説明

エナンチオピュアな中間体の酵素合成

本発明は、価値のある薬学的に活性な化合物、たとえばMAOBインヒビターの合成に有用なエナンチオピュアな中間体の製造方法、ならびに式(I)および(II)の新規な中間体(式中、R21、R22、R23およびR24は、明細書および請求項に定義の通りである)に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、価値のある薬学的に活性な化合物の合成に有用なエナンチオピュアな中間体の製造方法、および新規な中間体に関するものである。
【0002】
さらに詳しくは、本発明は式I:
【0003】
【化6】

【0004】
(式中、R21、R22およびR23は、互いに独立に、水素またはハロゲンであり、
24は、水素、メチル、またはハロゲンである)の化合物および/または式II:
【0005】
【化7】

【0006】
[式中、R1は、C1〜C8アルキル、C2〜C4アルケニル、または式A:
【0007】
【化8】

【0008】
(式中、R3は、水素またはC1〜C4アルキルであり、nは、1、2、または3である)の基であり、
21、R22、R23およびR24は、前記定義の意味を有する]の化合物の製造方法であって、
式III:
【0009】
【化9】

【0010】
(式中、R1、R21、R22、R23およびR24は、前記定義の意味を有する)の化合物を、酵母に由来するコレステラーゼと接触させる工程を含む製造方法を提供する。
【0011】
本明細書で示す構造式中、くさび形の結合:
【0012】
【化10】

【0013】
は、置換基が紙の面より上であることを意味する。
【0014】
本明細書で示す構造式中、点線の結合:
【0015】
【化11】

【0016】
は、置換基が紙の面より下であることを意味する。
【0017】
本明細書で用いる用語「アルキル」は、1〜8個の炭素原子を含有する直鎖状または分岐状の炭化水素残基、たとえばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルを意味し、これらの種々の異性体を含む。好ましくは、用語「アルキル」は、非置換であっても、1個以上の置換基で置換されていてもよい1〜5個の炭素原子を含有する直鎖状または分岐状炭化水素残基を意味する。置換基の例は、ヒドロキシ、C1〜C4アルコキシ、C3〜C6シクロアルキル、アリール、およびハロゲン原子を含む。置換アルキルの例は、3−ヒドロキシブチル、4−メトキシブチル、3−エトキシプロピル、3−シクロヘキシルプロピル、ベンジル、2−フェニルエチル、2−フルオロエチル、2−クロロエチル、2,2−ジクロロエチル、3−ブロモプロピル、または2,2,2−トリフルオロエチルなどを含む。アルケニルの例は、ビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、およびブテニルの異性体、たとえば1−または2−ブテニルを含む。シクロアルキルの例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルを含む。
【0018】
ハロゲンの例は、フッ素、塩素および臭素を含む。
【0019】
コレステラーゼ(EC 3.1.1.13)は、幅の広い特異性の酵素のグループであり、コレステロールエステラーゼ;コレステリルエステルシンターゼ;トリテルペノールエステラーゼ;コレステリルエステラーゼ;コレステリルエステルヒドロラーゼ;ステロールエステルヒドロラーゼ、またはコレステロールエステルヒドロラーゼとも呼ばれる。これは、エステラーゼ、プロテアーゼ、およびリパーゼも含むヒドロラーゼのグループに属する。
【0020】
酵母に由来するコレステラーゼの例は、カンジダ(Candida)属から、たとえばカンジダシリンドラシア(Candida cylindracea)に由来するコレステラーゼを含む。たとえば、コレステラーゼは、カンジダシリンドラシアから得られる市販Lipase MY(Meito Sangyo, Japan)から精製することにより得ることができる。精製は不完全でよい。酵母に由来する市販コレステラーゼの例は、Roche Applied Science, Industrial Products, Enzyme Projects, Sandhofer Str. 116, D-68305 Mannheim, Germany, オーダー番号、たとえば10129046103(固体剤)、0393916、または039800(液体剤)により販売されているカンジダシリンドラシアからのコレステラーゼである。
【0021】
したがって1態様では、本発明は、酵母に由来するコレステラーゼが、カンジダシリンドラシアのコレステラーゼである方法を提供する。
【0022】
酵母に由来するコレステラーゼは、可溶性の形態または固定化した形態で用いることができる。酵素を固定する方法の種々の選択は、当業者に公知である。
【0023】
酵素反応は、水中または水−有機系中で行うことができる。
【0024】
基質、すなわち式IIIの化合物は、たとえば懸濁液として適用することができる。濃度は、0.5〜20%の総濃度(w/w)の範囲、または2〜10%の範囲とすることができる。式IIIの化合物は、イタコン酸と、場合により置換されたアミノフェノールとから公知方法により製造することができる。
【0025】
1態様では、本発明は、式III中、R21、R22、R23およびR24が、互いに独立に、水素またはフッ素である方法を提供する。別の態様では、本発明は式III中、R21、R22、R23およびR24が、水素である方法を提供する。別の態様では、本発明は、式III中、R1がメチルまたはエチルである方法を提供する。
【0026】
1態様では、本発明は、(RS)−1−(4−ヒドロキシルフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸エステルを、酵母に由来するコレステラーゼと接触させる工程を含む、(S)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸および(R)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸エステルの製造方法を提供する。
【0027】
生化学的転化のために用いる公知の一般的な緩衝剤溶液、たとえばリン酸緩衝液または酢酸緩衝液などを用いることができる。緩衝剤濃度は、1Mまでの範囲、または約3〜250mMの範囲とすることができる。
【0028】
酵素反応は、有機補助溶剤の存在下で行うことができる。有機補助溶剤は、水混和性または水不混和性の補助溶剤とすることができる。水混和性の有機補助溶剤が存在する場合、その総濃度は30%までまたは25%までとすることができる。水不混和性の有機補助溶剤は、任意の比の総濃度で用いることができる。
【0029】
有機補助溶剤の例は、技術的に一般的な溶剤、たとえばエーテル(たとえばテトラヒドロフラン、ジオキサン、またはt−ブチルメチルエーテル(TBME))、低級アルコール(たとえばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール)、エステル(たとえば酢酸エチル)、極性非プロトン性溶剤(たとえばジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、またはアセトン)、およびアルカン(たとえばヘプタン)、またはシクロアルカン(たとえばシクロヘキサンまたはメチルシクロヘキサン)を含む。
【0030】
したがって、1態様では、本発明は、水不混和性補助溶剤、たとえば、TBME、ヘプタン、シクロヘキサンおよびメチルシクロヘキサンから選択される有機補助溶剤の存在下で酵素反応を行う方法を提供する。別の態様では、本発明は、シクロヘキサンまたはメチルシクロヘキサンの存在下で酵素反応を行う方法を提供する。
【0031】
酵素反応は水溶性の添加剤の存在下、たとえば塩、ポリオール、ポリエチレングリコール、またはこれらの誘導体の存在下で行うことができる。これらの添加剤は、酵素に活性化、選択性誘発、または安定化の効果を及ぼすことができる。
【0032】
塩の例は、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムを含むが、他の添加剤、たとえばLiSCN、Na2SO4、およびMg2SO4も含む。特に水性緩衝液は、公知の酵素活性化剤であるマグネシウムイオンを含有することができる。塩は、1Mまでの範囲、または0.5Mまでの範囲の濃度で存在することができる。
【0033】
したがって、1態様では、本発明は、マグネシウム塩の存在下で酵素反応を行う方法を提供する。
【0034】
ポリオールの例は、グリセロールおよび糖を含む。ポリオールは、水相の40%(w/w)までの濃度で存在することができる。
【0035】
ポリエチレングリコール(PEG)は、場合によりモノ−またはジメチルエーテルとして、50%(w/v)までの範囲、あるいは5%〜25%の範囲の濃度で用いることができる。たとえば、4〜6kDの範囲のPEGを、場合によりモノ−またはジメチルエーテルとして、用いることができる。
【0036】
酵素の添加後、反応混合物のpHを、選択したpH値、たとえば酵素反応が起こりうるpH3.5〜10.0の範囲のpHに、またはpH4.0〜8.0の範囲のpHに、またはpH5.5〜7.0の範囲のpHに維持することができる。一定のpH値は、当業者に公知の方法により、たとえば塩基、たとえば水酸化ナトリウムもしくはカリウムまたは重炭酸ナトリウムもしくはカリウムの水溶液の制御された添加、あるいは十分な緩衝能を有する緩衝液の選択により維持される。
【0037】
酵素反応は、4〜45℃の範囲の温度で、または15〜35℃の範囲の温度で、または26〜32℃の範囲の温度で行うことができる。
【0038】
反応の停止後、式Iの化合物および式IIの化合物を、抽出により分離することができる。
【0039】
たとえば、式IIの化合物は、反応混合物を適切な有機溶剤、たとえばジクロロメタンで抽出することにより、従来どおりに精製することができる。この溶液を濃縮すると、式IIの化合物を結晶させることができ、これによりその光学純度を容易に高くすることができる。
【0040】
水相中に残存する式Iの対掌化合物は、次に水相を低いpH値で抽出することにより単離することができる。これは通常、保持された水相を酸性化し形成された沈殿をろ別するか、または適切な有機溶剤、たとえば酢酸エチルで抽出することにより達成することができる。この溶液を濃縮すると、式Iの化合物を結晶させることができ、これによりその光学純度を高くすることができる。
【0041】
したがって、1態様では、本発明は、
(a)式IIIの化合物を、酵母に由来するコレステラーゼと接触させる工程、および
(b)得られた式Iの化合物および得られた式IIの化合物を、別々のpHで抽出することにより分離する工程
を含む、式Iの化合物および/または式IIの化合物の製造方法を提供する。
【0042】
水溶性の添加剤が式Iの化合物または式IIとともに同時抽出される場合、それぞれの反応生成物を添加剤から分離するために、さらなる抽出工程が必要であるかもしれない。あるいはまた、吸着樹脂またはイオン交換樹脂を使用することもできる。適用する特定の抽出方式の選択は、当業者の技術の内であり、そして添加剤(たとえばPEG添加剤)の特定の性質に依存する。たとえば、ポリエチレンは、たとえばジクロロメタンで抽出することにより式Iの化合物から分離することができ(保持された式IIの化合物との同時抽出により)、続いて式IIの化合物の保持された画分から、酢酸エチルによって溶剤変更するかまたは粉砕/温浸することにより分離することができる(ポリエチレンは、これらの条件下で不溶性である)。
【0043】
本発明の方法から得られた化合物、すなわち式Iの化合物および式IIの化合物を、当業者に公知の、カルボン酸またはエステル官能性での誘導反応に供し、たとえばカルボキサミド、N−置換カルボキサミド、N,N−二置換カルボキサミド、カルボキサミジン、N−ヒドロキシ−カルボキサミジン、カルボン酸ヒドロキサミド、カルボン酸ヒドラジド、カルボニトリル、カルバルデヒド、ケトン、イソシアネート、イソチオシアネート、カルバメート、尿素、N−置換尿素、N,N−二置換尿素、第一級、第二級および第三級アミン、N−アミド、グアニジン、アミノメチル−、ヒドロキシメチル誘導体、ならびにエステル誘導体のような化合物をもたらすことができる。
【0044】
このような化合物の例は、式IVaまたは式IVb:
【0045】
【化12】

【0046】
(式中、R21、R22、R23およびR24は、式I、IIおよびIIIに対する定義の意味を有し、
Rは、CN、CHO、CH24、C(O)R5、C(O)NHR6、C(NH)NH2、NHR7、またはC(O)OR8であり;
4は、OHまたはNH2であり;
5は、C1〜C6アルキルであり;
6は、H、OH、NH2、またはC1〜C6アルキルであり;
7は、HまたはC(NH)NH2であり;
8は、C1〜C6アルキルである)の化合物を含む。
【0047】
式IVaおよび式IVbの化合物は新規であり、そして本発明の態様にもなる。
【0048】
2種の鏡像異性体の一方のリサイクル化を目的として、式IIの化合物およびエステル化後の式Iの化合物のラセミ化を、塩基、たとえばアルコラートまたは1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)を使用して行うことができる。
【0049】
本発明の方法から得られた化合物、すなわち式Iの化合物および式IIの化合物、ならびに式IVaおよび式IVbの化合物は、有用な構成単位であり、化学、農業、および製薬産業において価値のある製品の合成、たとえば薬学的に活性な化合物、たとえば、パーキンソン病、アルツハイマー病、または他の中枢神経系の疾患のような疾患の処置に有用であるモノアミンオキシダーゼ(monoaminooxidase)インヒビターの合成に用いることができる。
【0050】
たとえば、(S)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸は、アルコール、好ましくはメタノールまたはエタノールと、酸触媒作用のもとに反応して、対応する(S)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸エステルを得ることができる。このエステルを、ベンジル位のハロゲン化物、トシラート、メタンスルホン酸エステル(メシラート)、またはトリフルオロメタンスルホン酸エステル(トリフラート)から選択される非置換または置換ベンジル誘導体を使用するウィリアムソン(Williamson)のエーテル合成によりアルキル化することができる。使用する塩基は、炭酸塩、たとえば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、または炭酸セシウムの炭酸塩であることができる。溶剤の例は、低級ケトン、たとえばアセトンまたは2−ブタノンである。反応は20℃〜還流温度の範囲の温度で行うことができる。別のアルキル化の方法は、光延(Mitsunobu)カップリングである:場合により置換されたベンジル位のアルコールとフェノールとを、不活性な溶剤、たとえば、ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフラン中で、アゾ−ジカルボン酸ジアルキルを使用して、ホスフィン、たとえば、トリブチル−またはトリフェニル−ホスフィンの存在下で反応させる。エステル官能基の加水分解は、それ自身公知の方法、たとえば、酸性の条件下での(たとえば、塩酸による)、あるいは塩基性条件下での(たとえば溶剤としてアルコールおよび水の混合物中で、水酸化リチウム、ナトリウムまたはカリウムによる)加水分解により行うことができる。得られた酸は、次に、たとえばホフマン(Hofmann)またはクルチウス(Curtius)転位により、対応するイソシアネートの形成を介して、炭素から窒素原子への求核性移動に付すことができる。続いてイソシアネートを酸水溶液により処理すると、すぐに対応するアミンを得る。中間体イソシアネートを適切なアルコールで処理すると、カルバメートの形で保護されたアミノ誘導体を得る。イソシアネートの処理のために、アミン保護基として使用する代表的なカルバメート、たとえばt−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、またはフルオレニル−メトキシカルボニルを得るアルコールが選択される。アミンに開裂するための方法は文献から周知である。N−アミドへのさらなる転位は、標準的な手順、たとえば活性化アシル誘導体、たとえばハロゲン化アシルまたは無水物との反応により、あるいは、たとえば縮合試薬としてカルボジイミドを用いる酸の縮合反応によりにより行うことができ、このようにして化合物、たとえば(S)−N−{1−[4−(3−フルオロ−ベンジルオキシ)−フェニル]−5−オキソ−ピロリジン−3−イル}−アセトアミド(実施例10)を得る。
【0051】
(R)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸エステルは、上述したウィリアムソンのエーテル合成または光延カップリングにより、非置換または置換ベンジル誘導体で、アルキル化することができる。エステル官能基の加水分解は、それ自身公知の方法、たとえば酸性の条件下での(たとえば、塩酸による)、あるいは塩基性条件下での(たとえば溶剤としてアルコールおよび水の混合物中で、水酸化リチウム、ナトリウムまたはカリウムによる)加水分解により行うことができる。次に、得られた酸を、標準的な手順により対応するアミドに変換することができる。第一級または第二級アミンとの反応のために、縮合試薬、たとえばジシクロヘキシルカルボジイミドのようなカルボジイミド、、またはo−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム−ヘキサフルオロホスフェート(HBTU)のようなベンゾトリアゾール誘導体を適用して、(R)−1−[4−(4−フルオロ−ベンジルオキシ)−フェニル]−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸メチルアミド(実施例9)のような化合物を得ることができる。
【0052】
実施例において、次の略語を使用する:ISN−MS:イオンスプレー負イオン質量分析法;EI−MS:電子衝撃質量分析法;NMR:核磁気共鳴分光法;IR:赤外分光法;HPLC:高速液体クロマトグラフィー;min:分;RT:室温;HBTU:o−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム−ヘキサフルオロホスフェート;TBME:t−ブチルメチルエーテル;HV:高真空
【0053】
実施例1:(RS)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸メチルエステルの製造
a)4−アミノフェノール2.355molおよびイタコン酸2.32molの混合物を徐々に加熱した:60℃で、粉末は粘稠になり始め、110〜120℃で液体になり、色が暗褐色に変化する一方、固体材料の残りも溶解した。沸騰下で発熱反応が始まり、温度が150℃まで上昇した。砂状の生成物を、1〜2時間内でRTに放冷した。得られた粗(RS)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸を、さらなる精製や特性決定をせずに次の工程で用いた。
【0054】
b)粗(RS)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸を、メタノール5000mL、濃硫酸24mL、および2,2−ジメトキシプロパン400mLの混合物に溶解し、還流させながら2時間攪拌した。反応溶液を蒸留によりその容量の半分まで減らし、次に20L容器に移した。40℃で攪拌しながら、水/氷混合物(1:1)2500mLを加えた。すぐに結晶化が始まり、そこで微細な白色結晶をろ過ロート上に集めた。それらをろ液が中性になるまで合計2000mLの冷水で洗浄した。生成物を減圧下乾燥して、(RS)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸メチルエステル980g(理論の84%、2工程)を白色固体として得た;
MS:m/e=234(M+H)+
【0055】
実施例1b)で述べた方法と類似の方法で、粗(RS)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸とエタノールとを反応させることにより、(RS)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸エチルエステルを白色固体として得た;MS:m/e=248(M+H)+
【0056】
実施例2:(R)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸メチルエステルおよび(S)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸の製造
a)(RS)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸メチルエステル(98%HPLC)213.5mmolを、シクロヘキサン500mLに穏やかに攪拌しながら懸濁させた。塩化ナトリウム0.1Mおよび硫酸マグネシウム50mMを含有する3mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)2.0Lを加え、得られたエマルション/懸濁液を、pH6.0に再調節し、温度を30℃に設定した。カンジダ・シリンドラシア(Candida cylindracea)からのコレステラーゼ(Roche Applied Science, Industrial Products, Enzyme Projects, Sandhofer Str. 116, D-68305 Mannheim, Germany, オーダー番号10129046103、以下:酵素)201mgの添加により加水分解を開始し、穏やかに攪拌しながら0.1N NaOH溶液(pH−stat)の制御された添加によりpHを6.0に一定に保った。滴定剤を合計1016mL消費した後(一晩;転化率48.6%)、反応混合物をジクロロメタン3.5Lおよび2×2.5Lで(最初は濁った相)、続いて酢酸エチル3.5Lで抽出した(有機相を排出)。合わせたジクロロメタン相を硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させ、HV下乾燥して、(R)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸メチルエステル22.5g(95.6mmol;44.8%)を白色結晶として得た。分析:HPLC:>99%。エナンチオマー過剰率:96.3%(Chiralpak AD、250×4.6mm;ヘキサン70%+ヘキサン中TFA(0.1%)10%+エタノール20%;1mL/min;DAD:sig=210.8nm、ref=360.1nm;サンプル使用:2mg/mLEtOH中TFA(1%)を0.5μL)。[δ]D=−27.7°(c=1.02;EtOH)。EI−MS:m/e=235.1(M;67)、122.0(100)。
【0057】
【表1】

【0058】
b)ジクロロメタンおよび酢酸エチルで抽出した後に残された水層を32%塩酸でpH2.2に設定し、酢酸エチル3×3.5Lで抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させ、HV下で乾燥して、(S)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸21.9g(99.0mmol;46.4%)を白色固体として得た。分析:HPLC:>99%。エナンチオマー過剰率:99.1%(上記方法を参照)。[δ]D=25.4°(c=1.05;EtOH)。EI−MS:m/e=221.1(M;57)、122.0(100)。
【0059】
【表2】

【0060】
実施例3:種々の有機補助溶剤の存在下でのエナンチオ選択加水分解
a)TBME5mL中の(RS)−1−(4−ヒドロキシフェニル−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸メチルエステル(98%)2.13mmolの懸濁液に、50mM硫酸マグネシウム2mLと、0.1M塩化ナトリウムおよび0.02%アジ化ナトリウムを含有する3mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)20mLとを、攪拌しながら加えた。酵素10mgの添加により反応を開始し、0.1N NaOHの制御された添加によりpHを6.0に維持した。10.4mL消費(転化率49.9%;45h)後、反応混合物を3×50mLのジクロロメタンで抽出し、合わせた有機相を蒸発させ、ee決定に付した。水相をpH2まで酸性にし、酢酸エチル3×50mLで抽出し、合わせた有機相を蒸発させ、ee決定に付した。
【0061】
b)有機溶剤(表を参照)10mL中の(RS)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸メチルエステル(それぞれのラセミ酸約2%を含有する)4.25mmolの懸濁液に、塩化マグネシウム50mMおよび塩化ナトリウム0.1Mを含有する3mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)39mLを、穏やかに攪拌しながら加え、温度を28℃に設定した。脱イオン水1.0mLに溶解した酵素6.5mgの添加により反応を開始し、0.1N NaOHの制御された添加によりpHを6.0に維持した。約50%転化後、反応混合物を実施例3aと同様に後処理した。
【0062】
【表3】

【0063】
実施例4:種々の添加剤の存在下でのエナンチオ選択加水分解
シクロヘキサン10mL中の(RS)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸メチルエステル4.25mmol(それぞれのラセミ酸約2%を含有する)の懸濁液に、塩化マグネシウム50mMおよび塩化ナトリウム0.1Mを含有する3mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)中の添加剤(表を参照)の溶液(量は表に示す)を穏やかに攪拌しながら加え、温度を28℃に設定した。脱イオン水1.0mLに溶解した酵素6.5mgの添加により反応を開始し、0.1N NaOHの制御された添加によりpHを6.0に維持した。約50%転化後、反応混合物を実施例3a)と同様に後処理した。
【0064】
【表4】

【0065】
実施例5:種々の塩添加剤の存在下でのエナンチオ選択加水分解
シクロヘキサン10mL中の(RS)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸メチルエステル(それぞれのラセミ酸約2%を含有する)4.25mmolの各懸濁液に、1種または2種の中性塩(表を参照)を含有する3mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)39mLを、穏やかに攪拌しながら加え、温度を28℃に設定した。脱イオン水1.0mLに溶解した酵素6.5mgの添加により反応を開始し、0.1N NaOHの制御された添加によりpHを6.0に維持した。約50%転化後、反応混合物を実施例3a)と同様に後処理した。
【0066】
【表5】

【0067】
実施例6:種々の条件でのエナンチオ選択加水分解
有機溶剤(表を参照)中の(RS)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸メチルエステル(量は表を参照;それぞれのラセミ酸約2%を含有する)の懸濁液に、添加剤(表を参照)とともに水性の緩衝溶液を穏やかに攪拌しながら加え、温度を28℃に設定した。脱イオン水1.0mLに溶解した酵素(量は表を参照)の添加により反応を開始し、1.0N NaOHの制御された添加によりpHを6.0に維持した。約50%転化後、反応混合物を実施例3a)と同様に後処理した。
【0068】
【表6】

【0069】
実施例7:別のエステルを用いるエナンチオ選択加水分解
シクロヘキサン10mL中の(RS)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸エチルエステル4.01mmolの懸濁液に、塩化マグネシウム50mMを含有する3mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)39mLを、穏やかに攪拌しながら加え、温度を28℃に設定した。脱イオン水1.0mLに溶解した酵素6.5mgの添加により反応を開始し、0.1N NaOHの制御された添加によりpHを6.0に維持した。反応完了後、反応混合物を実施例3a)と同様に後処理した。
【0070】
【表7】

【0071】
実施例8:(R)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸メチルエステルおよび(S)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸の製造
a)(R)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸メチルエステルの製造:(RS)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸メチルエステル(98.2%HPLC; ラセミ酸0.2%を含有)106.3mmolを、メチルシクロヘキサン100mLに、穏やかに攪拌しながら懸濁させた。ポリエチレングリコールモノメチルエーテル5000 20.00gを、0.1M酢酸マグネシウム(pH6.0)380mLに溶解し(0.5h攪拌; 容量約398mL)、この溶液を上記懸濁液に注いだ。得られたエマルション/懸濁液をpH6.0に再調節し、温度を28℃に設定した。酵素83mgの添加により加水分解を開始し、穏やかに攪拌しながら1.0NのNaOH溶液(pH−stat)の制御された添加によりpHを6.0に一定に保った。17.2h後、および滴定剤を合計で49.64mL(転化率47.5%)消費の後、ジクロロメタン500mLを添加することにより反応を止めた。反応混合物を、ジクロロメタン4×500mLで(最初は濁った相)、続いて酢酸エチル500mLで(有機相を排出)抽出した。合わせたジクロロメタン相を硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させた。不溶性PEGを除去するために、残留物を酢酸エチル400mL中で一晩すり砕いた。懸濁液をろ過し、ろ液を蒸発させ、残留物をジクロロメタンから再結晶して、(R)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸メチルエステル11.27g(47.9mmol; 45.1%)を白色結晶として得た。分析:HPLC:99.4%(A226nm)。エナンチオマー過剰率:97.8%(方法は実施例2を参照)。
【0072】
【表8】

【0073】
b)(S)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸の製造:水相を25%硫酸でpH2.0に設定し、酢酸エチル4×500mLで抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させ、残留物をTBMEから再結晶して、(S)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸10.49g(47.4mmol; 44.6%)を白色固体として得た。分析:HPLC:99.9%(A226nm)。エナンチオマー過剰率:98.2%(上記方法を参照; 保持時間:(R)−酸:12.44min、(S)−酸:16.25min)。
【0074】
【表9】

【0075】
NMRによれば、生成物はPEG約2%を含有する。
【0076】
実施例9:(R)−1−[4−(4−フルオロ−ベンジルオキシ)−フェニル]−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸メチルアミドの製造
a)テトラヒドロフラン7mL中の4−フルオロ−ベンジルアルコール4.3mmolおよびトリフェニルホスフィン4.7mmolの溶液を、テトラヒドロフラン11mL中の(R)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸メチルエステル[実施例2a)または8a)]4.7mmolおよびアゾジカルボン酸ジイソプロピル4.7mmolの溶液に0℃で滴下した。混合物をRTまで暖まるままにし、攪拌を18時間続けた。シリカゲル2gを添加した後、反応混合物を減圧下蒸発させた。得られた物質を、溶離剤として最初にヘプタンおよび酢酸エチルの2:1混合物、次に1:1混合物を用いるシリカゲルクロマトグラフィーにかけ、(R)−1−[4−(4−フルオロ−ベンジルオキシ)−フェニル]−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸メチルエステルを白色固体として得た; MS:m/e=344(M+H)+
【0077】
b)ジオキサン77mL中の(R)−1−[4−(4−フルオロ−ベンジルオキシ)−フェニル]−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸メチルエステル3.7mmolの溶液を、塩酸(37%)8.64mLで処理した。密閉したフラスコ中で、混合物を52℃で18h加熱した。溶液を減圧下蒸発させて、粗酸を黄色がかった固体として得た。粗酸を、酢酸エチル10mL中、−5℃ですり砕いた。固体をろ過ロート上に集め、次に高真空下で乾燥して、(R)−1−[4−(4−フルオロ−ベンジルオキシ)−フェニル]−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸を白色固体としてを得た; MS:m/e=330(M+H)+
【0078】
c)N,N−ジメチルホルムアミド37mL中の(R)−1−[4−(4−フルオロ−ベンジルオキシ)−フェニル]−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸1.82mmolの溶液を0℃に冷却し、トリエチルアミン2.0mmol、HBTU1.82mmol、メチルアミン塩酸塩2.2mmol、およびトリエチルアミン2.0mmolで連続的に処理した。氷浴を外しRTで攪拌を続けた。30min後反応を止め、橙色溶液を減圧下で蒸発させた。得られた残留物を酢酸エチル1mL中ですり砕き、白色固体生成物をろ過し、その後ジクロロメタンに溶解し、この溶液を水で3回洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、次に減圧下で蒸発させて(R)−1−[4−(4−フルオロ−ベンジルオキシ)−フェニル]−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸メチルアミド409mg(理論の66%)を白色固体として得た。MS:m/e=343(M+H)+; エナンチオマー過剰率>99.5%。
【0079】
実施例10:(S)−N−{1−[4−(3−フルオロ−ベンジルオキシ)−フェニル]−5−オキソ−ピロリジン−3−イル}−アセトアミドの製造
a)テトラヒドロフラン150mL中の3−フルオロ−ベンジルアルコール110.6mmolおよびトリフェニルホスフィン108.8mmolの溶液を、テトラヒドロフラン200mL中の(S)−1−(4−ヒドロキシ−フェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸メチルエステル100.5mmolおよびアゾジカルボン酸ジイソプロピル100.5mmolの溶液に、窒素雰囲気下、0℃で、50min内に滴下した。混合物をRTまで暖まるままにし、攪拌を18時間続けた。混合物を減圧下蒸発させた。固体の残留物をエーテル400mL中ですり砕いて主に生成物およびトリフェニルホスフィンオキシドからなる白色固体を残した。ろ過後、固体物質を冷メタノール100mL中ですり砕いて、(S)−1−[4−(3−フルオロ−ベンジルオキシ)−フェニル]−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸メチルエステルを白色固体として[MS:m/e=344(M+H)+]、微量のトリフェニルホスフィンおよびヒドラゾジカルボン酸ジイソプロピルとともに得た。
【0080】
b)ジオキサン650mL中の(S)−1−[4−(3−フルオロ−ベンジルオキシ)−フェニル]−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸メチルエステル74.6mmolの溶液を、塩酸(37%)175mLで処理した。密閉したフラスコ中で、混合物を50℃で18h加熱した。溶液を減圧下で蒸発させて、黄色固体として粗酸を得た。粗酸を酢酸エチル50mL中、0℃ですり砕いた。固体をろ過ロート上に集め、次に高真空下乾燥して、(S)−1−[4−(3−フルオロ−ベンジルオキシ)−フェニル]−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸を黄色がかった固体として得た; MS:m/e=30(M+H)+
【0081】
c)ジオキサン300mL中の(S)−1−[4−(3−フルオロ−ベンジルオキシ)−フェニル]−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸61mmolの溶液を、N−メチルモルホリン61mmolで処理した。その後、反応混合物を−8℃に冷却し、クロロギ酸イソブチル61mmolを添加した。5min攪拌後、温度が0℃まで上昇する間に、水40mL中のアジ化ナトリウム121mmolの溶液を加えた。0℃で70min攪拌後、懸濁液をDicalite(登録商標)でろ過した。ろ液をトルエン700mLで希釈し、分液ロートに移した。有機層を分離し、次に炭酸水素ナトリウム飽和溶液250mLで2回、塩化ナトリウム飽和溶液200mLで2回洗浄した。その後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、トルエン400mLを添加した後、溶剤および残留イソブチルアルコールを蒸発させて容量約350mLで終了した。溶液を徐々に80℃に加熱し、この温度に70min保った。冷却後、中間体イソシアネートの溶液を約300mLに濃縮し、この溶液をジオキサン100mL中の塩酸(37%)25.4mLの溶液に45℃に加熱しながら滴下した。最後に、添加が完了した後、温度を1時間で60℃まで上げ、塩酸塩はすでに沈殿し始めた。混合物を0℃に冷却し、形成した固体物質をろ過ロート上に集めた。t−ブチルメチルエーテルで洗浄した後、生成物を高真空下で乾燥した。(S)−4−アミノ−1−[4−(3−フルオロ−ベンジルオキシ)−フェニル]−ピロリジン−2−オン塩酸塩を白色固体として得た。MS:m/e=301(M+H)+
【0082】
d)ジクロロメタン86mL中の(S)−4−アミノ−1−[4−(3−フルオロ−ベンジルオキシ)フェニル]−ピロリジン−2−オン塩酸塩11.3mmolの懸濁液を、トリエチルアミン23.8mmolで処理し、0℃に冷却した。この溶液に、塩化アセチル12.5mmolを加え、0℃で15min攪拌を続けた。後処理のために、反応混合物を水100mLで2回抽出した。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で蒸発させた。粗生成物をトルエン100mL中ですり砕き、次に固体をろ過ロート上に集めた。第2工程では、生成物をt−ブチルメチルエーテル200mL中、RTですり砕いた。再び、固体の生成物をろ過ロート上に集め、高真空下で乾燥した。(S)−N−{1−[4−(3−フルオロ−ベンジルオキシ)−フェニル]−5−オキソ−ピロリジン−3−イル}−アセトアミドを白色固体として得た。MS:m/e=343(M+H)+; エナンチオマー過剰率:>99.5%。
【0083】
実施例11:(S)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸の製造
ポリエチレングリコール6000 8.00g、を100mM酢酸マグネシウム緩衝液(pH6.0)150mLに攪拌しながら溶解し、この溶液を、メチルシクロヘキサン40mL中の(RS)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸メチルエステル(99.7%)10.00g(42.51mmol)の攪拌した懸濁液に添加した。混合物を28℃に加熱し、2MのNaOHでpHを6.0に再調節した。カンジダ・シリンドラシア(Candida cylindracea)コレステラーゼ33.2mg(16.88kU/g)の添加により反応を開始し、攪拌下での1.0M NaOH溶液の制御された添加によりpHを6.0に維持した。1.0M水酸化ナトリウム溶液を合計20.35mL(20.35mmol)消費した後(17.1h後; 転化率47.9%)、反応混合物を焼結ガラスフィルターに通した。ろ液は自然に水相および有機相に分離した。水相を酢酸エチル2×200mLで洗浄して、未開裂エステルを除去した。水相を25%硫酸でpH4.0に設定し、真空中で容量約80mLまで濃縮した(浴60℃)。溶液を1℃に冷却し(白色沈殿/結晶の形成)、25%硫酸でpHを1.5に設定した。沈殿/結晶を1℃で一晩攪拌し、焼結ガラスフィルターでろ別し(最小限の量の水で洗浄した)、高真空(RT、6×10-2mbar)で一晩乾燥して、(S)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸4.32g(19.53mmol; 45.9%)を得た。分析:HPLC(面積A226nm):99.3%、エステル0.7%。98.9%ee。生成物は、水5.3%(カールフィッシャー測定による)およびPEG2.1%(w/w)(NMRによる)を含有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】


(式中、R21、R22およびR23は、互いに独立に、水素またはハロゲンであり、
24は、水素、メチル、またはハロゲンである)の化合物および/または式II:
【化2】


[式中、R1は、C1〜C8アルキル、C2〜C4アルケニル、または式A:
【化3】


(式中、R3は、水素またはC1〜C4アルキルであり、nは、1、2、または3である)の基であり、
21、R22、R23およびR24は、前記定義の意味を有する]の化合物の製造方法であって、
式III:
【化4】


(式中、R1、R21、R22、R23、およびR24は、前記定義の意味を有する)の化合物を、酵母に由来するコレステラーゼと接触させる工程を含む製造方法。
【請求項2】
酵母に由来するコレステラーゼが、カンジダ・シリンドラシア(Candida cylindracea)に由来するコレステラーゼである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
酵母に由来するコレステラーゼが、ロシュ・アプライド・サイエンス、インダストリアル・プロダクト、エンザイム・プロジェクト、サンドホファ・ストリート116、D−68305 マンハイム、ドイツ(Roche Applied Science, Industrial Products, Enzyme Projects, Sandhofer Str. 116, D-68305 Mannheim, Germany)、オーダー番号10129046103、0393916または039800により販売されている市販コレステラーゼである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
式IIIの化合物を、0.5〜20%の総濃度(w/w)の範囲の濃度で適用する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
式III中、R21、R22、R23およびR24が、互いに独立に、水素またはフッ素である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
式III中、R21、R22、R23およびR24が、水素である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
式III中、R1が、メチルまたはエチルである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
(RS)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸エステルを、酵母に由来するコレステラーゼと接触させる工程を含む、(S)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸および(R)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項9】
緩衝剤、たとえばリン酸カリウム緩衝剤またはマグネシウムジアセテートを、約3mM〜約1Mの範囲で使用する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
有機補助溶剤が存在する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
補助溶剤がt−ブチルメチルエーテル、シクロヘキサンまたはメチルシクロヘキサンである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
マグネシウム塩、ポリオール、ならびにポリエチレングリコールおよびポリエチレングリコールの誘導体から選択される添加剤の存在下で行う、請求項1記載の方法。
【請求項13】
塩が、1Mまでの範囲の濃度で存在する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
ポリオールが、水相の40%(w/v)までの濃度で存在する、請求項12記載の方法。
【請求項15】
ポリエチレングリコール(PEG)が、分子量4〜6kDの範囲のPEGから、場合によりモノ−またはジメチルエーテルとして選択される、請求項12記載の方法。
【請求項16】
ポリエチレングリコールの濃度が50%(v/v)までの範囲である、請求項12記載の方法。
【請求項17】
反応をpH3.5〜10の範囲のpHで行う、請求項1記載の方法。
【請求項18】
反応を4〜45℃の範囲の温度で行う、請求項1記載の方法。
【請求項19】
(a)請求項1記載の式IIIの化合物を、酵母に由来するコレステラーゼと接触させる工程、および
(b)得られた式Iの化合物および式IIの化合物を別々のpHで抽出することにより分離する工程
を含む、請求項1記載の式Iの化合物および/または請求項1記載の式IIの化合物の製造方法。
【請求項20】
請求項1記載の式Iの化合物。
【請求項21】
請求項1記載の式IIの化合物。
【請求項22】
カルボキサミド、N−置換カルボキサミド、N,N−二置換カルボキサミド、カルボキサミジン、N−ヒドロキシ−カルボキサミジン、カルボン酸ヒドロキサミド、カルボン酸ヒドラジド、カルボニトリル、カルバルデヒド、ケトン、イソシアネート、イソチオシアネート、カルバメート、尿素、N−置換尿素、N,N−二置換尿素、第一級、第二級および第三級アミン、N−アミド、グアニジン、アミノメチル−、ヒドロキシメチル誘導体、ならびにエステル誘導体から選択される、請求項1記載の式Iの化合物または式IIの化合物の誘導体。
【請求項23】
式IVaまたは式IVb:
【化5】


(式中、R21、R22、R23およびR24は、請求項1記載の式I、IIおよびIIIに対する定義の意味を有し、
Rは、CN、CHO、CH24、C(O)R5、C(O)NHR6、C(NH)NH2、NHR7、またはC(O)OR8であり;
4は、OHまたはNH2であり;
5は、C1〜C6アルキルであり;
6は、H、OH、NH2、またはC1〜C6アルキルであり;
7は、HまたはC(NH)NH2であり;
8は、C1〜C6アルキルである)の化合物。

【公表番号】特表2007−505855(P2007−505855A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526580(P2006−526580)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010290
【国際公開番号】WO2005/026373
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】