説明

エレベータ制御装置

【課題】単独な乗りかごを対象としても、戸開不能な階へ退避運転されることを十分に防止できる機能を持つエレベータ制御装置を提供する。
【解決手段】エレベータ制御装置3では、他階退避運転制御部16において、戸開不能回数記憶部5が戸開不能階検出部4で検出された各階の戸開不能の回数を記憶し、その戸開不能の回数に応じて退避階優先度確立部6が退避階への優先度の重み付けを行い、退避階優先度を示す階床情報を退避階登録部9に登録するため、乗りかご1の着床時に戸開不能階検出部4により戸開不能が検出された場合、階床情報を参照した結果、過去に戸開不能でない他階床があれば、停止階(着床階)に近い最寄りなものから順次優先して他階退避運転を実施し、戸開不能階検出部4により戸開不能が検出された着床階を除いて優先度の高い順に該当する他階床へ他階退避運転を実施することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害発生時やトラブル発生時等の緊急運転停止時に有効な救済対策運転機能であって、エレベータがサービス階へ着床時に戸開できない場合に他階へエレベータを退避運転する機能を持つエレベータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータ機構では、昇降する乗りかごのサービス階への着床時に戸開指令が出力されるが、そのときに乗りかごにおける内ドア(かごドア、ハッチドアとも呼ばれる)及び各階に設けられる外ドアが戸開できない場合、乗りかごがその階から動くことができず、運転不能となってしまう。こうした問題を解決するため、エレベータ制御装置では、乗りかごがかご呼びに応じて停止したとき、その階のドア(内ドア及び外ドア)が一定時間経過しても戸開しない場合、乗りかごを他階へ移動させる他階退避運転を実施する機能を備えている。
【0003】
エレベータ制御装置の他階退避運転に関連する周知技術としては、例えば群管理エレベータにおいて、戸開不良階床及び乗りかごの号機を予め記憶し、かご呼びがあったときに他号機の乗りかごを対応させる「エレベータの運転装置」(特許文献1参照)、過負荷検出装置の動作回数をカウントし、一定回数を経過したら乗りかごを最寄階に退避する運転を行う「エレベータのドア制御装置」(特許文献2参照)、乗りかごの起動後に消滅する任意の階を行先とする呼びと等価な人工呼びに基づいて乗りかごを他階へ運転する「エレベーターの運転制御装置」(特許文献3参照)、戸開不良階に一番近い停止可能階のかご呼びを自動登録する「エレベータの運転装置」(特許文献4参照)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−139634号公報
【特許文献2】特開平4−371480号公報
【特許文献3】特開昭55−119675号公報
【特許文献4】特開平5−330755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1〜特許文献4に係るエレベータ制御装置の他階退避運転に関連する技術は、何れも単独な乗りかごを対象として戸開不能な階へ走行されることを十分に防止できる機能が持たされていないという問題がある。
【0006】
具体的に云えば、特許文献1に係る技術では、群管理エレベータにおいて戸開不良階の乗場呼びボタンが押されると、戸開不良階と記憶されていない号機を優先して配車する機能である。ところが、単独な乗りかごのエレベータ機能では、乗りかごの他号機が存在しないため、係る技術では戸開不良階が最寄階である場合、戸開不良階へ着床してしまう可能性がある。
【0007】
特許文献2に係る技術では、ドアが全開不能であることを検出し、一度ドアを反転させて再度戸開を実施する機能を有するエレベータ機能において、開閉反転動作のカウント数が所定値を超えると他階退避運転を実施するものであり、他階の戸開不良階の状況判断を行っていないため、係る技術においても最寄階が戸開不良階である場合には、戸開不良階へ着床してしまう可能性がある。
【0008】
特許文献3に係る技術では、ドアが戸開不能であると検出した場合、任意の階を行先とする呼びと等価な人工呼びを発生して他階退避運転を実施するものであり、他階の戸開不良階の状況判断を行っていないため、係る技術においても任意の階が戸開不良階である場合には、戸開不良階へ着床してしまう可能性がある。
【0009】
特許文献4に係る技術では、戸開不良を検出して乗客が降車できなかった場合、戸開不良階に一番近い停止可能階のかご呼びを自動登録して他階退避運転を実施するものであり、他階の戸開不良階の状況判断を行っていないため、係る技術においても戸開不良階に一番近い停止階が戸開不良階である場合には、戸開不良階へ着床してしまう可能性がある。
【0010】
本発明は、このような問題点を解決すべくなされたもので、その技術的課題は、単独な乗りかごを対象としても、戸開不能な階へ退避運転されることを十分に防止できる機能を持つエレベータ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述した技術的課題を解決するため、エレベータの目的とする階床への昇降運転時における着床時に乗りかごにおける内ドア及び各階に設けられる外ドアの戸開不能な状態を検出する戸開不能階検出手段を備えたエレベータ制御装置において、戸開不能階検出手段により検出された戸開不能な階床情報を記憶する記憶手段と、乗りかごに対する昇降運転時の着床階で戸開不能階検出手段により戸開不能が検出されたとき、記憶手段に記憶された階床情報を参照した結果、過去に戸開不能でない他階床があれば、当該他階床のうちの停止階に近い最寄りなものから順次優先して他階退避運転を実施する他階退避運転制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、上記エレベータ制御装置の一実施態様は、記憶手段は、階床情報として、戸開不能階検出手段により戸開不能となった階床の回数を階床毎に記憶し、他階退避運転制御手段は、階床情報について、戸開不能となった階床毎の回数に基づいて退避階への優先度の重み付けを行うことにより退避階優先度を確立して登録した結果に応じて、戸開不能階検出手段により戸開不能が検出された着床階を除いて優先度の高い順に該当する他階床へ他階退避運転を実施することを特徴とする。
【0013】
更に、上記エレベータ制御装置の他の実施態様は、他階退避運転制御手段による退避優先度の確立は、乗りかごに対する運転方向別に行うことを特徴とする。
【0014】
加えて、上記何れかのエレベータ制御装置の別の実施態様は、他階退避運転制御手段は、退避階優先度の確立時に戸開不能でない他階床が無く、戸開不能が全階床に及んでいると判断すると、乗りかごにおける内ドアに異常ありと判断して運転休止し、外部へ自動的に発報することを特徴とする。
【0015】
一方、上記何れか1つのエレベータ制御装置の更に他の実施態様は、乗りかご内で任意な階床についてのかご呼びを行ってかご呼び登録を行うとき、当該かご呼びされた階床が登録された階床情報についての優先度の低い階床に該当すれば、当該乗りかごに付設される音声ガイド発声手段によりかごドアの状態を事前にアナウンスした後、再度のかご呼びに応じて当該かご呼び登録を行うことを特徴とする。
【0016】
他方、上記何れか1つのエレベータ制御装置の更に他の実施態様は、任意な階床でホール呼びを行ってホール呼び登録を行うとき、ホール呼びされた階床が登録された階床情報の優先度についての低い階床に該当すれば、各階に付設される音声ガイド発声手段によりかごドアの状態を事前にアナウンスした後、再度のホール呼びに応じて当該かご呼び登録を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のエレベータ制御装置によれば、着床時に戸開不能が検出されると、過去の戸開不能となった階床情報を蓄積記憶した結果を参照して戸開不能でない他階床の最寄りなものから順次優先して他階退避運転するため、単独な乗りかごのエレベータ機構であっても、他階退避運転による戸開不良階への着床を極力抑制することができる。また、階床情報については、戸開不能となった階床毎の回数に基づいて退避階への優先度の重み付けを行うことにより退避階優先度を確立して登録を行い、この結果の階床情報に基づいて優先度の高い順に他階退避運転を行うため、戸開可能な可能性の高い順に着床が行われることになり、災害発生時やトラブル発生時等の緊急運転停止時に有効な救済対策運転機能が構築される。更に、退避階優先度の確立時に戸開不能でない他階床が無く、戸開不能が全階床に及んでいると判断した場合には、エレベータの利用者がいなくても運転休止し、かごドアの異常とみなして保全会社等の外部へ自動的に発報するため、乗りかごにおける利用者の閉じ込めを防止するための保守・管理対策を事前に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例1に係るエレベータ制御装置を含むエレベータ機構全体の概略構成を示したブロック図である。
【図2】図1に示すエレベータ制御装置全体に係る他階退避運転の動作処理を例示したフローチャートである。
【図3】図1に示すエレベータ制御装置に備えられる他階退避運転制御部に係る他階退避運転の動作処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】図1に示すエレベータ制御装置に備えられる他階退避運転制御部に係る他階退避運転の動作処理の他例を示すフローチャートである。
【図5】図1に示すエレベータ制御装置に備えられる他階退避運転制御部に係る他階退避運転の動作処理についての具体例を説明するための動作推移状態を例示した模式図である。
【図6】図1に示すエレベータ制御装置に備えられる他階退避運転制御部に係る他階退避運転についての付加機能の動作処理を示すフローチャートである。
【図7】図1に示すエレベータ制御装置についての他階退避運転制御部に係る他階退避運転に対する他の付加機能の動作処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明のエレベータ制御装置について、図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の実施例1に係るエレベータ制御装置3を含むエレベータ機構全体の概略構成を示したブロック図である。
【0021】
このエレベータ機構では、エレベータ制御装置3からの動作指令制御信号を受け、巻上機11に備えられるモータの動力によりシーブを介して主ロープが摩擦駆動され、主ロープに吊り下げられた状態の乗りかご1が昇降するようになっている。
【0022】
乗りかご1には、かご内スピーカ13が付設される他、かご呼びボタン12が設けられている。乗りかご1が昇降する施設側には、各階毎にホールボタン14や音声案内を行うためのホールスピーカ15が設置されている。また、エレベータの目的とする階床への昇降運転時における着床時には、戸開状態階検出部2により検出された乗りかご1の内ドア(かごドア、ハッチドア)及び各階に設けられた外ドアの戸開状態の検出結果がエレベータ制御装置3へ伝送されるようになっている。なお、ここでの戸開状態検出部2は、各階毎に設けられたセンサ部と乗りかご1に設けられたセンサ部とが協働して内外ドアの戸開状態を検出するものである。
【0023】
エレベータ制御装置3は、乗りかご1の昇降運転時の方向(エレベータのサービス方向)を検出する運転方向検出部8と、乗りかご1の昇降運転時の停止階(着床階)を検出する停止階検出部7と、戸開状態検出部2により検出した内外ドア状態の検出結果から各階毎の戸開不能状態を検出する戸開不能階検出部4と、戸開不能階検出部4が戸開不能状態を検出したときの停止階における戸開不能回数を計数して階床情報として蓄積記憶する戸開不能回数記憶装置5と、階床情報についての過去の戸開不能となった階床毎の回数に基づいて退避階への優先度の重み付けを行うことにより退避階優先度を確立する退避階優先度確立部6と、退避階優先度が確立された階床情報を登録する退避階登録部9と、乗りかご1における内ドアに異常ありと判断された運転休止時に外部へ自動的に発報する報知部10と、を備えている。
【0024】
このうち、戸開不能回数記憶装置5、退避階優先度確立部6、退避階登録部9、及び報知部10は、他階退避運転制御部16内の各部機能として設けられる。他階退避運転制御部16は、これらの各部機能の働きにより、乗りかご1に対する昇降運転時の着床階で戸開不能階検出部4により戸開不能が検出されたとき、戸開不能回数記憶装置5から読み出した階床情報を参照した結果、過去に戸開不能で無い他階床があれば、その他階床のうちの最寄りなものから順次優先して他階退避運転を実施する。
【0025】
また、他階退避運転制御部16では、退避階優先度確立部6により戸開不能回数記憶装置5に記憶される階床情報について、戸開不能となった階床毎の回数に基づいて退避階への優先度の重み付けを行って退避階優先度を確立した結果の階床情報を退避階登録部9に登録する。これにより、登録された階床情報に応じて、戸開不能階検出部4により戸開不能が検出された着床階を除いて優先度の高い順に該当する他階床へ他階退避運転を自動的に実施する。なお、退避階優先度確立部6により退避優先度を確立するとき、運転方向検出部8から運転方向の情報が得られているため、退避階登録部9には退避階優先度を示す階床情報が乗りかご1に対する運転方向別なものとして登録される。
【0026】
更に、他階退避運転制御部16では、退避階優先度の確立時に戸開不能でない他階床が無く、戸開不能が全階床に及んでいると判断すると、乗りかご1における内ドアに異常ありと判断して運転休止し、報知部10により外部へ自動的に発報する。
【0027】
即ち、実施例1に係るエレベータ制御装置3は、他階退避運転制御部16において、戸開不能回数記憶装置5に各階毎の戸開不能回数を記憶し、その戸開不能回数に応じて退避階優先度確立部6で退避階への戸開不良状況を示す優先度の重み付けを行い、退避階優先度を示す階床情報を退避階登録部9に登録するため、乗りかご1の着床時に戸開不能階検出部4により戸開不能が検出された場合、階床情報を参照した結果、過去に戸開不能でない他階床があれば、停止階(着床階)に近い最寄りなものから順次優先して他階退避運転を実施することができる。これにより、単独な乗りかごのエレベータ機構であっても、他階退避運転による戸開不良階への着床を極力抑制することができる。
【0028】
また、階床情報については、戸開不能となった階床毎の回数に基づいて退避階の優先度の重み付けを行うことにより退避階優先度を確立して登録を行い、この階床情報に応じて他階退避運転を行うため、戸開可能な可能性(優先度)の高い順に着床が行われることになり、救済対策運転を継続して実施する場合に有効となる。それ故、他階退避運転制御部16は、戸開不良状況の重みが一番低い階床のかご呼びを作成する機能を持つ。
【0029】
更に、他階退避運転制御部16において、退避階優先度の確立時に戸開不能でない他階床が無く、戸開不能が全階床に及んでいると判断した場合、乗りかご1の内ドア異常と判断してエレベータを運転休止し、報知部10により保全会社等の外部へ自動発報する。これにより、災害発生時やトラブル発生時等の緊急運転停止時の救済対策運転機能以外にも保守・点検促進機能が有効に働き、乗りかご1における利用者の閉じ込めを防止するための保守・管理対策を事前に行うことができる。因みに、エレベータ機構で内外ドアの戸開不能が起きる最大の原因は、機構部分全体の老朽化に起因する場合よりも、戸開状態検出部2における各階毎に設けられたセンサ部と乗りかご1に設けられたセンサ部との設置位置関係が位置ずれを起こして誤検出してしまうトラブルに起因する場合が多いため、係る機能を持たせることはエレベータ機構の保守・管理上で有効である。
【0030】
図2は、エレベータ制御装置3全体に係る他階退避運転の動作処理を例示したフローチャートである。
【0031】
エレベータ制御装置3全体に係る他階退避運転の動作処理では、まず乗りかご1の着床後にエレベータ制御装置3により戸開き指令(ステップS21)を出力した条件下において、戸開状態検出部2がX秒間戸開き不能(ステップS22)を検出した場合を想定している。
【0032】
この場合、他階退避運転制御部16では、エレベータ制御装置3の戸開不能階検出部4で検出された戸開不能階の回数を階床情報として各階毎に戸開不能回数記憶装置5に記憶すると共に、退避階優先度確立部6が階床情報における戸開不能となった階床毎の回数に基づいて退避階への優先度の重み付けを行って退避階優先度を確立することにより、戸開不能階の優先度設定(ステップS23)を行う。この退避階優先度が確立された階床情報は退避階登録部9に登録される。なお、ここでの階床情報は、戸開不能階の回数の他、戸開不能でない階についての情報を含むもので、退避階優先度の重み付けは戸開不能でない階が上位に位置付けられるものである。
【0033】
そこで、エレベータ制御装置3では、他階退避運転制御部16により退避階登録部9に登録された階床情報の退避階優先度に基づいて退避階の呼び設定(ステップS24)を行い、巻上機11のモータに駆動制御信号を与え、これにより乗りかご1を退避階へ運転開始(ステップS25)し、処理動作を終了する。
【0034】
図3は、エレベータ制御装置3に備えられる他階退避運転制御部16に係る他階退避運転の動作処理の一例を示すフローチャートである。
【0035】
この他階退避運転制御部16に係る他階退避運転の動作処理では、戸開不能階検出部4で戸開不能階が検出された場合に戸開不能階床設定(ステップS31)が行われ、引き続いて戸開不能回数設定(ステップS32)として、戸開不能回数記憶装置5に各階毎の戸開不能の回数が記憶されることを示している。また、この後は戸開不能回数に応じて他階退避優先度設定(ステップS33)として、退避階優先度確立部6が戸開不能となった階床毎の回数に基づいて退避階への優先度の重み付けを行って退避階優先度を確立して退避階登録部9に登録し、処理動作を終了する。
【0036】
図4は、エレベータ制御装置3に備えられる他階退避運転制御部16に係る他階退避運転の動作処理の他例を示すフローチャートである。
【0037】
ここでの他階退避運転制御部16に係る他階退避運転の動作処理では、まず上述した退避階の呼び設定(ステップS24)に際して、停止階検出部7により検出された停止階であって、戸開不能階検出部4により戸開不能と検出した着床階を退避階の候補から除外する退避階から停止階を除く(ステップS41)処理を行った後、退避階登録部9に登録された階床情報から停止階(着床階)から一番近い階を優先(ステップS42)して検索し、更に優先度が高い退避階を優先(ステップS43)して検索する。このとき、運転方向検出部8からは乗りかご1の昇降についての運転方向が検出されているため、停止階(着床階)から一番近い階が複数階検索された場合には、運転方向が一致している階を優先(ステップS44)して他階退避運転を実施する。
【0038】
図5は、他階退避運転制御部16に係る他階退避運転の動作処理についての具体例を説明するための動作推移状態を例示した模式図である。
【0039】
この他階退避運転の動作推移では、初期的にエレベータの乗りかご1が1階(1FL)に着床した時(ステップS51)において、戸開不能階検出部4が戸開不能を検出(判断)した場合、1階の戸開不能回数を0回から1回に変更(ステップS52)する処理を行うと共に、他階の戸開不能回数と比較することにより優先度を1から2に変更(ステップS52)する処理を行うことを示している。このとき、他階の優先度についても変更し、例えば2階(2FL)の優先度を2から3に変更(ステップS53)する処理を行う。
【0040】
また、エレベータの停止階(着床階)である1階(1FL)を退避階から除外し、一番近く他階退避許可対象にあって、2階(2FL)よりも優先度が高い3階(3FL)へ他階退避運転(ステップS54)する様子を示している。
【0041】
更に、ここでは戸開不能となった1階(1FL)以外に乗りかご1内でかご呼びが無い他階退避運転中にあって、新規なかご呼び(ホール呼び)が4階(4FL)を対象に作成(ステップS56)された場合には、3階(3FL)を対象にした他階退避運転(ステップS54)での退避階と4階(4FL)を対象にした他階退避許可(ステップS55)との優先度を比較し、優先度が高い階へ他階退避運転のサービスを行う。因みに、ここでは3階(3FL)及び4階(4FL)の両方が優先度1で同じであるため、乗りかご1は自動的に3階(3FL)へ着床されることになるが、仮に3階(3FL)よりも4階(4FL)の方の優先度が高ければ乗りかご1は自動的に4階(4FL)へ着床されることになる。
【0042】
図6は、他階退避運転制御部16に係る他階退避運転についての付加機能の動作処理を示すフローチャートである。
【0043】
この他階退避運転制御部16に係る他階退避運転についての付加機能では、他階退避優先度確立部6による退避階優先度の確立時に戸開不能でない他階床が無く、戸開不能が全階床に及んでいると判断した場合、全階戸開不能履歴の判断(ステップS61)の処理を行い、エレベータ運転休止(ステップS62)を実施した上、報知部10により保全会社へ自動発報(ステップS63)する処理を行う。
【0044】
図7は、エレベータ制御装置3についての他階退避運転制御部16に係る他階退避運転に対する他の付加機能の動作処理を示すフローチャートである。
【0045】
このエレベータ制御装置3についての付加機能は、他階退避運転制御部16において退避階優先度確立部6により退避階優先度が確立されて退避階登録部9に登録された階床情報について、優先度に対する重み付けが所定の閾値よりも低い場合には他階退避運転のサービス時に戸開不能となる事態を予測可能であるため、呼びの対象階が優先度の低い階床に該当する場合に呼び登録を行うときに実施するサービス機能である。
【0046】
具体的に云えば、登録された階床情報についての優先度の低い階床に該当するかご呼びボタン12の押下によるかご呼び、或いはホール呼びボタン14の押下によるホール呼びが行われることにより、優先度の低い階床の呼び検出(ステップS71)が実施されると、乗りかご1に付設されたかご内スピーカ13、或いは各階に設置されたホールスピーカ15により呼び階(登録床階)のドア状態を事前にアナウンス(ステップS72)する。この後、再度かご呼び、或いはホール呼びがあった場合、再度の呼び作成(ステップS73)とした後、呼び登録(ステップS74)を行い、動作処理を終了する。
【0047】
即ち、ここでは、エレベータ制御装置3に付加された機能として、乗りかご1内で任意な階床についてのかご呼びボタン12の押下によるかご呼びを行ってかご呼び登録を行うとき、かご呼びされた階床が登録された階床情報についての優先度の低い階床に該当すれば、乗りかご1に付設される音声ガイド発声手段であるかご内スピーカ13によりかごドアの状態を事前にアナウンスした後、再度のかご呼びに応じてかご呼び登録を行う機能と、任意な階床でホール呼びボタン14の押下によるホール呼びを行ってホール呼び登録を行うとき、ホール呼びされた階床が登録された階床情報についての優先度の低い階床に該当すれば、各階に付設される音声ガイド発声手段であるホールスピーカ15によりかごドアの状態を事前にアナウンスした後、再度のホール呼びに応じてかご呼び登録を行う機能と、を総括して説明したものである。
【符号の説明】
【0048】
1 乗りかご
2 戸開状態検出部
3 エレベータ制御装置
4 戸開不能階検出部
5 戸開不能回数記憶装置
6 退避階優先度確立部
7 停止階検出部
8 運転方向検出部
9 退避階登録部
10 報知部
11 巻上機
12 かご呼びボタン
13 かご内スピーカ
14 ホールボタン
15 ホールスピーカ
16 他階退避運転制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの目的とする階床への昇降運転時における着床時に乗りかごにおける内ドア及び各階に設けられる外ドアの戸開不能な状態を検出する戸開不能階検出手段を備えたエレベータ制御装置において、前記戸開不能階検出手段により検出された前記戸開不能な階床情報を記憶する記憶手段と、前記乗りかごに対する昇降運転時の着床階で前記戸開不能階検出手段により前記戸開不能が検出されたとき、前記記憶手段に記憶された前記階床情報を参照した結果、過去に戸開不能でない他階床があれば、当該他階床のうちの停止階に近い最寄りなものから順次優先して他階退避運転を実施する他階退避運転制御手段と、を備えたことを特徴とするエレベータ制御装置。
【請求項2】
請求項1記載のエレベータ制御装置において、前記記憶手段は、前記階床情報として、前記戸開不能階検出手段により戸開不能となった階床の回数を階床毎に記憶し、前記他階退避運転制御手段は、前記階床情報について、前記戸開不能となった階床毎の回数に基づいて退避階への優先度の重み付けを行うことにより退避階優先度を確立して登録した結果に応じて、前記戸開不能階検出手段により戸開不能が検出された着床階を除いて優先度の高い順に該当する他階床へ前記他階退避運転を実施することを特徴とするエレベータ制御装置。
【請求項3】
請求項2記載のエレベータ制御装置において、前記他階退避運転制御手段による前記退避階優先度の確立は、前記乗りかごに対する運転方向別に行うことを特徴とするエレベータ制御装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載のエレベータ制御装置において、前記他階退避運転制御手段は、前記階床情報について、前記退避階優先度の確立時に前記戸開不能でない他階床が無く、前記戸開不能が全階床に及んでいると判断すると、前記乗りかごにおける前記内ドアに異常ありと判断して運転休止し、外部へ自動的に発報することを特徴とするエレベータ制御装置。
【請求項5】
請求項2〜4の何れか1項記載のエレベータ制御装置において、前記乗りかご内で任意な階床についてのかご呼びを行ってかご呼び登録を行うとき、当該かご呼びされた階床が前記登録された階床情報についての優先度の低い階床に該当すれば、当該乗りかごに付設される音声ガイド発声手段により前記かごドアの状態を事前にアナウンスした後、再度のかご呼びに応じて当該かご呼び登録を行うことを特徴とするエレベータ制御装置。
【請求項6】
請求項2〜4の何れか1項記載のエレベータ制御装置において、任意な階床でホール呼びを行ってホール呼び登録を行うとき、当該ホール呼びされた階床が前記登録された階床情報についての優先度の低い階床に該当すれば、各階に付設される音声ガイド発声手段により前記かごドアの状態を事前にアナウンスした後、再度のホール呼びに応じて当該かご呼び登録を行うことを特徴とするエレベータ制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−111304(P2011−111304A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270222(P2009−270222)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】