説明

エンジン自動停止再始動装置

【課題】エンジン自動停止再始動装置において、フートブレーキを操作するブレーキペダルに対する操作継続のための運転者の負担の軽減を図り、またブレーキペダルに対する運転者の意図しない操作力の減少に起因する再始動または発進の防止を図る。
【解決手段】エンジン自動停止再始動装置において、車両に搭載されたエンジンの自動停止条件および再始動条件を検出する制御条件検出手段は、車輪にブレーキ力を付与するフートブレーキを操作するブレーキペダルのブレーキ操作不足状態を検出するブレーキ操作検出手段と、運転者が車両の発進に関連して行う発進関連操作を検出する発進関連操作検出手段とを備える。エンジンの再始動は、ブレーキ操作検出手段によりブレーキ操作不足状態が検出されている(S2)状態で、発進関連操作検出手段により発進関連操作が検出される、すなわち運転者の発進意思が検出される(S6)ときに行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたエンジンを、自動停止条件が満たされたときに自動停止し、再始動条件が満たされたときに再始動するエンジン自動停止再始動装置に関し、詳細には、主ブレーキ装置のブレーキ操作部が関わるときの再始動を行うエンジン自動停止再始動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたエンジンのエネルギ消費(例えば、燃料消費)の削減や環境負荷物質(例えば、二酸化炭素)の排出低減を図る技術として、信号待ちなどの停車の際に、運転者によるエンジンの停止操作を要することなく、所定の自動停止条件が成立したときにエンジンの自動停止(いわゆる、アイドリングストップ)を行い、所定の再始動条件が成立したとき再始動を行うエンジン自動停止再始動装置がある。
【0003】
そして、このようなエンジン自動停止再始動装置において、サービスブレーキ装置(主ブレーキ装置に相当)のブレーキペダルの踏込み量に応じて発生するブレーキ液圧の変化に基づいて、エンジンの再始動を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3613970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブレーキペダルの操作に応じてエンジンの再始動が行われる場合、不用意な再始動を防止するためには、ブレーキペダルを解放することなく踏込み続ける必要があることから、運転者に負担を強いることがある。
また、ブレーキペダルの解放は、運転者の発進の意図による場合以外に、運転者が車室内の物を取る際や付属装置を操作する際に、ブレーキペダルに対する踏力が減少する場合など、運転者が意図しないブレーキペダルの解放操作に起因して再始動が行われる場合があり、さらには、車両の発進に至る場合がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、エンジン自動停止再始動装置において、主ブレーキを操作するブレーキ操作部に対する操作継続のための運転者の負担の軽減を図ること、またブレーキ操作部に対する運転者の意図しない操作力の減少に起因する再始動または発進の防止を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、車両(1)に搭載されたエンジン(2)の自動停止条件および再始動条件を検出する制御条件検出手段(40)と、前記自動停止条件が満たされたときに前記エンジン(2)の自動停止を行い、前記再始動条件が満たされたときに前記エンジン(2)の再始動を行う制御手段(80)とを備えるエンジン自動停止再始動装置において、前記制御条件検出手段(40)は、前記車両(1)の車輪(4)にブレーキ力を付与する主ブレーキ(21)を操作するブレーキ操作部(22)のブレーキ操作不足状態を検出するブレーキ操作検出手段(44)と、運転者が前記車両(1)の発進に関連して行う発進関連操作を検出する発進関連操作検出手段(50)とを備え、前記再始動条件は、前記ブレーキ操作不足状態が検出されているときに、前記発進関連操作が検出されることであるエンジン自動停止再始動装置である。
【0008】
これによれば、発進関連操作は、運転者の発進の意思に基づいて行われる操作であることから、ブレーキ操作不足の状態になったとしても、運転者がその発進意思を示す発進関連操作を行うまで、エンジンの再始動が行われない。この結果、自動停止状態を継続するために、ブレーキ操作部の操作状態を維持する必要がないので、例えばブレーキ操作部を解放した状態で信号待ちをすることができて、ブレーキ操作部に対する操作継続のための運転者の負担の軽減が可能になる。さらに、運転者が意図しない再始動が防止され、ひいては運転者が意図しない車両の発進が防止される。また、運転者に発進意思がある場合には、運転者がブレーキ操作部の操作解除の後に発進関連操作を行うことで、速やかな再始動および発進が可能になる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載のエンジン自動停止再始動装置において、前記発進関連操作は、前記車両(1)において、アクセル操作部がアクセル解放位置からアクセル操作されること、前記ブレーキ操作部(22)が前記ブレーキ操作不足状態を解消するまで操作されること、ハンドルが所定操舵角以上または所定操舵トルク以上に操作されること、パーキングブレーキ(31)が作動解除されること、変速機(3a)のシフト操作部が操作されること、前記車輪(4)への前記エンジン(2)の動力の伝達および遮断を行うクラッチを操作するクラッチ操作部が解放位置から操作位置に操作されること、前記エンジン(2)を始動するために運転者が操作するマニュアル始動手段(6)が前記エンジン(2)を始動する始動位置に操作されること、の少なくとも1つであるものである。
これによれば、運転者の発進意思を、運転者による、アクセル操作部の操作、ブレーキ操作不足を解消するブレーキ操作部の操作、ハンドル操作、パーキングブレーキの操作、クラッチの操作およびマニュアル始動手段の操作の少なくとも1つの操作を通じて検出することができる。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載のエンジン自動停止再始動装置において、前記車両(1)は、前記ブレーキ操作部(22)とは別個に、前記車輪(4)にブレーキ力を付与可能なブレーキ力付与手段(26,30)を備え、前記制御手段(80)は、前記ブレーキ操作不足状態が検出されているときに、前記ブレーキ力付与手段(26,30)の作動を行うものである。
これによれば、ブレーキ操作部によるブレーキ操作不足状態が生じたときに、ブレーキ操作部とは別個のブレーキ力付与手段により、車輪にブレーキ力が付与されるので、ブレーキ操作部に対する操作継続のための運転者の負担が軽減され、また運転者が意図しない車両の発進が防止される。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項3項に記載のエンジン自動停止再始動装置において、前記制御手段(80)は、前記ブレーキ操作不足状態が検出されている場合に、前記発進関連操作が検出されたときに、前記ブレーキ力付与手段(26,30)の作動解除および前記再始動を行うものである。
これによれば、運転者の発進意思を示す発進関連操作が検出されたときに、ブレーキ力付与手段による制動の解除と、再始動とが行われるので、車両の円滑な発進が可能になる。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項3または4に記載のエンジン自動停止再始動装置において、前記再始動を要求する再始動要求を検出する再始動要求検出手段(70)を備え、前記制御手段(80)は、前記ブレーキ操作不足状態が検出され、かつ前記発進関連操作が検出されない場合であって、前記再始動要求が検出されているときに、前記ブレーキ力付与手段(30)の作動および前記再始動を行うか、または、前記再始動を禁止するものである。
これによれば、ブレーキ操作不足状態が検出され、かつ発進関連操作が検出されない場合、したがって運転者が発進意思を示していない場合に、運転者の発進意思に関わらない車両状態に基づいてエンジンの再始動を必要とする再始動要求が検出されているときには、ブレーキ力付与手段を作動させた状態でエンジンの再始動が行われるので、運転者が意図しない車両の発進が防止される。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項3または4に記載のエンジン自動停止再始動装置において、前記ブレーキ力付与手段(26)は、前記主ブレーキ(21)のブレーキ力を保持するブレーキ力保持装置(26)であり、前記車両(1)のパーキングブレーキ装置(30のパーキングブレーキ(31)のブレーキ力不足状態を検出するパーキングブレーキ状態検出手段(47)を備え、前記制御手段(80)は、前記ブレーキ操作不足状態が検出され、かつブレーキ力不足状態が検出されているときに、前記ブレーキ力保持装置(26)の作動を行うものである。
これによれば、ブレーキ操作部の解放などによりブレーキ操作不足が生じた場合に、パーキングブレーキが作動解除されているなどによりパーキングブレーキがブレーキ力不足状態にあるとき、ブレーキ力保持装置により自動的にブレーキ力が車輪に付与される。この結果、パーキングブレーキの操作が省略された場合にも、ブレーキ操作部に対する操作継続のための運転者の負担を軽減しながら車両の発進を防止でき、また運転者が意図しない車両の発進を防止できる。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項6に記載のエンジン自動停止再始動装置において、前記パーキングブレーキ装置(30)は、自動パーキングブレーキ装置(30b)であり、前記制御手段(80)は、前記ブレーキ操作不足状態が検出されている場合に、前記発進関連操作が検出されず、かつ前記再始動要求が検出されているときに、前記パーキングブレーキ(31)の作動、前記ブレーキ力保持装置(26)の作動解除および前記再始動を行うものである。
これによれば、発進関連操作が検出されない場合、したがって運転者が発進意思を示していない場合に、運転者の発進意思に関わらない車両状態に基づいてエンジンの再始動を必要とする再始動要求が検出されているときには、パーキングブレーキが作動した状態でエンジンの再始動が行われるので、運転者が意図しない車両の発進が防止される。そして、運転者がパーキングブレーキを解除することにより発進が可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エンジン自動停止再始動装置において、主ブレーキを操作するブレーキ操作部に対する操作継続のための運転者の負担の軽減が可能になり、またブレーキ操作部に対する運転者の意図しない操作力の減少に起因する再始動または発進の防止が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態であるエンジン自動停止再始動装置を備える車両の模式図である。
【図2】図1のエンジン自動停止再始動装置の構成を説明する図である。
【図3】図1のエンジン自動停止再始動装置による再始動の制御を説明するフローチャートである。
【図4】図1のエンジン自動停止再始動装置による自動停止から再始動までの一例を示すタイムチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態であるエンジン自動停止再始動装置を備える車両の要部の模式図であり、図1の一部に対応する図である。
【図6】第2実施形態のエンジン自動停止再始動装置による再始動の制御を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図1〜図6を参照して説明する。
図1〜図4は、本発明の第1実施形態を説明する図である。
図1を参照すると、本発明の実施形態であるエンジン自動停止再始動装置12は、例えば四輪車である車両1に搭載された走行用原動機としての内燃機関であるエンジン2の自動停止と、該自動停止状態からの始動である再始動とを行う。
【0018】
車両1は、エンジン2と、エンジン2が発生する動力を駆動輪4aに伝達する動力伝達装置3と、エンジン自動停止再始動装置12を備える車両用制御装置10と、バッテリ5と、エンジン2を始動停止するために車両1の運転者が操作するマニュアル始動停止手段としてのキースイッチ6と、駆動輪4aを含む車輪4を制動する主ブレーキ装置としてのフートブレーキ装置20と、パーキングブレーキ装置30とを備える。
パーキングブレーキ装置30は、マニュアルパーキングブレーキ装置30aと、自動パーキングブレーキ装置としての電動パーキングブレーキ装置30bとから構成される。また、キースイッチ6は、エンジン自動停止再始動装置12により自動停止したエンジン2を再始動させるために、運転者が発進関連操作として操作するマニュアル始動手段でもある。
【0019】
エンジン2は、エンジン出力軸としてのクランク軸2aと、始動時にクランク軸2aを回転駆動する始動装置としてのスタータモータ7とを備える。
動力伝達装置3は、クランク軸2aから入力される動力を変速して駆動輪4aに出力するオートマチック式の変速機3aを備える。変速機3aは、歯車式変速機または無段変速機(例えば、ベルト式無段変速機)であってもよい。
制御装置10は、エンジン自動停止再始動装置12のほかに、エンジン2において燃焼に関わる燃焼制御(例えば、空燃比制御および点火制御)を行うエンジン制御装置11と、変速機3aの変速比を制御する変速機制御装置13と、フートブレーキ装置20および電動パーキングブレーキ装置30bを制御するブレーキ制御装置14とを備える。そして、エンジン自動停止再始動装置12および各制御装置11,13,14は、コンピュータを備える。
【0020】
バッテリ5と車両用電装品(エンジン2が備えるスタータモータ7等のエンジン電装品、および制御装置10が含まれる。)との接続および遮断を切り換えるキースイッチ6は、始動位置で、バッテリ5とスタータモータ7とを接続し、オン位置で、スタータモータ7以外の前記車両用電装品とバッテリ5とを接続し、オフ位置で、前記車両用電装品とバッテリ5との接続を遮断する。
【0021】
ディスクブレーキ装置であるフートブレーキ装置20は、各車輪4にブレーキ力を付与する主ブレーキとしてのフートブレーキであるブレーキキャリパ21と、ブレーキキャリパ21の作動および作動解除を行うために運転者が操作するブレーキ操作部としてのブレーキペダル22と、ブレーキペダル22の操作に応じてブレーキキャリパ21を駆動するアクチュエータとしての液圧アクチュエータ23と、ブレーキペダル22とは別個の操作部であってブレーキキャリパ21の作動および作動解除が可能なブレーキ補助操作部としてのブレーキ力保持装置26とを備える。
【0022】
ブレーキキャリパ21は、各車輪4と一体に回転するディスクロータ(図示されず)に接触可能なブレーキバッド(図示されず)と、前記ディスクロータを挟圧可能にブレーキパッドを駆動する可動体としてのホイールシリンダ21aを備える。
液圧アクチュエータ23は、ブレーキペダル22に加えられる操作力である踏力に応じたブレーキ液圧P(図4参照)を発生するマスタシリンダ23aと、ブレーキペダル22とマスタシリンダ23aとの間に配置されるマスタパワー23bと、マスタシリンダ23aで発生したブレーキ液圧Pを駆動力としてブレーキキャリパ21のホイールシリンダ21aに伝達するブレーキ液圧回路23cとを備える。
【0023】
ブレーキキャリパ21は、前記ディスクロータと前記ブレーキパッドとの間で作用する摩擦力をブレーキ力として車輪4に付与可能であり、その作動時に車輪4にブレーキ力を付与して、車輪4を制動し、その作動解除時に、車輪4に対するブレーキ力を解除して、車輪4に対する制動を解除する。
マスタパワー23bは、エンジン2の運転により発生する負圧である空気圧を利用した空気圧式アクチュエータであり、制動時にブレーキペダル22に加えられる踏力に比例した操作補助力を発生して運転者の踏力を軽減する。
【0024】
ブレーキ力保持装置26は、ブレーキ制御装置14により制御される電磁弁からなる制御弁26aと、チェック弁26bとを備えるブレーキ液圧保持装置であり、マスタシリンダ23aと各ホイールシリンダ21aとの間で、ブレーキ液圧回路23cに組み込まれている。ブレーキ力保持装置26は、マスタシリンダ23aで発生したブレーキ液圧Pが、所定液圧値P1(図4参照)を超える値から所定液圧値P1以下に低下したときに作動して、ブレーキキャリパ21を通じて各車輪4にブレーキ力を付与する。
【0025】
具体的には、ブレーキペダル22の解放など、ブレーキペダル22に加えられる踏力の減少に起因してブレーキペダル22の操作量である踏込み量が減少する操作不足状態が発生して、マスタシリンダ23aにより発生するブレーキ液圧Pが低下し、ブレーキ液圧Pが所定液圧値P1まで低下したことがブレーキ液圧センサ43(図2参照)により検出されたとき、制御弁26aがホイールシリンダ21aとマスタシリンダ23aとの連通を遮断する。
これにより、ブレーキ力保持装置26とホイールシリンダ21aとの間に、所定液圧値P1のブレーキ液圧Paを有するブレーキ液が閉じ込められて、車輪4に加えられるブレーキ力が維持される。また、制御弁26aがホイールシリンダ21aとマスタシリンダ23aとを連通させることで、ブレーキペダル22の解放時にブレーキ液圧Paを低下させてブレーキキャリパ21の作動解除が可能になる。それゆえ、ブレーキ力保持装置26は、ブレーキキャリパ21の作動および作動解除を行うことができ、ブレーキキャリパ21により、車輪4に対してブレーキ力を付与可能なブレーキ力付与手段である。
【0026】
ここで、前記操作不足状態が生じるブレーキペダル22の操作状態は、ブレーキペダル22が解放されている状態、および、ブレーキペダル22の踏込み量が停車中の車両1の発進を防止できるブレーキ力を発生させるのに不足する状態を含む。
ブレーキ液圧センサ43(図2参照)は、マスタシリンダ23aが発生するブレーキ液圧Pを検出する。所定液圧値P1は、変速機3aでのクリープ現象による車両1の発進を阻止し、かつ停車時の路面の勾配に起因する自重による車両1の発進を阻止して、停車状態を維持できる値に設定される。
【0027】
マニュアルパーキングブレーキ装置30aは、車輪4(例えば、後輪)にブレーキ力を付与するマニュアルパーキングブレーキであるパーキングブレーキ31と、パーキングブレーキ31の作動および作動解除を行うために運転者が操作するパーキングブレーキ操作部としてのパーキングブレーキレバー32aと、パーキングブレーキレバー32aによる操作に応じてパーキングブレーキを駆動するアクチュエータ33aとを備える。
【0028】
一方、電動パーキングブレーキ装置30bは、車輪4にブレーキ力を加える自動パーキングブレーキとしての電動パーキングブレーキであるパーキングブレーキ31と、ブレーキ制御装置14による操作に応じてパーキングブレーキ31を駆動するアクチュエータとしての電動モータ33bとを備える。したがって、パーキングブレーキ31は、マニュアルパーキングブレーキ装置30aと電動パーキングブレーキ装置30bとに共通の構成部材である。また、電動パーキングブレーキ装置30bの作動解除は、運転者の操作、例えば、解除スイッチの操作によっても可能である。
パーキングブレーキ31は、その作動時に車輪4にブレーキ力を付与して、車輪4を制動し、その作動解除時に、車輪4に対するブレーキ力を解除して、車輪4に対する制動を解除する。
【0029】
電動パーキングブレーキ装置30bは、車輪4にブレーキ力を付与可能なブレーキ力付与手段である。そして、電動パーキングブレーキ装置30bは、制御弁26aの発熱や制御弁26aの微小間隙からの作動液の漏洩によるブレーキ液圧Pの低下により作動時間が制限されるブレーキ力保持装置26に比べて、長い時間に渡って安定した一定のブレーキ力を車輪4に加えることができる。
【0030】
図2を中心に、適宜図1を参照すると、エンジン自動停止再始動装置12は、エンジン2の自動停止条件および再始動条件を検出する制御条件検出手段40と、自動停止の禁止条件を検出する自動停止禁止条件検出手段(または、アイドリングストップ禁止条件検出手段)60と、エンジン2の再始動の要求を検出する再始動要求検出手段70と、エンジン2を停止するための停止手段8およびエンジン2を始動するための始動手段としてのスタータモータ7を制御する制御手段80とを備える。
制御条件検出手段40、自動停止禁止条件検出手段60および再始動要求検出手段70の各検出信号は、制御手段80に入力される。
【0031】
エンジン2に備えられる停止手段8は、燃焼に関与する装置(例えば、燃料噴射弁)の作動(例えば、燃料噴射弁による燃料供給)を停止する。
そして、制御手段80は、制御条件検出手段40から入力される検出信号に基づいて、自動停止条件が満たされたときに停止手段8を作動させてエンジン2を自動停止させることによりアイドリングストップ状態にする一方で、再始動条件が満たされたときにスタータモータ7を作動させてエンジン2を再始動させる。
【0032】
制御条件検出手段40は、オフ位置およびオン位置を含むキースイッチ6の操作位置を検出するマニュアル始動停止操作検出手段41と、車両1(図1参照)の停車(すなわち、車速がゼロであること)を検出する車速センサ42と、前記ブレーキ液圧センサ43と、ブレーキペダル22のブレーキ操作状態であるブレーキ操作不足状態およびブレーキ有効操作状態を検出するブレーキ操作検出手段44と、運転者が車両1の発進に関連して行う発進関連操作を検出する発進関連操作検出手段50と、を備える。
ここで、ブレーキ操作検出手段44により検出される前記ブレーキ有効操作状態でのブレーキペダル22のブレーキ操作状態は、ブレーキ操作不足状態以外の状態であり、ブレーキペダル22の踏込み量が停車中の車両1の発進を防止できる状態である。そして、ブレーキペダル22がブレーキ有効操作状態であるとき、ブレーキ液圧Pは所定液圧値P1以上になっている。
【0033】
発進関連操作検出手段50は、マニュアル始動停止操作検出手段41と、ブレーキ操作検出手段44と、アクセル操作部としてのアクセルペダルの解放位置および解放位置からのアクセル操作(アクセルペダルの踏込み操作である。)を検出するアクセルセンサ45と、パワーステアリグ装置により操舵補助が行われるハンドルの操舵角または操舵トルクを通じてハンドル操作を検出するハンドル操作センサ46と、マニュアルパーキングブレーキ装置30aによるパーキングブレーキ31のブレーキ力不足状態を検出するパーキングブレーキ状態検出手段47と、変速機3aのシフト操作部としてのシフトレバーの操作を検出するシフト操作検出手段48と、を備える。
【0034】
パーキングブレーキ状態検出手段47は、マニュアルパーキングブレーキ装置31aによるブレーキ力状態であるブレーキ力不足状態およびブレーキ力有効状態を検出する。ブレーキ力不足状態は、車輪4にブレーキ力が付与されていない状態(すなわち、作動解除状態)、およびブレーキ力が停車中の車両1の発進を防止するのに不足する状態を含む。また、ブレーキ力有効状態は、ブレーキ力不足状態以外の状態であり、ブレーキ力が停車中の車両1(図1参照)の発進を防止できる状態である。なお、ブレーキ力の大きさは、例えば、パーキングブレーキレバー32aの操作量やアクチュエータ33aに作用する力(例えば、引張り力)を検出することにより検出可能である。
シフト操作検出手段48は、変速機3aにおいて、ニュートラル位置またはパーキング位置である非走行位置と、ドライブ位置やリバース位置などの走行位置との間でのシフト位置の切換操作を検出する。
【0035】
自動停止禁止条件検出手段60は、アクセルセンサ45と、ハンドル操作センサ46と、パーキングブレーキ状態検出手段47と、運転者により操作されてエンジン自動停止再始動装置12による自動停止の許可および禁止を切り換える自動停止切換操作手段としての自動停止禁止スイッチ(または、アイドリングストップ禁止スイッチ)61と、機関温度としてのエンジン冷却水の温度を検出するエンジン温度センサ62と、エアコンの運転要求・停止要求を検出するエアコンスイッチ63と、車室内温度を検出する車室温度センサ64と、外気温を検出する外気温度センサ65と、停車時の車両1の傾斜状態を検出する傾斜センサ66とを備える。
傾斜センサ66は、車両1の傾斜を通じて、車両1が停車した路面の勾配を検出する。
【0036】
また、再始動要求検出手段70は、バッテリ5の充電量を検出する充電量検出手段71と、マスタパワー23bの作動圧を検出する作動圧センサ72と、ブレーキ力保持装置26の作動限界状態を検出するブレーキ力保持状態検出手段73と、車室温度センサ64とを備える。
ブレーキ力保持装置26の前記作動限界状態は、ブレーキ力保持装置26の作動時にホイールシリンダ21aに作用するブレーキ液圧Pa(図4参照)が作動液の漏洩により低下して所要のブレーキ力が確保できない下限液圧値以下になること、および、ブレーキ力保持装置26の作動時間が制御弁26aの発熱による過熱防止の観点から設定された所定作動時間以上になることを含む。
ここで、前記下限液圧値以下は所定液圧値P1よりも小さい値である。また、ブレーキ液圧Paの下限液圧値および制御弁26aの作動時間は、それぞれ液圧センサおよびタイマなどの検出手段により検出される。
【0037】
そして、自動停止条件には、マニュアル始動停止操作検出手段41によりキースイッチ6がオン位置にあることが検出されている状態で、車速センサ42により車両1の停車が検出されていること、ブレーキ液圧センサ43により所定液圧値P1以上のブレーキ液圧Pが検出されていることが含まれる。
【0038】
自動停止禁止条件には、自動停止禁止スイッチ61が自動停止の禁止に設定されていること、アクセルセンサ45によりアクセルペダルの解放位置からのアクセル操作が検出されていること、エンジン温度センサ62によりエンジン2が暖機状態にあることを示す所定温度以下である温度が検出されている(すなわち、エンジン2の暖機が完了していない状態にある)こと、ハンドル操作センサ46によりパワーステアリング装置の作動が必要となる所定操舵角以上の操舵角または所定操舵トルク以上の操舵トルクが検出されていること、エアコンスイッチ63によりエアコンの運転要求が検出されているとき、エアコンスイッチ63が運転要求にあるときに車室温度センサ64によりエアコンの設定温度に対して所定温度差以上の温度差の車室内温度が検出されているとき、外気温度センサ65により外気温が極高温(例えば、40°C以上)または極低温(例えば、−20°C以下)である温度が検出されていること、傾斜センサ66により所定傾斜角を超える傾斜(すなわち、路面の所定勾配値を超える勾配)が検出されていること、パーキングブレーキ状態検出手段47によりマニュアルパーキングブレーキ装置30aのブレーキ力不足状態が検出されていること、が含まれる。
そして、エンジン2の自動停止が行われるためには、自動停止条件の全ての条件が満たされること、そして自動停止禁止条件の各条件が満たされていないことが必要である。
【0039】
また、再始動条件には、マニュアル始動停止操作検出手段41によりキースイッチ6がオン位置にあることが検出されている状態で、ブレーキ操作検出手段44によりブレーキ操作状態がブレーキ操作不足状態にあることが検出されているときに、発進関連操作検出手段50により発進関連操作が検出されること、が含まれる。
【0040】
そして、発進関連操作には、いずれも車両1において、アクセルペダルがアクセル解放位置からアクセル操作されること、ブレーキペダル22が前記ブレーキ有効操作状態に踏み込まれること、ハンドルが操作されること、変速機3aのシフトレバーが非走行位置から走行位置に操作されること、マニュアルパーキングブレーキ装置30aが作動解除されること、エンジン2を始動するために運転者が操作するキースイッチ6がスタータモータ7を作動させる始動位置に操作されること、が含まれる。
このように、発進関連操作は運転者の発進意思を示す操作であることから、発進関連操作検出手段50は発進意思検出手段である。
【0041】
さらに、再始動要求には、充電量検出手段71によりバッテリ5の充電量が下限充電量まで低下したことが検出されること、作動圧センサ72によりマスタパワー23bの作動圧の不足が検出されること、ブレーキ力保持状態検出手段73によりブレーキ力保持装置26の作動限界状態が検出されること、エアコンスイッチ63が運転要求にあるときに車室温度センサ64によりエアコンの設定温度に対して所定温度差以上の温度差の車室内温度が検出されること、が含まれる。
【0042】
次に、図3を中心に、図1,図2を適宜参照して、エンジン自動停止再始動装置12の制御手段80により実行される再始動の制御方法を説明する。
ステップS1では、エンジン自動停止再始動装置12によりエンジン2が自動停止した状態にあるか否かが判定され、自動停止状態にあるときにステップS2に進む。エンジン2が自動停止状態でないときにはステップS2以降の処理は実行されない。
【0043】
ステップS2では、ブレーキ操作検出手段44により検出されるブレーキペダル22のブレーキ操作状態がブレーキ操作不足状態であるか否かが判定され、ブレーキ操作状態がブレーキ有効操作状態であるときは、自動停止状態が維持される。一方、ブレーキ操作状態が、例えばブレーキペダル22が解放されることによりブレーキ操作不足状態であるとき、ステップS3に進む。ステップS3において、パーキングブレーキ状態検出手段47によりマニュアルパーキングブレーキ装置30aによるパーキングブレーキ31のブレーキ力状態がブレーキ力不足状態であることが検出されているときには、ステップS4に進んで、ブレーキ制御装置14を通じてブレーキ力保持装置26を作動させて、各車輪4にブレーキ力を付与して、車両1を停車状態に維持し、ステップS5に進む。また、ステップS3で、マニュアルパーキングブレーキ装置30aによるマニュアルパーキングブレーキ31が作動していて、ブレーキ力有効状態であると判定されたとき、ブレーキ力保持装置26を作動させることなく、ステップS6に進む。
【0044】
マニュアルパーキングブレーキ装置30aによるブレーキ力状態がブレーキ力不足状態であるために、ブレーキ力保持装置26が作動したとき、ステップS5で、ブレーキ力保持状態検出手段73(図2参照)により、ブレーキ力保持装置26が作動限界状態であるか否かが判定され、作動限界状態でないとき、ステップS6に進む。一方、ブレーキ力保持装置26が作動限界状態であるときは、ステップS7に進んで、電動パーキングブレーキ装置30bを作動させると共に、ブレーキ力保持装置26の作動を解除して、電動パーキングブレーキ装置30bにより車両1を停車状態に維持し、ステップS6に進む。
【0045】
ステップS6では、発進関連操作検出手段50を構成する各検出手段の検出信号に基づいて、発進関連操作の有無、すなわち運転者の発進意思の有無が判定され、発進意思があるとき、ステップS8に進む。ステップS8で、制御手段80は、スタータモータ7を作動させて、エンジン2の再始動を行い、電動パーキングブレーキ装置30bが作動しているときは、ブレーキ制御装置14を通じてその作動を解除し、ブレーキ力保持装置26が作動しているときは、ブレーキ制御装置14を通じてその作動を解除して、各車輪4の制動を解除する。
【0046】
一方、ステップS6で発進意思がないと判定されたとき、ステップS9に進んで、再始動要求の有無が判定され、再始動要求がないとき、ステップS5に戻って、ブレーキ力保持装置26が作動限界状態であるか否かが判定される。ステップS9で再始動要求があるとき、ステップS10に進む。
ステップS10では、ブレーキ制御装置14を通じて、電動パーキングブレーキ装置30bが、作動解除状態のときは作動状態にされ、作動状態のときは作動状態が維持され、またブレーキ制御装置14を通じて、ブレーキ力保持装置26が、作動状態のときは作動解除状態にされ、作動解除状態のときは作動解除状態に維持される。さらに、スタータモータ7が作動されて、エンジン2の再始動が行われる。
【0047】
ステップS8でのエンジン2の再始動と、電動パーキングブレーキ装置30bまたはブレーキ力保持装置26の作動解除とは、ほぼ同時に行われるか、または、電動パーキングブレーキ装置30bまたはブレーキ力保持装置26の作動解除が、再始動よりも僅かに遅れて行われる。
また、ステップS10でのエンジン2の再始動とブレーキ力保持装置26の作動解除とは、ほぼ同時に行われるか、または、ブレーキ力保持装置26の作動解除が、再始動よりも僅かに遅れて行われる。そして、電動パーキングブレーキ装置30bの作動とブレーキ力保持装置26の作動解除とは、ほぼ同時に行われるか、または、ブレーキ力保持装置26の作動解除が、電動パーキングブレーキ30bの作動よりも僅かに遅れて行われる。
【0048】
次に、図4を参照して、エンジン自動停止制御装置を備える車両1の減速から自動停止および再始動を経て、車両1の発進までの一例を説明する。
車両1が減速して停車する過程で、アクセルペダルが解放されてブレーキペダル22が踏み込まれることにより、時点t1でマスタシリンダ23aの作動によりブレーキ液圧Pが上昇する。そして、時点t2で車速が0となって車両1が停車し、かつブレーキ液圧Pが所定液圧値P1以上のとき、自動停止条件が満たされる。そして、自動停止禁止条件が満たされていないときに、エンジン2の自動停止が行われる。
【0049】
自動停止中に、運転者の発進意思の有無に関わらず、運転者によりブレーキペダル22を解放する操作が行われた場合に、マニュアルパーキングブレーキ装置30aがブレーキ力不足状態にあるとき、マスタシリンダ23aが発生するブレーキ液圧Pが低下し、時点t3で所定液圧値P1になると、ブレーキ液圧センサ43により所定液圧値P1が検出されて、ブレーキ力保持装置26が作動する。
このため、ブレーキキャリパ21のホイールシリンダ21aのブレーキ液圧Paは、所定液圧値P1に維持されて、このブレーキ液圧Paによるブレーキ力が車輪4に付与される。
【0050】
その後、時点t4でアクセルペダルが解除位置から踏み込まれて、発進関連操作が行われると、発進関連操作検出手段50であるアクセルセンサ45によりアクセルペダルのアクセル操作が検出され、したがって運転者の発進意思が検出される。これにより、自動停止が終了して再始動が開始され、ほぼ同時に電動パーキングブレーキ装置30bの作動が解除され、ブレーキ力保持装置26の作動が解除されて、車両1が発進する。そして、ブレーキ力保持装置26の作動解除により、ホイールシリンダ21aのブレーキ液圧Paがマスタシリンダ23aでのブレーキ液圧Pまで低下する。
【0051】
次に、前述のように構成された第1実施形態の作用および効果について説明する。
再始動条件が満たされたときにエンジン2の再始動を行う制御手段80を備えるエンジン自動停止再始動装置12において、再始動条件は、ブレーキ操作検出手段44によりブレーキ操作不足状態が検出されているときに、発進関連操作検出手段50により発進関連操作が検出される、すなわち運転者の発進意思が検出されることである。
この構成により、発進関連操作は、運転者の発進の意思に基づいて行われる操作であることから、ブレーキ操作不足の状態になったとしても、運転者がその発進意思を示す発進関連操作を行うまで、エンジン2の再始動が行われない。この結果、自動停止状態を継続するために、ブレーキペダル22の操作状態を維持する必要がないので、例えばブレーキペダル22を解放した状態で信号待ちをすることができて、ブレーキペダル22に対する操作継続のための運転者の負担の軽減が可能になる。さらに、運転者が意図しない再始動が防止され、ひいては運転者が意図しない車両の発進が防止される。また、運転者に発進意思がある場合には、運転者がブレーキペダル22の操作解除の後に発進関連操作を行うことで、速やかな再始動および発進が可能になる。
【0052】
発進関連操作は、アクセル操作部がアクセル解放位置からアクセル操作されること、ブレーキペダル22がブレーキ操作不足状態を解消するまで操作されること、ハンドルが所定操舵角以上または所定操舵トルク以上に操作されること、マニュアルパーキングブレーキ装置30aが作動解除されること、変速機3aのシフトレバーによりシフト位置が被走行位置から走行位置へ操作されること、キースイッチ6がエンジン2を始動する始動位置に操作されること、の少なくとも1つである。
これによれば、運転者の発進意思を、運転者による、アクセル操作部の操作、ブレーキ操作不足状態を解消するブレーキペダル22の操作、ハンドル操作、マニュアルパーキングブレーキ装置30aの操作、キースイッチ6の操作の少なくとも1つの操作を通じて検出することができる。
【0053】
車両1は、ブレーキペダル22とは別個に、車輪4にブレーキ力を付与可能なブレーキ力保持装置26および電動パーキングブレーキ装置30bを備え、制御手段80は、ブレーキ操作不足状態が検出されているときに、ブレーキ力保持装置26または電動パーキングブレーキ装置30bの作動を行うものである。
これによれば、ブレーキペダル22によるブレーキ操作不足状態が生じたときに、ブレーキペダル22とは別個のブレーキ力保持装置26または電動パーキングブレーキ装置30bにより、車輪4にブレーキ力が付与されるので、ブレーキペダル22に対する操作継続のための運転者の負担が軽減され、また運転者が意図しない車両の発進が防止される。
【0054】
制御手段80は、ブレーキ操作不足状態が検出されている場合に、発進関連操作が検出されたときに、ブレーキ力保持装置26および電動パーキングブレーキ装置30bの作動解除と、再始動とを行う。
これによれば、運転者の発進意思を示す発進関連操作が検出されたときに、ブレーキ力保持装置26および電動パーキングブレーキ装置30bによる制動の解除と、再始動とが行われるので、車両1の円滑な発進が可能になる。
【0055】
エンジン自動停止再始動装置12は再始動を要求する再始動要求を検出する再始動要求検出手段70を備え、制御手段80は、ブレーキ操作不足状態が検出され、かつ発進関連操作が検出されない場合であって、再始動要求が検出されているときに、電動パーキングブレーキ装置30bの作動および再始動を行う。
これによれば、ブレーキ操作不足状態が検出され、かつ発進関連操作が検出されない場合、したがって運転者が発進意思を示していない場合に、運転者の発進意思に関わらない車両状態に基づいてエンジン2の再始動を必要とする再始動要求が検出されているときには、ブレーキ力付与手段を作動させた状態でエンジン2の再始動が行われるので、運転者が意図しない車両1の発進が防止される。
【0056】
エンジン自動停止再始動装置12は、マニュアルパーキングブレーキ装置30aのブレーキ力不足状態を検出するパーキングブレーキ状態検出手段47を備え、制御手段80は、ブレーキ操作不足状態が検出され、かつブレーキ力不足状態が検出されているときに、ブレーキ力保持装置26の作動を行う。
これによれば、ブレーキペダル22の解放などによりブレーキ操作不足状態が生じた場合に、マニュアルパーキングブレーキ装置30aが作動解除されているなどによりマニュアルパーキングブレーキ装置30aがブレーキ力不足状態にあるとき、ブレーキ力保持装置26により自動的にブレーキ力が車輪4に付与される。この結果、マニュアルパーキングブレーキ装置30aの操作が省略された場合にも、ブレーキペダル22に対する操作継続のための運転者の負担を軽減しながら車両1の発進を防止でき、また運転者が意図しない車両1の発進を防止できる。
【0057】
制御手段80は、ブレーキ操作不足状態が検出されている場合に、発進関連操作が検出されず、かつ再始動要求が検出されているときに、電動パーキングブレーキ装置30bの作動、ブレーキ力保持装置26の作動解除および再始動を行うものである。
これによれば、発進関連操作が検出されない場合、したがって運転者が発進意思を示していない場合に、運転者の発進意思に関わらない車両状態に基づいてエンジン2の再始動を必要とする再始動要求が検出されているときには、電動パーキングブレーキ装置30bが作動した状態でエンジン2の再始動が行われるので、運転者が意図しない車両の発進が防止される。そして、運転者が電動パーキングブレーキ装置30bを解除することにより発進が可能になる。
【0058】
次に、図5,図6を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。この第2実施形態は第1実施形態とは、パーキングブレーキ装置30が、電動パーキングブレーキ装置30bを備えておらず、マニュアルパーキングブレーキ装置30aから構成される点で相違し、その他は基本的に同一の構成を有するものである。このため、第1実施形態と同じ点についての説明は省略または簡略にし、異なる点を中心に説明する。なお、第1実施形態の部材と同一の部材または対応する部材については、必要に応じて同一の符号を使用した。
【0059】
図6を中心に、図1,図5を適宜参照して、エンジン自動停止再始動装置12の制御手段80により実行される再始動の制御方法を、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0060】
ステップS6で発進意思があると判定されたとき、ステップS8aに進んで、制御手段80は、スタータモータ7を作動させて、エンジン2を再始動し、また、ブレーキ制御装置14を通じて、ブレーキ力保持装置26が、作動状態であるときは作動解除状態にされ、作動解除状態であるときは作動解除状態に維持されて、車輪4の制動が解除される。
【0061】
一方、ステップS5で発進意思がないと判定されたとき、ステップS9に進んで、再始動要求があるとき、ステップS10aに進む。
ステップS10aでは、制御手段80は、運転者にブレーキペダル22を有効操作状態になるまで踏み込むことを要求する警告を行う警告手段を作動させる。したがって、この場合、再始動要求があるにも拘わらず、再始動が禁止される。
この警告手段は、表示装置(例えば、ランプ)または音発生装置(例えば、警告音発生装置または音声発生装置)により構成される。
【0062】
ステップS10aで警告が行われた後、ステップS6に戻って、発進意思の判定が行われる。運転者が警告に従ってブレーキペダル22を踏み込んだ場合、発進関連操作検出手段50であるブレーキ操作検出手段44により発進関連操作が検出されるので、ステップS6で発進意思があると判定されて、ステップS8aに進んで、エンジン2が再始動され、ブレーキ力保持装置26が作動解除状態にされる。
なお、ステップS10aでの運転者への警告にも拘わらず、ブレーキペダル22の踏込みが行われない場合、ブレーキ力保持状態検出手段73(図2参照)により作動限界状態が検出された時点で、ブレーキ力保持装置26の作動が解除される。
【0063】
この第2実施形態によれば、電動パーキングブレーキ装置30bを備えず、マニュアルパーキングブレーキ装置30aを備える車両1において、ステップS10(図3参照)での処理を除いて、第1実施形態と同様の作用および効果が奏されるほか、次の作用および効果が奏される。
すなわち、発進意思がなく、再始動要求がある場合に、ステップS10aにおいて運転者にブレーキペダル22の踏込み操作を要求する警告を発する一方で、エンジン2の再始動が禁止される。そして、運転者が前記警告に従ってブレーキペダル22を踏み込むことにより、ステップS6で発進意思があると判定されたときに、再始動が行われて、再始動要求が満たされ、しかもブレーキペダル22の踏込みが行われていることによりブレーキキャリパ21が作動している間は、車両1の発進が防止される。
【0064】
以下、前述した実施形態の一部の構成を変更した実施形態について、変更した構成に関して説明する。
変速機3aは、マニュアル式の変速機であってもよい。この場合、車両1の動力伝達装置3は、変速機3aへのエンジン2の動力の伝達および遮断を行うクラッチ装置を備える。このクラッチ装置は、動力の伝達・遮断のために接続状態が変更可能なクラッチと、該クラッチの接続状態を変更するために運転者が操作するクラッチ操作部としてのクラッチペダルとを備える。制御条件検出手段40には、クラッチペダルの解放位置および該解放位置から操作位置への操作(すなわち、クラッチ遮断のための操作)を検出するクラッチスイッチと、シフト操作検出手段とが含まれる。該シフト操作検出手段は、変速機3aのシフト位置としてのニュートラル位置である非走行位置または各変速位置である走行位置を検出するが、非走行位置から走行位置への操作は、発進関連操作には含まれない。
発進関連操作には、クラッチを操作するクラッチ操作部が解放位置から操作位置に操作されることが含まれる。
自動停止条件には、クラッチスイッチによりクラッチペダルの解放位置からの操作が検出されたこと、シフト操作検出手段により非走行位置が検出されたことが含まれ、再始動条件には、クラッチスイッチによりクラッチペダルの解放位置からの操作が検出されたこと、シフト操作検出手段により非走行位置が検出されたことが含まれる。
所定液圧値P1は、変速機3aがマニュアル式のものである場合、停車時の路面の勾配による車両1の走行を阻止して、停車状態を維持できる値に設定される。
【0065】
マニュアル始動停止手段は、プッシュスタートボタンであってもよい。
自動停止条件として、ブレーキ液圧Pの代わりに、ブレーキ操作検出手段44により検出されるブレーキ有効操作状態が使用されてもよい。
フートブレーキ装置20は、ディスクブレーキ装置以外のブレーキ装置(例えば、ドラムブレーキ装置)であってもよい。
ブレーキ力保持装置26は、液圧式以外のものでもよい。
自動パーキングブレーキ装置は、電動式以外に液圧ポンプを備える液圧式のものであってもよい。
発進関連操作は、運転者の直接的な操作以外に、運転者の行為(例えば、音声による指示)により行われる間接的な操作を含む。
再始動要求を、車両1の走行に与える影響の大きさの観点から、1次再始動要求と、1次再始動要求よりもエンジン2を再始動することの重要度が小さい2次再始動要求とに分けたとき、1次再始動要求が検出されたときは、再始動を行い、2次再始動要求が検出されたときには、再始動を行わなくてもよい。この2次再始動要求には、例えば、車室温度センサ64により検出される車室内温度に基づくエアコンの運転要求があり、この場合、エンジン2の再始動を行うことなく、エアコンを停止状態に維持してもよい。
エンジンは、内燃機関以外の燃焼機関であってもよく、また電動機であってもよい。
車両は、走行用原動機として、電動機および内燃機関から構成されるハイブリッドエンジンを備えるものであってもよい。また、車両は、四輪車以外の車両、例えば二輪車であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 車両
2 エンジン
3a 変速機
4 車輪
6 キースイッチ(マニュアル始動手段)
12 エンジン自動停止再始動装置
21 ブレーキキャリパ(主ブレーキ)
22 ブレーキペダル(ブレーキ操作部)
26 ブレーキ力保持装置(ブレーキ力付与手段)
30 パーキングブレーキ装置
30a マニュアルパーキングブレーキ装置
30b 電動パーキングブレーキ装置(ブレーキ力付与手段)
40 制御条件検出手段
47,47a パーキングブレーキ状態検出手段
50 発進関連操作検出手段
70 再始動要求検出手段
80 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたエンジンの自動停止条件および再始動条件を検出する制御条件検出手段と、前記自動停止条件が満たされたときに前記エンジンの自動停止を行い、前記再始動条件が満たされたときに前記エンジンの再始動を行う制御手段とを備えるエンジン自動停止再始動装置において、
前記制御条件検出手段は、前記車両の車輪にブレーキ力を付与する主ブレーキを操作するブレーキ操作部のブレーキ操作不足状態を検出するブレーキ操作検出手段と、運転者が前記車両の発進に関連して行う発進関連操作を検出する発進関連操作検出手段とを備え、
前記再始動条件は、前記ブレーキ操作不足状態が検出されているときに、前記発進関連操作が検出されることであることを特徴とするエンジン自動停止再始動装置。
【請求項2】
前記発進関連操作は、前記車両において、アクセル操作部がアクセル解放位置からアクセル操作されること、前記ブレーキ操作部が前記ブレーキ操作不足状態を解消するまで操作されること、ハンドルが所定操舵角以上または所定操舵トルク以上に操作されること、パーキングブレーキが作動解除されること、変速機のシフト操作部が操作されること、前記車輪への前記エンジンの動力の伝達および遮断を行うクラッチを操作するクラッチ操作部が解放位置から操作位置に操作されること、前記エンジンを始動するために運転者が操作するマニュアル始動手段が前記エンジンを始動する始動位置に操作されること、の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載のエンジン自動停止再始動装置。
【請求項3】
前記車両は、前記ブレーキ操作部とは別個に、前記車輪にブレーキ力を付与可能なブレーキ力付与手段を備え、
前記制御手段は、前記ブレーキ操作不足状態が検出されているときに、前記ブレーキ力付与手段の作動を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のエンジン自動停止再始動装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記ブレーキ操作不足状態が検出されている場合に、前記発進関連操作が検出されたときに、前記ブレーキ力付与手段の作動解除および前記再始動を行うことを特徴とする請求項3項に記載のエンジン自動停止再始動装置。
【請求項5】
前記再始動を要求する再始動要求を検出する再始動要求検出手段を備え、
前記制御手段は、前記ブレーキ操作不足状態が検出され、かつ前記発進関連操作が検出されない場合であって、前記再始動要求が検出されているときに、前記ブレーキ力付与手段の作動および前記再始動を行うか、または、前記再始動を禁止することを特徴とする請求項3または4に記載のエンジン自動停止再始動装置。
【請求項6】
前記ブレーキ力付与手段は、前記主ブレーキのブレーキ力を保持するブレーキ力保持装置であり、
前記車両のパーキングブレーキ装置のパーキングブレーキのブレーキ力不足状態を検出するパーキングブレーキ状態検出手段を備え、
前記制御手段は、前記ブレーキ操作不足状態が検出され、かつブレーキ力不足状態が検出されているときに、前記ブレーキ力保持装置の作動を行うことを特徴とする請求項3または4に記載のエンジン自動停止再始動装置。
【請求項7】
前記パーキングブレーキ装置は、自動パーキングブレーキ装置であり、
前記制御手段は、前記ブレーキ操作不足状態が検出されている場合に、前記発進関連操作が検出されず、かつ前記再始動要求が検出されているときに、前記パーキングブレーキの作動、前記ブレーキ力保持装置の作動解除および前記再始動を行うことを特徴とする請求項6に記載のエンジン自動停止再始動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−102647(P2012−102647A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250613(P2010−250613)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】