説明

エリア情報による通信メディア選択方法、通信端末及び通信システム

【課題】 通信網との間で位置情報を定期的に送信する必要はなく、また、通信端末が実装する総ての通信メディアを常時起動状態にすることなく、適切に通信網への接続に使用する通信メディアを選択する通信端末、システム及び方法を提供する。
【解決手段】 無線システムとの接続に使用する通信メディアを複数有する通信端末であって、通信端末の位置情報を取得する位置取得手段と、所定の範囲の地域であるエリアごとに、通信網への接続に利用できる無線システムの情報を示すエリア情報を記憶する記憶手段と、位置情報とエリア情報とに基づき、通信網への接続に使用する通信メディアを選択するメディア選択手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線システムのエリア情報に基づき、無線システムへの接続に使用する通信メディアを選択する方法及び通信端末と、前記通信端末を有する通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、通信網にアクセスするために使用する複数の無線システムそれぞれの利用可能エリアを通信網側で管理し、通信端末が通信網に送信する位置情報に基づき、通信端末が現在利用可能な無線システムのリストを、通信網が通信端末に通知して、通信端末に使用する無線システムを選択させる構成が記載されている。尚、通信端末は、その位置情報をGPS(Global Positioning System)等から取得を行う。
【0003】
非特許文献1によると、通信網側においては、詳細な地理情報と、通信端末の位置情報管理と、通信端末との随時交信処理と、通信端末と直接無線により通信する基地局の位置情報の管理と、各基地局の送信出力に基づく伝播パターンの推定と、これらに基づく各無線システムの利用可否判定を行うことが求められている。
【0004】
更に、非特許文献2には、非特許文献1の構成でのハンドオーバ手順、すなわち、通信端末が通信途中に使用する無線システムを切り替える手順が記載されている。
【0005】
非特許文献2によると、通信端末は、定期的に位置情報を通信網に送信し、通信網は、通信端末が現在使用している無線システムの通信エリアと、受信する通信端末の位置情報とに基づき、ハンドオーバの必要性を判定し、必要な場合には、通信端末に切替先候補となる無線システムのリストの送信を行う。
【0006】
非特許文献1及び2の構成では、通信端末と通信網間での上記制御情報のやりとりは、所定の無線システムにより行われる。従って、通信端末は、通信を行っていない間は、所定の無線システムのための通信メディアのみ起動すればよく、また、通信中においても、所定の無線システムのための通信メディアと、通信に使用している通信メディアのみ起動すればよく、他の通信メディアを停止状態として、消費電力の軽減を図っている。
【0007】
また、非特許文献3にも、通信端末のハンドオーバ手順が記載されている。非特許文献3によると、各無線システムは、その通信エリアを通信端末に通知するため、通信エリアの外延上から複数の点を選択して、選択した複数の点の位置を通信端末に送信する。通信端末は、無線システムから受信する複数の点から、無線システムの通信エリアを認識し、かつ、GPS等から自己の位置情報を取得することで通信エリアと自己の位置との関係を把握する。
【0008】
通信端末が、自己が現在使用している無線システム以外とも通信可能となり、通信可能となった他の無線システムからも通信エリアを示す複数の点の情報を受信した場合には、両無線システムの通信エリアと、自己の位置情報の変更履歴から判断できる移動方向とに基づき、切替の必要性を判断し、必要であれば切替を実行する。
【0009】
【非特許文献1】村上、長谷川、ムハマド、井上 “MIRAI実証システムの開発―(2)リソースマネージャとシグナリング手順”、電子情報通信学会通信ソサエティ大会、B−5−118、2002年、pp.415
【非特許文献2】M.Inoue、 K.Mahmud、 H.Murakami、 M.Hasegawa “NOVEL OUT−OF−BAND SIGNALING FOR SEAMLESS INTERWORKING BETWEEN HETEROGENEOUS NETWORKS”、 IEEE Wireless Communications、 2004年4月、pp.56-63
【非特許文献3】C.Bouras、Y.Siahos、P.Spirakis “AN EFFICIENT ALGORITHM TO IMPROVE HANDOFF IN MOBILITY SUPPORT FOR IPV6 PROTOCOL”、2000 International Conference on Software、Telecommunications and Computer Networks (SoftCom2000)、2000年10月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
非特許文献1及び2に記載の構成では、通信の開始毎に、通信網に位置情報を送信し、通信網から使用可能な無線システムのリストを受信し、通信端末で使用する無線システムの選択、すなわち、使用する通信メディアの選択を行う必要があり、実際に通信を開始するまでに必要な時間が長くなってしまう。
【0011】
また、ハンドオーバ、すなわち、通信途中での通信メディアの選択変更のために、通信網に対して位置情報を定期的に送信する必要があるが、位置情報の送信間隔を短くすると、位置情報のための通信量が増大し、逆に、長くすると、切替判定の周期も長くなり、適切なタイミングで切替ができないという問題が生じる。
【0012】
非特許文献3に記載の構成では、通信端末は定期的にその位置情報の送信を行う必要はない。しかし、通信端末は、無線システムと通信可能になって初めて、その無線システムの通信エリアの認識が可能となるため、通信端末は、実装している総ての通信メディアを起動状態にしておく必要があり、通信端末の消費電力が増大してしまう。
【0013】
従って、本発明は、適切なタイミングで、通信網へのアクセスに使用する通信メディアを選択する方法、通信端末及び通信システムを提供することを目的とする。
【0014】
また、通信網との間で位置情報といった制御情報を定期的に送信する必要はなく、また、通信端末が実装する総ての通信メディアを常時起動状態にする必要もない方法、通信端末及び通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明における通信端末によれば、
無線システムとの接続に使用する通信メディアを複数有する通信端末であって、通信端末の位置情報を取得する位置取得手段と、所定の範囲の地域であるエリアごとに、通信網への接続に利用できる無線システムの情報を示すエリア情報を記憶する記憶手段と、位置情報とエリア情報とに基づき、通信網への接続に使用する通信メディアを選択するメディア選択手段とを有することを特徴とする。
【0016】
本発明の通信端末における他の実施形態によれば、
メディア選択手段は、選択した通信メディア以外の通信メディアを停止状態とすることをも好ましい。
【0017】
また、本発明の通信端末における他の実施形態によれば、
無線システムとの接続に使用する通信メディアを複数有する通信端末であって、通信端末の位置情報を取得する位置取得手段と、所定の範囲の地域であるエリアごとに、通信網への接続に利用できる無線システムの情報を示すエリア情報を記憶する記憶手段と、通信端末が通信中は、使用している通信メディア以外の通信メディアを停止状態とし、位置情報に基づきエリア変更の可能性を判定し、エリア変更の可能性がある場合には変更先のエリア情報に基づき、変更先のエリアで通信網への接続に使用する通信メディアを選択し、選択した通信メディアを起動状態とすることを特徴とする。
【0018】
更に、本発明の通信端末における他の実施形態によれば、
エリア情報は、無線システムが使用している周波数情報を有することも好ましい。
【0019】
本発明における通信システムによれば、
前記通信端末と、通信網とからなる通信システムであって、通信網は、複数エリアのエリア情報を有するローミング支援サーバを有し、通信端末は、位置情報と記憶手段に保存されているエリア情報とに基づき、ローミング支援サーバにエリア情報要求信号を送信し、ローミング支援サーバは、エリア情報要求信号を受信した場合に、通信端末にエリア情報を送信することを特徴とする。
【0020】
本発明の通信システムにおける他の実施形態によれば、
エリア情報要求信号は、通信端末の位置情報と、位置情報の履歴から判定される通信端末の移動速度の情報を含み、ローミング支援サーバは、前記位置情報と移動速度の情報からエリア情報を送信するエリアの範囲を決定することも好ましい。
【0021】
また、本発明の通信システムにおける他の実施形態によれば、
エリア情報要求信号は、更に、位置情報の履歴から判定される通信端末の移動方向の情報を含み、ローミング支援サーバがエリア情報を送信するエリアの範囲は、通信端末の移動方向においては、移動速度に依存して大きくすることも好ましい。
【0022】
更に、本発明の通信システムにおける他の実施形態によれば、
エリア情報は、エリアごとの通信端末の在圏履歴を有し、通信端末は、ローミング支援サーバからのエリア情報の受信により、記憶手段に既に保存しているエリア情報を削除する場合は、在圏履歴の少ないエリアのエリア情報から削除することも好ましい。
【0023】
本発明における方法によれば、
所定の範囲の地域であるエリアごとに、通信網への接続に利用できる無線システムの情報を示すエリア情報を保存し、無線システムとの接続に使用する通信メディアを複数有する通信端末での通信メディア選択方法であって、現在の位置情報を取得するステップと、位置情報とエリア情報に基づき、通信網への接続に使用する通信メディアを選択するステップとを有することを特徴とする。
【0024】
本発明の方法における他の実施形態によれば、
所定の範囲の地域であるエリアごとに、通信網への接続に利用できる無線システムの情報を示すエリア情報を保存し、無線システムとの接続に使用する通信メディアを複数有する通信端末での通信メディア選択方法であって、第1の通信メディアで通信中に、位置情報を取得するステップと、位置情報に基づきエリア変更の可能性を判定するステップと、エリア変更の可能性がある場合には変更先のエリア情報に基づき、変更先のエリアで通信網への接続に使用する第2の通信メディアを選択するステップとを有し、第1の通信メディアと第2の通信メディアが異なる場合は、第2の通信メディアが無線システムと接続後、使用する通信メディアを、第2の通信メディアに変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
通信端末は、自身が保持するエリア情報と、自身が取得する位置情報に基づき、利用可能な無線システムの識別を行う。従って、通信開始時において、遅延を発生させることなく使用する通信メディアの選択を行うことができる。
【0026】
また、通信中は、使用中の通信メディア以外を停止状態とし、隣接エリアに接近したと判断した時点で、必要な通信メディアを起動することで、通信端末の消費電力を軽減すると共に、他の通信エリアに移動した際の、通信メディアの切替を迅速に行うことを可能としている。特に、通信メディア起動時の消費電力が大きい無線システムや、エリアが限定された無線システムの通信メディアを有する通信端末に対しては、消費電力の軽減効果が大きく有利となる。
【0027】
更に、エリア情報として無線システム情報のみならず、周波数情報を保持することで、周波数サーチを行うことなく、無線システムへの接続が可能となり、迅速な切替が可能となる。
【0028】
通信端末がエリア情報を保持できるエリアの範囲は記憶部の容量で制限されるが、ローミング支援サーバを設置することにより、通信端末が保持していないエリアのエリア情報を、通信端末は必要に応じてダウンロードでき、広範囲にわたり本発明のメディア選択方法を使用可能となる。また、無線システムの新設、撤去等によるエリア情報の変更等にも柔軟に対応可能となる。
【0029】
また、移動速度や移動方法に応じて、ローミング支援サーバが送信するエリア情報のエリアの範囲を変更することで、エリア情報のダウンロードの頻度を適切に調整することができる。
【0030】
更に、エリア情報に在圏履歴を含め、在圏履歴の少ないエリアのエリア情報から削除することで、一時的に滞在した場所のエリア情報が優先的に削除されることとなる。よって、移動端末で、効率的にエリア情報を管理でき、かつ、ローミング支援サーバとの通信量の削減ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明を実施するための最良の実施形態について、以下では図面を用いて詳細に説明する。
【0032】
図1は、本発明による通信端末1のブロック図である。図1によると、通信端末1は、通信メディア11及び12と、通信処理部13と、メディア選択部14と、位置取得部15と、記憶部16とを有する。
【0033】
通信メディア11及び12は、それぞれ、対応する無線システムを有し、対応する無線システムの規格に適合した信号の送受信を、無線システムの基地局又はアクセスポイント装置と行う。図1において通信端末1は、通信メディアを2つとしているが、2以上の通信メディアを実装することも当然可能である。
【0034】
通信処理部13は、図示しない通信端末1のアプリケーション部と、通信メディア11及び12の間にあって、通信に必要な処理を行う。この際、メディア選択部14からの通知に基づき、使用している通信メディアに送信信号を出力する。
【0035】
位置取得部15は、GPS等を利用して通信端末1の現在位置を取得し、メディア選択部14に通知する。
【0036】
記憶部16は、エリア情報を保存している。図2は、エリアを説明する図であり、図3は、図2の状態に対応したエリア情報を示す図である。図2では、各エリアを1辺が100mである正方形として表現するが、正六角形や、円形等の任意形状及び任意の大きさでの表現が可能である。また、図2では、各エリアの位置を、所定の基準位置に対する相対位置で表現しているが、緯度、経度といった絶対的な位置で表現することも可能である。尚、図2では、各エリアの位置を示すために、その左上の角の座標を用いるが、エリア内のどの位置で代表させるかも任意事項である。
【0037】
図2において、BS1及びBS2は、無線システムに接続するための基地局を表している。各エリアは、BS1のみが利用可能なエリアと、BS2のみが利用可能なエリアと、両方が利用可能なエリアに分類されている。図3の(a)は、これら各正方形で表されるエリアと、利用可能な基地局との対応関係を示すものであり、図3の(b)は、各基地局が使用する無線システムの仕様と、その無線システムでのキャリア周波数についての情報を示している。すなわち、エリア情報により、各地域で利用可能な基地局を認識し、基地局は無線システムと対応しているため、エリア情報により、各エリアで利用可能な無線システムを認識することができる。
【0038】
メディア選択部14は、位置取得部15が取得する通信端末1の位置情報と、記憶部16が保持するエリア情報に基づき、現在位置において利用可能な無線システムを判定して、使用する通信メディアの選択を行う。更に、選択した通信メディアを起動して、使用していない通信メディアを停止状態に制御する。併せて、選択した通信メディアを通信処理部13に通知する。
【0039】
図4は、通信端末1でのメディア選択のシーケンス図であり、通信端末1が、当初通信メディア11を選択し、通信メディア11を使用しての通信中に、通信メディア12に切替を行う場合のシーケンスを示している。
(S41) メディア選択部14は、位置取得部15より通信端末1の現在位置情報を取得する。
(S42) メディア選択部14は、記憶部16より、現在位置についてのエリア情報を取得する。
(S43) メディア選択部14は、取得したエリア情報に含まれる利用可能な基地局から、使用する基地局を選択する。選択の方法は、帯域優先や、コスト優先等の任意の方法を利用可能である。選択した基地局に対応して、選択する通信メディアは決定される。ここでは、通信メディア11が選択されたものとする。
(S44) メディア選択部14は、選択した通信メディア11を起動し、通信メディア11は、起動後に無線システムと接続し、接続完了後、起動完了をメディア選択部14に通知する。
(S45) 通信中、メディア選択部14は、変更判定処理を行う。本処理において、通信網へアクセスする無線システムの切替の必要性について判定が行われる。ここでは、通信端末1の移動などにより、通信メディア12に変更すると判定したものとする。
(S46) メディア選択部14は、通信メディア12を起動し、通信メディア12は、起動後に無線システムと接続し、接続完了後、起動完了をメディア選択部14に通知する。
(S47) メディア選択部14は、通信処理部13に使用する通信メディアの切替、すなわち、通信メディア11から通信メディア12への切替を指示し、通信処理部13からの切替完了通知受領後、通信メディア11を停止する。
【0040】
図5は、図4でのS45における変更判定処理と、切替を必要と判断した後の処理についてのフロー図であり、フロー図の開始時点で、通信端末1は、現在位置の情報に基づき1つのメディアを選択して通信を行っている。
(S51) 記憶部16より、通信端末1の現在位置が属するエリアに隣接するエリア情報を取得する。
(S52) 位置取得部15より位置情報を取得する。
(S53) 現在位置と、現在位置の更新履歴から判断される通信端末1の移動方向及び速度と、隣接するエリアとの位置関係と、隣接エリアで使用可能な基地局情報に基づき、通信エリアの変更の可能性を判断し、変更の可能性がある場合は、続いて、変更先エリアで使用する無線システムを決定する。更に、決定した無線システムに応じた通信メディアと現在使用中の通信メディアの比較により、変更先エリアにおいて使用する通信メディアの変更が必要か否かを判定する。
(S54) 例えば、通信エリアが所定の時間後に変更となり、それに伴い通信メディアの変更を行う必要がある判断した場合には、新たに使用する通信メディアを起動する。本ステップは、図4のシーケンス図のS46での起動処理に該当する。
(S55) 起動した通信メディアからの起動完了通知を監視する。本ステップは、図4のシーケンス図のS46で完了通知の受信待ち状態に該当する。
(S56) 起動した通信メディアからの起動完了通知を受信した場合は、通信メディアの切替処理を行う。本ステップは、図4のシーケンス図のS47での切替処理に該当する。
(S57) 切替完了後、切替前に使用していた通信メディアの停止処理を行う。本ステップは、図4のシーケンス図のS47での停止処理に該当する
(S58) S54での起動処理後、移動方向が変更した場合等は、新たに起動した通信メディアは、無線システムとは接続できない。従って、起動した通信メディアから接続完了の通知がない場合は、再度S53と同じ判定を行い、変更ありと判断する場合は、起動した通信メディアからの完了通知を更に待つ。
(S59) S58において、移動方向の変更等で、もはや新たに起動した通信メディアへの切替えの必要はないと判断する場合には、起動した通信メディアを再度停止する。
【0041】
尚、S55での判断において、新たに起動した通信メディアから接続完了通知を受けた場合に、直ちにS56での切替を行うことも可能であるが、端末がS53での判定で予測したエリアに進入後や、接続完了通知から所定の時間経過後や、新たに起動した通信メディアの電波の受信レベルが所定の値以上となった後といった条件の少なくとも1つに適合した後に、切替、すなわち、S56の処理に進むことが望ましい。これは、エリア境界等で、通信メディアの切替が反復して行われることを防止するためである。同様の理由で、S57でのメディア停止処理もS56での切替後に直ちに行うのではなく、通信端末1の位置が前に属していたエリアからある程度離れた後に行うことが望ましい。
【0042】
以上説明したように、通信端末は、自身が保持するエリア情報と、自身が取得する位置情報に基づき、利用可能な無線システムの識別を行う。従って、通信開始時において、遅延を発生させることなく使用する通信メディアの選択を行うことができる。また、通信中は、使用中の通信メディア以外を停止状態とし、隣接エリアに接近したと判断した時点で、必要な通信メディアを起動することで、通信端末の消費電力を軽減すると共に、他の通信エリアに移動した際の、通信メディアの切替を迅速に行うことを可能としている。
【0043】
特に、無線LAN(Local Area Network)の様な、通信メディア起動時の消費電力が大きい無線システムや、エリアが限定された無線システムの通信メディアを有する通信端末に対しては、消費電力の軽減効果が大きく有利となる。
【0044】
また、DSRC(Dedicated Short Range Communication)に代表される、ごく小さなエリアを単位として展開される無線システムでは、各エリアに滞在する期間が短く、頻繁に通信メディア切替が発生するが、本発明においては、エリア変更を、通信端末が事前に予測するため、これらシステムにおいても切替を的確に行うことが可能となる。
【0045】
更に、図3に示すように、エリア情報として、各基地局のシステム情報のみならず、周波数情報を保持することで、周波数サーチを行うことなく、無線システムへの接続が可能となり、迅速な切替が可能となる。
【0046】
図6は、本発明による通信システムの構成図である。図6によると。通信システムは、通信端末1と、基地局21〜23と、通信網4と、通信網4内に設置されるローミング支援サーバ5とを有する。
【0047】
通信端末1は、上述した通りであり、基地局を介して通信網4にアクセスする。基地局21〜23は、それぞれ、各無線システムに適合した信号の送受信を通信端末と行い、通信端末に対して通信網4へのアクセス手段を提供している。尚、基地局とは、上述したとおり、通信端末と無線信号の送受信を行い、通信網4へのアクセス手段を提供する装置を意味し、無線LAN等で使用されるアクセスポイント装置等、同等の機能を有する装置を総称するものとして使用する。尚、図6において、符号31〜34は、それぞれ、エリアを示している。
【0048】
通信端末1は、図6に示すように、エリア31内に存在し、エリア32方向に移動しているが、通信端末1の記憶部16の記憶容量は有限であるため、通信端末1が、エリア32〜34の情報を保持していない場合が生じ得る。このため、例えば、日本総ての、或いは関東地域といった、広範囲にわたるエリアについてのエリア情報を管理するローミング支援サーバ5を、通信網4内に設置する。通信端末1は、その位置情報、移動方向及び速度に基づき、自身がそのエリア情報を保持していないエリアに進入すると判断する場合は、予めローミング支援サーバ5に、エリア情報要求信号を送信し、ローミング支援サーバ5から新たなエリア情報を取得する。このとき、通信端末1は、通信端末1の位置情報のみならず、移動速度及び/又は移動方向の情報をローミング支援サーバ5に通知し、ローミング支援サーバ5は、通信端末1の移動速度及び/又は移動方向に基づき、通知する新たなエリア情報のエリアの範囲を変化させることが望ましい。
【0049】
図7は、通信端末1がローミング支援サーバ5から取得するエリア情報を説明する図である。図7の(a)は、端末の移動速度vが、閾値Th未満である場合に、エリア情報を取得するエリアの範囲であり、通信端末の現在位置を中心とした一辺が所定の値Aである正方形の範囲を取得している。
【0050】
図7の(b)は、端末の移動速度vが、閾値Th以上である場合に、エリア情報を取得するエリア範囲の例であり、通信端末の現在位置を中心とした一辺が所定の値Bに移動速度vを乗じた値である正方形の範囲を取得している。
【0051】
図7の(c)は、端末の移動速度vが、閾値Th以上である場合に、エリア情報を取得するエリア範囲の他の例であり、通信端末の現在位置から所定の値だけ移動方向に中心をずらし、一辺が、移動方向に平行な方向が所定の値Cに移動速度vを乗じた値であり、移動方向と直交する方向には所定の値Aである長方形の範囲を取得している。
【0052】
このように、ローミング支援サーバ5を設置することにより、通信端末1の記憶部16の記憶容量による保存可能なエリア情報のエリア範囲の制限をなくし、広範囲にわたり通信端末1のメディア選択方法を使用可能とする。また、無線システムの新設、撤去等によるエリア情報の変更等にも柔軟に対応可能となる。
【0053】
また、移動速度に応じて、ローミング支援サーバ5が通知するエリア情報のエリアの範囲を変更することで、エリア情報のダウンロードの頻度を適切に調整することができる。特に移動端末が車両に搭載されている場合には、移動方向のベクトル成分を大きくした範囲のエリア情報を取得することが有効である。
【0054】
尚、通信端末1は、新たなエリア情報を取得することにより、保存しているエリア情報を削除しなければならない場合が生じる。このため、エリア情報には、取得時刻及び/又は在圏ポイントを含めることが望ましい。図8は、エリア情報の他の例を示す図であり、エリア情報ごとに、その取得時刻と、在圏ポイントを有している。在圏ポイントの算出例としては、移動端末が、現在属する通信エリアのポイントを3ポイント、その隣接エリアのポイントを2ポイント、更に隣接したエリアのポイントを1ポイントとして、順次加算処理を行う方法が考えられる。通信端末1が、エリア情報を削除する場合には、在圏ポイントの低いエリアから削除を行う。
【0055】
在圏ポイントの低いエリアのエリア情報から削除することで、例えば、通信端末1の利用者の自宅、オフィス、更に、通勤経路といった在圏する頻度が高いエリアのエリア情報は常に移動端末1に保持され、一時的に滞在した場所のエリア情報が優先的に削除されることとなる。よって、移動端末1で、効率的にエリア情報を管理でき、かつ、ローミング支援サーバ5との通信量の削減ができる。
【0056】
また、取得時刻情報に基づき、古い情報から削除する方法や、在圏ポイントに基づき削除を行いつつ、一定時刻を経過したエリア情報を、在圏ポイントに係らず削除する方法等も可能であり、一定時刻を経過したエリア情報を削除することで、無線システム側の基地局等の新設、撤去等に基づくエリア情報の変更に柔軟に対応可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明による通信端末のブロック図である。
【図2】エリアを説明する図である。
【図3】図2の状態に対するエリア情報を示す図である。
【図4】通信端末1でのメディア選択のシーケンス図である。
【図5】メディア選択部での、変更判定処理のフロー図である。
【図6】本発明による通信システムの構成図である。
【図7】通信端末がローミング支援サーバから取得するエリア情報を説明する図である。
【図8】エリア情報の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 通信端末
11、12 通信メディア
13 通信処理部
14 メディア選択部
15 位置取得部
16 記憶部
21、22、23 基地局
31、32、33、34 エリア
4 通信網
5 ローミング支援サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線システムとの接続に使用する通信メディアを複数有する通信端末であって、
通信端末の位置情報を取得する位置取得手段と、
所定の範囲の地域であるエリアごとに、通信網への接続に利用できる無線システムの情報を示すエリア情報を記憶する記憶手段と、
位置情報とエリア情報とに基づき、通信網への接続に使用する通信メディアを選択するメディア選択手段と、
を有することを特徴とする通信端末。
【請求項2】
メディア選択手段は、選択した通信メディア以外の通信メディアを停止状態とすることを特徴とする請求項1に記載の通信端末。
【請求項3】
無線システムとの接続に使用する通信メディアを複数有する通信端末であって、
通信端末の位置情報を取得する位置取得手段と、
所定の範囲の地域であるエリアごとに、通信網への接続に利用できる無線システムの情報を示すエリア情報を記憶する記憶手段と、
通信端末が通信中は、使用している通信メディア以外の通信メディアを停止状態とし、位置情報に基づきエリア変更の可能性を判定し、エリア変更の可能性がある場合には変更先のエリア情報に基づき、変更先のエリアで通信網への接続に使用する通信メディアを選択し、選択した通信メディアを起動状態とすることを特徴とする通信端末。
【請求項4】
エリア情報は、無線システムが使用している周波数情報を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の通信端末。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の通信端末と、通信網とからなる通信システムであって、
通信網は、複数エリアのエリア情報を有するローミング支援サーバを有し、
通信端末は、位置情報と記憶手段に保存されているエリア情報とに基づき、ローミング支援サーバにエリア情報要求信号を送信し、
ローミング支援サーバは、エリア情報要求信号を受信した場合に、通信端末にエリア情報を送信することを特徴とする通信システム。
【請求項6】
エリア情報要求信号は、通信端末の位置情報と、位置情報の履歴から判定される通信端末の移動速度の情報を含み、
ローミング支援サーバは、前記位置情報と移動速度の情報からエリア情報を送信するエリアの範囲を決定することを特徴とする請求項5に記載の通信システム。
【請求項7】
エリア情報要求信号は、更に、位置情報の履歴から判定される通信端末の移動方向の情報を含み、
ローミング支援サーバがエリア情報を送信するエリアの範囲は、通信端末の移動方向においては、移動速度に依存して大きくすることを特徴とする請求項6に記載の通信システム。
【請求項8】
エリア情報は、エリアごとの通信端末の在圏履歴を有し、
通信端末は、ローミング支援サーバからのエリア情報の受信により、記憶手段に既に保存しているエリア情報を削除する場合は、在圏履歴の少ないエリアのエリア情報から削除することを特徴とする請求項7に記載の通信システム。
【請求項9】
所定の範囲の地域であるエリアごとに、通信網への接続に利用できる無線システムの情報を示すエリア情報を保存し、無線システムとの接続に使用する通信メディアを複数有する通信端末での通信メディア選択方法であって、
現在の位置情報を取得するステップと、
位置情報とエリア情報に基づき、通信網への接続に使用する通信メディアを選択するステップとを有することを特徴とする通信メディア選択方法。
【請求項10】
所定の範囲の地域であるエリアごとに、通信網への接続に利用できる無線システムの情報を示すエリア情報を保存し、無線システムとの接続に使用する通信メディアを複数有する通信端末での通信メディア選択方法であって、
第1の通信メディアで通信中に、位置情報を取得するステップと、
位置情報に基づきエリア変更の可能性を判定するステップと、
エリア変更の可能性がある場合には変更先のエリア情報に基づき、変更先のエリアで通信網への接続に使用する第2の通信メディアを選択するステップとを有し、
第1の通信メディアと第2の通信メディアが異なる場合は、第2の通信メディアが無線システムと接続後、使用する通信メディアを、第2の通信メディアに変更することを特徴とする通信メディア選択方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−254063(P2006−254063A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−67427(P2005−67427)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】