説明

エンジンの吸気装置

【課題】キャビン及びその後方の積載スペースを確保する。
【解決手段】キャブオーバー型トラック1に設けられたエンジン3の吸気装置であって、エンジン3の吸気中の塵埃を捕集するエアクリーナー6と、キャビン4の骨格を構成するフロアメンバー15aと、フロアメンバー15aとエアクリーナー6とを接続する吸気ダクト21と、を含んで構成され、フロアメンバー15aの内部、吸気ダクト21の順番に外気を通過させエアクリーナー6に導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャブオーバー型車両に設けられたエンジンの吸気装置に関し、特に、エアクリーナーに外気を導入する吸気ダクトを備えたエンジンの吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの上方にキャビンが設けられたキャブオーバー型車両において、エンジンに外気を導入する吸気装置として、吸気ダクトを備えたものがある。(特許文献1)。この吸気ダクトは、エンジンのエアクリーナーに外気を導入する。この吸気装置では、エンジンの熱気を吸い込み難くするように、吸気ダクトがキャビンの背面に沿って外側に配置され、その先端が上方に伸びてキャビンの上部位置で開口し、外気を取り入れる。
【特許文献1】実開平5−89864号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、吸気ダクトをキャビンの後方に設けると、キャビンの後方の積載スペースが確保できなくなる虞がある。逆に、吸気ダクトを前方に移動して積載スペースを確保しようとすると、キャビンのスペースが低減してしまう。
そこで、本発明は、キャビン及びその後方の積載スペースを侵食せずにキャブオーバー型車両に適用可能なエンジンの吸気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このため、本発明は、キャブオーバー型車両に搭載されたエンジンの吸気中の塵埃を捕集するエアクリーナーと、キャビンの骨格を構成する閉断面構造部と、閉断面構造部とエンジンのエアクリーナーとを接続する吸気ダクトと、を含んで構成され、閉断面構造部の内部、吸気ダクトの順番に外気を通過させエアクリーナーに導入する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、閉断面構造部の内部を介してエアクリーナーに外気が導入されるので、エアクリーナーに吸気を導入する吸気通路として、キャビンの後方に吸気ダクトを設置するスペースが不要となる。これにより、キャビンのスペース及びその後方の積載スペースを確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、添付された図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るエンジンの吸気装置を備えたキャブオーバー型トラック1の全体図である。
図1に示すように、キャブオーバー型トラック1では、シャシフレーム2上にエンジン3が搭載されており、このエンジン3はキャビン4の下方に配置されている。キャビン4の後方のシャシフレーム2上には、荷台5が固定されている。キャビン4は、エンジン3の整備点検が容易に行えるように、チルトアップ可能に、即ちキャビン4の前下端部を中心として上方に持ち上げられるようになっている。
【0007】
エンジン3の吸気通路には、吸気中の塵埃を捕集するエアクリーナー6が介装されている。エアクリーナー6は、車両の左前輪7の後側フェンダー8に隣接してその後方に配置され、シャシフレーム2に固定されている。即ち、エアクリーナー6は、キャビン4の後方であって荷台5の下方に配置されている。
図2は、本発明の第1の実施形態に係るキャビンの側面図である。図3は、このキャビンの上面図である。
【0008】
図2及び図3に示すように、キャビン4は、その骨格として、フロントピラー11a及び11b、リヤピラー12a及び12b、フロントメンバー13、リヤメンバー14、フロアメンバー15a及び15bを備えている。フロントピラー11aはキャビン4の左縁に、フロントピラー11bはキャビン4の右縁に設けられ、フロントピラー11a及び11bはキャビン4の前端部を上下方向に夫々伸びている。リヤピラー12aはキャビン4の左縁に、リヤピラー12bはキャビン4の右縁に設けられ、リヤピラー12a及び12bはキャビン4の後端部を上下方向に伸びている。フロントメンバー13は、キャビン4の前下端部で左右のフロントピラー11a、11bを接続している。リヤメンバー14は、キャビン4の後下端部で左右のリヤピラー12a、12bを接続している。リヤメンバー14は、断面が矩形状に形成されて閉断面構造である一方、フロントピラー11a、11b及びリヤピラー12a、12bは、補強材が付されることにより、閉断面構造になっている。フロントメンバー13は、断面がコの字状に形成されており、開口を下方に向けて配置されている。
【0009】
キャビン4の前面には、フロントメンバー13とフロントバンパー16との間にグリル17が設けられており、グリル17を通して走行風が、図示しないラジエータやエンジン3の周囲に導入される。
フロアメンバー15a及び15bは、シャシフレーム2に沿ってその上方を前後方向に伸びてフロントメンバー13とリヤメンバー14とを接続しており、その断面が矩形状に形成された閉断面構造になっている。また、フロアメンバー15a及び15bは、キャビンフロア18の下面に沿って上下方向に湾曲しており、その前部15cが後部15dに対して下方に位置している。車両左側のフロアメンバー15aの下端には、水抜き穴19が設けられている。フロアメンバー15aの前端部の内側側面には、両端が開口した筒状の導入ダクト20の一端が接続されており、導入ダクト20の内部とフロアメンバー15aの内部とが連通している。導入ダクト20は、フロアメンバー15aの側方で前方に延び、グリル17に近接してその後方で開口している。
【0010】
本実施形態は、吸気装置の「閉断面構造部」として、フロアメンバー15aを採用し、これを用いてエアクリーナー6に外気を導入する。このため、キャブオーバー型トラック1には、エアクリーナー6とフロアメンバー15aの後端部とを接続する吸気ダクト21が設けられている。吸気ダクト21は、一端がエアクリーナー6に接続され、他端がフロアメンバー15aの後端部の下方に位置し上方に向かって開口している。吸気ダクト21の上端部には、その外壁から外向きに突出する長方形板状の鍔部22が固定されている。
【0011】
図4は、フロアメンバー15aと吸気ダクト21との接続部の構造図である。
図4に示すように、フロアメンバー15aの後端部には、その下面に開口部30が設けられている。更に、開口部30には、両端が開口した断面が矩形状の筒体31の一端が挿入され、この筒体31の一端が開口部30の縁部に全周に亘って固着されている。筒体31は、上下方向に伸縮できるように、ゴム等の弾性部材で側面が蛇腹状に形成されている。そして、吸気ダクト21の上端が筒体31に下方から着脱可能に挿入されて、フロアメンバー15aと吸気ダクト22とが連通している。このとき、筒体31の下端は鍔部22に密着している。
【0012】
以上のような構成により、フロアメンバー15aの内部と吸気ダクト21とが連通しているので、グリル17を通過して導入ダクト20に流入した外気は、フロアメンバー15a、吸気ダクト21を通過してエアクリーナー6に導入される。エアクリーナー6に吸気を導入する吸気通路としてフロアメンバー15aが用いられるので、キャビン4の後方に吸気ダクトを設置するスペースが不要となり、キャビン4及び荷台5のスペースを確保することができる。
【0013】
また、フロアメンバー15aの採用により、キャビン4の前端部、即ちエンジン3から離れた位置で吸気を導入するので、吸気温度の上昇を防ぎ、エンジン3の出力を確保できる。更に、グリル17の直ぐ後方で、外気が導入されるので、走行時に効率よく外気を導入することができる。
更に、フロアメンバー15aは、その後部15cが前部15dより上方に位置しているので、導入ダクト20から雨水が進入しても、フロアメンバー15aの後部15dに流入し難い。したがって、エアクリーナー6に雨水が浸入することを防止できる。フロアメンバー15aの前部15cに溜まった雨水は、水抜き穴19から外部に排出される。
【0014】
更に、筒体31から吸気ダクト21が上下方向に着脱可能であるので、キャビン4をチルトアップさせることができる。
更に、エアクリーナー6は、キャビン4の後方かつ荷台5の下方に配置されるので、エアクリーナー6の設置スペースを確保するために、キャビン4及び荷台5のスペースを削減する必要がない。
【0015】
本実施形態では、エアクリーナー6が車両の左側に設けられているが、車両の右側に設けてもよい。この場合、フロアメンバー15aの代わりに、車両右側にあるフロアメンバー15bを用いればよい。
図5は、本発明の第2の実施形態に係る吸気装置の構造図である。
本実施形態では、エアクリーナー6に外気を導入する吸気通路として、リヤピラー12aが用いられている。リヤピラー12aの下端とエアクリーナー6とは、円筒状の吸気ダクト32によって接続されている。吸気ダクト32は、一端がエアクリーナー6に接続され、他端がリヤピラー12aの下方に位置し上方に向かって開口している。リヤピラー12aの上端部側面には開口部33が設けられている。
【0016】
図6は、リヤピラー12aと吸気ダクト32との接続部の構造図である。
図6に示すように、リヤピラー12aの下端部には、円形の開口部34が設けられるとともに、この開口部34を覆うように円筒状の筒体35が固定されている。筒体35は、上下方向に伸縮できるように、ゴム等の弾性部材で側面が蛇腹状に形成されている。一方、吸気ダクト32の上端には、筒体35に吸気ダクト32の上端が確実に挿入されるように、先端の尖ったガイド36が固定されている。そして、筒体35に吸気ダクト32の上端が着脱可能に挿入されて、リヤピラー12aと吸気ダクト32とが連通する。
【0017】
図7は、開口部33の構造を示す断面図である。
図7に示すように、キャビン4には、開口部33からの雨水の浸入を防止するフィン37が固定されている。フィン37は、リヤピラー12aの内方から外方に向かって下方に傾斜しており、フィン37の上面を伝う雨水が重力によってリヤピラー12aの外部に排出される。
【0018】
以上により、開口部33からリヤピラー12aの内部に外気が導入され、この外気はリヤピラー12aの内部を下方に流れ、吸気ダクト32を通過してエアクリーナー6に流入する。このように、エアクリーナー6に外気を導入する吸気通路として、リヤピラー12aが用いられるので、キャビン4の後方に吸気ダクトを設置するスペースが不要となり、キャビン4及び荷台のスペースを確保することができる。
【0019】
なお、本発明は、エアクリーナー6へ外気を導入する吸気通路として、フロアメンバー15aやリヤピラー12aを用いることに限定するものではなく、キャビンに強度を付与する実質的な骨格を構成する閉断面構造部を採用してもよい。(例えば、キャビンの左右下端部を前後方向に伸びるフェンダー部。)
また、フロアメンバー15aやリヤピラー12aの内部に筒状部材を挿入し、この筒状部材の内部を外気が流通するようにしてもよい。これにより、フロアメンバー15a等の内部に雨水が付着する虞がなくなり、防錆処理を簡易にすることができる。
【0020】
本実施形態では、キャビン4の後方に荷台5が設けられているが、荷台5の代わりに荷室等の架装物が設けられているものでも、本発明を適用できる。この場合、本発明により、キャビン4及び架装物のスペースを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るエンジンの吸気装置を備えたキャブオーバー型トラックの全体図
【図2】本発明の第1の実施形態に係るキャビンの側面図
【図3】同上のキャビンの上面図
【図4】フロアメンバーと吸気ダクトとの接続部の構造図
【図5】本発明の第2の実施形態に係るエンジンの吸気装置の構造図
【図6】リヤピラーと吸気ダクトとの接続部の構造図
【図7】開口部の構造を示す断面図
【符号の説明】
【0022】
1 キャブオーバー型トラック
3 エンジン
4 キャビン
6 エアクリーナー
8 フェンダー
12a リヤピラー
15a フロアメンバー
21、32 吸気ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブオーバー型車両に設けられるエンジンの吸気装置であって、
前記エンジンの吸気中の塵埃を捕集するエアクリーナーと、
前記キャビンの骨格を構成する閉断面構造部と、
前記閉断面構造部と前記エアクリーナーとを接続する吸気ダクトと、
を含んで構成され、
前記閉断面構造部の内部、前記吸気ダクトの順番に外気を通過させ前記エアクリーナーに導入するエンジンの吸気装置。
【請求項2】
前記エアクリーナーは、前記キャブオーバー型車両の前輪の後側フェンダーに隣接してその後方に配置されることを特徴とする請求項1に記載のエンジンの吸気装置。
【請求項3】
前記閉断面構造部は、キャビンフロアに沿って前記キャビンの前後方向に伸びるフロアメンバーであることを特徴とする請求項2に記載のエンジンの吸気装置。
【請求項4】
前記閉断面構造部は、前記キャビンの背面に沿って上下方向に伸びるリヤピラーであることを特徴とする請求項2に記載のエンジンの吸気装置。
【請求項5】
前記閉断面構造部は、前記吸気ダクトに上下方向に着脱可能に接続されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のエンジンの吸気装置。
【請求項6】
前記吸気ダクトは、一端が前記エアクリーナーに接続する一方、他端が上方に向かって延び、前記他端が前記閉断面構造部に上方に向かって挿入されて前記閉断面構造部と接続することを特徴とする請求項5に記載のエンジンの吸気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−168556(P2007−168556A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367540(P2005−367540)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(504334865)日産ライトトラック株式会社 (60)
【Fターム(参考)】