エアバッグ装置
【課題】複数の布からなる固定布をエアバッグに簡単に形成して、固定布の形成に要する作業時間を短縮する。
【解決手段】エアバッグ装置は、エアバッグ20を備えている。エアバッグ20は、車体に固定される固定布30を有する。固定布30は、本体布34と、補強布40とを有する。本体布34は、エアバッグ20と一体に形成されている。補強布40は、所定回数折り畳まれて本体布34に結合される。本体布34と補強布40からなる固定布30が車体に固定される。
【解決手段】エアバッグ装置は、エアバッグ20を備えている。エアバッグ20は、車体に固定される固定布30を有する。固定布30は、本体布34と、補強布40とを有する。本体布34は、エアバッグ20と一体に形成されている。補強布40は、所定回数折り畳まれて本体布34に結合される。本体布34と補強布40からなる固定布30が車体に固定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内でエアバッグを膨張展開させて、エアバッグにより乗員を保護するエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の緊急時や衝突時に乗員を保護するため、エアバッグ装置が使用されている。エアバッグ装置は、車体に固定されたエアバッグを有する。エアバッグは、膨張展開して乗員を受け止める。その際、エアバッグは、展開に伴う引っ張りや乗員を受け止めた衝撃により、大きな力を受けることがある。そのため、エアバッグの車体に固定される部分には、高い強度が要求される。これに対し、従来、車体に固定される固定布を2枚以上の布から形成して、固定布の強度を確保したエアバッグが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
ところが、従来のエアバッグでは、複数枚の布により固定布を形成するときに、枚数を確認しつつ複数枚の布をエアバッグに取り付ける必要がある。そのため、布の取り扱いと管理に手間がかかり、固定布の形成に要する作業時間が長くなる。また、布の枚数を間違えないよう、布の取り扱いと枚数の確認を慎重に行う必要もある。従って、固定布をエアバッグに形成するための手間と時間が増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−214969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来の問題に鑑みなされたもので、その目的は、複数の布からなる固定布をエアバッグに簡単に形成できるようにして、固定布の形成に要する作業時間を短縮することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車体に固定される固定布を有するエアバッグを備えたエアバッグ装置であって、固定布が、エアバッグと一体に形成された本体布と、所定回数折り畳まれて本体布に重ね合わせて結合された補強布とを有するエアバッグ装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数の布からなる固定布をエアバッグに簡単に形成できる。また、固定布の形成に要する作業時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態のエアバッグ装置を示す図である。
【図2】平面上に拡げたエアバッグを示す図である。
【図3】固定部材とエアバッグの固定布を示す図である。
【図4】エアバッグに取り付けた固定部材を示す図である。
【図5】エアバッグの固定布を分解して示す図である。
【図6】補強布の形成手順を示す図である。
【図7】結合前の補強布と本体布を示す図である。
【図8】本体布と補強布の第1の縫製パターンを示す図である。
【図9】本体布と補強布の第2の縫製パターンを示す図である。
【図10】他の実施形態の補強布を示す図である。
【図11】他の実施形態の補強布を示す図である。
【図12】図11に示す補強布の縫製パターンを示す図である。
【図13】図11に示す補強布の縫製パターンを示す図である。
【図14】図11に示す補強布と一部が異なる補強布を示す図である。
【図15】保護布を示す図である。
【図16】エアバッグへ取り付ける前後の保護布を示す図である。
【図17】エアバッグに取り付けた固定部材を示す図である。
【図18】他の実施形態の補強布と保護布を示す展開図である。
【図19】エアバッグへ取り付ける前後の保護布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のエアバッグ装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態では、車両内でエアバッグをカーテン状に展開させるカーテンエアバッグ装置(以下、単にエアバッグ装置という)を例に採り説明する。エアバッグ装置は、車両内に搭載されて、膨張展開するエアバッグにより乗員を受け止めて保護する。
【0010】
図1は、本実施形態のエアバッグ装置を示す図である。図1では、車両90に搭載したエアバッグ装置1を車室内から見て示している。また、車両90の側壁91とエアバッグ装置1を、車両90の後方側を省略して、かつ、車両90の幅方向から見て模式的に示している。エアバッグ装置1は、車両90の内面を透視して示している。
なお、本発明では、車両90における前方と後方を単に前方と後方といい、車両90における前後方向を単に前後方向という。また、車両90における上方と下方を単に上方と下方といい、車両90における上下方向を単に上下方向という。
【0011】
車両90は、図示のように、車室内の側壁91に、上方のルーフレール92、前方のフロントピラー(Aピラー)93、センターピラー(Bピラー)94、及び、後方のリアピラー(Cピラー)(図示せず)を有する。また、車両90は、前部ドア95と、後部ドア96と、ドア95、96に設けられた窓部97、98とを備えている。
【0012】
エアバッグ装置1は、筒状のインフレータ2と、固定部材10と、エアバッグ(カーテンエアバッグ)20とを備えている。エアバッグ装置1は、車体に取り付けられたトリムとヘッドライニング(図示せず)の内部に配置される。エアバッグ20は、膨張展開できるように折り畳まれて、車両90内に取り付けられる。また、エアバッグ20は、細長く折り畳まれて、側壁91の上部に沿って配置される。エアバッグ20は、前後方向に沿ってルーフレール92に取り付けられて、リアピラーからフロントピラー93まで配置される。折り畳まれたエアバッグ20は、複数の固定部材10により、車体に固定される。固定部材10は、エアバッグ20が有する複数の固定布30を車体に固定する。
【0013】
インフレータ2は、シリンダタイプのガス発生装置である。インフレータ2は、エアバッグ20内に挿入されて、エアバッグ20内でガスを発生する。インフレータ2は、センターピラー94の上方に配置されて、ルーフレール92に取り付けられる。インフレータ2は、固定手段(図示せず)により、車体に固定される。車両緊急時や衝撃検知時に、インフレータ2は、複数のガスの噴出口2Aからガスを発生して、エアバッグ20にガスを供給する。このガスにより、エアバッグ20を、側壁91の上部から下方に向かってカーテン状に膨張展開させる。
【0014】
図2は、平面上に拡げたエアバッグ20を示す図である。
エアバッグ20は、図示のように、矩形状の袋体であり、例えば、樹脂を被覆した布からなる基布により製造される。ここでは、エアバッグ20は、乗員側の表基布(表パネル)21と、側壁91側の裏基布(裏パネル)22とを有する。また、エアバッグ20は、連結ベルト23と、ガス供給部24と、複数(図2では6つ)の固定布30とを有する。ガス供給部24内にはインフレータ2(図2では図示せず)が挿入される。エアバッグ20の前方端は、連結ベルト23によりフロントピラー93に連結される。連結ベルト23の先端は車体に固定される。
【0015】
表基布21と裏基布22は、同じ形状に形成され、重ね合わせて、外縁接合部25に沿って接合される。外縁接合部25は、エアバッグ20を区画して、基布21、22の間に膨張部26を形成する。膨張部26は、インフレータ2が発生するガスにより膨張する。外縁接合部25は、膨張部26の外縁形状を規定する。基布21、22は、外縁接合部25で、縫製及び接着により接合される。即ち、基布21、22は、外縁接合部25に沿って、1周又は複数周縫製されるとともに、縫製した部分が接着剤によりシールされる。これにより、基布21、22は、外縁接合部25で気密状に接合される。なお、基布21、22は、外縁接合部25で、縫製のみにより接合してもよい。
【0016】
エアバッグ20には、外縁接合部25により、前膨張部26A、後膨張部26B、及び、連結膨張部26Cが形成される。膨張部26A〜26Cは、それぞれ矩形状をなし、全体としてエアバッグ20の膨張部26を構成する。前膨張部26Aは、エアバッグ20内で前方に配置される。後膨張部26Bは、エアバッグ20内で後方に配置される。連結膨張部26Cは、前膨張部26Aと後膨張部26Bを連結する。3つの膨張部26A〜26Cの間には、非膨張部27が設けられている。
【0017】
エアバッグ20は、膨張部26内に、複数(図2では4つ)の内部接合部28を有する。基布21、22は、内部接合部28で、外縁接合部25と同様に接合される。内部接合部28の先端は、膨張部26内で環状に接合される。複数の内部接合部28は、前後方向に離して配置され、膨張部26内にガスの流通部と気室を形成する。
【0018】
ガス供給部24は、エアバッグ20内にガスを供給するための開口部である。ガス供給部24は、エアバッグ20の前後方向の中間に形成される。基布21、22は、ガス供給部24において、エアバッグ20の上方の縁部(上縁部という)から斜め上方に突出する。基布21、22の縁部は、先端の挿入口24Aを除いて、外縁接合部25から連続して接合される。これにより、ガス供給部24は、両端が開口した筒状に形成され、エアバッグ20の上縁部に一体に設けられる。ガス供給部24の内部は、一端の挿入口24Aでエアバッグ20の外部に繋がり、他端で膨張部26の内部と繋がる。インフレータ2は、挿入口24Aからガス供給部24に挿入されて、エアバッグ20内に配置される。ガス供給部24は、バンド(図示せず)で締め付けられて、インフレータ2に気密状に固定される。
【0019】
インフレータ2は、ガス供給部24内でガスを発生してエアバッグ20内にガスを供給する。ガスにより、膨張部26が膨張し、エアバッグ20が、折り畳み形状を解消しつつカーテン状に展開する。ガスは、前膨張部26Aへ供給されるとともに、連結膨張部26Cから後膨張部26Bへ供給される。これにより、エアバッグ20が、側壁91を覆うように膨張展開して窓部97、98を塞ぐ。エアバッグ20は、前席と後席の乗員を受け止めて、乗員の頭部を中心に保護する。
【0020】
エアバッグ20は、複数の固定布30により車体に取り付けられる。固定布30は、エアバッグ20の車体に固定される部分(固定部)である。固定布30は、エアバッグ20の上縁部に一体に形成されている。固定布30は、固定部材10(図1参照)により、車体の各部に固定される。以下、固定部材10と固定布30について説明する。
【0021】
図3は、固定部材10とエアバッグ20の固定布30を示す図である。図3Aは、固定部材10の斜視図である。図3Bは、エアバッグ20の固定布30を示す図である。図3Bに示す固定布30は、後述する第2の縫製パターン(縫製部は破線で示す)で縫製されている。
図4は、エアバッグ20に取り付けた固定部材10を示す図である。図4Aは、固定部材10の斜視図である。図4Bは、図4Aの矢印X1方向から見た固定部材10とエアバッグ20の側面図である。エアバッグ20は、図4に示す折り畳まれた形状で車体に取り付けられる。
【0022】
固定部材10は、折り畳まれたエアバッグ20を車体に取り付けるブラケットである。図3Aに示すように、固定部材10は、複数箇所で折り曲げられた板状部材からなる。固定部材10(図4参照)は、エアバッグ20の外面に沿って配置される。固定部材10は、エアバッグ20の周りに配置されて、エアバッグ20を保持する。また、固定部材10は、上方に突出する取付部11と、取付部11に形成された取付孔12とを有する。取付部11は、取付手段(図示せず)により車体に取り付けられる。その際、取付部11を、例えば、取付孔12に挿入したボルトにより、車体に取り付ける。
【0023】
固定布30は、図3Bに示すように、矩形状の突出部31と、基部32とを有する。突出部31は、エアバッグ20の縁部(図3Bでは上縁部)から突出する。基部32は、エアバッグ20の縁部内で、突出部31の周りに位置する部分である。固定布30は、固定部材10が挿入される挿入部33を有する。挿入部33は、直線状のスリットからなり、エアバッグ20の上縁部に沿って形成されている。挿入部33の長さは、取付部11の幅よりも長くなっている。
【0024】
固定部材10の取付部11は、図4に示すように、固定布30に設けられた挿入部33に挿入されて、固定布30を貫通する。その後、固定部材10をエアバッグ20の外面に配置する。固定布30の突出部31は、取付部11の移動により折り曲げられて、固定部材10に沿うように配置される。これにより、固定部材10が固定布30とエアバッグ20に取り付けられる。取付部11を車体に取り付けることで、固定布30が、挿入部33に挿入された固定部材10により車体に固定される。次に、固定布30について詳しく説明する。
【0025】
図5は、固定布30を分解して示す図である。
固定布30は、図示のように、本体布34と、補強布40とを有する。本体布34は、エアバッグ20と一体に形成された一体布である。本体布34は、エアバッグ20の基布21、22にそれぞれ形成された矩形状布を有する。固定布30は、重なり合う2枚の本体布34を有する。本体布34は、固定布30と同様に、突出部31Aと、基部32Aと、挿入部33Aとを有する。また、本体布34は、2つの凹部35Aと、2つの貫通孔36Aとを有する。凹部35Aと貫通孔36Aは、突出部31Aの両側の基部32Aに形成されている。
【0026】
補強布40は、エアバッグ20とは別体の布からなり、本体布34と同形状に形成される。また、補強布40は、本体布34と同様に、突出部31B、基部32B、挿入部33B、凹部35B、及び、貫通孔36Bを有する。補強布40は、本体布34に重ね合わされて、本体布34に所定箇所で結合される。その際、本体布34と補強布40は、凹部35A、35Bと貫通孔36A、36Bの位置を合わせることで、正確に重ね合わされる。固定布30は、結合により一体化した補強布40と本体布34からなる。
【0027】
本実施形態では、補強布40は、基布を折り畳んだ折り畳み布であり、複数重なり合った同形状の布からなる。補強布40は、所定回数(本実施形態では2回以上)折り畳まれて本体布34に結合される。これにより、補強布40は、本体布34を補強して、固定布30の強度を高くする。固定布30は、2枚の本体布34と複数枚(複数層)の補強布40を合わせた複数枚の布からなる。補強布40は、本体布34に取り付けられた後、固定部材10により、本体布34とともに車体に固定される。次に、補強布40と固定布30の形成手順を説明する。
【0028】
図6は、補強布40の形成手順を示す図である。図6Aは、補強布40の展開図である。図6B、図6Cは、折り畳み中の補強布40を示す図である。図6Dは、図6Cの矢視X2−X2線で見た補強布40の断面図である。
補強布40は、図6Aに示すように、帯状の基布からなる。補強布40は、所定の折り返し線L1〜L3で順に折り返されて、折り畳まれる。第1と第2の折り返し線L1、L2は、補強布40の長手方向(図6Aでは左右方向)の2箇所に、補強布40の長手方向に直交するように設定される。第3の折り返し線L3は、補強布40の幅方向(図6Aでは上下方向)の中心線である。補強布40は、複数の折り返し線L1〜L3により、複数(図6では6つ)の補強ピース(小布)41〜46に区画される。複数の補強ピース41〜46は、それぞれ本体布34と同形状をなし、補強布40内に並べて形成される。
【0029】
補強布40は、一体に繋がる複数の補強ピース41〜46からなる。また、補強布40は、第3の折り返し線L3に対して線対称に形成されている。第3の折り返し線L3の両側には、それぞれ3つの補強ピース41〜46が、第3の折り返し線L3に沿って形成されている。また、補強布40は、折り目の位置に形成されたスリット47を有する。スリット47は、補強ピース41〜46の間に設けられて、補強布40の折り畳みを容易にする。本実施形態では、補強布40は、第3の折り返し線L3の部分に形成された3つのスリット47を有する。スリット47は、第3の折り返し線L3に沿って直線状に形成されている。スリット47は、補強布40を分断しないように、補強布40内に形成される。
【0030】
補強布40は、図6Bに示すように、まず、第1と第2の折り返し線L1、L2で折り返す(図6Bの矢印Y1、Y2)。これにより、図6C、図6Dに示すように、補強布40を三つ折りして3分の1に折り畳む。次に、補強布40を、第3の折り返し線L3で折り返す(図6Cの矢印Y3)。補強布40は、3回の折り返しにより六つ折りされて、6分の1に折り畳まれる。その際、補強ピース41〜46の凹部35Bと貫通孔36Bの位置をそれぞれ合わせながら、補強布40を折り畳む。このように、補強布40は、所定の複数回(ここでは3回)折り畳まれて、本体布34に対応した形状に形成される。補強布40は、重ね合わされた6枚の布(補強ピース41〜46)からなる。続いて、折り畳んだ補強布40(図5参照)を、本体布34に重ね合わせて結合する。
【0031】
図7は、結合前の補強布40と本体布34を示す図である。図7Aは、重ね合わせた補強布40と本体布34を示す図である。図7Bは、図7Aの矢視X3−X3線で見た補強布40と本体布34の断面図である。図7Cは、図7Aの矢視X4−X4線で見た補強布40と本体布34の断面図である。
【0032】
図示のように、固定布30の結合前に、2枚の本体布34を補強布40の間に挟み込む。本体布34は、折り畳まれた補強布40の間に配置される。補強布40は、本体布34の両面に3枚ずつ配置される。その際、凹部35(35A、35B)と貫通孔36(36A、36B)の位置をそれぞれ合わせながら、本体布34と補強布40を重ね合わせる。挿入部33(33A、33B)は、同じ位置に配置されて、本体布34と補強布40を貫通する。続いて、本体布34と補強布40を縫製により結合する。なお、凹部35(35A、35B)は、固定布30の突出部31が固定部材10により折り曲げられる際に、突出部31を折り曲げ易くするために設けられている。従って、突出部31の折り曲げ易さが問題とならないときには、固定布30に凹部35を設けなくてもよい。この場合には、例えば、突出部31と基部32の間の角部を曲線状に形成して、突出部31と基部32を曲線部で接続する。
【0033】
図8は、本体布34と補強布40の第1の縫製パターンを示す図である。
本体布34と補強布40は、図示のように、重ね合わせて縫製部37A、38Aで縫い合わせる。これにより、本体布34と補強布40を結合して、エアバッグ20に固定布30を形成する。固定布30は、2種類の縫製部37A、38Aで結合される。縫製部37A、38Aは、補強布40を本体布34に取り付ける取付縫製部37Aと、固定布30を補強する補強縫製部38Aからなる。即ち、固定布30は、2種類の縫製部37A、38Aを有し、1つの取付縫製部37Aと1つの補強縫製部38Aで結合される。
【0034】
取付縫製部37Aは、固定布30の基部32を横断して縫製することで固定布30に形成される。直線状の取付縫製部37Aで、基部32の全体が縫製される。取付縫製部37Aは、本体布34と補強布40の基部32に形成されるとともに、補強布40の外まで形成される。補強布40は、取付縫製部37Aでの縫製により本体布34に取り付けられる。なお、固定布30内で、凹部35の底は、負荷が掛かり易い部分であり、取付縫製部37Aは、少なくとも2つの凹部35の底の下方部間に渡って形成する必要がある。即ち、取付縫製部37Aは、凹部35の底の下方部間に渡って形成されていればよく、凹部35の底の下方部よりも外側には形成しなくてもよい。ただし、取付縫製部37Aは、固定布30への負荷に確実に対処するため、上記のように形成するのが好ましい。
【0035】
補強縫製部38Aは、挿入部33の周り(周辺部分)に形成されて、固定布30の挿入部33を補強する。補強縫製部38Aは、挿入部33に沿って固定布30を縫製することで固定布30に形成される。補強縫製部38Aは、固定布30の挿入部33を囲む環状(図8では矩形状)に形成される。補強布40と本体布34は、補強縫製部38Aで矩形状に縫い合わされる。固定布30は、補強縫製部38Aにより、補強布40と本体布34が一体化して補強される。補強縫製部38Aは、挿入部33の周辺部分を補強し、挿入部33の周りの強度を高くする。
【0036】
第1の縫製パターンでは、2つの縫製部37A、38Aを、固定布30内で離して形成する。即ち、縫製部37A、38Aは、互いに独立しており、固定布30に別個に形成される。固定布30は、2回の縫製により結合する。これに対し、第2の縫製パターンでは、固定布30を1回の縫製により結合する。
【0037】
図9は、本体布34と補強布40の第2の縫製パターンを示す図である。図9Aは、結合後の固定布30を示す図である。図9B、図9Cは、固定布30の縫製過程を示す図である。
第2の縫製パターンの縫製部37B、38Bは、基本的に、第1の縫製パターンの縫製部37A、38Aと同じ縫製部である。ただし、第2の縫製パターンでは、図示のように、取付縫製部37Bと補強縫製部38Bを繋げて、一度の縫製により連続して形成する。そのため、縫製部37B、38Bの全体の形状を、一筆で書ける形状に設定する。取付縫製部37Bと補強縫製部38Bは、接する部分、又は、重複する部分を有する。
【0038】
第2の縫製パターンでは、縫製部37B、38Bの直線状部分が、基部32で同じ位置に設けられる。補強縫製部38Bは、取付縫製部37Bの中間部分に重なるように形成される。固定布30の結合時には、縫製部37B、38Bの全体を、一筆書きのように、連続して縫製する。その際、まず、取付縫製部37B(図9B参照)の一端から縫製を開始する。取付縫製部37Bを所定位置まで形成したときに、縫製の方向を変更して、縫製する部分を、取付縫製部37Bから補強縫製部38Bに変更する。また、固定布30を、挿入部33を囲むように矩形状に縫製して、補強縫製部38B(図9C参照)を形成する。続いて、取付縫製部37Bの他端まで縫製して、縫製を終了する。
【0039】
第2の縫製パターンでは、取付縫製部37Bを途中まで形成した後、補強縫製部38Bの全体を形成する。続いて、取付縫製部37Bの残りの部分を形成する。固定布30には、直線状の取付縫製部37Bと矩形状の補強縫製部38Bが1回の縫製により連続して形成される。これにより、本体布34と補強布40が縫い合わされ、補強布40が本体布34に取り付けられる。補強縫製部38Bは、挿入部33の周りに形成されて、挿入部33の周りで固定布30を補強する。また、固定布30が、結合した複数枚の布により形成されてエアバッグ20に設けられる。その後、固定部材10(図4参照)が固定布30に取り付けられる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態では、補強布40を所定回数折り畳んで本体布34に結合するため、補強布40の取り扱いと管理が容易である。補強布40は所定回数折り畳むだけでよいため、補強布40の枚数を確認する手間も削減できる。また、本体布34と補強布40により、複数の布からなる固定布30を、エアバッグ20に簡単に形成できる。固定布30の枚数を間違えるのも防止できる。固定布30を補強布40により確実に補強できるため、固定布30に必要な強度を確保できる。固定布30の形成にかかる手間を削減できるため、固定布30の形成に要する作業時間を短縮できる。
【0041】
スリット47を補強布40の折り目の位置に形成したため、補強布40を、容易かつ正確に折り畳むことができる。本体布34を折り畳まれた補強布40の間に配置することで、本体布34を両面から補強できる。本体布34と補強布40を重ね合わせて縫製部37、38で縫い合わせるため、補強布40を本体布34に簡単に結合できる。2つの縫製部37B、38Bを連続して形成するときには、縫製部37B、38Bの縫製を途切れさせずに一工程で行うことができる。その結果、縫製のための工程と時間を削減できるため、縫製の作業効率を向上できる。
【0042】
補強布40を取付縫製部37で本体布34に取り付けるとともに、補強縫製部38により固定布30を補強する。そのため、補強布40と本体布34を高い強度で結合できる。また、補強縫製部38の補強により、固定布30の強度をより高くできる。固定布30の複数の布は、外力を単独で受けずに、共同して外力を受ける。その結果、固定布30は、外力に対する強度が高くなり、破れ難くなる。挿入部33の周りに形成した補強縫製部38により挿入部33を補強するときには、挿入部33の周辺部分の強度を高くできる。これにより、固定布30が挿入部33の周りで破れ難くなるため、固定布30が固定部材10から外れるのを防止できる。補強縫製部38を、挿入部33を囲んで形成するときには、挿入部33の周りの全体を補強できる。
【0043】
取付縫製部37を本体布34と補強布40の基部32に形成するときには、補強布40を基部32において本体布34にしっかりと取り付けることができる。また、固定布30に加わる力は、本体布34と補強布40の縫製された基部32に作用する。そのため、固定布30の突出部31、又は、突出部31の付け根が外力で破損するのも防止できる。
【0044】
なお、補強布40は、上記した折り畳みの仕方に限定されず、他の仕方で折り畳むようにしてもよい。補強布40は、折り畳んだ後に複数枚の重なり合う布からなるように形成すればよい。補強布40は、本体布34の両面に同じ枚数ずつ配置してもよく、本体布34の各面で異なる枚数になるように配置してもよい。本体布34は、折り畳んだ補強布40の間に配置せず、補強布40の一方の面に配置してもよい。取付縫製部37は、直線状以外の形状(例えば、曲線状や波状)に形成してもよい。補強縫製部38は、矩形状以外の形状(例えば、円形状や多角形状)に形成してもよい。次に、他の実施形態の補強布について説明する。
【0045】
図10、図11は、他の実施形態の補強布50、51を示す図である。図10A、図11Aは、折り畳み前の補強布50、51を示す展開図である。図10B、図11Bは、折り畳み後の補強布50、51を示す図である。
図10に示す補強布50では、挿入部33Bの形状のみが上記した補強布40と相違する。補強布50の挿入部33Bは、所定幅のスリットからなる。補強布50は、折り返し線L1〜L3で折り畳んで、本体布34に結合する。本体布34の挿入部33Aは、補強布50の挿入部33Bと同じ形状に形成される。
【0046】
図11に示す補強布51は、スリット状の挿入部33Bに替えて、円形孔からなる挿入部39を有する。補強布51は、挿入部39を除いて、上記した補強布40と同様に構成されている。補強布51の挿入部39は、ボルト等の固定部材(図示せず)が挿入される固定孔である。補強布51は、折り返し線L1〜L3で折り畳んで、本体布34に結合する。本体布34には、挿入部39と同形状の挿入部(固定孔)が、挿入部33Aに替えて形成される。固定布30は、挿入部39に挿入された固定部材により車体に固定される。
【0047】
図12、図13は、補強布51の2つの縫製パターンを示す図である。
図12に示す縫製パターンでは、上記した補強布40(図9参照)と同様に、取付縫製部52Aと補強縫製部53Aを、一続きに繋げて、一度の縫製により連続して形成する。補強布51と本体布34は、取付縫製部52Aと補強縫製部53Aで連続して縫い合わされる。その際、縫製(図12A参照)を取付縫製部52Aの一端から開始する。取付縫製部52Aを所定位置まで形成した後、挿入部39の全体を囲んで縫製する。これにより、環状の補強縫製部53A(図12B参照)を、挿入部39を囲むように挿入部39の周りに形成する。続いて、取付縫製部52Aの他端まで縫製して、縫製を終了する。取付縫製部52Aは、基部32Bを横断せずに、補強布51内に形成される。
【0048】
図13に示す縫製パターンでも、取付縫製部52Bと補強縫製部53Bを連続して形成する。ただし、補強縫製部53Bは、挿入部39の一部(ここでは下半分)を囲むように挿入部39の周りに形成する。補強縫製部53Bは、挿入部39の一部に沿って形成されて、挿入部39の一部を囲む。補強縫製部53Bは、挿入部39の周りの一部を補強する。この補強縫製部53Bのように、固定布30の補強縫製部は、固定布30の補強すべき部分に応じて、様々な形状と位置に形成される。
【0049】
図14は、図11に示す補強布51と一部が異なる補強布54を示す図である。図14Aは、折り畳み前の補強布54を示す展開図である。図14Bは、折り畳み後の補強布54を示す図である。
図14に示す補強布54は、凹部35Bと貫通孔36Bを有さない。補強布54は、凹部35Bと貫通孔36B以外は、上記した補強布51と同様に構成されている。補強布54は、縁を揃えて折り畳まれる。補強布54と本体布34は、縁を揃えて重ね合わされる。
【0050】
次に、保護布を設けたエアバッグ20について説明する。保護布は、固定部材10(図3、図4参照)とエアバッグ20の間に配置されて、固定部材10からエアバッグ20を保護する。エアバッグ20には、上記した補強布40(図5〜図7参照)に加えて、保護布が取り付けられる。
【0051】
図15は、保護布60を示す図である。
保護布60は、図示のように、エアバッグ20を保護する保護部61と、エアバッグ20へ結合される結合部62からなる。保護部61は、矩形状をなし、結合部62と一体に形成されている。結合部62は、補強布40の補強ピース41〜46及び折り畳んだ補強布40と同じ形状に形成されている。従って、結合部62は、挿入部33Cと、凹部35Cと、貫通孔36Cとを有する。結合部62は、補強布40の本体布34への結合と同時に、エアバッグ20に結合される。これにより、保護布60がエアバッグ20に取り付けられる。
【0052】
図16は、エアバッグ20へ取り付ける前後の保護布60を示す図である。図16Bは、図16Aの矢視X5−X5線で見た固定布30と保護布60の断面図である。
図16A、図16Bに示すように、補強布40を折り畳んだ後、本体布34を補強布40の間に配置する。保護布60は、補強布40を本体布34に結合する位置に配置する。その際、保護布60は、エアバッグ20の表基布21側で、補強布40と本体布34の間に配置する。また、結合部62を補強布40に合わせつつ、保護布60を補強布40と本体布34の間に挟み込む。
【0053】
続いて、図16Cに示すように、本体布34と補強布40を縫製して結合する。本体布34と補強布40には、取付縫製部37Bと補強縫製部38Bを連続させて形成する。同時に、本体布34、補強布40、及び、保護布60を縫い合わせて、結合部62をエアバッグ20に結合する。このように、保護布60は、補強布40を本体布34に結合するときに、補強布40とともにエアバッグ10に取り付けられる。その後、固定部材10(図3、図4参照)が、上記と同様に、固定布30とエアバッグ20に取り付けられる。
【0054】
図17は、エアバッグ20に取り付けた固定部材10を示す図である。図17Aは、固定部材10の斜視図である。図17Bは、図17Aの矢印X6方向から見た固定部材10とエアバッグ20の側面図である。
保護布60は、図示のように、折り畳まれたエアバッグ20の外面に配置される。固定部材10をエアバッグ20に取り付けたときに、保護布60は、固定部材10とエアバッグ20の間に配置される。また、保護布60は、エアバッグ20の固定部材10と対向する部分の全体に配置される。
【0055】
エアバッグ20に保護布60を設けることで、固定部材10からエアバッグ20を保護できる。保護布60により、固定部材10のエッジがエアバッグ20に接触するのも防止できる。従って、固定部材10によりエアバッグ20が損傷するのを防止できる。補強布40の結合と同時に保護布60をエアバッグ20に取り付けるため、保護布60を取り付けるための工程と作業時間を削減できる。なお、保護布60は、折り畳んだ補強布40の間、又は、補強布40の一方の面に配置してもよい。この場合でも、保護布60をエアバッグ20に簡単に取り付けられる。2枚以上の保護布60を、エアバッグ20に設けるようにしてもよい。
【0056】
図18は、他の実施形態の補強布55と保護布65を示す展開図である。
保護布65は、図示のように、補強布55と一体に形成されている。補強布55は、保護布65を除いて、上記した補強布40と同様に構成されている。保護布65は、1つの補強ピース46に形成された矩形状の布からなる。保護布65は、補強布55とともにエアバッグ20に取り付けられる。
【0057】
図19は、エアバッグ20へ取り付ける前後の保護布65を示す図である。図19Bは、図19Aの矢視X7−X7線で見た固定布30と保護布65の断面図である。
図19A、図19Bに示すように、補強布55を折り畳んだ後、本体布34を補強布55の間に配置する。補強布55は、保護布65が最も外側に位置するように折り畳まれる。保護布65は、エアバッグ20の表基布21側に配置される。続いて、図19Cに示すように、本体布34と補強布55を縫い合わせて、補強布55を本体布34に結合する。保護布65は、補強布55と本体布34との結合によりエアバッグ20に取り付けられる。
【0058】
保護布65により、固定部材10からエアバッグ20を保護できる。また、保護布65を補強布55の結合と同時にエアバッグ20に取り付けるため、保護布65を取り付けるための工程と作業時間を削減できる。なお、補強布55の折り畳み方を変えて、保護布65を上記と異なる位置に配置してもよい。保護布65は、補強ピース46以外の補強ピース41〜45に設けてもよい。保護布65は、補強布55の複数箇所に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1・・・エアバッグ装置、2・・・インフレータ、2A・・・噴出口、10・・・固定部材、11・・・取付部、12・・・取付孔、20・・・エアバッグ、21・・・表基布、22・・・裏基布、23・・・連結ベルト、24・・・ガス供給部、25・・・外縁接合部、26・・・膨張部、27・・・非膨張部、28・・・内部接合部、30・・・固定布、31・・・突出部、32・・・基部、33・・・挿入部、34・・・本体布、35・・・凹部、36・・・貫通孔、37・・・取付縫製部、38・・・補強縫製部、39・・・挿入部、40・・・補強布、41〜46・・・補強ピース、47・・・スリット、50、51・・・補強布、52・・・取付縫製部、53・・・補強縫製部、54、55・・・補強布、60・・・保護布、61・・・保護部、62・・・結合部、65・・・保護布、90・・・車両、91・・・側壁、92・・・ルーフレール、93・・・フロントピラー、94・・・センターピラー、95・・・前部ドア、96・・・後部ドア、97、98・・・窓部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内でエアバッグを膨張展開させて、エアバッグにより乗員を保護するエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の緊急時や衝突時に乗員を保護するため、エアバッグ装置が使用されている。エアバッグ装置は、車体に固定されたエアバッグを有する。エアバッグは、膨張展開して乗員を受け止める。その際、エアバッグは、展開に伴う引っ張りや乗員を受け止めた衝撃により、大きな力を受けることがある。そのため、エアバッグの車体に固定される部分には、高い強度が要求される。これに対し、従来、車体に固定される固定布を2枚以上の布から形成して、固定布の強度を確保したエアバッグが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
ところが、従来のエアバッグでは、複数枚の布により固定布を形成するときに、枚数を確認しつつ複数枚の布をエアバッグに取り付ける必要がある。そのため、布の取り扱いと管理に手間がかかり、固定布の形成に要する作業時間が長くなる。また、布の枚数を間違えないよう、布の取り扱いと枚数の確認を慎重に行う必要もある。従って、固定布をエアバッグに形成するための手間と時間が増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−214969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来の問題に鑑みなされたもので、その目的は、複数の布からなる固定布をエアバッグに簡単に形成できるようにして、固定布の形成に要する作業時間を短縮することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車体に固定される固定布を有するエアバッグを備えたエアバッグ装置であって、固定布が、エアバッグと一体に形成された本体布と、所定回数折り畳まれて本体布に重ね合わせて結合された補強布とを有するエアバッグ装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数の布からなる固定布をエアバッグに簡単に形成できる。また、固定布の形成に要する作業時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態のエアバッグ装置を示す図である。
【図2】平面上に拡げたエアバッグを示す図である。
【図3】固定部材とエアバッグの固定布を示す図である。
【図4】エアバッグに取り付けた固定部材を示す図である。
【図5】エアバッグの固定布を分解して示す図である。
【図6】補強布の形成手順を示す図である。
【図7】結合前の補強布と本体布を示す図である。
【図8】本体布と補強布の第1の縫製パターンを示す図である。
【図9】本体布と補強布の第2の縫製パターンを示す図である。
【図10】他の実施形態の補強布を示す図である。
【図11】他の実施形態の補強布を示す図である。
【図12】図11に示す補強布の縫製パターンを示す図である。
【図13】図11に示す補強布の縫製パターンを示す図である。
【図14】図11に示す補強布と一部が異なる補強布を示す図である。
【図15】保護布を示す図である。
【図16】エアバッグへ取り付ける前後の保護布を示す図である。
【図17】エアバッグに取り付けた固定部材を示す図である。
【図18】他の実施形態の補強布と保護布を示す展開図である。
【図19】エアバッグへ取り付ける前後の保護布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のエアバッグ装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態では、車両内でエアバッグをカーテン状に展開させるカーテンエアバッグ装置(以下、単にエアバッグ装置という)を例に採り説明する。エアバッグ装置は、車両内に搭載されて、膨張展開するエアバッグにより乗員を受け止めて保護する。
【0010】
図1は、本実施形態のエアバッグ装置を示す図である。図1では、車両90に搭載したエアバッグ装置1を車室内から見て示している。また、車両90の側壁91とエアバッグ装置1を、車両90の後方側を省略して、かつ、車両90の幅方向から見て模式的に示している。エアバッグ装置1は、車両90の内面を透視して示している。
なお、本発明では、車両90における前方と後方を単に前方と後方といい、車両90における前後方向を単に前後方向という。また、車両90における上方と下方を単に上方と下方といい、車両90における上下方向を単に上下方向という。
【0011】
車両90は、図示のように、車室内の側壁91に、上方のルーフレール92、前方のフロントピラー(Aピラー)93、センターピラー(Bピラー)94、及び、後方のリアピラー(Cピラー)(図示せず)を有する。また、車両90は、前部ドア95と、後部ドア96と、ドア95、96に設けられた窓部97、98とを備えている。
【0012】
エアバッグ装置1は、筒状のインフレータ2と、固定部材10と、エアバッグ(カーテンエアバッグ)20とを備えている。エアバッグ装置1は、車体に取り付けられたトリムとヘッドライニング(図示せず)の内部に配置される。エアバッグ20は、膨張展開できるように折り畳まれて、車両90内に取り付けられる。また、エアバッグ20は、細長く折り畳まれて、側壁91の上部に沿って配置される。エアバッグ20は、前後方向に沿ってルーフレール92に取り付けられて、リアピラーからフロントピラー93まで配置される。折り畳まれたエアバッグ20は、複数の固定部材10により、車体に固定される。固定部材10は、エアバッグ20が有する複数の固定布30を車体に固定する。
【0013】
インフレータ2は、シリンダタイプのガス発生装置である。インフレータ2は、エアバッグ20内に挿入されて、エアバッグ20内でガスを発生する。インフレータ2は、センターピラー94の上方に配置されて、ルーフレール92に取り付けられる。インフレータ2は、固定手段(図示せず)により、車体に固定される。車両緊急時や衝撃検知時に、インフレータ2は、複数のガスの噴出口2Aからガスを発生して、エアバッグ20にガスを供給する。このガスにより、エアバッグ20を、側壁91の上部から下方に向かってカーテン状に膨張展開させる。
【0014】
図2は、平面上に拡げたエアバッグ20を示す図である。
エアバッグ20は、図示のように、矩形状の袋体であり、例えば、樹脂を被覆した布からなる基布により製造される。ここでは、エアバッグ20は、乗員側の表基布(表パネル)21と、側壁91側の裏基布(裏パネル)22とを有する。また、エアバッグ20は、連結ベルト23と、ガス供給部24と、複数(図2では6つ)の固定布30とを有する。ガス供給部24内にはインフレータ2(図2では図示せず)が挿入される。エアバッグ20の前方端は、連結ベルト23によりフロントピラー93に連結される。連結ベルト23の先端は車体に固定される。
【0015】
表基布21と裏基布22は、同じ形状に形成され、重ね合わせて、外縁接合部25に沿って接合される。外縁接合部25は、エアバッグ20を区画して、基布21、22の間に膨張部26を形成する。膨張部26は、インフレータ2が発生するガスにより膨張する。外縁接合部25は、膨張部26の外縁形状を規定する。基布21、22は、外縁接合部25で、縫製及び接着により接合される。即ち、基布21、22は、外縁接合部25に沿って、1周又は複数周縫製されるとともに、縫製した部分が接着剤によりシールされる。これにより、基布21、22は、外縁接合部25で気密状に接合される。なお、基布21、22は、外縁接合部25で、縫製のみにより接合してもよい。
【0016】
エアバッグ20には、外縁接合部25により、前膨張部26A、後膨張部26B、及び、連結膨張部26Cが形成される。膨張部26A〜26Cは、それぞれ矩形状をなし、全体としてエアバッグ20の膨張部26を構成する。前膨張部26Aは、エアバッグ20内で前方に配置される。後膨張部26Bは、エアバッグ20内で後方に配置される。連結膨張部26Cは、前膨張部26Aと後膨張部26Bを連結する。3つの膨張部26A〜26Cの間には、非膨張部27が設けられている。
【0017】
エアバッグ20は、膨張部26内に、複数(図2では4つ)の内部接合部28を有する。基布21、22は、内部接合部28で、外縁接合部25と同様に接合される。内部接合部28の先端は、膨張部26内で環状に接合される。複数の内部接合部28は、前後方向に離して配置され、膨張部26内にガスの流通部と気室を形成する。
【0018】
ガス供給部24は、エアバッグ20内にガスを供給するための開口部である。ガス供給部24は、エアバッグ20の前後方向の中間に形成される。基布21、22は、ガス供給部24において、エアバッグ20の上方の縁部(上縁部という)から斜め上方に突出する。基布21、22の縁部は、先端の挿入口24Aを除いて、外縁接合部25から連続して接合される。これにより、ガス供給部24は、両端が開口した筒状に形成され、エアバッグ20の上縁部に一体に設けられる。ガス供給部24の内部は、一端の挿入口24Aでエアバッグ20の外部に繋がり、他端で膨張部26の内部と繋がる。インフレータ2は、挿入口24Aからガス供給部24に挿入されて、エアバッグ20内に配置される。ガス供給部24は、バンド(図示せず)で締め付けられて、インフレータ2に気密状に固定される。
【0019】
インフレータ2は、ガス供給部24内でガスを発生してエアバッグ20内にガスを供給する。ガスにより、膨張部26が膨張し、エアバッグ20が、折り畳み形状を解消しつつカーテン状に展開する。ガスは、前膨張部26Aへ供給されるとともに、連結膨張部26Cから後膨張部26Bへ供給される。これにより、エアバッグ20が、側壁91を覆うように膨張展開して窓部97、98を塞ぐ。エアバッグ20は、前席と後席の乗員を受け止めて、乗員の頭部を中心に保護する。
【0020】
エアバッグ20は、複数の固定布30により車体に取り付けられる。固定布30は、エアバッグ20の車体に固定される部分(固定部)である。固定布30は、エアバッグ20の上縁部に一体に形成されている。固定布30は、固定部材10(図1参照)により、車体の各部に固定される。以下、固定部材10と固定布30について説明する。
【0021】
図3は、固定部材10とエアバッグ20の固定布30を示す図である。図3Aは、固定部材10の斜視図である。図3Bは、エアバッグ20の固定布30を示す図である。図3Bに示す固定布30は、後述する第2の縫製パターン(縫製部は破線で示す)で縫製されている。
図4は、エアバッグ20に取り付けた固定部材10を示す図である。図4Aは、固定部材10の斜視図である。図4Bは、図4Aの矢印X1方向から見た固定部材10とエアバッグ20の側面図である。エアバッグ20は、図4に示す折り畳まれた形状で車体に取り付けられる。
【0022】
固定部材10は、折り畳まれたエアバッグ20を車体に取り付けるブラケットである。図3Aに示すように、固定部材10は、複数箇所で折り曲げられた板状部材からなる。固定部材10(図4参照)は、エアバッグ20の外面に沿って配置される。固定部材10は、エアバッグ20の周りに配置されて、エアバッグ20を保持する。また、固定部材10は、上方に突出する取付部11と、取付部11に形成された取付孔12とを有する。取付部11は、取付手段(図示せず)により車体に取り付けられる。その際、取付部11を、例えば、取付孔12に挿入したボルトにより、車体に取り付ける。
【0023】
固定布30は、図3Bに示すように、矩形状の突出部31と、基部32とを有する。突出部31は、エアバッグ20の縁部(図3Bでは上縁部)から突出する。基部32は、エアバッグ20の縁部内で、突出部31の周りに位置する部分である。固定布30は、固定部材10が挿入される挿入部33を有する。挿入部33は、直線状のスリットからなり、エアバッグ20の上縁部に沿って形成されている。挿入部33の長さは、取付部11の幅よりも長くなっている。
【0024】
固定部材10の取付部11は、図4に示すように、固定布30に設けられた挿入部33に挿入されて、固定布30を貫通する。その後、固定部材10をエアバッグ20の外面に配置する。固定布30の突出部31は、取付部11の移動により折り曲げられて、固定部材10に沿うように配置される。これにより、固定部材10が固定布30とエアバッグ20に取り付けられる。取付部11を車体に取り付けることで、固定布30が、挿入部33に挿入された固定部材10により車体に固定される。次に、固定布30について詳しく説明する。
【0025】
図5は、固定布30を分解して示す図である。
固定布30は、図示のように、本体布34と、補強布40とを有する。本体布34は、エアバッグ20と一体に形成された一体布である。本体布34は、エアバッグ20の基布21、22にそれぞれ形成された矩形状布を有する。固定布30は、重なり合う2枚の本体布34を有する。本体布34は、固定布30と同様に、突出部31Aと、基部32Aと、挿入部33Aとを有する。また、本体布34は、2つの凹部35Aと、2つの貫通孔36Aとを有する。凹部35Aと貫通孔36Aは、突出部31Aの両側の基部32Aに形成されている。
【0026】
補強布40は、エアバッグ20とは別体の布からなり、本体布34と同形状に形成される。また、補強布40は、本体布34と同様に、突出部31B、基部32B、挿入部33B、凹部35B、及び、貫通孔36Bを有する。補強布40は、本体布34に重ね合わされて、本体布34に所定箇所で結合される。その際、本体布34と補強布40は、凹部35A、35Bと貫通孔36A、36Bの位置を合わせることで、正確に重ね合わされる。固定布30は、結合により一体化した補強布40と本体布34からなる。
【0027】
本実施形態では、補強布40は、基布を折り畳んだ折り畳み布であり、複数重なり合った同形状の布からなる。補強布40は、所定回数(本実施形態では2回以上)折り畳まれて本体布34に結合される。これにより、補強布40は、本体布34を補強して、固定布30の強度を高くする。固定布30は、2枚の本体布34と複数枚(複数層)の補強布40を合わせた複数枚の布からなる。補強布40は、本体布34に取り付けられた後、固定部材10により、本体布34とともに車体に固定される。次に、補強布40と固定布30の形成手順を説明する。
【0028】
図6は、補強布40の形成手順を示す図である。図6Aは、補強布40の展開図である。図6B、図6Cは、折り畳み中の補強布40を示す図である。図6Dは、図6Cの矢視X2−X2線で見た補強布40の断面図である。
補強布40は、図6Aに示すように、帯状の基布からなる。補強布40は、所定の折り返し線L1〜L3で順に折り返されて、折り畳まれる。第1と第2の折り返し線L1、L2は、補強布40の長手方向(図6Aでは左右方向)の2箇所に、補強布40の長手方向に直交するように設定される。第3の折り返し線L3は、補強布40の幅方向(図6Aでは上下方向)の中心線である。補強布40は、複数の折り返し線L1〜L3により、複数(図6では6つ)の補強ピース(小布)41〜46に区画される。複数の補強ピース41〜46は、それぞれ本体布34と同形状をなし、補強布40内に並べて形成される。
【0029】
補強布40は、一体に繋がる複数の補強ピース41〜46からなる。また、補強布40は、第3の折り返し線L3に対して線対称に形成されている。第3の折り返し線L3の両側には、それぞれ3つの補強ピース41〜46が、第3の折り返し線L3に沿って形成されている。また、補強布40は、折り目の位置に形成されたスリット47を有する。スリット47は、補強ピース41〜46の間に設けられて、補強布40の折り畳みを容易にする。本実施形態では、補強布40は、第3の折り返し線L3の部分に形成された3つのスリット47を有する。スリット47は、第3の折り返し線L3に沿って直線状に形成されている。スリット47は、補強布40を分断しないように、補強布40内に形成される。
【0030】
補強布40は、図6Bに示すように、まず、第1と第2の折り返し線L1、L2で折り返す(図6Bの矢印Y1、Y2)。これにより、図6C、図6Dに示すように、補強布40を三つ折りして3分の1に折り畳む。次に、補強布40を、第3の折り返し線L3で折り返す(図6Cの矢印Y3)。補強布40は、3回の折り返しにより六つ折りされて、6分の1に折り畳まれる。その際、補強ピース41〜46の凹部35Bと貫通孔36Bの位置をそれぞれ合わせながら、補強布40を折り畳む。このように、補強布40は、所定の複数回(ここでは3回)折り畳まれて、本体布34に対応した形状に形成される。補強布40は、重ね合わされた6枚の布(補強ピース41〜46)からなる。続いて、折り畳んだ補強布40(図5参照)を、本体布34に重ね合わせて結合する。
【0031】
図7は、結合前の補強布40と本体布34を示す図である。図7Aは、重ね合わせた補強布40と本体布34を示す図である。図7Bは、図7Aの矢視X3−X3線で見た補強布40と本体布34の断面図である。図7Cは、図7Aの矢視X4−X4線で見た補強布40と本体布34の断面図である。
【0032】
図示のように、固定布30の結合前に、2枚の本体布34を補強布40の間に挟み込む。本体布34は、折り畳まれた補強布40の間に配置される。補強布40は、本体布34の両面に3枚ずつ配置される。その際、凹部35(35A、35B)と貫通孔36(36A、36B)の位置をそれぞれ合わせながら、本体布34と補強布40を重ね合わせる。挿入部33(33A、33B)は、同じ位置に配置されて、本体布34と補強布40を貫通する。続いて、本体布34と補強布40を縫製により結合する。なお、凹部35(35A、35B)は、固定布30の突出部31が固定部材10により折り曲げられる際に、突出部31を折り曲げ易くするために設けられている。従って、突出部31の折り曲げ易さが問題とならないときには、固定布30に凹部35を設けなくてもよい。この場合には、例えば、突出部31と基部32の間の角部を曲線状に形成して、突出部31と基部32を曲線部で接続する。
【0033】
図8は、本体布34と補強布40の第1の縫製パターンを示す図である。
本体布34と補強布40は、図示のように、重ね合わせて縫製部37A、38Aで縫い合わせる。これにより、本体布34と補強布40を結合して、エアバッグ20に固定布30を形成する。固定布30は、2種類の縫製部37A、38Aで結合される。縫製部37A、38Aは、補強布40を本体布34に取り付ける取付縫製部37Aと、固定布30を補強する補強縫製部38Aからなる。即ち、固定布30は、2種類の縫製部37A、38Aを有し、1つの取付縫製部37Aと1つの補強縫製部38Aで結合される。
【0034】
取付縫製部37Aは、固定布30の基部32を横断して縫製することで固定布30に形成される。直線状の取付縫製部37Aで、基部32の全体が縫製される。取付縫製部37Aは、本体布34と補強布40の基部32に形成されるとともに、補強布40の外まで形成される。補強布40は、取付縫製部37Aでの縫製により本体布34に取り付けられる。なお、固定布30内で、凹部35の底は、負荷が掛かり易い部分であり、取付縫製部37Aは、少なくとも2つの凹部35の底の下方部間に渡って形成する必要がある。即ち、取付縫製部37Aは、凹部35の底の下方部間に渡って形成されていればよく、凹部35の底の下方部よりも外側には形成しなくてもよい。ただし、取付縫製部37Aは、固定布30への負荷に確実に対処するため、上記のように形成するのが好ましい。
【0035】
補強縫製部38Aは、挿入部33の周り(周辺部分)に形成されて、固定布30の挿入部33を補強する。補強縫製部38Aは、挿入部33に沿って固定布30を縫製することで固定布30に形成される。補強縫製部38Aは、固定布30の挿入部33を囲む環状(図8では矩形状)に形成される。補強布40と本体布34は、補強縫製部38Aで矩形状に縫い合わされる。固定布30は、補強縫製部38Aにより、補強布40と本体布34が一体化して補強される。補強縫製部38Aは、挿入部33の周辺部分を補強し、挿入部33の周りの強度を高くする。
【0036】
第1の縫製パターンでは、2つの縫製部37A、38Aを、固定布30内で離して形成する。即ち、縫製部37A、38Aは、互いに独立しており、固定布30に別個に形成される。固定布30は、2回の縫製により結合する。これに対し、第2の縫製パターンでは、固定布30を1回の縫製により結合する。
【0037】
図9は、本体布34と補強布40の第2の縫製パターンを示す図である。図9Aは、結合後の固定布30を示す図である。図9B、図9Cは、固定布30の縫製過程を示す図である。
第2の縫製パターンの縫製部37B、38Bは、基本的に、第1の縫製パターンの縫製部37A、38Aと同じ縫製部である。ただし、第2の縫製パターンでは、図示のように、取付縫製部37Bと補強縫製部38Bを繋げて、一度の縫製により連続して形成する。そのため、縫製部37B、38Bの全体の形状を、一筆で書ける形状に設定する。取付縫製部37Bと補強縫製部38Bは、接する部分、又は、重複する部分を有する。
【0038】
第2の縫製パターンでは、縫製部37B、38Bの直線状部分が、基部32で同じ位置に設けられる。補強縫製部38Bは、取付縫製部37Bの中間部分に重なるように形成される。固定布30の結合時には、縫製部37B、38Bの全体を、一筆書きのように、連続して縫製する。その際、まず、取付縫製部37B(図9B参照)の一端から縫製を開始する。取付縫製部37Bを所定位置まで形成したときに、縫製の方向を変更して、縫製する部分を、取付縫製部37Bから補強縫製部38Bに変更する。また、固定布30を、挿入部33を囲むように矩形状に縫製して、補強縫製部38B(図9C参照)を形成する。続いて、取付縫製部37Bの他端まで縫製して、縫製を終了する。
【0039】
第2の縫製パターンでは、取付縫製部37Bを途中まで形成した後、補強縫製部38Bの全体を形成する。続いて、取付縫製部37Bの残りの部分を形成する。固定布30には、直線状の取付縫製部37Bと矩形状の補強縫製部38Bが1回の縫製により連続して形成される。これにより、本体布34と補強布40が縫い合わされ、補強布40が本体布34に取り付けられる。補強縫製部38Bは、挿入部33の周りに形成されて、挿入部33の周りで固定布30を補強する。また、固定布30が、結合した複数枚の布により形成されてエアバッグ20に設けられる。その後、固定部材10(図4参照)が固定布30に取り付けられる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態では、補強布40を所定回数折り畳んで本体布34に結合するため、補強布40の取り扱いと管理が容易である。補強布40は所定回数折り畳むだけでよいため、補強布40の枚数を確認する手間も削減できる。また、本体布34と補強布40により、複数の布からなる固定布30を、エアバッグ20に簡単に形成できる。固定布30の枚数を間違えるのも防止できる。固定布30を補強布40により確実に補強できるため、固定布30に必要な強度を確保できる。固定布30の形成にかかる手間を削減できるため、固定布30の形成に要する作業時間を短縮できる。
【0041】
スリット47を補強布40の折り目の位置に形成したため、補強布40を、容易かつ正確に折り畳むことができる。本体布34を折り畳まれた補強布40の間に配置することで、本体布34を両面から補強できる。本体布34と補強布40を重ね合わせて縫製部37、38で縫い合わせるため、補強布40を本体布34に簡単に結合できる。2つの縫製部37B、38Bを連続して形成するときには、縫製部37B、38Bの縫製を途切れさせずに一工程で行うことができる。その結果、縫製のための工程と時間を削減できるため、縫製の作業効率を向上できる。
【0042】
補強布40を取付縫製部37で本体布34に取り付けるとともに、補強縫製部38により固定布30を補強する。そのため、補強布40と本体布34を高い強度で結合できる。また、補強縫製部38の補強により、固定布30の強度をより高くできる。固定布30の複数の布は、外力を単独で受けずに、共同して外力を受ける。その結果、固定布30は、外力に対する強度が高くなり、破れ難くなる。挿入部33の周りに形成した補強縫製部38により挿入部33を補強するときには、挿入部33の周辺部分の強度を高くできる。これにより、固定布30が挿入部33の周りで破れ難くなるため、固定布30が固定部材10から外れるのを防止できる。補強縫製部38を、挿入部33を囲んで形成するときには、挿入部33の周りの全体を補強できる。
【0043】
取付縫製部37を本体布34と補強布40の基部32に形成するときには、補強布40を基部32において本体布34にしっかりと取り付けることができる。また、固定布30に加わる力は、本体布34と補強布40の縫製された基部32に作用する。そのため、固定布30の突出部31、又は、突出部31の付け根が外力で破損するのも防止できる。
【0044】
なお、補強布40は、上記した折り畳みの仕方に限定されず、他の仕方で折り畳むようにしてもよい。補強布40は、折り畳んだ後に複数枚の重なり合う布からなるように形成すればよい。補強布40は、本体布34の両面に同じ枚数ずつ配置してもよく、本体布34の各面で異なる枚数になるように配置してもよい。本体布34は、折り畳んだ補強布40の間に配置せず、補強布40の一方の面に配置してもよい。取付縫製部37は、直線状以外の形状(例えば、曲線状や波状)に形成してもよい。補強縫製部38は、矩形状以外の形状(例えば、円形状や多角形状)に形成してもよい。次に、他の実施形態の補強布について説明する。
【0045】
図10、図11は、他の実施形態の補強布50、51を示す図である。図10A、図11Aは、折り畳み前の補強布50、51を示す展開図である。図10B、図11Bは、折り畳み後の補強布50、51を示す図である。
図10に示す補強布50では、挿入部33Bの形状のみが上記した補強布40と相違する。補強布50の挿入部33Bは、所定幅のスリットからなる。補強布50は、折り返し線L1〜L3で折り畳んで、本体布34に結合する。本体布34の挿入部33Aは、補強布50の挿入部33Bと同じ形状に形成される。
【0046】
図11に示す補強布51は、スリット状の挿入部33Bに替えて、円形孔からなる挿入部39を有する。補強布51は、挿入部39を除いて、上記した補強布40と同様に構成されている。補強布51の挿入部39は、ボルト等の固定部材(図示せず)が挿入される固定孔である。補強布51は、折り返し線L1〜L3で折り畳んで、本体布34に結合する。本体布34には、挿入部39と同形状の挿入部(固定孔)が、挿入部33Aに替えて形成される。固定布30は、挿入部39に挿入された固定部材により車体に固定される。
【0047】
図12、図13は、補強布51の2つの縫製パターンを示す図である。
図12に示す縫製パターンでは、上記した補強布40(図9参照)と同様に、取付縫製部52Aと補強縫製部53Aを、一続きに繋げて、一度の縫製により連続して形成する。補強布51と本体布34は、取付縫製部52Aと補強縫製部53Aで連続して縫い合わされる。その際、縫製(図12A参照)を取付縫製部52Aの一端から開始する。取付縫製部52Aを所定位置まで形成した後、挿入部39の全体を囲んで縫製する。これにより、環状の補強縫製部53A(図12B参照)を、挿入部39を囲むように挿入部39の周りに形成する。続いて、取付縫製部52Aの他端まで縫製して、縫製を終了する。取付縫製部52Aは、基部32Bを横断せずに、補強布51内に形成される。
【0048】
図13に示す縫製パターンでも、取付縫製部52Bと補強縫製部53Bを連続して形成する。ただし、補強縫製部53Bは、挿入部39の一部(ここでは下半分)を囲むように挿入部39の周りに形成する。補強縫製部53Bは、挿入部39の一部に沿って形成されて、挿入部39の一部を囲む。補強縫製部53Bは、挿入部39の周りの一部を補強する。この補強縫製部53Bのように、固定布30の補強縫製部は、固定布30の補強すべき部分に応じて、様々な形状と位置に形成される。
【0049】
図14は、図11に示す補強布51と一部が異なる補強布54を示す図である。図14Aは、折り畳み前の補強布54を示す展開図である。図14Bは、折り畳み後の補強布54を示す図である。
図14に示す補強布54は、凹部35Bと貫通孔36Bを有さない。補強布54は、凹部35Bと貫通孔36B以外は、上記した補強布51と同様に構成されている。補強布54は、縁を揃えて折り畳まれる。補強布54と本体布34は、縁を揃えて重ね合わされる。
【0050】
次に、保護布を設けたエアバッグ20について説明する。保護布は、固定部材10(図3、図4参照)とエアバッグ20の間に配置されて、固定部材10からエアバッグ20を保護する。エアバッグ20には、上記した補強布40(図5〜図7参照)に加えて、保護布が取り付けられる。
【0051】
図15は、保護布60を示す図である。
保護布60は、図示のように、エアバッグ20を保護する保護部61と、エアバッグ20へ結合される結合部62からなる。保護部61は、矩形状をなし、結合部62と一体に形成されている。結合部62は、補強布40の補強ピース41〜46及び折り畳んだ補強布40と同じ形状に形成されている。従って、結合部62は、挿入部33Cと、凹部35Cと、貫通孔36Cとを有する。結合部62は、補強布40の本体布34への結合と同時に、エアバッグ20に結合される。これにより、保護布60がエアバッグ20に取り付けられる。
【0052】
図16は、エアバッグ20へ取り付ける前後の保護布60を示す図である。図16Bは、図16Aの矢視X5−X5線で見た固定布30と保護布60の断面図である。
図16A、図16Bに示すように、補強布40を折り畳んだ後、本体布34を補強布40の間に配置する。保護布60は、補強布40を本体布34に結合する位置に配置する。その際、保護布60は、エアバッグ20の表基布21側で、補強布40と本体布34の間に配置する。また、結合部62を補強布40に合わせつつ、保護布60を補強布40と本体布34の間に挟み込む。
【0053】
続いて、図16Cに示すように、本体布34と補強布40を縫製して結合する。本体布34と補強布40には、取付縫製部37Bと補強縫製部38Bを連続させて形成する。同時に、本体布34、補強布40、及び、保護布60を縫い合わせて、結合部62をエアバッグ20に結合する。このように、保護布60は、補強布40を本体布34に結合するときに、補強布40とともにエアバッグ10に取り付けられる。その後、固定部材10(図3、図4参照)が、上記と同様に、固定布30とエアバッグ20に取り付けられる。
【0054】
図17は、エアバッグ20に取り付けた固定部材10を示す図である。図17Aは、固定部材10の斜視図である。図17Bは、図17Aの矢印X6方向から見た固定部材10とエアバッグ20の側面図である。
保護布60は、図示のように、折り畳まれたエアバッグ20の外面に配置される。固定部材10をエアバッグ20に取り付けたときに、保護布60は、固定部材10とエアバッグ20の間に配置される。また、保護布60は、エアバッグ20の固定部材10と対向する部分の全体に配置される。
【0055】
エアバッグ20に保護布60を設けることで、固定部材10からエアバッグ20を保護できる。保護布60により、固定部材10のエッジがエアバッグ20に接触するのも防止できる。従って、固定部材10によりエアバッグ20が損傷するのを防止できる。補強布40の結合と同時に保護布60をエアバッグ20に取り付けるため、保護布60を取り付けるための工程と作業時間を削減できる。なお、保護布60は、折り畳んだ補強布40の間、又は、補強布40の一方の面に配置してもよい。この場合でも、保護布60をエアバッグ20に簡単に取り付けられる。2枚以上の保護布60を、エアバッグ20に設けるようにしてもよい。
【0056】
図18は、他の実施形態の補強布55と保護布65を示す展開図である。
保護布65は、図示のように、補強布55と一体に形成されている。補強布55は、保護布65を除いて、上記した補強布40と同様に構成されている。保護布65は、1つの補強ピース46に形成された矩形状の布からなる。保護布65は、補強布55とともにエアバッグ20に取り付けられる。
【0057】
図19は、エアバッグ20へ取り付ける前後の保護布65を示す図である。図19Bは、図19Aの矢視X7−X7線で見た固定布30と保護布65の断面図である。
図19A、図19Bに示すように、補強布55を折り畳んだ後、本体布34を補強布55の間に配置する。補強布55は、保護布65が最も外側に位置するように折り畳まれる。保護布65は、エアバッグ20の表基布21側に配置される。続いて、図19Cに示すように、本体布34と補強布55を縫い合わせて、補強布55を本体布34に結合する。保護布65は、補強布55と本体布34との結合によりエアバッグ20に取り付けられる。
【0058】
保護布65により、固定部材10からエアバッグ20を保護できる。また、保護布65を補強布55の結合と同時にエアバッグ20に取り付けるため、保護布65を取り付けるための工程と作業時間を削減できる。なお、補強布55の折り畳み方を変えて、保護布65を上記と異なる位置に配置してもよい。保護布65は、補強ピース46以外の補強ピース41〜45に設けてもよい。保護布65は、補強布55の複数箇所に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1・・・エアバッグ装置、2・・・インフレータ、2A・・・噴出口、10・・・固定部材、11・・・取付部、12・・・取付孔、20・・・エアバッグ、21・・・表基布、22・・・裏基布、23・・・連結ベルト、24・・・ガス供給部、25・・・外縁接合部、26・・・膨張部、27・・・非膨張部、28・・・内部接合部、30・・・固定布、31・・・突出部、32・・・基部、33・・・挿入部、34・・・本体布、35・・・凹部、36・・・貫通孔、37・・・取付縫製部、38・・・補強縫製部、39・・・挿入部、40・・・補強布、41〜46・・・補強ピース、47・・・スリット、50、51・・・補強布、52・・・取付縫製部、53・・・補強縫製部、54、55・・・補強布、60・・・保護布、61・・・保護部、62・・・結合部、65・・・保護布、90・・・車両、91・・・側壁、92・・・ルーフレール、93・・・フロントピラー、94・・・センターピラー、95・・・前部ドア、96・・・後部ドア、97、98・・・窓部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に固定される固定布を有するエアバッグを備えたエアバッグ装置であって、
固定布が、エアバッグと一体に形成された本体布と、所定回数折り畳まれて本体布に重ね合わせて結合された補強布とを有するエアバッグ装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたエアバッグ装置において、
本体布が、折り畳まれた補強布の間に配置されたエアバッグ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたエアバッグ装置において、
補強布が、折り目の位置に形成されたスリットを有するエアバッグ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載されたエアバッグ装置において、
固定布を車体に固定する固定部材と、固定部材からエアバッグを保護する保護布とを備え、
保護布が、補強布と一体に形成され、補強布と本体布との結合によりエアバッグに取り付けられたエアバッグ装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載されたエアバッグ装置において、
固定布を車体に固定する固定部材と、固定部材からエアバッグを保護する保護布とを備え、
保護布が、補強布を本体布に結合する位置に配置され、補強布を本体布に結合するときに、補強布とともにエアバッグに取り付けられたエアバッグ装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載されたエアバッグ装置において、
本体布と補強布を重ね合わせて縫製部で縫い合わせたエアバッグ装置。
【請求項7】
請求項6に記載されたエアバッグ装置において、
縫製部が、補強布を本体布に取り付ける取付縫製部と、固定布を補強する補強縫製部からなるエアバッグ装置。
【請求項8】
請求項7に記載されたエアバッグ装置において、
取付縫製部と補強縫製部が、連続して形成されたエアバッグ装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載されたエアバッグ装置において、
固定布が、挿入部に挿入される固定部材により車体に固定され、
補強縫製部が、挿入部の周りに形成されて固定布の挿入部を補強するエアバッグ装置。
【請求項1】
車体に固定される固定布を有するエアバッグを備えたエアバッグ装置であって、
固定布が、エアバッグと一体に形成された本体布と、所定回数折り畳まれて本体布に重ね合わせて結合された補強布とを有するエアバッグ装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたエアバッグ装置において、
本体布が、折り畳まれた補強布の間に配置されたエアバッグ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたエアバッグ装置において、
補強布が、折り目の位置に形成されたスリットを有するエアバッグ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載されたエアバッグ装置において、
固定布を車体に固定する固定部材と、固定部材からエアバッグを保護する保護布とを備え、
保護布が、補強布と一体に形成され、補強布と本体布との結合によりエアバッグに取り付けられたエアバッグ装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載されたエアバッグ装置において、
固定布を車体に固定する固定部材と、固定部材からエアバッグを保護する保護布とを備え、
保護布が、補強布を本体布に結合する位置に配置され、補強布を本体布に結合するときに、補強布とともにエアバッグに取り付けられたエアバッグ装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載されたエアバッグ装置において、
本体布と補強布を重ね合わせて縫製部で縫い合わせたエアバッグ装置。
【請求項7】
請求項6に記載されたエアバッグ装置において、
縫製部が、補強布を本体布に取り付ける取付縫製部と、固定布を補強する補強縫製部からなるエアバッグ装置。
【請求項8】
請求項7に記載されたエアバッグ装置において、
取付縫製部と補強縫製部が、連続して形成されたエアバッグ装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載されたエアバッグ装置において、
固定布が、挿入部に挿入される固定部材により車体に固定され、
補強縫製部が、挿入部の周りに形成されて固定布の挿入部を補強するエアバッグ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−6539(P2013−6539A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141092(P2011−141092)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】
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