説明

エアバッグ及びエアバッグ装置

【課題】通常の着座状態の乗員に対する拘束性能を確保しつつ、アウトオブポジションの乗員に対する衝撃を緩和することができる、エアバッグ及びエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】通常時は車両の座席11内に折り畳まれて収容されており緊急時に膨張展開されるエアバッグと2、エアバッグ2にガスを供給するインフレータ3と、を有し、エアバッグ2は、基布2aにより構成された袋体21と、袋体21に形成された複数のプリーツ部22と、を有し、プリーツ部22は、袋体21が膨張展開したときに、車両の前後方向に沿う皺部23を形成し、車両の前後方向からの負荷に対してガスを皺部23に逃がしながら袋体21を膨張展開させるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ及びエアバッグ装置に関し、特に、乗員とドア部との間に膨張展開されるサイドエアバッグに適したエアバッグ及びエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、衝突時や急減速時等の緊急時にエアバッグを車内で膨張展開させて乗員に生ずる衝撃を吸収するためのエアバッグ装置が搭載されることが一般的になってきている。かかるエアバッグ装置は、一般に、通常時は車両の構造物内に折り畳まれて収容されており緊急時に膨張展開されるエアバッグと、該エアバッグにガスを供給するインフレータと、を有する。
【0003】
例えば、サイドエアバッグ装置の場合、エアバッグ装置は、乗員が着座する座席(シート)の背面部(シートバック)に内蔵され、エアバッグは、車両衝突時や急減速時に背面部(シートバック)を突き破って又は押し退けて前方に向かって車内に放出され、車両のドア部と乗員との間で迅速に膨張展開される。かかるエアバッグの構造には、種々のものが既に提案されている(特許文献1〜特許文献4参照)。
【0004】
例えば、特許文献1に記載されたエアバッグは、立体構造のエアバッグを構成する代わりに、エアバッグを構成する一対のパネルの周縁部に膨張領域の内部に折り込まれる中折り領域を形成することによって膨張助長手段を構成している。かかる膨張助長手段により、平面的なパネル構成でありながら、膨張領域の一部で車両横方向の膨張を助長することができ、展開幅を部分的に増加させることができる。
【0005】
また、特許文献2に記載されたエアバッグは、所定形状の一枚の基布に対し、その全周の端部を集めるように折り畳んで綴じることによりほぼ密閉する空間を内部に形成したものである。かかる構成によれば外周縫合工程を不要とすることができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0006】
また、特許文献3に記載されたエアバッグは、膨張可能なクッションに隣接し、底部と後部の一方に、インフレーションガスによってクッションが完全に膨張する前に、エアバッグに沿って延びるように配置された膨張可能なチューブを有する。かかる構成により、最初にチューブを完全膨張させてからクッション部にガスを供給することができ、いわゆるアウトオブポジション(標準の着座位置からずれた位置)の乗員に対する衝撃を緩和することができる。
【0007】
また、特許文献4に記載されたエアバッグは、チューブパネルにより構成される後方チャンバとクッション部により構成される前方チャンバとを有し、前方チャンバに配置された通気開口と該通気開口を開閉可能な閉塞パネルとにより構成される通気システムを有するものである。かかる構成により、前方チャンバの膨張が阻止された場合に通気開口を開放することによってガスを外部に放出することができ、いわゆるアウトオブポジションの乗員に対しても乗員に対する衝撃を緩和することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4345684号公報
【特許文献2】特開2010−52562号公報
【特許文献3】特表2003−501303号公報
【特許文献4】特表2010−535121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した特許文献3及び特許文献4に記載されたように、アウトオブポジション(例えば、車両のドア部に身体の一部をもたせかけた状態等)の乗員に対して、エアバッグを膨張展開させようとした場合、エアバッグを膨張させるガス圧を低下させたり、エアバッグを膨張させるガスを外部に放出したりすることが検討されている。しかしながら、かかる手段では、アウトオブポジションの乗員に対する衝撃を緩和できるものの、通常の着座状態(座席に着座して背面部(シートバック)に背をもたせかけた状態)の乗員に対しては、エネルギー吸収力が低下したり、展開速度が低下したりしてしまい、エアバッグの拘束性能を維持することが困難であった。
【0010】
一方、上述した特許文献1及び特許文献2に記載されたように、エアバッグに中折り部を形成したり、基布の全周を折り畳んで綴じたりするエアバッグでは、通常の着座状態の乗員に対して拘束性能を発揮できるように構成されている。
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、通常の着座状態の乗員に対する拘束性能を確保しつつ、アウトオブポジションの乗員に対する衝撃を緩和することができる、エアバッグ及びエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、通常時は車両の構造物内に折り畳まれて収容されており緊急時にガスが供給されて膨張展開するエアバッグにおいて、基布により構成された袋体と、該袋体に形成された単数又は複数のプリーツ部と、を有し、前記プリーツ部は、前記袋体が膨張展開したときに、前記車両の前後方向に沿う皺部を形成し、前記車両の前後方向からの負荷に対して前記ガスを前記皺部に逃がしながら前記袋体を膨張展開させるようにした、ことを特徴とするエアバッグが提供される。
【0013】
また、本発明によれば、通常時は車両の構造物内に折り畳まれて収容されており緊急時に膨張展開されるエアバッグと、該エアバッグにガスを供給するインフレータと、を有するエアバッグ装置において、前記エアバッグは、基布により構成された袋体と、該袋体に形成された単数又は複数のプリーツ部と、を有し、前記プリーツ部は、前記袋体が膨張展開したときに、前記車両の前後方向に沿う皺部を形成し、前記車両の前後方向からの負荷に対して前記ガスを前記皺部に逃がしながら前記袋体を膨張展開させるようにした、ことを特徴とするエアバッグ装置が提供される。
【0014】
前記エアバッグ及び前記エアバッグ装置において、前記プリーツ部は、前記基布を二つ折りした後、山側の中央部に頂点を形成するように、縁側を折り重ねて縫製することにより形成するようにしてもよい。
【0015】
また、複数の前記プリーツ部を有する場合に、前記プリーツ部は幅の大きさが異なるように折り重ねられるようにしてもよい。また、前記プリーツ部を形成する縫製部は、前記袋体の固定端側から自由端側に向かって傾斜していてもよい。また、前記プリーツ部を形成する縫製部は、前記袋体を構成する縫製部を兼用していてもよい。また、前記頂点は、例えば、前記基布の前記車両の上下方向長さに対して、三等分した場合の中央領域に含まれる。
【0016】
前記基布は、略星型形状の外形を有していてもよい。また、前記プリーツ部を形成して前記袋体を構成した後の前記袋体を平面展開したときの面積は、前記袋体を構成する前の前記基布を平面展開したときの面積に対して0.25〜0.35倍の大きさを有していてもよい。また、前記皺部は、膨張展開した前記袋体の前記車両の前後方向長さに対して半分以上の長さを有していてもよい。また、前記袋体は、例えば、前記車両のドア部と乗員との間で膨張展開されるサイドエアバッグとして使用される。
【発明の効果】
【0017】
上述した本発明に係るエアバッグ及びエアバッグ装置によれば、袋体を膨張展開したときに車両の前後方向に沿う皺部を形成するようにプリーツ部を形成したことにより、車両の前後方向から負荷が生じた場合に、袋体を膨張展開させるガスを皺部に逃がして、皺部を伸ばすように膨張させつつ、袋体にガスを供給することができる。したがって、皺部を予備的な膨張部として使用することができ、例えば、アウトオブポジションの乗員に向かってエアバッグを膨張展開する場合であっても、アウトオブポジションの乗員を回避しながら包み込むように袋体を膨張展開することができ、衝撃を緩和することができる。
【0018】
また、袋体を膨張展開させる通常のガス圧では皺部が伸ばされることがなく、車両の左右方向から負荷が生じた場合であっても、皺部が袋体に挟み込まれることによって皺部が伸ばされることがなく、エネルギー吸収体として機能し得る。したがって、皺部を形成した場合であっても、通常の着座状態の乗員と車両構造物との間におけるエアバッグのエネルギー吸収力及び展開速度を維持することができる。
【0019】
よって、上述した本発明に係るエアバッグ及びエアバッグ装置によれば、通常の着座状態の乗員に対する拘束性能を確保しつつ、アウトオブポジションの乗員に対する衝撃を緩和することができる。
【0020】
プリーツ部を中央部の頂点を基点にして縁部を折り重ねて形成することにより、エアバッグの膨張展開時にプリーツ部が捲れるように膨張展開し、縫製部を基点に車両の前後方向に沿って延びる皺部を容易に形成することができる。また、かかる構成により、袋体の縫製工程と同じ工程でプリーツ部を縫製することができる。
【0021】
プリーツ部の幅の大きさを異ならせることにより、複数のプリーツ部を形成する場合であっても、基布の折り重ね枚数を段階的に変化させることができ、急に厚くなったり薄くなったりする部分をなくすことができ、縫製作業の労力を低減することができる。
【0022】
プリーツ部を形成する縫製部を前方に傾斜させることにより、エアバッグの膨張展開時に基布の一部を袋体の内側に向かって押し込むことができ、縫製部の三次元的なテザー効果によって皺部を容易に形成することができる。また、傾斜角度を調整することにより、皺部の長さや深さを調整することもできる。
【0023】
プリーツ部の縫製と袋体の縫製とを兼用することにより、一回の縫製作業でプリーツ部及び袋体の両方を縫製することができ、縫製工程の簡素化を図ることができ、縫製作業の効率を向上させることができる。
【0024】
プリーツ部の基点となる頂点を所定の中央領域に含まれる範囲内に設定することにより、エアバッグの容量や型式、車種等に応じた皺部を形成することができる。
【0025】
基布を略星型形状とすることにより、プリーツ部の縫製部を前方に傾斜させた形状の袋体を、無駄な基布が生じないように形成することができる。
【0026】
プリーツ部を有する袋体の面積を、元の基布の面積に対して所定の範囲内の大きさに形成(縮小)することにより、エアバッグの容量に適した皺部を容易に形成することができる。
【0027】
皺部を袋体の車両前後方向長さに対して半分以上の長さに形成することにより、アウトオブポジションの乗員に対して作用する予備的な膨張部を大きく取ることができ、より効果的にアウトオブポジションの乗員に対する衝撃を緩和することができる。
【0028】
袋体をサイドエアバッグとして使用することにより、エアバッグにおける車両の前後方向がアウトオブポジションの乗員に対して効果的に作用し、エアバッグにおける車両の左右方向が通常の着座状態の乗員に対して効果的に作用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第一実施形態に係るエアバッグ装置を示す図であり、(A)は膨張展開状態を示す概略側面図、(B)は収容状態を示す概略断面図、である。
【図2】図1(A)に示したエアバッグの詳細図であり、(A)は車体側側面図、(B)は乗員側側面図、(C)は上面図、(D)は図2(A)におけるD−D断面図、である。
【図3】図1に示したエアバッグの作用を示す図であり、(A)はアウトオブポジションの場合、(B)は通常の着座状態の場合、を示している。
【図4】プリーツ部の形成方法を示す図であり、(A)は平面展開工程、(B)は二つ折り工程、(C)は第一折り重ね工程、(D)は第二折り重ね工程、(E)は第三折り重ね工程、(F)は縫製工程、を示している。
【図5】プリーツ部の形成方法の第一変形例を示す図であり、(A)は平面展開工程、(B)は二つ折り工程、(C)は第一折り重ね工程、(D)は第二折り重ね工程、(E)は第三折り重ね工程、(F)は縫製工程、を示している。
【図6】プリーツ部の形成方法の第二変形例を示す図であり、(A)は平面展開工程、(B)は二つ折り工程、(C)は第一折り重ね工程、(D)は第二折り重ね工程、(E)は縫製工程、を示している。
【図7】プリーツ部の形成方法の第三変形例を示す図であり、(A)は平面展開工程、(B)は二つ折り工程、(C)は第一折り重ね工程、(D)は第二折り重ね工程、(E)は縫製工程、を示している。
【図8】プリーツ部の形成方法の第四変形例を示す図であり、(A)は平面展開工程、(B)は二つ折り工程、(C)は第一折り重ね工程、(D)は第二折り重ね工程、(E)は第三折り重ね工程、(F)及び(G)は縫製工程、を示している。
【図9】プリーツ部の形成方法の第五変形例を示す図であり、(A)は平面展開工程、(B)は二つ折り工程、(C)は第一折り重ね工程、(D)は縫製工程、を示している。
【図10】本発明の第二実施形態に係るエアバッグ装置を示す図であり、(A)は膨張展開状態を示す概略側面図、(B)はエアバッグを構成する基布の平面展開図、である。
【図11】本発明の第三実施形態に係るエアバッグ装置を示す図であり、(A)は膨張展開状態を示す概略側面図、(B)はエアバッグを構成する基布の平面展開図、である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係るエアバッグ装置の実施形態について、図1〜図11を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の第一実施形態に係るエアバッグ装置を示す図であり、(A)は膨張展開状態を示す概略側面図、(B)は収容状態を示す概略断面図、である。図2は、図1(A)に示したエアバッグの詳細図であり、(A)は車体側側面図、(B)は乗員側側面図、(C)は上面図、(D)は図2(A)におけるD−D断面図、である。図3は、図1に示したエアバッグの作用を示す図であり、(A)はアウトオブポジションの場合、(B)は通常の着座状態の場合、を示している。図4は、プリーツ部の形成方法を示す図であり、(A)は平面展開工程、(B)は二つ折り工程、(C)は第一折り重ね工程、(D)は第二折り重ね工程、(E)は第三折り重ね工程、(F)は縫製工程、を示している。
【0031】
本発明の第一実施形態に係るエアバッグ装置1は、図1〜図4に示したように、通常時は車両の座席11内に折り畳まれて収容されており緊急時に膨張展開されるエアバッグ2と、エアバッグ2にガスを供給するインフレータ3と、を有し、エアバッグ2は、基布2aにより構成された袋体21と、袋体21に形成された複数のプリーツ部22と、を有し、プリーツ部22は、袋体21が膨張展開したときに、車両の前後方向に沿う皺部23を形成し、車両の前後方向からの負荷に対してガスを皺部23に逃がしながら袋体21を膨張展開させるようにしたものである。なお、本実施形態の説明において、エアバッグ装置1に取り付けた状態の袋体21をエアバッグ2と称することとする。
【0032】
前記エアバッグ装置1は、例えば、図1(A)及び(B)に示したように、サイドエアバッグ装置であり、前部座席(運転席用座席及び助手席用座席)や後部座席等の座席11(シート)に装着される。かかる場合、袋体21は、車両のドア部12と乗員Pとの間で膨張展開されるエアバッグ2(サイドエアバッグ)として使用されることとなる。具体的には、座席11は、乗員Pが着座する腰掛部11aと、乗員Pの背部を支持する背面部11b(シートバック)と、乗員Pの頭部を支持するヘッドレスト11cと、を有し、エアバッグ装置1は、背面部11bに装着される。
【0033】
エアバッグ装置1は、図1(B)に示したように、エアバッグ2及びインフレータ3をエアバッグケース4に収納した状態で、背面部11bにおける車両のドア部12側に収容される。背面部11bは、開裂予定部11dを有し、通常時は閉じた状態を維持し、車両衝突時や急減速時はエアバッグ2により突き破られて又は押し退けられて開いた状態に変形し、エアバッグ2を車内に放出できるように構成されている。
【0034】
前記インフレータ3は、エアバッグ2に供給されるガスを発生させるガス発生器であり、例えば、略円柱形状の外形をなしている。インフレータ3は、エアバッグ2に形成された取り付け部にボルト等の締結具により接続され、エアバッグ2とともにエアバッグケース4に収納される。エアバッグケース4への収納時には、エアバッグ2は所定の折り畳み方法(蛇腹折り、ロール折り、これらの組み合わせ等)により折り畳まれ、インフレータ3はエアバッグケース4に固定される。
【0035】
インフレータ3は、図示しないECU(電子制御ユニット)に接続されており、加速度センサ等の計測値に基づいて制御される。ECUが車両の衝突や急減速を感知又は予測すると、インフレータ3はECUからの点火電流により点火され、インフレータ3の内部に格納された薬剤を燃焼させてガスを発生させ、エアバッグ2にガスを供給する。
【0036】
前記エアバッグ2は、図1(B)に示したように、通常時は車両の座席11内に折り畳まれて収容されており、図1(A)に示したように、緊急時にガスが供給されて膨張展開する。図示したエアバッグ2は、膨張展開時に乗員Pの肩部〜腹部に対応する大きさを有する。また、エアバッグ2は、図1(A)及び図2(A)〜(D)に示したように、車両の後方側から前方側に向かう方向に膨張展開するように構成されており、エアバッグ2の膨張展開方向と略垂直な方向(車両の左右方向又はエアバッグ2の幅方向)に所定の厚みを形成するように構成されている。エアバッグ2の前方には、エアバッグ2内のガスを外部に放出して内圧を調整するベントホール24が形成されている。ベントホール24の大きさや個数は、エアバッグ2の容量や内圧等の条件によって適宜設定される。
【0037】
また、エアバッグ2は、膨張展開したときに複数の皺部23を有する。図示した実施形態では、ドア部12側から乗員P側に向かって順に、第一皺部23a、第二皺部23b及び第三皺部23cの三本の皺部23を有する。皺部23は、エアバッグ2の後方側から前方側に向かって延びるように形成されており、例えば、膨張展開したエアバッグ2(袋体21)の車両の前後方向長さに対して半分以上の長さを有する。皺部23の本数、長さ、深さ等の条件は、エアバッグ2の容量や内圧等の条件によって設定され、後述するプリーツ部22の構成によって調整することができる。
【0038】
ここで、皺部23を有するエアバッグ2が、皺部23の形成された方向、すなわち、車両の前後方向から負荷を受けた場合について説明する。図3(A)はアウトオブポジションの乗員Pを想定したものである。エアバッグ2の膨張展開方向である車両の前後方向に乗員Pが存在した場合、エアバッグ2は乗員Pと接触し、前方に膨張することができず、ガスが行き場を失う。しかしながら、本実施形態では、この行き場を失ったガスは、エアバッグ2に形成された皺部23に逃げることができ、皺部23の内圧を上昇させ、皺部23を伸ばすこととなり、皺部23周辺のエアバッグ2が膨張することとなる。すなわち、皺部23は、予備的な膨張部として機能する。その結果、エアバッグ2の膨張展開時に乗員Pが前方に存在している場合であっても、エアバッグ2は、乗員Pを回避しながら包み込むように乗員Pに沿って膨張することができる。したがって、アウトオブポジションの乗員Pが存在する場合であっても、乗員Pに対する衝撃を緩和することができる。また、皺部23を長く形成するほど予備的な膨張部を大きく取ることができ、より効果を向上させることができる。
【0039】
次に、皺部23を有するエアバッグ2が、皺部23の形成された方向と略垂直の方向、すなわち、車両の左右方向から負荷を受けた場合について説明する。図3(B)は通常の着座状態の乗員Pを想定したものである。膨張展開したエアバッグ2の幅方向の一方には乗員Pが存在し、他方にはドア部12が存在する。車両が側突したような場合には、乗員Pはドア部12側に移動し、エアバッグ2は乗員Pとドア部12によって挟まれることとなり、車両の左右方向から負荷を受ける。このとき、皺部23は、エアバッグ2の基布2aと一緒に縫製されており、その縫製部が皺部23を引き込むテザー的な効果を有することから、エアバッグ2の表皮に挟み込まれることとなり、皺部23が伸ばされ難くなる。したがって、エアバッグ2は、乗員Pの衝突に伴う内圧上昇は、ベントホール24からのガスの放出との関係で調整され、エネルギー吸収体として機能し、乗員Pを拘束する。すなわち、エアバッグ2に皺部23を形成したとしても、通常の着座状態の乗員Pに対しては、通常のエアバッグ2として機能するため、従来のエアバッグと同様に、エネルギー吸収力及び展開速度を維持することができる。
【0040】
次に、プリーツ部22の形成方法について、図4を参照しつつ説明する。図4(A)に示した平面展開工程は、袋体21を構成する基布2aを平面展開する工程である。基布2aは、図示したように、五つの突出部2b〜2fを備えた略星型形状の外形を有する。下部の突出部2d,2eにおける曲線部は、エアバッグ2の下部の膨張形状を規定する部分であるが、直線部により構成してもよい。また、突出部2d及び突出部2eは、中間に形成されるくびれ部を省略して、一つの突出部としてもよい。
【0041】
図4(B)に示した二つ折り工程は、図4(A)に示した斜線部を折り線L1に沿って二つ折りにする工程である。折り線L1は、例えば、基布2aの中心線である。かかる工程により、基布2aは、突出部2cと突出部2fとが一致し、突出部2dと突出部2eとが一致するように折り重ねられる。なお、袋体21の縫製方法によっては、折り線L1は基布2aの中心線からずれていてもよいが、この場合、基布2a外形も折り線L1に合わせて修正しておく必要がある。
【0042】
図4(C)に示した第一折り重ね工程は、プリーツ部22を形成するために、図4(B)における斜線部を折り線L2に沿って基布2aを折り重ねる工程である。折り線L2は、二つ折りした基布2aの山側の位置する頂点Mを通り、突出部2f(2c)及び突出部2e(2d)の中間点を通るように設定される。かかる工程により、突出部2b及び突出部2f(2c)は突出部2e(2d)上に折り重ねられる。なお、ここでは、頂点Mは、基布2aの車両の上下方向長さHに対してH/2の長さを有する中間点に設定されている。
【0043】
図4(D)に示した第二折り重ね工程は、図4(C)における斜線部を折り線L3に沿って基布2aを折り重ねる工程である。折り線L3は、頂点Mを通り、突出部2f(2c)の中間点を通るように設定される。かかる工程により、突出部2f(2c)の一部及び突出部2bは突出部2f(2c)の一部の上に折り重ねられ、第一折り重ね部2gが形成される。
【0044】
図4(E)に示した第三折り重ね工程は、図4(D)における斜線部を折り線L4に沿って基布2aを折り重ねる工程である。折り線L4は、頂点Mを通り、突出部2b及び突出部2f(2c)の中間点を通るように設定される。かかる工程により、突出部2bは突出部2f(2c)上に折り重ねられ、第二折り重ね部2hが形成される。図示したように、第一折り重ね部2gと第二折り重ね部2hとは、幅の大きさが異なるように折り重ねられており、第一折り重ね部2gは幅D1を有し、第二折り重ね部2hは幅D2を有する。ここでは、D1>D2となるように第一折り重ね部2g及び第二折り重ね部2hを形成しているが、D2>D1となるように第一折り重ね部2g及び第二折り重ね部2hを形成するようにしてもよい。なお、図4(E)に示した左図は平面図、右図は側面図を示しており、側面図において二つ折りされた基布2aを一本の実線で図示している。
【0045】
図4(F)に示した縫製工程は、図4(E)に示した状態に折り重ねられた基布2aの縁部を縫製して袋体21を形成する工程である。縫製部25は、破線で図示したように、突出部2e(2d)の縁部を縫製するとともに、第一折り重ね部2g及び第二折り重ね部2hの縁部を縫製することによって形成される。縫製部25の隙間は、インフレータ3のガスを供給するガス供給口2iを構成する。かかる工程により、袋体21が形成されるとともに、第一折り重ね部2g及び第二折り重ね部2hによって二つのプリーツ部22(第一プリーツ部22a及び第二プリーツ部22b)が形成される。
【0046】
第一折り重ね部2g及び第二折り重ね部2hは、異なる幅D1,D2に形成されていることから、プリーツ部22(第一プリーツ部22a及び第二プリーツ部22b)も異なる幅に形成されることとなる。このようにプリーツ部22の幅を異ならせることにより、基布2aの折り重ね枚数を段階的に変化させることができ(ここでは、二枚→六枚→八枚と変化する)、急に厚くなったり薄くなったりする部分をなくすことができ、縫製作業の労力を低減することができる。
【0047】
また、プリーツ部22を形成する縫製部25は、袋体21を構成する縫製部25を兼用している。したがって、一回の縫製作業でプリーツ部22及び袋体21の両方を縫製することができ、縫製工程の簡素化を図ることができ、縫製作業の効率を向上させることができる。
【0048】
上述したようにプリーツ部22は、基布2aを二つ折りした後、山側の中央部に頂点Mを形成するように、縁側を折り重ねて縫製することにより形成される。かかるプリーツ部22は、袋体21の一部を構成しており、プリーツ部22内にもガスが供給され得る。一方で、プリーツ部22の外周部は縫製部25により綴じられている。したがって、プリーツ部22の折り重ね部内にガスが供給された場合、縫製部25は一種のテザーのように作用し、プリーツ部22の外周部をエアバッグ2の内側に引き寄せることとなる。その結果、エアバッグ2が膨張展開したときにプリーツ部22の縫製部25を基点にして皺部23が形成される。かかるプリーツ部22を形成することによって、エアバッグ2の膨張展開時に捲れるように膨張展開させ、車両の前後方向に沿って延びる皺部23を容易に形成することができる。
【0049】
図4(F)に示したように、プリーツ部22を形成する縫製部25は、袋体21の固定端側から自由端側に向かって傾斜している。かかる構成により、エアバッグ2の膨張展開時に基布2aの一部を袋体21の内側に向かって押し込むことができ、縫製部25の三次元的なテザー効果によって皺部23を容易に形成することができる。また、傾斜角度を調整することにより、皺部23の長さや深さを調整することができる。この傾斜した縫製部25は、突出部2bと突出部2f(2c)とのくびれ部及び突出部2f(2c)と突出部2e(2d)とのくびれ部を縫製することによって形成される部分であるため、縫製部25を自由端側に傾斜させるためには、基布2aは、図4(A)に図示したような略星型形状の外形に形成される。すなわち、基布2aを略星型形状に形成することにより、無駄な基布2aが生じないようにすることができる。
【0050】
上述した説明では、頂点Mは、H/2の長さを有する中間点に設定しているが、図4(A)に示したように、頂点Mは、例えば、基布2aの車両の上下方向長さHに対して、三等分した場合の中央領域(H/3〜2H/3の領域)に含まれるように設定される。すなわち、頂点Mが形成される中央部とは、この中央領域を意味する。頂点Mの位置は、エアバッグ2の膨張展開形状やプリーツ部22の深さ等を考慮して設定される。頂点Mの位置を調整することにより、エアバッグ2の容量や型式、車種等に応じた皺部23を形成することができる。
【0051】
また、図4(E)に示したように、プリーツ部22を形成した袋体21は、図4(A)に示した基布2aを約1/4の大きさに折り重ねられており、プリーツ部22を形成して袋体21を構成した後の袋体21を平面展開したときの面積は、袋体21を構成する前の基布2aを平面展開したときの面積に対して0.25〜0.35倍の大きさを有している。プリーツ部22を形成した袋体21の面積が0.25(=1/4)より大きく設定されているのは、突出部2d,2eの面積が、突出部2b,2c,2fの面積よりも大きく設定される場合を考慮したものである。このように、プリーツ部22を有する袋体21の面積を、元の基布2aの面積に対して所定の範囲内の大きさに形成(縮小)することにより、エアバッグ2の容量に適した皺部23を容易に形成することができる。
【0052】
続いて、プリーツ部22の形成方法の変形例について、図5〜図9を参照しつつ説明する。ここで、図5は、プリーツ部の形成方法の第一変形例を示す図であり、(A)は平面展開工程、(B)は二つ折り工程、(C)は第一折り重ね工程、(D)は第二折り重ね工程、(E)は第三折り重ね工程、(F)は縫製工程、を示している。なお、図4に示したプリーツ部の形成方法と同じ部分については、適宜説明を省略する。
【0053】
図5(A)に示した平面展開工程は、突出部2b〜2fを有する基布2aを平面展開する工程である。図5(B)に示した二つ折り工程は、図5(A)に示した斜線部を折り線L11に沿って二つ折りにする工程である。折り線L11は、例えば、基布2aの中心線である。図5(C)に示した第一折り重ね工程は、図5(B)における斜線部を折り線L12に沿って基布2aを折り重ねる工程である。折り線L12は、頂点Mを通り、突出部2f(2c)及び突出部2e(2d)の中間点を通るように設定される。ここまでの工程は、図4に示した実施形態と同じ工程である。
【0054】
図5(D)に示した第二折り重ね工程は、図5(C)における斜線部を折り線L13に沿って基布2aを折り重ねる工程である。折り線L13は、頂点Mを通り、突出部2f(2c)及び突出部2bの中間点を通るように設定される。かかる工程により、突出部2bは突出部2f(2c)上に折り重ねられ、第一折り重ね部2gが形成される。
【0055】
図5(E)に示した第三折り重ね工程は、図5(D)における斜線部を折り線L14に沿って基布2aを折り重ねる工程である。折り線L14は、頂点Mを通り、突出部2f(2c)の中間点を通るように設定される。かかる工程により、突出部2bは突出部2f(2c)の間に挟みこまれ、突出部2f(2c)によって第二折り重ね部2hが形成される。図示したように、第一折り重ね部2gと第二折り重ね部2hとは、幅D1,D2の大きさが異なるように折り重ねられている。なお、図5(E)に示した左図は平面図、右図は側面図を示しており、側面図において二つ折りされた基布2aを一本の実線で図示している。
【0056】
図5(F)に示した縫製工程は、図5(E)に示した状態に折り重ねられた基布2aの縁部を縫製して袋体21を形成する工程である。縫製部25は、破線で図示したように、突出部2e(2d)の縁部を縫製するとともに、第一折り重ね部2g及び第二折り重ね部2hの縁部を縫製することによって形成される。かかる工程により、袋体21が形成されるとともに、第一折り重ね部2g及び第二折り重ね部2hによって二つのプリーツ部22(第一プリーツ部22a及び第二プリーツ部22b)が形成される。
【0057】
図6は、プリーツ部の形成方法の第二変形例を示す図であり、(A)は平面展開工程、(B)は二つ折り工程、(C)は第一折り重ね工程、(D)は第二折り重ね工程、(E)は縫製工程、を示している。なお、図4に示したプリーツ部の形成方法と同じ部分については、適宜説明を省略する。
【0058】
図6(A)に示した平面展開工程は、突出部2b〜2fを有する基布2aを平面展開する工程である。図6(B)に示した二つ折り工程は、図6(A)に示した斜線部を折り線L21に沿って二つ折りにする工程である。折り線L21は、例えば、基布2aの中心線である。ここまでの工程は、図4に示した実施形態と同じ工程である。
【0059】
図6(C)に示した第一折り重ね工程は、図6(B)における斜線部を折り線L22に沿って基布2aを折り重ねる工程である。折り線L22は、頂点Mを通り、突出部2f(2c)の中間点を通るように設定される。かかる工程により、突出部2bは突出部2f(2c)及び突出部2e(2d)上に折り重ねられ、第一折り重ね部2gが形成される。
【0060】
図6(D)に示した第二折り重ね工程は、図6(C)における斜線部を折り線L23に沿って基布2aを折り重ねる工程である。折り線L23は、頂点Mを通り、突出部2b及び突出部2f(2c)の中間点を通るように設定される。かかる工程により、突出部2f(2c)の一部は突出部2b上に折り重ねられ、第二折り重ね部2hが形成される。図示したように、第一折り重ね部2gと第二折り重ね部2hとは、幅D1,D2の大きさが異なるように折り重ねられている。なお、図6(D)に示した左図は平面図、右図は側面図を示しており、側面図において二つ折りされた基布2aを一本の実線で図示している。
【0061】
図6(E)に示した縫製工程は、図6(D)に示した状態に折り重ねられた基布2aの縁部を縫製して袋体21を形成する工程である。縫製部25は、破線で図示したように、突出部2e(2d)の縁部を縫製するとともに、第一折り重ね部2g及び第二折り重ね部2hの縁部を縫製することによって形成される。かかる工程により、袋体21が形成されるとともに、第一折り重ね部2g及び第二折り重ね部2hによって二つのプリーツ部22(第一プリーツ部22a及び第二プリーツ部22b)が形成される。
【0062】
図7は、プリーツ部の形成方法の第三変形例を示す図であり、(A)は平面展開工程、(B)は二つ折り工程、(C)は第一折り重ね工程、(D)は第二折り重ね工程、(E)は縫製工程、を示している。なお、図4に示したプリーツ部の形成方法と同じ部分については、適宜説明を省略する。
【0063】
図7(A)に示した平面展開工程は、突出部2b〜2fを有する基布2aを平面展開する工程である。図7(B)に示した二つ折り工程は、図7(A)に示した斜線部を折り線L31に沿って二つ折りにする工程である。折り線L31は、例えば、基布2aの中心線である。ここまでの工程は、図4に示した実施形態と同じ工程である。
【0064】
図7(C)に示した第一折り重ね工程は、図7(B)における斜線部を折り線L32に沿って基布2aを折り重ねる工程である。折り線L32は、頂点Mを通り、突出部2f(2c)の中間点を通るように設定される。かかる工程により、突出部2bは突出部2f(2c)及び突出部2e(2d)上に折り重ねられ、第一折り重ね部2gが形成される。
【0065】
図7(D)に示した第二折り重ね工程は、図7(C)における斜線部を折り線L33に沿って基布2aを折り重ねる工程である。折り線L33は、頂点Mを通り、突出部2b及び突出部2f(2c)の中間点を通るように設定される。かかる工程により、突出部2f(2c)は突出部2e(2d)の裏側に折り重ねられ、第二折り重ね部2hが形成される。図示したように、第一折り重ね部2gと第二折り重ね部2hとは、幅D1,D2の大きさが異なるように折り重ねられている。なお、図6(D)に示した左図は平面図、右図は側面図を示しており、側面図において二つ折りされた基布2aを一本の実線で図示している。
【0066】
図7(E)に示した縫製工程は、図7(D)に示した状態に折り重ねられた基布2aの縁部を縫製して袋体21を形成する工程である。縫製部25は、破線で図示したように、突出部2e(2d)の縁部を縫製するとともに、第一折り重ね部2g及び第二折り重ね部2hの縁部を縫製することによって形成される。かかる工程により、袋体21が形成されるとともに、第一折り重ね部2g及び第二折り重ね部2hによって表裏一つずつのプリーツ部22が形成される。
【0067】
図8は、プリーツ部の形成方法の第四変形例を示す図であり、(A)は平面展開工程、(B)は二つ折り工程、(C)は第一折り重ね工程、(D)は第二折り重ね工程、(E)は第三折り重ね工程、(F)及び(G)は縫製工程、を示している。なお、図4に示したプリーツ部の形成方法と同じ部分については、適宜説明を省略する。
【0068】
図8(A)に示した平面展開工程は、袋体21を構成する基布2aを平面展開する工程である。基布2aは、図示したように、突出部を有しない円形状の外形を有する。なお、基布2aの外形は、突出部を有しない形状であれば、楕円形状や多角形状であってもよい。第四変形例は、第一実施形態の基布2aの外形を略星型形状から円形状に変更したものであり、以下の工程は、実質的に第一実施形態と同じ工程である。
【0069】
図8(B)に示した二つ折り工程は、図8(A)に示した斜線部を折り線L41に沿って二つ折りにする工程である。折り線L41は、例えば、基布2aの中心線である。
【0070】
図8(C)に示した第一折り重ね工程は、プリーツ部22を形成するために、図8(B)における斜線部を折り線L42に沿って基布2aを折り重ねる工程である。折り線L42は、二つ折りした基布2aの山側の位置する頂点Mを通り、折れ線L41と略垂直をなすように設定される。かかる工程により、基布2aは四つ折り形状に折り重ねられる。
【0071】
図8(D)に示した第二折り重ね工程は、図8(C)における斜線部を折り線L43に沿って基布2aを折り重ねる工程である。折り線L43は、頂点Mを通り、折り線L42から中心角θの1/3よりも若干大きい角度φを有するように設定される。この角度φの大きさを調整することにより、プリーツ部22の枚数、重なり具合、幅の大きさ等を調節することができる。なお、φ>θ/3の関係は単なる一例であり、形成したいプリーツ部22の幅やプリーツ部22の枚数等によって中心角θと角度φの関係は適宜変更される。かかる工程により、第一折り重ね部2gが形成される。
【0072】
図8(E)に示した第三折り重ね工程は、図8(D)における斜線部を折り線L44に沿って基布2aを折り重ねる工程である。折り線L44は、頂点Mを通り、折れ線L41と略垂直をなすように設定される。かかる工程により、第一折り重ね部2gよりも幅の大きさが小さい第二折り重ね部2hが第一折り重ね部2g上に形成される。
【0073】
図8(F)に示した縫製工程は、図8(E)に示した状態に折り重ねられた基布2aの縁部を縫製して袋体21を形成する工程である。縫製部25は、破線で図示したように、基布2aを略円弧形状に縫製することによって形成される。かかる工程により、袋体21が形成されるとともに、第一折り重ね部2g及び第二折り重ね部2hによって二つのプリーツ部22(第一プリーツ部22a及び第二プリーツ部22b)が形成される。
【0074】
図8(G)に示した縫製工程は、プリーツ部22を形成する縫製部25を袋体21の固定端側から自由端側に向かって傾斜させたものである。このように縫製部25を傾斜させることによって、エアバッグ2の膨張展開時に基布2aの一部を袋体21の内側に向かって押し込むことができ、縫製部25の三次元的なテザー効果によって皺部23を容易に形成することができる。この傾斜角度は、例えば、図8(F)に示した縫製部25と図8(G)に示した縫製部25との間で任意に設定される。図8(G)において斜線で示した部分は余剰部分2jを構成することとなるが、そのままの状態にしておいてもよいし、切り落とすようにしてもよいし、折り重ねて縫製部25で一緒に縫製するようにしてもよい。
【0075】
図9は、プリーツ部の形成方法の第五変形例を示す図であり、(A)は平面展開工程、(B)は二つ折り工程、(C)は第一折り重ね工程、(D)は縫製工程、を示している。なお、図4及び図8に示したプリーツ部の形成方法と同じ部分については、適宜説明を省略する。
【0076】
図9(A)に示した平面展開工程は、袋体21を構成する基布2aを平面展開する工程である。基布2aは、図示したように、第四変形例と同様の円形状の外形を有する。第五変形例は、第四変形例の基布2aを用いて、一つ(単数)のプリーツ部22を形成するようにしたものである。
【0077】
図9(B)に示した二つ折り工程は、図9(A)に示した斜線部を折り線L51に沿って二つ折りにする工程である。折り線L51は、例えば、基布2aの中心線である。
【0078】
図9(C)に示した第一折り重ね工程は、図9(B)における斜線部を折り線L52に沿って基布2aを折り重ねる工程である。折り線L52は、二つ折りした基布2aの山側の位置する頂点Mを通り、折れ線L51に対して、例えば、22.5度の角度をなすように設定される。かかる工程により、基布2aは3/8の大きさに折り重ねられ、第一折り重ね部2gが形成される。なお、折り線L52の設定角度は、形成したいプリーツ部22の幅の大きさによって適宜変更することができる。
【0079】
図9(D)に示した縫製工程は、図9(C)に示した状態に折り重ねられた基布2aの縁部を縫製して袋体21を形成する工程である。縫製部25は、破線で図示したように、基布2aを略円弧形状に縫製することによって形成される。かかる工程により、袋体21が形成されるとともに、第一折り重ね部2gによって一つ(単数)のプリーツ部22が形成される。なお、図8(G)に示したように、プリーツ部22を構成する縫製部25を自由端側に傾斜させるようにしてもよい。
【0080】
上述したプリーツ部22の形成方法の第一変形例〜第五変形例によって形成された袋体21は、プリーツ部22の構成が異なっていたとしても、エアバッグ装置1に搭載された場合に、第一実施形態に係るエアバッグ2と実質的に同様の効果を発揮する。
【0081】
次に、本発明の他の実施形態に係るエアバッグ装置について、図10及び図11を参照しつつ説明する。ここで、図10は、本発明の第二実施形態に係るエアバッグ装置を示す図であり、(A)は膨張展開状態を示す概略側面図、(B)はエアバッグを構成する基布の平面展開図、である。図11は、本発明の第三実施形態に係るエアバッグ装置を示す図であり、(A)は膨張展開状態を示す概略側面図、(B)はエアバッグを構成する基布の平面展開図、である。なお、図1に示した第一実施形態に係るエアバッグ装置1と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0082】
図10(A)に示したように、第二実施形態に係るエアバッグ装置101は、エアバッグ102が膨張展開時に乗員Pの肩部〜胸部に対応する大きさを有するものである。かかるエアバッグ102においても、上述した第一実施形態に係るエアバッグ2と同様にプリーツ部を形成して、膨張展開時に皺部103を形成することができる。したがって、第二実施形態に係る肩胸用のエアバッグ102及びエアバッグ装置101においても、第一実施形態と同様の効果を発揮する。エアバッグ102を構成する袋体及びプリーツ部は、縫製部105によって形成され、かかる縫製部105によって膨張展開時に皺部103が形成される。なお、エアバッグ102の前方にはベントホール104が形成されている。
【0083】
図10(B)に示したように、第二実施形態に係るエアバッグ102を構成する基布102aを平面展開した場合、第一実施形態に係るエアバッグ2を構成する基布2aを一点鎖線で図示すれば、突出部102d,102eは基布2aよりも縮小された形状を有する。ここで、エアバッグ102を構成する基布102aにおいて、プリーツ部を形成する際に基点となる頂点Mの位置を、エアバッグ2を構成する基布2aと同じ位置とした場合について検討する。頂点Mが、基布102aの上下方向長さHを三等分した場合の中央領域(H/3〜2H/3の範囲)に含まれるためには、頂点Mが上下方向長さH/3の位置と一致するまで、基布102aの上下方向長さHを縮小することができる。すなわち、基布102aの上下方向長さHは、基布2aの上下方向長さHに対して3/4の大きさまで縮小することができる。なお、基布102aにおける頂点Mは、基布102aの上下方向長さHに対してH/2の長さを有する中間点に設定するようにしてもよい。
【0084】
図11(A)に示したように、第三実施形態に係るエアバッグ装置201は、エアバッグ202が膨張展開時に乗員Pの肩部〜腰部に対応する大きさを有するものである。かかるエアバッグ202においても、上述した第一実施形態に係るエアバッグ2と同様にプリーツ部を形成して、膨張展開時に皺部203を形成することができる。したがって、第三実施形態に係る肩胸腹腰用のエアバッグ202及びエアバッグ装置201においても、第一実施形態と同様の効果を発揮する。エアバッグ202を構成する袋体及びプリーツ部は、縫製部205によって形成され、かかる縫製部205によって膨張展開時に皺部203が形成される。なお、エアバッグ202の前方にはベントホール204が形成されている。
【0085】
図11(B)に示したように、第三実施形態に係るエアバッグ202を構成する基布202aを平面展開した場合、第一実施形態に係るエアバッグ2を構成する基布2aを一点鎖線で図示すれば、突出部202d,202eは基布2aよりも拡大された形状を有する。ここで、エアバッグ202を構成する基布202aにおいて、プリーツ部を形成する際に基点となる頂点Mの位置を、エアバッグ2を構成する基布2aと同じ位置とした場合について検討する。頂点Mが、基布202aの上下方向長さHを三等分した場合の中央領域(H/3〜2H/3の範囲)に含まれるためには、頂点Mが上下方向長さ2H/3の位置と一致するまで、基布202aの上下方向長さHを拡大することができる。すなわち、基布202aの上下方向長さHは、基布2aの上下方向長さHに対して3/2の大きさまで拡大することができる。なお、基布202aにおける頂点Mは、基布202aの上下方向長さHに対してH/2の長さを有する中間点に設定するようにしてもよい。
【0086】
上述した本発明に係る第一実施形態〜第三実施形態において、プリーツ部は、ギャザー部、タック部、襞部、折り重ね部、折り畳み部、重畳部等のように称することもでき、基布2a,102a,202aを折り重ねて、その縁部の外周を縫製したものを全て含む意味である。
【0087】
上述した実施形態では、サイドエアバッグ装置に本発明を適用した場合について説明したが、同様の構成を採用できるエアバッグ装置であれば、運転席用エアバッグ装置、助手席用エアバッグ装置、カーテンエアバッグ装置、ニーエアバッグ装置、歩行者用エアバッグ装置等に適用するようにしてもよい。
【0088】
本発明は上述した実施形態に限定されず、第二実施形態及び第三実施形態に係るエアバッグ2には、プリーツ部22の形成方法の第一変形例〜第五変形例を適宜選択して適用することができる等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0089】
1,101,201…エアバッグ装置
2,102,202…エアバッグ
2a,102a,202a…基布
2b,2c,2d,2e,2f,102d,102e,202d,202e…突出部
2g…第一折り重ね部
2h…第二折り重ね部
2i…ガス供給口
2j…余剰部分
3…インフレータ
4…エアバッグケース
11…座席
11a…腰掛部
11b…背面部
11c…ヘッドレスト
11d…開裂予定部
12…ドア部
21…袋体
22…プリーツ部
22a…第一プリーツ部
22b…第二プリーツ部
23,103,203…皺部
23a…第一皺部
23b…第二皺部
23c…第三皺部
24…ベントホール
25…縫製部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常時は車両の構造物内に折り畳まれて収容されており緊急時にガスが供給されて膨張展開するエアバッグにおいて、
基布により構成された袋体と、該袋体に形成された単数又は複数のプリーツ部と、を有し、
前記プリーツ部は、前記袋体が膨張展開したときに、前記車両の前後方向に沿う皺部を形成し、前記車両の前後方向からの負荷に対して前記ガスを前記皺部に逃がしながら前記袋体を膨張展開させるようにした、ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
前記プリーツ部は、前記基布を二つ折りした後、山側の中央部に頂点を形成するように、縁側を折り重ねて縫製することにより形成される、ことを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ。
【請求項3】
複数の前記プリーツ部を有する場合に、前記プリーツ部は幅の大きさが異なるように折り重ねられる、ことを特徴とする請求項2に記載のエアバッグ。
【請求項4】
前記プリーツ部を形成する縫製部は、前記袋体の固定端側から自由端側に向かって傾斜している、ことを特徴とする請求項2に記載のエアバッグ。
【請求項5】
前記プリーツ部を形成する縫製部は、前記袋体を構成する縫製部を兼用している、ことを特徴とする請求項2に記載のエアバッグ。
【請求項6】
前記頂点は、前記基布の前記車両の上下方向長さに対して、三等分した場合の中央領域に含まれる、ことを特徴とする請求項2に記載のエアバッグ。
【請求項7】
前記基布は、略星型形状の外形を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ。
【請求項8】
前記プリーツ部を形成して前記袋体を構成した後の前記袋体を平面展開したときの面積は、前記袋体を構成する前の前記基布を平面展開したときの面積に対して0.25〜0.35倍の大きさを有する、ことを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ。
【請求項9】
前記皺部は、膨張展開した前記袋体の前記車両の前後方向長さに対して半分以上の長さを有する、ことを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ。
【請求項10】
前記袋体は、前記車両のドア部と乗員との間で膨張展開されるサイドエアバッグとして使用される、ことを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ。
【請求項11】
通常時は車両の構造物内に折り畳まれて収容されており緊急時に膨張展開されるエアバッグと、該エアバッグにガスを供給するインフレータと、を有するエアバッグ装置において、
前記エアバッグは、請求項1〜請求項10のいずれかに記載のエアバッグである、ことを特徴とするエアバッグ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−250583(P2012−250583A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123088(P2011−123088)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(306009581)タカタ株式会社 (812)
【Fターム(参考)】