説明

オフセット・ロボット総合管理システム

【課題】本発明はオフセット・ロボットの設計から運用まで統一的に扱う総合システムであって、オフセット・ロボットの開発システムと運用システムを動的にリンクさせるオフセット・ロボットの総合管理システム化により、オフセット・ロボットの運動のキャリブレーション問題とオフセット・ロボット導入リスクの問題を解決することを課題とする。
【解決手段】本発明はオフセット・ロボットの設計から実ロボットの運用まで統一的に取り扱う総合管理システムを提案するもので、キャリブレーション問題とロボット導入リスクの問題を解決するため、開発システムと運用システムのオフセット・ロボットの運動情報を互いにフィードバックすることにより、オフセット・ロボットの実空間と仮想空間とを融合させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオフセット・ロボットの設計から運用まで統一的に取り扱う総合管理システムを提案するもので、オフセット多関節ロボットの設計を支援し、所望の動作を精度良く実行させるロボットの制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
オフセットロボットというのは、図6に示すように、長手方向の中心軸に対してある角度を有する平面の端部をもったアーム同士がその端面を摺動する形態で回転自在に結合されたロボット・アームの関節をもったもの、すなわち、アームの長手方向の中心軸に対してある方向と角度を持った軸を中心に回転する関節を機構とするロボットを、オフセット・ロボット(または、オフセット・アーム・ロボット)と言う。そして、その方向をオフセット回転軸方向、その角度をオフセット角と言い、該オフセット角に対応して両アームのなす角度が変化する。また、このようなオフセット関節から構成される複数のアームを持ったロボットを、オフセット多関節ロボットと呼ぶ。本明細書では、このオフセット多関節ロボットを、オフセット・ロボットと略称することとする。このオフセット・ロボットが他のロボット・アームと比較して特徴的なのは、関節の運動が回転のみによって実現されるという点である。
【0003】
オフセット・ロボットが備えている長短所を列挙すると、次のとおりである。
(1) モーターとギアだけで構成することができるため、関節の機構が単純である。
(2) (1)の理由から、ミクロサイズのものから巨大サイズのものまで作成することができる。因みに近年のマイクロマシーン技術ではナノサイズのモーターやギアが開発されてきている。
(3) (1)の理由から、開発や製造コストを、他の多関節ロボットより一般に低く抑えることができる。
(4) アーム間を繋ぐ配線をアーム内部に収納することが容易で、現場で配線の纏れや干渉等のトラブルを防ぐことができる。
(5) アームの運動が限られているため、場合によってはティーチングの手間が小さい。
短所としては次のとおりである。
(1) 各関節のとりうる角度に制限があり、基部の関節動作が先の関節に影響を与えるため、目的とする運動をさせることに制限が生じ、一般に運動の最適化が難しい。つまり、運動制御ための最適パラメータの組み合わせ・動作順序を決めるのが極めて困難であること、運動空間の特異点という問題もあり、ロボットの先端が目的の軌跡を運動できないという問題が発生する。パラメータとしては、アームの数、各アーム長、各オフセット方向、各オフセット角、各関節の初期回転位置・回転角・回転速度・回転順序等がある。
(2) (1)の理由から、汎用性が乏しく設計が難しい。例えば、ある場面で使用しているオフセット・ロボット、を他の場面では使用できない場合が多い。
(3) (1)の理由から、所望動作を行わせるティーチングが困難になることが起こりやすい。
【0004】
一般に、ロボットの運動を制御するときの問題の一つに、キャリブレーション(calibration)がある。ここでいうキャリブレーションとは、ロボット・アームの先端の位置が目標としている位置からずれるのを修正することである。図3に示すようなズレの原因として上げられるのは、ロボットの設置の誤差、各アームの座標系の変換による誤差、荷重や自重や経年変化によってアームに生じる形状歪誤差、各センサ(位置・速度・加速度等)の温度や湿度などの動作環境の変化による測定誤差、経年変化によるアームや各駆動機構ユニット(軸受け・減速機・モータ等)の磨耗誤差などがあり、しかもこれらの誤差は複合していることが多く、ずれの原因を特定・把握しロボットを自由に制御することは、科学技術の発達した今日でも非常に難しい。
また、これらの誤差の不確定要因はロボット導入のリスクにもなっており、例えばキャリブレーションに手間取ったため工場のラインの稼働率が低下し、ロボットを導入したが期待した成果が得られなかった、ということが起こりうる。特にオフセット・ロボットには、前記の短所(1)で述べたように、運動範囲に制限があることから、キャリブレーションが特に困難になる場合がある。
【0005】
オフセット・ロボットによって実用的で効率的な作業を行う実物は、あまり存在していないようである。その理由は、前記の“短所”として列挙した点に起因するものと解される。
一般のロボット・アームの従来のキャリブレーションでは、ティーチング・プレイバック(teaching playback:教示再生方式)が使われることが多い。ここで、ティーチング(teaching)とは、オペレータがロボットにアームの先端の位置を指定することや、運動の順序を教え込むことである。ティーチング・プレイバックとは、オペレータによって手作業で目標位置の誤差を順に修正していく方法である。オペレータは、目標とする位置にアームの先端を移動させるべく操作した後、実際のアーム位置と目標位置との誤差を測定して修正し、そのときの各アームやジョイントの位置を記録しておく。この位置をティーチング・ポイント(teaching point)言い、このオペレーターの作業をダイレクト・ティーチング(direct teaching)、記録するものをティーチング・ボックス(teaching box)と言う。オペレータは、アーム先端の運動の軌跡(path)に従って、更にティーチング・ポイントを記録していく。最終的にロボットの運動は、これらのティーチング・ポイントに従って制御される。図5はこのオペレータによるティーチングを模式的に説明した図である。
また、パソコンの普及で、シミュレーションによってロボットの運動を予測することが容易となってきたが、ロボット実機(実空間座標)とシミュレーション(仮想空間座標)は情報技術から見るとある程度の差が存在し一義的に対応していない現状である。つまり、シミュレーションはロボット設計の参考または推定程度であり、逆にロボット実機から最適な運動状態の理論を得ることは、普通はなされない。実空間システムと仮想空間システムが融合し互いにフィードバック可能な総合管理システムとはなっていない現状にある。更に、ロボット部品の経年変化による誤差をフィードバックして運動制御されるロボットは、実用化に至っていない。
【0006】
オフセット・ロボットの普及のためには、前述したオフセット多関節ロボットの短所を克服することが重要である。本出願人らは先に特許文献1「モジュール化方式の多関節ロボットとその電動アクチュエータ」を提示した。この発明の課題は、上記した基部の関節動作が先の関節に影響を与えてしまうという多関節ロボットとしての制御上の複雑性を単純化すると共に、関節の短縮化と、より安全性を高めた実用的なシステムを提供することにあった。そして、各関節ユニットに回転修正機構とオフセット回転機構との組み合わせを採用した多関節ロボットにおいて、図4に示すようにモータ等を外付けとし、各関節の回転修正機構とオフセット回転機構にはモジュール化された同じ方式の電動アクチュエータを用い、該電動アクチュエータに用いる減速機構にはウオームとウオームホイールからなる逆転防止機能を備えたウオーム歯車機構を採用するようにしてその問題の解決を図った。しかし、このオフセット・ロボットに所望の動作を行わせるにはオフセット・ロボットの最適化を図るしくみ(情報システム)が必要であるが、このようなシステムは未だ開発されていない。
【0007】
一般に、ロボットの従来のキャリブレーションの問題、及びそれから派生する問題として次の点が上げられ、オペレータの負担増加やラインの稼働率の低下等、ロボットの作業効率は必ずしも良いとは言えない。
(1) 運動の種類ごとにティーチングが必要で、そのロボットの機能の活用に制限が加わることが多い。例えば、本来100%の機能が、運動範囲の限定などにより50%程度の機能しか発揮できない、といったことが起こりうる。
(2) ロボットが複雑な運動をする場合、ティーチングの回数が多くなる。また、極めて複雑な運動の場合、実用上ティーチングが不可能となることが起こりうる。
(3) ロボットの動作環境の変化や経年変化によるアームや各駆動機構ユニットや各部品の歪等が原因で、ティーチング・ポイントが次第にずれていき、ティーチングをやり直さなければならないことがたびたび起こる。
また、最も大きな問題点として、ロボットの構想から具体的設計、開発、テスト、実ロボットの運用まで、やってみなければわからないということが多々あり、ロボット導入にはリスクが生じる。例えば、最悪の場合、ロボットを導入したが運用の困難さから稼働率が低下し生産性がかえって悪化してしまうといったことが起こりうる。その解決のためには、ロボットの設計から運用まで統一的に扱う総合管理システムが必要なのである。
【特許文献1】特開2005−14156号公報 「モジュール化方式の多関節ロボット とその電動アクチュエータ」 平成17年1月20日公開
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はオフセット・ロボットの設計から運用まで統一的に扱う総合システムであって、オフセット・ロボットの開発システムと運用システムを動的にリンクさせるオフセット・ロボットの総合管理システム化により、オフセット・ロボットの運動のキャリブレーション問題とオフセット・ロボット導入リスクの問題を解決することを課題とする。
すなわち、本発明の具体的な課題は(1)オフセット・ロボットの機能を最大限に引き出し、(2)オフセット・ロボットのティーチング回数を著しく減少させ、(3)オフセット・ロボットが作業環境の変化や経年変化に対処可能な自律性を持たせ、(4)オフセット・ロボット導入のリスクを管理することができる総合管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はオフセット・ロボットの設計から実ロボットの運用まで統一的に取り扱う総合管理システムを提案するもので、キャリブレーション問題とロボット導入リスクの問題を解決するため、オフセット・ロボットの実空間と仮想空間におけるオフセット・ロボットの運動情報を互いにフィードバックすることにより融合させる、すなわち、オフセット・ロボットの開発と運用を動的にリンクさせる情報技術システム、「ロボットの運動精度を補完する情報技術システム」を提案する。同システムは、大きく分けて、(1)実オフセット・ロボット運用システムと、(2)仮想オフセット・ロボット開発システム、の2つの部分から構成される。
この実オフセット・ロボット運用システムは、制御用PCと運用情報記録・補正用PCから構成され、ネットワークに接続して互いに必要な情報をフィードバックするようにした。また、この実オフセット・ロボット運用システムの運用情報記録・補正用PCを用い、オフセット・ロボット運用情報等をデータベースとして自動的に記録していき、オフセット・ロボットの運動制御に自律性を持たせるようにした。
仮想オフセット・ロボット開発システムは、オフセット・ロボットの構成部品をデータベース化し、また、仮想オフセット・ロボットのシミュレーション・プログラムや開発ツールをデータベース化するようにした。
また、上記実オフセット・ロボット運用システムと、仮想オフセット・ロボット開発システムは、仮想オフセット・ロボット開発システムにある開発用PCと実オフセット・ロボット運用システムにある運用情報記録・補正用PC及び制御用PCを通してネットワークで接続され、互いに必要な情報をフィードバックするようにした。
更に、オフセット・ロボットの動作環境の変化や経年変化による誤差を自動的に補完する方式を提案し、オフセット・ロボット制御に自律性を持たせる。ユビキタス技術を用い、オフセット・ロボットの各構成部品にセンサとIDタグを装着し、PCと情報を交換することによりアームやジョイントや各部品の歪を管理し、歪が規定値より大きくなったときにはPCでロボットの最適な運動方法計算を実行し、誤差を自動的に修正していく手法を採用した。
【発明の効果】
【0010】
本発明のオフセット・ロボット総合管理システムは、オフセット・ロボットを駆動制御するコントローラと該コントローラにロボット制御信号を出力する制御用コンピュータと運用情報記録・補正用コンピュータとを備えた実ロボット運用システムと、ロボット開発用コンピュータとロボット構成部品データベースとソフトウェア開発部品データベースとを備えた仮想ロボット開発システムとがネットワークにより情報交換可能に接続されたものであるから、オフセット・ロボットの設計から運用まで統一的に扱うことができ、しかも、実ロボット運用システムと仮想ロボット開発システムとが遠隔の施設に設置されていても総合管理システムとして機能させることができる。更に、前記運用情報記録・補正用コンピュータは運用情報データベースを備えることにより、前記制御用コンピュータとの間で運用情報を順次蓄積し、制御補正情報を提供することができる。
また、本発明のオフセット・ロボット総合管理システムは、物性・特性情報や形状CAD情報および価格といった使用するロボット構成部品に関する情報を前記ロボット構成部品データベースに蓄積することにより、前記開発コンピュータによって前記部品を組み合わせたロボットの設計および該ロボットの駆動シミュレーションを設計することができる。
また、設計された駆動シミュレーションに従って設計されたロボットの駆動シミュレーションを実行し、該設計情報とその駆動動作を開発ルーツとして前記ソフトウェア開発部品データベースに蓄積し、将来の開発に利用することができる。
仮想ロボット開発システムにおいて開発されたロボットの駆動シミュレーションプログラムに対応させ、設計された実ロボットをコントローラにより実駆動させる制御プログラムを実ロボット運用システムにおける制御用コンピュータに取り込むことにより、実ロボットの駆動制御を容易に実行することができる。
実ロボット運用システムにおける制御用コンピュータに取り込まれたプログラムに従って実ロボットを実駆動させ、駆動された実ロボットの各部品の実座標における位置検出情報と前記駆動プログラムを実ロボット運用情報として運用情報記録・補正コンピュータに蓄積することにより、各関節の運動履歴を記録することができる。
実ロボット運用システムにおける制御用コンピュータに取り込まれたプログラムに従って実ロボットを実駆動させると共に、駆動された実ロボットの各部品の実座標における位置検出情報を仮想ロボット開発システムにおける仮想座標情報にフィードバックして修正を加えることにより、仮想空間の情報を実空間情報に整合させ、より実際的なシミュレーションを可能にすることができる。
オフセット・ロボットの各構成部品にセンサとIDタグを装着し、前記センサからの検出情報を制御用コンピュータに順次取り込み、運用情報記録・補正コンピュータの運用情報データベースに蓄積することにより、各構成部品毎に履歴情報を整理記録することができる。
実ロボット運用システムにおける制御用コンピュータに取り込まれたプログラムに従って実ロボットを実駆動させると共に、駆動された実ロボットのアームやジョイント等各部品の実座標における位置検出情報の歪が規定値より大きくなったときにはプログラムに採用する各構成部品の情報を最新のものに置き換えて制御コンピュータでロボットの最適な運動方法計算を再実行し、誤差を自律的に修正していくことにより、種々の原因による歪みを適宜修正して所望の動作を実ロボットに実行させることができる。
本発明のオフセット・ロボットの運動精度を補完する総合管理システムは、オフセット・ロボットの開発と実ロボットの運用を動的にリンクさせる情報技術システムにより、オフセット・ロボットの運動のキャリブレーション問題が解決され、また、オフセット・ロボット導入リスクが管理され、社会に有意義なオフセット・ロボット・システムを作ることができる。すなわち、本発明の効果を整理すると
(1) オフセット・ロボットの機能を最大限に引き出すことで、無駄なくオフセット・ロボットの高い効率を引き出すことができ、省エネにも繋がる。
(2) ティーチング回数を著しく減少させることにより、オペレータの負担が軽減され、オフセット・ロボットの稼働率が上がる。
(3) オフセット・ロボットが経年変化に耐えられるようになり、オペレータの負担の軽減、精度の向上、稼働率の向上、コストの削減、省エネ、環境にやさしいオフセット・ロボットの開発・運用が可能になる。
(4) オフセット・ロボット導入のリスクを管理することにより、投資・経営・安全性の向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係るオフセット・ロボット精度検証システムの1実施形態を、図1に沿って説明する。キャリブレーション問題とオフセット・ロボット導入リスクの問題を解決するため、オフセット・ロボットの運動情報を互いにフィードバックすることにより、オフセット・ロボットの実空間と仮想空間を融合させるようにしている。すなわち、オフセット・ロボットの開発と実ロボットの運用を動的にリンクさせ「オフセット・ロボットの運動精度を補完」する総合管理システムを提案する。同システムは、大きく分けて破線で囲われた領域の実ロボット運用システムAと、一点鎖線で囲われた領域の仮想ロボット開発システムBの2つの部分から構成され、両者は制御用PC1を介してネットワークで結合され、リアルタイムに情報をやりとりする。
【0012】
仮想オフセット・ロボット開発システムBは、オフセット・ロボットの構想・設計・開発・運用をコンピュータ上でシミュレーションし、実際のオフセット・ロボットの開発・運用をサポートする。同システムは、物性・特性情報や形状CAD情報および価格といった使用するロボット構成部品に関する情報をデータベース化し、また、シミュレーション・プログラムや開発ツールを蓄積し、ソフトウェア開発部品データベースにデータベース化する。この仮想オフセット・ロボット開発システムは、オフセット・ロボットのシミュレーションと実ロボットの運用におけるサポートを行う開発用PC2を必要とする。開発用PC2は、オフセット・ロボットの順・逆キネマティクス・シミュレーション・プログラムと、オフセット・ロボットの運用のための制御プログラムを開発する役割を担う。また、この開発用PC2は、次に述べるオフセット・ロボット構成部品データベースとソフトウェア開発部品データベースを持っている。開発用PC2は、実オフセット・ロボット運用システムAの運用情報記録・補正用PC3や制御用PC1と情報交換可能なようにネットワークで結合されている。開発用PC2は、運用情報記録・補正用PC3からオフセット・ロボットの運用情報を受け取り、オペレータは手動で補正した制御命令を送ることができる。また、開発用PC2は、遠隔地にある実オフセット・ロボット運用システムAの制御用PC1にオフセット・ロボットの制御命令を送ると共に、その運用情報を受け取ることができ、実際のオフセット・ロボットがなくても実際に近いシミュレーションをすることができる。この機能により、実際にオフセット・ロボットが存在しなくても、あたかもロボットを製作・運用しているようにオフセット・ロボットの開発を行うことができる。
【0013】
次に、オフセット・ロボット構成部品データベースについて説明する。仮想オフセット・ロボット開発システムBでは、オフセット・ロボットの構成部品はデータベース化されており、これをオフセット・ロボット構成部品データベースと呼ぶ。従来のこの種のデータベースは、購入部品の購入時点での品質管理のためのものであったが、本発明のオフセット・ロボット構成部品データベースは、購入時点だけではなく、実際のオフセット・ロボットの運用結果からフィードバックされた情報をも取り込むようになっている。そのために、ユビキタス技術を用いて、構成部品にICタグを装着しこれを管理するようにしている。これにより、オフセット・ロボットの運用や経年変化によるアームの歪等の情報がフィードバックされ、部品の経年変化等がオフセット・ロボットの運動精度やコストに反映させることができ、従来よりも効率的なオフセット・ロボット開発が可能となる。
表1に、オフセット・ロボット構成部品データベースの例を示す。
【表1】

実際のオフセット・ロボットの運用結果からフィードバックされた情報をも取り込んでデータベ一ス化することにより運用状況による部品の経年変化等がロボットの運動精度やコストに反映させることができ、設計された基準値を用いて行う従来より実機に近いシミュレーションを行うことができ、効率的なロボット開発が可能となる。
【0014】
次に、ソフトウェア開発部品データベースについて説明する。仮想オフセット・ロボット開発システムBでは、ソフトウェア開発部品はデータベース化されており、これをソフトウェア開発部品データベースと呼ぶ。ここで、ソフトウェア開発部品とは、仮想オフセット・ロボット開発システムBで開発された様々なシミュレーション・プログラム、制御プログラム、それらのサブ・プログラム、ライブラリ、開発ツール等を含み、これらを総称する。従来、これらのデータ管理は個人まかせであったが、本発明のシステムでは、多くの人がソフトウェアを共有して使用することが可能となる。このように開発部品をデータベース化することで、ソフトウェアの再利用が図られ、改修も容易になり、ソフトウェアの開発効率を向上させることが可能になる。また、開発したソフトウェアを他のソフトウェア開発にも役立てることができる。
表2に、ソフトウェア開発部品データベースの例を示す。
【表2】

【0015】
次に、実オフセット・ロボット運用システムについてであるが、この実オフセット・ロボット運用システムAは、制御用PC1と運用情報記録・補正用PC3から構成され、実際のロボットの運動制御を自律的に行う。実オフセット・ロボット運用システムAでは、制御用PC1がコントローラ4を介しオフセット・ロボットの運動を制御する。制御用PC1は運用情報記録・補正用PC3とネットワークに接続され、制御用PC1はオフセット・ロボットからフィードバックされた運用情報を運用情報記録・補正用PC3に送る。また、制御用PC1は、運用情報記録・補正用PC3から補正された制御命令を受け取る。また、制御用PC1は、仮想オフセット・ロボット開発システムBの開発用PC2からシミュレーションによる制御命令を受け取り、オフセット・ロボットの運動制御のシミュレーションを行うことができる。そして、シミュレーションによるオフセット・ロボットの運動の誤差等の仮想運用情報をフィードバックする。このシミュレーションとフィードバックにより、仮想ロボット開発システムB側から見ると、あたかも実際にロボットを制御しているように生きた制御プログラムを開発できる。
【0016】
運用情報記録・補正用PC3について説明する。実オフセット・ロボット運用システムAの運用情報記録・補正用PC3は、得られた運用情報から最適な運動を自動的に計算して制御用PC1に送る。そして、制御用PC1は、補正された最適な運動命令でオフセット・ロボットを制御する。また、運用情報記録・補正用PC3は、仮想オフセット・ロボット開発システムBの開発用PC2へ運用情報を送りソフトウェア開発に役立てる。必要があれば、開発用PC2から新たな制御命令や補正された制御命令を受け取る。
【0017】
次に、運用情報データベースについて説明する。実オフセット・ロボット運用システムAでは、オフセット・ロボットの運用情報はデータベース化されており、これを運用情報データベースと呼ぶ。運用情報には、オフセット・ロボットの各関節の運動履歴、オフセット・ロボット構成部品の経年劣化の程度、運動の誤差、消費電力等のデータ含まれている。オフセット・ロボットの構成部品は、ユビキタス技術を用いICタグによって部品毎に管理される。このデータベースは、運用情報記録・補正用PC3でロボットの運用の最適化に使用されるものであって、この運用情報データベースにより、オフセット・ロボットの運用上のノウハウを蓄積することができる。
運用情報データベースの例(アームの運動の誤差)を表3に示す。
【表3】

オフセット・ロボットの運動履歴、部品の経年劣化の程度,運動の誤差,消費電力等の運用情報をデータベース化することで、ロボットの運用上のノウハウを蓄積することができる。
【0018】
次に、本システムにおけるキャリブレーションについて図2を参照しながら説明する。 実ロボット運用システムにおける制御用コンピュータに取り込まれたプログラムに従って実ロボットを特定姿勢に実駆動させると共に、駆動された実ロボットの各部品の指定された位置を測定した実座標におけるその検出位置情報とセンサが検出した回転角の値を前記特定姿勢に対応する本来の設計値に基づいて算出された位置データ及び設定角度情報とを各関節等の部品毎に比較し、各部品毎の誤差が所定値越えた際には前記位置データを前記請求項1又は2に記載のオフセット・ロボット総合管理システムの使用方法。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るオフセットロボットの総合管理システムの全体構成を模式的に示した図である。
【図2】本発明に係るオフセットロボットの総合管理システムによる多関節ロボットの移動位置誤差の診断・修正法の概念ブロック図である。
【図3】オフセット関節ロボットの誤差を説明する図である。
【図4】モジュール化方式の多関節ロボットの電動アクチュエータを示す図である。
【図5】ティーチング・ボックスを使用したオペレータによるキャリブレーションを説明する図である。
【図6】オフセットロボットの機構を説明する図である。
【符号の説明】
【0020】
1 制御用PC 2 開発用PC
3 運用情報記録・補正用PC 4 コントローラ
A 実オフセット・ロボット運用システム
B 仮想オフセット・ロボット開発システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オフセット・ロボットを駆動制御するコントローラと該コントローラにロボット制御信号を出力する制御用コンピュータと運用情報記録・補正用コンピュータとを備えた実ロボット運用システムと、ロボット開発用コンピュータとロボット構成部品データベースとソフトウェア開発部品データベースとを備えた仮想ロボット開発システムとがネットワークにより情報交換可能に接続されたオフセット・ロボット総合管理システム。
【請求項2】
前記運用情報記録・補正用コンピュータは運用情報データベースを備え、前記制御用コンピュータとの間で運用情報と制御補正情報を交換すべく接続されている請求項1に記載のオフセット・ロボット総合管理システム。
【請求項3】
物性・特性情報や形状CAD情報および価格といった使用するロボット構成部品に関する情報を前記ロボット構成部品データベースに蓄積し、前記開発コンピュータによって前記部品を組み合わせたロボットの設計および該ロボットの駆動シミュレーションを設計する請求項1又は2に記載のオフセット・ロボット総合管理システムの使用方法。
【請求項4】
請求項3に記載の使用方法に引き続き、設計された駆動シミュレーションに従って設計されたロボットの駆動シミュレーションを実行し、該設計情報とその駆動動作を開発ルーツとして前記ソフトウェア開発部品データベースに蓄積する請求項1又は2に記載のオフセット・ロボット総合管理システムの使用方法。
【請求項5】
仮想ロボット開発システムにおいて開発されたロボットの駆動シミュレーションプログラムに対応させ、設計された実ロボットをコントローラにより実駆動させる制御プログラムを実ロボット運用システムにおける制御用コンピュータに取り込む請求項1又は2に記載のオフセット・ロボット総合管理システムの使用方法。
【請求項6】
実ロボット運用システムにおける制御用コンピュータに取り込まれたプログラムに従って実ロボットを実駆動させ、駆動された実ロボットの各部品の実座標における位置検出情報と前記駆動プログラムを実ロボット運用情報として運用情報記録・補正コンピュータに蓄積する請求項1又は2に記載のオフセット・ロボット総合管理システムの使用方法。
【請求項7】
実ロボット運用システムにおける制御用コンピュータに取り込まれたプログラムに従って実ロボットを実駆動させると共に、駆動された実ロボットの各部品の実座標における位置検出情報を仮想ロボット開発システムにおける仮想座標情報にフィードバックして修正を加える請求項1又は2に記載のオフセット・ロボット総合管理システムの使用方法。
【請求項8】
オフセット・ロボットの各構成部品にセンサとIDタグを装着し、前記センサからの検出情報を制御用コンピュータに順次取り込み、運用情報記録・補正コンピュータの運用情報データベースに蓄積する請求項1又は2に記載のオフセット・ロボット総合管理システムの使用方法。
【請求項9】
実ロボット運用システムにおける制御用コンピュータに取り込まれたプログラムに従って実ロボットを実駆動させると共に、駆動された実ロボットのアームやジョイント等各部品の実座標における位置検出情報の歪が規定値より大きくなったときにはプログラムに採用する各構成部品の情報を最新のものに置き換えて制御コンピュータでロボットの最適な運動方法計算を再実行し、誤差を自律的に修正していく請求項1又は2に記載のオフセット・ロボット総合管理システムの使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−260834(P2007−260834A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−88688(P2006−88688)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(503361400)独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (453)
【Fターム(参考)】