説明

エネルギー回収装置及び方法

【課題】付勢可能なポンプを提供する。
【解決手段】このポンプは、第1の端部と第2の端部とを有するシリンダの内面と摺動可能に連通するピストンを含む。第1の制御弁と第2の制御弁は、シリンダの第1の端部と物理的に連通する。この第1の制御弁と第2の制御弁は、ピストンと流体連通する。第1の制御弁又は第2の制御弁はいずれも、逆止弁ではない。第1の逆止弁と第2の逆止弁は、シリンダの第2の端部と物理的に連通する。この第1の逆止弁と第2の逆止弁は、ピストンと流体連通する。圧力調節装置は、ピストンと連通して、ピストンが加える力又はピストンに加わる力の大きさを制御する。また、エネルギー回収装置及び方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプに関する実施形態を含む。本発明は、エネルギー回収装置、システム及びその運転方法に関する実施形態を含む。
【背景技術】
【0002】
圧力交換プロセスにおいて、流体の加圧に伴うコストを回収するため、高圧流体からエネルギーを抽出することがある。これは、半透膜に対して高圧の海水(供給流)を押圧する逆浸透脱塩プロセスでみられることがある。このプロセスでは、供給流の一部分しか淡水にならない。この高圧供給流はある量のエネルギーを依然として伴っているので、そのエネルギー量の少なくとも幾ばくかを回収又は取り戻すように努めることは経済的意義がある。
【0003】
エネルギー回収は、タービン/圧縮機の組合せによって達成し得る。高圧流体をタービンホイールに衝突させると、モータと機械的連通した軸が駆動される。これに応じて、モータで給水ポンプを作動させる。妥当な効率で運転するために、タービンは高速で作動する。高速は15000回転毎分(rpm)を超えることがある。高速運転のため、タービン装置と給水ポンプ用モータとの間に減速ギアボックスを取り付けてタービンからの動力を給水ポンプ用モータに効果的に伝達してもよい。タービンと減速ギアボックスの間の軸に高速シールを使用してもよい。
【0004】
エネルギーを回収するため、エネルギー回収装置は、蒸気ピストンエンジンに類似した装置で高圧供給流が低圧供給流と機械的に接触できるように、容積式移送(positive displacement)を使用し得る。こうした装置には、機械作動弁を有するピストンを含むものがある。水を急に停止又は加速すると、水撃作用が起こることがある。その原因が、プロセスでのピストンの動作が閉弁により停止することである場合もある。流れの圧力又は流量が十分に大きい場合には、水撃作用によって装置が損なわれることもある。
【0005】
高圧流体は、エネルギー回収のため正確な圧力での補助的ブーストが必要となることがある。そのため、正確なエネルギー回収圧力が達成されるように1以上の追加のポンプを直列に配置することがある。当然、ポンプを追加する毎に望ましくない経済的影響がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第93/16297号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2005/057760号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
こうした現在利用できるシステム又は装置とは異なるシステム又は装置があれば望ましい。現在利用できる方法とは異なる方法があれば望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願では、本発明の実施形態に係る付勢可能なポンプについて開示する。このポンプは、第1の端部と第2の端部とを有するシリンダの内面と摺動可能に連通するピストンを含む。第1の制御弁と第2の制御弁はシリンダの第1の端部と物理的に連通する。第1の制御弁と第2の制御弁はピストンと流体連通する。第1の制御弁又は第2の制御弁はいずれも逆止弁ではない。第1の逆止弁と第2の逆止弁は、シリンダの第2の端部と物理的に連通する。この第1の逆止弁と第2の逆止弁はピストンと流体連通する。圧力調節装置は、ピストンと連通して、ピストンが加える力又はピストンに加わる力の大きさを制御する。
【0009】
本願では、膜分離装置と流体連通するポンプを含む濾過システムについて開示する。この膜分離装置は、溶媒から溶質を除去することができる。
【0010】
本願では、逆止弁ではない第1の制御弁を介して第1の圧力の第1の流体をシリンダ内に排出する段階を含む方法について開示する。シリンダ内のピストンは移動する。ピストンの第1の流体と反対側に配置される、第2の圧力の第2の流体は、シリンダから逆止弁を介して排出される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るポンプの実施形態の図である。
【図2】圧力調節装置を有するポンプの実施形態の図である。
【図3】圧力調節装置が複数の摺動式永久磁石を含み、ピストンが複数の永久磁石を含むポンプの実施形態の図である。
【図4】圧力調節装置がシリンダの周囲に半径方向に配設される単一の摺動式ソレノイドを含み、ピストンが電磁石を含むポンプの実施形態の図である。
【図5】圧力調節装置がシリンダの周囲に軸方向に配設される単一の摺動式ソレノイドを含み、ピストンが電磁石を含むポンプの実施形態の図である。
【図6(a)】シリンダの周囲に半径方向に配設される複数の固定式ソレノイドを含む圧力調節装置を有するポンプであって、ピストンが電磁石を含むポンプの実施形態の図である。
【図6(b)】図6(a)の対応するソレノイドのパルシング・シーケンスを示すグラフである。
【図7(a)】シリンダの周囲に軸方向に配設される複数の固定式ソレノイドを含む圧力調節装置を有するポンプであって、ピストンが電磁石を含むポンプの実施形態の図である。
【図7(b)】図7(a)の対応するソレノイドのパルシング・シーケンスを示すグラフである。
【図8】ポンプが直列に接続される一実施形態の図である。
【図9】ポンプが並列に接続される一実施形態の図である。
【図10】ポンプが膜分離装置と流体連通する濾過システムの一実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、ポンプに関連する実施形態を含む。本発明は、エネルギー回収装置、システム及びその運転方法に関連する実施形態を含む。本発明の実施形態により、さもなければ浪費されてしまうエネルギーを回収することができる。
【0013】
本明細書及び特許請求の範囲との全体を通して用いられる近似表現は、数量表現を修飾するために用いられ、許容範囲内で変更すれば関連する基本的な機能の変化を引き起こすことはない。従って、「約」等の用語によって修飾される値は、特定の正確な値に制限されない。場合によっては、この近似表現は、値を測定する計器の精度に対応することがある。
【0014】
2つの装置間における「作動可能な連通」という用語は、2つの装置が互いに連絡していることをいう。作動可能な連通は、例えば物理的連通、電気的連通、機械的連通、熱的連通(例えば対流)、音響的連通(例えば超音波等)、電磁的連通(例えば紫外放射、光放射等)等である。電気的連通は、2つの装置間における電子の流れを含み、機械的連通は、2つの装置間における物理的接触による(例えば摩擦、付着等による)力の伝達を含む。物理的連通は、2つの装置が、質量又はエネルギーの伝達を伴うことなく互いに連通することができることを示す。なお、互いに動作可能に連通する2つの装置は、互いに2以上の連通状態を有することがあること、すなわち第1の装置が第2の装置と物理的に連通するだけでなく機械的にも連通することもある。
【0015】
磁気的又は電気的に付勢できるブースターポンプ(以下「付勢可能なポンプ」)を濾過システムで用いて、圧力交換プロセスにおいて加圧流体からエネルギーを抽出することができる。この付勢可能なポンプは、仕事交換器と呼ぶこともできる。一実施形態では、濾過システムを用いて、海水の脱塩時に加圧供給流からエネルギーを抽出することができる。
【0016】
磁界又は電界により、ピストンの往復運動を制御することができる。このような制御により、さもなければ加圧流体からのエネルギー抽出時に起こり得る水撃作用の効果を低減することができる。こうした水撃作用の低減により、ポンプが配設されることがある濾過システムの寿命を延ばすことができる。また他の実施形態では、磁界又は電界は、圧力交換プロセスで1種以上の流体に補助的エネルギーを供給して、濾過プロセスで用いられることがある膜入口に対する流体の圧力を増大させることができる。
【0017】
図1を参照すると、付勢可能なポンプ100は、ピストン4が内部に配置されるシリンダ2を含む。このピストンは、シリンダと摺動可能に連通する。付勢可能なポンプ100は、複動式である。複動により、ピストンは、流体を対向する移動方向に圧縮することができる。シリンダは、第1の端部8と第2の端部10とを有する導管6を含む。第1の端部及び第2の端部のいずれもが、それぞれ第1のキャップ12及び第2のキャップ14により覆われる。
【0018】
第1のキャップは、第1のポート16と第2のポート18とを形成し、第2のキャップは、第3のポート20と第4のポート22とを形成する。第1のポート16は、第1の制御弁24と物理的に連通し、第2のポート18は、第2の制御弁26と物理的に連通する。第3のポート20は、第1の逆止弁28と物理的に連通し、第4のポート22は、第2の逆止弁30と物理的に連通する。ピストンは、第1の制御弁24、第2の制御弁26、第1の逆止弁28及び第2の逆止弁30と流体連通する。
【0019】
弁制御装置(図示せず)は、第1の制御弁24又は第2の制御弁26の開閉を制御する。すなわち、この弁制御装置は、関連する弁を逆に開位置から閉位置に切り替えることができるアクチュエータに信号を送る。一実施形態では、弁制御装置は、コンピュータである。このコンピュータは、本明細書に記載の機能を実行するようにプログラムされ、本明細書では、コンピュータという用語は、当該技術分野においてコンピュータと呼ばれる集積回路のみに制限されるのではなく、幅広くコンピュータ、処理装置、マイクロコントローラ、マイクロコンピュータ、プログラマブル論理制御装置、特定用途向け集積回路及びその他のプログラム可能回路等を指す。
【0020】
第1の制御弁24と第2の制御弁26は、弁制御装置からの信号に応答してアクチュエータ機構により作動する作動弁でよい。一実施形態では、第1の制御弁24又は第2の制御弁26のいずれもが逆止弁ではない。弁を作動させる段階は、弁を開位置から閉位置に切り替える段階を含む。弁制御装置により作動することができる適切な弁の例は、ボール弁、バタフライ弁、仕切弁、スルース弁等である。一実施形態では、第1の制御弁24と第2の制御弁26とのいずれもがバタフライ弁である。適切なアクチュエータは、例えばソレノイドであってもよい。
【0021】
図1に示すように、圧力制御装置又は圧力調節装置32は、シリンダの外側に配設されるとともに、ピストンと動作可能に連通する。この圧力制御装置は、ピストンが加える力又はピストンに加わる力の大きさを制御する。適切な圧力調節装置は、電気装置、磁気装置、電磁装置でよい。圧力調節装置は、シリンダに近接して配設可能である。一実施形態では、圧力調節装置は、導管の周囲又は周縁部のまわりに配設される。一実施形態では、圧力調節装置は、導管のまわりに全体的又は部分的に同心状に配設される。
【0022】
適切な導管は、円形、三角形、長方形、正方形又は多角形であってもよい断面形状を有することができる。この断面形状は、ピストンの移動方向に対して垂直をなす方向に測定される。曲面と平面とを組み合わせて、導管の断面形状を形成することができる。ピストンの断面形状は、シリンダの断面形状に対応し、従って上記の形状のひとつを有することができる。
【0023】
ピストンは、流体と連通するピストンの一方の面において、流体と連通するピストンの反対側の面と比べて異なる断面積を有していてもよい。一実施形態では、ピストンの一方の面は、接続ロッド(図示せず)と動作可能に連通していてもよい。この接続ロッドは、回転クランク軸(図示せず)と動作可能に連通していてもよく、これによってピストンとシリンダとの摺動可能な連通が促進される。クランク軸とピストンとの作動可能な連通は、機械的連通であってもよい。
【0024】
一実施形態では、圧力調節装置は、第1の制御弁24、第2の制御弁26、第1の逆止弁28又は第2の逆止弁30と同期して作動することができる。また他の実施形態では、圧力調節装置は、第1の制御弁24のみ又は第2の制御弁26のみと同期して作動することができる。また他の実施形態では、圧力調節装置は、第1の制御弁24、第2の制御弁26、第1の逆止弁28又は第2の逆止弁30と無関係に作動することができる。
【0025】
付勢可能なポンプ100のある運転モードにおいて、弁制御装置(図示せず)は、アクチュエータに信号を送って第1の制御弁を開き、第1の圧力の第1の流体がシリンダに流入するようにする。第1の流体がシリンダ内に流入することにより、ピストンは、第2の端部から第1の端部へ移動する。第2の流体は、ピストンの第1の流体とは反対側に配置される。ピストンが第2の端部から第1の端部に移動することにより、ピストンの前方においてシリンダ内の第2の流体が圧縮される。第1の端部へ向かうピストンの移動は、圧力調節装置によって補助又は促進し得る。
【0026】
シリンダ内において第2の流体が加圧されることにより、第1の逆止弁28が開き、これによって第2の流体(ピストンと第1の端部との間にある流体)は、シリンダから第2の圧力で排出される。第2の流体がシリンダから排出されるときに、第1の逆止弁28と第1の制御弁24との両方が弁制御装置により閉弁し得る。第1の逆止弁28と第1の制御弁24の開閉は、実質的に同時に行われる一方で、互いに独立して制御し得る。
【0027】
第2の流体がシリンダから第1の逆止弁28を介して排出されるときに、第2の逆止弁30が開き、第3の流体をシリンダ内に流入させる。この第3の流体は、第2の圧力より低くてもよい第3の圧力を有する。この第3の圧力は、略第1の圧力と比べて大きくても、同等でも、また小さくてもよい。第3の流体がシリンダ内に第2の逆止弁30を介して流入することにより、第2の端部へピストンが逆移動する。第2の制御弁26は、このピストンの逆移動時に開き、ピストンの前方の第4の流体をシリンダから排出させる。この第4の流体は、ピストンの第3の流体と反対側に配置し得る。第4の流体は、第1の流体又は第3の流体と同じものでも異なるものでもよい。一実施形態では、第4の圧力は、第1の圧力より低い。第4の圧力は、第1の圧力、第2の圧力又は第3の圧力より小さくてもよい。
【0028】
第2の圧力は、略第1の圧力以上であってもよい。第3の圧力は略第4の圧力以上であってもよい。第3の圧力は、第1の圧力と比べて大きくても、同等でも、また小さくてもよい。一実施形態では、第3の圧力は、第1の圧力より低い。
【0029】
第1、第2、第3及び第4の流体は、いずれも同じであってもよい。しかし、一部の実施形態では、これらの流体の組成的構成は互いに異なる。少なくともある実施形態では、ある流体は脱塩装置への供給流であり、他の流体は、脱塩装置から出力されるブライン(塩水)又は希釈水のいずれかである。
【0030】
第4の流体がシリンダから排出されるときに、第2の逆止弁30と第2の制御弁26を閉じてもよい。弁制御装置は、第2の制御弁26の開閉を制御できる。すなわち、弁制御装置は、第2の制御弁26を逆に開位置から閉位置に切り替えることができるアクチュエータに信号を送ることができる。第2の逆止弁30と第2の制御弁26の開閉は、実質的に同時に行われる一方で、独立的にも行われる。ピストンの逆移動時に、弁制御装置を作動させて、流体のポンピングを促進させることができる。付勢可能なポンプは、第1の加圧流体からエネルギーを抽出するとともに、このエネルギーを第2の加圧流体に伝達することができる。シリンダ内におけるピストンの往復(摺動)運動は、磁界又は電界のいずれかによって制御できる。
【0031】
適切なピストンは、永久磁石又は電磁石を含むものであってもよい。ピストンの製造に使用することができる適切な材料には、鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン、チタン、バナジウム、コバルト合金、鉄合金、ニッケル合金等が例示できる。
【0032】
例証的な一実施形態では、ピストンは、耐食性コーティング層(図示せず)を用いて被覆される。耐食性コーティングにより、ピストンが接触することがある塩分及びその他の化学物質による劣化からピストンは保護される。同様に、シリンダを形成する内面は、耐食性コーティングを用いて被覆してもよい。耐食性コーティングは、金属、セラミック又は有機ポリマーでよい。一実施形態では、耐食性コーティングは有機ポリマーを含む。耐食性コーティングに使用できる適切な有機ポリマーとしては、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルケトンケトン等がある。その他の適切なポリマーは、前述のポリマーの誘導体又は混合物がある。例えば、適切なハロゲン化ポリオレフィンは、ポリテトラフルオロエチレン又はポリ塩化ビニリデンを含む。
【0033】
上述のように、圧力調節装置は、磁界又は電界によりピストンの移動を制御することができる。図2〜7に、圧力調節装置のさまざまな実施形態と、これらを用いてピストンの移動を制御する方法とを示す。
【0034】
図2及び3において、ピストンは、永久磁石であってもよく、圧力調節装置も、外部装置(図示せず)により作動する永久磁石であってもよい。図2は、ピストンと圧力調節装置と単一の永久磁石を含む付勢可能なポンプの例である。図3は、ピストンと圧力制御装置とのいずれもが複数の永久磁石を含む付勢可能なポンプの例である。図2及び3において、ピストンの移動は、ピストンと磁気的に連通する外部磁石の移動に従動するか、又は該移動により制御し得る。
【0035】
図4及び5において、ピストンは電磁石を含む。この電磁石は、電流がソレノイドを通ることによって作動する。この場合、圧力制御装置は、単一のソレノイドであってもよい。ソレノイドのコイルは、図4に示すようにシリンダの周囲に半径方向に配置されるように構成可能であり、又は図5に示すようにシリンダの周囲に軸方向に配置可能である。図4及び5において、ソレノイドの移動により、ピストンの移動を制御することができる。図2及び3において外部磁石の移動を容易にするために用いられるものと同様の外部装置により、ソレノイドの移動を行うことができる。ソレノイドの移動時に、電流は同時にコイルを通過することができる。電流は、ソレノイドのまわりにおいて磁界を作り出し、これによりシリンダが電磁石に変換される。シリンダが電磁石に変換され、ソレノイドを移動させることができると、ソレノイドとともにピストンも移動する。
【0036】
図6及び7に、複数の固定式ソレノイドがシリンダのまわりに配置される付勢可能なポンプの構成を示す。図6(a)は、複数の固定式ソレノイドがシリンダの周囲に半径方向に配置される構成図であり、図7(a)は、複数の固定式ソレノイドがシリンダの周囲に軸方向に配置される構成図である。複数のソレノイドは、互いに直接電気的に連通していない。図6(a)及び7(a)のいずれにおいても、シリンダは電磁石である。
【0037】
ある運転モードにおいて、電流は、それぞれ図6(a)及び7(a)に示す隣接するソレノイドを介して連続的にパルス化されてもよい。図6(b)及び7(b)は、それぞれ図6(a)及び7(a)に示す対応するコイルを介した電流の連続的なパルス化を示すグラフである。隣接するソレノイドを介した電流の連続的なパルス化により、ピストンの移動が促進される。
【0038】
付勢可能なポンプは、異なる構成で使用し得る。図8に示す実施形態では、付勢可能なポンプ200、300、・・・nは、各ポンプからの第2の加圧流体(最高加圧出力)が後続の付勢可能なポンプに対する第1の加圧流体(入力)となるように直列に配設することができる。これにより、直列配設のいずれかの付勢可能なポンプの第2の加圧流体(Δp)を先行する各々の付勢可能なポンプからの第2の加圧流体圧力の総和(ΣΔp)とすることできる。
【0039】
図9に示す実施形態では、付勢可能なポンプ200、300、・・・nは、各々の付勢可能なポンプからの第2の加圧流体が共通の管内に排出されて単一の出力202となるように、並列に配設可能である。このような構成は、大体積の加圧流体からエネルギーを抽出するために使用できる。並列の付勢可能なポンプの個数は、エネルギーを抽出することが望まれる加圧流体の体積に比例する行程容積を有することができる。このため、一連の付勢可能なポンプから排出される総体積(又は質量)を、この構成に含まれる各々の付勢可能なポンプの行程容積(又は質量)の総和(Σm´)に等しくすることができる。一実施形態では、ピストンは、互いに同位相で移動する。また他の実施形態では、ピストンは、互いに位相はずれで移動する。
【0040】
付勢可能なポンプは、図10に示すような濾過システム1000で使用できる。この濾過システムは、供給流側1200と濃縮水側1400とを含む。図10に示すように、供給流側1200は、切断線XXの左(図に向かって)に位置し、濃縮水側1400は、切断線XXの右に位置する。
【0041】
図10において、濾過システムは、供給流側に、いずれも互い及びメンブレンフィルター1006と流体連通し得る第1のポンプ1002と任意の第2のポンプ1004とを含む。第1のポンプ1002と任意の第2のポンプ1004は、付勢可能なポンプとも流体連通していてもよい。一実施形態では、第1のポンプ1002と任意の第2のポンプ1004は、さらにまた、少なくとも1つが付勢可能なポンプであってもよい複数のポンプと流体連通していてもよい。また他の実施形態では、第1のポンプ1002と任意の第2のポンプ1004は、さらにまた、複数の付勢可能なポンプと流体連通していてもよい。
【0042】
付勢可能なポンプは、メンブレンフィルター1006と流体連通していてもよい。第1の付勢可能なポンプ100と第2の付勢可能なポンプ200は、それぞれの逆止弁128、130、228及び230を線XXの供給流側1200にもつように配設し得る。第1の付勢可能なポンプは、第1のシリンダ102と摺動可能に連通して配設される第1のピストン104を含み、第2の付勢可能なポンプは、第2のシリンダと摺動可能に連通して配設される第2のピストンを含む。それぞれの制御弁124、126、224及び226は、線XXの濃縮水側1400に配設し得る。メンブレンフィルター1006は、第1の付勢可能なポンプ100及び第2の付勢可能なポンプ200とそれぞれ制御弁124、224を介して流体連通することができる。制御弁126及び226は、低圧濃縮水出口254と流体連通することができる。
【0043】
第1のポンプ1002及び第2のポンプ1004は、歯車ポンプである。また他の実施形態におけるその他の適切なポンプは、遠心ポンプ、回転ポンプ、プランジャポンプ等とすることができる。第2のポンプ1004は、供給流を約0.1〜約0.2メガパスカルの圧力に加圧する低圧ポンプであってもよい。第1のポンプ1002は、供給流に対する圧力を高める高圧ポンプであってもよい。圧力の増加は、約5000メガパスカル(MPa)以上の大きさとし得る。一実施形態では、圧力の増加は、約5000MPa〜約6000MPaの範囲、約6000MPa〜約7500MPa又は約7500MPaより大きい。任意のポンプにより、逆止弁128、228からメンブレンフィルター1006に流れる水に圧力ブーストを加えることによって供給流側の流体圧力を補うことができる。
【0044】
この濾過システムを用いて溶質を溶媒から分離させることができる。この濾過システムは、塩水を脱塩することができる。脱塩プロセスにおいて、供給流溶液は、メンブレンフィルターにより、透過水と濃縮水とに分離できる。供給流溶液が海水である場合は、透過水を水にすることができ、濃縮水をブラインにすることができる。メンブレンフィルターは、供給流の脱塩を容易にして、透過水(海水より塩分含有量が少ない水)と濃縮水(海水より塩分含有量が多くなることがあるブライン溶液)を製造する。
【0045】
ある運転モードにおいて、第1のポンプ1002は、メンブレンフィルター1006の方へ供給流を排出する。供給流の一部は、メンブレンフィルター1006で濾過を受けると、透過水に変換でき、残りの供給流は、濃縮水に変換されるとともに、第1の制御弁124の開弁時に第1の付勢可能なポンプ内に排出できる。弁制御装置(図示せず)は、制御弁124、126、224及び226の開閉を互いに独立して、又はそれが望ましい場合は互いに何らかの関係をもたせて制御することができる。
【0046】
第1の圧力の加圧濃縮水が第1の付勢可能なポンプ100のシリンダに流入する際、それぞれの圧力調節装置が作動して、第1のピストン104が第1の逆止弁128の方へ移動するときに、この第1のピストンに対する力を増大させる。この第1のピストン104に対する力の増大は、第1のピストン104と第1の逆止弁128との間の供給流に加わる圧力を第2の圧力に増加させる。この第2の圧力は、第1の圧力より大きくてもよい。供給流は、第1の逆止弁128を介して排出されると、メンブレンフィルター1006へ導かれて濾過を受けるとともに、透過水及び濃縮水である水流となることができる。
【0047】
第1の付勢可能なポンプ100は、供給流に対する圧力を増大させ、脱塩プロセスの効率を高める。加えて、圧力調節装置を介してピストンに加えられる力を調節することにより、水撃作用を最小限に抑えることができる。
【0048】
第2の圧力の供給流が第1の付勢可能なポンプ100のシリンダから排出されると、第3の圧力の低圧供給流を、第2の逆止弁130を介して第1の付勢可能なポンプのシリンダ内に引き込むことができる。この低圧供給流は、ピストンを逆止弁128、130から離れる方向に制御弁124、126の方へ付勢して、濃縮水をシリンダから第4の圧力で低圧濃縮水出口254内へ排出する。
【0049】
図10に示す実施形態では、第1の付勢可能なポンプの第1のピストン104は、制御弁から逆止弁の方へと第1の方向に移動して供給流を排出し、第2の付勢可能なポンプ200の第2のピストン204は、逆止弁から制御弁の方へと第2の方向に移動する。この第2の方向は、第1の方向と反対であってもよい。すなわち、第1の付勢可能なポンプ100と第2の付勢可能なポンプ200は非同期的に動作して、第1の付勢可能なポンプ100は供給流を第2の圧力に加圧することができ、第2の付勢可能なポンプ200は、第4の圧力の低圧濃縮水を低圧濃縮水出口254に排出することができるようになっている。また、第2の付勢可能なポンプ200は、供給流を第1の圧力に加圧することができ、第1の付勢可能なポンプ100は、第4の圧力の低圧濃縮水を低圧濃縮水出口254に排出することができる。
【0050】
図10を参照すると、濾過システム1000は、2つの付勢可能なポンプ100、200を含む。これらの付勢可能なポンプが第1のポンプ1002及びメンブレンフィルター1006と連通可能である場合は、各ポンプのピストンは、それぞれ互いに同位相で作動する。一実施形態では、それぞれのピストン104、204は、互いに180度の位相はずれで作動する。第1のピストン104は、自身の移動の一方の終点に位置して、付勢可能なポンプ100内の全供給流をメンブレンフィルター1006に排出し終えており、ピストン204は、自身の移動の反対側の終点に位置して、全部の濃縮水を低圧濃縮水出口254に排出し終えている。ピストン204は、いずれの方向にも自身の移動の中間点に位置することができ、従って供給流をメンブレンフィルター1006に排出し、又は濃縮水を低圧濃縮水出口254の方へ排出することができる。
【0051】
また他の実施形態では、濾過システムは、3個以上の付勢可能なポンプを含んでいてもよく、少なくとも2つのポンプは、メンブレンフィルターへ向かう供給流と連通していてもよい。複数のポンプの内の1以上は、その他のポンプの少なくとも1つと位相はずれで作動する。一実施形態では、ポンプは互いに120度の位相はずれで作動する。複数の濾過システムを互いに並列に配設することができる。この構成により、ある期間で相対的により大量の供給流を脱塩することが可能になる。
【0052】
付勢可能なポンプは、供給流に供給される圧力ブーストの大きさを変動させることができる。このポンプは、水撃作用の効果を最小限又は皆無にして、弁及びその他の機器のメンテナンスに用いられるダウンタイムを減少させることができる。これにより、サイクル時間と生産性の向上が容易となる。加えて、濾過システムで付勢可能なポンプを用いることにより、使用する必要があるその他の種類のポンプの個数(例えば遠心ポンプ、歯車ポンプ、回転ポンプ、プランジャポンプ等)が減少する。ある実施形態に係るシステムは、単一の第1のポンプ1002のみを用いることにより機能を果たすことができ、このため、新しい機器の費用が節減されるだけでなく、長期的なメンテナンスの費用も節減される。
【0053】
本明細書に開示した実施形態は、添付の特許請求の範囲に述べる本発明に関連する要素を含む構成、システム、及び方法の例である。本明細書の詳細な説明により、特許請求の範囲に記載の構成要素に相当する代替的な実施形態を作製すること及び使用することが、当業者には可能となる。従って、本発明は、特許請求の範囲に記載の文言と相違ない構造、システム、及び方法、さらには特許請求の範囲に記載の文言が示す内容と殆ど異ならない構造、システム、及び方法を包含する。本明細書では、特定の特徴及び実施形態についてのみ図示し説明してきたが、多様な修正及び変更が当業者には想起可能である。添付の特許請求の範囲は、かかる全ての修正及び変更を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端部と第2の端部とを有するシリンダの内面と摺動可能に連通するピストンと、
前記シリンダの第1の端部と物理的に連通する第1の制御弁及び第2の制御弁であって、前記ピストンと流体連通しており、少なくとも第1の制御弁又は第2の制御弁は逆止弁ではない第1の制御弁及び第2の制御弁と、
前記シリンダの第2の端部と物理的に連通する第1の逆止弁及び第2の逆止弁であって、前記ピストンと流体連通する第1の逆止弁及び第2の逆止弁と、
前記ピストンに加わる力又は前記ピストンが加える力の大きさを制御するように動作可能な圧力調節装置とを備える付勢可能なポンプ。
【請求項2】
前記シリンダが永久磁石又は電磁石を含む、請求項1記載の付勢可能なポンプ。
【請求項3】
第1の制御弁及び第2の制御弁の少なくとも一方が弁制御装置と連通している、請求項1記載の付勢可能なポンプ。
【請求項4】
前記ピストンが接続ロッドと動作可能に連通している、請求項1記載の付勢可能なポンプ。
【請求項5】
前記ピストンが耐食層を含む、請求項1記載の付勢可能なポンプ。
【請求項6】
第1の制御弁又は第2の制御弁が前記圧力調節装置と同期して機能する、請求項1記載の付勢可能なポンプ。
【請求項7】
第1の制御弁又は第2の制御弁が前記圧力調節装置とは無関係に機能する、請求項1記載の付勢可能なポンプ。
【請求項8】
前記圧力調節装置が磁気装置、電気装置又は電磁装置を含む、請求項1記載の付勢可能なポンプ。
【請求項9】
前記圧力調節装置が永久磁石を含む、請求項1記載の付勢可能なポンプ。
【請求項10】
前記圧力調節装置がソレノイドを含む、請求項1記載の付勢可能なポンプ。
【請求項11】
前記ソレノイドが、前記シリンダの周囲に半径方向又は軸方向に配設される1以上のコイルを含む、請求項10記載の付勢可能なポンプ。
【請求項12】
前記圧力調節装置が、前記シリンダの周囲に半径方向又は軸方向に配設される複数のソレノイドを含む、請求項1記載の付勢可能なポンプ。
【請求項13】
第1の制御弁又は第2の制御弁が、バタフライ弁、仕切弁、スルース弁又は仕切弁である、請求項1記載の付勢可能なポンプ。
【請求項14】
請求項1記載の複数の付勢可能なポンプを含むエネルギー回収装置。
【請求項15】
溶質を含む溶液と接触して前記溶液の溶媒から前記溶質を分離させることができる膜分離装置と流体連通した請求項1記載のポンプを含む濾過システム。
【請求項16】
前記膜分離装置及び第1の付勢可能なポンプと流体連通する第2のポンプを含む、請求項15記載の濾過システム。
【請求項17】
第2のポンプが付勢可能なポンプである、請求項16記載の濾過システム。
【請求項18】
第2のポンプが、第1のポンプと非同期的に作動する付勢可能なポンプである、請求項16記載の濾過システム。
【請求項19】
前記膜分離装置及び第1の付勢可能なポンプと各々流体連通した複数の付勢可能なポンプをさらに含む、請求項15記載の濾過システム。
【請求項20】
前記複数の付勢可能なポンプの各々が互いに非同期的に作動する、請求項19記載の濾過システム。
【請求項21】
前記メンブレンフィルター及び第1の付勢可能なポンプと流体連通した第1のポンプをさらに含む、請求項19記載の濾過システム。
【請求項22】
前記メンブレンフィルター及び第1の付勢可能なポンプと流体連通した第2のポンプをさらに含む、請求項19記載の濾過システム。
【請求項23】
逆止弁ではない第1の制御弁を開いて第1の圧力の第1の流体をシリンダの内面により形成される容積部内に排出する段階と、
前記シリンダ内に配設されるピストンを変位させる段階と、
第1の流体に対して前記ピストンの反対側に配置される第2の流体を前記シリンダから逆止弁を介して第1の圧力とは異なる第2の圧力で排出する段階と
を含む方法。
【請求項24】
第3の圧力の第3の流体を前記シリンダ内に第2の逆止弁を介して排出する段階と、前記ピストンを変位させる段階と、第4の圧力の第4の流体を前記シリンダから第2の逆止弁を介して排出する段階をさらに含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
第3の流体が第4の流体とは異なり、第3の圧力が第4の圧力と比べて大きい又は同等である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
第3の流体が供給流であり、第4の流体が濃縮水である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
第1の流体が濃縮水であり、第2の流体が供給流である、請求項23記載の方法。
【請求項28】
第2の流体を膜分離装置内に排出する段階をさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記供給流が海水であり、前記濃縮水がブラインである、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記シリンダを電磁石に変換する段階をさらに含む、請求項28記載の方法。
【請求項31】
第1の圧力の第1の流体をシリンダ内に排出する手段であって、逆止弁ではない手段と、
前記シリンダ内に配設されるピストンを変位させる手段と、
第1の流体に対して前記ピストンの反対側に配置される第2の流体を、前記シリンダから逆止弁を介して第1の圧力とは異なる第2の圧力で排出する手段と
を備えるエネルギー回収装置。
【請求項32】
前記変位手段ソレノイドを含む、請求項31記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図7(a)】
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【図7(b)】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−518304(P2010−518304A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548349(P2009−548349)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/050726
【国際公開番号】WO2008/097683
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】