説明

エポキシアクリレート樹脂,硬化性樹脂組成物,アルカリ現像型感光性樹脂組成物及びこれらの硬化物

【課題】可撓性や耐熱性に著しく優れ,特にフレキシブルプリント配線板用途において基板フィルムとの密着性が良好で,優れた可撓性及び半田耐熱性を兼備したフレキシブルプリント配線板用光硬化性樹脂組成物、可撓性ソルダーレジストインキ用エポキシアクリレート樹脂,これを配合した硬化性樹脂組成物,アルカリ現像型感光性樹脂組成物,その硬化物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)にアクリル酸類を反応させて得られることを特徴とするエポキシアクリレート樹脂,更に多塩基酸化合物を反応させたエポキシアクリレート樹脂、該樹脂と重合開始剤を必須成分とする硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,新規のエポキシアクリレート樹脂及び硬化性樹脂組成物,およびアルカリ現像型感光性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは,プリント配線板のオーバーコート,アンダーコート,絶縁コートなどの永久保護膜,ソルダーレジストインキ,ビルドアップ基板の相関絶縁材料等,或いはプリント配線板,特にフレキシブルプリント配線板の製造に適した希アルカリ溶液で現像可能なソルダーレジストインキに好適な硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
最近のプリント配線板の進歩はめざましく,特に表面実装技術の向上によりプリント配線板の高集積化は加速度的に進んでおり,さらに高密度,高信頼性に加え,量産性や経済性を兼ね備えたレジストパターンの形成方法が求められている。このため,ソルダーレジストインキの高密度化に対する要求も一層厳しく,従来用いられてきたスクリーン印刷によるプリント配線板のレジストパターン形成法では解像度が低く,この要求に対応できなくなってきており,そのため解像度の高い写真法を利用した写真現像に使用できる,アルカリ現像可能なソルダーレジストインキが使用されるようになっている。
【0003】
また,近年フレキシブルプリント配線板が広く用いられており,その結果,フレキシブルプリント配線板に適用し得るような可撓性を有しており,かつ,解像度の高い写真現像に使用できる,アルカリ現像可能なソルダーレジストインキの要求が高まっている。この様な用途に適用し得る,可撓性を有し,かつ,アルカリ現像可能なソルダーレジストインキとしては,従来,例えば,ビスフェノール型エポキシ樹脂にアクリル酸を反応せしめ,ついで該反応によって生ずる水酸基に酸無水物を反応させて得られる酸ペンダント型エポキシビニルエステル樹脂を主剤として用い,これに希釈剤,光重合開始剤,エポキシ樹脂を配合したものが知られている(例えば,特許文献1参照。)。しかし,上記のビスフェノール型エポキシ樹脂から誘導される酸ペンダント型エポキシビニルエステル樹脂を主剤として用いたソルダーレジストインキは,その硬化物自体の可撓性は有するものの,フレキシブルプリント配線板用途における基板である基板フィルムに対する密着性が悪く,その結果プリント配線板自体の可撓性も未だ充分なものでなく,更に硬化物の耐熱性に劣って,プリント配線板にした場合の半田耐熱性にも劣るという課題を有するものであった。
【0004】
【特許文献1】特開平05−43654号公報(2−5頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は,可撓性や耐熱性に著しく優れ,特にフレキシブルプリント配線板用途において基板フィルムとの密着性に極めて良好で,優れた可撓性及び半田耐熱性を兼備したフレキシブルプリント配線板とし得る光硬化性樹脂組成物および可撓性ソルダーレジストインキに好適なエポキシアクリレート樹脂,これを配合した硬化性樹脂組成物,アルカリ現像型感光性樹脂組成物,その硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果,下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)に,アクリル酸及び/または(メタ)アクリル酸を反応させて得られることを特徴とするエポキシアクリレート樹脂(B)が新規の化合物であり,これを使用し,これに希釈剤,光重合開始剤およびエポキシ樹脂等を配合することにより,可撓性,密着性,半田耐熱性を改善できることを見いだして,本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち,本発明は,下記一般式(1)にアクリル酸及び/または(メタ)アクリル酸を反応させて得られることを特徴とするエポキシアクリレート樹脂,更に多塩基酸化合物を反応させたエポキシアクリレート樹脂を提供する。更に,本発明は,上記エポキシアクリレート樹脂と光又は熱重合開始剤を必須成分とする硬化性樹脂組成物,更にエポキシ樹脂を含有することを特徴とするアルカリ現像型感光性樹脂組成物と,それらの組成物を硬化させてなる硬化物も提供する。
【0008】
【化1】

【0009】
〔式中,Rは置換基を有していてもよいアルキル基,Rは水素原子或いは置換基を有していてもよいアルキル基であり,nは繰り返し数の平均値を示し0〜10の範囲である。〕
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば,可撓性や耐熱性に著しく優れる硬化物が得られ,特に,可撓性ソルダーレジストインキとして用いると,可撓性や密着性,半田耐熱性に優れたレジストパターンの形成ができ,なお,希アルカリ水溶液で現像可能なフレキシブルプリント配線板に適したものが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のエポキシアクリレート樹脂(B)は,前記のエポキシ樹脂(A)とアクリル酸類を反応させた構造のものであり,この樹脂構造中には,該エポキシ樹脂(A)とエチレン性不飽和一塩基酸との反応によって生成するエステル結合が存在しているものである。ここでアクリル酸類の具体例としては,アクリル酸,メタクリル酸,アクリル酸メチルエステル,アクリル酸エチルエステル,アクリル酸プロピルエステル,メタクリル酸メチルエステル,メタクリル酸エチルエステル,メタクリル酸プロピルエステル等の低級アルキルエステルなどが挙げられ,反応性や経済性の点からアクリル酸,メタクリル酸が好ましい。
【0012】
該エポキシ樹脂(A)とアクリル酸及び/または(メタ)アクリル酸との反応比率は,特に制限されるものではないが,エポキシ樹脂のエポキシ基1当量当たり,アクリル酸類のカルボキシル基が0.8〜1,1当量となる範囲であることが好ましく,なかでも光硬化性及び貯蔵安定性に優れる樹脂が得られる点で0.9〜1.0モルとなる範囲が好ましい。
【0013】
【化2】

【0014】
〔式中,Rは置換基を有していてもよいアルキル基,Rは水素原子或いは置換基を有していてもよいアルキル基であり,nは繰り返し数の平均値を示し0〜10の範囲である。〕
【0015】
本発明のエポキシアクリレート樹脂(B)の原料となるエポキシ樹脂(A)は,一般式(1)で表されるエポキシ樹脂であり、例えば、下記一般式(2)で表される置換ビフェノール類とエピハロヒドリン類とを反応させることで製造できる。〔式中,Rは置換基を有していてもよいアルキル基である。〕
【0016】
【化3】

【0017】
ここで繰り返し平均値であるnは特に限定されないが,結晶状の形態を得るためには,0〜1の範囲が好ましい。1以上であると,結晶性が弱まり無定形化し易くなり,作業性の優れる範囲である80〜140℃の範囲の融点を得られにくくなる。
【0018】
置換基であるRはアルキル基であれば特に限定されるものではないが,結晶性を高めるためには,炭素数1〜3の範囲が好ましく,特に好適な融点範囲を得るに好ましくはメチル基である。Rは水素原子或いは置換基を有していてもよいアルキル基であれば,特に限定されるものではないが,エポキシ化剤(エピクロルヒドリン)の入手の容易さや経済性を考慮すれば,水素原子が好ましく,組成物の保存安定性等を考慮すればメチル基が好ましいので,用途や要求特性によって適宜選択すればよい。
【0019】
ここでこのエポキシ樹脂の原料である前記一般式(2)で表される置換ビフェノール類に関して述べる。これの製造方法等は特に限定されるものではないが、例えば、2,6−ジアルコキシフェノール類の2量化カップリング反応が挙げられる。この2量化カップリング反応に関しても,特に方法は限定されるものではなく,例えば,金属系触媒を用いた酸化カップリング反応や,酵素反応を用いた酸化カップリング反応がある。前者が一般的であるが,後者は前者に比較して,反応速度が極めて速く,副生成物が少ないという経済的な利点が大きい。
【0020】
酵素反応を用いた酸化カップリング反応の方法を詳しく述べると,水性媒質中で、2,6−アルコキシフェノール類と、マンガンペルオキシダーゼと、酸化剤と、二価のマンガンイオン(Mn2+)とを反応させてジアルコキシキノン2量体を含む第一生成物を得る第一工程と、前記第一工程に引き続いて該第一生成物に還元剤を添加する第二工程を経ることにより合成できる。具体的には、例えば、マンガンペルオキシダーゼと、2,6−ジアルコキシフェノール類と、硫酸マンガンなどのマンガンの酸化数が+2であるマンガン化合物とを、水やpH緩衝液、またはpH緩衝液と有機溶媒の混合溶液などの水性媒質中に溶解あるいは分散させた反応液を調製し、室温条件下で該反応液に過酸化水素などの酸化剤を添加する第一工程(マンガンペルオキシダーゼとしては、ファネロカエテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)、ファネロカエテ・ソルディダ(Phanerochaete sordida)、カイガラタケ(Lenzites betulinus)、ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)、シイタケ(Lentinus edodes)等の担子菌類が生産するリグニン分解酵素が挙げられ、マンガンペルオキシダーゼの中でも、「ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(The Journal of Biological Chemistry)」、1992年、第267巻、第33号の「MATERIALS AND METHODS」の項に記載されている、担子菌であるファネロカエテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)の培養菌床から単離精製されたマンガンペルオキシダーゼが、ジアルコキシフェノールから後述のジアルコキシキノン2量体を生成する反応の反応触媒活性が高いため好ましい)と、これら第一工程に引き続いて、第一工程で得られた第一生成物に水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤を添加する第二工程を経ることにより、2,6−ジアルコキシキノン類の2量体が第二工程で還元されて2,6−ジアルコキシフェノール類の2量体を合成することができる。
【0021】
また、該エポキシアクリレート樹脂(B)の具体例としては,例えば,下記一般式(3)が挙げられる。(式中のnは繰り返し数の平均値を示し0〜10の範囲であり、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、Rは水素原子或いは置換基を有していてもよいアルキル基、またRは水素原子またはメチル基を表す。)
【0022】
【化4】

【0023】
これらの例としては、下記一般式式(4−1)或いは(4−2)が挙げられる。(式中のnは0〜1であり、Rは一般式(3)と同様である。)
【0024】
【化5】

【0025】
これらの中でも、下記構造式(5−1)〜(5−4)が好ましい。(式中のnは0〜1である。)
【0026】
【化6】

【0027】
次に該エポキシアクリレート樹脂(B)に,更に多塩基酸化合物を反応させた酸変性型エポキシアクリレート樹脂(C)に関して説明すると,該酸変性型エポキシアクリレート樹脂は該エポキシアクリレート樹脂(B)中の水酸基に多塩基酸化合物を反応させて得られるエステル結合を有する化合物からなるエポキシアクリレート樹脂である。
【0028】
この多塩基酸無水物としては,特に限定されるものではないが,例えば無水マレイン酸,無水コハク酸,無水イタコン酸,ドデシル無水コハク酸,テトラヒドロ無水フタル酸,ヘキサヒドロ無水フタル酸,3−メチルテトラヒドロ無水フタル酸,4−メチルテトラヒドロ無水フタル酸,3ーメチルヘキサヒドロ無水フタル酸,4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸,3,4−ジメチルテトラヒドロ無水フタル酸,4−(4−メチル−3−ペンテニル)テトラヒドロ無水フタル酸,3−ブテニル−5,6−ジメチルテトラヒドロ無水フタル酸,3,6−エンドメチレン−テトラヒドロ無水フタル酸,7−メチル−3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸,無水フタル酸,テトラクロロ無水フタル酸,テトラブロモ無水フタル酸,無水クロレンド酸,無水トリメリット酸,無水ピロメリット酸,ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物,メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物などが挙げられるが,なかでも電食性に優れる点からテトラヒドロ無水フタル酸およびヘキサヒドロ無水フタル酸が好ましい。
エポキシアクリレート樹脂(C)中の酸価は,特に限定されるものではないが,30〜140mgKOH/gの範囲のものが好ましく,なかでもアルカリ水溶液に対する溶解性が良好で現像性に優れ,レジスト塗膜の特性にも優れる点で酸価が40〜120mgKOH/gの範囲のものが特に好ましい。このエポキシアクリレート樹脂(C)を得るには,上述した通り,エポキシアクリレート樹脂と多塩基酸無水物とを反応して得られるが,それらの反応割合は特に限定されないが,通常,ゴム変性エポキシビニルエステル樹脂中の水酸基1モルに対し,多塩基酸無水物中の酸無水物基が0.3〜1.0モルとなる割合が挙げられる。
なかでも,アルカリ水溶液に対する溶解性が良好で現像性に優れ,レジスト塗膜の特性にも優れる点からエポキシアクリレート樹脂(B)中の水酸基1モルに対し,多塩基酸無水物中の酸無水物基が0.5〜0.8モルとなる割合で両者を反応させることが好ましい。
【0029】
前記エポキシアクリレート樹脂(C)の具体例としては,前記構造式(5−1)、(5−2)、(5−3)を例にとると、下記構造式(6−1)〜(6−3)で表されるものが挙げられる。(なお、式中のnは繰り返し数の平均値を示し0〜10の範囲である。〕
【0030】
【化7】

【0031】
次いで、本発明の硬化性樹脂組成物に関して説明する。本発明の硬化性樹脂組成物は,前記のエポキシアクリレート樹脂(B)或いはエポキシアクリレート樹脂(C)と重合開始剤を必須成分とする組成物である。重合開始剤としては、光重合開始剤又は熱重合開始剤が挙げられる。この光又は熱重合開始剤としては,一般的にエポキシアクリレート樹脂組成物に使用される開始剤として,種々のものを使用することができる。
【0032】
光開始剤としては,例えばベンゾイン,ベンゾインメチルエーテル,ベンゾインエチルエーテル,ベンゾインイソプロピルエーテル,ベンゾインイソブチルエーテル,ベンジルメチルケタールなどのベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン,2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン,2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン,ジエトキシアセトフェノン,2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン,1,1−ジクロロアセトフェノン,1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン,2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノープロパン−1−オンなどのアセトフェノン類;メチルアントラキノン,2−エチルアントラキノン,2−タシャリーブチルアントラキノン,1−クロロアントラキノン,2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;チオキサントン,2,4−ジエチルチオキサントン,2−クロロチオキサントン,2,4−ジクロロチオキサントン,2−メチルチオキサントン,2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェンノンジメチルケタール,ベンジルジメチルケタールなどのケタ−ル類;ベンゾフェノン,4,4−ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類及びアゾ化合物などが挙げられるが,なかでもアセトフェノン類が好ましい。
【0033】
これらは単独または2種以上の混合物として使用でき,さらにはトリエタノールアミン,メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン;2−ジメチルアミノエチル安息香酸,4−ジメチルアミノ安息香酸エチルなどの安息香酸誘導体などの光開始助剤などと組み合わせて使用することができる。その使用量は,前記のエポキシアクリレート樹脂(B)或いはエポキシアクリレート樹脂(C)100重量部に対して0.3〜20重量部,好ましくは2〜15重量部となる割合が好ましい。
【0034】
また熱重合開始剤としては,ラジカル重合開始剤が使用することができ,例えば,ベンゾイルパーオキサイド,p−クロロベンゾイルパーオキサイド,ジイソプロピルパーオキシカーボネート,ジ−2−エチルヘキシルパーオキシカーボネート,tert−ブチルパーオキシピパレート等の過酸化物,及び1,1’−アゾビスシクロヘキサン−1−カルボニトリル,2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル),2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル),2,2’−アゾビス−(メチルイソブチレート),α,α−アゾビス−(イソブチロニトリル),4,4’−アゾビス−(4−シアノバレイン酸)等のアゾ化合物等を例示することができる。熱重合開始剤の使用量は,エポキシアクリレート樹脂或いはエポキシアクリレート樹脂(C)100重量部に対して,0.02〜60重量部,好ましくは0.05〜2重量部である。
【0035】
アルカリ現像型感光性樹脂組成物は,前記硬化性樹脂組成物に,更に,エポキシ樹脂(D)を配合したものである。前記エポキシ樹脂(D)としては,種々のエポキシ樹脂を使用することができるが,例えば,ビスフェノールA型エポキシ樹脂,ビスフェノールF型エポキシ樹脂,ビスフェノールS型エポキシ樹脂,ビスフェノールAD型エポキシ樹脂,レゾルシン型エポキシ樹脂,ハイドロキノン型エポキシ樹脂,カテコール型エポキシ樹脂,ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂,ビフェニル型エポキシ樹脂,テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等の液状度エポキシ樹脂,フェノールノボラック型エポキシ樹脂,クレゾールノボラック型エポキシ樹脂,トリフェニルメタン型エポキシ樹脂,テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂,ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂,フェノールアラルキル型エポキシ樹脂,ナフトールノボラック型エポキシ樹脂,ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂,ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂,ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂,芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂,ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂,テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂,ブロム化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。また,前記他のエポキシ樹脂は単独で用いてもよく,2種以上を混合してもよい。
【0036】
なかでも,融点が50℃以上のエポキシ樹脂が乾燥後タックのない光重合性皮膜を形成することができ好ましく,硬化性や耐熱性,作業性のバランスをい考慮すると,フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂やジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂などが好ましい。このエポキシ樹脂(D)の使用量の好適な範囲は,通常,前記エポキシアクリレート樹脂(C)中のカルボキシル基1当量当たり,該エポキシ樹脂(D)のエポキシ基が0.2〜3.0当量となる割合である。なかでもプリント配線板にした際の電気特性に優れる点から1.0〜1.5当量となる割合が好ましい。
【0037】
またエポキシアクリレート樹脂(C)とエポキシ樹脂(D)との反応を促進するためにイミダゾールや3級アミン,3級アミン塩などのエポキシ樹脂の硬化促進剤を用いることもできる。
【0038】
また該硬化性樹脂組成物には,上記の必須成分に加えて,希釈剤を用いてもよい。希釈剤は該エポキシアクリレート樹脂或いはエポキシアクリレート樹脂(C)に溶解し,静電塗装法やロールコーター法などの各種塗装方法に適した粘度となるようにして塗布し,ついで乾燥を行い,光重合性皮膜を形成する場合には,必須の構成要件であり,通常,有機溶剤及び光重合性ビニルモノマーが挙げられるが,その使用に際してはそれぞれ単独で使用してもよいし,また,両者を併用してもよい。ここで用いる有機溶剤としては,例えばトルエン,キシレンなどの芳香族炭化水素;メタノール,イソプロピルアルコールなどのアルコール類;酢酸エチル,酢酸ブチルなどのエステル類;1,4−ジオキサン,テトラヒドロフランなどのエーテル類;メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトンなどのケトン類;セロソルブ,ブチルセロソルブ,セロソルブアセテートなどのグリコール誘導体;シクロヘキサノン,シクロヘキサノールなどの脂環式炭化水素及び石油エーテル,石油ナフサなどの石油系溶剤などが挙げられる。これらのなかでも作業性に優れる点からグリコール誘導体と石油系溶剤を併用することが好ましい。
【0039】
また,光重合性ビニルモノマーとしては,例えば,2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート,ラウリル(メタ)アクリレート,シクロヘキシル(メタ)アクリレート,テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート,イソホ゛ロニル(メタ)アクリレート,フェニル(メタ)アクリレート,ベンジル(メタ)アクリレート,フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のエステル類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート,ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;メトキシエチル(メタ)アクリレート,エトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート,ブタンジオールジ(メタ)アクリレート,ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート,1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート,トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート,ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのアルキレンポリオールポリ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,ポリエチレングリコール200ジ(メタ)アクリレート,ポリエトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート,ポリプロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート,ポリエトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート,ポリプロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート,ポリエトキシ化水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート,ポリプロポキシ化水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート,ポリエトキシ化ジシクロペンタニエルジ(メタ)アクリレート,ポリプロポキシ化ジシクロペンタニエルジ(メタ)アクリレートなどのポリオキシアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート類;ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレートなどのエステルタイプのポリ(メタ)アクリレート類;トリス〔(メタ)アクリロキシエチル〕イソシアヌレートなどのイソシアヌレート型ポリ(メタ)アクリレート類;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート,N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート,N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート,t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノアルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリルアミド,N−メチル(メタ)アクリルアミド,N,N−ジメチルアクリルアミド,N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド,(メタ)アクリロイルモルホリンなどの(メタ)アクリルアミド類;ビニルピロリドンなどが挙げられる。これらのなかでもレジスト塗膜の耐熱性に優れる点から3官能以上のアクリレートが好ましい。
【0040】
なお,上記希釈剤の使用量は,特に制限されるものではないが,エポキシアクリレート樹脂(B)或いはエポキシアクリレート樹脂(C)100重量部に対して20〜300重量部,なかでも30〜250重量部となる割合が好ましい。また,前記光重合性ビニルモノマーは光重合性を促進し,水溶性の光重合性ビニルモノマーはアルカリ水溶液への溶解性を助ける役目もするが,前記光重合性ビニルモノマーを少なくした方が,乾燥後タックのない光重合性皮膜を形成することができ,該光重合性皮膜とレジストパターンフィルムとを密着でき,レジストパターンの解像度を向上させることができ,さらに耐薬品性や電気特性なども向上するため,その使用量は前記のエポキシアクリレート樹脂(B)或いはエポキシアクリレート樹脂(C)100重量部に対して50重量部以下,なかでも2〜20重量部であることが好ましい。
【0041】
またさらに必要に応じて各種の添加剤,例えばタルク,硫酸バリウム,シリカ,クレーなどの充填剤;アエロジルなどのチキソトロピー付与剤;フタロシアニンブルー,フタロシアニングリーン,酸化チタンなどの着色剤;シリコーン系,フッ素系のレベリング剤や消泡剤;ハイドロキノン,ハイドロキノンモノメチルエーテルなどの重合禁止剤などをソルダーレジストインキの諸性能を高める目的で添加することが出来る。
【0042】
この様にして得られる本発明の硬化性樹脂組成物は,プリント配線板上にスクリーン印刷法や,静電塗装法,ロールコーター法,カーテンコーター法などにより塗布し,乾燥して得た光重合性皮膜に紫外線などの活性エネルギー線を照射後,希アルカリ水溶液で未露光部分を除去することによりレジストパターンを形成,さらに熱によりポストキュアーすることにより目的とするレジスト皮膜とすることができる。
【0043】
以下に,本発明を実施例及び比較例によって説明するが,これはあくまで一態様でしかなく,本発明はこれらに限定されるものではない。また例中の部及び%はすべて重量基準である。
【実施例】
【0044】
次に本発明を実施例,比較例により具体的に説明するが,以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り重量基準である。尚,150℃における溶融粘度及び軟化点測定,GPC測定,NMR,MSスペクトルは以下の条件にて測定した。
1)150℃における溶融粘度:ASTM D4287に準拠
2)軟化点測定法:JIS K7234
3)GPC:
・装置:東ソー株式会社製 HLC−8220 GPC,カラム:東ソー株式会社製 TSK−GEL G2000HXL+G2000HXL+G3000HXL+G4000HXL
・溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:1ml/min
・検出器:RI
4)NMR:日本電子株式会社製 NMR GSX270
5)MS :日本電子株式会社製 二重収束型質量分析装置 AX505H(FD505H)
【0045】
合成例1 〔テトラメトキシビフェノールの合成〕
以下、単位「M」は「mol/L」を示す。
反応器中で、50mM、pH4.5のマロン酸バッファ(Malonate Buffer)に、後述するマンガンペルオキシダーゼの最終濃度が5μM、2,6‐ジメトキシフェノールの終濃度が0.1Mとなるように添加して、反応液を調製した。さらに、硫酸マンガンを終濃度0.5Mとなるように添加した。さらに、酸化剤として過酸化水素を、終濃度0.05Mとなるように添加し、温度25℃の条件で保持し、経時的に吸光度(*2)を測定した。吸光度の最大が確認された、過酸化水素の添加から5分後に、還元剤を添加した。温度25℃の条件に制御して30秒経過後、下記構造式(7)で表されるテトラメトキシビフェノール160gを得た。得られた化合物の水酸基当量は154g/eq、融点(DSC法)は192℃であった。マススペクトルを測定したところM+=306が確認された。GPCチャートを図1に、C13−NMRチャートを図2に示す。
【0046】
【化8】

【0047】
前記マンガンペルオキシダーゼとしては、ファネロカエテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)の培養菌床から得られたマンガンペルオキシダーゼを用いた。このマンガンペルオキシダーゼの調製方法は以下の通りとした。
【0048】
白色腐朽菌ファネロカエテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)ATCC34541を、Kirk液体培地(組成を表1に示す)で37℃にて培養した。培養は2L三角フラスコ中で上記した培地1Lにて培養し、37℃で3日間培養後、100%酸素をパージし、その後毎日一回酸素パージを行った。所定時間培養した後、培養液を吸引濾過して培養濾液を得、得られた培養濾液を粗酵素溶液とした。粗酵素溶液のpHを7.2に調整後、pH7.2のリン酸緩衝液にて膨潤後カラムに充填されたDEAE Sepharose(DEAE−セファロース)にチャージした。カラム中に充填されたDEAE Sepharoseに吸着されたマンガンペルオキシダーゼを、pH6.0のリン酸緩衝液にて流出させ、回収した。
【0049】
【表1】

【0050】
前記吸光度測定条件:2,6−ジメトキシキノン2量体(2,2’,6,6’−テトラメトキシキノン)の最大吸収波長(469nm)における吸光度を、日立社製吸光光度計「HITACHI U‐3000 spectrophotometer」を用いて測定した。
【0051】
合成例2 〔テトラエトキシビフェノールの合成〕
合成例1の2,6‐ジメトキシフェノールを2,6−ジエトキシフェノールに変更する以外は、合成例1と同様の操作で、下記構造式(8)で表されるテトラエトキシビフェノール160gを得た。得られた化合物の水酸基当量は181g/eq、融点(DSC法)は151℃であった。マススペクトルを測定したところM=362が確認された。
【0052】
【化9】

合成例3 〔エポキシ樹脂(A−1)の合成〕
温度計,滴下ロート,冷却管,撹拌機を取り付けたフラスコに,窒素ガスパージを施しながら,合成例1で得られたテトラメトキシビフェノール154g,エピクロルヒドリン370g(4.0モル),ジメチルスルホキシド370gを仕込み溶解させた。65℃に昇温した後,共沸する圧力まで減圧して,49%水酸化ナトリウム水溶液90g(1.1モル)を5時間かけて滴下した。その後,同条件で0.5時間撹拌を続けた。この間,共沸によって留出してきた留出分をディーンスタークトラップで分離し,水層を除去し,油層を反応系内に戻しながら,反応を行った。その後,未反応のエピクロルヒドリンおよびジメチルスルホキシドを減圧蒸留によって留去させた。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン590gとn−ブタノール177gとを加え溶解した。更にこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液10gを添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のPHが中性となるまで水150gで水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し,精密濾過を経た後に,溶媒を減圧下で留去して樹脂206gを得た。その樹脂はマススペクトルでn=1,n=2の理論構造に相当するM=418,M=780のピークが得られたことから下記構造式で表される構造をもつ目的のエポキシ樹脂(A−1)であることが確認された。また得られたエポキシ樹脂の融点(DSC法)は129℃,150℃の溶融粘度は0.2dPa・s,エポキシ当量は220g/eqであった。
【0053】
【化10】

【0054】
合成例4 〔エポキシ樹脂(A−2)の合成〕
実施例1のテトラメトキシビフェノール154gを合成例2で得られたテトラエトキシビフェノール181gに変更する以外は、実施例1と同様の操作で樹脂230gを得た。その樹脂はマススペクトルでn=1,n=2の理論構造に相当するM=474,M=892のピークが得られたことから下記構造式で表される構造をもつ目的のエポキシ樹脂(A−2)であることが確認された。また得られたエポキシ樹脂の融点(DSC法)は120℃,150℃の溶融粘度は0.1dPa・s,エポキシ当量は248g/eqであった。
【0055】
【化11】

【0056】
実施例1
合成例3より得られたエポキシ樹脂(A−1)220部とアクリル酸72部(エポキシ基の数:総カルボキシル基の数=1:1)とを反応させて樹脂292部と得た。その樹脂は,マススペクトルでn=1,n=2の理論構造に相当するM=562,M=922のピークが得られたことから構造式(5−1)で表される構造をもつ目的のエポキシアクリレート樹脂(B−1)であることが確認された。さらにエポキシアクリレート樹脂(B−1)292部とテトラヒドロ無水フタル酸106部(水酸基の数:酸無水物基の数=1:0.7)とを,ブチルカルビトールアセテート171部中で反応させ,酸価が98mgKOH/gの樹脂を70%含有する樹脂溶液(C’−1)を得た。この樹脂溶液(C’−1)にはマススペクトルでn=1,n=2の理論構造に相当するM=866,M=1226のピークが得られたことから目的のエポキシアクリレート樹脂(C−1)を含有することが確認された。この樹脂溶液(C’−1)と共に,光重合開始剤,有機溶剤および充填材とを下記の通り配合し,3本ロールミルを用いて混練して,主剤を調製した。次いで,エポキシ樹脂と有機溶剤及び重点剤を下記配合に従って配合し,3本ロールを用いて混練りして,硬化剤を調整した。
【0057】
(配合)
主剤(合計 100部);〔樹脂溶液(C’−1)50部,2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン 5部,ブチルセロソルブ 15部,硫酸バリウム 30部〕
硬化剤(硬化剤合計 30部);〔クレゾールノボラック型エポキシ樹脂 「EPICLONN−680」(大日本インキ化学工業(株)製)15部,ブチルセロソルブ 5部,硫酸バリウム 10部〕
【0058】
次に,この主剤と硬化剤を混合した後,この混合物を予め回路の形成されたフレキシブルプリント配線板(カプトン25μm/銅箔35μm,線幅500μm,線間500μm)上に15〜25μmの厚みになるようにスクリーン印刷法により全面に塗布し,80℃で20分間乾燥させた後,レジストパターンフィルムを塗布面に密着させ,オーク製作所製メタルハライドランプ露光装置を用いて60秒間露光し,次に液温30℃の1%炭酸ナトリウム水溶液を用いて60秒間現像を行い,その後熱風乾燥器を用い150℃で30分間加熱処理してレジストパターンが形成されたフレキシブルプリント配線板を得た。次いで,以下に示す評価試験方法に従って測定した結果を表2に示す。
【0059】
実施例2
合成例3より得られたエポキシ樹脂(A−1)220部とメタリル酸86部(エポキシ基の数:総カルボキシル基の数=1:1)とを反応させて樹脂306部と得た。その樹脂は,マススペクトルでn=1,n=2の理論構造に相当するM=590,M=950のピークが得られたことから構造式(5−2)で表される構造をもつエポキシアクリレート樹脂(B−2)であることが確認された。さらにエポキシアクリレート樹脂(B−2)306部とテトラヒドロ無水フタル酸106部(水酸基の数:酸無水物基の数=1:0.7)とを,ブチルカルビトールアセテート177部中で反応させ,酸価が95mgKOH/gの樹脂を70%含有する樹脂溶液(C’−2)を得た。この樹脂溶液(C’−2)にはマススペクトルでn=1,n=2の理論構造に相当するM=894,M=1254のピークが得られたことから一般式(7)で表される構造をもつ目的のエポキシアクリレート樹脂(C−2)を含有することが確認された。次いで,下記のごとき配合にした以外は実施例1と同様にして,ソルダーレジストインキ組成物を調製した後,更に同様にしてレジストパターンが形成されたフレキシブルプリント配線板を得た。次いで,以下に示す評価試験方法に従って測定した結果を表2に示す。
(配合)
主剤(合計 100部);〔樹脂溶液(C’−2)50部,2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン 5部,ブチルセロソルブ 15部,硫酸バリウム 30部〕
硬化剤(合計 30部);〔クレゾールノボラック型エポキシ樹脂 「EPICLON N−680」(大日本インキ化学工業(株)製)15部,ブチルセロソルブ 5部,硫酸バリウム 10部〕
実施例3
合成例4より得られたエポキシ樹脂(A−2)248部とメタリル酸72部(エポキシ基の数:総カルボキシル基の数=1:1)とを反応させて樹脂320部と得た。その樹脂は,マススペクトルでn=1,n=2の理論構造に相当するM=618,M=1036のピークが得られたことから構造式(5−3)で表される構造をもつ目的のエポキシアクリレート樹脂(B−3)であることが確認された。さらにエポキシアクリレート樹脂(B−3)320部とテトラヒドロ無水フタル酸106部(水酸基の数:酸無水物基の数=1:0.7)とを,ブチルカルビトールアセテート183部中で反応させ,酸価が92mgKOH/gの樹脂を70%含有する樹脂溶液(C’−3)を得た。この樹脂溶液(C’−3)にはマススペクトルでn=1,n=2の理論構造に相当するM=922,M=1340のピークが得られたことから一般式(8)で表される構造をもつ目的のエポキシアクリレート樹脂(C−3)を含有することが確認された。次いで,下記のごとき配合にした以外は実施例1と同様にして,ソルダーレジストインキ組成物を調製した後,更に同様にしてレジストパターンが形成されたフレキシブルプリント配線板を得た。次いで,以下に示す評価試験方法に従って測定した結果を表2に示す。
【0060】
(配合)
主剤(合計 100部);〔樹脂溶液(C’−3)50部,2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン 5部,ブチルセロソルブ 15部,硫酸バリウム 30部〕
硬化剤(合計 30部);〔クレゾールノボラック型エポキシ樹脂 「EPICLON N−680」(大日本インキ化学工業(株)製)15部,ブチルセロソルブ 5部,硫酸バリウム 10部〕
【0061】
比較例1
エポキシ当量が188g/eq.のBPA型液状エポキシ樹脂 EPICLON850(大日本インキ化学工業(株)製)188部とアクリル酸72部(エポキシ基の数:総カルボキシル基の数=1:1)とを反応させて得られたエポキシアクリレート樹脂260部と,テトラヒドロ無水フタル酸91部(水酸基の数:酸無水物基の数=1:0.6)とを,ブチルカルビトールアセテート150部中で反応させ,酸価が96mgKOH/gのエポキシアクリレートを70%含有する樹脂溶液(C’−4)を得た。
次いで,下記のごとき配合にした以外は実施例1と同様にして,比較用のソルダーレジストインキ組成物を調製した後,更に同様にしてレジストパターンが形成されたフレキシブルプリント配線板を得た。次いで,以下に示す評価試験方法に従って測定した結果を表2に示す。
【0062】
(配合)
主剤(合計 100部);〔樹脂溶液(C’−4)50部,2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン 5部,ブチルセロソルブ 15部,硫酸バリウム 30部〕
硬化剤(硬化剤合計 30部);〔クレゾールノボラック型エポキシ樹脂 「EPICLON N−680」(大日本インキ化学工業(株)製)15部,ブチルセロソルブ 5部,硫酸バリウム 10部〕
【0063】
比較例2
エポキシ当量が475g/eq.のBPA型固形エポキシ樹脂「EPICLON1050」(大日本インキ化学工業(株)製)475部とアクリル酸72部(エポキシ基の数:総カルボキシル基の数=1:1)とを反応させて得られたエポキシアクリレート樹脂547部と,テトラヒドロ無水フタル酸137部(水酸基の数:酸無水物基の数=1:0.9)とを,ブチルカルビトールアセテート293部中で反応させ,酸価が74mgKOH/gのエポキシアクリレートを70%含有する樹脂溶液(C’−5)を得た。
次いで,下記のごとき配合にした以外は実施例1と同様にして,比較用のソルダーレジストインキ組成物を調製した後,更に同様にしてレジスト パターンが形成されたフレキシブルプリント配線板を得た。次いで,以下に示す評価試験方法に従って測定した結果を表2に示す。
【0064】
(配合)
主剤(合計 100部);〔樹脂溶液(C’−5)50部,2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン 5部,ブチルセロソルブ 15部,硫酸バリウム 30部〕
硬化剤(硬化剤合計 30部);〔クレゾールノボラック型エポキシ樹脂 「EPICLON N−680」(大日本インキ化学工業(株)製)15部,ブチルセロソルブ 5部,硫酸バリウム 10部〕
【0065】
比較例3
エポキシ当量が215g/eq.のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂 「EPICLON N−680」(大日本インキ化学工業(株)製)215部とアクリル酸72部(エポキシ基の数:総カルボキシル基の数=1:1)とを反応させて得られたエポキシアクリレート樹脂287部と,テトラヒドロ無水フタル酸106部(水酸基の数:酸無水物基の数=1:0.7)とを,ブチルカルビトールアセテート168部中で反応させ,酸価が100mgKOH/gのエポキシアクリレートを70%含有する樹脂溶液(C’−5)を得た。次いで,下記の配合にした以外は実施例1と同様にして,比較用のソルダーレジストインキ組成物を調製した後,更に同様にしてレジストパターンが形成されたフレキシブルプリント配線板を得た。次いで,以下に示す評価試験方法に従って測定した結果を表2に示す。
【0066】
(配合)
主剤(合計 100部);〔樹脂溶液(C’−5)50部,2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン 5部,ブチルセロソルブ 15部,硫酸バリウム 30部〕
硬化剤(硬化剤合計 30部);〔クレゾールノボラック型エポキシ樹脂 「EPICLONN−680」(大日本インキ化学工業(株)製)15部 ブチルセロソルブ 5部 硫酸バリウム 10部〕
【0067】
[評価試験方法]
密着性:レジスト パターンが形成されたフレキシブルプリント配線板を用い,JIS D−2020の試験方法に従って碁盤目状にクロスカットを入れ,次いでセロハンテープで剥離試験を行った。
○:100の測定点中全く剥がれが認められないもの。
△:100の測定点中1〜50の点で剥がれが認められたもの。
×:100の測定点中で51〜100の点で剥がれが認められたもの。
【0068】
可撓性:180°の外折り内折り試験(MIT試験)R=0.38mmφによるクラック発生までの折り曲げ回数で判定した。
半田耐熱性:JIS C−6481の試験法に従って,レジストパターンが形成されたフレキシブルプリント配線板を260℃の半田浴に10秒間フロートさせる。これを1サイクルとし,フロートさせた後,塗膜にフクレや剥がれなどの異常が発生するまでのサイクル数を測定した。
【0069】
絶縁抵抗:レジストパターンが形成されたフレキシブルプリント配線板を,60℃,90%RHの雰囲気下で24Vに印加し,400時間後の絶縁抵抗値を東亜電波製SM−10E(500V印加)を用いて測定した。
【0070】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】合成例1ので得られた構造式(3)のGPCチャートである。
【図2】合成例1ので得られた構造式(3)の13C−NMRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

〔式中,Rは置換基を有していてもよいアルキル基,Rは水素原子或いは置換基を有していてもよいアルキル基であり,nは繰り返し数の平均値を示し0〜10の範囲である。〕で表されるエポキシ樹脂(A)に,アクリル酸及び/または(メタ)アクリル酸を反応させて得られることを特徴とするエポキシアクリレート樹脂(B)。
【請求項2】
前記一般式(1)中のRがメチル基である請求項1記載のエポキシアクリレート樹脂(B)。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエポキシアクリレート樹脂に,更に,多塩基酸化合物を反応させて得られるエポキシアクリレート樹脂(C)。
【請求項4】
請求項1または2に記載のエポキシアクリレート樹脂(B)と重合開始剤とを含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項3に記載のエポキシアクリレート樹脂(C)と重合開始剤とを含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項3に記載のエポキシアクリレート樹脂(B)と光重合開始剤とを含有するアルカリ現像型感光性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項6記載のアルカリ現像型感光性樹脂組成物に加えて,更に、エポキシ樹脂を含有するアルカリ現像型感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−63322(P2007−63322A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−247545(P2005−247545)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】