 係合孔
7,67,77,87,167,177L,177R,197 挿通孔
8,88,118,123,168,178,198 ストラップ保持装置
9 インストルメントパネル
9a 扉部
9b フランジ部
10 フロントウィンドウ
31,88a,118a,178a,198a キャップ
31a 突起
31b 留孔
32 ホルダー
32a 溝
32b 隙間
32c フランジ部
32d 係合穴
33 解除装置(マイクロガスジェネレータ)
33a ケース
33b マイクロガスジェネレータ(MGG)
33c ピストン
33d バネ
33e ピン
33f シリンダ部
33g 隙間
34,121 制御装置
35 コネクタ
36 ハーネス
37 固定具
60,100,110 乗員
84a,84b,94a,94b 突出部
97,107,117,187 挿通部
109,119 シート
124 加速度センサ
125 シート荷重センサ
126 シート位置センサ
127 エアバッグ圧力センサ
128 乗員位置センサ
129 車体圧力センサ
150 第二ベントホール
172L 左半側エアバッグ
172R 右半側エアバッグ
172a 接合部
201 テザー
202a,202b インナーパネル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にガスが供給されて膨張展開するエアバッグにおいて、前記エアバッグに形成されたベントホールと、一端が前記エアバッグに接続され他端が前記エアバッグの構成部品又は取付部品に接続されたストラップと、を備え、前記ベントホールは、前記ストラップで前記エアバッグを引っ張った時に、前記エアバッグの表面が重なり合う領域に配置されている、ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
前記エアバッグが変形して前記ベントホールが開くように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ。
【請求項3】
内部にガスが供給されて膨張展開するエアバッグにおいて、前記エアバッグの一部に外部に突出した部分を形成する凸部と、該凸部又は前記エアバッグに形成されたベントホールと、一端が前記凸部に接続され他端が前記エアバッグの構成部品又は取付部品に接続されたストラップと、を備え、前記ベントホールは、前記ストラップで前記凸部を引っ張った時に、前記凸部と前記エアバッグとが重なり合う領域に配置されている、ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項4】
前記凸部が起立して前記ベントホールが開くように構成されている、ことを特徴とする請求項3に記載のエアバッグ。
【請求項5】
前記凸部内に前記エアバッグからガスが流入して前記凸部の内圧が高まり、前記凸部が起立するように構成されている、ことを特徴とする請求項4に記載のエアバッグ。
【請求項6】
前記凸部は、前記ベントホールが形成された第一パネルと該第一パネルに連接された第二パネルとを有し、該第一パネル及び該第二パネルが前記エアバッグに形成された取付孔に縫合されている、ことを特徴とする請求項3に記載のエアバッグ。
【請求項7】
前記エアバッグは、乗員側に配置されるフロントパネルと車両構造物側に配置されるリアパネルとを有し、該フロントパネル及び該リアパネルの外周部に形成された突出部を縫合することによって前記凸部が形成されている、ことを特徴とする請求項3に記載のエアバッグ。
【請求項8】
前記エアバッグの外面には前記ストラップの他端を前記エアバッグの内部に案内するための挿通孔が形成されている、ことを特徴とする請求項1又は請求項3に記載のエアバッグ。
【請求項9】
前記エアバッグの内面には前記ストラップの他端を案内するための挿通部が形成されている、ことを特徴とする請求項1又は請求項3に記載のエアバッグ。
【請求項10】
前記エアバッグは、乗員の左側に膨張展開される左半側エアバッグと、乗員の右側に膨張展開される右半側エアバッグと、を有し、該左半側エアバッグ及び該右半側エアバッグのそれぞれに前記ベントホールが形成されている、ことを特徴とする請求項1又は請求項3に記載のエアバッグ。
【請求項11】
前記エアバッグは、前記領域以外の場所に形成された第二ベントホールを有する、ことを特徴とする請求項1又は請求項3に記載のエアバッグ。
【請求項12】
前記構成部品は、前記エアバッグを形成するアウターパネル、前記エアバッグ内に配置されるテザー又は前記エアバッグ内に配置されるインナーパネルのいずれかである、ことを特徴とする請求項1又は請求項3に記載のエアバッグ。
【請求項13】
前記取付部品は、前記エアバッグを収容するリテーナ、該リテーナに連結されたバックプレート又は前記リテーナに連結されたカバーのいずれかである、ことを特徴とする請求項1又は請求項3に記載のエアバッグ。
【請求項14】
所定の条件でガスを発生させるガス発生器と、該ガス発生器に接続されて膨張展開されるエアバッグと、該エアバッグを収容するリテーナと、を備えたエアバッグ装置において、前記エアバッグは、請求項1〜請求項13のいずれかに記載されたエアバッグである、ことを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項15】
前記ストラップの長さを一定に保持可能かつ前記ストラップを開放可能なストラップ保持装置と、該ストラップ保持装置に前記ストラップを開放する解除信号を発信する制御装置と、を備えたことを特徴とする請求項14に記載のエアバッグ装置。
【請求項16】
前記制御装置は、乗員が前記エアバッグに接触した時又は乗員の体重が所定の基準値よりも軽い場合に前記ガス発生器が作動した時に前記解除信号を発信する、ことを特徴とする請求項15に記載のエアバッグ装置。
【請求項17】
前記制御装置は、前記エアバッグが前記第二ベントホールを有し、乗員の体重が所定の基準値よりも重い場合に、前記解除信号を発信しない、ことを特徴とする請求項15に記載のエアバッグ装置。
【請求項18】
前記制御装置は、前記ガス発生器が第一ガス発生器と第二ガス発生器とを有し、該第一ガス発生器のみ作動した場合に、略同時に前記解除信号を発信する、ことを特徴とする請求項15に記載のエアバッグ装置。
【請求項19】
前記制御装置は、前記エアバッグが前記第二ベントホールを有し、前記ガス発生器が第一ガス発生器と第二ガス発生器とを有し、該第一ガス発生器及び該第二ガス発生器の両方が作動した場合に、前記解除信号を発信しない、ことを特徴とする請求項15に記載のエアバッグ装置。
【請求項20】
前記ストラップ保持装置は、前記ストラップに形成された係合孔に係合可能なキャップと、該キャップを固定可能なホルダーと、該ホルダーに接続され前記キャップの固定を解除可能な解除装置と、該解除装置を作動させる解除信号を前記制御装置から受信するコネクタと、から構成されていることを特徴とする請求項15に記載のエアバッグ装置。
【請求項21】
前記解除装置は、ガス発生器により構成されている、ことを特徴とする請求項20に記載のエアバッグ装置。
【請求項22】
内部にガスが供給されて膨張展開するエアバッグの排気方法において、前記エアバッグにベントホールを形成し、前記エアバッグを変形させることにより前記エアバッグの表面で前記ベントホールを閉じ、前記エアバッグを変形させることにより前記ベントホールを開いて前記エアバッグ内のガスを排気する、ことを特徴とするエアバッグの排気方法。
【請求項23】
内部にガスが供給されて膨張展開するエアバッグの排気方法において、前記エアバッグの一部に外部に突出した凸部を形成し、該凸部又は前記エアバッグにベントホールを形成し、前記凸部を前記エアバッグの表面に押し付けて前記ベントホールを閉じ、前記凸部を前記エアバッグの表面から離して前記ベントホールを開き、前記エアバッグ内のガスを排気する、ことを特徴とするエアバッグの排気方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2008−308139(P2008−308139A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−160644(P2007−160644)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(306009581)タカタ株式会社 (812)
【Fターム(参考)】