説明

エチレンポリマー及びその製法

【課題】押出及び押出吹込成形に使用するのに特に適する、ブローアップ比が高くて応力下における耐ひび割れ性が高い新規エチレンポリマーを提供する。
【解決手段】エチレンポリマーを調製する方法として、連続して配置されている2つの反応器中の重合において、活性元素としてチタン及びジルコニウムを含む単一の触媒固体を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的性質の優れた、特に応力下における耐ひび割れ性の高い製品(例えば管)を製造するための、押出及び押出吹込成形に使用するのに特に適する特性の有利な組み合わせを有するエチレンポリマーに関する。本発明は又、これらのエチレンポリマーを得る種々の方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
高い伸び粘度(高いブローアップ比より反映される)を有する樹脂が押出及び押出吹込成形に使用するのに特に向いているということは一般的に公知である。
例えば、含酸素有機マグネシウム化合物を含酸素有機チタン化合物及び含酸素有機ジルコニウム化合物と反応させ、次いでこのようにして得られた反応生成物をハロゲン化アルミニウムで処理することにより調製される触媒固体の存在下において単一の反応器中で重合することにより得られるポリエチレンが提案されている(特許文献1参照)。
。この公知のポリエチレンはブローアップ比が高い。しかしながら、それらの機械的性質は、これらのポリエチレンから押し出された管の応力下における耐ひび割れ性が低いという状況である。
更に、機械的性質の改良された、特に応力下における耐ひび割れ性が高いポリエチレンは公知である。例えば、チタン触媒の存在下において連続した2個以上の反応器中で重合することにより得られるエチレンポリマーが知られている(特許文献2参照)。このようにして得られたエチレンポリマーは良好な機械的性質(応力下における高い耐ひび割れ性)を有する。しかしながら、このエチレンポリマーはブローアップ比が低い。
【0003】
【特許文献1】ベルギー国特許第BE 840,378号(Solvay & Co.)
【特許文献2】特許願第EP 603,935号(Solvay)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、押出及び押出吹込成形に使用するのに特に適する、ブローアップ比が高くて応力下における耐ひび割れ性が高い新規エチレンポリマーを提供することにより前述の欠点を克服することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本発明は、ブローアップ比(RB ) が1.4以上で、応力下における耐ひび割れ性(ESCR)が55時間以上でかつメルトインデックス(MI5) が0.2g/10min 以上であるエチレンポリマーに関する。
従って、本発明によるエチレンポリマーの必要不可欠な特性は、高いブローアップ比と高い応力下における耐ひび割れ性の組み合わせである。
本発明によるエチレンポリマーのブローアップ比は、190℃及び100s-1の速度勾配において、長さ30mm直径2mmのダイから一定の押出速度でエチレンポリマーを押し出し、長さ70mmの棒を押し出すのに必要なピストンの変位を測定することにより測定した。ブローアップ比は、関係式RB =0.5707√e(式中、eはmmで表されるピストンの変位を表す)で定義される。この測定に使用されるレオメーターのシリンダー及びピストンは、ASTM標準D1238(1986) によるメルトインデックスの測定に使用するものの基準を満足する。
【0006】
エチレンポリマーの応力下における耐ひび割れ性は、以下の手順に従って測定する。125mm×12.7mm×3.2mmの寸法の10枚のプレートをエチレンポリマーのシートからプレスする。そこに2つのノッチを付ける。第一のそれはプレートの一端から60mmであり、第二のそれはプレートの他端から15mmである。ノッチを付けたプレートに、塑性流れ限界応力以下の応力に対応する7.36Nの一定の曲げ応力を印加し、同時に60℃の温度において水1リットル当たり3mlのノニルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールを含む界面活性剤溶液中に浸漬する。試料が破壊する時間を測定し、試料の50%の破壊に対応する平均時間を計算する。
本発明においては、“エチレンポリマー”という用語は、エチレンホモポリマー並びにエチレンと1種以上のコモノマーとのコポリマーを意味すると理解される。エチレンコポリマーが最も有利である。言及されうるコモノマーは3乃至8個の炭素原子を含むα‐オレフィンである。ブテン、ヘキセン及びそれらの混合物が好ましい。エチレンコポリマー中のコモノマー含量は、一般的には0.1重量%以上、特に0.5重量%以上であり、1重量%以上の値が有利である。コモノマー含量は通常10重量%以下、正確には8重量%以下であり、5重量%以下の値が最も一般的である。
【0007】
本発明によるエチレンポリマーは通常、ASTM標準D 1238- 条件P(1986) に従って190℃及び5kgの荷重で測定されたメルトインデックスが0.3g/10min 以上、特に0.6g/10min 以上である。MI5 値は一般的には10g/10min 以下、通常5g/10min 以下であり、特に2g/10min 以下である。
好ましい本発明によるエチレンポリマーは更に、dPa s で表され、190℃において100s-1の速度勾配で測定される、比:
[log(177470/MI5)-log η]/[2-log(2.53 ×MI5)]
が0.55以上であるような動的粘度ηを特徴とする。好ましくはこの比は0.59以上であり、0.61以上の値が特に有利である。多くの場合、この比は0.73以下であり、通常0.70以下である。
本発明によるエチレンポリマーは通常、ISO 標準1183(1987)に従って測定された標準密度が945kg/m3 以上、特に950kg/m3 以上であり、952kg/m3 以上の値が好ましい。標準密度は一般的には965kg/m3 以下、正確には960kg/m3 以下であり、958kg/m3 以下の値が最も好ましい。
本発明は又、前述のエチレンポリマーの種々の製法にも関する。
本発明によるエチレンポリマーを調製する第一の方法においては、連続して配置されている2つの反応器中の重合において、活性元素としてチタン及びジルコニウムを含む単一の触媒固体を使用する。
【0008】
第一の製法は特に、Zr/Ti のモル比が2以上のチタン及びジルコニウムを含む触媒固体の存在下、及び助触媒の存在下において、連続した2つの反応器中でエチレンを任意に1種以上のコモノマーと重合させる方法であって、第一の反応器にエチレン、任意にコモノマー及び/又は水素、触媒固体及び助触媒を供給し、第一の反応器の反応媒体を第二の反応器に移し、第二の反応器にもエチレン及び任意にコモノマーと共に供給する。好ましくは、水素を2つの反応器の少なくとも一方に導入する。
本発明による第一の方法に使用する触媒固体は、Zr/Ti のモル比が2以上で、0.5乃至10重量%のチタン(好ましくは1乃至6重量%)、5乃至40重量%のジルコニウム(好ましくは10乃至25重量%)、20乃至80重量%のハロゲン(好ましくは40乃至60重量%)、1乃至30重量%のマグネシウム(好ましくは5乃至15重量%)、及び0.5乃至10重量%のアルミニウム(好ましくは1乃至3重量%)を含むのが有利である。残りは、使用する反応体から誘導される残存有機基、特にアルコキシ及びアルキル基である。ハロゲンは好ましくは塩素である。
触媒固体におけるZr/Ti 比は好ましくは2.5以上であり、3以上の値が特に好ましい。Zr/Ti 比は通常10以下、正確には8以下であり、6以下の値が好ましい。
【0009】
本発明によるエチレンポリマーを調製する第二の方法においては、連続した2つの反応器中の重合において2種類の触媒固体の混合物及び助触媒を使用する。
第一の触媒固体は単一の活性元素、つまりチタンを含み、第二のそれは2つの活性元素、つまりチタン及びジルコニウムを含む。第一の反応器にエチレン、任意にコモノマー及び/又は水素、第一及び第二の触媒固体及び助触媒を供給し、第一の反応器の反応媒体を第二の反応器に移し、第二の反応器にもエチレン及び任意にコモノマー及び/又は水素を供給する。
本発明によるエチレンポリマーを調製する第二の方法は特に、実質的に10乃至30重量%のチタン、20乃至60重量%のハロゲン、0.5乃至20重量%のマグネシウム及び0.1乃至10重量%のアルミニウムを含む第一の触媒固体、実質的に0.5乃至10重量%のチタン、5乃至40重量%のジルコニウム、20乃至80重量%のハロゲン、1乃至30重量%のマグネシウム及び0.5乃至10重量%のアルミニウムを含む第二の触媒固体の存在下において、連続した2つの反応器中でエチレンを任意に1種以上のコモノマーと重合させる方法である。好ましくは、水素をこれらの2つの反応器の少なくとも一方に導入する。
2つの触媒固体は重合工程で使用する前に任意に混合しうる。従って先立つ混合は室温で有利に実施される。
【0010】
第一の触媒固体は好ましくは、実質的に15乃至20重量%のチタン、30乃至50重量%のハロゲン、1乃至10重量%のマグネシウム及び0.5乃至5重量%のアルミニウムを含む。残りは、使用する反応体から誘導される残存有機基、特にアルコキシ及びアルキル基である。ハロゲンは好ましくは塩素である。
通常、第二の触媒固体は、実質的に1乃至6重量%のチタン、10乃至25重量%のジルコニウム、40乃至60重量%のハロゲン、5乃至15重量%のマグネシウム及び1乃至3重量%のアルミニウムを含む。残りは、使用する反応体から誘導される残存有機基、特にアルコキシ及びアルキル基である。多くの場合、ハロゲンは好ましくは塩素である。
本発明による第二の方法においては、2つの触媒固体は一般的には、第一の触媒固体から誘導されるチタンの第二の触媒固体から誘導されるチタンに対するモル比が1以上、特に1.25以上であるような量が使用され、1.50以上の値が好ましい。この比は通常10以下、特に5以下であり、4以下の値が好ましい。
第一又は第二の方法で使用する助触媒は当業者に公知のいずれの助触媒でもよく、特に有機アルミニウム化合物がよい。言及しうる例は、トリアルキルアルミニウム、特に、トリエチルアルミニウム及びトリイソブチルアルミニウムのような、アルキル基が20個までの炭素原子(好ましくは2乃至8個の炭素原子)を含むものである。
【0011】
特定の実施態様によれば、本発明によるエチレンポリマーを調製する第一及び第二の方法に使用する触媒固体は、第一工程において、液体錯体が得られるまで含酸素有機マグネシウム化合物を含酸素有機チタン化合物、及び適する場合には含酸素有機ジルコニウム化合物と反応させ、第二工程において、前記液体錯体を触媒固体として沈殿させるために、液体錯体を一般式AlRn3-n (式中、Rは炭化水素基であり、Xはハロゲンでありかつnは3未満である。)のハロゲン化有機アルミニウム化合物で処理することにより調製される。
本発明においては、“含酸素有機マグネシウム化合物”という用語は、マグネシウム1原子当たり1個以上のマグネシウム‐酸素‐有機基結合のシークエンスを含む化合物を言及すると理解される。有機基は一般的には20個までの炭素原子、特に10個までの炭素原子、好ましくは2乃至6個の炭素原子を含む。有機基は、アルキル(直鎖状又は分枝鎖状)、アルケニル、アリール、シクロアルキル、アリールアルキル、アルキルアリール及びアシル基及びそれらの置換誘導体から選択しうる。マグネシウムアルコキシドの場合に最良の結果が得られる。マグネシウムジアルコキシド、特にマグネシウムジエトキシドが好ましい。
【0012】
“含酸素有機チタン化合物又は含酸素有機ジルコニウム化合物”という用語は、チタン又はジルコニウム1原子当たり1個以上のチタン(又はジルコニウム)‐酸素‐有機基結合のシークエンスを含む化合物を言及すると理解される。有機基は、含酸素有機マグネシウム化合物について前述のように定義したものに従う。好ましくは四価のチタン又はジルコニウム化合物が使用される。言及しうる含酸素有機チタン化合物又は含酸素有機ジルコニウム化合物には、アルコキシド、フェノキシド、オキシアルコキシド、縮合アルコキシド、カルボキシレート及びエノレートがある。アルコキシドの場合に最良の結果が得られる。好ましいアルコキシドはチタン又はジルコニウムテトラアルコキシドであり、特にチタン又はジルコニウムテトラブトキシドである。
触媒固体の調製の第一工程は、含酸素有機マグネシウム化合物を含酸素有機チタン化合物及び、触媒固体がジルコニウムも含む場合には含酸素有機ジルコニウム化合物と反応させることによる液体錯体の調製である。反応は希釈剤の存在下で実施しうる。希釈剤は一般的には20個までの炭素原子を含む直鎖状又は分枝鎖状のアルカン又はシクロアルカンから選択される。ヘキサンが使用するのに適する。
使用する含酸素有機チタン化合物の量は一般的には使用するマグネシウム1モル当たり0.01モル以上のチタン、特に0.02モル以上のチタンであり、0.05モル以上の値が好ましい。この量は通常使用するマグネシウム1モル当たり20モル以下のチタン、正確には10モル以下のチタンであり、5モル以下の値が好ましい。次いで使用する含酸素有機ジルコニウム化合物の量は、望ましいZr/Ti のモル比に依存する。
【0013】
沈殿工程とも呼ばれる触媒固体の調製における第二工程の役割は、遷移金属の原子価を還元させると同時に含酸素有機マグネシウム化合物、含酸素有機チタン化合物及び、適する場合には含酸素有機ジルコニウム化合物をハロゲン化し、すなわちこれらの化合物中に存在するアルコキシ基をハロゲンで置換することであり、第一工程後に得られた液体錯体が触媒固体として沈殿する。還元及びハロゲン化は、還元ハロゲン化剤として作用して触媒固体を沈殿させる含ハロゲン有機アルミニウム化合物を用いて同時に実施する。
沈殿工程における含ハロゲン有機アルミニウム化合物による処理は、第一工程後に得られた液体錯体を含ハロゲン有機アルミニウム化合物と接触させることにより、好ましくは含ハロゲン有機アルミニウム化合物を徐々に液体錯体に添加することにより実施する。
含ハロゲン有機アルミニウム化合物は、式AlRn3-n (式中、Rは20個までの炭素原子、好ましくは6個までの炭素原子を含む炭化水素基である。)に対応するのが有利である。Rが直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基の場合に最良の結果が得られる。Xは一般的には塩素である。好ましくは、nは1.5以下、特に1以下である。エチルアルミニウムジクロライド又はイソブチルアルミニウムジクロライドが好ましい。
【0014】
使用する含ハロゲン有機アルミニウム化合物の量は一般的には、使用するチタン及びジルコニウム1モル当たり0.5モル以上のアルミニウム、好ましくは1モル以上のアルミニウムであり、2モル以上の値が最も一般的である。その量は一般的には使用するチタン及びジルコニウム1モル当たり50モル以下のアルミニウム、特に30モル以下のアルミニウムであり、20モル以下の値が有利である。
含ハロゲン有機アルミニウム化合物を用いた液体錯体の沈殿工程後、ハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化チタン及び、適する場合にはハロゲン化ジルコニウム及び任意に部分的に還元された及び/又は部分的にハロゲン化された化合物の実質的に非晶質の混合物の均質沈殿物(構成成分は液体錯体から共沈する)からなる触媒固体を回収する。これは、化学反応により生成した化学的に結合した錯体に関連し、混合又は吸着現象の結果ではない。実際に、純粋に物理的な分離法を用いてこれらの錯体のいずれかの一成分を溶解させることは不可能である。
【0015】
前述の特定の調製法により得られるチタン及びジルコニウムを含む触媒固体は又、連続した2つの反応器中におけるオレフィンの重合法に使用する場合には、本発明によるエチレンポリマー以外のポリオレフィンを得ることもできる。従って本発明は又、Zr/Ti のモル比が2以上のチタン及びジルコニウムを含む触媒固体及び助触媒の存在下において、連続した2つの反応器中でオレフィンを任意に1種以上のコモノマーと重合させるオレフィンの重合方法であって、第一の反応器にオレフィン及び任意にコモノマー及び/又は水素、触媒固体及び助触媒を供給し、第一の反応器の反応媒体を第二の反応器に移し、第二の反応器にもオレフィン及び任意にコモノマー及び/又は水素を供給する方法に関する。触媒固体は、第一工程において、含酸素有機マグネシウム化合物を含酸素有機チタン化合物及び含酸素有機ジルコニウム化合物と液体錯体が得られるまで反応させ、第二工程において、前記液体錯体を触媒固体錯体として沈殿させるために、液体錯体を一般式AlRn3-n (式中、Rは炭化水素基であり、Xはハロゲンでありかつnは3未満である。)のハロゲン化有機アルミニウム化合物で処理することにより調製される。この重合方法は、特に均質ポリマーを高い製造効率で得ることが可能である。
オレフィンは、2乃至20個の炭素原子、好ましくは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1- ペンテン及び1-ヘキセンのような2乃至6個の炭素原子を含むオレフィンから選択しうる。エチレン、1-ブテン及び1-ヘキセンが使用するのに適する。エチレンが特に好ましい。コモノマーは、前述のオレフィン及び4乃至20個の炭素原子を含むジオレフィンから選択しうる。第二の反応器に導入されるコモノマーは、第一の反応器に導入されるものとは異なってもよいことは言うまでもない。
【0016】
本発明によるエチレンポリマーを調製する第二の方法に使用する2種類の触媒固体の混合物は又、単一の反応器又は連続して配置されている2つの反応器におけるオレフィンのその他の重合方法にも使用しうる。従って本発明は又、
(a)実質的に10乃至30重量%のチタン、20乃至60重量%のハロゲン、0.5乃至20重量%のマグネシウム及び0.1乃至10重量%のアルミニウムを含む第一の触媒固体、
(b)実質的に0.5乃至10重量%のチタン、5乃至40重量%のジルコニウム、20乃至80重量%のハロゲン、1乃至30重量%のマグネシウム及び0.5乃至10重量%のアルミニウムを含む第二の触媒固体、及び
(c)助触媒、
を含むオレフィンの重合用触媒系にも関する。
2種類の触媒の混合物を使用すると、前記混合物の組成を調整することにより得られるポリマーの性質を非常に迅速に調節することができる。
本発明によるエチレンポリマーを調製する第三の方法においては、支持体上に活性元素としてクロムを含む触媒固体を使用する。
本発明によるエチレンポリマーを調製する第三の方法は特に、任意に助触媒及び/又は水素の存在下で、シリカ、アルミナ及びアルミニウムホスフェートから選択された2種以上の成分を含む支持体上にクロムを含む触媒固体の存在下において、単一の反応器中でエチレンを任意に1種以上のコモノマーと重合させる方法である。
【0017】
本発明によるエチレンポリマーを調製する第四の方法は、シリカ、アルミナ及びアルミニウムホスフェートから選択された2種以上の成分を含む支持体上のクロムを含む触媒固体、及び助触媒の存在下において、連続して配置されている2つの反応器中でエチレンを任意に1種以上のコモノマーと重合させる方法であって、第一の反応器にエチレン、任意にコモノマー及び/又は水素、及び触媒固体を供給し、第一の反応器の反応媒体を第二の反応器に移し、第二の反応器にもエチレン及び任意にコモノマー及び/又は水素を供給し、助触媒を2つの反応器の少なくとも一方に存在させる方法である。助触媒は第二の反応器中のみに使用するのが有利である。
本発明によるエチレンポリマーを調製する第三及び第四の方法に使用する触媒固体は、支持体粉末に水性又は有機溶液を含浸させ、次いで酸化雰囲気中で乾燥させることにより、それ自体は公知である方法で得られる。このためには、水溶液中の酸化物、アセテート、塩化物、スルフェート、クロム酸塩及び重クロム酸塩、又は有機溶液中のアセチルアセトナートのような可溶性塩から選択されたクロム化合物を使用する。支持体にクロム化合物を含浸させた後、クロムの一部を六価のクロムに変換させるために、含浸させた支持体を通常400乃至1000℃の温度に加熱することにより活性化する。本発明による触媒固体は又、支持体粉末を、例えばクロムアセチルアセトナートのような固体クロム化合物と機械的に混合することにより得ることもできる。次いでこの混合物は、前述のように従来のようにして活性化するまえに、クロム化合物の融点以下の温度で予め活性化してもよい。第三及び第四の方法に使用する触媒固体においては、クロムは一般的には触媒固体の総重量に対して0.05乃至10重量%、好ましくは0.1乃至5重量%、特に0.25乃至2重量%のクロムの割合で存在する。
【0018】
本発明による第三の方法において任意に使用する、及び第四の方法において少なくとも一方の反応器において必ず使用する助触媒は、アルミニウム又はホウ素の有機金属化合物から選択しうる。触媒活性を増大させうるので、有機ホウ素化合物の場合に最良の結果が得られる。使用しうる有機ホウ素化合物は、アルキル連鎖が20個までの炭素原子を含むトリアルキルホウ素である。一般的には、アルキル連鎖が直鎖状で18個までの炭素原子、特に2乃至8個の炭素原子を含むものが好ましい。トリエチルホウ素が好ましい。使用する助触媒の総量は一般的には、溶媒、希釈剤又は反応器の容量1リットル当たり0.02乃至50mmol、好ましくは0.2乃至2.5mmolである。
本発明によるエチレンポリマーを調製する第三及び第四の方法に使用する支持体の比表面積は100m2/g以上、特に180m2/g以上であるのが有利であり、220m2/g以上の値が最も有利である。比表面積はしばしば800m2/g以下、正確には700m2/g以下であり、650m2/g以下の値が最も一般的である。支持体の比表面積(SS)は、英国標準 BS 4359/1 (1984) のBET 容量法に従って測定される。
第三及び第四の方法に使用する支持体の結晶化温度は一般的には、700℃以上、例えば1000℃以上である。支持体の結晶化温度は、支持体の試料を種々の温度(500℃、700℃、800℃、950℃、1050℃)で加熱処理し、次いで各熱処理後にX線回折によりこの試料を調べることにより測定する。
【0019】
第三及び第四の方法に使用する支持体の孔容積は通常、1.5cm3/g 以上、特に2cm3/g 以上であり、2.2cm3/g 以上の値が推薦される。孔容積は一般的には、5cm3/g 以下、特に4.5cm3/g 以下であり、4cm3/g 以下の値が一般的である。孔容積(PV)は、英国標準 BS 4359/1 (1984) に記載されている容量技術による窒素浸透法(BET) により測定された75Å以下の半径の孔の孔容量、及びベルギー国標準 NBN B 05-202 (1976)に従って水銀浸透法によりCarlo Erba Co.より市販されているPoro 2000 型のポロシメータを用いて測定した孔容積の合計である。支持体の比表面積(SS)及び孔容積(PV)が以下の関係:
SS < ( PV × 564 - 358 )
(式中、SS及びPVは、それぞれm2/gで表される比表面積及びcm3/g で表される孔容積である。)
に対応する場合に良好な結果が得られる。
第三及び第四の方法に使用する支持体が前述の成分を2種類だけ含む場合には、0.01乃至99(好ましくは0.05乃至20)のモル比のシリカ及びアルミナ、0.01乃至99(好ましくは0.05乃至20)のモル比のシリカ及びアルミニウムホスフェート、0.01乃至99(好ましくは0.05乃至20)のモル比のアルミナ及びアルミニウムホスフェートを含むのが有利である。好ましくは支持体は、シリカ(X) 、アルミナ(Y) 及びアルミニウムホスフェート(Z) を(X) : (Y) : (Z) のモル比が(10乃至95):(1乃至80):(1乃至85)、特に(20乃至80):(1乃至60):(5乃至60)の割合で含む。
支持体は又任意にチタンを含みうる。シリカ、アルミナ、アルミニウムホスフェート及び二酸化チタンを含む触媒固体の支持体に関してTiO2のモル%で表される、支持体中に存在するチタンの量は一般的には、0.1モル%以上、好ましくは0.5モル%以上であり、1モル%以上の値が最も一般的である。TiO2のモル%で表されるチタンの量は通常、40モル%以下、特に20モル%以下であり、15モル%以下の値が推薦される。
【0020】
クロムを含む触媒固体を用いる第三及び第四の方法に使用する支持体は、一般的には粒子直径が20乃至200μm の粉末状である。通常みかけの密度は50kg/m3 以上、特に100kg/m3 以上である。一般的には500kg/m3 以下、典型的には300kg/m3 以下である。みかけの密度は、以下の手順に従って測定する。分析する支持体粉末を容量が50cm3 の円筒状容器に、容器の上端部の上方20mmの位置にその下方端部があるホッパーから押さえつけないように注意しながら注ぐ。次いで、粉末を充填し、直線をなすブレードで平らにした容器を秤量し、記録されている風袋の重量を減じ、得られた結果(gで表される)を50で割る。
第三及び第四の方法に使用する支持体を得る特定方法は、第一工程において、アルコール、水、珪素アルコキシド及び酸を、水/珪素のモル比が2乃至50であるような量で混合し、第二工程において、このようにして得られた加水分解媒体にアルミニウム化合物の酸性溶液及びホスフェートイオン源の溶液を添加し、かつ第三工程において、沈殿物を得るために沈殿剤を添加し、第四工程において、このようにして得られた沈殿物を水及び次いで有機液体で洗浄し、第五工程において、粉末が得られるまで蒸留により乾燥させ、粉末を焼成する。
支持体を得る特定方法の第一工程で使用する珪素アルコキシドは、好ましくは1乃至20個の炭素原子のアルコキシ基を含む。脂肪族のアルコキシ基、特に飽和未置換脂肪族アルコキシ基が推薦される。適する珪素アルコキシドは、珪素テトラエトキシド、テトラメトキシド及びテトライソプロポキシドである。珪素テトラエトキシドが好ましい。
【0021】
支持体を得る特定方法の第一工程で使用するアルコールの作用は珪素アルコキシドを溶解させることである。直鎖状の脂肪族アルコールが好ましい。エタノール、イソプロパノール及びメタノールが例として挙げられる。エタノールが好ましい。炭化水素基が使用する珪素アルコキシドのアルコキシ基のそれに対応するアルコールを用いるのが有利である。
第一工程は酸性のpHで実施するのが有利であり、一方では水、酸、珪素アルコキシド及びアルコールの添加(添加中の温度は30℃以下、特に20℃以下であり、典型的には約10℃であり、0℃より高い温度が推薦される。)を含み、他方では、ゲル化又はシリカの沈殿を生ずることなく珪素アルコキシドのアルコキシ基の少なくとも一部をヒドロキシル基で置換するために、このようにして得られた反応媒体を20℃以上及び媒体の沸点以下の温度(例えば30乃至100℃であり、40乃至80℃の温度が最も一般的であり、50乃至70℃が推薦される。)で熟成することを含む。第一工程においては、反応媒体のpHは3以下、好ましくは0.5乃至2.5であり、例えば約1である。第一工程で使用する酸は無機でも有機でもよい。例えば、塩酸、硝酸、燐酸又は硫酸である。塩酸が特に適する。熟成は、好ましくは反応体の添加温度以上の温度で実施される。熟成の作用は、珪素アルコキシドを部分的に縮合及び加水分解することである。
【0022】
支持体を得る特定方法の第二工程は、第一工程後に得られる媒体にアルミニウム化合物の溶液及びホスフェートイオン源の溶液を添加することからなる。アルミニウム化合物は無機アルミニウム塩及びアルミニウムアルコキシドから選択しうる。未置換飽和直鎖状脂肪族基を含むアルミニウムアルコキシドが推薦される。脂肪族基は好ましくは1乃至20個の炭素原子を含む。アルコキシ基が使用する珪素アルコキシドのそれに対応するアルミニウムアルコキシドが特に適する。
硝酸アルミニウム及び塩化アルミニウムは特に好ましい。本発明において、ホスフェートイオン源という用語は、ホスフェートイオンを形成しうるいかなる化合物も意味すると理解される。無機ホスフェート塩、ホスフェートエステル塩及び燐酸が特に推薦される。好ましくは燐酸が使用される。支持体を得る特定方法の第二工程においては、媒体が加熱するのを防ぐために、例えば30℃未満の温度、典型的には20℃以下の温度、例えば0乃至10℃の温度において非常にゆっくり実施するのが好ましい。
支持体を得る特定方法の第三工程は、第一及び第二工程で使用した反応体(第一工程後に得られた加水分解及び部分的縮合された珪素アルコキシド及び前述のアルミニウム化合物及びホスフェートイオン源)を珪素の混合酸化物の形で共沈させうる化合物から選択しうる沈殿剤の作用下で沈殿物を形成することからなる。言及しうる沈殿剤の例はエチレンオキシド、炭酸アンモニウム及び水酸化アンモニウムである。好ましくは水酸化アンモニウムの水溶液が使用される。共沈媒体のpHは一般的には5以上であり、典型的には6以上である。それは通常11未満であり、10未満の値が推薦される。pHは好ましくは6乃至10、例えば8の値に共沈の間中一定に保持される。
【0023】
支持体を得る特定方法の第四工程においては、水を用いた洗浄は、一般的には沈殿物中に含まれる不純物を除去するのに十分な量の水と沈殿物とを接触させること、及び次いで、例えば遠心分離又は濾過のような適する公知の手段によりこの量の水の少なくとも一部を除去することからなる。この工程は好ましくは遠心分離により実施される。次いで、水で洗浄した沈殿物を有機液体により洗浄する。この作用は、沈殿物に含浸させた水を除去することである。有機液体の蒸発温度は好ましくは120℃未満、典型的には100℃未満、例えば70乃至90℃である。使用しうる有機液体はアルコール、エーテル又はそれらの混合物である。特に1乃至4個の炭素原子を含むアルコールが好ましい。イソプロパノールが使用するのに適する。
洗浄した沈殿物は次いで、支持体を得る特定方法の第五工程において、前述の除去されていない水及び有機液体を蒸発させるために、噴霧又は蒸留、好ましくは共沸蒸留により支持体粉末が得られるまで乾燥させる。
乾燥後、支持体粉末を回収して焼成する。焼成の作用は高温において有機不純物を粉末から抽出することである。一般的には、粉末の結晶化を回避しながら粉末の重量が一定になるまで継続する。焼成は、粉末の結晶化温度より低温において空気中(好ましくは乾燥空気中)流動層で実施しうる。温度は一般的には300乃至1500℃、典型的には350乃至1000℃、好ましくは400乃至600℃である。
【0024】
連続した2つの反応器中でオレフィンを重合する方法にSiO2-AlPO4、Al2O3-AlPO4 二成分系支持体及びSiO2-Al2O3-AlPO4三成分系から選択された支持体を使用する場合には、本発明によるエチレンポリマー以外のポリオレフィンを得ることも可能である。従って、本発明は又、SiO2-AlPO4、及びAl2O3-AlPO4 二成分系支持体及びSiO2-Al2O3-AlPO4三成分系から選択された支持体上のクロムを含む触媒固体、及び助触媒の存在下において、連続して配置されている2つの反応器中でオレフィンを任意に1種以上のコモノマーと重合させるオレフィンの重合方法であって、第一の反応器にオレフィン及び任意にコモノマー及び/又は水素、及び触媒固体を供給し、第一の反応器の反応媒体を第二の反応器に移し、第二の反応器にもオレフィン及び任意にコモノマー及び/又は水素を供給し、助触媒を2つの反応器の少なくとも一方に存在させる方法にも関する。
本発明の重合方法は、溶媒(液体状態のオレフィン自体でもよい)の溶液中、又は炭化水素希釈剤中の懸濁液中、又は気相中でいずれかの公知の方法により実施しうる。懸濁重合の場合に良好な結果が得られる。
連続して配置されている2つの反応器中における重合の原理は特許願第EP 603,935号(Solvay)に記載されている原理である。プラントは、明らかに連続して結合している2つ以上の反応器を含みうる。連続した2つの反応器中における重合方法は、第二の反応器においては第一の反応器に使用する重合条件(温度、水素のような移動剤の濃度、任意のコモノマーの濃度、任意の助触媒の濃度等)とは異なるそれを使用して実施するのが有利である。従って、第二の反応器中で製造されるポリマーのメルトインデックスは第一の反応器中で製造されるそれとは異なる。第一の反応器で得られるメルトインデックスが第二の反応器で得られるそれより低くなるように設定してもよい。あるいは、第二の反応器で得られるメルトインデックスより第一の反応器で得られるそれのほうが高くすることもできる。
【実施例】
【0025】
以下の実施例は本発明の説明を意図する。これらの実施例で使用する記号の意味、数量を表す単位及びこれらの数量を測定する方法を以下で説明する。
MI2 =ASTM標準D 1238 (条件E) (1986) に従って190℃において2.16kgの荷重で測定されたポリエチレンのメルトインデックス。
MI5 =ASTM標準D 1238 (条件P) (1986) に従って190℃において5kgの荷重で測定されたポリエチレンのメルトインデックス。
SD =ISO 標準1183(1987)に従って測定されたkg/m3 で表されるポリエチレンの標準密度。
η =190℃において100s-1の速度勾配で測定されたdPa s で表されるポリエチレンの動的粘度。
【0026】
ESCR=以下の方法に従って測定された時間で表される応力下における耐ひび割れ性。125mm×12.7mm×3.2mmの寸法の10枚のプレートをエチレンポリマーのシートからプレスする。そこに2つのノッチを付ける。第一のそれはプレートの一端から60mmであり、第二のそれはプレートの他端から15mmである。ノッチを付けたプレートに、塑性流れ限界応力以下の応力に対応する7.36Nの一定の曲げ応力を印加し、同時に60℃の温度において水1リットル当たり3mlのノニルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールを含む界面活性剤溶液中に浸漬する。試料が破壊する時間を測定し、試料の50%の破壊に対応する平均時間を計算する。
R B =エチレンポリマーのブローアップ比(単位なし)。測定法は、190℃及び100s-1の速度勾配において、長さ30mm直径2mmのダイから一定の押出速度でエチレンポリマーを押し出し、長さ70mmの棒を押し出すのに必要なピストンの変位を測定することからなる。ブローアップ比は、関係式RB =0.5707√e(式中、eはmmで表されるピストンの変位を表す。)で定義される。この測定に使用されるレオメーターのシリンダー及びピストンは、ASTM標準D 1238(1986)によるメルトインデックスの測定に使用するものの基準を満足する。
P =使用するチタン1g当たりの製造されるポリエチレンのkg数で表される触媒固体の製造効率。
【0027】
実施例1(対照)
この実施例においては、特許願第EP 603,935号に記載されている方法にしたがってチタン触媒を用いて連続した2つの反応器中でエチレンポリマー調製し、そのブローアップ比及び応力下における耐ひび割れ性を測定した。
A.触媒固体の調製
マグネシウムジエトキシドを、チタンのマグネシウムに対するモル比が2に等しいような量のチタンテトラブトキシドと150℃において4時間反応させる。
次に、このようにして得られた反応生成物を、アルミニウムのマグネシウムに対するモル比が6.5に等しいような量のエチルアルミニウムジクロライドの溶液と45℃において90分間接触させることにより、塩素化及び沈殿させる。このようにして得られた固体は15.8重量%のTi、36.0重量%のCl、2.2重量%のAl及び4.4重量%のMgを含有した。
【0028】
B.2つの反応器中におけるエチレンの重合
連続して配置されている2つの反応器を含むプラントでエチレンを重合した。
ヘキサン、助触媒としてのトリエチルアルミニウム、水素/エチレンのモル比が0.27のエチレン及び水素、及びAで得られた触媒固体を連続して第一の反応器に導入した。温度は85℃において一定に保持した。第一の反応器の重合媒体を第一の反応器から連続して除去し、第二の反応器に移し、そこにエチレン、水素/エチレンのモル比が0.0085の水素、及びブテン/エチレンのモル比が0.31のブテンも供給した。第二の反応器の温度は70℃であった。製造効率P は200であった。得られたポリマーは以下の特性を有した。
MI5 =1.3
η =15,400
R B =1.34
ESCR=128
SD =956
本発明によるエチレンポリマーのブローアップ比は1.4以上であったが、得られたポリマーのブローアップ比は1.4より低かった。
【0029】
実施例2(対照)
この実施例においては、ベルギー国特許第BE 840,378号に記載されている方法にしたがってチタン及びジルコニウム触媒を用いて単一の反応器中でエチレンポリマーを調製し、そのブローアップ比及び応力下における耐ひび割れ性を測定した。
A.触媒固体の調製
マグネシウムジエトキシドを、Ti/Mg のモル比が0.6に等しく、Zr/Ti のモル比が1.2に等しいような量のチタンテトラブトキシド及びジルコニウムテトラブトキシドと150℃において4時間反応させる。次いで、このようにして得られた反応生成物を、Al/Mg のモル比が11に等しいような量のイソブチルアルミニウムジクロライドの溶液と45℃において接触させることにより、塩素化及び沈殿させる。触媒固体を、触媒固体1kg当たり150gの割合のチタンテトライソプロポキシドと混合した。このようにして得られた固体は6.4重量%のTi、12.6重量%のZr、55.2重量%のCl、2.5重量%のAl及び5.8重量%のMgを含有した。
【0030】
B.単一の反応器中におけるエチレンの重合
単一の反応器中でエチレンを重合した。ヘキサン、助触媒としてのトリイソブチルアルミニウム、水素/エチレンのモル比が0.09のエチレン及び水素、及びAで得られた触媒固体を導入した。ブテン/エチレンのモル比が0.07のブテンも導入した。温度は87℃において一定に保持した。製造効率P は100であった。得られたポリマーは以下の特性を有した。
MI5 =1.1
η =18,300
R B =1.59
ESCR=38
SD =954
本発明によるエチレンポリマーの応力下における耐ひび割れ性は55時間以上であったが、得られたポリマーの応力下における耐ひび割れ性は55時間より低かった。
【0031】
実施例3(対照)
この実施例においては、シリカ支持体上のクロム触媒を用いて単一の反応器中でエチレンポリマーを調製し、そのブローアップ比及び応力下における耐ひび割れ性を測定した。
A.触媒固体の調製
1重量%のシリカ上に支持されたクロムを含むCrosfield から市販されている触媒EP30X を使用した。触媒を乾燥空気中760℃において12時間流動層で焼成し、触媒固体を回収した。
B.単一の反応器中におけるエチレンの重合
単一の反応器中でエチレンを重合した。イソブタン、ヘキサン/エチレンのモル比が0.017のエチレン及びヘキサン、及びAで得られた触媒固体を導入した。反応器内の全圧及び温度は、それぞれ4.2MPa 及び103℃において一定に保持した。得られたポリマーは以下の特性を有した。
MI5 =0.86
η =17,900
R B =1.67
ESCR=24
SD =954.0
本発明によるエチレンポリマーの応力下における耐ひび割れ性は55時間以上であったが、得られたポリマーの応力下における耐ひび割れ性は55時間より低かった。
【0032】
実施例4(本発明による)
この実施例においては、本発明による第一の製法を用い、本発明によるエチレンポリマーを調製した。
A.触媒固体の調製
マグネシウムジエトキシドを、Ti/Mg のモル比が0.4に等しく、Zr/Ti のモル比が3に等しいような量のチタンテトラブトキシド及びジルコニウムテトラブトキシドと150℃において4時間反応させた。次いで、このようにして得られた反応生成物を、Al/Mg のモル比が8.4に等しいような量のイソブチルアルミニウムジクロライドの溶液と45℃において接触させることにより、塩素化及び沈殿させた。このようにして得られた固体は4.4重量%のTi、14.9重量%のZr、50.2重量%のCl、2.4重量%のAl及び8.0重量%のMgを含有した。
【0033】
B.2つの反応器中におけるエチレンの重合
連続して配置されている2つの反応器を含むプラントでエチレンを重合した。
ヘキサン、助触媒としてのトリエチルアルミニウム、水素/エチレンのモル比が0.37のエチレン及び水素、及びAで得られた触媒固体を連続して第一の反応器に導入した。温度は85℃において一定に保持した。第一の反応器の重合媒体を第一の反応器から連続して除去し、第二の反応器に移し、そこにエチレン、水素/エチレンのモル比が0.0125の水素、及びブテン/エチレンのモル比が0.2のブテンも供給した。第二の反応器の温度は80℃であった。製造効率P は213であった。第一の反応器中で得られたポリマーの第二の反応器中で得られたポリマーに対する重量比は45.6/54.4であった。得られたポリマーは以下の特性を有した。
MI5 =1.5
η =12,800
R B =1.49
ESCR=143
SD =955
【0034】
実施例5(本発明による)
この実施例においては、本発明による第二の製法を用い、本発明によるエチレンポリマーを調製した。
A.触媒固体の混合物の調製
A.1.チタンを含む第一の触媒固体の調製
マグネシウムジエトキシドを、チタンのマグネシウムに対するモル比が2に等しいような量のチタンテトラブトキシドと150℃において4時間反応させた。
次いで、このようにして得られた反応生成物を、Al/Mg のモル比が6.5に等しいような量のエチルアルミニウムジクロライドの溶液と45℃において90分間接触させることにより、塩素化及び沈殿させた。このようにして得られた固体は15.8重量%のTi、36.0重量%のCl、2.2重量%のAl及び4.4重量%のMgを含有した。
A.2.チタン及びジルコニウムを含む第二の触媒固体の調製
マグネシウムジエトキシドを、Ti/Mg のモル比が0.6に等しく、Zr/Ti のモル比が2に等しいような量のチタンテトラブトキシド及びジルコニウムテトラブトキシドと150℃において4時間反応させた。次いで、このようにして得られた反応生成物を、Al/Mg のモル比が14に等しいような量のイソブチルアルミニウムジクロライドの溶液と初めは45℃において、次いで60℃において接触させることにより、塩素化及び沈殿させた。このようにして得られた固体は5.4重量%のTi、16.3重量%のZr、52.6重量%のCl、2.4重量%のAl及び4.1重量%のMgを含有した。
A.3.混合物の調製
A.1で得られた固体を、第一の触媒固体から誘導されるチタンの第二の触媒固体から誘導されるチタンに対するモル比が1.5であるような量の割合でA.2で得られた固体と混合した。
【0035】
B.2つの反応器中におけるエチレンの重合
連続して配置されている2つの反応器を含むプラントでエチレンを重合した。
ヘキサン、助触媒としてのトリエチルアルミニウム、水素/エチレンのモル比が0.32のエチレン及び水素、及びA.3で得られた触媒固体の混合物を連続して第一の反応器に導入した。反応器中の全圧及び温度は、それぞれ3.2MPa 及び85℃において一定に保持した。第一の反応器の重合媒体を第一の反応器から連続して除去し、第二の反応器に移し、そこにエチレン、水素/エチレンのモル比が0.0185の水素、及びブテン/エチレンのモル比が0.35のブテンも供給した。反応器の全圧は3.0MPa であった。第二の反応器の温度は75℃であった。製造効率P は111であった。得られたポリマーは以下の特性を有した。
MI2 =0.32
η =15,300
R B =1.43
ESCR=109
SD =956.4
【0036】
実施例6(本発明による)
この実施例においては、本発明による第三の製法を用い、本発明によるエチレンポリマーを調製した。
A.触媒固体の調製
A.1.珪素テトラエトキシド及びエタノールの溶液に、10℃の温度において、pHが1となるように水及び1Mの塩酸の溶液を添加した。使用した量は、34.7gの珪素テトラエトキシド、41.7gのエタノール、18.9gの水及び11.5gの塩酸であった。次いで、このようにして得られた反応媒体を60℃において2時間熟成させた。
A.2.平行して、62.5gの硝酸アルミニウム水和物、17.1gの燐酸及び33.3gの水を含む水溶液を調製した。次いで、このようにして得られた溶液を、10℃において激しく攪拌しながらA.1で得られた反応媒体に添加した。
A.3.10℃にサーモスタット制御されたpHが8の水酸化アンモニウム水溶液500gに、ゲル化させるためにpHを8において一定に保持しながら、A.2で得られた混合物を添加した。60℃で攪拌しながら、ゲルを8のpHにおいて2時間熟成させた。
A.4.次いでゲルを水、次いでイソプロパノールを用いて洗浄し、ゲルの懸濁液を回収した。
【0037】
A.5.A.4で得られたゲルを粉末が得られるまで噴霧により乾燥させた。
A.6.A.5で得られた粉末を、500℃において4時間乾燥空気をフラッシさせた流動層で焼成した。15.6重量%のSi、15.1重量%のAl及び16.3重量%のP を含む粉末を回収した。
A.7.A.6で得られた支持体を、混合物が0.7重量%のクロムを含むような量のクロムアセチルアセトナートと混合した。次いで、このようにして得られた混合物を、乾燥空気流下150℃において2時間流動層で処理した。次いで、乾燥空気雰囲気下600℃において10時間流動層で焼成し、触媒固体を回収した。固体は以下の性質を有した。
比表面積 407m2/g
孔容積 2.20cm3/g
結晶化温度 700℃
【0038】
B.単一の反応器中におけるエチレンの重合
単一の反応器中でエチレンを重合した。イソブタン、水素/エチレンのモル比が0.046のエチレン及び水素、エチレン/ヘキサンのモル比が0.003のヘキサン、及びAで得られた触媒固体を連続して導入した。反応器内の全圧及び温度は、それぞれ3.8MPa 及び107℃において一定に保持した。得られたポリマーは以下の特性を有した。
MI5 =0.58
η =18,000
R B >1.5
ESCR=111
SD =955.8
【0039】
実施例7(本発明による)
この実施例においては、本発明による第四の製法を用い、本発明によるエチレンポリマーを調製した。
A.触媒固体の調製
乾燥空気雰囲気下815℃において16時間流動層で焼成した実施例6の触媒固体を使用した。
B.2つの反応器中におけるエチレンの重合
2つの連続した反応器中における重合方法は、圧力の中間開放及び作業パラメータの再開始により2つの別の工程における単一反応器中における重合にシミュレートさせた。
第一のポリマー(i)の重合:
108mgの触媒を、3リットルの攪拌器を具備するオートクレーブに導入する。重合温度を80℃にして、重合中一定に保持する。次いでそこにエチレンを導入する。エチレンの分圧を5.8バールにおいて一定に保持する。6.7gのヘキサンを導入した後、50gのPEが製造されるたびに0.67gのエチレンを導入する(一定のヘキサン/エチレン比を保持するために)。ヘキサン/エチレン比は0.11である。68分後、オートクレーブを6バールの圧力に脱気した。
162gのポリマー(i)が得られた。
【0040】
第二のポリマー(i)の重合:
1リットルのイソブタンをオートクレーブに添加した。重合温度を98℃にして、重合中一定に保持した。次いで、液相において水素/エチレンのモル比を0.22とするために水素を一度に導入した。次いで助触媒(トリエチルホウ素)を、トリエチルホウ素/クロムのモル比が3.8に等しくなるようにオートクレーブに導入した。162gのポリマー(ii)が得られるまでエチレンの分圧を3.5バールにおいて一定に保持した。脱気後、324gのポリマー(i)及びポリマー(ii)の混合物が回収された。触媒活性はそれぞれ、ブロック(i)及び(ii)において33,000及び93,000であった。活性は、ポリエチレンのg数/触媒のg数. 時間 [C2H4] で表される。粗砕後のポリマーの性質は以下のとおりである。
MI5 =0.49
η =14,000
R B =1.9
SD =954.4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Zr/Tiのモル比が2以上のチタン及びジルコニウムを含む触媒固体の存在下、及び助触媒の存在下において、連続した2つの反応器中でエチレンを任意に1種以上のコモノマーと重合させる、ブローアップ比(RB)が1.4以上で、応力下における耐ひび割れ性(ESCR)が55時間以上でかつメルトインデックス(MI5)が0.6g/10min以上であるエチレンポリマーの製法であって、第一の反応器にエチレン、水素、触媒固体、助触媒、及び任意にコモノマーを供給し、第一の反応器の反応媒体を第二の反応器に移し、第二の反応器にもエチレン、水素、及び任意にコモノマーを供給し、前記触媒固体が実質的に0.5乃至10重量%のチタン、5乃至40重量%のジルコニウム、20乃至80重量%のハロゲン、1乃至30重量%のマグネシウム、及び0.5乃至10重量%のアルミニウムからなる、エチレンポリマーの製法。
【請求項2】
g/10min で表されるメルトインデックス(MI5)、及びdPa sで表され、190℃において100s-1の速度勾配で測定される動的粘度ηが関係式:
[log(177470/MI5)-log η]/[2-log(2.53 ×MI5)] ≧ 0.55
に対応する、メルトインデックス(MI5)及び動的粘度ηを有するエチレンポリマーを製造する、請求項1記載のエチレンポリマーの製法。
【請求項3】
標準密度が952乃至958kg/m3であるエチレンポリマーを製造する、請求項1又は2記載のエチレンポリマーの製法。
【請求項4】
0.1乃至10重量%の、ブテン、ヘキセン及びそれらの混合物から選択されたコモノマーを含むエチレンポリマーを製造する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエチレンポリマーの製法。
【請求項5】
以下の工程:
第一工程において、液体錯体が得られるまで含酸素有機マグネシウム化合物を含酸素有機チタン化合物及び、適する場合には含酸素有機ジルコニウム化合物と反応させ;
第二工程において、触媒固体錯体として液体錯体を沈殿させるために、前記液体錯体を一般式AlRn3-n (式中、Rは炭化水素基であり、Xはハロゲンでありかつnは3未満である。)のハロゲン化有機アルミニウム化合物で処理すること
により、調製される触媒固体を使用する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエチレンポリマーの製法。
【請求項6】
単一の活性元素としてチタンを含む第一の触媒固体及び活性元素としてチタン及びジルコニウムを含む第二の触媒固体及び助触媒の存在下において、連続した2つの反応器中でエチレンを任意に1種以上のコモノマーと重合させる、ブローアップ比(RB)が1.4以上で、応力下における耐ひび割れ性(ESCR)が55時間以上でかつメルトインデックス(MI5)が0.2g/10min以上であるエチレンポリマーの製法であって、第一の反応器にエチレン、任意にコモノマー及び/又は水素、第一及び第二の触媒固体及び助触媒を供給し、第一の反応器の反応媒体を第二の反応器に移し、第二の反応器にもエチレン及び任意にコモノマー及び/又は水素を供給し、前記第一の触媒固体が実質的に10乃至30重量%のチタン、20乃至60重量%のハロゲン、0.5乃至20重量%のマグネシウム及び0.1乃至10重量%のアルミニウムからなり、かつ前記第二の触媒固体が実質的に0.5乃至10重量%のチタン、5乃至40重量%のジルコニウム、20乃至80重量%のハロゲン、1乃至30重量%のマグネシウム及び0.5乃至10重量%のアルミニウムからなり、該触媒固体が以下の工程:第一工程において、液体錯体が得られるまで含酸素有機マグネシウム化合物を含酸素有機チタン化合物及び、適する場合には含酸素有機ジルコニウム化合物と反応させ;第二工程において、触媒固体錯体として液体錯体を沈殿させるために、前記液体錯体を一般式AlRn3-n (式中、Rは炭化水素基であり、Xはハロゲンでありかつnは3未満である。)のハロゲン化有機アルミニウム化合物で処理することにより、調製された触媒固体である、エチレンポリマーの製法。
【請求項7】
g/10min で表されるメルトインデックス(MI5)、及びdPa sで表され、190℃において100s-1の速度勾配で測定される動的粘度ηが関係式:
[log(177470/MI5)-log η]/[2-log(2.53 ×MI5)] ≧ 0.55
に対応する、メルトインデックス(MI5)及び動的粘度ηを有するエチレンポリマーを製造する、請求項6記載のエチレンポリマーの製法。
【請求項8】
標準密度が952乃至958kg/m3であるエチレンポリマーを製造する、請求項6又は7記載のエチレンポリマーの製法。
【請求項9】
0.1乃至10重量%の、ブテン、ヘキセン及びそれらの混合物から選択されたコモノマーを含むエチレンポリマーを製造する、請求項6〜8のいずれか1項に記載のエチレンポリマーの製法。
【請求項10】
シリカ、アルミナ及びアルミニウムホスフェートから選択された2種以上の成分を含む支持体上にクロムを含む触媒固体、及び助触媒の存在下において、連続して配置されている2つの反応器中でエチレンを任意に1種以上のコモノマーと重合させる、ブローアップ比(RB)が1.4以上で、応力下における耐ひび割れ性(ESCR)が55時間以上でかつメルトインデックス(MI5)が0.2g/10min以上であるエチレンポリマーの製法であって、第一の反応器にエチレン、任意にコモノマー及び/又は水素、及び触媒固体を供給し、第一の反応器の反応媒体を第二の反応器に移し、第二の反応器にもエチレン及び任意にコモノマー及び/又は水素を供給し、助触媒が2つの反応器の少なくとも一方に存在し、前記触媒固体が0.05乃至10重量%のクロムを含み、かつ前記支持体がシリカ(X) 、アルミナ(Y) 及びアルミニウムホスフェート(Z) を(X) : (Y) : (Z) のモル百分率が(10乃至95):(1乃至80):(1乃至85)の割合で含む、エチレンポリマーの製法。
【請求項11】
g/10min で表されるメルトインデックス(MI5)、及びdPa sで表され、190℃において100s-1の速度勾配で測定される動的粘度ηが関係式:
[log(177470/MI5)-log η]/[2-log(2.53 ×MI5)] ≧ 0.55
に対応する、メルトインデックス(MI5)及び動的粘度ηを有するエチレンポリマーを製造する、請求項10記載のエチレンポリマーの製法。
【請求項12】
標準密度が952乃至958kg/m3であるエチレンポリマーを製造する、請求項10又は11記載のエチレンポリマーの製法。
【請求項13】
0.1乃至10重量%の、ブテン、ヘキセン及びそれらの混合物から選択されたコモノマーを含むエチレンポリマーを製造する、請求項10〜12のいずれか1項に記載のエチレンポリマーの製法。
【請求項14】
該支持体がSiO2-AlPO4及びAl2O3-AlPO4の二成分系並びにSiO2-Al2O3-AlPO4の三成分系支持体から選択される、請求項10〜13のいずれか1項に記載のエチレンポリマーの製法。
【請求項15】
前記助触媒がトリアルキルホウ素であり、該アルキル基が20個までの炭素原子を含む請求項10〜14のいずれか1項に記載の製法。

【公開番号】特開2008−50614(P2008−50614A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263448(P2007−263448)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【分割の表示】特願平8−106934の分割
【原出願日】平成8年4月26日(1996.4.26)
【出願人】(505455130)イネオス マニュファクチャリング ベルギウム ナームローゼ フェンノートシャップ (11)
【Fターム(参考)】