エンジン特性パラメータの自動計測方法及び自動計測システム
【課題】多数の計測点でエンジン特性パラメータを自動計測する際の総計測時間を従来より短縮する。
【解決手段】エンジンの制御可能な運転領域内に多数の計測点を配置し、各計測点で、それぞれ燃焼安定性を評価してその評価値に基づいて各計測点で燃焼状態が安定するまでの待ち時間(燃焼安定待ち時間)T1 と、エンジン特性パラメータの計測値の平均化処理の精度を確保するのに必要な計測時間(パラメータ計測時間)T2 を算出し、各計測点で、燃焼安定待ち時間T1 経過後にエンジン特性パラメータの計測を開始し、その後、パラメータ計測時間T2 経過後に該計測点の計測を終了して次の計測点に移行するという処理を全ての計測点について順番に実行する。
【解決手段】エンジンの制御可能な運転領域内に多数の計測点を配置し、各計測点で、それぞれ燃焼安定性を評価してその評価値に基づいて各計測点で燃焼状態が安定するまでの待ち時間(燃焼安定待ち時間)T1 と、エンジン特性パラメータの計測値の平均化処理の精度を確保するのに必要な計測時間(パラメータ計測時間)T2 を算出し、各計測点で、燃焼安定待ち時間T1 経過後にエンジン特性パラメータの計測を開始し、その後、パラメータ計測時間T2 経過後に該計測点の計測を終了して次の計測点に移行するという処理を全ての計測点について順番に実行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの制御可能な運転領域内に配置した複数の計測点で所定のエンジン特性パラメータを計測するエンジン特性パラメータの自動計測方法及び自動計測システムに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
近年の電子制御化が進んだエンジン制御システムは、車載コンピュータで点火時期、噴射時期等の制御パラメータを運転条件に応じてマップにより最適値に制御することで、出力向上、排気エミッション低減、燃費節減等を実現するようにしている。エンジンの制御パラメータのマップデータの最適値は、エンジン機種毎に異なるため、開発過程で、制御パラメータのマップデータを目標性能を満足するように適合する作業が必要となってくる。
【0003】
従来の適合方法は、例えば、特許文献1(特開2004−263680号公報)、特許文献2(特開2007−9808号公報)に記載されているように、エンジンの制御可能な運転領域内に多数の計測点を配置し、エンジンの運転条件をいずれかの計測点の条件に変化させて該計測点でエンジン特性パラメータ(例えばトルク、排気エミッション、燃費等)を計測するという処理を全ての計測点について順番に実行し、各計測点の計測値に基づいてエンジン性能を最適にする制御パラメータの適合値を算出してマップを作成するようにしている。
【0004】
この適合工程で、各計測点のエンジン特性パラメータの計測精度を確保するために、各計測点で運転条件の変更後に燃焼状態が安定するのを待ってからエンジン特性パラメータの計測を開始し、一定時間計測してその計測値を平均化処理して各計測点の平均的な計測値を求めるようにしている。従来の計測方法では、各計測点で燃焼状態が安定するまでの待ち時間(以下「燃焼安定待ち時間」という)と、エンジン特性パラメータの計測値の平均化処理の精度を確保するのに必要な計測時間(以下「パラメータ計測時間」という)は、全ての計測点で予め一律に決められた一定の時間に設定するようにしていた。
【特許文献1】特開2004−263680号公報
【特許文献2】特開2007−9808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、各計測点毎に運転条件を変更するため、各計測点の燃焼安定性が異なると共に、各計測点の計測値のばらつき幅も異なってくる。各計測点の燃焼安定性が異なれば、各計測点の燃焼状態が安定するまでの燃焼安定待ち時間も異なり、同様に、各計測点の計測値のばらつき幅が異なれば、各計測点の計測値の平均化処理の精度を確保するのに必要なパラメータ計測時間も異なってくる。
【0006】
この点を考慮して、従来は、燃焼安定待ち時間とパラメータ計測時間を設定する際に、全ての計測点で燃焼安定性と計測値の平均化処理の精度を確保するために、予め、最も燃焼安定性の悪い計測点の燃焼安定待ち時間を全計測点共通の燃焼安定待ち時間に設定すると共に、最も計測値のばらつき幅の大きい計測点のパラメータ計測時間を全計測点共通のパラメータ計測時間に設定するようにしていた(一般的には、最も燃焼安定性の悪い計測点は、最も計測値のばらつき幅の大きい計測点でもある)。
【0007】
しかし、この場合、燃焼安定性が良い方の計測点では、必要以上に長い時間、計測開始を遅らせることになり、同様に、計測値のばらつき幅が小さい方の計測点では、必要以上に長い時間、計測し続けることになってしまい、その結果、全ての計測点の計測に要する総計測時間が長くなってしまうという問題があった。特に、近年の電子制御化が進んだエンジンでは、適合すべき制御パラメータの数が増加し、それらの制御パラメータの組み合わせによって運転状態が複雑に変化して計測点の数が指数関数的に増加するため、総計測時間の長時間化は、近年、益々大きな問題となっている。
【0008】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、全ての計測点の計測に要する総計測時間を従来より短縮することができるエンジン特性パラメータの自動計測方法及び自動計測システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、エンジンの制御可能な運転領域内に複数の計測点を配置し、エンジン回転速度、エンジン負荷及び/又は点火時期、噴射時期等の制御パラメータ(以下「運転条件」という)をいずれかの計測点の条件に変更して該計測点における所定のエンジン特性パラメータを計測するという処理を全ての計測点について順番に実行するエンジン特性パラメータの自動計測方法において、各計測点でそれぞれ燃焼安定性を評価してその評価値に基づいて各計測点で燃焼状態が安定するまでの待ち時間(以下「燃焼安定待ち時間」という)及び/又はエンジン特性パラメータの計測値の平均化処理の精度を確保するのに必要な計測時間(以下「パラメータ計測時間」という)を算出し、その算出結果に従って前記エンジン特性パラメータを計測するようにしたものである。
【0010】
この自動計測方法では、各計測点でそれぞれ燃焼安定性を評価してその評価値に基づいて燃焼安定待ち時間及び/又はパラメータ計測時間を算出するため、各計測点毎にそれぞれ燃焼安定待ち時間及び/又はパラメータ計測時間を各計測点の燃焼状態に応じた適正な時間に設定することができて、総計測時間を従来より短縮することができる。この場合、各計測点で燃焼状態が安定するまでの待ち時間を利用して燃焼安定性を評価するようにすれば、燃焼安定性を評価する時間は、各計測点の燃焼安定性評価開始から計測開始までの時間を長くする要因とはならない。
【0011】
また、請求項2のように、各計測点で燃焼安定性を評価する際に、所定時間内における、図示平均有効圧の標準偏差、軸トルクの標準偏差、燃焼圧力のばらつき、エンジン回転変動量、排出ガスの空燃比変動量、燃焼イオン電流変動量、これらのいずれかとその平均値との比のうちの少なくとも1つに基づいて燃焼安定性を評価するようにすれば良い。
【0012】
また、請求項3のように、各計測点における燃焼安定性の評価値と燃焼安定待ち時間及び/又はパラメータ計測時間との関係を規定するマップ、数式、モデルのいずれかを予め設定しておき、前記マップ、数式、モデルのいずれかを用いて燃焼安定待ち時間及び/又はパラメータ計測時間を算出するようにしても良い。これにより、燃焼安定待ち時間及び/又はパラメータ計測時間を精度良く算出することができる。
【0013】
また、請求項4のように、計測対象となるエンジンの機種に応じて、前記マップ、数式、モデルのいずれかを作業者によって修正するようにしても良い。このようにすれば、エンジンの機種毎の固有の特性に合わせて、マップ、数式、モデルを修正することができ、燃焼安定待ち時間及び/又はパラメータ計測時間をより精度良く設定することができ、計測精度をより一層向上させることができる。
【0014】
また、請求項5のように、各計測点で燃焼安定性の評価値に基づいて燃焼安定待ち時間及び/又はパラメータ計測時間をリアルタイムで算出するようにすると良い。燃焼安定待ち時間及び/又はパラメータ計測時間の算出は、燃焼安定待ち時間を利用してコンピュータでリアルタイムで行うことができる。
【0015】
この場合、請求項6のように、各計測点で燃焼安定性を評価した後に燃焼安定待ち時間のカウントを開始するようにしても良い。
【0016】
或は、請求項7のように、各計測点で燃焼安定性を評価した後に燃焼安定待ち時間のカウントを開始し、その後、該燃焼安定待ち時間から該燃焼安定性の評価に要した時間を差し引いた時間が経過した時点で、エンジン特性パラメータの計測を開始するようにしても良い。
【0017】
或は、請求項8のように、各計測点で燃焼安定性の評価を開始するときに同時に燃焼安定待ち時間のカウントを開始するようにしても良い。
【0018】
この場合、請求項9のように、燃焼安定待ち時間が燃焼安定性の評価に要した時間よりも短い場合には、該燃焼安定性の評価が終了した時点で、直ちにエンジン特性パラメータの計測を開始するようにして良い。
【0019】
尚、請求項10に係る発明は、請求項1に係る方法発明の技術思想を、異なるカテゴリーの「自動計測システム」として表現した発明であり、請求項1と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態を具体化した3つの実施例1〜3を説明する。
【実施例1】
【0021】
本発明の実施例1を図1乃至図8に基づいて説明する。
まず、図1に基づいてエンジン特性パラメータの自動計測システムの構成を説明する。 エンジンベンチ11には、計測対象となるエンジン12が取り付けられ、このエンジン12に装着した各種センサで検出した冷却水温、エンジン回転速度、スロットル開度、アクセル開度、空燃比等の各種センサ信号がエンジンECU13に送信される。エンジンECU13は、受信した各種センサ信号に基づいてエンジン11の運転状態を検出して、該エンジン運転状態に応じて点火時期、燃料噴射量等のエンジン制御信号をエンジン12に出力してエンジン11の運転状態を制御する。
【0022】
エンジンベンチ11を制御するエンジンベンチ制御ツール14は、燃焼解析装置15、排ガス分析計16等の各種計測装置で計測した燃焼解析データ、排気エミッション、排ガスの空燃比等のエンジン特性パラメータ(以下「計測パラメータ」という)の計測値を取り込むと共に、計測点の変更時にエンジン回転速度とエンジン負荷を変更し、かつECU適合ツール17に対して制御パラメータ変更指示を送信し、該ECU適合ツール17からエンジンECU13にパラメータ書き込み指示を送信する。エンジンECU13からECU適合ツール17にRAM値を送信し、更に、このECU適合ツール17で受信したRAM値をエンジンベンチ制御ツール14に送信する。
【0023】
エンジンベンチ制御ツール14は、自動適合ツール18に対して指示パラメータ要求を送信し、該自動適合ツール18から送信されてくるパラメータ指示を受信する。自動適合ツール18は、指示パラメータ要求を受信することで今回の計測点の計測終了を判定し、次の計測点へと進む。エンジンベンチ制御ツール14や自動適合ツール18は、パーソナルコンピュータ等で構成され、後述する各種ルーチンを実行して、各計測点でそれぞれ燃焼安定性を評価してその評価値に基づいて各計測点で燃焼状態が安定するまでの待ち時間(以下「燃焼安定待ち時間」という)T1 と、計測パラメータの計測値の平均化処理の精度を確保するのに必要な計測時間(以下「パラメータ計測時間」という)T2 を算出し、各計測点で、燃焼安定待ち時間T1 経過後に計測パラメータの計測を開始し、パラメータ計測時間T2 経過後に該計測点の計測を終了して次の計測点に移行するという処理を全ての計測点について順番に実行する。以下、各ルーチンの処理内容を説明する。
【0024】
図2の自動計測メインルーチンは、自動適合ツール18によって実行される。本プログラムが起動されると、まずステップ101で、自動適合ツール18に、今回計測する運転条件のリストを入力する。この後、ステップ102に進み、自動適合ツール18によって自動計測を開始する。
【0025】
自動計測中は、ステップ103で、運転条件のリストを参照し、エンジンベンチ制御ツール14に今回の計測点に応じた運転条件を送信する。次のステップ104で、図3の自動計測サブルーチンを実行して、今回の計測点で燃焼安定性を評価してその評価値に基づいて燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 を算出し、燃焼安定待ち時間T1 経過後に計測パラメータの計測を開始して、この計測をパラメータ計測時間T2 経過後に終了する。この後、ステップ105に進み、全ての計測点の計測を終了したか否かを判定し、まだ計測していない計測点が残っていれば、ステップ106に進み、次の計測点へ移行して、上述したステップ103〜105の処理を繰り返す。その後、ステップ105で、全ての計測点の計測を終了したと判定された時点で、本メインルーチンを終了する。
【0026】
図3の自動計測サブルーチンは、上記図2の自動計測メインルーチンのステップ104で、エンジンベンチ制御ツール14によって実行される。本サブルーチンが起動されると、まずステップ111で、上記図2のステップ103で自動適合ツール18から受信した、今回の計測点の運転条件に応じてエンジンベンチ制御ツール14がエンジン回転速度とエンジン負荷を変更するとともに、制御パラメータ変更指示をECU適合ツール17に入力する。これにより、ECU適合ツール17は、図4のRAM値書き換えルーチンを実行して、エンジンECU13のRAM値を書き換える(ステップ120)。
【0027】
この後、図3のステップ112に進み、図5の燃焼安定性判定ルーチンを実行して、燃焼安定性を評価する。図5の燃焼安定性判定ルーチンが起動されると、まずステップ121で、燃焼安定性判定時間T0 のカウントを開始し、次のステップ122で、燃焼安定性を評価するデータの計測を開始する。この際、燃焼安定性を評価するデータとしては、例えば、図示平均有効圧の標準偏差、軸トルクの標準偏差、燃焼圧力のばらつき、エンジン回転変動量、排出ガスの空燃比変動量、燃焼イオン電流変動量のいずれかを用いたり、或は、これらのいずれかとその平均値との比のいずれかを用いれば良い。例えば、図示平均有効圧の標準偏差/平均値を用いたり、或は、軸トルクの標準偏差/平均値を用いれば、燃焼安定性を精度良く評価することができる。燃焼安定性が安定するほど、図示平均有効圧の標準偏差、軸トルクの標準偏差、燃焼圧力のばらつき、エンジン回転変動量、排出ガスの空燃比変動量、燃焼イオン電流変動量が小さくなるという関係があるため、これらのデータから燃焼安定性を評価することができる。このステップ112の処理が特許請求の範囲でいう燃焼安定性評価手段としての役割を果たす。
【0028】
この後、ステップ123に進み、燃焼安定性の計測開始から所定の燃焼安定性判定時間T0 が経過したか否かを判定し、燃焼安定性判定時間T0 が経過するまで上記ステップ121〜123の処理を繰り返す。ここで、燃焼安定性判定時間T0 は、予め各計測点毎に設定しても良いし、全計測点共通の一律の時間を設定しても良い。そして、燃焼安定性判定時間T0 が経過した時点で、ステップ124に進み、今回の計測点における燃焼安定性の評価値を決定する。
【0029】
この後、図3のステップ113に戻り、図6又は図7の燃焼安定待ち時間・パラメータ計測時間算出ルーチンを実行して、今回の計測点における燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 を算出する。図6の燃焼安定待ち時間・パラメータ計測時間算出ルーチン(例1)では、まずステップ131で、各計測点における燃焼安定性の評価値と燃焼安定待ち時間との関係を規定するマップを参照して、今回の計測点における燃焼安定性の評価値に対応する燃焼安定待ち時間T1 を算出する。
【0030】
そして、次のステップ132で、各計測点における燃焼安定性の評価値とパラメータ計測時間との関係を規定するマップを参照して、今回の計測点における燃焼安定性の評価値に対応するパラメータ計測時間T2 を算出する。この際、計測対象となるエンジンの機種に応じて、マップを作業者によって修正するようにしても良い。このようにすれば、エンジン12の機種毎の固有の特性に合わせて、マップを修正することができるので、燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 をより精度良く設定することができ、計測精度をより一層向上させることができる。
【0031】
また、図7の燃焼安定待ち時間・パラメータ計測時間算出ルーチン(例2)では、まずステップ141で、各計測点における燃焼安定性の評価値と燃焼安定待ち時間との関係を規定する数式(又はモデル)を用いて、今回の計測点における燃焼安定性の評価値に対応する燃焼安定待ち時間T1 を算出する。
【0032】
そして、次のステップ142で、各計測点における燃焼安定性の評価値とパラメータ計測時間との関係を規定する数式(又はモデル)を用いて、今回の計測点における燃焼安定性の評価値に対応するパラメータ計測時間T2 を算出する。この際、計測対象となるエンジン12の機種に応じて、数式(又はモデル)を作業者によって修正するようにしても良い。このようにすれば、エンジン12の機種毎の固有の特性に合わせて、数式(又はモデル)を修正することができるので、燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 をより精度良く設定することができ、計測精度をより一層向上させることができる。尚、図6又は図7の燃焼安定待ち時間・パラメータ計測時間算出ルーチンは、特許請求の範囲でいう算出手段としての役割を果たす。
【0033】
以上のようにして、燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 を算出した後、図3のステップ114に戻り、燃焼安定待ち時間T1 のカウントを開始する。この後、ステップ115に進み、燃焼安定性の評価終了時(燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 の算出終了時)から燃焼安定待ち時間T1 が経過したか否かを判定し、燃焼安定待ち時間T1 が経過するまで待機する。
【0034】
その後、燃焼安定待ち時間T1 が経過した時点で、ステップ116に進み、計測パラメータの計測を開始する。そして、次のステップ117で、パラメータ計測時間T2 のカウントを開始し、続くステップ118で、計測パラメータの計測値を平均化処理する。ここで、平均化処理は、計測値の相加平均値を算出しても良いし、なまし処理によって計測値のなまし値を算出しても良い。或は、パラメータ計測時間T2 内の計測値の中央値や最頻値を算出しても良い。この後、ステップ119に進み、計測パラメータの計測開始からパラメータ計測時間T2 が経過したか否かを判定し、パラメータ計測時間T2 が経過するまで上記ステップ117〜119の処理を繰り返す。その後、パラメータ計測時間T2 が経過した時点で、今回の計測点の計測を終了する。このとき、エンジンベンチ制御ツール14は自動適合ツール18に対し指示パラメータ変更要求を送信し、今回の計測点の終了を通知する。
【0035】
尚、パラメータ計測時間T2 が経過するまで、計測パラメータの計測のみを行ってその計測値をメモリに蓄積しておき、パラメータ計測時間T2 が経過した時点で、メモリに蓄積された計測値を平均化処理するようにしても良い。これらのステップ116〜118の処理が特許請求の範囲でいう計測手段としての役割を果たす。
【0036】
以上説明した本実施例1の自動計測方法による効果を図8を用いて説明する。
本実施例1では、各計測点でそれぞれ燃焼安定性を評価してその評価値に基づいて燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 を算出するため、各計測点毎にそれぞれ燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 を各計測点の燃焼状態に応じた適正な時間に設定することができる。これにより、例えば、燃焼状態が良い計測点や、燃焼状態が少し悪い程度の計測点では、燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 を従来より短縮することができて、総計測時間を従来より短縮することができる。
【実施例2】
【0037】
上述した実施例1では、各計測点で、燃焼安定性の計測開始から所定の燃焼安定性判定時間T0 が経過した後(つまり燃焼安定性を評価して燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 を算出するのに要する時間T0 が経過した後)に、燃焼安定待ち時間T1 のカウントを開始するようにしているため、1つの計測点の計測に要する時間は、燃焼安定性判定時間T0 と燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 とを合計した時間となる。
1つの計測点の計測に要する時間=T0 +T1 +T2
【0038】
尚、燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 の算出は、コンピュータで瞬時に実行されるため、これらの算出に要する時間は、燃焼安定性の評価に要する時間と比較すれば無視できるほど小さい。従って、燃焼安定性を評価して燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 を算出するのに要する時間T0 は、燃焼安定性の評価に要する時間と実質的に同じ時間となる。従って、以下の説明では、T0 を単に「燃焼安定性の評価に要する時間」という。
【0039】
これに対して、図9及び図10に示す本発明の実施例2では、各計測点で燃焼安定性を評価した後に燃焼安定待ち時間T1 のカウントを開始し、その後、この燃焼安定待ち時間T1 から燃焼安定性の評価に要した時間T0 を差し引いて求めた補正後の燃焼安定待ち時間(T1 −T0 )が経過した時点で、計測パラメータの計測を開始するようにしている。従って、1つの計測点の計測に要する時間は、燃焼安定性判定時間T0 と補正後の燃焼安定待ち時間(T1 −T0 )とパラメータ計測時間T2 とを合計した時間となるため、結局、1つの計測点の計測に要する時間は、燃焼安定性の評価値に基づいて算出した燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 を合計した時間となる。
1つの計測点の計測に要する時間=T0 +(T1 −T0 )+T2
=T1 +T2
【0040】
もし、補正後の燃焼安定待ち時間(T1−T0 )が負の値ならば、すなわち燃焼安定待ち時間T1 が燃焼安定性判定時間T0 よりも短ければ、燃焼安定性判定時間T0 が経過した時点(燃焼安定性を評価して燃焼安定待ち時間T1 及びパラメータ計測時間T2 を算出した時点)で、直ちに計測パラメータの計測を開始すれば良い。
【0041】
本実施例2で実行する図9の自動計測サブルーチンは、前記図3の自動計測サブルーチンのステップ115の処理をステップ114a、115aに変更したものであり、これ以外の各ステップの処理は図3と同じである。
【0042】
即ち、図9の自動計測サブルーチンでは、ステップ112、113で、燃焼安定性を評価して燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 を算出した後、ステップ114に進み、燃焼安定待ち時間T1 のカウントを開始し、次のステップ114aで、燃焼安定待ち時間T1 から燃焼安定性の評価に要した時間T0 を差し引いて補正後の燃焼安定待ち時間(T1 −T0 )を求める。
補正後の燃焼安定待ち時間=T1 −T0
【0043】
この後、ステップ115aに進み、燃焼安定性の評価終了時(燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 の算出終了時)から補正後の燃焼安定待ち時間(T1 −T0 )が経過したか否かを判定し、補正後の燃焼安定待ち時間(T1 −T0 )が経過するまで待機する。
【0044】
その後、補正後の燃焼安定待ち時間(T1 −T0 )が経過した時点で、ステップ116に進み、計測パラメータの計測を開始し、その後、パラメータ計測時間T2 が経過した時点で、今回の計測点の計測を終了する(ステップ117〜119)。
【0045】
尚、燃焼安定待ち時間T1 が燃焼安定性判定時間T0 よりも短い場合は、燃焼安定性を評価して燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 を算出した時点で、ステップ115aに進むと、「Yes」と判定され、直ちにステップ116に進み、計測パラメータの計測が開始される。
【0046】
以上説明した本実施例2では、各計測点で燃焼安定性を評価した後に燃焼安定待ち時間T1 のカウントを開始し、その後、この燃焼安定待ち時間T1 から燃焼安定性の評価に要した時間T0 を差し引いて求めた補正後の燃焼安定待ち時間(T1 −T0 )が経過した時点で、計測パラメータの計測を開始するようにしたので、前記実施例1と比較して、1つの計測点の計測に要する時間を燃焼安定性判定時間T0 分だけ短くすることができる利点がある。
【実施例3】
【0047】
図11及び図12に示す本発明の実施例3では、各計測点で燃焼安定性の評価を開始するときに同時に燃焼安定待ち時間T1 のカウントを開始し、燃焼安定性の評価開始時から燃焼安定待ち時間T1 が経過した時点で、計測パラメータの計測を開始するようにしている。この場合、燃焼安定待ち時間T1 のカウントを開始する時点では、燃焼安定待ち時間T1 がまだ決まっていないが、一般に、燃焼状態が安定するまでの燃焼安定待ち時間T1 は、燃焼安定性の評価に要する燃焼安定性判定時間T0 よりも長いため、燃焼状態が安定する前に燃焼安定性判定時間T0 が経過して燃焼安定待ち時間T1 が決定される。これにより、1つの計測点の計測に要する時間は、燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 を合計した時間となる。
1つの計測点の計測に要する時間=T1 +T2
【0048】
もし、燃焼安定待ち時間T1 が燃焼安定性判定時間T0 よりも短ければ、燃焼安定性判定時間T0 が経過した時点(燃焼安定性の評価が終了した時点)で、直ちに計測パラメータの計測を開始すれば良い。
【0049】
本実施例3で実行する図11の自動計測サブルーチンは、前記図3の自動計測サブルーチンのステップ114の処理を省略し、ステップ111の前にステップ110の処理を追加したものであり、これ以外の各ステップの処理は図3と同じである。
【0050】
即ち、図11の自動計測サブルーチンが起動されると、まず、ステップ110で、燃焼安定待ち時間T1 のカウントを開始すると共に、燃焼安定性を評価して燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 を算出する(ステップ112、113)。そして、次のステップ115で、燃焼安定性の評価開始時から燃焼安定待ち時間T1 が経過したか否かを判定し、燃焼安定待ち時間T1 が経過した時点で、計測パラメータの計測を開始し(ステップ116)、その後、パラメータ計測時間T2 が経過した時点で、今回の計測点の計測を終了する(ステップ117〜119)。
【0051】
尚、燃焼安定待ち時間T1 が燃焼安定性判定時間T0 よりも短い場合は、燃焼安定性を評価して燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 を算出した時点で、ステップ115に進むと、「Yes」と判定され、直ちにステップ116に進み、計測パラメータの計測が開始される。
【0052】
以上説明した本実施例3では、各計測点で燃焼安定性の評価を開始するときに同時に燃焼安定待ち時間T1 のカウントを開始し、燃焼安定性の評価開始時から燃焼安定待ち時間T1 が経過した時点で、計測パラメータの計測を開始するようにしたので、前記実施例2と同様に、前記実施例1と比較して、1つの計測点の計測に要する時間を燃焼安定性判定時間T0 分だけ短くすることができる利点がある。
【0053】
尚、各実施例1〜3では、各計測点で燃焼安定性の評価値に基づいて燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 の両方を算出するようにしたが、いずれか一方のみを算出して、他方は予め決められた一定持間に設定するようにしても良く、この場合でも、従来と比較すれば、総計測時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の各実施例1〜3で使用するエンジン特性パラメータの自動計測システムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施例1の自動計測メインルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】実施例1の自動計測サブルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】実施例1のRAM値書き換えルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】実施例1の燃焼安定性判定ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】実施例1の燃焼安定待ち時間・パラメータ計測時間算出ルーチン(例1)の処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】実施例1の燃焼安定待ち時間・パラメータ計測時間算出ルーチン(例2)の処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】実施例1のエンジン特性パラメータの自動計測方法の効果を従来と対比して説明する図である。
【図9】実施例2の自動計測サブルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】実施例2の1つの計測点の計測に要する時間を説明するための図である。
【図11】実施例3の自動計測サブルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】実施例3の1つの計測点の計測に要する時間を説明するための図である。
【符号の説明】
【0055】
11…エンジンベンチ、12…エンジン、13…エンジンECU、14…エンジンベンチ制御ツール、17…ECU適合ツール、18…自動適合ツール
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの制御可能な運転領域内に配置した複数の計測点で所定のエンジン特性パラメータを計測するエンジン特性パラメータの自動計測方法及び自動計測システムに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
近年の電子制御化が進んだエンジン制御システムは、車載コンピュータで点火時期、噴射時期等の制御パラメータを運転条件に応じてマップにより最適値に制御することで、出力向上、排気エミッション低減、燃費節減等を実現するようにしている。エンジンの制御パラメータのマップデータの最適値は、エンジン機種毎に異なるため、開発過程で、制御パラメータのマップデータを目標性能を満足するように適合する作業が必要となってくる。
【0003】
従来の適合方法は、例えば、特許文献1(特開2004−263680号公報)、特許文献2(特開2007−9808号公報)に記載されているように、エンジンの制御可能な運転領域内に多数の計測点を配置し、エンジンの運転条件をいずれかの計測点の条件に変化させて該計測点でエンジン特性パラメータ(例えばトルク、排気エミッション、燃費等)を計測するという処理を全ての計測点について順番に実行し、各計測点の計測値に基づいてエンジン性能を最適にする制御パラメータの適合値を算出してマップを作成するようにしている。
【0004】
この適合工程で、各計測点のエンジン特性パラメータの計測精度を確保するために、各計測点で運転条件の変更後に燃焼状態が安定するのを待ってからエンジン特性パラメータの計測を開始し、一定時間計測してその計測値を平均化処理して各計測点の平均的な計測値を求めるようにしている。従来の計測方法では、各計測点で燃焼状態が安定するまでの待ち時間(以下「燃焼安定待ち時間」という)と、エンジン特性パラメータの計測値の平均化処理の精度を確保するのに必要な計測時間(以下「パラメータ計測時間」という)は、全ての計測点で予め一律に決められた一定の時間に設定するようにしていた。
【特許文献1】特開2004−263680号公報
【特許文献2】特開2007−9808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、各計測点毎に運転条件を変更するため、各計測点の燃焼安定性が異なると共に、各計測点の計測値のばらつき幅も異なってくる。各計測点の燃焼安定性が異なれば、各計測点の燃焼状態が安定するまでの燃焼安定待ち時間も異なり、同様に、各計測点の計測値のばらつき幅が異なれば、各計測点の計測値の平均化処理の精度を確保するのに必要なパラメータ計測時間も異なってくる。
【0006】
この点を考慮して、従来は、燃焼安定待ち時間とパラメータ計測時間を設定する際に、全ての計測点で燃焼安定性と計測値の平均化処理の精度を確保するために、予め、最も燃焼安定性の悪い計測点の燃焼安定待ち時間を全計測点共通の燃焼安定待ち時間に設定すると共に、最も計測値のばらつき幅の大きい計測点のパラメータ計測時間を全計測点共通のパラメータ計測時間に設定するようにしていた(一般的には、最も燃焼安定性の悪い計測点は、最も計測値のばらつき幅の大きい計測点でもある)。
【0007】
しかし、この場合、燃焼安定性が良い方の計測点では、必要以上に長い時間、計測開始を遅らせることになり、同様に、計測値のばらつき幅が小さい方の計測点では、必要以上に長い時間、計測し続けることになってしまい、その結果、全ての計測点の計測に要する総計測時間が長くなってしまうという問題があった。特に、近年の電子制御化が進んだエンジンでは、適合すべき制御パラメータの数が増加し、それらの制御パラメータの組み合わせによって運転状態が複雑に変化して計測点の数が指数関数的に増加するため、総計測時間の長時間化は、近年、益々大きな問題となっている。
【0008】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、全ての計測点の計測に要する総計測時間を従来より短縮することができるエンジン特性パラメータの自動計測方法及び自動計測システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、エンジンの制御可能な運転領域内に複数の計測点を配置し、エンジン回転速度、エンジン負荷及び/又は点火時期、噴射時期等の制御パラメータ(以下「運転条件」という)をいずれかの計測点の条件に変更して該計測点における所定のエンジン特性パラメータを計測するという処理を全ての計測点について順番に実行するエンジン特性パラメータの自動計測方法において、各計測点でそれぞれ燃焼安定性を評価してその評価値に基づいて各計測点で燃焼状態が安定するまでの待ち時間(以下「燃焼安定待ち時間」という)及び/又はエンジン特性パラメータの計測値の平均化処理の精度を確保するのに必要な計測時間(以下「パラメータ計測時間」という)を算出し、その算出結果に従って前記エンジン特性パラメータを計測するようにしたものである。
【0010】
この自動計測方法では、各計測点でそれぞれ燃焼安定性を評価してその評価値に基づいて燃焼安定待ち時間及び/又はパラメータ計測時間を算出するため、各計測点毎にそれぞれ燃焼安定待ち時間及び/又はパラメータ計測時間を各計測点の燃焼状態に応じた適正な時間に設定することができて、総計測時間を従来より短縮することができる。この場合、各計測点で燃焼状態が安定するまでの待ち時間を利用して燃焼安定性を評価するようにすれば、燃焼安定性を評価する時間は、各計測点の燃焼安定性評価開始から計測開始までの時間を長くする要因とはならない。
【0011】
また、請求項2のように、各計測点で燃焼安定性を評価する際に、所定時間内における、図示平均有効圧の標準偏差、軸トルクの標準偏差、燃焼圧力のばらつき、エンジン回転変動量、排出ガスの空燃比変動量、燃焼イオン電流変動量、これらのいずれかとその平均値との比のうちの少なくとも1つに基づいて燃焼安定性を評価するようにすれば良い。
【0012】
また、請求項3のように、各計測点における燃焼安定性の評価値と燃焼安定待ち時間及び/又はパラメータ計測時間との関係を規定するマップ、数式、モデルのいずれかを予め設定しておき、前記マップ、数式、モデルのいずれかを用いて燃焼安定待ち時間及び/又はパラメータ計測時間を算出するようにしても良い。これにより、燃焼安定待ち時間及び/又はパラメータ計測時間を精度良く算出することができる。
【0013】
また、請求項4のように、計測対象となるエンジンの機種に応じて、前記マップ、数式、モデルのいずれかを作業者によって修正するようにしても良い。このようにすれば、エンジンの機種毎の固有の特性に合わせて、マップ、数式、モデルを修正することができ、燃焼安定待ち時間及び/又はパラメータ計測時間をより精度良く設定することができ、計測精度をより一層向上させることができる。
【0014】
また、請求項5のように、各計測点で燃焼安定性の評価値に基づいて燃焼安定待ち時間及び/又はパラメータ計測時間をリアルタイムで算出するようにすると良い。燃焼安定待ち時間及び/又はパラメータ計測時間の算出は、燃焼安定待ち時間を利用してコンピュータでリアルタイムで行うことができる。
【0015】
この場合、請求項6のように、各計測点で燃焼安定性を評価した後に燃焼安定待ち時間のカウントを開始するようにしても良い。
【0016】
或は、請求項7のように、各計測点で燃焼安定性を評価した後に燃焼安定待ち時間のカウントを開始し、その後、該燃焼安定待ち時間から該燃焼安定性の評価に要した時間を差し引いた時間が経過した時点で、エンジン特性パラメータの計測を開始するようにしても良い。
【0017】
或は、請求項8のように、各計測点で燃焼安定性の評価を開始するときに同時に燃焼安定待ち時間のカウントを開始するようにしても良い。
【0018】
この場合、請求項9のように、燃焼安定待ち時間が燃焼安定性の評価に要した時間よりも短い場合には、該燃焼安定性の評価が終了した時点で、直ちにエンジン特性パラメータの計測を開始するようにして良い。
【0019】
尚、請求項10に係る発明は、請求項1に係る方法発明の技術思想を、異なるカテゴリーの「自動計測システム」として表現した発明であり、請求項1と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態を具体化した3つの実施例1〜3を説明する。
【実施例1】
【0021】
本発明の実施例1を図1乃至図8に基づいて説明する。
まず、図1に基づいてエンジン特性パラメータの自動計測システムの構成を説明する。 エンジンベンチ11には、計測対象となるエンジン12が取り付けられ、このエンジン12に装着した各種センサで検出した冷却水温、エンジン回転速度、スロットル開度、アクセル開度、空燃比等の各種センサ信号がエンジンECU13に送信される。エンジンECU13は、受信した各種センサ信号に基づいてエンジン11の運転状態を検出して、該エンジン運転状態に応じて点火時期、燃料噴射量等のエンジン制御信号をエンジン12に出力してエンジン11の運転状態を制御する。
【0022】
エンジンベンチ11を制御するエンジンベンチ制御ツール14は、燃焼解析装置15、排ガス分析計16等の各種計測装置で計測した燃焼解析データ、排気エミッション、排ガスの空燃比等のエンジン特性パラメータ(以下「計測パラメータ」という)の計測値を取り込むと共に、計測点の変更時にエンジン回転速度とエンジン負荷を変更し、かつECU適合ツール17に対して制御パラメータ変更指示を送信し、該ECU適合ツール17からエンジンECU13にパラメータ書き込み指示を送信する。エンジンECU13からECU適合ツール17にRAM値を送信し、更に、このECU適合ツール17で受信したRAM値をエンジンベンチ制御ツール14に送信する。
【0023】
エンジンベンチ制御ツール14は、自動適合ツール18に対して指示パラメータ要求を送信し、該自動適合ツール18から送信されてくるパラメータ指示を受信する。自動適合ツール18は、指示パラメータ要求を受信することで今回の計測点の計測終了を判定し、次の計測点へと進む。エンジンベンチ制御ツール14や自動適合ツール18は、パーソナルコンピュータ等で構成され、後述する各種ルーチンを実行して、各計測点でそれぞれ燃焼安定性を評価してその評価値に基づいて各計測点で燃焼状態が安定するまでの待ち時間(以下「燃焼安定待ち時間」という)T1 と、計測パラメータの計測値の平均化処理の精度を確保するのに必要な計測時間(以下「パラメータ計測時間」という)T2 を算出し、各計測点で、燃焼安定待ち時間T1 経過後に計測パラメータの計測を開始し、パラメータ計測時間T2 経過後に該計測点の計測を終了して次の計測点に移行するという処理を全ての計測点について順番に実行する。以下、各ルーチンの処理内容を説明する。
【0024】
図2の自動計測メインルーチンは、自動適合ツール18によって実行される。本プログラムが起動されると、まずステップ101で、自動適合ツール18に、今回計測する運転条件のリストを入力する。この後、ステップ102に進み、自動適合ツール18によって自動計測を開始する。
【0025】
自動計測中は、ステップ103で、運転条件のリストを参照し、エンジンベンチ制御ツール14に今回の計測点に応じた運転条件を送信する。次のステップ104で、図3の自動計測サブルーチンを実行して、今回の計測点で燃焼安定性を評価してその評価値に基づいて燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 を算出し、燃焼安定待ち時間T1 経過後に計測パラメータの計測を開始して、この計測をパラメータ計測時間T2 経過後に終了する。この後、ステップ105に進み、全ての計測点の計測を終了したか否かを判定し、まだ計測していない計測点が残っていれば、ステップ106に進み、次の計測点へ移行して、上述したステップ103〜105の処理を繰り返す。その後、ステップ105で、全ての計測点の計測を終了したと判定された時点で、本メインルーチンを終了する。
【0026】
図3の自動計測サブルーチンは、上記図2の自動計測メインルーチンのステップ104で、エンジンベンチ制御ツール14によって実行される。本サブルーチンが起動されると、まずステップ111で、上記図2のステップ103で自動適合ツール18から受信した、今回の計測点の運転条件に応じてエンジンベンチ制御ツール14がエンジン回転速度とエンジン負荷を変更するとともに、制御パラメータ変更指示をECU適合ツール17に入力する。これにより、ECU適合ツール17は、図4のRAM値書き換えルーチンを実行して、エンジンECU13のRAM値を書き換える(ステップ120)。
【0027】
この後、図3のステップ112に進み、図5の燃焼安定性判定ルーチンを実行して、燃焼安定性を評価する。図5の燃焼安定性判定ルーチンが起動されると、まずステップ121で、燃焼安定性判定時間T0 のカウントを開始し、次のステップ122で、燃焼安定性を評価するデータの計測を開始する。この際、燃焼安定性を評価するデータとしては、例えば、図示平均有効圧の標準偏差、軸トルクの標準偏差、燃焼圧力のばらつき、エンジン回転変動量、排出ガスの空燃比変動量、燃焼イオン電流変動量のいずれかを用いたり、或は、これらのいずれかとその平均値との比のいずれかを用いれば良い。例えば、図示平均有効圧の標準偏差/平均値を用いたり、或は、軸トルクの標準偏差/平均値を用いれば、燃焼安定性を精度良く評価することができる。燃焼安定性が安定するほど、図示平均有効圧の標準偏差、軸トルクの標準偏差、燃焼圧力のばらつき、エンジン回転変動量、排出ガスの空燃比変動量、燃焼イオン電流変動量が小さくなるという関係があるため、これらのデータから燃焼安定性を評価することができる。このステップ112の処理が特許請求の範囲でいう燃焼安定性評価手段としての役割を果たす。
【0028】
この後、ステップ123に進み、燃焼安定性の計測開始から所定の燃焼安定性判定時間T0 が経過したか否かを判定し、燃焼安定性判定時間T0 が経過するまで上記ステップ121〜123の処理を繰り返す。ここで、燃焼安定性判定時間T0 は、予め各計測点毎に設定しても良いし、全計測点共通の一律の時間を設定しても良い。そして、燃焼安定性判定時間T0 が経過した時点で、ステップ124に進み、今回の計測点における燃焼安定性の評価値を決定する。
【0029】
この後、図3のステップ113に戻り、図6又は図7の燃焼安定待ち時間・パラメータ計測時間算出ルーチンを実行して、今回の計測点における燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 を算出する。図6の燃焼安定待ち時間・パラメータ計測時間算出ルーチン(例1)では、まずステップ131で、各計測点における燃焼安定性の評価値と燃焼安定待ち時間との関係を規定するマップを参照して、今回の計測点における燃焼安定性の評価値に対応する燃焼安定待ち時間T1 を算出する。
【0030】
そして、次のステップ132で、各計測点における燃焼安定性の評価値とパラメータ計測時間との関係を規定するマップを参照して、今回の計測点における燃焼安定性の評価値に対応するパラメータ計測時間T2 を算出する。この際、計測対象となるエンジンの機種に応じて、マップを作業者によって修正するようにしても良い。このようにすれば、エンジン12の機種毎の固有の特性に合わせて、マップを修正することができるので、燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 をより精度良く設定することができ、計測精度をより一層向上させることができる。
【0031】
また、図7の燃焼安定待ち時間・パラメータ計測時間算出ルーチン(例2)では、まずステップ141で、各計測点における燃焼安定性の評価値と燃焼安定待ち時間との関係を規定する数式(又はモデル)を用いて、今回の計測点における燃焼安定性の評価値に対応する燃焼安定待ち時間T1 を算出する。
【0032】
そして、次のステップ142で、各計測点における燃焼安定性の評価値とパラメータ計測時間との関係を規定する数式(又はモデル)を用いて、今回の計測点における燃焼安定性の評価値に対応するパラメータ計測時間T2 を算出する。この際、計測対象となるエンジン12の機種に応じて、数式(又はモデル)を作業者によって修正するようにしても良い。このようにすれば、エンジン12の機種毎の固有の特性に合わせて、数式(又はモデル)を修正することができるので、燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 をより精度良く設定することができ、計測精度をより一層向上させることができる。尚、図6又は図7の燃焼安定待ち時間・パラメータ計測時間算出ルーチンは、特許請求の範囲でいう算出手段としての役割を果たす。
【0033】
以上のようにして、燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 を算出した後、図3のステップ114に戻り、燃焼安定待ち時間T1 のカウントを開始する。この後、ステップ115に進み、燃焼安定性の評価終了時(燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 の算出終了時)から燃焼安定待ち時間T1 が経過したか否かを判定し、燃焼安定待ち時間T1 が経過するまで待機する。
【0034】
その後、燃焼安定待ち時間T1 が経過した時点で、ステップ116に進み、計測パラメータの計測を開始する。そして、次のステップ117で、パラメータ計測時間T2 のカウントを開始し、続くステップ118で、計測パラメータの計測値を平均化処理する。ここで、平均化処理は、計測値の相加平均値を算出しても良いし、なまし処理によって計測値のなまし値を算出しても良い。或は、パラメータ計測時間T2 内の計測値の中央値や最頻値を算出しても良い。この後、ステップ119に進み、計測パラメータの計測開始からパラメータ計測時間T2 が経過したか否かを判定し、パラメータ計測時間T2 が経過するまで上記ステップ117〜119の処理を繰り返す。その後、パラメータ計測時間T2 が経過した時点で、今回の計測点の計測を終了する。このとき、エンジンベンチ制御ツール14は自動適合ツール18に対し指示パラメータ変更要求を送信し、今回の計測点の終了を通知する。
【0035】
尚、パラメータ計測時間T2 が経過するまで、計測パラメータの計測のみを行ってその計測値をメモリに蓄積しておき、パラメータ計測時間T2 が経過した時点で、メモリに蓄積された計測値を平均化処理するようにしても良い。これらのステップ116〜118の処理が特許請求の範囲でいう計測手段としての役割を果たす。
【0036】
以上説明した本実施例1の自動計測方法による効果を図8を用いて説明する。
本実施例1では、各計測点でそれぞれ燃焼安定性を評価してその評価値に基づいて燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 を算出するため、各計測点毎にそれぞれ燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 を各計測点の燃焼状態に応じた適正な時間に設定することができる。これにより、例えば、燃焼状態が良い計測点や、燃焼状態が少し悪い程度の計測点では、燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 を従来より短縮することができて、総計測時間を従来より短縮することができる。
【実施例2】
【0037】
上述した実施例1では、各計測点で、燃焼安定性の計測開始から所定の燃焼安定性判定時間T0 が経過した後(つまり燃焼安定性を評価して燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 を算出するのに要する時間T0 が経過した後)に、燃焼安定待ち時間T1 のカウントを開始するようにしているため、1つの計測点の計測に要する時間は、燃焼安定性判定時間T0 と燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 とを合計した時間となる。
1つの計測点の計測に要する時間=T0 +T1 +T2
【0038】
尚、燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 の算出は、コンピュータで瞬時に実行されるため、これらの算出に要する時間は、燃焼安定性の評価に要する時間と比較すれば無視できるほど小さい。従って、燃焼安定性を評価して燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 を算出するのに要する時間T0 は、燃焼安定性の評価に要する時間と実質的に同じ時間となる。従って、以下の説明では、T0 を単に「燃焼安定性の評価に要する時間」という。
【0039】
これに対して、図9及び図10に示す本発明の実施例2では、各計測点で燃焼安定性を評価した後に燃焼安定待ち時間T1 のカウントを開始し、その後、この燃焼安定待ち時間T1 から燃焼安定性の評価に要した時間T0 を差し引いて求めた補正後の燃焼安定待ち時間(T1 −T0 )が経過した時点で、計測パラメータの計測を開始するようにしている。従って、1つの計測点の計測に要する時間は、燃焼安定性判定時間T0 と補正後の燃焼安定待ち時間(T1 −T0 )とパラメータ計測時間T2 とを合計した時間となるため、結局、1つの計測点の計測に要する時間は、燃焼安定性の評価値に基づいて算出した燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 を合計した時間となる。
1つの計測点の計測に要する時間=T0 +(T1 −T0 )+T2
=T1 +T2
【0040】
もし、補正後の燃焼安定待ち時間(T1−T0 )が負の値ならば、すなわち燃焼安定待ち時間T1 が燃焼安定性判定時間T0 よりも短ければ、燃焼安定性判定時間T0 が経過した時点(燃焼安定性を評価して燃焼安定待ち時間T1 及びパラメータ計測時間T2 を算出した時点)で、直ちに計測パラメータの計測を開始すれば良い。
【0041】
本実施例2で実行する図9の自動計測サブルーチンは、前記図3の自動計測サブルーチンのステップ115の処理をステップ114a、115aに変更したものであり、これ以外の各ステップの処理は図3と同じである。
【0042】
即ち、図9の自動計測サブルーチンでは、ステップ112、113で、燃焼安定性を評価して燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 を算出した後、ステップ114に進み、燃焼安定待ち時間T1 のカウントを開始し、次のステップ114aで、燃焼安定待ち時間T1 から燃焼安定性の評価に要した時間T0 を差し引いて補正後の燃焼安定待ち時間(T1 −T0 )を求める。
補正後の燃焼安定待ち時間=T1 −T0
【0043】
この後、ステップ115aに進み、燃焼安定性の評価終了時(燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 の算出終了時)から補正後の燃焼安定待ち時間(T1 −T0 )が経過したか否かを判定し、補正後の燃焼安定待ち時間(T1 −T0 )が経過するまで待機する。
【0044】
その後、補正後の燃焼安定待ち時間(T1 −T0 )が経過した時点で、ステップ116に進み、計測パラメータの計測を開始し、その後、パラメータ計測時間T2 が経過した時点で、今回の計測点の計測を終了する(ステップ117〜119)。
【0045】
尚、燃焼安定待ち時間T1 が燃焼安定性判定時間T0 よりも短い場合は、燃焼安定性を評価して燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 を算出した時点で、ステップ115aに進むと、「Yes」と判定され、直ちにステップ116に進み、計測パラメータの計測が開始される。
【0046】
以上説明した本実施例2では、各計測点で燃焼安定性を評価した後に燃焼安定待ち時間T1 のカウントを開始し、その後、この燃焼安定待ち時間T1 から燃焼安定性の評価に要した時間T0 を差し引いて求めた補正後の燃焼安定待ち時間(T1 −T0 )が経過した時点で、計測パラメータの計測を開始するようにしたので、前記実施例1と比較して、1つの計測点の計測に要する時間を燃焼安定性判定時間T0 分だけ短くすることができる利点がある。
【実施例3】
【0047】
図11及び図12に示す本発明の実施例3では、各計測点で燃焼安定性の評価を開始するときに同時に燃焼安定待ち時間T1 のカウントを開始し、燃焼安定性の評価開始時から燃焼安定待ち時間T1 が経過した時点で、計測パラメータの計測を開始するようにしている。この場合、燃焼安定待ち時間T1 のカウントを開始する時点では、燃焼安定待ち時間T1 がまだ決まっていないが、一般に、燃焼状態が安定するまでの燃焼安定待ち時間T1 は、燃焼安定性の評価に要する燃焼安定性判定時間T0 よりも長いため、燃焼状態が安定する前に燃焼安定性判定時間T0 が経過して燃焼安定待ち時間T1 が決定される。これにより、1つの計測点の計測に要する時間は、燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 を合計した時間となる。
1つの計測点の計測に要する時間=T1 +T2
【0048】
もし、燃焼安定待ち時間T1 が燃焼安定性判定時間T0 よりも短ければ、燃焼安定性判定時間T0 が経過した時点(燃焼安定性の評価が終了した時点)で、直ちに計測パラメータの計測を開始すれば良い。
【0049】
本実施例3で実行する図11の自動計測サブルーチンは、前記図3の自動計測サブルーチンのステップ114の処理を省略し、ステップ111の前にステップ110の処理を追加したものであり、これ以外の各ステップの処理は図3と同じである。
【0050】
即ち、図11の自動計測サブルーチンが起動されると、まず、ステップ110で、燃焼安定待ち時間T1 のカウントを開始すると共に、燃焼安定性を評価して燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 を算出する(ステップ112、113)。そして、次のステップ115で、燃焼安定性の評価開始時から燃焼安定待ち時間T1 が経過したか否かを判定し、燃焼安定待ち時間T1 が経過した時点で、計測パラメータの計測を開始し(ステップ116)、その後、パラメータ計測時間T2 が経過した時点で、今回の計測点の計測を終了する(ステップ117〜119)。
【0051】
尚、燃焼安定待ち時間T1 が燃焼安定性判定時間T0 よりも短い場合は、燃焼安定性を評価して燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 を算出した時点で、ステップ115に進むと、「Yes」と判定され、直ちにステップ116に進み、計測パラメータの計測が開始される。
【0052】
以上説明した本実施例3では、各計測点で燃焼安定性の評価を開始するときに同時に燃焼安定待ち時間T1 のカウントを開始し、燃焼安定性の評価開始時から燃焼安定待ち時間T1 が経過した時点で、計測パラメータの計測を開始するようにしたので、前記実施例2と同様に、前記実施例1と比較して、1つの計測点の計測に要する時間を燃焼安定性判定時間T0 分だけ短くすることができる利点がある。
【0053】
尚、各実施例1〜3では、各計測点で燃焼安定性の評価値に基づいて燃焼安定待ち時間T1 とパラメータ計測時間T2 の両方を算出するようにしたが、いずれか一方のみを算出して、他方は予め決められた一定持間に設定するようにしても良く、この場合でも、従来と比較すれば、総計測時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の各実施例1〜3で使用するエンジン特性パラメータの自動計測システムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施例1の自動計測メインルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】実施例1の自動計測サブルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】実施例1のRAM値書き換えルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】実施例1の燃焼安定性判定ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】実施例1の燃焼安定待ち時間・パラメータ計測時間算出ルーチン(例1)の処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】実施例1の燃焼安定待ち時間・パラメータ計測時間算出ルーチン(例2)の処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】実施例1のエンジン特性パラメータの自動計測方法の効果を従来と対比して説明する図である。
【図9】実施例2の自動計測サブルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】実施例2の1つの計測点の計測に要する時間を説明するための図である。
【図11】実施例3の自動計測サブルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】実施例3の1つの計測点の計測に要する時間を説明するための図である。
【符号の説明】
【0055】
11…エンジンベンチ、12…エンジン、13…エンジンECU、14…エンジンベンチ制御ツール、17…ECU適合ツール、18…自動適合ツール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの制御可能な運転領域内に複数の計測点を配置し、エンジン回転速度、エンジン負荷及び/又は点火時期、噴射時期等の制御パラメータ(以下「運転条件」という)をいずれかの計測点の条件に変更して該計測点における所定のエンジン特性パラメータを計測するという処理を全ての計測点について順番に実行するエンジン特性パラメータの自動計測方法において、
各計測点でそれぞれ燃焼安定性を評価してその評価値に基づいて各計測点で燃焼状態が安定するまでの待ち時間(以下「燃焼安定待ち時間」という)及び/又はエンジン特性パラメータの計測値の平均化処理の精度を確保するのに必要な計測時間(以下「パラメータ計測時間」という)を算出し、その算出結果に従って前記エンジン特性パラメータを計測することを特徴とするエンジン特性パラメータの自動計測方法。
【請求項2】
各計測点で燃焼安定性を評価する際に、所定時間内における、図示平均有効圧の標準偏差、軸トルクの標準偏差、燃焼圧力のばらつき、エンジン回転変動量、排出ガスの空燃比変動量、燃焼イオン電流変動量、これらのいずれかとその平均値との比のうちの少なくとも1つに基づいて燃焼安定性を評価することを特徴とする請求項1に記載のエンジン特性パラメータの自動計測方法。
【請求項3】
各計測点における燃焼安定性の評価値と前記燃焼安定待ち時間及び/又はパラメータ計測時間との関係を規定するマップ、数式、モデルのいずれかを予め設定しておき、前記マップ、数式、モデルのいずれかを用いて前記燃焼安定待ち時間及び/又はパラメータ計測時間を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジン特性パラメータの自動計測方法。
【請求項4】
計測対象となるエンジンの機種に応じて、前記マップ、数式、モデルのいずれかを作業者によって修正することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のエンジン特性パラメータの自動計測方法。
【請求項5】
各計測点で燃焼安定性の評価値に基づいて前記燃焼安定待ち時間及び/又はパラメータ計測時間をリアルタイムで算出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のエンジン特性パラメータの自動計測方法。
【請求項6】
各計測点で燃焼安定性を評価した後に前記燃焼安定待ち時間のカウントを開始することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のエンジン特性パラメータの自動計測方法。
【請求項7】
各計測点で燃焼安定性を評価した後に前記燃焼安定待ち時間のカウントを開始し、その後、該燃焼安定待ち時間から該燃焼安定性の評価に要した時間を差し引いた時間が経過した時点で、前記エンジン特性パラメータの計測を開始することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のエンジン特性パラメータの自動計測方法。
【請求項8】
各計測点で燃焼安定性の評価を開始するときに同時に前記燃焼安定待ち時間のカウントを開始することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のエンジン特性パラメータの自動計測方法。
【請求項9】
前記燃焼安定待ち時間が前記燃焼安定性の評価に要した時間よりも短い場合には、該燃焼安定性の評価が終了した時点で、直ちに前記エンジン特性パラメータの計測を開始することを特徴とする請求項8に記載のエンジン特性パラメータの自動計測方法。
【請求項10】
エンジンの制御可能な運転領域内に複数の計測点を配置し、エンジン回転速度、エンジン負荷及び/又は点火時期、噴射時期等の制御パラメータ(以下「運転条件」という)をいずれかの計測点の条件に変更して該計測点における所定のエンジン特性パラメータを計測するという処理を全ての計測点について順番に実行するエンジン特性パラメータの自動計測システムにおいて、
各計測点でそれぞれ燃焼安定性を評価する燃焼安定性評価手段と、
各計測点の前記燃焼安定性の評価値に基づいて各計測点で燃焼状態が安定するまでの待ち時間及び/又はエンジン特性パラメータの計測値の平均化処理の精度を確保するのに必要な計測時間を算出する算出手段と、
各計測点で前記算出手段の算出結果に従って前記エンジン特性パラメータを計測する計測手段と
とを備えていることを特徴とするエンジン特性パラメータの自動計測システム。
【請求項1】
エンジンの制御可能な運転領域内に複数の計測点を配置し、エンジン回転速度、エンジン負荷及び/又は点火時期、噴射時期等の制御パラメータ(以下「運転条件」という)をいずれかの計測点の条件に変更して該計測点における所定のエンジン特性パラメータを計測するという処理を全ての計測点について順番に実行するエンジン特性パラメータの自動計測方法において、
各計測点でそれぞれ燃焼安定性を評価してその評価値に基づいて各計測点で燃焼状態が安定するまでの待ち時間(以下「燃焼安定待ち時間」という)及び/又はエンジン特性パラメータの計測値の平均化処理の精度を確保するのに必要な計測時間(以下「パラメータ計測時間」という)を算出し、その算出結果に従って前記エンジン特性パラメータを計測することを特徴とするエンジン特性パラメータの自動計測方法。
【請求項2】
各計測点で燃焼安定性を評価する際に、所定時間内における、図示平均有効圧の標準偏差、軸トルクの標準偏差、燃焼圧力のばらつき、エンジン回転変動量、排出ガスの空燃比変動量、燃焼イオン電流変動量、これらのいずれかとその平均値との比のうちの少なくとも1つに基づいて燃焼安定性を評価することを特徴とする請求項1に記載のエンジン特性パラメータの自動計測方法。
【請求項3】
各計測点における燃焼安定性の評価値と前記燃焼安定待ち時間及び/又はパラメータ計測時間との関係を規定するマップ、数式、モデルのいずれかを予め設定しておき、前記マップ、数式、モデルのいずれかを用いて前記燃焼安定待ち時間及び/又はパラメータ計測時間を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジン特性パラメータの自動計測方法。
【請求項4】
計測対象となるエンジンの機種に応じて、前記マップ、数式、モデルのいずれかを作業者によって修正することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のエンジン特性パラメータの自動計測方法。
【請求項5】
各計測点で燃焼安定性の評価値に基づいて前記燃焼安定待ち時間及び/又はパラメータ計測時間をリアルタイムで算出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のエンジン特性パラメータの自動計測方法。
【請求項6】
各計測点で燃焼安定性を評価した後に前記燃焼安定待ち時間のカウントを開始することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のエンジン特性パラメータの自動計測方法。
【請求項7】
各計測点で燃焼安定性を評価した後に前記燃焼安定待ち時間のカウントを開始し、その後、該燃焼安定待ち時間から該燃焼安定性の評価に要した時間を差し引いた時間が経過した時点で、前記エンジン特性パラメータの計測を開始することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のエンジン特性パラメータの自動計測方法。
【請求項8】
各計測点で燃焼安定性の評価を開始するときに同時に前記燃焼安定待ち時間のカウントを開始することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のエンジン特性パラメータの自動計測方法。
【請求項9】
前記燃焼安定待ち時間が前記燃焼安定性の評価に要した時間よりも短い場合には、該燃焼安定性の評価が終了した時点で、直ちに前記エンジン特性パラメータの計測を開始することを特徴とする請求項8に記載のエンジン特性パラメータの自動計測方法。
【請求項10】
エンジンの制御可能な運転領域内に複数の計測点を配置し、エンジン回転速度、エンジン負荷及び/又は点火時期、噴射時期等の制御パラメータ(以下「運転条件」という)をいずれかの計測点の条件に変更して該計測点における所定のエンジン特性パラメータを計測するという処理を全ての計測点について順番に実行するエンジン特性パラメータの自動計測システムにおいて、
各計測点でそれぞれ燃焼安定性を評価する燃焼安定性評価手段と、
各計測点の前記燃焼安定性の評価値に基づいて各計測点で燃焼状態が安定するまでの待ち時間及び/又はエンジン特性パラメータの計測値の平均化処理の精度を確保するのに必要な計測時間を算出する算出手段と、
各計測点で前記算出手段の算出結果に従って前記エンジン特性パラメータを計測する計測手段と
とを備えていることを特徴とするエンジン特性パラメータの自動計測システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−19725(P2010−19725A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181256(P2008−181256)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]