説明

エッチング装置

【課題】吸引管を有する真空エッチング装置において、吹き付けられたエッチング液が基板の走行方向に流れるため、基板のたてとよこのエッチングに差が生じる欠点を改良し、均一なエッチング特性を得ることのできるエッチング装置を提供する。
【解決手段】吸引管4の開口部7を部分的な開口とし、ノズルから基板上に吹き付けられたエッチング液がバイアス状の流れ10を形成する構造とした。これによってエッチング液は基板上を斜めの異なる方向にクロスして流れる流れ10となり、よこ方向の回路間の残銅を少なくし、エッチングのたて/よこ比の改良が達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸引管を有するエッチング装置に関し、スプレーから吹き付けられたエッチング液の吸引方向を改良することによって均一なエッチングを得るための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから吹き付けられたエッチング液を吸引するための吸引管を有するエッチング装置は、いわゆる「真空エッチング装置」として近年普及してきた。その技術の詳細は、特開2003−243811に開示されている。
【0003】
これによると、真空エッチング技術とは、エッチング液を基板1の銅箔上にスプレー・バー2に取り付けたスプレー3でスプレーすると同時に、スプレー・バーの前後にある吸引バー4で連結口5に連結したエジェクタでエッチング液を直ちに吸引し、液だまりのない状態でエッチング液を当てるため、基板全体にわたって均一なエッチングが可能である。エッチング液の循環によってベンチュリ・ノズル(エジエクタ)に負圧を生じさせ、これを吸引バーに接続することによりエッチング液を吸引するに十分な負圧を得る仕組みとなっている。
【0004】
吸引バー4はパイプにスリット状の開口6を設けたもので、このスリットからエッチング液が吸引される。スリット状の開口6は、図2Aに示したように、基板上に吹き付けられたエッチング液が均一な流れ9を形成するように設計され、このためエッチング液は基板の走行方向に対してほぼ平行に吸引される。なお、吸引バー4の開口6は実際には基板側にあるが、図2A、Bでは分かりやすくするため、反転して図示されている。
【0005】
この構造は、均一性を得るには優れた構造であるが、他方ではエッチングのたて/よこ比が強くなるという欠点があった。すなわち、液が基板の走行方向に流れるため、走行方向(たて)にある回路は強くエッチングされるのに対し、直角方向(よこ)にある回路はエッチングが遅れる。このため、直角方向にある回路の間にある「スペース」に銅箔が残存したり、たてとよこのエッチングに差が生じるという欠点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上記のように、従来の吸引装置におけるたてとよこのエッチング特性の差を小さくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、吸引装置の開口部7が従来のように均一に開口されているのではなく、図2Bに示すように、部分的に開口され、基板上に吹き付けられたエッチング液がバイアス状の流れ10を形成する構造となっている。このため、液は斜めの異なる方向に流れるため、結果として流れ方向がクロスし、たて/よこ比の小さなエッチングが可能となる。
【0008】
通常、ノズルから噴射される液はノズル位置で最も強く、ノズル位置から離れるにつれて弱くなる。とくに「フラット・タイプ」と呼ばれるノズルは、ノズル位置が最も強くなる。エッチングの強さを示すフット・プリント8は中央部で最も強くなる。したがって、吸引開口を隣接するノズル間のほぼ中央に配置すると、エッチング液の流れ10はバイアス方向となる。すなわち、ノズル位置と開口位置を交互に設けることにより、吹き付けられたエッチング液がバイアス方向に吸引される。
【0009】
吸引管4は円形パイプが好ましい。吸引開口は線状が好ましく、1列より2列が好ましい。円形パイプに吸引開口を2列設けたとき、開口部は基板に直接あたることがないためである。
【0010】
連結管5には負圧を生じる仕組み、すなわち真空ポンプ、エジェクタなどが連結される。エジェクタは循環ポンプに連結され、エッチング液が槽内に循環されるので、真空ポンプのようにミストの発生がなく、制御が容易なので好ましく使用できる。
【0011】
なお、通常、真空エッチングは基板上部の液だまりを解消するため使用されるが、基板下部にも表面張力によって多少の液だまりがあり、これを解消するため本発明の装置を下部にも取り付けることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエッチング装置では、従来の真空エッチング装置の欠点を改良し、エッチング液がバイアス方向に流れるので、エッチング強さのたて/よこ比が改良され、これによってよこ方向回路間に残る銅(残銅)が減少し、たてとよこでほぼ同じエッチング速度が得られるため、基板全体にわたって均一なエッチングが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
ノズルから吹き付けられたエッチング液を吸引するための吸引管4を有するエッチング装置において、吹き付けられたエッチング液がバイアス方向に吸引されるように吸引管の開口7を設ける。このため、ノズル位置と開口位置を交互に設ける。吸引管に接続するベンチュリ・ノズルで吸引管に負圧を生じ、これによってエッチング液を吸引する。
【実施例】
【0014】
ノズル角度45度、流量1L/min(0.2MPaにおいて)のノズルをピッチ50mmに取り付けたノズル・バーを8本設け、その前後に吸引管を設けてベンチュリ・ノズルに接続した。
【0015】
吸引管は幅0.5mm、長さ25mmのスリットを2列に平行して設け、隣接するスリットとの距離は25mmとした。この吸引管をノズル位置からずらして、ちょうどスリット位置がノズル位置の間にくるように配置した。
【0016】
ノズル圧力0.2MPa、吸引圧力0.3MPaで、塩化第二銅をベースとしてエッチング液でライン/スペース50/50(ミクロン)の基板をエッチングした。
【0017】
エッチング速度を調整することにより、回路間の残銅はなくなり、回路のたて、よこに均一なエッチングが可能であった。たて/よこのトップ幅はいずれも平均で40ミクロンであった。
【0018】
これに対して、幅0.5mm、長さ25mmのスリットを、3mmの平行部分を除いて重ならないように配置した従来構造では、よこ方向の残銅が取れにくく、すべての残銅をとったときたて/よこのトップ幅は38/25(ミクロン)であった。
【産業上の利用可能性】
【0019】
たて/よこ比の小さなエッチングが可能なので、この技術はファイン・パターンを含む精密基板に応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】真空エッチングの一般的な形態
【図2】A:従来の吸引構造と液の流れ、B:本発明の吸引構造と液の流れ
【符号の説明】
【0021】
1:基板
2:ノズル・バー
3:ノズル
4:吸引管
5:連結管
6:従来の開口
7:本発明の開口
8:フラット・ノズルのフット・プリント
9:従来の液の流れ
10:本発明の液の流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから吹き付けられたエッチング液を吸引するための吸引管を有するエッチング装置において、吹き付けられたエッチング液がバイアス方向に吸引されるように吸引管の開口を設けたエッチング装置。
【請求項2】
吸引管に接続するベンチュリ・ノズルで吸引管に負圧を生じ、これによってエッチング液を吸引する、請求項1のエッチング装置。
【請求項3】
ノズル位置と開口位置を交互に設けることにより、吹き付けられたエッチング液がバイアス方向に吸引される、請求項1のエッチング装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−263761(P2009−263761A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145104(P2008−145104)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(598163178)有限会社カレンテック (2)
【Fターム(参考)】