エアバッグ装置およびこれを取り付けるためのインストルメントパネル構造
【課題】 小型軽量で、しかも薄型にできるエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】 折り畳まれたエアバッグ6と、自動車の衝突時エアバッグ内に高圧ガスを噴出するインフレータ4と、エアバッグ6上面を覆うように設けられ、エアバッグ6が膨張した際開裂するテアライン12fが形成されたカバーパネル12と、エアバッグ6の下方に設けられ、かつインフレータ4が取り付けられていると共に、両端側がエアバッグカバー12に固着された剛体よりなる幅狭なベースプレート9と、可撓性シート状物からなり、かつベースプレートの両側にはみ出たエアバッグ6の底部を覆うようにベースプレート9とカバーパネル12の間に掛け渡されたバックアップ部材8とからなり、エアバッグ6やインフレータ4を収容するためのケースを必要としないため、小型軽量化と薄型化が可能になる。
【解決手段】 折り畳まれたエアバッグ6と、自動車の衝突時エアバッグ内に高圧ガスを噴出するインフレータ4と、エアバッグ6上面を覆うように設けられ、エアバッグ6が膨張した際開裂するテアライン12fが形成されたカバーパネル12と、エアバッグ6の下方に設けられ、かつインフレータ4が取り付けられていると共に、両端側がエアバッグカバー12に固着された剛体よりなる幅狭なベースプレート9と、可撓性シート状物からなり、かつベースプレートの両側にはみ出たエアバッグ6の底部を覆うようにベースプレート9とカバーパネル12の間に掛け渡されたバックアップ部材8とからなり、エアバッグ6やインフレータ4を収容するためのケースを必要としないため、小型軽量化と薄型化が可能になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車が衝突した際の衝撃から乗員を保護するエアバッグ装置およびこれを取り付けるためのインストルメントパネル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車が衝突した際に衝撃を吸収するエアバッグ装置は、車室内の例えばインストルメントパネルの内側等に設置されている。
【0003】
ところで、近年では、車両全体の重量を抑えたいとの社会的及び技術的要請が高まっている。すなわち、社会的要請という観点からは、地球環境保全の機運の高まりにより自動車の排出ガスを抑制することが重要課題として認識されてきており、自動車の軽量化により燃費を向上させるのが最も合理的な解決策であるとの考え方から、自動車を構成する全ての部品について軽くすることが要求されており、エアバッグ装置にも軽量化が求められている。
【0004】
また、技術的要請という観点からは、エアバッグ装置の搭載箇所が例えばサイドエアバッグ・カーテンエアバッグなどの普及により増加しており、個々のエアバッグ装置の質量の影響はさほど大きなものとはいえなくても、車両全体の質量増加としては搭載箇所が多い分、無視できないところとなっている。乗員の負傷を少なくしあるいはなくすために搭載されるエアバッグ装置類が今後相当の将来にわたって増えることはあっても、減るとは考えられず、したがって、軽量化のための技術に対するニーズは決して小さいものではない。
【0005】
一方、技術的要請という点でもう一つ重大な課題として小型化がある。自動車にあってもいわゆるIT化の波が押し寄せおり、操作機能、制御機能をインストルメントパネルに集めたいという要請がある。しかしながら、従来の車両にあっても車両制御関係(例えばECU)空調機器およびその制御関係、オーディオ関係の機器がひしめき合う状態にあり、さらにエアバッグ装置も組み込まれてレイアウト上極めて困難な状況にある。そのようなインストルメントパネルにIT機器等を加えるには、インストルメントパネルのサイズにもその機能から自ずと限界があることから、既存の内蔵機器をより高度に小型化したいとのニーズがある。
【0006】
このためエアバッグ装置の機能を損なわずに軽量化を図るための開発が進んでおり、軽量化を目的としたエアバッグ装置も、例えば特許文献1ないし3で提案されている。
【0007】
前記特許文献1に記載のエアバッグ装置は、上面が開口する上部室と、この上部室と連通するよう下部側に配置された下部室とからなるケースを有していて、下部室内にインフレータが収容されている。
【0008】
ケースは1枚の金属板により深絞りを伴うプレス加工により成形されていて、上部室内に折り畳まれたエアバッグが収容されている。
【0009】
上部室の開口縁には、フランジ部が折り曲げ形成されていて、このフランジ部を固着具によりインストルメントパネルに固着することによりケースの上部が固定され、下部室の底部を固着具により車体側へ固着することにより、ケースの下部が固定された構成となっていて、1枚の金属板によりケースが形成できるため、製造コストの低減と軽量化が図れる等の効果を有している。
【0010】
また、特許文献2に記載のエアバッグ装置は金属製の補強骨枠部と、その内側に設けられた断面ほぼU字形の樹脂製カバー部とによりケースを形成し、このケース内にエアバッグ本体を収容した構成となっている。
【0011】
補強骨枠部の一端面には嵌合孔が開口されていて、この嵌合孔より挿入したボンベ型のインフレータの先端を、他端側に形成されたキー孔に係合することにより、補強骨枠部に対しインフレータが固定されており、インフレータが補強骨枠部の補強部材を兼ねている。
【0012】
そして前記特許文献2では、ケースの一部をスケルトン構造とすることにより、ケースの強度を損なわずにエアバッグ装置の軽量化を可能にしている。
【0013】
一方特許文献3に記載のエアバッグ装置は、ボンベ型インフレータの両端部が固定された一対のブラケットの上部間が固定部材により連結されており、これら固定部材に仕切布の両端縁が爪により係止されている。
【0014】
仕切布は固定部材間にほぼU字状に垂下されていて、ブラケット間の下部側開口を覆っており、インフレータの上方にエアバッグが折り畳まれた状態で収納されている。
【0015】
そして前記特許文献3では、従来の金属製ケースを廃止することにより、エアバッグ装置の軽量化を図っている。
【特許文献1】特開2001−97162号公報
【特許文献2】特開平5−193432号公報
【特許文献3】特開2003−165409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし前記特許文献1に記載のエアバッグ装置では、ケースが上部室と下部室とから形成されているため、エアバッグ装置の全高が高くなり、インストルメントパネルの内側に十分な設置スペースが確保できない自動車には採用できない問題がある。
【0017】
前記特許文献2では、ケースの一部をいわゆるスケルトン構造にすることにより、軽量化が可能な上、ほぼU字形に形成されたカバー部の底部にボンベ型のインフレータを収容したことにより、前記特許文献1のものに比べてエアバッグ装置の全高をいくらか低くできる効果はある。
【0018】
しかしカバー体内にエアバッグを収容する構造のため、カバー体の高さを低くするのに自ずと限界がある。
【0019】
またカバー体の底部にボンベ型のインフレータを収容しているため、インフレータによってもカバー体の高さが高くなり、薄型のエアバッグ装置を製作する上で支障となる問題がある。
【0020】
一方特許文献3に記載のエアバッグ装置は、ケースを必要としないことから軽量化が容易な上、エアバッグ装置の全高をその分低くできる利点がある。
【0021】
しかしブラケット間のほぼ中心をインフレータが貫通した構造のため、インフレータの直径分だけ余分にブラケットの高さを高くする必要がある。
【0022】
またブラケットの間に折り畳まれた状態で収納されたエアバッグは、インフレータの両側からインフレータの下方へと巻き込まれており、これによってエアバッグが膨張した際の反力を、ブラケット間の下側の開口部を覆う仕切布が受けて下方へ膨出するため、エアバッグ装置の下方に仕切布が膨出するためのスペースが必要となり、結果的にエアバッグ装置全体の高さを低くできない問題がある。
【0023】
さらにブラケット間の下面は仕切布となっているため、エアバッグ装置を車体側へ固定できる部分がブラケットの下部のみに制限されてしまい、ブラケットの下方に車体の一部がない場所に設置する場合は、別に取り付け部材を設置してエアバッグ装置を取り付けなければならず、部品点数が多くなる上、取り付けに手間がかかる等の問題もある。
【0024】
本発明はかかる従来の問題を改善するためになされたもので、小型軽量で、しかも薄型にできるエアバッグ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明のエアバッグ装置は、折畳まれたエアバッグと、自動車の衝突時前記エアバッグ内に高圧ガスを噴出するインフレータと、前記エアバッグを収容しエアバッグの非膨出側を覆うとともに前記インフレータを保持する容器体とを備えたエアバッグ装置であって、前記容器体が、前記インフレータが取り付けられ、前記被膨出側の一部であって前記エアバッグの反展開側領域を覆い、かつ、エアバッグの基部が取り付けられ、前記エアバッグの展開に際して展開するエアバッグの飛び出し反力を支える、定形をなすベースプレートと、前記ベースプレートに接続部を介して接続され、前記被膨出側の他の部分を覆い、前記エアバッグの展開に際して非膨出側への前記エアバッグの膨張を規制するフレキシブルパネルとよりなることを特徴とするものである。
【0026】
前記構成により、エアバッグが膨張した際非膨出方向へ作用する反力を定形をなすベースプレートが支持すると同時に、エアバッグが非膨出方向へ膨出するのをフレキシブルパネルが拘束するため、エアバッグを確実に乗員側へ展開させることができ、エアバッグ装置の信頼性が向上する。
【0027】
またエアバッグやインフレータを収容するための嵩高のケースを必要としないため、エアバッグ装置の小型軽量化と同時に薄型化が可能となり、これによって各種電子機器等により設置スペースが大幅に制限されたインストルメントパネル内にも容易に設置できる上、ディスク型インフレータ等を使用すればさらに薄型化が可能になるため、さらに設置が容易になると共に、エアバッグの下面側を幅狭なベースプレートとバックアップ部材により覆う簡単な構造のため、エアバッグ装置のコスト削減も図れる。
【0028】
本発明のエアバッグ装置は、フレキシブルパネルを織布より構成したものである。
【0029】
前記構成により、薄くフレキシブルで強度を持ったバックアップ部材を構成することができるとともに、部品コストの削減が図れるため、エアバッグ装置が安価に提供できる。
【0030】
本発明のエアバッグ装置は、展開側領域を覆うとともに前記エアバッグの展開に際して所定のテアラインに沿って開裂して扉を形成するカバーパネルを具備し、前記ベースプレートは前記カバーパネルの一部に結合するベース結合部を有し、前記フレキシブルパネルは前記カバーパネルの少なくとも他の一部に結合するパネル結合部を有し、前記接続部とパネル結合部との間に掛け渡されて構成したものである。
【0031】
前記構成により、エアバッグが膨張した際非膨出方向へ作用する反力を定形をなすベースプレートが支持すると同時に、エアバッグが非膨出方向へ膨出するのを接続部とカバーパネルのパネル結合部との間に掛け渡されたフレキシブルパネルが拘束するため、エアバッグを確実に乗員側へ展開させることができ、エアバッグ装置の信頼性が向上する。
【0032】
またエアバッグやインフレータを収容するための嵩高なケースを必要としないため、エアバッグ装置の小型軽量化と同時に薄型化が可能となり、これによって各種電子機器等により設置スペースが大幅に制限されたインストルメントパネル内にも容易に設置できる上、ディスク型インフレータ等を使用すればさらに薄型化が可能になるため、さらに設置が容易になると共に、エアバッグの下面側を幅狭なベースプレートとバックアップ部材により覆う簡単な構造のため、エアバッグ装置のコスト削減も図れる。
【0033】
本発明のエアバッグ装置は、前記テアラインを横テアラインと横テアラインの終端に接続される縦テアラインとから構成し、前記ベース結合部は、前記終端の近傍に位置することを特徴とするものである。
【0034】
上記構成により、強度の高いベースプレート取り付け部付近のベース結合部に破断のための力が集中するので、エアバッグの展開動作が円滑かつ安定して行えるようになる。
【0035】
本発明のエアバッグ装置は、前記カバーパネルの前記扉を形成する箇所の外周に補強部材を設けてなるものである。
【0036】
上記構成により、カバーパネルの扉を形成する箇所の外周が補強部材により補強されるため、カバーパネルが上下方向に変形するのを抑制できると共に、エアバッグが膨張する際にカバーパネルがエアバッグの展開方向に押し上げられるのを抑制することができるため、テアラインを確実に開裂させることができる。
【0037】
本発明のインストルメントパネル構造は、前記エアバッグ装置を取り付けるために、本体構造体を内蔵したインストルメントパネル構造であって、前記エアバッグ装置が搭載されるエアバッグ装置搭載部と、前記エアバッグ装置搭載部内に設けられ、かつ固定具により前記ベースプレートを前記本体構造体に固定する取り付け座とを具備し、前記ベースプレートが前記エアバッグの展開に際して展開するエアバッグの飛び出し反力を前記本体構造体とともに支えることを特徴とするものである。
【0038】
また、本発明のインストルメントパネル構造は、前記エアバッグ装置に取り付けるための、本体構造体を内蔵したインストルメントパネル構造であって、前記カバーパネルとこのカバーパネルに連設されるインストルメントパネル表面が一体的な面となるように前記カバーパネルが取り付けられる開口部を有するエアバッグ装置搭載部と、前記エアバッグ装置搭載部内に設けられ、かつ固着具により前記ベースプレートを前記本体構造体に固定する取り付け座とを具備し、前記ベースプレートが前記エアバッグの展開に際して展開するエアバッグの飛び出し反力を前記本体構造体とともに支えることを特徴とするものである。
【0039】
前記構成により、フレキシブルパネルを押し縮めた状態で開口部よりエアバッグ装置搭載部へエアバッグ装置を収納することができるため、各種電子機器等が設置されている関係でエアバッグ装置の設置スペースが制限されている場合でも、エアバッグ装置の取り付け作業が容易に行える。
【0040】
またベースプレートをインストルメントパネルの取り付け座の固着したことにより、インストルメントパネルの剛性によりベースプレートの強度が一段と上がるため、ベースプレートのさらなる簡素化と軽量化が図れ、一層安定したエアバッグの展開特性が得られるようになる。
【発明の効果】
【0041】
本発明のエアバッグ装置によれば、エアバッグが膨張した際下方向へ作用する反力を剛体よりなるベースプレートが支持すると同時に、エアバッグが非膨出方向へ膨出するのをフレキシブルパネルが拘束するため、エアバッグを確実に乗員側へ展開させることができると共に、エアバッグやインフレータを収容するためのケースを必要としないため、エアバッグ装置の小型軽量化と薄型化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明の第1の実施の形態を、図面を参照して詳述する。
【0043】
図1はインストルメントパネルの内側に取り付けるエアバッグモジュールの一部を切欠いて描画した斜視図、図2はエアバッグモジュールの分解斜視図、図3は同横断面図、図4は図3のA−A線に沿う断面図、図5はインストルメントパネルのエアバッグ収納部にエアバッグモジュールを取り付ける際のインストルメントパネルの概略斜視図である。
【0044】
図1ないし図5は、助手席用エアバッグ装置を示すもので、図示しない助手席の前方に設けられたインストルメントパネル2内にエアバッグモジュール1が収容されている。
【0045】
エアバッグモジュール1は、金属板によりプレス成形された受け皿状のリテーナ3を有している。
【0046】
リテーナ3は長方形状に形成されていて、長手方向に間隔を存して一対の円孔よりなるインフレータ嵌合孔3aが開口されており、インフレータ嵌合孔3aの周辺には、インフレータ4を取り付けるための取り付けボルト5が下方へ向けて複数本突設されている。
【0047】
リテーナ3の上側には、折り畳まれたエアバッグ6が載置されていて、エアバッグ6とリテーナ3の周囲は、エアバッグ6の折り畳み形状が崩れないように拘束するナイロン基布よりなる帯状のラッピング布7により被覆されており、ラッピング布7には、エアバッグ6が膨張した際に破断するミシン目状の破断線7aがエアバッグモジュール1の長手方向に沿って形成されている。
【0048】
エアバッグ6は、例えば315デニール、目付け200g/m2程度のノンコートナイロン基布をほぼキノコ状に裁断し、周囲を縫着することにより袋状に形成されていて、膨張した際下側となる基布に、リテーナ3に形成されたインフレータ嵌合孔3aと合致するようガス導入口6aが形成されている。
【0049】
リテーナ3の下方には、エアバッグ装置本体1の下面側を覆う不定形のフレキシブルパネル、例えば2枚の可撓性シート状物からなるバックアップ部材8が設けられている。
【0050】
バックアップ部材8は、例えば315デニールで、目付けが200g/m2程度のノンコートナイロン基布によりリテーナ3より幅が十分に大きい長方形状に形成されていて、各バックアップ部材8は一端側を残して互いに重ね合わさられており、重なり部に、リテーナ3に形成されたインフレータ嵌合孔3aと合致するよう円形の嵌合孔8aが形成されていると共に、嵌合孔8aの周辺には取り付けボルト5を挿入する複数のボルト孔8bが穿設されている。
【0051】
各バックアップ部材8の一端側は、リテーナ3の両側に耳状にはみ出ていて、これら耳状部8cに筒状の取り付け部8dが形成されて、パネル結合部を構成している。
【0052】
取り付け部8dは、耳状部8cの端部側を2つ折りして端縁を重ね縫いすることにより筒状に形成されていて、図2に示すように筒状部の長手方向に間隔を存して複数の凹状の切り欠き部8eが形成されており、各取り付け部8dの端部は、後述するカバーパネル12の裏面に突設された枠状部12aの長孔12bより枠状部12aの外側へ突出されるようになっている。
【0053】
またバックアップ部材8の下方には、定形をなすベースプレート9が設けられており、ベースプレート9はエアバッグ6の飛び出し反力を後述の本体構造とともに支えるために、エアバッグ6の反展開側領域を覆っている。
【0054】
ベースプレート9はリテーナ3より長さが長いほぼ長方形状の金属板により形成されていて、リテーナ3に形成されたインフレータ嵌合孔3aと合致する位置にほぼ同じ大きさのインフレータ嵌合孔9aが形成されており、これらインフレータ嵌合孔9aの周辺に、取り付けボルト5を挿入するボルト孔9bが穿設されている。
【0055】
ベースプレート9は、幅をインフレータ4のフランジ4aの直径とほぼ同じに形成することにより、エアバッグ6が膨張する際の反力を十分に支持する強度を確保しつつ、余分な部分をできるだけ除いて可能な限り幅狭とすることにより軽量化を図っており、ベースプレート9の長手方向両端側は、上方へほぼクランク状に折り曲げられて取り付けエンド部9cが形成されて、ベース結合部を構成している。
【0056】
取り付け部エンド9cには、ボルト等の固着具10によりカバーパネル12の裏面に突設された取り付け壁12cにベースプレート9を固着する取り付け孔9dが形成されており、ベースプレート9のほぼ中央部と両端部には、ベースプレート9をインストルメントパネル2の取り付け座2bへ取り付ける固着具11を挿通するボルト孔9eが穿設されている。
【0057】
インフレータ4は図2に示すようにディスク状に形成されていて、上部の外周面に複数のガス噴出孔4bを有しており、ほぼ中間の外周面に突設されたフランジ4aに、リテーナ3より突設された取り付けボルト5を挿入するボルト孔4cが穿設されている。
【0058】
かくして、リテーナ3、バックアップ部材8及びベースプレート9により、インフレータ4を保持する容器体を構成している。
【0059】
なお図2中16は、インフレータ4と図示しない衝突検知手段との間を接続するハーネスである。また、図中のインフレータ4は2つ使用するものであるが、同一または類似形状であるため、1つのみを示し他の1つは省略してある。
【0060】
一方助手席前方のインストルメントパネル2には、図5に示すようにエアバッグ装置搭載部としてのエアバッグ収納部2aが凹設されていて、このエアバッグ収納部2aに、ベースプレート9のボルト孔9eに挿通した例えば3本の固着具11を挿通するためのボルト孔2cが穿設された取り付け座2bが、図示しないコラプシブルブラケットなどの衝撃吸収構造体を介して車幅方向に間隔を存して複数個所突設されて、エアバッグ装置本体1を取り付けるための本体構造体を構成している。
【0061】
エアバッグ収納部2aの上面開口部2dは、インストルメントパネル2と同色の樹脂により成形されたカバーパネル12で覆われている。従って、カバーパネル12には、エアバッグ6の展開側領域を覆うとともに、エアバッグ6の展開に際してテアライン12fに沿って開裂して扉を形成することになる。
【0062】
カバーパネル12は、図4に示すようにエアバッグ収納部2aの開口部2dに隙間なく嵌合されており、裏面に枠状部12aが一体に突設されていると共に、カバーパネル12の裏面と枠状部12aの連設部に補強部材18が熱カシメ等の手段で固着されている。
【0063】
枠状部12aは、折り畳まれた状態のエアバッグ6が下方より収納できるように、エアバッグ6の折り畳み形状よりやや大きい角枠状となっていて、エアバッグモジュール1をカバーパネル12の裏側に取り付ける際枠状部12aの下端部が図3に示すように、ベースプレート9の両端側立ち上がり部の内側に当接するようになっている。
【0064】
枠状部12aの外周面には、ベースプレート9の取り付けエンド部9cが下方より当接する取り付け座12eが突設されていて、取り付け部9cのボルト孔9dより挿入した固着具10を、取り付け座9eの上側に設けたナット部材13のねじ孔13aに螺挿することにより、ベースプレート9の両端がカバーパネル12の裏面に固着できるようになっている。
【0065】
枠状部12aの前後側面には、長方形の長孔12bがバックアップ部材8の取り付け部8dとほぼ同じ間隔で形成されており、これら長孔12bより枠状部12aの外側へ突出させた筒状取り付け部8dに係止杆14を挿通することにより、枠状部12aにバックアップ部材8の取り付け部8dが固定できるようになって、バックアップ部8のベースプレート9に対する接続部を構成している。
【0066】
係止杆14は、図2に示すように細長い金属板により形成されていて、強度を上げるために周縁部がプレス加工によりエッジ状に折り曲げ加工されてフランジ部14aが形成されており、中央部と両端部にリベット孔14bが穿設されている。
【0067】
そしてこれらリベット孔14bより挿入したリベット15により係止杆14が枠状部12aに係止できるようになっていると共に、係止杆14の各リベット孔14b間には、軽量化を図るために長孔状の肉抜き孔14cが形成されている。
【0068】
またカバーパネル12の裏面には、エアバッグ6が膨張した際に開裂するテアライン12fが、縦テアライン12gと横テアライン12hによりほぼH字形に形成されていて、縦テアライン12gと横テアライン12hの交点12iがベースプレートの取り付け部付近となるようにベースプレート9がカバーパネル12に取り付けられている。
【0069】
次に前記構成されたエアバッグ装置の作用を説明する。
【0070】
エアバッグモジュール1を組み立てるに当たっては、まず折り畳んだエアバッグ6をリテーナ3上に載置し、この状態でリテーナ3ごとラッピング布7により被覆してエアバッグ6の折り畳み形状が崩れないように保持する。
【0071】
次にバッグアップ布8の取り嵌合孔8aが開口されている部分を互いに重ね合わせた状態で、リテーナ3の下方より取り付けボルト5に嵌合孔8a周辺のボルト孔8bを嵌挿したら、ベースプレート9の各インフレータ嵌合孔9aに、インフレータ4のガス噴出孔4b側を下方から嵌合した状態で、ベースプレート9のボルト孔9bとインフレータ4のボルト孔4cを、リテーナ3より突設された取り付けボルト5に嵌挿し、この状態で取り付けボルト5の先端よりナット5aを螺挿して締め付けると、図3及び図4に示すようにインフレータ4の上部がエアバッグ6内へ突出し、またガス流入口6aの周辺がリテーナ3とベースプレート9の間に気密に挟着されるため、インフレータ4のガス噴出孔4bよりエアバッグ6内に高圧ガスが噴出された際、ガス流入口6aよりガス漏れが発生することがない。
【0072】
次にエアバッグモジュール1をカバーパネル12の裏面に取り付けるが、取り付けに当たっては、バックアップ部材8の一端に形成された筒状取り付け部8dを、枠状部12aに形成された長孔12bより枠状部12aの外側へ突出させる。
【0073】
そしてこの状態で筒状取り付け部12aに、図1に示すように係止杆14を一端側より挿通したら、リベット孔14bより挿入したリベット15を枠状部12aのリベット孔(図示せず)に挿入した状態で、リベット15をカシメることにより、係止杆14を枠状部12aの外側面に係止する。
【0074】
これによって図4に示すように、ベースプレート9の両側にはみ出たエアバッグ6の底面をバックアップ部材8が下方より覆うようになる。
【0075】
次にベースプレート9の両端部に設けられた取り付けエンド部9cのボルト孔9dに下方より挿入した固着具10を、カバーパネル12の取り付け座12eに設けたナット部材13のねじ孔13aに螺挿して締め付けることにより、エアバッグモジュール1を組み立てるもので、この状態では折り畳まれたエアバッグ6が枠状部12a内へと収容され、またベースプレート9が枠状部12aの先端とほぼ同じ高さとなり、さらにベースプレート9の下方にディスク型インフレータ4の底部のみが突出する構成となるため、エアバッグモジュール1の薄型化が図れると同時に、エアバッグ6やインフレータ4を収容するためのケースが不要となるため、エアバッグモジュール1の小型軽量化が可能になる。
【0076】
以上のようにしてエアバッグモジュール1を組み立てたら、図5に示すようにインストルメントパネル2に形成されたエアバッグ収納部2aにエアバッグモジュール1を収納し、ベースプレート9のボルト孔9eに挿入した固着具11を取り付け座2bのボルト孔2cに挿入して、例えばグローブボックス等を取付ける前のインストルメントパネル斜め下方の開口を利用して、取り付け座2bの下方より固着具11にナット(図示せず)を螺挿することにより、エアバッグ収納部2aに収納したエアバッグモジュール1のベースプレート9をインストルメントパネル2に固着するので、エアバッグ収納部2aの上面開口部2bをカバーパネル12が隙間なく覆うため、エアバッグモジュール1が外側より見えることがない。
【0077】
またエアバッグ収納部2aにエアバッグモジュール1を収納する際、エアバッグモジュール1の底部は、幅狭なベースプレート9の両側にはみ出たエアバッグ6の底面をバックアップ部材8で覆った構造となっていて変形が自在なため、エアバッグ収納部2aの開口部2dの面積が折り畳んだ状態のエアバッグ6を収納するのにギリギリの大きさか、やや小さい場合でも容易に収納できるため、エアバッグモジュール1の取り付け作業が短時間で無理なく行える。
【0078】
なお、インストルメントパネルを予め車両の最終組立てラインに隣接するサブライン(いわゆるサプライヤパーク等)で内蔵機器を組み込んでユニット完成させておく場合には、さらにインストルメントパネルの前側(エンジン側)や、上下逆さまに置いて組み付けるなどの作業自由度が高まるので、本実施例のエアバッグモジュールの優れた特性をより活かすことが可能である。
【0079】
一方自動車が衝突したのを衝突検知手段が感知すると、インフレータ4のガス噴出孔4bより高圧ガスがエアバッグ6内へ噴出され、これによってエアバッグ6が膨張を開始して、カバーパネル12を下方より強く押し上げるため、カバーパネル12がテアライン12fより上方へ開裂して、エアバッグ6が乗員側へ展開を開始する。
【0080】
またエアバッグ12が膨張してカバーパネル12を下方より強く押し上げる際の反動によりエアバッグ6が下方へ膨出しようとするが、エアバッグ6の下方には金属板よりなるベースプレート9と、ベースプレート9及びカバーパネル12の枠状部12a間に掛け渡されたバックアップ部材8とによりエアバッグ6が下方へ膨出するのを阻止するため、エアバッグ6の膨張圧がカバーパネル12側へのみ作用することになり、これによってカバーパネル12を確実に開裂することができるため、エアバッグ6を確実に乗員側へ展開させることができるようになる。
【0081】
なお図6ないし図8は、バックアップ部材8の取り付け部8dをカバーパネル12の枠状部12aに固定する部分の第1変形例を示すもので、枠状部12aの外側面に、ほぼコ字形の固定部12jが複数個所突設されている。
【0082】
これら固定部12jは、バックアップ部材8の取り付け部8dに形成された切り欠き部8eと同じ間隔で突設されていて、各固定部12j内には、水平方向に一直線となる貫通孔12kが形成されており、これら貫通孔12kと取り付け部8dに係止杆14を串刺しすることにより、バックアップ部材8の取り付け部8dを枠状部12aに固定するように構成されている。
【0083】
この第1変形例の場合、係止杆14が固定部12jに支持されて振れることがないため、係止杆14を枠状部12aに固定するリベット15を省略することができる。
【0084】
また図9及び図10は固定部12jの第2変形例を示すもので、第2変形例のように固定部12jに切り欠き12mを形成して、この切り欠き12mより係止杆14を差し込んだ後、固定部12jを熱でカシメて、図10に示すように切り欠き12mを塞ぐようにしてもよく、何れの変形例も機能は前記実施の形態と同様のため、作用説明は省略する。
【0085】
一方前記第1の実施の形態では、ディスク型インフレータ4を使用した場合について説明したが、図11に示すようにボンベ型のインフレータ4をベースプレート9上に寝かした状態で設置してもよく、ディスク型インフレータ4より多少全高が高くなるが、従来のものよりもケースとリテーナがない分小型軽量化と薄型化が図れるようになる。
【0086】
一方図12ないし図14は、運転席用エアバッグ装置に適用した第2の実施の形態を示すもので、次にこれを説明する。
【0087】
なお前記第1の実施の形態と実質的に同じ部分は同一符号を付して、その説明は省略する。
【0088】
運転席用エアバッグ装置は、ステアリングホイール(図示せず)の中央部に設置する関係から、カバーパネル12は図12に示すようにほぼ正方形状となっていて、スポーク部分が突出した形状となっている。
【0089】
カバーパネル12の裏面には枠状部12aが突設されていて、この枠状部12a内に、前記第1の実施の形態と同様に組み立てられたエアバッグ6とリテーナ3、バックアップ部材8、ベースプレート9、インフレータ4が下方より挿入されてエアバッグモジュール1が構成されている。
【0090】
前記構成のエアバッグモジュール1は、ベースプレート9の底部側をステアリングホイール側に設けられた取り付け座に固着具(ともに図示さず)により複数個所固着することにより、ステアリングホイールのほぼ中央部に装着されており、自動車が衝突した際インフレータ4より噴出される高圧ガスによりエアバッグ6が膨張を開始すると、カバーパネル12がテアライン12fより開裂されて図13に示すように開放され、膨張したエアバッグ6が図14に示すように運転者側へ展開されるため、衝突時の衝撃から運転者を保護することができると共に、エアバッグ6やインフレータ4を収容するためのケースが不要なため、前記第1の実施の形態と同様にエアバッグ装置の小型軽量化と薄型化が可能になる。これによって、ハンドルの慣性モーメントが低減できるとともに、エアバッグモジュールの乗員に対する位置がより乗員から遠い位置にレイアウトできるようになるので、よりすっきりしたデザインが可能になる。
【0091】
また、ベースプレート9は上述の実施例では金属材料、例えば鋼板等を使用したが、金属材料以外にも、例えば、エンジニアリングプラスチックと称される剛性の高い樹脂材料(例えば、ガラス繊維強化の66ナイロン、ポリスルフォン、PPS樹脂など)を利用し、適宜リブなどの補強構造を組み合わせたベースプレートを射出成形、トランスファ成形などで形成して適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明のエアバッグ装置は、エアバッグが膨張した際下方向へ作用する反力を剛体よりなるベースプレートが支持すると同時に、エアバッグが非膨出方向へ膨出するのをフレキシブルパネルが拘束するため、エアバッグを確実に乗員側へ展開させることができると共に、エアバッグやインフレータを収容するためのケースを必要としないため、エアバッグ装置の小型軽量化と薄型化が図れるために、自動車が衝突した際の衝撃から乗員を保護するエアバッグ装置等に最適である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の第1の実施の形態になるエアバッグ装置の一部を切欠いて描画した斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態になるエアバッグ装置の分解斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態になるエアバッグ装置の横断面図である。
【図4】図3のA−A線に沿う拡大断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態になるエアバッグ装置をインストルメントパネルへ装着す際のインストルメントパネルの概略斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態になるエアバッグ装置のバックアップ部材取り付け部の第1の変形例を示す斜視図である。
【図7】図6のB−B線に沿う断面図である。
【図8】図6のC−C線に沿う断面図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態になるエアバッグ装置のバックアップ部材取り付け部の第2の変形例を示す断面図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態になるエアバッグ装置のバックアップ部材取り付け部の第2の変形例を示す断面図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態になるエアバッグ装置の変形例を示す一部切欠斜視図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態になるエアバッグ装置の斜視図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態になるエアバッグ装置のカバーパネル展開状態の斜視図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態になるエアバッグ装置の作用説明図である。
【符号の説明】
【0094】
1 エアバッグモジュール
2 インストルメントパネル
2a エアバッグ収納部
2b 取り付け座
2d 開口部
4 インフレータ
6 エアバッグ
8 バックアップ部材(フレキシブルパネル)
9 ベースプレート
12 カバーパネル
12a 枠状部
12f テアライン
12g 縦テアイン
12h 横テアライン
18 補強部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車が衝突した際の衝撃から乗員を保護するエアバッグ装置およびこれを取り付けるためのインストルメントパネル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車が衝突した際に衝撃を吸収するエアバッグ装置は、車室内の例えばインストルメントパネルの内側等に設置されている。
【0003】
ところで、近年では、車両全体の重量を抑えたいとの社会的及び技術的要請が高まっている。すなわち、社会的要請という観点からは、地球環境保全の機運の高まりにより自動車の排出ガスを抑制することが重要課題として認識されてきており、自動車の軽量化により燃費を向上させるのが最も合理的な解決策であるとの考え方から、自動車を構成する全ての部品について軽くすることが要求されており、エアバッグ装置にも軽量化が求められている。
【0004】
また、技術的要請という観点からは、エアバッグ装置の搭載箇所が例えばサイドエアバッグ・カーテンエアバッグなどの普及により増加しており、個々のエアバッグ装置の質量の影響はさほど大きなものとはいえなくても、車両全体の質量増加としては搭載箇所が多い分、無視できないところとなっている。乗員の負傷を少なくしあるいはなくすために搭載されるエアバッグ装置類が今後相当の将来にわたって増えることはあっても、減るとは考えられず、したがって、軽量化のための技術に対するニーズは決して小さいものではない。
【0005】
一方、技術的要請という点でもう一つ重大な課題として小型化がある。自動車にあってもいわゆるIT化の波が押し寄せおり、操作機能、制御機能をインストルメントパネルに集めたいという要請がある。しかしながら、従来の車両にあっても車両制御関係(例えばECU)空調機器およびその制御関係、オーディオ関係の機器がひしめき合う状態にあり、さらにエアバッグ装置も組み込まれてレイアウト上極めて困難な状況にある。そのようなインストルメントパネルにIT機器等を加えるには、インストルメントパネルのサイズにもその機能から自ずと限界があることから、既存の内蔵機器をより高度に小型化したいとのニーズがある。
【0006】
このためエアバッグ装置の機能を損なわずに軽量化を図るための開発が進んでおり、軽量化を目的としたエアバッグ装置も、例えば特許文献1ないし3で提案されている。
【0007】
前記特許文献1に記載のエアバッグ装置は、上面が開口する上部室と、この上部室と連通するよう下部側に配置された下部室とからなるケースを有していて、下部室内にインフレータが収容されている。
【0008】
ケースは1枚の金属板により深絞りを伴うプレス加工により成形されていて、上部室内に折り畳まれたエアバッグが収容されている。
【0009】
上部室の開口縁には、フランジ部が折り曲げ形成されていて、このフランジ部を固着具によりインストルメントパネルに固着することによりケースの上部が固定され、下部室の底部を固着具により車体側へ固着することにより、ケースの下部が固定された構成となっていて、1枚の金属板によりケースが形成できるため、製造コストの低減と軽量化が図れる等の効果を有している。
【0010】
また、特許文献2に記載のエアバッグ装置は金属製の補強骨枠部と、その内側に設けられた断面ほぼU字形の樹脂製カバー部とによりケースを形成し、このケース内にエアバッグ本体を収容した構成となっている。
【0011】
補強骨枠部の一端面には嵌合孔が開口されていて、この嵌合孔より挿入したボンベ型のインフレータの先端を、他端側に形成されたキー孔に係合することにより、補強骨枠部に対しインフレータが固定されており、インフレータが補強骨枠部の補強部材を兼ねている。
【0012】
そして前記特許文献2では、ケースの一部をスケルトン構造とすることにより、ケースの強度を損なわずにエアバッグ装置の軽量化を可能にしている。
【0013】
一方特許文献3に記載のエアバッグ装置は、ボンベ型インフレータの両端部が固定された一対のブラケットの上部間が固定部材により連結されており、これら固定部材に仕切布の両端縁が爪により係止されている。
【0014】
仕切布は固定部材間にほぼU字状に垂下されていて、ブラケット間の下部側開口を覆っており、インフレータの上方にエアバッグが折り畳まれた状態で収納されている。
【0015】
そして前記特許文献3では、従来の金属製ケースを廃止することにより、エアバッグ装置の軽量化を図っている。
【特許文献1】特開2001−97162号公報
【特許文献2】特開平5−193432号公報
【特許文献3】特開2003−165409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし前記特許文献1に記載のエアバッグ装置では、ケースが上部室と下部室とから形成されているため、エアバッグ装置の全高が高くなり、インストルメントパネルの内側に十分な設置スペースが確保できない自動車には採用できない問題がある。
【0017】
前記特許文献2では、ケースの一部をいわゆるスケルトン構造にすることにより、軽量化が可能な上、ほぼU字形に形成されたカバー部の底部にボンベ型のインフレータを収容したことにより、前記特許文献1のものに比べてエアバッグ装置の全高をいくらか低くできる効果はある。
【0018】
しかしカバー体内にエアバッグを収容する構造のため、カバー体の高さを低くするのに自ずと限界がある。
【0019】
またカバー体の底部にボンベ型のインフレータを収容しているため、インフレータによってもカバー体の高さが高くなり、薄型のエアバッグ装置を製作する上で支障となる問題がある。
【0020】
一方特許文献3に記載のエアバッグ装置は、ケースを必要としないことから軽量化が容易な上、エアバッグ装置の全高をその分低くできる利点がある。
【0021】
しかしブラケット間のほぼ中心をインフレータが貫通した構造のため、インフレータの直径分だけ余分にブラケットの高さを高くする必要がある。
【0022】
またブラケットの間に折り畳まれた状態で収納されたエアバッグは、インフレータの両側からインフレータの下方へと巻き込まれており、これによってエアバッグが膨張した際の反力を、ブラケット間の下側の開口部を覆う仕切布が受けて下方へ膨出するため、エアバッグ装置の下方に仕切布が膨出するためのスペースが必要となり、結果的にエアバッグ装置全体の高さを低くできない問題がある。
【0023】
さらにブラケット間の下面は仕切布となっているため、エアバッグ装置を車体側へ固定できる部分がブラケットの下部のみに制限されてしまい、ブラケットの下方に車体の一部がない場所に設置する場合は、別に取り付け部材を設置してエアバッグ装置を取り付けなければならず、部品点数が多くなる上、取り付けに手間がかかる等の問題もある。
【0024】
本発明はかかる従来の問題を改善するためになされたもので、小型軽量で、しかも薄型にできるエアバッグ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明のエアバッグ装置は、折畳まれたエアバッグと、自動車の衝突時前記エアバッグ内に高圧ガスを噴出するインフレータと、前記エアバッグを収容しエアバッグの非膨出側を覆うとともに前記インフレータを保持する容器体とを備えたエアバッグ装置であって、前記容器体が、前記インフレータが取り付けられ、前記被膨出側の一部であって前記エアバッグの反展開側領域を覆い、かつ、エアバッグの基部が取り付けられ、前記エアバッグの展開に際して展開するエアバッグの飛び出し反力を支える、定形をなすベースプレートと、前記ベースプレートに接続部を介して接続され、前記被膨出側の他の部分を覆い、前記エアバッグの展開に際して非膨出側への前記エアバッグの膨張を規制するフレキシブルパネルとよりなることを特徴とするものである。
【0026】
前記構成により、エアバッグが膨張した際非膨出方向へ作用する反力を定形をなすベースプレートが支持すると同時に、エアバッグが非膨出方向へ膨出するのをフレキシブルパネルが拘束するため、エアバッグを確実に乗員側へ展開させることができ、エアバッグ装置の信頼性が向上する。
【0027】
またエアバッグやインフレータを収容するための嵩高のケースを必要としないため、エアバッグ装置の小型軽量化と同時に薄型化が可能となり、これによって各種電子機器等により設置スペースが大幅に制限されたインストルメントパネル内にも容易に設置できる上、ディスク型インフレータ等を使用すればさらに薄型化が可能になるため、さらに設置が容易になると共に、エアバッグの下面側を幅狭なベースプレートとバックアップ部材により覆う簡単な構造のため、エアバッグ装置のコスト削減も図れる。
【0028】
本発明のエアバッグ装置は、フレキシブルパネルを織布より構成したものである。
【0029】
前記構成により、薄くフレキシブルで強度を持ったバックアップ部材を構成することができるとともに、部品コストの削減が図れるため、エアバッグ装置が安価に提供できる。
【0030】
本発明のエアバッグ装置は、展開側領域を覆うとともに前記エアバッグの展開に際して所定のテアラインに沿って開裂して扉を形成するカバーパネルを具備し、前記ベースプレートは前記カバーパネルの一部に結合するベース結合部を有し、前記フレキシブルパネルは前記カバーパネルの少なくとも他の一部に結合するパネル結合部を有し、前記接続部とパネル結合部との間に掛け渡されて構成したものである。
【0031】
前記構成により、エアバッグが膨張した際非膨出方向へ作用する反力を定形をなすベースプレートが支持すると同時に、エアバッグが非膨出方向へ膨出するのを接続部とカバーパネルのパネル結合部との間に掛け渡されたフレキシブルパネルが拘束するため、エアバッグを確実に乗員側へ展開させることができ、エアバッグ装置の信頼性が向上する。
【0032】
またエアバッグやインフレータを収容するための嵩高なケースを必要としないため、エアバッグ装置の小型軽量化と同時に薄型化が可能となり、これによって各種電子機器等により設置スペースが大幅に制限されたインストルメントパネル内にも容易に設置できる上、ディスク型インフレータ等を使用すればさらに薄型化が可能になるため、さらに設置が容易になると共に、エアバッグの下面側を幅狭なベースプレートとバックアップ部材により覆う簡単な構造のため、エアバッグ装置のコスト削減も図れる。
【0033】
本発明のエアバッグ装置は、前記テアラインを横テアラインと横テアラインの終端に接続される縦テアラインとから構成し、前記ベース結合部は、前記終端の近傍に位置することを特徴とするものである。
【0034】
上記構成により、強度の高いベースプレート取り付け部付近のベース結合部に破断のための力が集中するので、エアバッグの展開動作が円滑かつ安定して行えるようになる。
【0035】
本発明のエアバッグ装置は、前記カバーパネルの前記扉を形成する箇所の外周に補強部材を設けてなるものである。
【0036】
上記構成により、カバーパネルの扉を形成する箇所の外周が補強部材により補強されるため、カバーパネルが上下方向に変形するのを抑制できると共に、エアバッグが膨張する際にカバーパネルがエアバッグの展開方向に押し上げられるのを抑制することができるため、テアラインを確実に開裂させることができる。
【0037】
本発明のインストルメントパネル構造は、前記エアバッグ装置を取り付けるために、本体構造体を内蔵したインストルメントパネル構造であって、前記エアバッグ装置が搭載されるエアバッグ装置搭載部と、前記エアバッグ装置搭載部内に設けられ、かつ固定具により前記ベースプレートを前記本体構造体に固定する取り付け座とを具備し、前記ベースプレートが前記エアバッグの展開に際して展開するエアバッグの飛び出し反力を前記本体構造体とともに支えることを特徴とするものである。
【0038】
また、本発明のインストルメントパネル構造は、前記エアバッグ装置に取り付けるための、本体構造体を内蔵したインストルメントパネル構造であって、前記カバーパネルとこのカバーパネルに連設されるインストルメントパネル表面が一体的な面となるように前記カバーパネルが取り付けられる開口部を有するエアバッグ装置搭載部と、前記エアバッグ装置搭載部内に設けられ、かつ固着具により前記ベースプレートを前記本体構造体に固定する取り付け座とを具備し、前記ベースプレートが前記エアバッグの展開に際して展開するエアバッグの飛び出し反力を前記本体構造体とともに支えることを特徴とするものである。
【0039】
前記構成により、フレキシブルパネルを押し縮めた状態で開口部よりエアバッグ装置搭載部へエアバッグ装置を収納することができるため、各種電子機器等が設置されている関係でエアバッグ装置の設置スペースが制限されている場合でも、エアバッグ装置の取り付け作業が容易に行える。
【0040】
またベースプレートをインストルメントパネルの取り付け座の固着したことにより、インストルメントパネルの剛性によりベースプレートの強度が一段と上がるため、ベースプレートのさらなる簡素化と軽量化が図れ、一層安定したエアバッグの展開特性が得られるようになる。
【発明の効果】
【0041】
本発明のエアバッグ装置によれば、エアバッグが膨張した際下方向へ作用する反力を剛体よりなるベースプレートが支持すると同時に、エアバッグが非膨出方向へ膨出するのをフレキシブルパネルが拘束するため、エアバッグを確実に乗員側へ展開させることができると共に、エアバッグやインフレータを収容するためのケースを必要としないため、エアバッグ装置の小型軽量化と薄型化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明の第1の実施の形態を、図面を参照して詳述する。
【0043】
図1はインストルメントパネルの内側に取り付けるエアバッグモジュールの一部を切欠いて描画した斜視図、図2はエアバッグモジュールの分解斜視図、図3は同横断面図、図4は図3のA−A線に沿う断面図、図5はインストルメントパネルのエアバッグ収納部にエアバッグモジュールを取り付ける際のインストルメントパネルの概略斜視図である。
【0044】
図1ないし図5は、助手席用エアバッグ装置を示すもので、図示しない助手席の前方に設けられたインストルメントパネル2内にエアバッグモジュール1が収容されている。
【0045】
エアバッグモジュール1は、金属板によりプレス成形された受け皿状のリテーナ3を有している。
【0046】
リテーナ3は長方形状に形成されていて、長手方向に間隔を存して一対の円孔よりなるインフレータ嵌合孔3aが開口されており、インフレータ嵌合孔3aの周辺には、インフレータ4を取り付けるための取り付けボルト5が下方へ向けて複数本突設されている。
【0047】
リテーナ3の上側には、折り畳まれたエアバッグ6が載置されていて、エアバッグ6とリテーナ3の周囲は、エアバッグ6の折り畳み形状が崩れないように拘束するナイロン基布よりなる帯状のラッピング布7により被覆されており、ラッピング布7には、エアバッグ6が膨張した際に破断するミシン目状の破断線7aがエアバッグモジュール1の長手方向に沿って形成されている。
【0048】
エアバッグ6は、例えば315デニール、目付け200g/m2程度のノンコートナイロン基布をほぼキノコ状に裁断し、周囲を縫着することにより袋状に形成されていて、膨張した際下側となる基布に、リテーナ3に形成されたインフレータ嵌合孔3aと合致するようガス導入口6aが形成されている。
【0049】
リテーナ3の下方には、エアバッグ装置本体1の下面側を覆う不定形のフレキシブルパネル、例えば2枚の可撓性シート状物からなるバックアップ部材8が設けられている。
【0050】
バックアップ部材8は、例えば315デニールで、目付けが200g/m2程度のノンコートナイロン基布によりリテーナ3より幅が十分に大きい長方形状に形成されていて、各バックアップ部材8は一端側を残して互いに重ね合わさられており、重なり部に、リテーナ3に形成されたインフレータ嵌合孔3aと合致するよう円形の嵌合孔8aが形成されていると共に、嵌合孔8aの周辺には取り付けボルト5を挿入する複数のボルト孔8bが穿設されている。
【0051】
各バックアップ部材8の一端側は、リテーナ3の両側に耳状にはみ出ていて、これら耳状部8cに筒状の取り付け部8dが形成されて、パネル結合部を構成している。
【0052】
取り付け部8dは、耳状部8cの端部側を2つ折りして端縁を重ね縫いすることにより筒状に形成されていて、図2に示すように筒状部の長手方向に間隔を存して複数の凹状の切り欠き部8eが形成されており、各取り付け部8dの端部は、後述するカバーパネル12の裏面に突設された枠状部12aの長孔12bより枠状部12aの外側へ突出されるようになっている。
【0053】
またバックアップ部材8の下方には、定形をなすベースプレート9が設けられており、ベースプレート9はエアバッグ6の飛び出し反力を後述の本体構造とともに支えるために、エアバッグ6の反展開側領域を覆っている。
【0054】
ベースプレート9はリテーナ3より長さが長いほぼ長方形状の金属板により形成されていて、リテーナ3に形成されたインフレータ嵌合孔3aと合致する位置にほぼ同じ大きさのインフレータ嵌合孔9aが形成されており、これらインフレータ嵌合孔9aの周辺に、取り付けボルト5を挿入するボルト孔9bが穿設されている。
【0055】
ベースプレート9は、幅をインフレータ4のフランジ4aの直径とほぼ同じに形成することにより、エアバッグ6が膨張する際の反力を十分に支持する強度を確保しつつ、余分な部分をできるだけ除いて可能な限り幅狭とすることにより軽量化を図っており、ベースプレート9の長手方向両端側は、上方へほぼクランク状に折り曲げられて取り付けエンド部9cが形成されて、ベース結合部を構成している。
【0056】
取り付け部エンド9cには、ボルト等の固着具10によりカバーパネル12の裏面に突設された取り付け壁12cにベースプレート9を固着する取り付け孔9dが形成されており、ベースプレート9のほぼ中央部と両端部には、ベースプレート9をインストルメントパネル2の取り付け座2bへ取り付ける固着具11を挿通するボルト孔9eが穿設されている。
【0057】
インフレータ4は図2に示すようにディスク状に形成されていて、上部の外周面に複数のガス噴出孔4bを有しており、ほぼ中間の外周面に突設されたフランジ4aに、リテーナ3より突設された取り付けボルト5を挿入するボルト孔4cが穿設されている。
【0058】
かくして、リテーナ3、バックアップ部材8及びベースプレート9により、インフレータ4を保持する容器体を構成している。
【0059】
なお図2中16は、インフレータ4と図示しない衝突検知手段との間を接続するハーネスである。また、図中のインフレータ4は2つ使用するものであるが、同一または類似形状であるため、1つのみを示し他の1つは省略してある。
【0060】
一方助手席前方のインストルメントパネル2には、図5に示すようにエアバッグ装置搭載部としてのエアバッグ収納部2aが凹設されていて、このエアバッグ収納部2aに、ベースプレート9のボルト孔9eに挿通した例えば3本の固着具11を挿通するためのボルト孔2cが穿設された取り付け座2bが、図示しないコラプシブルブラケットなどの衝撃吸収構造体を介して車幅方向に間隔を存して複数個所突設されて、エアバッグ装置本体1を取り付けるための本体構造体を構成している。
【0061】
エアバッグ収納部2aの上面開口部2dは、インストルメントパネル2と同色の樹脂により成形されたカバーパネル12で覆われている。従って、カバーパネル12には、エアバッグ6の展開側領域を覆うとともに、エアバッグ6の展開に際してテアライン12fに沿って開裂して扉を形成することになる。
【0062】
カバーパネル12は、図4に示すようにエアバッグ収納部2aの開口部2dに隙間なく嵌合されており、裏面に枠状部12aが一体に突設されていると共に、カバーパネル12の裏面と枠状部12aの連設部に補強部材18が熱カシメ等の手段で固着されている。
【0063】
枠状部12aは、折り畳まれた状態のエアバッグ6が下方より収納できるように、エアバッグ6の折り畳み形状よりやや大きい角枠状となっていて、エアバッグモジュール1をカバーパネル12の裏側に取り付ける際枠状部12aの下端部が図3に示すように、ベースプレート9の両端側立ち上がり部の内側に当接するようになっている。
【0064】
枠状部12aの外周面には、ベースプレート9の取り付けエンド部9cが下方より当接する取り付け座12eが突設されていて、取り付け部9cのボルト孔9dより挿入した固着具10を、取り付け座9eの上側に設けたナット部材13のねじ孔13aに螺挿することにより、ベースプレート9の両端がカバーパネル12の裏面に固着できるようになっている。
【0065】
枠状部12aの前後側面には、長方形の長孔12bがバックアップ部材8の取り付け部8dとほぼ同じ間隔で形成されており、これら長孔12bより枠状部12aの外側へ突出させた筒状取り付け部8dに係止杆14を挿通することにより、枠状部12aにバックアップ部材8の取り付け部8dが固定できるようになって、バックアップ部8のベースプレート9に対する接続部を構成している。
【0066】
係止杆14は、図2に示すように細長い金属板により形成されていて、強度を上げるために周縁部がプレス加工によりエッジ状に折り曲げ加工されてフランジ部14aが形成されており、中央部と両端部にリベット孔14bが穿設されている。
【0067】
そしてこれらリベット孔14bより挿入したリベット15により係止杆14が枠状部12aに係止できるようになっていると共に、係止杆14の各リベット孔14b間には、軽量化を図るために長孔状の肉抜き孔14cが形成されている。
【0068】
またカバーパネル12の裏面には、エアバッグ6が膨張した際に開裂するテアライン12fが、縦テアライン12gと横テアライン12hによりほぼH字形に形成されていて、縦テアライン12gと横テアライン12hの交点12iがベースプレートの取り付け部付近となるようにベースプレート9がカバーパネル12に取り付けられている。
【0069】
次に前記構成されたエアバッグ装置の作用を説明する。
【0070】
エアバッグモジュール1を組み立てるに当たっては、まず折り畳んだエアバッグ6をリテーナ3上に載置し、この状態でリテーナ3ごとラッピング布7により被覆してエアバッグ6の折り畳み形状が崩れないように保持する。
【0071】
次にバッグアップ布8の取り嵌合孔8aが開口されている部分を互いに重ね合わせた状態で、リテーナ3の下方より取り付けボルト5に嵌合孔8a周辺のボルト孔8bを嵌挿したら、ベースプレート9の各インフレータ嵌合孔9aに、インフレータ4のガス噴出孔4b側を下方から嵌合した状態で、ベースプレート9のボルト孔9bとインフレータ4のボルト孔4cを、リテーナ3より突設された取り付けボルト5に嵌挿し、この状態で取り付けボルト5の先端よりナット5aを螺挿して締め付けると、図3及び図4に示すようにインフレータ4の上部がエアバッグ6内へ突出し、またガス流入口6aの周辺がリテーナ3とベースプレート9の間に気密に挟着されるため、インフレータ4のガス噴出孔4bよりエアバッグ6内に高圧ガスが噴出された際、ガス流入口6aよりガス漏れが発生することがない。
【0072】
次にエアバッグモジュール1をカバーパネル12の裏面に取り付けるが、取り付けに当たっては、バックアップ部材8の一端に形成された筒状取り付け部8dを、枠状部12aに形成された長孔12bより枠状部12aの外側へ突出させる。
【0073】
そしてこの状態で筒状取り付け部12aに、図1に示すように係止杆14を一端側より挿通したら、リベット孔14bより挿入したリベット15を枠状部12aのリベット孔(図示せず)に挿入した状態で、リベット15をカシメることにより、係止杆14を枠状部12aの外側面に係止する。
【0074】
これによって図4に示すように、ベースプレート9の両側にはみ出たエアバッグ6の底面をバックアップ部材8が下方より覆うようになる。
【0075】
次にベースプレート9の両端部に設けられた取り付けエンド部9cのボルト孔9dに下方より挿入した固着具10を、カバーパネル12の取り付け座12eに設けたナット部材13のねじ孔13aに螺挿して締め付けることにより、エアバッグモジュール1を組み立てるもので、この状態では折り畳まれたエアバッグ6が枠状部12a内へと収容され、またベースプレート9が枠状部12aの先端とほぼ同じ高さとなり、さらにベースプレート9の下方にディスク型インフレータ4の底部のみが突出する構成となるため、エアバッグモジュール1の薄型化が図れると同時に、エアバッグ6やインフレータ4を収容するためのケースが不要となるため、エアバッグモジュール1の小型軽量化が可能になる。
【0076】
以上のようにしてエアバッグモジュール1を組み立てたら、図5に示すようにインストルメントパネル2に形成されたエアバッグ収納部2aにエアバッグモジュール1を収納し、ベースプレート9のボルト孔9eに挿入した固着具11を取り付け座2bのボルト孔2cに挿入して、例えばグローブボックス等を取付ける前のインストルメントパネル斜め下方の開口を利用して、取り付け座2bの下方より固着具11にナット(図示せず)を螺挿することにより、エアバッグ収納部2aに収納したエアバッグモジュール1のベースプレート9をインストルメントパネル2に固着するので、エアバッグ収納部2aの上面開口部2bをカバーパネル12が隙間なく覆うため、エアバッグモジュール1が外側より見えることがない。
【0077】
またエアバッグ収納部2aにエアバッグモジュール1を収納する際、エアバッグモジュール1の底部は、幅狭なベースプレート9の両側にはみ出たエアバッグ6の底面をバックアップ部材8で覆った構造となっていて変形が自在なため、エアバッグ収納部2aの開口部2dの面積が折り畳んだ状態のエアバッグ6を収納するのにギリギリの大きさか、やや小さい場合でも容易に収納できるため、エアバッグモジュール1の取り付け作業が短時間で無理なく行える。
【0078】
なお、インストルメントパネルを予め車両の最終組立てラインに隣接するサブライン(いわゆるサプライヤパーク等)で内蔵機器を組み込んでユニット完成させておく場合には、さらにインストルメントパネルの前側(エンジン側)や、上下逆さまに置いて組み付けるなどの作業自由度が高まるので、本実施例のエアバッグモジュールの優れた特性をより活かすことが可能である。
【0079】
一方自動車が衝突したのを衝突検知手段が感知すると、インフレータ4のガス噴出孔4bより高圧ガスがエアバッグ6内へ噴出され、これによってエアバッグ6が膨張を開始して、カバーパネル12を下方より強く押し上げるため、カバーパネル12がテアライン12fより上方へ開裂して、エアバッグ6が乗員側へ展開を開始する。
【0080】
またエアバッグ12が膨張してカバーパネル12を下方より強く押し上げる際の反動によりエアバッグ6が下方へ膨出しようとするが、エアバッグ6の下方には金属板よりなるベースプレート9と、ベースプレート9及びカバーパネル12の枠状部12a間に掛け渡されたバックアップ部材8とによりエアバッグ6が下方へ膨出するのを阻止するため、エアバッグ6の膨張圧がカバーパネル12側へのみ作用することになり、これによってカバーパネル12を確実に開裂することができるため、エアバッグ6を確実に乗員側へ展開させることができるようになる。
【0081】
なお図6ないし図8は、バックアップ部材8の取り付け部8dをカバーパネル12の枠状部12aに固定する部分の第1変形例を示すもので、枠状部12aの外側面に、ほぼコ字形の固定部12jが複数個所突設されている。
【0082】
これら固定部12jは、バックアップ部材8の取り付け部8dに形成された切り欠き部8eと同じ間隔で突設されていて、各固定部12j内には、水平方向に一直線となる貫通孔12kが形成されており、これら貫通孔12kと取り付け部8dに係止杆14を串刺しすることにより、バックアップ部材8の取り付け部8dを枠状部12aに固定するように構成されている。
【0083】
この第1変形例の場合、係止杆14が固定部12jに支持されて振れることがないため、係止杆14を枠状部12aに固定するリベット15を省略することができる。
【0084】
また図9及び図10は固定部12jの第2変形例を示すもので、第2変形例のように固定部12jに切り欠き12mを形成して、この切り欠き12mより係止杆14を差し込んだ後、固定部12jを熱でカシメて、図10に示すように切り欠き12mを塞ぐようにしてもよく、何れの変形例も機能は前記実施の形態と同様のため、作用説明は省略する。
【0085】
一方前記第1の実施の形態では、ディスク型インフレータ4を使用した場合について説明したが、図11に示すようにボンベ型のインフレータ4をベースプレート9上に寝かした状態で設置してもよく、ディスク型インフレータ4より多少全高が高くなるが、従来のものよりもケースとリテーナがない分小型軽量化と薄型化が図れるようになる。
【0086】
一方図12ないし図14は、運転席用エアバッグ装置に適用した第2の実施の形態を示すもので、次にこれを説明する。
【0087】
なお前記第1の実施の形態と実質的に同じ部分は同一符号を付して、その説明は省略する。
【0088】
運転席用エアバッグ装置は、ステアリングホイール(図示せず)の中央部に設置する関係から、カバーパネル12は図12に示すようにほぼ正方形状となっていて、スポーク部分が突出した形状となっている。
【0089】
カバーパネル12の裏面には枠状部12aが突設されていて、この枠状部12a内に、前記第1の実施の形態と同様に組み立てられたエアバッグ6とリテーナ3、バックアップ部材8、ベースプレート9、インフレータ4が下方より挿入されてエアバッグモジュール1が構成されている。
【0090】
前記構成のエアバッグモジュール1は、ベースプレート9の底部側をステアリングホイール側に設けられた取り付け座に固着具(ともに図示さず)により複数個所固着することにより、ステアリングホイールのほぼ中央部に装着されており、自動車が衝突した際インフレータ4より噴出される高圧ガスによりエアバッグ6が膨張を開始すると、カバーパネル12がテアライン12fより開裂されて図13に示すように開放され、膨張したエアバッグ6が図14に示すように運転者側へ展開されるため、衝突時の衝撃から運転者を保護することができると共に、エアバッグ6やインフレータ4を収容するためのケースが不要なため、前記第1の実施の形態と同様にエアバッグ装置の小型軽量化と薄型化が可能になる。これによって、ハンドルの慣性モーメントが低減できるとともに、エアバッグモジュールの乗員に対する位置がより乗員から遠い位置にレイアウトできるようになるので、よりすっきりしたデザインが可能になる。
【0091】
また、ベースプレート9は上述の実施例では金属材料、例えば鋼板等を使用したが、金属材料以外にも、例えば、エンジニアリングプラスチックと称される剛性の高い樹脂材料(例えば、ガラス繊維強化の66ナイロン、ポリスルフォン、PPS樹脂など)を利用し、適宜リブなどの補強構造を組み合わせたベースプレートを射出成形、トランスファ成形などで形成して適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明のエアバッグ装置は、エアバッグが膨張した際下方向へ作用する反力を剛体よりなるベースプレートが支持すると同時に、エアバッグが非膨出方向へ膨出するのをフレキシブルパネルが拘束するため、エアバッグを確実に乗員側へ展開させることができると共に、エアバッグやインフレータを収容するためのケースを必要としないため、エアバッグ装置の小型軽量化と薄型化が図れるために、自動車が衝突した際の衝撃から乗員を保護するエアバッグ装置等に最適である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の第1の実施の形態になるエアバッグ装置の一部を切欠いて描画した斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態になるエアバッグ装置の分解斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態になるエアバッグ装置の横断面図である。
【図4】図3のA−A線に沿う拡大断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態になるエアバッグ装置をインストルメントパネルへ装着す際のインストルメントパネルの概略斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態になるエアバッグ装置のバックアップ部材取り付け部の第1の変形例を示す斜視図である。
【図7】図6のB−B線に沿う断面図である。
【図8】図6のC−C線に沿う断面図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態になるエアバッグ装置のバックアップ部材取り付け部の第2の変形例を示す断面図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態になるエアバッグ装置のバックアップ部材取り付け部の第2の変形例を示す断面図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態になるエアバッグ装置の変形例を示す一部切欠斜視図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態になるエアバッグ装置の斜視図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態になるエアバッグ装置のカバーパネル展開状態の斜視図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態になるエアバッグ装置の作用説明図である。
【符号の説明】
【0094】
1 エアバッグモジュール
2 インストルメントパネル
2a エアバッグ収納部
2b 取り付け座
2d 開口部
4 インフレータ
6 エアバッグ
8 バックアップ部材(フレキシブルパネル)
9 ベースプレート
12 カバーパネル
12a 枠状部
12f テアライン
12g 縦テアイン
12h 横テアライン
18 補強部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
折畳まれたエアバッグと、自動車の衝突時前記エアバッグ内に高圧ガスを噴出するインフレータと、前記エアバッグを収容しエアバッグの非膨出側を覆うとともに前記インフレータを保持する容器体とを備えたエアバッグ装置であって、
前記容器体は、
前記インフレータが取り付けられ、前記被膨出側の一部であって前記エアバッグの反展開側領域を覆い、かつ、エアバッグの基部が取り付けられ、前記エアバッグの展開に際して展開するエアバッグの飛び出し反力を支える、定形をなすベースプレートと、
前記ベースプレートに接続部を介して接続され、前記被膨出側の他の部分を覆い、前記エアバッグの展開に際して非膨出側への前記エアバッグの膨張を規制するフレキシブルパネルとよりなる、
ことを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
フレキシブルパネルは織布よりなる請求項1記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
展開側領域を覆うとともに前記エアバッグの展開に際して所定のテアラインに沿って開裂して扉を形成するカバーパネルを具備し、
前記ベースプレートは前記カバーパネルの一部に結合するベース結合部を有し、
前記フレキシブルパネルは前記カバーパネルの少なくとも他の一部に結合するパネル結合部を有し、前記接続部とパネル結合部との間に掛け渡された、請求項1または2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記テアラインを横テアラインと横テアラインの終端に接続される縦テアラインとから構成し、
前記ベース結合部は、前記終端の近傍に位置することを特徴とする請求項3記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記カバーパネルの前記扉を形成する箇所の外周に補強部材を設けてなる、請求項3または4に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載のエアバッグ装置を取り付けるために、本体構造体を内蔵したインストルメントパネル構造であって、
前記エアバッグ装置が搭載されるエアバッグ装置搭載部と、前記エアバッグ装置搭載部内に設けられ、かつ固定具により前記ベースプレートを前記本体構造体に固定する取り付け座とを具備し、
前記ベースプレートが前記エアバッグの展開に際して展開するエアバッグの飛び出し反力を前記本体構造体とともに支えることを特徴とするインストルメントパネル構造。
【請求項7】
請求項3乃至5に記載のエアバッグ装置に取り付けるための、本体構造体を内蔵したインストルメントパネル構造であって、
前記カバーパネルとこのカバーパネルに連設されるインストルメントパネル表面が一体的な面となるように前記カバーパネルが取り付けられる開口部を有するエアバッグ装置搭載部と、前記エアバッグ装置搭載部内に設けられ、かつ固着具により前記ベースプレートを前記本体構造体に固定する取り付け座とを具備し、前記ベースプレートが前記エアバッグの展開に際して展開するエアバッグの飛び出し反力を前記本体構造体とともに支えることを特徴とするインストルメントパネル構造。
【請求項1】
折畳まれたエアバッグと、自動車の衝突時前記エアバッグ内に高圧ガスを噴出するインフレータと、前記エアバッグを収容しエアバッグの非膨出側を覆うとともに前記インフレータを保持する容器体とを備えたエアバッグ装置であって、
前記容器体は、
前記インフレータが取り付けられ、前記被膨出側の一部であって前記エアバッグの反展開側領域を覆い、かつ、エアバッグの基部が取り付けられ、前記エアバッグの展開に際して展開するエアバッグの飛び出し反力を支える、定形をなすベースプレートと、
前記ベースプレートに接続部を介して接続され、前記被膨出側の他の部分を覆い、前記エアバッグの展開に際して非膨出側への前記エアバッグの膨張を規制するフレキシブルパネルとよりなる、
ことを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
フレキシブルパネルは織布よりなる請求項1記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
展開側領域を覆うとともに前記エアバッグの展開に際して所定のテアラインに沿って開裂して扉を形成するカバーパネルを具備し、
前記ベースプレートは前記カバーパネルの一部に結合するベース結合部を有し、
前記フレキシブルパネルは前記カバーパネルの少なくとも他の一部に結合するパネル結合部を有し、前記接続部とパネル結合部との間に掛け渡された、請求項1または2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記テアラインを横テアラインと横テアラインの終端に接続される縦テアラインとから構成し、
前記ベース結合部は、前記終端の近傍に位置することを特徴とする請求項3記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記カバーパネルの前記扉を形成する箇所の外周に補強部材を設けてなる、請求項3または4に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載のエアバッグ装置を取り付けるために、本体構造体を内蔵したインストルメントパネル構造であって、
前記エアバッグ装置が搭載されるエアバッグ装置搭載部と、前記エアバッグ装置搭載部内に設けられ、かつ固定具により前記ベースプレートを前記本体構造体に固定する取り付け座とを具備し、
前記ベースプレートが前記エアバッグの展開に際して展開するエアバッグの飛び出し反力を前記本体構造体とともに支えることを特徴とするインストルメントパネル構造。
【請求項7】
請求項3乃至5に記載のエアバッグ装置に取り付けるための、本体構造体を内蔵したインストルメントパネル構造であって、
前記カバーパネルとこのカバーパネルに連設されるインストルメントパネル表面が一体的な面となるように前記カバーパネルが取り付けられる開口部を有するエアバッグ装置搭載部と、前記エアバッグ装置搭載部内に設けられ、かつ固着具により前記ベースプレートを前記本体構造体に固定する取り付け座とを具備し、前記ベースプレートが前記エアバッグの展開に際して展開するエアバッグの飛び出し反力を前記本体構造体とともに支えることを特徴とするインストルメントパネル構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−281945(P2006−281945A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−103623(P2005−103623)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】
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