説明

エアバッグ装置

【課題】エアバッグの内圧チューニングの自由度を拡大する。
【解決手段】中心部側から内部に高圧ガスが供給されて膨張展開するエアバッグ本体32と、エアバッグ本体32を構成する第2基布37に設けられエアバッグ本体32の内部のガスを外部に排出するメインベントホール37bと、エアバッグ本体32の第1基布と第2基布37を接合する破断容易な複数の縫製部39と、縫製部39によってエアバッグ本体32に係止されるとともにメインベントホール37bを塞ぐベントホールカバー50と、を備えるエアバッグ装置であって、第2基布37上のベントホールカバー50と重畳しない領域にサブベントホール40が設けられており、サブベントホール40は、メインベントホール37bよりも開口面積が小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗員保護用のエアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の衝突時にインフレータから供給されるガスでエアバッグを車室内に展開して乗員を拘束するエアバッグ装置には、エアバッグの内圧が過剰に上昇するのを防止するためにベントホールを設け、このベントホールをエアバッグの展開途中で開放するものがある。
また、エアバッグ装置には、エアバッグの容積膨張および内圧を制御するために、展開途中で破断する破断接合部をエアバッグに予め設けておき、破断接合部の破断によりエアバッグの容積を徐々に拡大するものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、ベントホールを塞ぐベントホールカバーの端部を破断接合部でエアバッグに接合し、エアバッグの展開時に破断接合部が破断されたときにベントホールカバーがベントホールから外れ、ベントホールを開放させるエアバッグ装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−302224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の前記エアバッグ装置においては、破断接合部が破断される前は、ベントホールがベントホールカバーによって塞がれているため、エアバッグの内圧を調整することができなかった。
そこで、この発明は、エアバッグの内圧チューニングの自由度を拡大することができるエアバッグ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエアバッグ装置では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、中心部側から内部に高圧ガスが供給されて膨張展開するエアバッグ本体(例えば、後述する実施例におけるエアバッグ本体32)と、前記エアバッグ本体を構成する基布(例えば、後述する実施例における第2基布37)に設けられ該エアバッグ本体の内部のガスを外部に排出するメインベントホール(例えば、後述する実施例におけるメインベントホール37b)と、前記エアバッグ本体の対向する基布(例えば、後述する実施例における第1基布36と第2基布37)同士を接合する破断容易な複数の破断接合部(例えば、後述する実施例における縫製部39)と、前記破断接合部によって前記エアバッグ本体に係止されるとともに前記メインベントホールを塞ぐベントホールカバー(例えば、後述する実施例におけるベントホールカバー50)と、を備えるエアバッグ装置であって、前記基布上の前記ベントホールカバーと重畳しない領域にサブベントホール(例えば、後述する実施例におけるサブベントホール40)が設けられていることを特徴とするエアバッグ装置である。
このように構成することにより、破断接合部が破断する前はメインベントホールがベントホールカバーで閉塞されているが、その間にもサブベントホールを介してエアバッグ本体の内部のガスを外部に排出することができる。また、破断接合部が破断してベントホールカバーがメインベントホールから外れ、メインベントホールが開放されたときには、メインベントホールとサブベントホールの両方からエアバッグ本体の内部のガスを外部に排出することができる。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記サブベントホールは、前記メインベントホールよりも開口面積が小さいことを特徴とする。
このように構成することにより、エアバッグ本体の内圧チューニングをより細やかに行うことができる。
【0008】
請求項3に係る発明は、中心部側から内部に高圧ガスが供給されて膨張展開するエアバッグ本体(例えば、後述する実施例におけるエアバッグ本体32)と、前記エアバッグ本体を構成する基布(例えば、後述する実施例における第2基布37)に設けられ該エアバッグ本体の内部のガスを外部に排出するメインベントホール(例えば、後述する実施例におけるメインベントホール37b)と、前記エアバッグ本体の対向する基布(例えば、後述する実施例における第1基布36と第2基布37)同士を接合する破断容易な複数の破断接合部(例えば、後述する実施例における縫製部39)と、前記破断接合部によって前記エアバッグ本体に係止されるとともに前記メインベントホールを塞ぐベントホールカバー(例えば、後述する実施例におけるベントホールカバー50)と、を備えるエアバッグ装置であって、前記ベントホールカバーには、前記メインベントホールと重畳する位置に前記メインベントホールよりも小さい開口面積を有するサブベントホール(例えば、後述する実施例におけるサブベントホール41)が設けられていることを特徴とするエアバッグ装置である。
このように構成することにより、破断接合部が破断する前のメインベントホールがベントホールカバーで覆われている間も、開口面積の小さいサブベントホールを介してエアバッグ本体の内部のガスを外部に排出することができる。また、破断接合部が破断してベントホールカバーがメインベントホールから外れ、メインベントホールが開放されたときには、開口面積の大きなメインベントホールからエアバッグ本体の内部のガスを外部に排出することができる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、破断接合部が破断する前はメインベントホールがベントホールカバーで閉塞されているが、その間もサブベントホールを介してエアバッグ本体の内部のガスを外部に排出することができるので、メインベントホールが閉塞されている間もエアバッグ本体の内圧チューニングを細やかに行うことが可能となるとともに、エアバッグ本体の内圧チューニングが可能な時間帯を拡大することができる。また、破断接合部が破断してベントホールカバーがメインベントホールから外れ、メインベントホールが開放されたときには、メインベントホールとサブベントホールの両方からエアバッグ本体の内部のガスを外部に排出することができるので、より大きな減圧効果を得ることができるとともに、より迅速に減圧を行うことができる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、エアバッグ本体の内圧チューニングをより細やかに行うことができる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、破断接合部が破断する前のメインベントホールがベントホールカバーで覆われている間も、サブベントホールを介してエアバッグ本体の内部のガスを外部に排出することができるので、エアバッグ本体の内圧チューニングが可能な時間帯を拡大することができる。また、この間は、メインベントホールよりも開口面積の小さいサブベントホールからガスを排出するので、減圧効果を低く抑えることができ、細やかな内圧チューニングを行うことが可能となる。また、破断接合部が破断してベントホールカバーがメインベントホールから外れ、メインベントホールが開放されたときには、開口面積の大きなメインベントホールからエアバッグ本体の内部のガスを外部に排出することができるので、サブベントホールから排出していたときよりも大きな減圧効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明に係るエアバッグ装置を備えた車輌の車室内を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】本発明に係るエアバッグ装置の実施例1におけるエアバッグの分解斜視図である。
【図4】前記実施例1におけるエアバッグの背面図である。
【図5】図4のB−B線に沿う断面図である。
【図6】前記実施例1のエアバッグ展開初期の断面図である。
【図7】前記実施例1のエアバッグ展開後期の断面図である。
【図8】前記実施例1のエアバッグ展開時におけるステアリングホイールとメインベントホールおよびサブベントホールの相対位置関係を示す図である。
【図9】本発明に係るエアバッグ装置の実施例2におけるメインベントホールとサブベントホールの相対位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明に係るエアバッグ装置の実施例を図1から図9の図面を参照して説明する。なお、以下に記載する各実施例のエアバッグ装置は、車両の運転者用にハンドル内に格納されたエアバッグ装置の態様であり、以下の説明において「前後」は車体における前後と同じである。
【0014】
初めに、この発明に係るエアバッグ装置の実施例1を図1から図8の図面を参照して説明する。図1に示すように、運転席のシート11の前方に配置されたステアリングホイール12の内部に、エアバッグ装置のエアバッグモジュール13が収納されている。
図2に示すように、ステアリングホイール12はステアリングシャフト14の後端にナット15によりボス部16が固定され、ボス部16にカップ状のフロントカバー17が固定されている。フロントカバー17の周縁には、フロントカバー17を閉塞するように複数のボルト18によりリヤカバー19が固定されている。フロントカバー17の外周面には放射状に延びる複数のスポーク部20が取り付けられ、このスポーク部20にステアリングホイール本体(グリップ部)21が支持されている。
【0015】
リヤカバー19の内周面にはリテーナ22がボルト18により共締めされ、このリテーナ22にエアバッグモジュール13が支持されている。フロントカバー17とリヤカバー19は、エアバッグモジュール13を収納するエアバッグカバーを構成する。リヤカバー19の内面には破断を促進するためのティアライン19aが形成されている。
エアバッグモジュール13は、燃焼により高圧ガスを発生する推薬を充填したインフレータ31と、基布を縫製して構成されインフレータ31が発生させた高圧ガスが導入されて膨張するエアバッグ本体32と、エアバッグ本体32の基部を固定する固定リング33とを備えている。リテーナ22の前面及び後面に、インフレータ31のフランジ31aと固定リング33とが重合され、複数のボルト34及びナット35で締め付け固定されている。このリテーナ22の後面と固定リング33の前面との間にエアバッグ本体32の基部が挟み込まれた状態で固定されている。
【0016】
図3に示すように、円形のエアバッグ本体32は後側(乗員に対向する側)の第1基布36と、その前面に重合される第2基布37とを備え、第1基布36と第2基布37はその外周部を縫製部38で一体に縫製されている。また、重ね合わされた第1基布36と第2基布37が、縫製部38の内側で、渦巻き状の複数の縫製部(破断接合部)39で縫製されている。この実施例1では渦巻き状の縫製部39を3個としているが、2個あるいは4個以上であってもよい。外周の縫製部38はエアバッグ本体32の膨張時に破断しないように太めの糸で強固に縫製されているが、その内側の渦巻き状の3つの縫製部39はエアバッグ本体32の膨張時に容易に破断可能なように細目の糸で脆弱に縫製されている。
渦巻き状の縫製部39の径方向内端39aはエアバッグ本体32の中心を指向しており、エアバッグ本体32の展開時に径方向内端39aに応力を集中させて縫製部39の破断開始を促進している。
【0017】
第2基布37にはインフレータ31を囲む円形の開口(インフレータ開口)37aと、この開口37aの周囲に形成された複数のボルト34の貫通孔37cと、エアバッグ本体32の膨張時に内部のガスの一部を逃がす円形のメインベントホール37bおよびサブベントホール40とが形成されている。
開口37aは第2基布37の中心に配置されている。メインベントホール37bは開口37aの側部に1つだけ配置され、第2基布37の中心から偏心して配置されている。サブベントホール40は開口37aおよびメインベントホール37bから離間して2つ配置されており、開口37aの中心とメインベントホール37bの中心を結ぶ線に対して左右対称な位置であって、縫製部39よりも内側に配置されている。1つのサブベントホール40の開口面積はメインベントホール37bの開口面積よりも小さく設定されている。
【0018】
前述したようにリテーナ22の後面と固定リング33の前面との間には、第2基布37が挟まれて複数のボルト34で締め付けられているため、インフレータ31が発生するガスは第2基布37の中央の開口37aからエアバッグ本体32の内部に供給される。
【0019】
エアバッグ本体32には、メインベントホール37を開閉してエアバッグ本体32の内圧を制御するベントホールカバー50が設けられている。但し、ベントホールカバー50は、メインベントホール37bを開閉するだけで、サブベントホール40を塞ぐことはない。換言すると、サブベントホール40はベントホールカバー50と重畳しない領域に配置されている。
図3及び図4に示すように、ベントホールカバー50は平面視略T字状をなし、直線的な帯状をなしその両端部52,53をエアバッグ本体32の外周部に配置される閉塞部51と、閉塞部51の長手方向の中間部54から開口37aに指向して延出する延出部55とを備えている。
【0020】
閉塞部51の中間部54はメインベントホール37bを閉塞可能なようにメインベントホール37bよりも幅広に形成されており、閉塞部51は中間部54から両端部52,53に接近するにしたがって幅が狭くなっている。このベントホールカバー50は第2基布37の内面に沿って、中間部54でメインベントホール37bを閉塞可能な位置に配置されており、閉塞部51の両端部52,53は第1基布36及び第2基布37の周縁に沿うように縫製部38の手前で弧状にカットされ、第1基布36と第2基布37とを接合する3つの渦巻き状の縫製部39で同時に縫製されている。換言すると、ベントホールカバー50は縫製部39によってエアバッグ本体32に係止されている。
【0021】
延出部55はその全長に亘ってほぼ同一幅に形成され、延出部55の先端部56は第2基布37の開口37aの周囲を覆うように配置されている。先端部56には、開口37aと同一径で開口37aと同心上に位置する孔55aと、孔55aの周囲に配置され第2基布37の貫通孔37cに対応して形成された複数の貫通孔55bが設けられている。延出部55の先端部56は、第2基布37とともにリテーナ22の後面と固定リング33の前面との間に挟まれ、第2基布37とともにボルト34でリテーナ22に共締めされている。
【0022】
なお、エアバッグ本体32は、第1基布36と第2基布37の外周部を縫製部38で接合した後、第2基布37にベントホールカバー50を仮置きし、さらに裏返してから渦巻き状の縫製部39で縫製部38の内側を接合するが、裏返す際にベントホールカバー50が位置ずれしないように、裏返す前に第2基布37にベントホールカバー50をメインベントホール37bが塞がれる適正な位置に合わせて仮止めしてもよい。
【0023】
このように構成されたエアバッグ装置では、車両衝突時に所定以上の重力加速度が検出されるとインフレータ31が点火し、折り畳まれたエアバッグ本体32がインフレータ31が発生するガスで膨張を開始する。
そして、エアバッグ本体32の膨張過程においてその圧力を受けたリヤカバー19はティアライン19aで破断し、そこに形成された開口からエアバッグ本体32が車室内に展開する。
【0024】
図6に示すように、エアバッグ本体32が膨張するときに3つの渦巻き状の縫製部39が第1基布36、第2基布37を一体に接合しているので、エアバッグ本体32が一気に膨張するのを防止して、小容量のエアバッグを早期に形成した後に、エアバッグ本体32の内圧の増加に伴って3つの縫製部39が径方向内側から外側へと破断する。
【0025】
3つの縫製部39が全て破断するまでは、ベントホールカバー50は閉塞部51の両端部52,53が第1基布36と第2基布37の縫製部39によって拘束され、延出部55の先端部56がリテーナ22と固定リング33によって挟持されているので、メインベントホール37bはベントホールカバー50により閉塞されており、メインベントホール37bからガスが排出されることはない。
しかしながら、メインベントホール37bが閉塞されている間も、開口面積の小さいサブベントホール40は開放されているので、このサブベントホール40を介してエアバッグ本体32の内部のガスを外部に排出することができる。これにより、エアバッグ本体32の展開初期段階でメインベントホール37bが閉塞されている状態であっても、サブベントホール40からエアバッグ本体32内のガスを排出することで、エアバッグ本体32の内圧チューニングを細やかに行うことが可能となる。そして、エアバッグ本体32は適切な内圧を維持しながら次第に容積を増加させて、3つの縫製部39が全て破断したときに最終的に前後方向に扁平な形状に展開して最大限の拘束力を発揮することができる。ここで、サブベントホール40の開口面積を適宜設定することにより、この展開初期段階のエアバッグ本体32の内圧を所望にチューニングすることが可能となる。
なお、サブベントホール40は第2基布37に設けてあるため、サブベントホール40から排出されるガスが運転者に直接的に当たることがなく、運転者に不快感を与えることがない。
【0026】
そして、エアバッグ本体32の展開末期に3つの縫製部39が全て破断すると、延出部55の先端部56はリテーナ22と固定リング33によって挟持され固定されているが、閉塞部51の両端部52,53dの拘束は解除されるため、ベントホールカバー50において閉塞部51の中間部54の一部(図4において上側部分)が、図7に示すように、メインベントホール37bから外部に押し出されることでメインベントホール37bが開放される。その結果、エアバッグ本体32内の余剰のガスがメインベントホール37bおよびサブベントホール40から排出され、エアバッグ本体32の内圧の過剰な上昇を防止することができ、エアバッグ本体32の荷重特性を所望に設定することができる。なお、メインベントホール37bも第2基布37に設けてあるため、メインベントホール37bから排出されるガスが運転者に直接的に当たることがなく、運転者に不快感を与えることがない。
【0027】
このように、この実施例1のエアバッグ装置によれば、縫製部39が破断する前はメインベントホール37bがベントホールカバー50で閉塞されているが、その間も開口面積の小さいサブベントホール40を介してエアバッグ本体32の内部のガスを外部に排出することができるので、メインベントホール37bが閉塞されている間もエアバッグ本体32の内圧チューニングを細やかに行うことが可能となるとともに、エアバッグ本体32の内圧チューニングが可能な時間帯を拡大することができる。また、縫製部39が破断してベントホールカバー50がメインベントホール37bから外れ、メインベントホール37bが開放されたときには、メインベントホール37bとサブベントホール40の両方からエアバッグ本体32の内部のガスを外部に排出することができるので、より大きな減圧効果を得ることができ、エアバッグ本体32の内圧をより低減することができるとともに、より迅速に減圧を行うことができる。
【0028】
ところで、メインベントホール37bは、ベントホールカバー50の取り付け位置の関係から、エアバッグ本体32の展開状態においてステアリングホイール12の内側に配置されることとなるが、図8に示すように、エアバッグ本体32の展開状態において、ステアリングホイール12の隙間部、すなわち、ステアリングホイール本体12とスポーク部20の間にメインベントホール37bが位置するように配置する。このようにすると、エアバッグが展開したときに、メインベントホール37bがステアリングホイール本体21およびスポーク部20と干渉するのを防止することができるので、メインベントホール37bからの排気をスムーズに安定して行うことができ、また、エアバッグ本体32の荷重特性を安定化させることができる。
【0029】
一方、サブベントホール40は前述したようにベントホールカバー50と重畳しないように配置するので、サブベントホール40の位置はステアリングホイール12の内側に限定されず、図8に示すようにステアリングホイール12の外側に配置することができる。但し、サブベントホール40もエアバッグ本体32の展開状態においてステアリングホイール12と干渉しないように配置することで、サブベントホール40からの排気を確保する。
このように、メインベントホール37bはその設置位置が制約されることから、自ずとその大きさ(開口面積)にも制約を受けるが、サブベントホール40を設けることによって、メインベントホール37bの開口面積の不足分を補うこともできる。
なお、この実施例1では、サブベントホール40を2つ配置したが、サブベントホール40の数は1つでもよいし、3つ以上であってもよい。前述したように、サブベントホール40の設置位置の制約は緩いので、数多く配置することも容易である。
【0030】
また、このエアバッグ装置では、延出部55の先端部56がリテーナ22と固定リング33によって挟持されているので、エアバッグ本体32の製造時にベントホールカバー50の中間部54が位置ずれするのを防止することができるとともに、エアバッグ本体32の展開途中においてエアバッグ本体32が膨張し丸みを帯びたときにも、ベントホールカバー50の中間部54がエアバッグ本体32の径方向外側に位置ずれするのを防止することができる。
さらに、このエアバッグ装置では、閉塞部51がその中間部54から両端部52,53に接近するにしたがって幅が狭くなっているので、ベントホールカバー50がメインベントホール37bから抜け出す際の抵抗を低減することができる。
その結果、縫製部39が破断してベントホールカバー50の閉塞部51の端部52,53の少なくとも一方がエアバッグ本体32から外れるまでメインベントホール37bの閉塞を維持することができ、端部52,53の少なくとも一方がエアバッグ本体32から外れたときにメインベントホール37bを開放することができるので、エアバッグの内圧を適切に制御することができ、エアバッグ本体32を適切に展開制御することができる。
【0031】
次に、この発明に係るエアバッグ装置の実施例2を図9を参照して説明する。
図9は、実施例2のエアバッグ装置において、第2基布37にベントホールカバー50を適正な位置に重ねた状態を示す図であり、第1基布36と縫合する前の状態を示している。
【0032】
この実施例2では、第2基布37にサブベントホール40を設ける代わりに、ベントホールカバー50に円形のサブベントホール41が設けられている。サブベントホール41はメインベントホール37bと重畳するように同心上に配置されている。サブベントホール41はメインベントホール37bよりも小径で、開口面積が小さい。
その他の構成は前述した実施例1と同じであり、ベントホールカバー50の閉塞部51の両端部52,53は第1基布36と第2基布37とを接合する縫製部39(図9では図示略)で同時に縫製される。
【0033】
この実施例2のエアバッグ装置によれば、エアバッグ本体32の膨張時に、縫製部39が破断する前のメインベントホール37bがベントホールカバー50で覆われている間も、サブベントホール41を介してエアバッグ本体32の内部のガスを外部に排出することができるので、エアバッグ本体32の内圧チューニングが可能な時間帯を拡大することができる。また、この間は、メインベントホール37bよりも開口面積の小さいサブベントホール41からガスを排出するので、減圧効果を低く抑えることができ、細やかな内圧チューニングを行うことが可能となる。また、縫製部39が破断してベントホールカバー50がメインベントホール37bから外れ、メインベントホール37bが開放されたときには、開口面積の大きなメインベントホール37bからエアバッグ本体32の内部のガスを外部に排出することができるので、サブベントホール41から排出していたときよりも大きな減圧効果を得ることができ、エアバッグ本体32の内圧をより低減することができる。
【0034】
なお、前述した各実施例では、図5に示すように、ベントホールカバー50の端部52,53を最も外側の縫製部39に至る部位に渡って縫製しているが、最も外側の縫製部39よりも内側の縫製部39、例えば内側から2番目の縫製部39まででベントホールカバー50の縫製をとめておくことができる。このように構成することで、最も外側の縫製部39が破断した時には既にメインベントホール37bが開いているような設定とすることができる。これによりメインベントホール37bが開放されるタイミングやエアバッグ本体32の内圧を調整することができる。
【0035】
前述した各実施例では縫製部39を渦巻き状に形成したが、同心円状に形成してもよく、また、縫製部39を全周に設けずにエアバッグ本体32の外周部に部分的に設けてもよい。
前述した各実施例ではエアバッグ本体32の破断接合部を縫製部39で構成したが、破断接合部は縫製に限るものではなく、織り合わせや接合などで構成してもよい。
ベントホールカバー50の形状は、前述した各実施例に限るものではなく、例えば延出部55の先端部56を円形にしても構わない。
また、前述した各実施例ではハンドル内に格納されたエアバッグ装置の態様で説明したが、この発明はハンドル内格納式以外のエアバッグ装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0036】
32 エアバッグ本体
36 第1基布(基布)
37 第2基布(基布)
37b メインベントホール
39 縫製部(破断接合部)
40,41 サブベントホール
50 ベントホールカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部側から内部に高圧ガスが供給されて膨張展開するエアバッグ本体と、
前記エアバッグ本体を構成する基布に設けられ該エアバッグ本体の内部のガスを外部に排出するメインベントホールと、
前記エアバッグ本体の対向する基布同士を接合する破断容易な複数の破断接合部と、
前記破断接合部によって前記エアバッグ本体に係止されるとともに前記メインベントホールを塞ぐベントホールカバーと、
を備えるエアバッグ装置であって、
前記基布上の前記ベントホールカバーと重畳しない領域にサブベントホールが設けられていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記サブベントホールは、前記メインベントホールよりも開口面積が小さいことを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
中心部側から内部に高圧ガスが供給されて膨張展開するエアバッグ本体と、
前記エアバッグ本体を構成する基布に設けられ該エアバッグ本体の内部のガスを外部に排出するメインベントホールと、
前記エアバッグ本体の対向する基布同士を接合する破断容易な複数の破断接合部と、
前記破断接合部によって前記エアバッグ本体に係止されるとともに前記メインベントホールを塞ぐベントホールカバーと、
を備えるエアバッグ装置であって、
前記ベントホールカバーには、前記メインベントホールと重畳する位置に前記メインベントホールよりも小さい開口面積を有するサブベントホールが設けられていることを特徴とするエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−31722(P2011−31722A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179290(P2009−179290)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】