説明

エポキシ樹脂組成物

【課題】
本発明はハロゲン化合物やアンチモン化合物などの難燃剤を使用することなく、その硬化物において難燃性を示す半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】
エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填剤を含有するエポキシ樹脂組成物であって、該エポキシ樹脂が、下記式(1)
【化1】


(式中、nは平均の繰り返し数を示す。)
におけるnが1.0以上3.0以下であるフェノール樹脂と、フェノール樹脂の水酸基当量に対して3〜10倍モルのエピハロヒドリンとを反応させて得られるエポキシ樹脂であるエポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は難燃性に優れた硬化物を与える半導体封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂組成物は、作業性及びその硬化物の優れた電気特性、耐熱性、接着性、耐湿性(耐水性)等により、電気・電子部品、構造用材料、接着剤、塗料等の分野で幅広く用いられている。
【0003】
近年、電気・電子分野においては、その発展に伴い、樹脂組成物の高純度化をはじめ耐湿性、密着性、誘電特性、フィラー(無機または有機充填剤)の高充填を目的とした低粘度化、成型サイクルの短縮を目的とした反応性の改善等諸特性の一層の向上が求められている。又、構造材としては、航空宇宙材料、レジャー・スポーツ器具用途などにおいて軽量かつ機械物性の優れた材料が求められている。特に半導体封止分野や基板関連分野(基板自体、もしくはその周辺材料)においては、年々薄型化されるのに伴い、材料に求められる特性として耐熱性はもちろんのこと、柔軟性が求められるようになってきている。更に、電気・電子部品には難燃剤としてハロゲン系エポキシ樹脂と三酸化アンチモンが多用されているが、これらを使用した製品は、その廃棄後の不適切な処理によりダイオキシン等の有毒物質の発生に寄与することが環境問題として指摘されている。
上記の問題を解決する方法の一つとして、リン原子を骨格に有するエポキシ樹脂が提案されており、通常のリン酸エステルタイプの化合物に比べて安定性の良い環状リン酸エステル化合物が使用されている。しかしながら、現在、特に半導体封止材の分野においては、リン系難燃剤すら使用せずに難燃化できるような、一般にノンハロゲン、ノンアンチモン、ノンリンと呼ばれる難燃性が求められており、リン酸エステル化合物を使用しなくても、樹脂骨格を選ぶことで従来のエポキシ樹脂に比べて難燃性に優れたエポキシ樹脂が開発されてきているが、その難燃性は未だ市場要求を満たすものではない。
特許文献1は、フェニルフェノールノボラック型エポキシ樹脂を使用した難燃性エポキシ樹脂組成物に関するもので、その実施例には、エポキシ当量270g/eq.のオルトフェニルフェノールノボラック型エポキシ樹脂を使用した組成物が開示されており、溶剤に溶解させた該組成物を用いて得られたプリプレグから積層板を作成し、その難燃性について評価を行っている。また同特許文献の比較例では、オルトフェニルフェノールノボラック型エポキシ樹脂に硬化剤としてフェノールノボラックを使用したエポキシ樹脂組成物を用いて作成した積層板の難燃性を評価しているが、この場合、難燃性が発現しない(燃焼してしまう)旨が記載されている。
ここで、本明細書中に後記する式(1)においてn=1のオルトフェニルフェノールノボラックをエポキシ化した場合の理論エポキシ当量は232g/eq.であり、n=5であれば236g/eq.である。このことから、基本構造が同一であり、かつ十分にエポキシ化されているノボラック型エポキシ樹脂においては、エポキシ当量が大きくなれば分子量も大きくなることが予測できる。すなわち、同特許文献の実施例で用いているエポキシ当量が270g/eq.のオルトフェニルフェノールノボラック型エポキシ樹脂はかなり分子量の大きいエポキシ樹脂であることが推察される。この様な高分子量のエポキシ樹脂は溶融粘度が高いため溶剤で溶解しなければ成型できず、半導体封止材用途には適さない。また硬化剤としてのフェノールノボラックとの組み合わせにおいて難燃性が発現できないことから、このままでは様々な用途における汎用性に乏しい。
【0004】
【特許文献1】特開2002−226557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はハロゲン化合物やアンチモン化合物、リン系化合物などの難燃剤を使用しなくとも、その硬化物が優れた難燃性を有するエポキシ樹脂組成物および半導体装置を提供し、環境負荷の大きい難燃剤の使用量の低減を促進することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意研究した結果、本発明を完成させるに到った。
【0007】
すなわち本発明は
(1)エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填剤を含有するエポキシ樹脂組成物であって、該エポキシ樹脂が、下記式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、nは平均の繰り返し数を示す。)
におけるnが1.0以上3.0以下であるフェノール樹脂と、フェノール樹脂の水酸基当量に対して3〜10倍モルのエピハロヒドリンとを反応させて得られるエポキシ樹脂であるエポキシ樹脂組成物、
(2)式(1)におけるnが、1.0以上2.3以下である前項(1)に記載のエポキシ樹脂組成物、
(3)式(1)におけるnが、1.0以上2.0未満である前項(2)に記載のエポキシ樹脂組成物、
(4)エポキシ樹脂のエポキシ当量が235〜265g/eq.である前項(1)乃至(3)のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物、
(5)エポキシ樹脂のエポキシ当量が240〜265g/eq.である前項(4)に記載のエポキシ樹脂組成物、
(6)無機充填剤の含有量が、エポキシ樹脂の総量に対し、70〜95質量%である前項(1)乃至(5)のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物、
(7)硬化剤が、メチレン基を結合基として有するノボラック型フェノール樹脂及び/又はフェノールアラルキル樹脂である前項(1)乃至(6)のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物、
(8)前項(1)乃至(7)のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物、
(9)前項(1)乃至(7)のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を用いて封止された半導体装置、
(10)前項(1)記載の式(1)におけるnが1.0以上3.0以下であるフェノール樹脂と、フェノール樹脂の水酸基当量に対して、3〜10倍モルのエピハロヒドリンとを反応させることを特徴とするエポキシ樹脂の製造方法、
(11)式(1)におけるnが1.0以上2.3以下である前項(10)に記載のエポキシ樹脂の製造方法、
(12)式(1)におけるnが1.0以上2.0未満である前項(11)に記載のエポキシ樹脂の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、ハロゲン化合物やアンチモン化合物、リン系化合物を使用しなくてもその硬化物が難燃性を発現するため、組成物中のハロゲン化合物やアンチモン化合物、リン系化合物の低減に寄与するエポキシ樹脂組成物であり、電気・電子部品用絶縁材料及び積層板(プリント配線板、ビルドアップ基板など)やFRP(繊維強化プラスチック)を始めとする各種複合材料、接着剤、塗料等に有用である。特に半導体素子を保護する半導体封止材料にきわめて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のエポキシ樹脂組成物は半導体の封止材に好適であり、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤を必須成分として含有するエポキシ樹脂組成物である。
【0012】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、式(1)
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、nは平均の繰り返し数を示す。)
で表されるフェニルフェノールノボラック(以下P2Nと表記する)とエピハロヒドリンとを反応させることによって得られるエポキシ樹脂を必須成分とする。
式(1)中のnの値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)から算出される。
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂の原料となるP2Nとしては、式(1)のnの値が通常1.0以上3.0以下、好ましくは1.0以上2.7以下、より好ましくは1.0以上2.3以下、とりわけ好ましくは1.0以上2.0未満の範囲のものである。また、n=1体のP2N総質量中に占める割合が30質量%以上のものが好ましく、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。
また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)と前記(Mw)の比(Mw/Mn)が、1〜2のものが好ましく、さらに好ましくは1〜1.5、特に好ましくは1〜1.3である。
【0015】
P2Nは、通常、フェニルフェノールとホルムアルデヒド(もしくはその等価体)を酸性、あるいは塩基性条件下で反応させることで得られる。
この際、通常、過剰なフェニルフェノールをホルムアルデヒド(もしくはその等価体)と反応させ、反応終了後、必要に応じて精製を行った後、減圧下高温で反応に関与せずに残存しているフェニルフェノールを除去することでP2Nが得られる。しかしながら、フェニルフェノールはその沸点が非常に高く除去が難しいため、フェニルフェノールができるだけ残らないようなP2Nの製造法が好ましい。単体のフェニルフェノールがP2N中に多量(具体的にはゲルパーミエーションクロマトグラフィーで20面積%を超えるような量)に残存した場合、後のエポキシ化反応により得られるエポキシ樹脂中には、官能基を1つしか有しておらず架橋に関与しない単体のフェニルフェノールのエポキシ化物が多量(上記多量と同程度)に含まれるため、硬化物の架橋密度を下げる結果となり、その耐熱性に悪影響を及ぼす。P2Nに残存する単体のフェニルフェノールの量は5面積%以下が好ましく、さらに好ましくは2面積%以下である。
従って、フェニルフェノールに対して多量のホルムアルデヒド(もしくはその等価体)を用いることによりフェニルフェノールをできるだけ多く反応させる手法、あるいは分子量制御によりできるだけ少量のフェニルフェノールでP2Nを製造する手法などを用いることが好ましい。特に本発明の主目的である半導体封止用途においては、大量(少なくとも50質量%以上)の無機充填剤を添加する必要があることから低粘度のエポキシ樹脂が求められるため、後者の製法が特に好ましい。
このような製造法の具体的な事例としては、特開2007−126683号公報、特開2007−119534号公報、WO2003/042267号公報、特開平08−003257号公報、特開2005−029504号公報、特開2004−339258号公報、特開2004−339257号公報、特開2004−339256号公報、特開平06−135872号公報などに記載の方法が挙げられる(ただし、これら事例に限定されるものではない。)。
【0016】
P2Nとエピハロヒドリンとの反応に用いられるエピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリン、α−メチルエピクロルヒドリン、γ−メチルエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン等が挙げられるが、工業的に入手が容易なエピクロルヒドリンが好ましい。エピハロヒドリンの使用量は、P2Nの水酸基1モルに対し通常4〜10モルであり、好ましくは4〜8モルである。
【0017】
上記エポキシ化反応においては、アルカリ金属水酸化物を使用することが好ましい。該アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。なお、アルカリ金属水酸化物を、固形物として利用してもよいし、その水溶液として利用してもよい。例えば、アルカリ金属水酸化物を水溶液として使用する場合は、アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に、減圧下又は常圧下で連続的に水及びエピハロヒドリンを留出させ、分液により留出物から水を除去してエピハロヒドリンを反応系内に連続的に戻す方法によりエポキシ化反応を行うことができる。またアルカリ金属水酸化物の固形物を使用する場合、その取り扱い易さや溶解性等の問題からフレーク状の物を使用することが好ましい。アルカリ金属水酸化物の使用量は、P2Nの水酸基1モルに対して通常0.90〜1.5モルであり、好ましくは0.95〜1.25モルであり、より好ましくは0.99〜1.15モルである。
【0018】
上記エポキシ化反応においては、反応を促進するためにテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加することが好ましい。4級アンモニウム塩の使用量は、P2Nの水酸基1モルに対し通常0.1〜15gであり、好ましくは0.2〜10gである。
【0019】
上記エポキシ化反応においては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の非プロトン性極性溶媒などを添加して反応を行うことが反応進行上好ましい。
上記アルコール類を使用する場合、その使用量は、エピハロヒドリンの使用量に対し通常2〜50質量%であり、好ましくは4〜20質量%である。一方、上記非プロトン性極性溶媒を用いる場合、その使用量は、エピハロヒドリンの使用量に対し通常5〜100質量%であり、好ましくは10〜80質量%である。
【0020】
上記エポキシ化反応において、反応温度は通常30〜90℃であり、好ましくは35〜80℃である。一方、反応時間は通常0.5〜10時間であり、好ましくは1〜8時間である。これらのエポキシ化反応の反応物は、水洗後、または水洗無しに加熱減圧下でエピハロヒドリンや溶媒等を除去することにより精製され得る。また、更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、回収した反応物をトルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて、副生成物の閉環反応を行い、副生成物であるハロヒドリンの閉環を確実なものにすることもできる。
この場合、アルカリ金属水酸化物の使用量は、エポキシ化に使用したP2Nの水酸基1モルに対して通常0.01〜0.3モルであり、好ましくは0.05〜0.2モルである。また、反応温度は通常50〜120℃であり、反応時間は通常0.5〜2時間である。
【0021】
上記エポキシ化反応においては、反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に加熱減圧下溶剤を留去することにより本発明に使用できるエポキシ樹脂を得ることができる。
【0022】
このようにして得られるエポキシ樹脂(以降、便宜上本発明のエポキシ樹脂と称する)は以下のような条件を満たすことが好ましい。
(I)1官能体(グリシジルオキシフェニルフェノール)の含有量が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定において、20面積%以下、より好ましくは10面積%以下、さらに好ましくは5面積%以下であること(0面積%が最も好ましいが工業的には困難である。)。1官能体が多い場合、架橋密度の低下による耐熱性の低下、エポキシ樹脂組成物硬化時のアウトガスの原因、金型汚れの原因などの悪影響が出る恐れがあることから好ましくない。
(II)2官能体(メチリデンビス(グリシジルオキシビフェニル))の含有量が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定において、30面積%以上、より好ましくは40面積%以上、さらに好ましくは50面積%以上であること。低粘度という特性からは100面積%が望まれるが、精製に多大なコストが掛かるため現実的ではなく、低粘度化とコストの両立という意味で98面積%以下、特に95面積%以下であることが好ましい。また耐熱性が必要な場合は2官能体を85面積%以下、特に80面積%以下とし、3官能体以上の多官能体を増やす事が好ましい。
(III)エポキシ当量は、通常235〜265g/eq.であり、好ましくは240〜265g/eq.、さらに好ましくは245〜260g/eq.である。エポキシ当量がこの範囲を上回る場合の主原因はP2Nのエポキシ化反応が不十分なことであり、その結果として硬化性の低下、硬化物の耐熱性の低下、電気信頼性への悪影響などの問題が出る可能性が高く、好ましくない。
(IV)粘度は150℃において、通常0.01〜1.0Pa・sであり、好ましくは0.01〜0.7Pa・s、さらに好ましくは0.01〜0.5Pa・sである。この範囲以下の粘度はゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定における1官能体量が20面積%範囲以上にならなければ達成できない為、前述の1官能体の部分に記載した問題が生じる。また、本発明は半導体封止に好適な樹脂組成物であり、無機充填剤を多く入れる必要があることから、粘度が前記の範囲以上の場合には無機充填剤の添加量が制限される為、封止材として使用するのは非常に困難である。
【0023】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、式(1)で表されるエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を併用することが出来る。
併用しうるエポキシ樹脂の代表的なものとしては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂などが挙げられる。特にフェノールアラルキル型のエポキシ樹脂は、本発明のエポキシ樹脂組成物の難燃性を阻害する効果が少ないため好ましい。またハロゲン化フェノール化合物(もしくは樹脂)のエポキシ化物は、環境問題および電気特性の問題からその併用は極力避けた方が良く、仮に使用する場合でもエポキシ樹脂の全量に対するその使用量は5質量%以下、好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは5000ppm以下に抑えるべきである。
【0024】
本発明のエポキシ樹脂と併用できる他のエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール、ビスフェノールAD等)またはフェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、芳香族置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、アルキル置換ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒド(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アルキルアルデヒド、ベンズアルデヒド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒド等)との重縮合物;前記フェノール類と各種ジエン化合物(ジシクロペンタジエン、テルペン類、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル、ブタジエン、イソプレン等)との重合物;前記フェノール類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等)との重縮合物;前記フェノール類と芳香族ジメタノール類(ベンゼンジメタノール、ビフェニルジメタノール等)との重縮合物;前記フェノール類と芳香族ジクロロメチル類(α,α’−ジクロロキシレン、ビスクロロメチルビフェニル等)との重縮合物;前記フェノール類と芳香族ビスアルコキシメチル類(ビスメトキシメチルベンゼン、ビスメトキシメチルビフェニル、ビスフェノキシメチルビフェニル等)との重縮合物;前記ビスフェノール類と各種アルデヒドの重縮合物またはアルコール類等をグリシジル化したグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂等が挙げられるが、通常用いられるエポキシ樹脂であればこれらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、全エポキシ樹脂成分中の本発明のエポキシ樹脂の割合は50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。
【0025】
本発明のエポキシ樹脂組成物が含有する硬化剤としては、例えばアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物、カルボン酸系化合物などが挙げられる。使用できる硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン等のアミン系化合物;ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂等のアミド系化合物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物系化合物;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタンや、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、フルフラールとの重縮合物であるノボラック樹脂や、フェノールまたはクレゾールとフェニレンジメチロール体、ジメトキシメチル体もしくはハロゲン化メチル体との反応物または、フェノールまたはクレゾールとビスクロロメチルビフェニル、ビスメトキシメチルビフェニルもしくはビスヒドロキシメチルビフェニルとの反応物または、フェノールとベンゼンジイソプロパノール、ベンゼンジイソプロパノールジメチルエーテルもしくはベンゼンビス(クロロイソプロパン)との反応物であるフェノールアラルキル樹脂及びこれらの変性物や、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類や、テルペンとフェノール類の縮合物等のフェノール系化合物、イミダゾール、トリフルオロボラン−アミン錯体、グアニジン誘導体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0026】
これら硬化剤の中でも、本発明のエポキシ樹脂組成物においては、耐熱性、耐薬品性、電気信頼性の面からフェノール系化合物を硬化剤とすることが好ましく、その中でも特に難燃性の面からノボラック型であるフェノールノボラック樹脂またはクレゾールノボラック樹脂や、フェノールアラルキル樹脂が好ましい。また本発明においては、その軟化点が50〜100℃の硬化剤を用いることが好ましい。硬化剤の軟化点が低い方が本発明のエポキシ樹脂組成物の流動性及び硬化物の難燃性は向上する傾向があるが、硬化物の耐熱性向上のためには軟化点の高い硬化剤を使用することが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物において硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.8〜1.1当量が好ましい。エポキシ基1当量に対して、0.8当量に満たない場合あるいは1.1当量を超える場合には、いずれも硬化が不完全となり良好な硬化物性が得られない恐れがある。また本発明においてエポキシ樹脂と硬化剤の好ましい組み合わせとしては、軟化点45〜70℃のエポキシ樹脂(より好ましくは50〜65℃)と軟化点50〜100℃(好ましくは55〜85℃)の硬化剤である。この範囲の軟化点を有するエポキシ樹脂と硬化剤を組み合わせることにより、流動性、難燃性、耐熱性の面でバランスの取れた特性を有する樹脂組成物となる。
【0027】
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、硬化促進剤を含有させても差し支えない。使用できる硬化促進剤の具体例としては2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾ−ル類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物等が挙げられる。硬化促進剤は、本発明のエポキシ樹脂組成物が含有する全エポキシ樹脂成分100質量部に対して0.1〜5.0質量部が必要に応じ用いられる。
【0028】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、リン含有化合物を難燃性付与成分として含有させることもできる。リン含有化合物としては反応型のものでも添加型のものでもよい。リン含有化合物の具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシリレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル−2,6−ジキシリレニルホスフェート、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4'−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)等のリン酸エステル系化合物;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のホスファン類;エポキシ樹脂と前記ホスファン類の活性水素とを反応させて得られるリン含有エポキシ化合物、赤リン等が挙げられるが、リン酸エステル類、ホスファン類またはリン含有エポキシ化合物が好ましく、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4'−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)またはリン含有エポキシ化合物が特に好ましい。
しかしながら、環境問題および電気特性の懸念から、前述のようなリン酸エステル系化合物の使用量は本発明のエポキシ樹脂組成物が含有する全エポキシ樹脂成分100質量部に対して0.1質量部以下が好ましく、さらに好ましくは0.05質量部以下である。特に好ましくは、硬化促進剤として添加する以外のリン系化合物は添加しないことである。
【0029】
本発明のエポキシ樹脂組成物は無機充填剤を含有する。無機充填剤としては溶融シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、クレー、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、酸化鉄、酸化チタン、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、マイカ、ガラス、石英、雲母などが挙げられる。さらに難燃効果を付与するため、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物を使用することも好ましい。ただし、これらに限定されない。また2種以上を混合して使用しても良い。これら無機充填剤のうち、溶融シリカや結晶性シリカなどのシリカ類はコストが安く、電気信頼性も良好なため好ましい。本発明のエポキシ樹脂組成物において、無機充填剤の使用量は内割りで通常60〜95質量%、好ましくは70〜95質量%、より好ましくは75〜90質量%の範囲である。無機充填剤が少なすぎると難燃性の効果が得られず、多すぎると封止する半導体素子が銅系リードフレームに搭載されている場合に、封止樹脂とリードフレームの線膨張率の違いによってヒートショックなどの熱応力による不具合が発生する可能性がある。
【0030】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、成形時の金型からの離型性を改善するために離型剤を配合することができる。離型剤としては従来公知のものがいずれも使用できるが、例えばカルナバワックス、モンタンワックスなどのエステル系ワックス、ステアリン酸、パルチミン酸などの脂肪酸およびこれらの金属塩、酸化ポリエチレン、非酸化ポリエチレンなどのポリオレフィン系ワックスなどが挙げられる。これらは単独で使用しても2種以上併用しても良い。これら離型剤の配合量は全有機成分に対して0.5〜3質量%が好ましい。離型剤が少なすぎると金型からの離型性が改善されず、多すぎるとリードフレームなどとの接着性が低下する。
【0031】
本発明のエポキシ樹脂組成物には無機充填剤と樹脂成分との接着性を高めるためにカップリング剤を配合することができる。カップリング剤としては従来公知のものがいずれも使用できるが、例えばビニルアルコキシシラン、エポキアルコキシシラン、スチリルアルコキシシラン、メタクリロキシアルコキシシラン、アクリロキシアルコキシシラン、アミノアルコキシシラン、メルカプトアルコキシシラン、イソシアナートアルコキシシランなどの各種アルコキシシラン化合物、アルコキシチタン化合物、アルミニウムキレート類などが挙げられる。これらは単独で使用しても2種以上併用しても良い。カップリング剤の添加方法は、カップリング剤であらかじめ無機充填剤表面を処理した後に樹脂と混練しても良いし、樹脂にカップリング剤を混合してから無機充填剤を混練しても良い。
【0032】
更に本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて公知の添加剤を配合することが出来る。用いうる添加剤の具体例としては、ポリブタジエン及びこの変性物、アクリロニトリル共重合体の変性物、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリイミド、フッ素樹脂、マレイミド系化合物、シアネートエステル系化合物、シリコーンゲル、シリコーンオイル、並びにカーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の着色剤などが挙げられる。
【0033】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、各成分を均一に分散混合できる従来公知のいかなる手法を用いても製造することができる。例えば各成分を全て粉砕してからヘンシェルミキサーなどで混合後、加熱ロールによる溶融混練、ニーダーによる溶融混練、特殊混合機による混合、あるいはこれら各方法の適切な組み合わせを用いることで調製される。また、本発明の半導体装置はリードフレームなどに搭載された半導体素子を、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いてトランスファー成形などにより樹脂封止することで製造することができる。
【0034】
本発明の半導体装置は、本発明のエポキシ樹脂組成物で封止された半導体装置である。半導体装置としては、例えばDIP(デュアルインラインパッケージ)、QFP(クワッドフラットパッケージ)、BGA(ボールグリッドアレイ)、CSP(チップサイズパッケージ)、SOP(スモールアウトラインパッケージ)、TSOP(シンスモールアウトラインパッケージ)、TQFP(シンクワッドフラットパッケージ)等が挙げられる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例、比較例により本発明を具体的に説明する。
尚、実施例及び比較例における物性値の測定は以下の方法で行った。
エポキシ当量:JIS K−7236
軟化点:JIS K−7234
【0036】
合成例1
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら式(2)
【0037】
【化3】

【0038】
で表されるオルトフェニルフェノールノボラック樹脂(旭有機材工業株式会社製 PAPS−OPPN、水酸基等量177.3g/eq.、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定結果から求めたn=0体の含有量は1面積%以下、n=1体の含有量は61面積%、式(2)におけるnは1.72、Mw/Mnは1.16)177.3部、エピクロルヒドリン370部(式(2)のフェノール樹脂の水酸基1モルに対して4倍モル)及びメタノール37部を加え、撹拌下で溶解し、65〜70℃まで昇温した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム41部を90分間かけて分割添加した後、更に70℃で2時間反応を行った。反応終了後,水500部で水洗を行い、静置後分離した水層を除去し、油層からロータリーエバポレーターを用いて減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤類を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン500部を加え溶解し、70℃まで昇温した。撹拌下で30質量%の水酸化ナトリウム水溶液10部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで油層の水洗、分離及び水層の除去を繰り返し、得られた溶液から、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することで本発明のエポキシ樹脂(EP1)235部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は255g/eq.、軟化点は54℃、150℃における溶融粘度(ICI溶融粘度 コーン#1)は0.03Pa・sであった。またゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、得られたエポキシ樹脂EP1中の1官能体の含有量を測定したところ、1面積%以下であり、また2官能体の含有量は52面積%であった。
【0039】
合成例2
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら式(2)で表されるオルトフェニルフェノールノボラック樹脂(旭有機材工業株式会社製 PAPS−OPPN、水酸基等量176.4g/eq.、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定結果から求めたn=0体の含有量は3.5面積%、n=1体の含有量は79面積%、式(2)におけるnは1.20、Mw/Mnは1.14)176.4部、エピクロルヒドリン463部(式(2)のフェノール樹脂の水酸基1モルに対して5倍モル)及びジメチルスルホキシド95部を加え、撹拌下で溶解し、45℃まで昇温した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム41部を90分間かけて分割添加した後、更に45℃で5時間、60℃で1時間反応を行った。反応終了後,水500部で水洗を行い、静置後分離した水層を除去し、油層からロータリーエバポレーターを用いて減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤類を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン500部を加え溶解し、70℃まで昇温した。撹拌下で30質量%の水酸化ナトリウム水溶液10部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで油層の水洗、分離及び水層の除去を繰り返し、得られた溶液から、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することで本発明のエポキシ樹脂(EP2)233部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は246g/eq.、軟化点は47℃、150℃における溶融粘度(ICI溶融粘度 コーン#1)は0.01Pa・sであった。またゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、得られたエポキシ樹脂EP2中の1官能体の含有量を測定したところ、2.1面積%であり、また2官能体の含有量は71面積%であった。
【0040】
合成例3
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら式(3)
【0041】
【化4】

【0042】
で表されるパラフェニルフェノールノボラック樹脂(旭有機材工業株式会社製、PAPS−PPPN、水酸基等量177.5g/eq.、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定結果から求めたn=0体の含有量は1.5面積%、n=1体の含有量は46面積%、式(3)におけるnは1.94、Mw/Mnは1.19)176部、エピクロルヒドリン555部(式(3)のフェノール樹脂の水酸基1モルに対して6倍モル)及びジメチルスルホキシド130部を加え、撹拌下で溶解し、45℃まで昇温した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム41部を90分間かけて分割添加した後、更に45℃で5時間、60℃で1時間反応を行った。反応終了後,水500部で水洗を行い、静置後分離した水層を除去し、油層からロータリーエバポレーターを用いて減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤類を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン500部を加え溶解し、70℃まで昇温した。撹拌下で30質量%の水酸化ナトリウム水溶液10部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで油層の水洗、分離及び水層の除去を繰り返し、得られた溶液から、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することで本発明のエポキシ樹脂(EP3)237部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は259g/eq.、結晶性を帯びており、その融点は約136℃、150℃における溶融粘度(ICI溶融粘度 コーン#1)は0.03Pa・sであった。またゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、得られたエポキシ樹脂EP3中の1官能体の含有量を測定したところ、1面積%以下であり、また2官能体の含有量は41面積%であった。
【0043】
合成例4
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらオルトフェニルフェノール425部、トルエン200部、パラトルエンスルホン酸4部及び水30部を加え、攪拌しながら80℃まで昇温した。次いでパラホルムアルデヒド30部を90分間かけて分割添加した後、約100℃で5時間攪拌した。その後、還流冷却菅とフラスコの間にディーンスターク菅を装着し、さらに留出する水を抜きながら反応液の温度を約115℃まで昇温してそのままさらに2時間攪拌した。得られた反応液に対し、水層のpHが中性付近になるまで水洗を繰り返した。得られた溶液から、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下にトルエン、過剰のオルトフェニルフェノール等を留去することでオルトフェニルフェノールノボラック樹脂124部を得た。得られたフェノール樹脂の水酸基等量は177.8g/eq.、また、n=0体の含有量は12面積%(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)、式(2)におけるnは2以上であった。
得られたオルトフェニルフェノールノボラック樹脂88.9部にエピクロルヒドリン161部(フェノール樹脂の水酸基1モルに対して3.5倍モル)及びメタノール16部を加えて撹拌下で溶解し、65〜70℃まで昇温した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム20.5部を90分間かけて分割添加した後、更に70℃で2時間反応を行った。反応終了後,水250部で水洗を行い、静置後分離した水層を除去し、油層からロータリーエバポレーターを用いて減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤類を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン250部を加え溶解し、70℃まで昇温した。撹拌下で30質量%の水酸化ナトリウム水溶液10部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで油層の水洗、分離及び水層の除去を繰り返し、得られた溶液から、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することで比較用のエポキシ樹脂(EP4)105部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は275g/eq.、軟化点89℃、150℃における溶融粘度(ICI溶融粘度 コーン#1)は0.5Pa・s以上であった。またゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、得られたエポキシ樹脂EP4中の1官能体の含有量を測定したところ、8.1面積%であり、また2官能体の含有量は19面積%であった。
【0044】
実施例1〜5および比較例1〜3
前記で得られたエポキシ樹脂を表1の割合(質量部)で配合し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、封止用エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化されたエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化して評価用試験片を得た。得られた試験片の難燃性を下記の方法で評価した。結果を表1に示す。
・難燃性:UL94に準拠して行った。ただし、サンプルサイズは幅12.5mm×長さ150mmとし、厚さは0.8mmで試験を行った。
・残炎時間:5個1組のサンプルに10回接炎したあとのそれぞれのサンプルの残炎時間の合計。
【0045】
【表1】

【0046】
(H1):フェノールアラルキル型フェノール樹脂(商品名:KAYAHARD GPH−65、日本化薬製、軟化点65℃、水酸基当量198g/eq.)
(H2):フェノールアラルキル型フェノール樹脂(商品名:ミレックス XLC−3L、三井化学製、軟化点71℃、水酸基当量172g/eq.)
(H3):フェノールノボラック樹脂(商品名:H−1、明和化成工業製、軟化点83℃、水酸基当量106g/eq.)
硬化促進剤:トリフェニルホスフィン(北興化学工業製)
無機充填剤:溶融シリカ(商品名:MSR−2212、龍森製)
離型剤:カルナバワックス1号(セラリカ野田製)
カップリング剤:KBM−303(信越化学製)
【0047】
前述の実施例2の組成の本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて耐半田クラック性試験を行った。表面が金属の銅製の図1に示す96Pin QFP(チップサイズ:7×7×厚み0.1mm、パッケージサイズ:14×14×厚み1.35mm)リードフレーム((株)健正堂製:日本化薬特注品)をトランスファー成型金型にセットし、実施例2と同様にしてタブレット化したエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化して試験片を6サンプル得た(図2)。得られた6つの試験片を85℃/85%RHの相対湿度に設定された恒温槽中に放置して吸湿させた。6つのうち、3つは10時間、残りの3つは24時間放置した。吸湿後、280℃×10秒間の半田リフロー試験を行った。この時の熱衝撃によって生じるパッケージクラックを目視で確認したが、いずれのサンプルにもクラックは見当たらなかった。
【0048】
以上の結果から、本発明のエポキシ樹脂組成物は、ハロゲンやアンチモン化合物等の難燃剤を用いなくとも、難燃性に優れた硬化物を与えることができることが明らかである。さらには、耐半田クラックに対しても耐性があることから、環境負荷の大きい難燃剤の使用量の低減に役立ち、特に半導体の封止材用途へ有用なものであることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】耐半田クラック性試験用のサンプル作成に用いたリードフレーム。
【図2】耐半田クラック性試験に用いたQFPパッケージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填剤を含有するエポキシ樹脂組成物であって、該エポキシ樹脂が、下記式(1)
【化1】

(式中、nは平均の繰り返し数を示す。)
におけるnが1.0以上3.0以下であるフェノール樹脂と、フェノール樹脂の水酸基当量に対して3〜10倍モルのエピハロヒドリンとを反応させて得られるエポキシ樹脂であるエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
式(1)におけるnが、1.0以上2.3以下である請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
式(1)におけるnが、1.0以上2.0未満である請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
エポキシ樹脂のエポキシ当量が235〜265g/eq.である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
エポキシ樹脂のエポキシ当量が240〜265g/eq.である請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
無機充填剤の含有量が、エポキシ樹脂の総量に対し、70〜95質量%である請求項1乃至5のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
硬化剤が、メチレン基を結合基として有するノボラック型フェノール樹脂及び/又はフェノールアラルキル樹脂である請求項1乃至6のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を用いて封止された半導体装置。
【請求項10】
請求項1記載の式(1)におけるnが1.0以上3.0以下であるフェノール樹脂と、フェノール樹脂の水酸基当量に対して、3〜10倍モルのエピハロヒドリンとを反応させることを特徴とするエポキシ樹脂の製造方法。
【請求項11】
式(1)におけるnが1.0以上2.3以下である請求項10に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
【請求項12】
式(1)におけるnが1.0以上2.0未満である請求項11に記載のエポキシ樹脂の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−53293(P2010−53293A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221871(P2008−221871)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】