説明

エナメル被覆物、被覆された物品、および物品の被覆方法

本発明は特に、物品(3)の金属表面(5)を被覆するためのエナメル被覆物(7)に関する。さらなる被覆物層(8)を適切に結合するために必要とされる機械的結合相互作用のために適した表面粗さを得るために、エナメル被覆物(7)は、触媒エナメルと、通常のエナメルおよび熱分解エナメルの少なくとも1つとの混合物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エナメル被覆物、被覆された物品および物品の被覆方法に関する。
【0002】
金属表面上に被覆層を提供することは、調理またはベーキング器具、例えば調理またはベーキングトレイまたはベーキングオーブンのマッフルの分野において公知である。とりわけ、かかる被覆物は、特に調理およびベーキング器具の分野においては、耐性があり且つ洗浄し易い表面を提供することを目的としている。上述の被覆層は通常、それぞれの表面と使用される被覆材料との間の機械的結合相互作用を必要とする技術によって適用される。例えば溶射技術によって適用されるセラミック被覆物は、化学的な結合を確立するのではなく、それぞれの表面に機械的に結合される。
【0003】
被覆される表面と被覆材料との間の充分な機械的結合を強化または可能にするためには、被覆される表面が充分に粗いことが必要とされる。適切な機械的結合相互作用を確立するために充分に粗い表面を得るために、特に金属表面被覆の場合、しばしば、それぞれの表面を追加的に粗くすることが必要とされる。
【0004】
追加的に表面を粗くするための機械的な処理技術、例えばサンドブラストまたはグリットブラストが公知である。特に、かかる機械的処理技術を、薄く且つ機械的に不安定な物品、例えば薄い金属シートに適用する場合、該物品を変形し、または損傷さえする危険がある。
【0005】
さらには、化学物質を適用することによって、例えばエッチングまたはリン酸処理のための薬浴中に物品を投じることによって、表面を粗くすることが公知である。しかしながら、かかる化学物質は、可能性のある化学残留物を除去するために、徹底的な引き続きの洗浄を必要とすることがある。
【0006】
本発明の課題は、保護、または洗浄し易い被覆物または被覆材料との適切な機械的結合相互作用を確立するために必要とされる表面粗さを有する表面を得るための代替的な方法を提供することである。さらには、とりわけかかる表面を有する物品、およびとりわけかかる表面を得るための方法が提供される。
【0007】
本発明の課題は、請求項1、5および9によって解決される。有利な実施態様は相応する従属請求項から得られる。
【0008】
本発明の第一の態様において、物品の金属表面を被覆するためのエナメル被覆物が提供される。該エナメル被覆物は、触媒エナメルと、通常のエナメルおよび熱分解エナメルの少なくとも1つとの混合物を含む。
【0009】
本発明の範囲内で、「触媒エナメル」の用語は、もっぱら金属表面に適用される場合に触媒作用を生じることができる全ての種類のエナメルを含むものとする。「熱分解エナメル」の用語は、もっぱら金属表面に適用される場合に熱分解作用を生じることができる全ての種類のエナメルを含むものとする。「通常のエナメル」の用語は、上述の定義による触媒エナメルおよび熱分解エナメルを除く全ての種類のエナメルを含むものとする。熱分解エナメルおよび触媒エナメルは、調理器具および/またはベーキング器具、特にベーキング器具のベーキングマッフルと共に使用されることに留意。熱分解エナメルまたは触媒エナメル層を有する器具は、蒸気、ベーキングまたは調理残留物から生じる汚れを、例えば、熱分解作用または触媒作用を利用した自己洗浄工程を介して、除去することができる。
【0010】
一般に、もっぱら通常のエナメルまたは熱分解エナメルの層は、非常に平坦且つガラス質の表面を示す。かかる平坦且つガラス質の表面は一般に、さらなる被覆材料、例えばセラミック被覆物を適用するために適しておらず、それが機械的結合相互作用を介して表面にしっかりと結合するためには、より大きな表面粗さを必要とする。触媒エナメルは、触媒プロセスが起きるために必要とされる非常に大きな比表面積を有する極めて粗い表面を有する。しかしながらこれは、対極では、触媒エナメル層を、自己洗浄または洗浄し易い被覆層のいずれかのための基材として使用することを妨げる。
【0011】
本発明によれば、触媒エナメルと、通常のエナメルおよび熱分解エナメルの少なくとも1つとの混合物を含むエナメル被覆物が提供される。かかるエナメル被覆物は、通常のエナメルまたは熱分解エナメルと、触媒エナメルとの間の表面粗さを有する。そのように得られる表面粗さは、様々な追加的な被覆物、特にセラミック被覆物のために必要とされる、適切な機械的結合相互作用を確立するために適している。
【0012】
物品に及ぼされる機械的衝撃の観点から、エナメル被覆物を適用することは、機械的に粗くする技術、例えばサンドブラストまたはグリッドブラストと比較して、非常に穏やかな方法である。これは、薄く且つ機械的に不安定な物品、例えば薄い金属板またはシートで特に有利であり、なぜなら、物品を変形する危険なく粗い表面を生成することが可能だからである。さらには、薬浴、例えばリン酸処理またはエッチングを使用する、粗くする技術に伴って観察される欠点を避けることができる。
【0013】
エナメル被覆物の最終的な表面粗さを、触媒エナメルと、通常のエナメルおよび熱分解エナメルの少なくとも1つとのパーセンテージを変化させることによって、容易に調節でき、且つそれぞれの要求に適合できる。様々な追加的な被覆物は、2〜8μmの範囲の表面粗さを必要とし、それは第一の態様によるエナメル被覆物を使用して達成できる。触媒エナメル、通常のエナメルおよび熱分解エナメルのパーセンテージを適切に選択することによって、表面粗さを、特定のセラミック被覆物に適した2〜5μmに、且つ、特定のナノ構造化セラミック被覆物に特に適した2〜3μmに、調整できる。表面粗さが平均粗さ指数(Ra)によって示されることに留意。
【0014】
セラミック被覆物を結合するために適する範囲を包含する2〜8μmの範囲の表面粗さを、例えば、5〜50容積パーセントの触媒エナメルの少なくとも1つと、50〜95容積%の通常エナメルおよび熱分解エナメルの少なくとも1つとの混合物を含むエナメル被覆物を使用することによって得ることができる。
【0015】
特に金属表面上の、10〜50μmの範囲のエナメル被覆物の比較的薄い層が、所望の範囲の表面粗さを達成するために充分であろう。
【0016】
本発明の第二の態様は、物品に関する。該物品は、本発明の第一の態様によるエナメル被覆物を用いて少なくとも部分的に被覆された金属表面を有する。提案されたエナメル被覆物を提供することによって、追加的な被覆物を機械的に結合するために必要とされる表面粗さを、比較的簡単な方法で、物品の機械的な破壊を防いで、提供できる。さらには、表面粗さをそれぞれの要請に容易に適合できる。これは、エナメル被覆された物品が、例えば洗浄し易い表面を提供する、追加的な被覆物、例えばセラミック被覆物で被覆される場合に特に有利である。さらなる利点については、本発明の第一の態様に関して議論した詳細が参照される。
【0017】
該物品の金属表面はシートの一部であってよく、即ち、該物品はシート状の形状を有するか、または基本的に金属シート状のデザイン、または物品のシート状の部品であってよい。既に述べられた通り、所望の表面粗さを生成するためにエナメル被覆物を物品に適用した場合、機械的衝撃および関連する変形および破壊が大幅に避けられる。従って、2mmまたはそれ未満の厚さを有する金属シートおよび金属シート状部品を使用することが可能である。これは、全体的な形状、特に物品の全体的な表面形状が破壊されないことを意味し、そのことは、厳密な製造公差が遵守されなければならない場合、または物品の外観が非常に重要である場合、特に重要である。
【0018】
エナメル被覆された物品またはエナメル被覆されている物品の少なくとも一部を、機械的な結合相互作用を必要とするさらなるまたは追加的な被覆物で被覆できる。エナメル被覆物が機械的な結合のために充分な表面粗さを保証するので、追加的な被覆物を、エナメル被覆物にしっかりと且つ確実に結合できる。追加的な被覆物は、洗浄し易い、または自己洗浄表面を提供できる。かかる表面は、セラミック被覆物またはナノ構造化セラミック被覆物を使用することによって得られる。「ナノ構造化」の用語は、セラミック被覆物が、ナノスケールの範囲の構造、好ましくは表面構造を有することを意味するものとする。ナノ構造化された表面は、自己洗浄作用(shelf cleaning effect)の文脈において公知である。セラミック被覆物の他に、機械的な結合を必要とする任意の追加的な被覆物またはナノ構造化被覆物を同様に適用できる。
【0019】
予め規定された表面粗さを生成するための、提案された方法は普遍的である。それは、原理的に様々な物品に適用できる。特に、該物品は、それぞれ家庭または産業用途のために適した、調理器具および/またはベーキング器具、またはベーキングトレイであってよい。特に、該物品は、例えば家庭または産業用途のための、ベーキングオーブンのマッフルであってよい。マッフルの場合、該被覆物をマッフルの内壁に適用できる。特に、上述の物品に関して、および特に使用後の物品の洗浄を容易にすることに関連して、洗浄し易い、または自己洗浄表面を提供することにますます興味がもたれている。本発明は、かかる表面を、薄い壁の物品および減少された機械的硬度を有する物品についてさえも、量産のために開かれた比較的簡単な方法で製造するための基礎を提供する。
【0020】
本発明の第三の態様によれば、物品の金属表面を少なくとも部分的に被覆する方法が提供される。提案される方法は、以下の段階:
・ 触媒エナメルと、通常のエナメルおよび熱分解エナメルの少なくとも1つとを混合することによってエナメル被覆物材料を調製する段階; および
・ 金属表面の少なくとも予め規定された部分に、該エナメル被覆物材料を適用することによってエナメル被覆物を製造する段階
を含む。
【0021】
本方法は、追加的な被覆物材料、例えばセラミック被覆物材料を機械的に結合するための粗さを有する表面を生成する可能性を提供する。有利にも、技術水準の粗くする方法、例えばサンドブラストまたはグリッドブラストで生じる、物品上の機械的衝撃を避けることができる。さらには、リン酸処理またはエッチングに使用される薬浴を回避できる。提案された方法は普遍的であり、且つ、大規模な工業生産が可能である。追加的な利点は、本発明の第一および第二の態様と関連して示される詳細からすぐに明らかである。
【0022】
本発明の第一および第二の態様による提案に従って、それぞれの利点および有利な効果を参照して、本方法の実施態様は以下の通りである:
エナメル被覆材料を調製するための段階は、5〜50容積パーセントの触媒エナメルの少なくとも1つと、50〜95容積パーセントの通常のエナメルおよび熱分解エナメルの少なくとも1つとを添加する段階を含むことができる。
【0023】
さらには、触媒エナメルと、通常のエナメルおよび熱分解エナメルの少なくとも1つとのパーセンテージを、エナメル被覆物の最終的な表面粗さが2〜8μm、好ましくは2〜5μm、好ましくは2〜3μmの範囲であるように選択できる。
【0024】
エナメル被覆物材料を、エナメル被覆物の得られる膜厚が10〜50μmであるように適用できる。
【0025】
エナメル被覆物の加工において、金属表面に適用されたエナメル被覆物を850℃までの温度で焼成できる。特に、800〜850℃の焼成温度を使用する技術水準の加工を、少なくとも提案されたエナメル被覆物材料の焼成のために使用できる。従って、提案された方法を公知の焼成およびエナメル被覆方法を用いて、特定の適合を強いることなく、容易に実施できる。しかしながら、とりわけ、エナメル被覆物材料の特性に依存して、いくらかの程度の適合がまだ必要であることがある。
【0026】
本方法のさらなる段階において、セラミック被覆物、好ましくはナノ構造化セラミック被覆物を、エナメル被覆物に、好ましくはその焼成後に適用できる。そのように適用されたセラミック被覆物またはナノ構造化セラミック被覆物を、200〜300℃の範囲の温度で焼成できる。セラミック被覆物を溶射、プラズマ溶射、高速酸素燃料(HVOF)溶射、または他の適した技術によって適用できる。追加的な被覆物は、セラミック材料に限定されないことに留意。他の材料を、それぞれの必要性に従って選択できる。例えば、洗浄しやすく、硬質で、引っ掻き耐性のある表面および を提供するための任意の適切な材料が考えられる。さらには、スラリー噴霧技術を使用してナノ構造化被覆物を適用することも可能である。この場合、被覆物を、好ましくは湿式で、被覆物材料の懸濁液を噴霧によって適用して、適用できる。この場合、焼成または焼結を180℃〜340℃の温度範囲で行ってよい。
【0027】
本発明の実施態様を、以下の図面を参照しながら説明する;
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は家庭用ベーキングオーブンの部品を示す。
【図2】図2は、図1のベーキングオーブンのマッフル壁の拡大された部分の断面図を示す。
【0029】
図1は家庭用ベーキングオーブンの部品1を示す。ベーキングオーブンの詳細、例えばオーブンのドアおよび手動操作部品、およびその種のものは、本発明の完全な理解のために必ずしも必要ではなく、省略されている。しかしながら、これは本発明の範囲を制限しないものとする。
【0030】
部品1は、ベーキングオーブンのマッフル3を取り囲むハウジング2を含む。マッフル3は、全面の開口部4を介して、ベークまたはローストされる食品を受け容れるための空洞部を構成する。一般に、側面、底面、上面および背面のマッフル壁の内部表面5は、食品のベークまたはローストの間に、蒸気、液体の跳ね、食品残留物、およびその種のもののために汚れてくる。
【0031】
ベーク工程の間に優勢である比較的高い温度は、マッフル3の内部表面5に固着する頑固な汚れをみちびく。従って、内部表面5の洗浄は厄介であり、マッフル3の内部表面5が一般にアクセス困難であればいっそう厄介である。従って、洗浄しやすく、汚れ耐性のある内部表面5、またはさらには自己洗浄特性を有する表面を提供することが望ましい。
【0032】
マッフル壁を、例えば適切な材料で被覆することによって、かかる表面を得ることができる。1つの可能性は、セラミックまたはナノ構造化セラミック被覆物を提供することである。かかる被覆物は、とりわけ、機械的結合相互作用を介して基材と結合される。安定で、しっかりした、且つ恒久的な結合を確立するために、基材表面は、基材表面と被覆物材料との間の機械的相互作用を適切に確立するために充分に粗くなければならない。
【0033】
ベーキングオーブンのマッフル3は一般に、薄い金属シートから製造される。使用される金属シートの表面粗さは一般に、適当な機械的相互作用を確立するために適切ではない。従って、サンドブラスト、グリッドブラスト、リン酸処理またはエッチングによって金属シート表面を粗くすることが公知である。しかしながら、公知の技術は、上記でより詳細に既に議論された通り、いくつかの欠点を有している。
【0034】
本発明の1つの目標は、公知の技術の代替を提供することである。本発明によれば、適切な機械的結合のために適した基材を、以下により詳細に記載される特定のエナメルの混合物を使用することによって製造できる。
【0035】
図2は、マッフル3の金属シートマッフル壁6の拡大された部分の断面図を示す。図2は、スケールについては正確ではないことに留意。内部表面5は、エナメル被覆物7で被覆されている。また、エナメル被覆物7は、セラミック被覆物8、好ましくはナノ構造化セラミック被覆物で被覆されている。
【0036】
エナメル被覆物7は、触媒エナメルと通常のエナメルとの混合物を含む。通常のエナメルの代わりに、または通常のエナメルに加えて、熱分解エナメルを使用できる。当該の場合、触媒エナメルと通常のエナメルとのパーセンテージは、エナメル被覆物7の表面粗さが2〜5μmの範囲であるように選択される。かかる表面粗さは、セラミック被覆物8への適切な機械的結合を確立するために優れた下地である。
【0037】
エナメル被覆物7の表面粗さは、2種類のエナメルの混合の結果である。単独で適用された場合、通常のエナメル、および同様に熱分解エナメルは、一般に、非常に平滑で、ガラス質の表面をみちびき、それは、セラミック被覆物8への適切な機械的結合を確立するために充分に粗くはない。しかしながら、触媒エナメルは、単独で適用された場合、非常に大きな比表面を有する極めて粗い表面をみちびき、適切な機械的結合を確立するために同じく適していない。本発明者は、触媒エナメルと通常のエナメルとの両方、および場合によっては熱分解エナメルを含む混合物が、通常のエナメルまたは熱分解エナメルよりも高く、且つ触媒エナメルよりも低い表面粗さをみちびくことを認識した。さらには、エナメル被覆物7の全体的な表面粗さを、触媒エナメルおよび通常のエナメル、および場合によっては熱分解エナメルのパーセンテージを変化させることによって調節できることに気付いた。これは、エナメル被覆物7の表面粗さを、セラミック被覆物8の結合特性に容易に適合させることができるので、特に有利である。
【0038】
2種類のエナメルのパーセンテージを変化させることによって、表面粗さを例えば2〜8μmの範囲で調節できる。特定のナノ構造化セラミック被覆物については、2〜3μmの表面粗さが必要とされ、それは種々のエナメルの種類のそれぞれのパーセンテージをしかるべく選択することによって得ることができる。例えば、触媒エナメルのパーセンテージは、5〜50容積パーセントの範囲であってよい。従って、通常のエナメル、および場合によっては熱分解エナメルのパーセンテージは、50〜95容積パーセントの範囲であってよい。
【0039】
エナメル被覆物7を、標準的な技術を使用してマッフル壁6に適用し、そして、800〜850℃の範囲の温度で焼成できるが、しかしより低い温度でも焼成できる。エナメル被覆物7を、得られる膜厚が10〜50μmの範囲であるように適用できる。かかるエナメル被覆物7は一般に、セラミック被覆物8を結合するために充分である。エナメル被覆物7の厚さに適する他の範囲が可能である。エナメル被覆物7に適用される被覆材料の種類、硬度、および他の基準に起因し得るそれぞれの必要性に従う層厚を選択することが可能である。
【0040】
セラミック被覆物8、または場合によってはナノ構造化セラミック被覆物を、適切な技術、例えば溶射、プラズマ溶射、高速酸素燃料(HVOF)溶射およびその他によって、エナメル被覆物7に適用できる。セラミック被覆物の焼成を、200〜300℃の範囲の温度で行うことができる。さらには、スラリー噴霧技術を使用してナノ構造化被覆物を適用することが可能である。この場合、被覆物を、好ましくは湿式で、被覆物材料の懸濁液を噴霧によって適用して、適用できる。この場合、焼成または焼結を180℃〜340℃の温度範囲で行ってよい。
【0041】
本発明は家庭用ベーキングオーブンのマッフル3に関連して記載されたが、本発明はその種の調理器具に限定されない。むしろ、本発明を、機械的結合相互作用を必要とする被覆物と共に提供される全ての物品に適用できる。例えば、本発明によるエナメル被覆物を適用するために適した表面を有する、全種の調理またはベーキング器具または家庭用品、調理道具およびその種のものが想定され得る。
【0042】
上記の議論及び説明から、本発明の課題が、特許請求の範囲内に述べられる発明によって解決されることが明らかとなる。
【符号の説明】
【0043】
1 ベーキングオーブンの部品
2 ハウジング
3 マッフル
4 前面の開口部
5 内部表面
6 マッフル壁
7 エナメル被覆物
8 セラミック被覆物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品(3)の金属表面(5)を被覆するためのエナメル被覆物(7)であって、該エナメル被覆物(7)が、触媒エナメルと、通常のエナメルおよび熱分解法エナメルの少なくとも1つとの混合物を含む、エナメル被覆物(7)。
【請求項2】
触媒エナメルと、通常のエナメルおよび熱分解エナメルの少なくとも1つとのパーセンテージが、エナメル被覆物(7)の表面粗さが2〜8μm、好ましくは2〜5μm、好ましくは2〜3μmの範囲であるように選択される、請求項1に記載のエナメル被覆物(7)。
【請求項3】
混合物が、5〜50容積パーセントの触媒エナメルの少なくとも1つと、50〜95容積%の通常のエナメルまたは熱分解法エナメルの少なくとも1つとを含む、請求項1または2のいずれか1項に記載のエナメル被覆物(7)。
【請求項4】
10〜50μmの層厚を有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載のエナメル被覆物(7)。
【請求項5】
金属表面(5)を含む物品(3)であって、該金属表面(5)が請求項1から4までのいずれか1項に記載のエナメル被覆物(7)で少なくとも部分的に被覆されている、物品(3)。
【請求項6】
金属表面(5)が、物品(3)のシートの一部またはシート状部品(6)の一部であり、該金属シートおよび金属シート状部品(6)がそれぞれ、好ましくは最大厚さ2mmを有する、請求項5に記載の物品(3)。
【請求項7】
エナメル被覆物(7)の外表面が、さらなる被覆物、好ましくはセラミック被覆物(8)、好ましくはナノ構造化セラミック被覆物で被覆される、請求項5および6のいずれか1項に記載の物品(3)。
【請求項8】
物品(3)が、調理器具および/またはベーキング器具、好ましくは家庭用調理器具および/またはベーキング器具、ベーキングトレイ、ベーキングオーブンのマッフル、好ましくは家庭用ベーキングオーブンのマッフルを含む群から選択される、請求項5から7までのいずれか1項に記載の物品(3)。
【請求項9】
物品(3)の金属表面(5)を少なくとも部分的に被覆する方法であって、以下の段階
・ 触媒エナメルと、通常エナメルおよび熱分解エナメルの少なくとも1つとを混合することによってエナメル被覆物材料を調製する段階; および
・ 該エナメル被覆物材料を、金属表面(5)の少なくとも予め規定された部分(6)に適用することによって、エナメル被覆物(7)を製造する段階
を含む方法。
【請求項10】
エナメル被覆材料を調製する段階が、5〜50容積パーセントの触媒エナメルの少なくとも1つと、50〜95容積パーセントの通常のエナメルおよび熱分解エナメルの少なくとも1つとを添加する段階を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
触媒エナメルと、通常のエナメルおよび熱分解エナメルの少なくとも1つとのパーセンテージを、エナメル被覆物(7)の表面粗さが2〜8μm、好ましくは2〜5μm、好ましくは2〜3μmの範囲であるように選択する、請求項9または10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
エナメル被覆物材料を、得られるエナメル被覆物(7)の厚さが10〜50μmの範囲であるように適用する、請求項9から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
エナメル被覆物(7)を、850℃までの温度、好ましくは800〜850℃の範囲の温度で焼成する、請求9から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
セラミック被覆物(8)、好ましくはナノ構造化セラミック被覆物を、エナメル被覆物(7)に適用し、該セラミック被覆物(8)を好ましくは200〜300℃の範囲の温度で焼成するさらなる段階を含み、セラミック被覆物(8)を適用する段階が、好ましくは溶射、特にプラズマ溶射、および高速酸素燃料溶射を含む群から選択される、請求項9から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
セラミック被覆物(8)、好ましくはナノ構造化セラミック被覆物を、エナメル被覆物(7)に適用し、該セラミック被覆物(8)を好ましくは180〜340℃の範囲の温度で焼成するさらなる段階を含み、該セラミック被覆物(8)はスラリー噴霧技術によって適用される、請求項9から13までのいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−519771(P2012−519771A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552353(P2011−552353)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001240
【国際公開番号】WO2010/099912
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(511141799)エレクトロラクス ホーム プロダクツ コーポレーション エヌ ヴィ (6)
【氏名又は名称原語表記】Electrolux Home Products Corporation N.V.
【住所又は居所原語表記】Raketstraat 40, B−1130 Brussel, Belgium
【Fターム(参考)】