説明

オリゴフッ素化架橋ポリマーおよびそれの使用

【課題】
【解決手段】 本発明は、オリゴフッ素化架橋ポリマーならびに物品製造および表面コーティングでのそれの使用を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリゴフッ素化架橋ポリマーを特徴とする。一旦硬化すると、オリゴフッ素化架橋ポリマーは、物品製造における基材ポリマーとして、またはフッ素化コーティングとして有用である。
【背景技術】
【0002】
ポリマー材料は、特に医用デバイス、例えば人工臓器、インプラント、医療機器、人工血管、血液ポンプ、人工腎臓、心臓弁、ペースメーカーリード線絶縁体、大動脈内バルーン、人工心臓、透析器および血漿分離器を製造するために広く使用されている。医療機器内で使用されるポリマーは生体適合性でなければならない(例えば、毒性、アレルギー、炎症性反応その他の副作用を生じさせてはならない)。これは生体系と使用される合成材料の界面での物理的、化学的および生物学的プロセスであり、これにより特定の機器の短期および長期の可能な用途が規定される。
【0003】
通常、医用材料の化学的および物理的/機械的特性(すなわち、弾性、応力、延性、靱性、時間依存性変形、強度、疲労、硬度、耐摩耗性および透明性)を含めた生体適合性、生分解性および物理的安定性の正確なプロファイルは大きく変動し得る。非常に多様なポリマー(特に、重縮合物、ポリオレフィン類、ポリビニル類、ポリペプチド類および多糖類など)が、医用機器、薬剤送達媒体およびアフィニティクロマトグラフィー系の製造に用いられている。ポリマーは、いずれか所定の用途でそれが有用となる特徴について選択されるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フルオロポリマーは概して加水分解安定性であり、破壊的な化学環境に対して耐性である。さらに、それは生体適合性であり、医療機器の構成要素として用いられてきた。化学的不活性、低い表面エネルギー、防汚性、疎水性、熱安定性および酸化安定性の組み合わせにより、これら材料の用途は非常に多様なものとなった。フルオロポリマーは、連鎖成長重合反応を介してテトラフルオロエチレンから、そして無限ネットワークのフルオロポリマーを与える段階的成長重合反応を介して他のフッ素化誘導体から製造されてきた。ある種の用途におけるこれらポリマー使用の問題点は、流体ではなく固体材料(例:ポリエーテルグリコール類、イソシアネート類、鎖延長剤および非フッ素化多価アルコール類から製造されるフッ素化ポリエーテルウレタン類)を用いた作業の加工上の限界であり、流体の方が鋳型中または表面上に加えるのが容易である。その問題は、上記のものを特定の用途向けに架橋する必要がある場合に、さらに対処が困難なものとなり、ほとんど対処不可能となる。特定の化学的および物理的特性を有する実用的なフルオロポリマーに対する需要があり、それが必要とされていることで、新たなフッ素化モノマーの分子設計および開発が行われてきた。
【0005】
現在もなお、生物医学分野での用途などの各種用途に必要とされる上記特徴を提供するよう設計することが可能なコポリマー系が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、オリゴフッ素化架橋ポリマーを特徴とする。一旦硬化すると、オリゴフッ素化架橋ポリマーは、物品製造における基材ポリマーとして、またはオリゴフッ素化コーティングとして有用である。本発明のコーティングは、治療薬をカプセル化するのに用いることもできる。
【0007】
従って、第1の態様では本発明は、(i)2以上の架橋領域および(ii)第1の架橋領域に共有結合的に連結された第1の末端および第2の架橋領域に共有結合的に連結された第2の末端を有するオリゴマー部分を含み、前記架橋領域のうちの少なくとも一つがオリゴフッ素化架橋領域である、モノマーを特徴とする。
【0008】
ある種の実施形態において、前記モノマーはさらに、下記式(I)によって記載される。
【化1】

【0009】
式(I)において、オリゴはオリゴマー部分であり、各Dは架橋領域であり、nは1から20、1から15、1から10、1から8または1から5の整数であり、少なくとも一つのDがオリゴフッ素化架橋領域である。
【0010】
他の実施形態において、前記モノマーはさらに、下記式(II)によって記載される。
【化2】

【0011】
式(II)において、オリゴはオリゴマー部分であり、各Dは架橋領域であり、Fはオリゴフルオロ基であり、各リンクA−Fは第1のオリゴ、第2のオリゴおよびFに共有結合した有機部分であり、nは1から20の整数であり、mは1から20の整数であり、少なくとも1個のDがオリゴフッ素化架橋領域である。
【0012】
本発明の組成物で使用可能な架橋領域には、ビニル類、エポキシド類、アジリジン類およびオキサゾリン類など(これらに限定されるものではない)の連鎖成長重合可能な反応性部分などがある。
【0013】
さらに他の実施形態では、前記オリゴフッ素化架橋領域は下記のものから選択される。
【化3】

【0014】
ある種の実施形態において、前記モノマーはさらに、式(III)によって記載される。
【化4】

【0015】
式(III)において、オリゴはオリゴマー部分であり、ビニルはラジカル開始重合を受けることができる不飽和部分を含む架橋領域であり、Fは前記ビニルおよび/または前記オリゴに共有結合的に連結されたオリゴフルオロ基であり、各n、mおよびoは独立に1から5の整数であり、前記モノマーは少なくとも1個のオリゴフッ素化架橋領域を含む。式(III)のモノマーはさらに、下記式(IV)によって記載することができる。
【化5】

【0016】
式(IV)において、オリゴはオリゴマー部分であり、ビニルはラジカル開始重合を受けることができる不飽和部分を含む架橋領域であり、Fはオリゴフルオロ基であり、各リンクAは独立にオリゴ、Fおよびビニルに共有結合した有機部分であり、a、bおよびcは0より大きい整数である。
【0017】
ある種の実施形態において、本発明のモノマーは、そのモノマーに共有結合的に連結された1以上の生理活性剤を含む。
【0018】
関連する態様において本発明は、物品を本発明のモノマーと接触させ、(b)前記モノマーを重合させて架橋コーティングを形成することによる物品のコーティング方法を特徴とする。
【0019】
別の態様において本発明は、(a)本発明のモノマーを重合させて基材ポリマーを形成し、(b)前記基材ポリマーを成形して成形品を形成することによる成形品の製造方法を特徴とする。
【0020】
ある種の実施形態において、前記成形品は、心臓補助装置、カテーテル、ステント、補綴用インプラント、人工括約筋または薬剤送達機器など(これらに限定されるものではない)の埋め込み可能な医療機器である。他の実施形態において、前記成形品は非埋め込み可能医療機器である。
【0021】
本発明のオリゴフッ素化架橋ポリマーが得られる重合段階は、例えば熱、UV照射、光開始剤またはフリーラジカル開始剤を用いて開始することができる。望ましくは、その重合は熱によって開始する。
【0022】
ある種の実施形態では、その重合段階はさらに、本発明のモノマーをビニル基を含む第2の化合物と混合する段階を含む。第2の化合物は、本発明の別のモノマーであるか、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、グリシジルアクリレート、ビニルアクリレート、アリルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2−アミノエチルメタクリレート、グリセロールモノメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−(3−アミノプロピル)メタクリルアミド、クロトンアミド、アリルアルコールまたは1,1,1−トリメチルプロパンモノアリルエーテルなどの非フッ素化ビニル化合物であることができる。
【0023】
本発明はさらに、(a)生理活性剤を本発明のモノマーと接触させ、(b)そのモノマーを重合させてオリゴフッ素化架橋ポリマーを形成することで、ポリマー中に生理活性剤をカプセル封入する方法を特徴とする。
【0024】
本発明はさらに、(i)m個の求核性基(m≧2)で置換されたコアを有する第1の成分;およびn個の求電子性基(n≧2およびm+n>4)で置換されたコアを有する第2の成分を含む組成物であって、前記組成物が少なくとも1個のオリゴフッ素化求核性基または1個のオリゴフッ素化求電子性基を含み、前記第1の成分および前記第2の成分が反応してオリゴフッ素化架橋ポリマーを形成する組成物を特徴とする。
【0025】
ある種の実施形態では、前記第1の成分は、第1の求核性基に共有結合的に連結された第1の末端および第2の求核性基に共有結合的に連結された第2の末端を有するオリゴマー部分を含み、前記第1の求核性基または前記第2の求核性基はオリゴフッ素化求核性基である。他の実施形態において、前記第2の成分は、第1の求電子性基に共有結合的に連結された第1の末端および第2の求電子性基に共有結合的に連結された第2の末端を有するオリゴマー部分を含み、前記第1の求電子性基または前記第2の求電子性基はオリゴフッ素化求電子性基である。
【0026】
さらに他の実施形態では、前記第1の成分または前記第2の成分はさらに下記式(V)によって記載される。
【化6】

【0027】
式(V)において、オリゴはオリゴマー部分であり、Gは求核性基または求電子性基であり、nは1から5の整数であり、少なくとも1個のGがオリゴフッ素化求核性基またはオリゴフッ素化求電子性基である。
【0028】
別の実施形態では、前記第1の成分または前記第2の成分はさらに、下記式(VI)によって記載される。
【化7】

【0029】
式(VI)において、オリゴはオリゴマー部分であり、Gは求核性基または求電子性基であり、Fはオリゴフルオロ基であり、各リンクAは独立にオリゴ、FおよびGに共有結合した有機部分であり、a、bおよびcは0より大きい整数である。
【0030】
上記の態様において、求核性基および求電子性基は、混合時に求核置換反応、求電子付加反応またはその両方を受ける。求核性基は、1級アミン類、2級アミン類、チオール類、アルコール類およびフェノール類から選択することができるが、これらに限定されるものではない。求電子性基は、カルボン酸エステル類、酸塩化物基、無水物、イソシアナト、チオイソシアナト、エポキシド類、活性化ヒドロキシル基、スクシニミジルエステル、スルホスクシニミジルエステル、マレイミドおよびエテンスルホニルから選択することができるが、これらに限定されるものではない。望ましくは、混合物中の求核性基の数は、混合物中の求電子性基の数にほぼ等しい(すなわち、求核性基モル数の求電子性基モル数に対する比率は、約2:1から1:2または約1:1である)。
【0031】
関連する態様において、本発明は、(a)本発明の組成物と接触させ、(b)前記基体上の前記組成物を重合させることで架橋コーティングを形成することで、基体をコーティングする方法を特徴とする。
【0032】
本発明はさらに、(a)本発明の組成物を重合させることで基材ポリマーを形成し、(b)前記基材ポリマーを成形して成形品を形成することによる、成形品の製造方法を特徴とする。
【0033】
ある種の実施形態において、前記基体は、心臓補助装置、カテーテル、ステント、補綴用インプラント、人工括約筋または薬剤送達機器など(これらに限定されるものではない)の埋め込み可能な医療機器である。他の実施形態では、前記成形品は非埋め込み可能医療機器である。
【0034】
上記の方法または組成物のいずれにおいても、オリゴフルオロ基は、下記式を有する基から選択することができるが、これらに限定されるものではない。
【化8】

【0035】
式中、XはCHCH−、(CHCHO)、CHCH(OD)CHO−、CHCH(CHOD)O−またはD−から選択され、Dは連鎖成長重合可能な部分であり、pは2から20の整数であり、nは1から10の整数である。
【0036】
上記の方法または組成物のいずれにおいても、ビニル基は、メチルアクリレート、アクリレート、アリル、ビニルピロリドンおよびスチレン誘導体から選択することができるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
上記の方法または組成物のいずれにおいても、前記オリゴは、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアミド、ポリアルキレン(aklylene)オキサイド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリラクトン、ポリシリコーン、ポリエーテルスルホン、ポリペプチド、多糖類、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイドおよびこれらの組み合わせから選択することができるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
上記の方法または組成物のいずれにおいても、前記生理活性剤は、タンパク質、ペプチド、炭水化物、抗生物質、抗増殖剤、ラパマイシンマクロリド類、鎮痛薬、麻酔薬、血管新生阻害剤、抗血栓剤、血管作用薬、抗凝血剤、免疫調節薬、細胞傷害薬、抗ウイルス薬、抗体、神経伝達物質、向精神薬、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ビタミン類、脂質およびこれらのプロドラッグから選択することができるが、これらに限定されるものではない。生理活性剤は、本明細書に記載のいずれかの生理活性剤であることができる。
【0039】
本発明は、ステント表面で重合反応を開始して重合コーティングを形成する段階を含むステントのコーティング方法も特徴とする。ある種の実施形態では、前記重合コーティングは、オリゴフッ素化架橋ポリマーコーティングなどの架橋ポリマーコーティングである。その重合反応は、例えば連鎖成長重合反応、求核置換反応または求電子付加反応であることができる。ある種の実施形態において、前記方法は、(a)前記ステントを本発明のモノマーまたは本発明の組成物と接触させる段階、ならびに(b)前記モノマーを重合させるか、前記組成物を重合させて架橋コーティングを形成する段階を有する。
【0040】
上記方法のいずれにおいても、コーティングされていない埋め込み可能医療機器をコーティングして、コーティングされた埋め込み可能医療機器を製造することができ、そのコーティングされた埋め込み可能医療機器は、動物に埋め込んだ場合に、コーティングされていない埋め込み可能医療機器と比較してタンパク質沈着が少なく、フィブリノゲン沈着が少なく、血小板沈着が少なく、または炎症性細胞付着が少ない。
【0041】
「基材ポリマー」とは、約2.41から約68.9MPa(約350から約10000psi)の引張強度、約5%、25%、100%もしくは300%から約1500%の破断点伸び、約5から約100ミクロンの非担持厚および約1から約100ミクロンの担持厚を有するポリマーを意味する。
【0042】
「生理活性剤」とは、本発明のオリゴフッ素化架橋ポリマー中にカプセル封入され、特定の部位(例:医療機器を埋め込む部位)に放出または送達可能な天然もしくは人工的に誘導された化合物を意味する。生理活性剤には、例えばペプチド類、タンパク質類、合成有機分子、天然有機分子、核酸分子およびそれらの成分などがあり得る。望ましくは、生理活性剤は、罹患組織の部位に送達された時に植物もしくは動物の治療的処置に有用な化合物である。あるいは生理活性剤は、表面に非治療的機能を与えるために選択することができる。そのような薬剤には、例えば農薬、殺菌剤、殺真菌剤、香味剤および染料などがある。
【0043】
本明細書で使用される場合、「共有結合的に連結」とは、1以上の共有結合によって分離された部分を指す。例えば、オリゴフルオロ基が架橋領域に共有結合的に連結されている場合、連結されているものには、単結合によって分離されている部分ならびに例えば両方の部分が共有結合的に結合しているリンクA部分によって分離された両方の部分などがある。
【0044】
本明細書で使用される場合、「リンクA」とは、架橋領域、オリゴ部分およびオリゴフルオロ基を共有結合的に連結することができるカップリング部分を指す。代表的には、リンクA分子は、40から700の範囲の分子量を有する。好ましくは、リンクA分子は、官能化されたジアミン類、ジイソシアネート類、ジスルホン酸類、ジカルボン酸類、二酸塩化物および二無水物の群から選択され、その官能化された成分はオリゴフルオロ基またはビニル基の化学結合にアクセスされる2級(secondary)官能性化学部分を有する。そのような2級基には、例えばエステル類、カルボン酸塩類、スルホン酸塩類、ホスホン酸塩類、チオール類、ビニル類および2級アミン類などがある。オリゴ中間体上の末端ヒドロキシル類、アミン類またはカルボン酸類は、ジアミンと反応してオリゴ−アミドを形成したり、ジイソシアネートと反応してオリゴ−ウレタン、オリゴ−尿素、オリゴ−アミドを形成したり、ジスルホン酸と反応してオリゴ−スルホネート、オリゴ−スルホンアミドを形成したり、ジカルボン酸と反応してオリゴ−エステル、オリゴ−アミドを形成したり、二酸塩化物と反応してオリゴ−エステル、オリゴ−アミドを形成したり;ジアルでヒドと反応してオリゴ−アセタールもしくはオリゴ−イミンを形成することができる。留意すべき点として、上記のいずれの場合においても、例えばジアミンの1級基などのリンクAの官能基の一つを別の官能基に置き換えて、リンクAが1級および2級の官能化学を有するヘテロ官能性分子(1級基としてのアミンおよびカルボン酸など)となるようにすることも可能であると考えられる。
【0045】
「オリゴ」または「オリゴ部分」とは、フッ素化されていない比較的短い繰り返し単位もしくは複数の繰り返し単位であって、約50モノマー単位数が約50未満であり、分子量が10000未満であるが、好ましくは<5000、最も好ましくは50から5000ダルトンもしくは100から5000ダルトンであるものを意味する。好ましくは、オリゴは、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアミド類、ポリアルキレンオキサイド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリラクトン、ポリシリコーン、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリビニル、ポリペプチド、多糖類;ならびにそれらのエーテルおよびアミン連結部分からなる群から選択される。あるいは、オリゴ部分は、エチレンジアミンのような小さいものである。
【0046】
「オリゴフッ素化求核性基」とは、オリゴフルオロ基に共有結合的に連結され、25、22、18または15個より少ない共有結合によって分離された求核剤を意味する。本発明の方法および組成物で使用可能な求核剤には、アミン類およびチオール類などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
「オリゴフッ素化求電子性基」とは、オリゴフルオロ基に共有結合的に連結され、25、22、18または15個より少ない共有結合によって分離された求電子剤を意味する。本発明の方法および組成物で使用可能な求電子剤には、活性化酸、エポキシ基およびイソシアネートなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
「オリゴフッ素化架橋領域」とは、オリゴフルオロ基に共有結合的に連結され、25、22、18または15個より少ない共有結合によって分離された架橋領域を意味する。本発明のオリゴフッ素化架橋ポリマーは、少なくとも1個のオリゴフッ素化架橋領域を含むモノマーから形成することができる。
【0049】
「オリゴフッ素化架橋ポリマー」とは、オリゴマー部分およびペンダントオリゴフルオロ基を含む架橋ポリマーを意味する。
【0050】
「架橋領域」とは、連鎖成長重合反応を介して共有結合連結を形成することができる部分を意味する。連鎖成長重合反応は、下記の式で示される、不飽和モノマー分子が加わって成長するポリマーとなる反応である。
【化9】

【0051】
架橋領域は、ラジカル開始連鎖重合(すなわち、ポリビニルを生じるビニル基の重合で)、カチオン連鎖成長重合反応(すなわち、ポリエーテル類を生じるエポキシドの重合およびアシル化ポリアミンを生じるオキサゾリン類の重合などでのカチオン性開環重合)およびアニオン連鎖成長重合反応(すなわち、ポリエーテルを生じるエポキシドの重合およびポリアミンを生じるN−メタンスルホニル−2−メチルアジリジンの重合などでのアニオン性開環重合)を受けるように設計されている。
【0052】
「ビニルモノマー」とは、ラジカル開始重合を受けることができる2以上のビニル基に共有結合的に連結されたオリゴ部分であって、少なくとも1個のビニル基がオリゴフッ素化架橋領域内に含まれているものを意味する。
【0053】
本発明の他の特徴および利点は、下記の詳細な説明、図面および特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】化合物2の加工能力を示す、打ち出した引張試験品を用いた化合物2のUV硬化フィルムの画像である。
【図2】化合物2の加工能力を示す化合物2の熱硬化フィルムの画像である。
【図3】化合物2から物品を作製する方法を示す化合物2の熱硬化成形品の画像である。
【図4】化合物6の加工能力を示す、化合物6の熱硬化フィルムの画像である。
【図5】最終製品の特性が影響を受けないままであることを示す、トルエン抽出の前後の化合物6の熱硬化フィルム2個のSEM画像である。
【図6】化合物12の加工能力を示す化合物12の熱硬化フィルムの画像である。
【図7】化合物2および化合物6の加工能力を示す、化合物2および化合物6の熱硬化フィルムの画像である。
【図8】化合物6および化合物8の加工能力を示す化合物6および化合物8の熱硬化フィルムの画像である。
【図9】化合物6の加工能力を示す化合物6およびFEO1の熱硬化フィルムの画像である。
【図10】化合物6の加工能力を示す化合物6およびHEMAの熱硬化フィルムの画像である。
【図11】少ない網目形成での良好な被覆を示す、熱硬化した化合物2でコーティングされたステントの画像である。
【図12】少ない網目形成での良好な被覆を示す、熱硬化した化合物2でコーティングされた空気の入ったステントの画像である。
【図13】少ない網目形成での良好な被覆を示す、熱硬化した化合物6でコーティングされたステントの画像である。
【図14】最終製品の特性が影響を受けないままであることを示す、トルエン抽出された熱硬化した化合物6でコーティングされたステントの画像である。
【図15】最終製品の特性が影響を受けないままであることを示す、緩衝液で抽出された熱硬化した化合物6でコーティングされたステントの画像である。
【図16】少ない網目形成での良好な被覆を示す、熱硬化した化合物8でコーティングされたステントの画像である。
【図17】少ない網目形成での良好な被覆を示す、熱硬化した化合物12(トルエン溶媒)でコーティングされたステントの画像である。
【図18】少ない網目形成での良好な被覆を示す、熱硬化した化合物12(トルエン:THF溶媒)でコーティングされたステントの画像である。
【図19】少ない網目形成での良好な被覆を示す、熱硬化した化合物2および化合物6でコーティングされたステントの画像である。
【図20】少ない網目形成での良好な被覆を示す、熱硬化した化合物6および化合物8でコーティングされたステントの画像である。
【図21】少ない網目形成での良好な被覆を示す、熱硬化した化合物6およびPTXでコーティングされたステントの画像である。
【図22】化合物2からのASAの放出を示す、10重量%のASAを含む化合物2のUV硬化フィルムからのASA放出のプロットである。
【図23】化合物2から放出される能力を示す、25重量%のASAを含む化合物2のUV硬化フィルムからのASA放出のプロットである。
【図24】化合物2からのイブプロフェンの放出を示す、化合物2の熱硬化フィルムからのイブプロフェン放出のプロットである。
【図25】化合物6から薬剤を放出する能力を示す、化合物6の熱硬化フィルムからのヒドロコルチゾンおよびデキサメタゾン放出のプロットである。
【図26】良好な被覆を示す、1重量%ヒドロコルチゾンを含む熱硬化した化合物6でコーティングされたステントの画像である。
【図27】細胞接着プロファイルにおける有意な低下を示す、PP上に鋳造された化合物2、6、8および12の硬化フィルムに対するU937の接着のプロットである。
【図28】細胞接着プロファイルにおける大幅な低下を示す、ステンレス上に鋳造された化合物2、6、8および12の硬化フィルムに対するU937の接着のプロットである。
【図29】血小板接着およびフィブリノゲン吸着における有意な低下を示す、血小板およびフィブリノゲンの化合物2および6の硬化フィルムとの相互作用のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明は、オリゴフッ素化架橋ポリマーを特徴とする。一旦硬化すると、前記オリゴフッ素化架橋ポリマーは、物品製造における基材ポリマーとして、またはオリゴフッ素化コーティングとして有用である。ある種の実施形態において、前記オリゴフッ素化架橋ポリマーは、連鎖成長および段階的成長の両方の重合反応の組み合わせから形成される。本発明のコーティングを用いて、治療薬をカプセル封入することもできる。
【0056】
本発明のオリゴフッ素化架橋ポリマーは、連鎖成長重合反応、求核置換反応および/または求電子付加反応を介して製造することができる。オリゴフッ素化架橋ポリマーが製造される方法とは無関係に、得られるポリマーには、ペンダントオリゴフルオロ基、オリゴマー部分および適宜にリンクA基(各種成分を共有結合的に連結するのに用いられる)が含まれる。
【0057】
オリゴフッ素化架橋ポリマーの品質および性能は、化学組成および重合段階の硬化特性に応じて変動し得る。望ましくは、前駆体モノマー材料は、高い反応性を示すことで、効率的な硬化および高い硬化反応速度が得られるものである。本発明のオリゴフッ素化架橋ポリマーは、非常に多様な所望の機械特性、放出プロファイル(生理活性剤が組み込まれている場合)ならびにタンパク質と細胞の低い相互作用(例えば、イン・ビボ用途に用いられる場合)となるように設計することができる。部分的には、この課題は3次元網目構造の形成を伴い、それを規定するものである。実施例中で示されるように、前記特性は、オリゴフッ素化前駆体の化学組成(例えば、オリゴ部分または内部での架橋領域の位置の変更)および重合条件(例えば、添加剤の包含またはオリゴフッ素化前駆体の濃度変更による架橋密度の変更による)に応じて変動し得る。オリゴフッ素化架橋ポリマーの特性を制御することが可能な範囲が、本発明の利点の一つである。
【0058】
オリゴフルオロ基
本発明のモノマーは、少なくとも1個のオリゴフルオロ基を含む。代表的には、前記オリゴフルオロ基(F)は、100から1500の範囲の分離量を有し、相当するパーフルオロアルキル基とリンクA部分との反応により、本発明のオリゴマーに組み込まれる。望ましくは、Fは、一般式CF(CFCHCH、(CFCF(CFCHCHまたは(CFC(CFCHCH(pは2から20、好ましくは2から8である)ならびにCF(CF(CHCHO)、(CFCF(CF(CHCHO)または(CFC(CF(CHCHO)(nは1から10であり、mは1から20、好ましくは1から8である)の基からなる群から選択される。Fは、オリゴフッ素化アルコールのリンクAまたはオリゴ部分との反応によって、モノマー中に組み込むことができる。Fは代表的には、単一のフルオロ尾部を含むが、この特徴に限定されるものではない。本発明で使用されるオリゴマーフルオロ−アルコールの一般式は、H−(OCHCH−(CF−CFであり、nは1から10の範囲であることができるが、好ましくは1から4の範囲であり、mは1から20の範囲であることができるが、好ましくは1から8の範囲である。mと比較したnの選択についての一般的指針は、mが2n以上であることで、(OCHCH部分が水への曝露後に表面から(CF−CFを追い出す可能性を小さくすべきであるというものであり、それは、前者がフルオロ尾部より親水性が高く、重合型における表面支配度についてフルオロ尾部と競合するためである。(OCHCH部分の存在は、それによってフルオロ尾部と基体との間に非常に可動性の高いスペーサー部分が提供されることから、オリゴフルオロ領域内で重要な役割を有するものと考えられている。このスペーサーは、オリゴフッ素化表面を、例えば水系媒体に対して効果的に露出する。
【0059】
架橋を受けるための反応性部分を組み込むオリゴフルオロ基の例が表1に示してある。提供されている例には、連鎖成長重合を受けるためのビニル基などがある。求核剤または求電子剤を組み込む同様のオリゴフルオロ基は、求核置換反応および/または求電子付加反応を介して作られるオリゴフッ素化架橋ポリマーの製造で使用するために製造することができる。
【表1】

【0060】
オリゴマー部分
本発明のモノマーには、少なくとも一つのオリゴマー部分が含まれる。そのオリゴ部分は、2以上の架橋領域および少なくとも1個のオリゴフルオロ基に共有結合的に連結されている。オリゴ部分は、例えばポリテトラメチレンオキサイド、ポリカーボネート、ポリシロキサン、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド、ポリアミド、多糖類またはいずれか他のオリゴマー鎖を含むことができる。オリゴ部分は、リンクA、架橋領域および/またはオリゴフルオロ基とのカップリングのための2以上のヒドロキシル、チオール、カルボン酸、2酸塩化物またはアミドを含むことができる。有用なオリゴ部分には、ポリカーボネート、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン;ポリエチレン−ブチレンコポリマー;ポリブタジエン類;ポリエステル;ポリウレタン/スルホンコポリマー;ポリウレタン、オリゴペプチド(ポリアラニン、ポリグリシンまたはアミノ酸のコポリマー)およびポリ尿素などのポリアミド;ポリアルキレンオキサイドおよび具体的にはポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンオキサイドおよびポリテトラメチレンオキサイドの直鎖ジアミンまたはジオール誘導体などがあるが、これらに限定されるものではない。オリゴ部分の平均分子量は、50から5000または100から5000で変動可能であるが、ある種の実施形態では、2500ダルトン未満である。オリゴマー成分は、反復単位または複数の反復単位に関しては長さは比較的短いものであることができ、通常は20モノマー単位である。
【0061】
リンクA
本発明のモノマーは、1以上のリンクA基を含んでいても良い。代表的には、リンクA基は40から700Daの範囲の分子量を有し、オリゴ部分、Fおよび/または架橋領域のカップリングを可能とするための複数の官能基を有する。リンクA基の例には、リジンジイソシアナトエステル(例:リジンジイソシアナトメチルエステル);2,5−ジアミノベンゼンスルホン酸;4,4′−ジアミノ−2,2′−ビフェニルジスルホン酸;1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン;およびN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロパンスルホネートなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
架橋領域
架橋領域は、連鎖成長重合を受けることができる多様な異なる部分から選択することができる。例えば、架橋領域は、ラジカル開始連鎖重合(すなわち、ポリビニルを生じるビニル基の重合で)、カチオン連鎖成長重合反応(すなわち、ポリエーテル類を生じるエポキシドの重合およびアシル化ポリアミンを生じるオキサゾリン類の重合などでのカチオン性開環重合)およびアニオン連鎖成長重合反応(すなわち、ポリエーテルを生じるエポキシドの重合およびポリアミンを生じるN−メタンスルホニル−2−メチルアジリジンの重合などでのアニオン性開環重合)を受けるように設計することができる。
【0063】
多くの異なる連鎖成長重合手法が当業界では公知であり、本発明の方法および組成物に含めることができる。
【0064】
本発明のオリゴフッ素化架橋ポリマーは、少なくとも1個のオリゴフッ素化架橋領域を含むモノマーから形成することができる。例えば、そのようなモノマーは、リンクAまたはオリゴ部分内で段階的成長の結果得られる官能基(ウレタン、尿素、アミド、エステルなど)に隣接している少なくとも1個のペンダントオリゴフルオロ鎖(F)および少なくとも2個の未反応ペンダント架橋領域を含むことができる。架橋領域およびFは、リンクAを介して非フッ素化オリゴ部分に共有結合的に連結されていることができるか、Fは架橋領域に直接連結されていて、それらがともにリンクAを介してオリゴ部分に共有結合的に連結されていることができる。リンクAおよびオリゴ部分の両方を、モノマー中に複数のF基が存在する、F基の所定の空間分布を提供するように設計することができる。この分布は同時に、最終ポリマーの係数、タンパク質−細胞相互作用および生化学的安定性に影響する決定的なパラメータとして働く。
【0065】
ある種の実施形態において、本発明のモノマーは、少なくとも2個のビニル基を含む。そのビニル基は、ビニル基を生理活性剤、リンクAおよび/またはオリゴに共有結合的に連結するのに用いられる少なくとも1個の官能基(例:カルボン酸、ヒドロキシル、アミンまたはチオール)を含むように誘導体化される。本発明の方法および組成物で有用なビニル基には、メタクリレート、アクリレート、環状もしくは直鎖ビニル部分ならびにアリルおよびスチレン含有部分などがあるが、これらに限定されるものではなく、代表的には40から2000の範囲の分子量を有する。
【0066】
オリゴフッ素化求核性基および求電子性基
本発明では、反応性基を有する少なくとも2個の成分を含む組成物が提供され、その官能基は成分間の反応、すなわちオリゴフッ素化架橋ポリマーを形成する架橋を可能とするように選択される。各成分は、反応性基で置換されたコアを有する。代表的には、その組成物は、求核性基で置換されたコアを有する第1の成分および求電子性基で置換されたコアを有する第2の成分を含む。前記組成物は、少なくとも1個のオリゴフッ素化求核性基または少なくとも1個のオリゴフッ素化求電子性基を含む。
【0067】
架橋ポリマーを形成するためには、第1および第2の成分のそれぞれに存在する複数の反応性基があることが好ましい。例えば、一方の成分はm個の求核性基で置換されたコアを有することができ(m≧2である)、他方の成分はn個の求電子性基(n≧2およびm+n>4)で置換されたコアを有する。
【0068】
反応性基は、求電子性基および求核性基であり、それは求核置換反応、求電子付加反応またはその両方を受ける。「求電子性」という用語は、求核攻撃を受けやすい、すなわち進入してくる求核性基との反応を受けやすい反応性基を指す。本明細書における求電子性基は、正電荷を有するか、電子不足状態であり、代表的には電子不足状態である。「求核性」という用語は、電子豊富であり、反応性部位として作用する非共有電子対を有し、正電荷を有するか電子不足状態の部位と反応する反応性基を指す。
【0069】
本発明での使用に好適な求核性基の例には、1級アミン類、2級アミン類、チオール類、フェノール類およびアルコール類などがあるが、これらに限定されるものではない。ある種の求核性基は、塩基で活性化して求電子性基と反応できるようにする必要がある。例えば、求核性のスルフヒドリルおよびヒドロキシル基が多官能性化合物に存在する場合、その化合物は水系塩基と混合してプロトンを脱離させ、チオレートもしくはヒドロキシレートアニオンを提供して、求電子性基と反応できるようにしなければならない。その塩基を反応に関与させることが望ましいのでなければ、非求核性の塩基が好ましい。一部の実施形態において、前記塩基は緩衝溶液の成分として存在させても良い。
【0070】
多官能性化合物上にある求電子性基の選択は、具体的な求核性基との反応が可能となるように行う必要がある。従って、X反応性基がアミノ基である場合、Y基はアミノ基と反応するように選択される。同様に、X反応性基がスルフヒドリル部分である場合、相当する求電子性基はスルフヒドリル−反応性基などである。本発明での使用に好適な求電子性基の例には、カルボン酸エステル類、酸塩化物基、無水物、イソシアナト、チオイソシアナト、エポキシド、活性化ヒドロキシル基、スクシニミジルエステル、スルホスクシニミジルエステル、マレイミドおよびエテンスルホニルなどがあるが、これらに限定されるものではない。カルボン酸基は代表的には、求核剤と反応するためには活性化しなければならない。活性化は、多様な形で行うことができるが、多くの場合、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)またはジシクロヘキシル尿素(DHU)などの脱水剤存在下での好適なヒドロキシル含有化合物との反応が関与する。例えば、カルボン酸は、DCCの存在下にアルコキシ置換N−ヒドロキシ−コハク酸イミドまたはN−ヒドロキシスルホコハク酸イミドと反応して、反応性求電子性基であるN−ヒドロキシコハク酸イミドエステルおよびN−ヒドロキシスルホコハク酸イミドエステルをそれぞれ形成することができる。カルボン酸は、アシルクロライド(例:塩化アセチル)などのアシルハライドとの反応によって活性化されて、反応性無水物基を提供することもできる。別の例においてカルボン酸は、例えば塩化チオニルまたは交換反応が可能なアシルクロライドを用いて、酸塩化物基に変換することができる。
【0071】
通常、各成分の濃度は約1から50重量%、一般には約2から40重量%の範囲である。好ましい濃度は、成分の種類(すなわち、分子コアおよび反応性基の種類)、それの分子量および得られる3次元マトリクスの末端用途などの多くの要素によって決まる。例えば、より高濃度の成分の使用または高度に官能化された成分の使用によって、より強固に架橋された網目構造が形成され、例えばゲルなどのより堅くより堅牢な組成物が製造される。通常、3次元マトリクスの機械特性は、そのマトリクス(またはマトリクス形成成分)を付与する表面の機械特性と同様のものとすべきである。従って、マトリクスを整形外科用途に用いる場合、そのゲルマトリクスは比較的堅いものであるべきであり、例えば堅いゲルであるが、例えば組織増大でのようにマトリクスを軟組織で用いる場合、ゲルマトリクスは比較的柔軟であるべきであり、例えば軟ゲルである。
【0072】
オリゴフッ素化架橋ポリマー形成のさらなる詳細については、実施例に提供されている。
【0073】
本発明の方法および組成物を用いてコーティング可能な基体には、特には木材、金属、セラミック、プラスチック、ステンレス、繊維およびガラスなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
合成
本発明のオリゴフッ素化架橋ポリマーは、例えば下記の図式1から4に記載の方法に従って製造可能なモノマーから合成される。図式1から4において、オリゴはオリゴマー部分であり、リンクAは本明細書で定義の連結要素であり、バイオは生理活性剤であり、Fはオリゴフルオロ基であり、Dは連鎖成長重合反応、求核置換反応および/または求電子付加反応を受けることができる部分である。
【0075】
図式1
【化10】

【0076】
図式2
【化11】

【0077】
図式3
【化12】

【0078】
図式4
【化13】

【0079】
これらモノマーは、例えば多官能性リンクA基、多官能性オリゴ部分、単官能性F基および前記オリゴマー部分に共有結合的に連結されていることができる少なくとも1個の官能性成分を有する架橋領域を用いて合成することができる。
【0080】
合成の第1段階は、所望の試薬組み合わせを用いる古典的なウレタン/尿素反応によって行うことができる。しかしながら、各種成分を組み立てる順序は、いずれか特定のモノマーで変動可能である。
【0081】
さらなる合成上の詳細は実施例で示す。
【0082】
オリゴフッ素化架橋重合コーティング
本発明のオリゴフッ素化架橋ポリマーを用いて、安定である(例えば、表面から容易には浸出しない)表面上での、ペンダント配置での、単分散したオリゴフルオロ基の離散型分布 (discrete distribution) を提供するコーティングを形成することができる。
【0083】
本発明のコーティングは、ビニルモノマーなどのオリゴフッ素化架橋領域の重合により、または多官能性求核剤のオリゴフッ素化求電子剤との反応もしくは多官能性求電子剤のオリゴフッ素化求核剤との反応によって形成することができる。
【0084】
本発明のコーティングは、高撥水性、低屈折率、防汚性を与え、汚れを低減し、生体適合性を高めることができる。血液が滞留する機器において、前記コーティングは、埋め込み後に機器表面での血塊形成を低減することができる。
【0085】
前記モノマーは、単独で(例えば、液体として)、希釈剤(例えば、アセトン、メタノール、エタノール、エーテル類、ヘキサン、トルエンもしくはテトラヒドロフラン)存在下に、オリゴフッ素化前駆体と組み合わせて表面に付与することができる。モノマーを表面に付与する好適な方法には、特にはスピンコーティング、噴霧、ロールコーティング、浸漬、ブラシかけおよびナイフコーティングなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
本発明のモノマーの重合は、使用される反応性部分の性質に応じて、光開始剤またはフリーラジカル熱開始剤の存在下に、UV照射、電子ビームまたは加熱によって行うことができる。多くの光エネルギー源を用いることができ、代表的なエネルギー源は紫外線(UV)照射である。代表的なUVランプはランプ出力400W/インチのランプである(Honle UV America社から購入)。そのランプは、手製の箱(長さ26.5cm、幅26.5cmおよび長さ23.0cm)の上面に固定されている。その箱は、空気または窒素雰囲気を用いて硬化環境を制御するよう設計されている。
【0087】
本発明の組成物および方法を用いて、非常に多様な物品をコーティング可能である。例えば、医療機器などの体液と接触する物品をコーティングして、それの生体適合性を向上させることができる。その医療機器には、カテーテル、ガイドワイヤー、血管ステント、微小粒子、導線(electronic leads)、プローブ、センサー、薬剤貯留部、経皮貼付剤、血管貼付剤、血液バッグおよび管などがあるが、これらに限定されるものではない。その医療機器は、埋め込み機器、経皮機器または皮膚機器であることができる。埋め込み機器には、患者に完全に埋め込まれた、すなわち完全に体内に入った物品などがある。経皮機器には、皮膚を貫通することで、身体外部から身体内に延在する品目などがある。皮膚機器は表面で使用される。埋め込み機器には、ペースメーカーなどの補綴具、ぺーシングリード線などの導線、除細動器、人工心臓、補助人工心臓、乳房インプラントなどの解剖学的再建補綴具、人工心臓弁、心臓弁ステント、心膜パッチ、手術用パッチ、冠動脈ステント、血管移植片、血管および構造ステント、血管もしくは心血管シャント、生体導管、綿球、縫合糸、環状形成リング、ステント、ステープル、有弁グラフト、創傷治癒用皮膚グラフト、整形外科用脊椎インプラント、整形外科用ピン、子宮内デバイス、尿ステント、顎顔面再形成プレーティング、歯科用インプラント、眼内レンズ、クリップ、胸骨ワイヤ、骨、皮膚、靱帯、腱およびその組合せなどがあるが、これらに限定されるものではない。経皮機器には、各種のカテーテル、カニューレ、胸管などの排液管、鉗子、開創器、針および手袋などの手術器具、およびカテーテルカフなどがあるが、これらに限定されるものではない。皮膚機器には、火傷包帯、創傷包帯およびブリッジサポートおよびつなぎ部品などの歯科用金具などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
血管ステントなどの埋め込み可能医療機器のコーティングは、非常に興味深いものである。ステントは一般に、狭窄の治療に用いられる。概してステントは、バルーンカテーテル上に圧着され、閉塞した冠動脈に挿入され、バルーンを膨らませることで、ステントを所望の直径まで拡張させることにより、閉塞した動脈血管を開いて血流を起こさせる。しかしながら、この配置プロセス中に、動脈壁への損傷によって、血管壁の弾性反跳が生じる可能性があり、それは初期の再狭窄の特徴である。ステントコーティングは、配置後再狭窄を抑制するための生理活性剤送達用プラットホームを提供する。本発明の方法および組成物を用いると、溶媒に溶解したポリマーおよび混合物中に分散した生理活性剤を用いて液剤を製剤することで、ステント上への薬剤送達が行われる。溶液をステント上に噴霧すると、溶媒が蒸発して、ステント表面上に、ポリマーマトリクスに包埋された薬剤を含むポリマーが残る。あるいは、生理活性剤をオリゴフッ素化前駆体に共有結合させてから重合を行う。得られるオリゴフッ素化架橋ポリマーに共有結合した生理活性剤の放出は、分解性連結基(例えば、エステル連結部)を用いて生理活性剤を結合させることで制御することができる。
【0089】
あるいは、本発明のコーティングは、屋外用途(デッキおよびフェンス)用の木材、ボート、船、ファブリック、電子表示装置、手袋および衣料に利用することが可能である。
【0090】
挿入オリゴフッ素化架橋ポリマーに一つの明瞭な特徴は、機器表面上で重合段階を開始して、皮膚ラップと同様の連続的なポリマーコーティングを生じる能力である。
【0091】
成形品
本発明のオリゴフッ素化架橋ポリマーから物品を形成することができる。例えば、オリゴフッ素化前駆体を、反応性射出成形を用いて開始剤と組み合わせることで、成形品を製造することができる。
【0092】
本発明の組成物を用いて、いかなる成形品も製造することができる。例えば、本明細書に記載の組成物を用いて、医療機器などの体液との接触に好適な物品を製造することができる。接触期間は、例えば手術器具のように短い可能性があるか、インプラントなどの長期使用品である場合もある。医療機器には、カテーテル、ガイドワイヤー、血管ステント、微小粒子、導線(electronic leads)、プローブ、センサー、薬剤貯留部、経皮貼付剤、血管貼付剤、血液バッグおよび管などがあるが、これらに限定されるものではない。その医療機器は、埋め込み機器、経皮機器または皮膚機器であることができる。埋め込み機器には、患者に完全に埋め込まれた、すなわち完全に体内に入った物品などがある。経皮機器には、皮膚を貫通することで、身体外部から身体内に延在する品目などがある。皮膚機器は表面で使用される。埋め込み機器には、ペースメーカーなどの補綴具、ぺーシングリード線などの導線、除細動器、人工心臓、補助人工心臓、乳房インプラントなどの解剖学的再建補綴具、人工心臓弁、心臓弁ステント、心膜パッチ、手術用パッチ、冠動脈ステント、血管移植片、血管および構造ステント、血管もしくは心血管シャント、生体導管、綿球、縫合糸、環状形成リング、ステント、ステープル、有弁グラフト、創傷治癒用皮膚グラフト、整形外科用脊椎インプラント、整形外科用ピン、子宮内デバイス、尿ステント、顎顔面再形成プレーティング、歯科用インプラント、眼内レンズ、クリップ、胸骨ワイヤ、骨、皮膚、靱帯、腱およびその組合せなどがあるが、これらに限定されるものではない。経皮機器には、各種のカテーテル、カニューレ、胸管などの排液管、鉗子、開創器、針および手袋などの手術器具、およびカテーテルカフなどがあるが、これらに限定されるものではない。皮膚機器には、火傷包帯、創傷包帯およびブリッジサポートおよびつなぎ部品などの歯科用金具などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0093】
生理活性剤
生理活性剤は、本発明のコーティングおよび物品内に封入することができる。生理活性剤で処理すべき対象品をコーティングしてからモノマーの付与および重合を行うか、モノマーと生理活性剤をともに混合し、その混合物を物品表面に付与してから重合を行うことで封入を行うことができる。生理活性剤には、治療薬、診断薬および予防薬などがある。それらは天然化合物、合成有機化合物または無機化合物であることができる。本発明の方法および組成物で用いることが可能な生理活性剤には、タンパク質、ペプチド、炭水化物、抗生物質、抗増殖剤、ラパマイシンマクロライド、鎮痛剤、麻酔剤、抗血管新生剤、血管作用薬、抗凝血薬、免疫調節薬、細胞傷害薬、抗ウイルス剤、ターブログレル(terbrogrel)およびラマトロバン(ramatroban)などの抗血栓剤、抗体、神経伝達物質、向精神薬、オリゴヌクレオチド、タンパク質、脂質、および本明細書に記載のいずれかの生理活性剤などがあるが、それらに限定されるものではない。
【0094】
治療薬の例には、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、カルシトニン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、毛様体神経栄養因子および副甲状腺ホルモンなどがある。他の具体的な治療剤には、副甲状腺ホルモン関連ペプチド、ソマトスタチン、テストステロン、プロゲステロン、エストラジオール、ニコチン、フェンタニール、ノルエチステロン、クロニジン、スコポラミン(scopolomine)、サリチレート、サルメテロール(salmeterol)、ホルメテロール(formeterol)、アルベテロール(albeterol)、バリウム(valium)、ヘパリン、デルマタン、クロム鉄A、エリスロポエチン、ジエチルスチルベストロール、リュープロン(lupron)、エストロゲンエストラジオール、アンドロゲンハロテスチン(androgen halotestin)、6−チオグアニン、6−メルカプトプリン、ゾロデックス(zolodex)、タキソール、リシノプリル(lisinopril)/ゼストリル(zestril)、ストレプトキナーゼ、アミノ酪酸、止血用アミノカプロン酸、パルロデル(parlodel)、タクリン、ポタバ(potaba)、アジペックス(adipex)、メムボラル(memboral)、フェノバルビタール、インスリン、γグロブリン、アザチオプリン、パペイン(papein)、アセトアミノフェン、イブプロフェン、アセチルサリチル酸、エピネフリン、フルクロロニド、オキシコドンパーコセット(oxycodone percoset)、ダルガン(dalgan)、フレニリンブタビタール(phreniline butabital)、プロカイン、ノボカイン、モルヒネ、オキシコドン、アロキシプリン、ブロフェナク(brofenac)、ケトプロフェン、ケトロラク(ketorolac)、ヘミン、ビタミンB−12、葉酸、マグネシウム塩、ビタミンD、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンA、ビタミンU、ビタミンL、ビタミンK、パントテン酸、アミノフェニル酪酸、ペニシリン、アシクロビル、オフラキサシン(oflaxacin)、アモキシシリン、トブラマイシン、レトロビル(retrovior)、エピビル(epivir)、ネビラピン(nevirapine)、ゲンタマイシン、ドラセフ(duracef)、アブレセット(ablecet)、ブトキシカイン(butoxycaine)、ベノキシネート、トロペンジル(tropenzile)、ジポニウム塩(diponium salts)、ブタベリン、アポアトロピン、フェクレミン(feclemine)、レイオピロール(leiopyrrole)、オクタミルアミン、オキシブチニン(oxybutynin)、アルブテロール、メタプロテレノール、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロンアセトアミド、ブデソニドアセトニド(budesonide acetonide)、イプラトロピウムブロミド、フルニソリド、クロモリンナトリウム、酒石酸エルゴタミン、およびTNF拮抗薬もしくはインターロイキン拮抗薬などのタンパク質もしくはペプチド薬などがある。例えば、生理活性薬剤は、NSAID、コルチコステロイド、またはCOX−2阻害剤、例えばロフェコキシブ(rofecoxib)、セレコキシブ(celecoxib)、バルデコキシブ(valdecoxib)、もしくはルミラコキシブ(lumiracoxib)などの抗炎症剤であることができる。
【0095】
診断薬の例には、陽電子放出断層撮影法(PET)、コンピュータ利用断層撮影法(CAT)、単一光子放出型コンピュータ断層撮影法、X線法、蛍光透視法、および磁気共鳴映像法(MRI)に使用されるような撮像剤などがある。MRIで造影剤として使用される適切な物質には、ガドリニウムのキレート、ならびに鉄、マグネシウム、マンガン、銅、およびクロムのキレートが挙げられる。CATおよびX線法用に有用な物質の例としては、ヨウ素を基にした物質が挙げられる。
【0096】
好ましい生物学的活性薬剤は、実質的に精製ぺプチドまたはタンパク質である。タンパク質は100個以上のアミノ酸残基からなり、ペプチドは100個未満のアミノ酸残基からなると一般に定義されている。別段の断りがない限り、タンパク質という用語は本明細書において使用する場合、タンパク質とペプチドの両者を意味する。タンパク質は、例えば、天然の供給源からの単離、遺伝子組換え法またはペプチド合成法によって作製することができる。その例としては、ヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモンなどの成長ホルモン;DNA分解酵素、プロテアーゼ、尿酸オキシダーゼ、アルロニダーゼ(alronidase)、αガラクトシダーゼ、およびαグルコシダーゼなどの酵素;トラスツズマブなどの抗体が挙げられる。
【0097】
ラパマイシンマクロライド
ラパマイシン(シロリムス)は、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)が産生する免疫抑制性のラクタムマクロライドである。例えば、参照により本明細書に組み込まれるMcAlpine,J.B.,et al.,J.Antibiotics 44:688(1991);Schreiber,S.L.,et al.,J.Am.Chem.Soc.113:7433(1991);および米国特許第3,929,992号を参照する。本発明の方法および組成物に使用できるラパマイシンマクロライドの例には、ラパマイシン、CCI−779、エベロリムス(RAD001とも称される)およびABT−578などがあるが、これらに限定されない。CCI−779はラパマイシンのエステル(3−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピオン酸の42−エステル)であり、米国特許第5,362,718号に開示されている。エベロリムスはアルキル化ラパマイシン(40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン)であり、米国特許第5,665,772号に開示されている。
【0098】
抗増殖剤
本発明の方法および組成物に使用できる抗増殖剤の例には、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ウラシルマスタード、エストラムスチン、マイトマイシンC、AZQ、チオテパ、ブスルファン、ヘプスルファム、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、シスプラチン、カルボプラチン、プロカルバジン、メトトレキサート、トリメトレキサート、フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、フルダラビン、カペシタビン、アザシチジン、チオグアニン、メルカプトプリン、アロプリン、クラドリビン、ゲムシタビン、ペントスタチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、テニポシド、トポテカン、イリノテカン、カンプトテシン、9−アミノカンプトテシン、パクリタキセル、ドセタキセル、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ダクチノマイシン、イダルビシン、プリカマイシン、マイトマイシン、アムサクリン、ブレオマイシン、アミノグルテチミド、アナストロゾール、フィナステリド、ケトコナゾール、タモキシフェン、フルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、Gleevec(商標)(Norvartis)、レフルノミド(Pharmacia)、SU5416(Pharmacia)、SU6668(Pharmacia)、PTK787(Novartis)、Iressa(商標)(AstraZeneca)、Tarceva(商標)(Oncogene Science)、トラスツズマブ(Genentech)、Erbitux(商標)(ImClone)、PKI166(Novartis)、GW2016(GlaxoSmithKline)、EKB−509(Wyeth)、EKB−569(Wyeth)、MDX−H210(Medarex)、2C4(Genentech)、MDX−447(Medarex)、ABX−EGF(Abgenix)、CI−1033(Pfizer)、Avastin(商標)(Genentech)、IMC−1C11(ImClone)、ZD4190(AstraZeneca)、ZD6474(AstraZeneca)、CEP−701(Cephalon)、CEP−751(Cephalon)、MLN518(Millenium)、PKC412(Novartis)、13−シス−レチノイン酸、イソトレチノイン、レチニルパルミテート、4−(ヒドロキシカルボフェニル)レチナミド、ミソニダゾール、ニトラクリン、ミトキサントロン、ヒドロキシ尿素、L−アスパラギナーゼ、インターフェロンα、AP23573、セリバスタチン、トログリタゾン、CRx−026DHA−パクリタキセル、タキソプレキシン、TPI−287、スフィンゴシンに基づく脂質およびミトタンなどがあるが、これらに限定されない。
【0099】
コルチコステロイド
本発明の方法および組成物に使用できるコルチコステロイドの例には、21−アセトキシプレグネノロン、アルクロメタゾン(alclomerasone)、アルゲストン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニゾン、クロベタゾール、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾン、酪酸クロベタゾン、クロコルトロン(clocortolone)、クロプレドノール(cloprednol)、コルチコステロン、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコン(deflazacon)、デソニド、デスオキシメタゾン(desoximerasone)、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドネート、エノキソロン、フルアザコート(fluazacort)、フルクロロニド(flucloronide)、フルメタゾン、ピバリン酸フルメタゾン、フルニソリド、フルシノロンアセトニド(flucinolone acetonide)、フルオシノニド、フルオロシノロンアセトニド(fluorocinolone acetonide)、フルオコルチンブチル(fluocortin butyl)、フルオコルトロン、ヘキサン酸フルオロコルトロン(fluorocortolone hexanoate)、吉草酸ジフルコルトロン、フルオロメトロン、酢酸フルペロロン(fluperolone acetate)、酢酸フルプレドニデン(fluprednidene acetate)、フルプレドニソロン、フルランドレノリド(flurandenolide)、ホルモコータル(formocortal)、ハルシノニド、ハロメタゾン(halometasone)、酢酸ハロプレドン(halopredone acetate)、ヒドロコルタメート(hydrocortamate)、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルチゾン、コハク酸ヒドロコルチゾン21−ナトリウム、テブト酸ヒドロコルチゾン、マジプレドン(mazipredone)、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン(methylprednicolone)、フロ酸モメタゾン(mometasone furoate)、パラメタゾン、プレドニカルベート(prednicarbate)、プレドニゾロン、21−ジエドリアミノ酢酸プレドニゾロン(prednisolone 21−diedryaminoacetate)、リン酸プレドニゾロンナトリウム、コハク酸プレドニゾロンナトリウム、21−m−スルホ安息香酸プレドニゾロンナトリウム、21−ステアログリコール酸プレドニゾロンナトリウム(prednisolone sodium 21−stearoglycolate)、テブト酸プレドニゾロン、21−トリメチル酢酸プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニバル(prednival)、プレドニリデン、21−ジエチルアミノ酢酸プレドニリデン、チキソコルトール(tixocortol)、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド、およびトリアムシノロンヘキサセトニドなどがあるが、これらに限定されない。類似の抗炎症特性を有する構造的に関連するコルチコステロイドもこの群に含まれるものである。
【0100】
NSAID
本発明の方法および組成物に使用できる非ステロイドの抗炎症薬(NSAID)の例には、ナプロキセンナトリウム、ジクロフェナクナトリウム、ジクロフェナクカリウム、アスピリン、スリンダク、ジフルニサル、ピロキシカム、インドメタシン、イブプロフェン、ナブメトン、トリサリチル酸コリンマグネシウム、サリチル酸ナトリウム、サリチルサリチル酸(サルサレート)、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、メクロフェナム酸ナトリウム、メロキシカム、オキサプロジン、スリンダク、およびトルメチンなどがあるが、これらに限定されない。
【0101】
鎮痛剤
本発明の方法および組成物に使用できる鎮痛剤の例には、モルヒネ、コデイン、ヘロイン、エチルモルヒネ、O−カルボキシメチルモルヒネ、O−アセチルモルヒネ、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、オキシコドン、ジヒドロコデイン、テバイン、メトポン、エトルフィン、アセトルフィン、ジプレノルフィン、ブプレノルフィン、フェノモルファン、レボルファノール、エトヘプタジン、ケトベミドン、ジヒドロエトルフィンおよびジヒドロアセトルフィンなどがあるが、これらに限定されない。
【0102】
抗微生物剤
本発明の方法および組成物に使用できる抗微生物剤の例には、ペニシリンG、ペニシリンV、メチシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、ナフシリン、アンピシリン、アモキシシリン、カルベニシリン、チカルシリン、メズロシリン、ピペラシリン、アズロシリン(azlocillin)、テモシリン(temocillin)、セファロチン(cepalothin)、セファピリン、セフラジン、セファロリジン、セファゾリン、セファマンドール、セフロキシム、セファレキシン、セフプロジル(cefprozil)、セファクロール、ロラカルベフ(loracarbef)、セフォキシチン、セフマトゾール(cefmatozole)、セフォタキシム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフォペラゾン、セフタジジム、セフィキシム(cefixime)、セフポドキシム(cefpodoxime)、セフチブテン(ceflibuten)、セフジニル(cefdinir)、セフピロム(cefpirome)、セフェピム(cefepime)、BAL5788、BAL9141、イミペネム(imipenem)、エルタペネム(ertapenem)、メロペネム(meropenem)、アストレオナム(astreonam)、クラブラネート、スルバクタム、タゾバクタム(tアゾbactam)、ストレプトマイシン、ネオマイシン、カナマイシン、パロマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ネチルマイシン、スペクチノマイシン、シソマイシン、ジベカリン、イセパマイシン(isepamicin)、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、メタサイクリン、ドキシサイクリン、エリスロマイシン、アジスロマイシン(azithromycin)、クラリスロマイシン(clarithromycin)、テリスロマイシン(telithromycin)、ABT−773、リンコマイシン、クリンダマイシン、バンコマイシン、オリタバンシン(oritavancin)、ダルババンシン(dalbavancin)、テイコプラニン(teicoplanin)、キヌプリスチン(quinupristin)およびダルフォプリスチン(dalfopristin)、スルファニルアミド、パラ−アミノ安息香酸、スルファジアジン、スルフィソキサゾール、スルファメトキサゾール、スルファタリジン(sulfathalidine)、リネゾリド(linezolid)、ナリジクス酸、オキソリン酸、ノルフロキサシン、ペルフロキサシン(perfloxacin)、エノキサシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン(ciprofloxacin)、テマフロキサシン(temafloxacin)、ロメフロキサシン(lomefloxacin)、フレロキサシン(fleroxacin)、グレパフロキサシン(grepafloxacin)、スパルフロキサシン(sparfloxacin)、トロバフロキサシン(trovafloxacin)、クリナフロキサシン(clinafloxacin)、ガチフロキサシン(gatifloxacin)、モキシフロキサシン(moxifloxacin)、ゲミフロキサシン(gemifloxacin)、シタフロキサシン(sitafloxacin)、メトロニダゾール、ダプトマイシン(daptomycin)、ガレノキサシン(garenoxacin)、ラモプラニン(ramoplanin)、ファロペネム(faropenem)、ポリミキシン、チゲサイクリン(tigecycline)、AZD2563、およびトリメトプリムなどがあるが、これらに限定されない。
【0103】
局所麻酔剤
本発明の方法および組成物に使用できる局所麻酔剤の例には、コカイン、プロカイン、リドカイン、プリロカイン、メピバカイン、ブピバカイン、アルチカイン、テトラカイン、クロロプロカイン、エチドカインおよびロピバカインなどがあるが、これらに限定されない。
【0104】
鎮痙剤
本発明の方法および組成物に使用できる鎮痙剤の例には、アトロピン、ベラドンナ、ベンチル、シストスパズ、デトロール(トルテロジン)、ジサイクロミン、ジトロパン、ドナタル、ドナザイム、ファスジル、フレクサリル、グリコピロレート、ホマトロピン、ヒヨスチアミン、レブシン、レブシネックス、リブラックス、マルコトラン、ノバルチン、オキシフェンサイクリミン、オキシブチニン、パミン、トルテロジン、チキジウム、プロザピンおよびピナベリウムなどがあるが、これらに限定されない。
【0105】
下記の実施例は、当業者に対して、本願で特許請求される方法および化合物の実施、製造および評価方法についての完全な開示および説明を提供することを目的として示されるものであって、純粋に本発明を例示するためのものであり、発明者らが発明であると見なすものの範囲を限定するものではない。
【0106】
下記の略語は、本明細書に記載のポリマー、ポリマー錯体およびポリマー複合物の製造に使用される列記の化合物を示すものである。
【0107】
AEMA:アミノエチルメタクリレート
ALLYL:アリルアルコール
ASA:アセチルサリチル酸
BAL:ポリ(ジフルオロメチレン),α−フルオロ−ω−(2−ヒドロキシエチル)
BHT:ブチル化ヒドロキシトルエン
BPO:過酸化ベンゾイル
C8:1−オクタノール
CDCl:重クロロホルム
DBDL:ジラウリン酸ジブチルスズ
DCM:ジクロロメタン
DMAc:ジメチルアセトアミド
DMAP:4−(ジメチルアミノ)ピリジン
DMF:ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
EDC:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノ−プロピル)カルボジイミド・HCl
EVA:ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)
FEO1:4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11−ヘプタデカフルオロ−2−ヒドロキシウンデシルアクリレート
FEO2:1H,1H,2H,3H−ノナフルオロヘプト−2−エン−オール
FEO3:3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート
HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート
HCl:塩酸
HMP:2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン
KBr:臭化カリウム
LDI:リジンジイソシアネート
MAA:メタクリル酸
MeOH:メタノール
MgSO:硫酸マグネシウム
MMA:メチルメタクリレート
NaOH:水酸化ナトリウム
PBS:リン酸緩衝液
PCL:ポリカプロラクトン
PSi:ポリジメチルシロキサン−ビス(3−アミノプロピル)末端
PTMO:ポリテトラメチレンオキサイド
PTX:パクリタキセル
SIBS:ポリ(スチレン−イソブチレン−スチレン)
TEA:トリエチルアミン
TEGMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
TFAc:トリフルオロ酢酸
THF:テトラヒドロフラン
VP:1−ビニル−2−ピロリドン。
【0108】
モノマーのリスト
メタクリル酸、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ブタンジオールモノアクリレート、エチルジグリコールアクリレート、ラウリルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレート、N−ビニルホルムアミド、シクロヘキシルメタクリレート、2−イソシアナトメタクリレート、グリシジルメタクリレート、シアノアクリレート、イソボルニルアクリレート、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジ((メタ)エチレングリコール)ビニルエーテル、マレイン酸およびフマル酸、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレートおよびウレタンジメタクリレート。
【0109】
開始剤のリスト
1,1′−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]・2塩酸塩、過酢酸tert−ブチル、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]・2塩酸塩、2,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]・2硫酸塩・2水和物、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)・2塩酸塩、2,2′−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]・水和物、2,2′−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}・2塩酸塩、2過酢酸、,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2′−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−エチルプロパン)・2塩酸塩、2,2′−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2.4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2.4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2′−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2′−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、過安息香酸tert−アミル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシン、ビス(1−(tert−ブチルペルオキシ)−1−メチルエチル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、tert−ブチルヒドロペルオキシド、tert−ブチルペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、2,4−ペンタジオンペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、過安息香酸tert−ブチル、クメンヒドロペルオキシド、炭酸tert−ブチルペルオキシイソプロピル、カンファーキノン、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド、2−tert−ブチルアントラキノン、9,10−フェナントレンキノン、アントラキノン−2−スルホン酸ナトリウム塩・1水和物、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−4′−モルホリノブチロフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−4′−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルプロピオフェノン、2−メチル−4′−(メチルチオ)−2−モルホリノプロピオフェノン、3′−ヒドロキシアセトフェノン、4′−エトキシアセトフェノン、4′−ヒドロキシアセトフェノン、4′−フェノキシアセトフェノン、4′−tert−ブチル−2′,6′−ジメチルアセトフェノン、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド/2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4,4′−ジメトキシベンゾイン、3−メチルベンゾフェノン、ベンゾイン、3−ヒドロキシベンゾフェノン、3,4−ジメチルベンゾフェノン、2−メチルベンゾフェノン、ベンゾフェノン−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸・2無水物、4−メチルベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイルビフェニル、4−(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4−(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ミヒラーのケトン、4,4′−ビス[2−(1−プロペニル)フェノキシ]ベンゾフェノン、シスおよびトランス4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノンの混合物、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンゾイルギ酸メチル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、4,4′−ジメチルベンジル、ベンゾインエチルエーテル、トリフ酸(4−ブロモフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリフ酸(4−クロロフェニル)ジフェニルスルホニウム、パーフルオロ−1−ブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド・パーフルオロ−1−ブタンスルホネート、トリフ酸トリフェニルスルホニウム、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホン酸ジフェニルヨードニウム、パーフルオロ−1−ブタンスルホン酸トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウムおよびトリフ酸トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウム。
【0110】
実験プロトコール
実施例で言及されている精製方法および分析方法について下記で説明する。
【0111】
カチオン固相抽出(SCX−SPE):プレパックのカチオンシリカゲルカラム(プラスチック)を用いて、反応混合物から小カチオン性化合物を取り出す。
【0112】
フルオラス固相抽出(F−SPE):パーフルオロリガンドで修飾したSPE基体(F−SPE)を用いて、パーフルオロ化オリゴマーを選択的に保持して、非フッ素化化合物の分離を可能とする。
【0113】
接触角分析:ミリQ水滴をフィルムに乗せ、水滴の形状をクルス(Kruss)DSA装置を用いて分析する。
【0114】
元素分析:サンプルを燃焼させ、放出されたフッ素を水に吸収させ、イオン選択性電極によって分析する。
【0115】
FTIR分析:サンプルを、好適な揮発性溶媒中に20mg/mL溶液として溶解させ、この溶液50μLをKBr円板上に乗せる。乾燥したら、サンプルの分析を行う。
【0116】
ゲル抽出:フィルムのサンプルを秤量し、好適な溶媒で12時間抽出する。
【0117】
フィルムを溶媒から取り出し、秤量し、真空乾燥し、再度秤量する。ゲル含有率を、抽出されない質量のパーセントとして計算する。サンプルの真空乾燥を行う前の質量における増加パーセントで膨潤比を計算する。
【0118】
GPC分析:サンプルを、好適な溶媒(THF、ジオキサン、DMF)に20mg/mL溶液として溶かし、ポリスチレン標準で較正したポリスチレンカラムを用いて分析する。
【0119】
NMR:サンプルを好適な溶媒に20mg/mLで溶かし、300または400MHzのNMRスペクトル装置を用いて分析する。
【0120】
SEM:表面を金でコーティングした。
【0121】
引張試験:フィルムをカットして試験試料とし、ASTMD1708ガイドラインに従って分析する。
【0122】
XPS分析:フィルムを、90°取り出し角を用いて分析する。
【0123】
実施例1:ペンダントビニル基を有するα,ω−BAL−ポリ(LDI(HEMA)/PTMO)の合成(化合物2)
【化14】

【0124】
ポリテトラメチレンオキサイド(PTMO)(15g、14mmol)を500mLの2頸フラスコ中で秤取し、30℃で終夜脱気し、脱水DMAc(40mL)にN下に溶かした。LDI(5.894g、28mmol)を2頸フラスコ中で秤取し、脱水DMAc(40mL)にN下に溶かした。DBDLをLDI溶液に加え、この混合物をPTMO溶液に滴下した。フラスコを密閉状態とし、N下に70℃で2時間維持した。フルオロアルコール(13.151g、31mmol)を2頸フラスコ中で秤取し、室温で脱気し、脱水DMAc(40mL)に溶かし、反応混合物に滴下した。反応溶液をN下に密閉し、室温で終夜攪拌した。生成物を水中で沈澱させ(3リットル)、数回洗浄し、乾燥させた。生成物をMeOHに溶かし、スズ触媒をSCX SPEによって抽出した。最終生成物(化合物1−エステル)を真空乾燥した。H NMR(300MHz、CDCl)δ(ppm)4.24−4.46(−CH−O、BAL)、3.94−4.13(−CH−O−COPTMO)、3.74(CH、LDI)、3.28−3.50(CH−OPTMO)、2.98−3.28(C−NH、LDI)、2.29−2.60(−CH−CF−、BAL)、1.16−1.96(PTMOおよびLDIのCH)。19F NMR(300MHz、CDCl)δ(ppm)−81.23(CF)、−114.02(CF)、−122.34(CF)、−123.34(CF)、−123.30(CF)、−124.03(CF)、−126.56(CF)。元素分析:試薬の化学量論に基づいた理論値(%):C、48.49;H、6.57;F、23.85;N、2.81;O、18.27.測定値:C、48.70;H、6.56;F、22.81;N、2.63.HPLC分析(逆相、C18カラム、メタノールおよびpH9PBS移動相(勾配)):保持時間39.5分。DSC分析:Tg=−66.6℃。IR分析は、前記化学構造と一致していた:3327.29cm−1ν(N−H)H−結合、2945.10cm−1ν(C−H)CH非対称伸縮、2865.69cm−1ν(C−H)CH対称伸縮、1717.91cm−1ν(C=O)ウレタンアミド、1533.54cm−1ν(C−N)伸縮モード、1445.56cm−1ν(C−N)伸縮モード、1349.31cm−1ν(C−O)伸縮、1400−1000cm−1ν(C−F)モノフルオロアルカン類は範囲の右側まで吸収するが、ポリフルオロアルカン類は1350から1100cm−1の範囲にわたって複数の強い帯域を与える。
【0125】
化合物1−エステル(15.0g、約16mmolのエステル)をフラスコ中で秤取し、MeOH(150mL)に溶かし、溶解したら、1N NaOH溶液(17mL)を滴下した。室温で6時間攪拌後、溶液を、1N HCl(17.7mL)を用いて中和し、生成物を水中で沈澱させ、水で洗浄し、60℃で真空乾燥した。エステル基の酸官能基への変換を、NMR分析によって確認した。プロトンNMRは、3.75ppmのメトキシ基の消失を示した。19F NMR(300MHz、CDCl)δ(ppm)−81.23(CF)、−114.02(CF)、−122.34(CF)、−123.34(CF)、−123.30(CF)、−124.03(CF)、−126.56(CF)。HPLC分析:保持時間33.4分(化合物1−酸)。逆相HPLC、C18カラム、MeOHおよびpH9 PBS移動相(勾配)。DSC分析:Tg=−65℃。元素分析:試薬の化学量論に基づいた理論値(%):C、47.96;H、6.48;F、24.19;N、2.86;O、18.53.測定値:C、46.92;H、6.16;F、26.43;N、2.94。
【0126】
化合物1−酸(10.0g、約8mmol酸)、DMAP(0.488g、4mmol)、HEMA(6.247g、48mmol)およびDCM(50mL)を250mLフラスコに加え、全ての化合物が溶解するまで攪拌した。EDC(4.600g、24mmol)をDCM溶液に加え、EDCが溶解したら、その溶液をN下に光から保護しながら室温で24時間攪拌した。反応混合物をロータリーエバポレータ留去(25℃)によって減量して粘稠液体とし、水で3回洗浄した(400mLで3回)。洗浄した生成物をジエチルエーテル(100mL、100ppmBHT)に溶かし、溶液をMgSOと1時間混合することで水を除去した。溶液を250mLフラスコ中への重力濾過によって透明とし、ロータリーエバポレータ留去(25℃)によって溶媒を除去した。生成物(化合物2)をDMFに再溶解し、フルオラスSPE(F−SPE)によって精製し、ロータリーエバポレータ留去によって回収した。H NMR(300MHz、CDCl)δ(ppm)6.09−6.15(HEMAビニルH)、5.58−5.63(HEMAビニルH)、4.27−4.49(−CH−O、BAL、CHHEMA)、4.01−4.15(−CH−O−COPTMO)、3.75(小さいCHシグナル、LDI)、3.31−3.50(CH−OPTMO)、3.07−3.23(C−NH、LDI)、2.36−2.56(−CH−CF−、BAL)、1.91−1.96(HEMACH)1.27−1.74(PTMOおよびLDIのCH)。19F NMR(300MHz、CDCl)δ(ppm)−81.23(CF)、−114.02(CF)、−122.34(CF)、−123.34(CF)、−123.30(CF)、−124.03(CF)、−126.56(CF)。GPC分析:生成物をジオキサンに溶かし、ポリスチレンカラムおよびUV検出器を用いるGPC系で流した。この分析では遊離HEMAモノマーは検出されなかった。HPLC分析:保持時間39.8分(化合物2)、この分析では遊離HEMAモノマーは検出されなかった。逆相HPLC、C18カラム、MeOHおよびpH9 PBS移動相(勾配)。IR分析は、前記化学構造と一致していた:3318cm−1ν(N−H)H−結合、2935cm−1ν(C−H)CH非対称伸縮、2854cm−1ν(C−H)CH対称伸縮、1722cm−1ν(C=O)ウレタンアミド、1634cm−1(ビニルC=C伸縮)、1532cm−1ν(C−N)伸縮モード、1456cm−1ν(C−N)伸縮モード、1349.31cm−1ν(C−O)伸縮、1400−1000cm−1ν(C−F)モノフルオロアルカン類はこの範囲の右側まで吸収するが、ポリフルオロアルカン類は1350から1100cm−1の範囲にわたり複数の強い帯域を与える。元素分析:試薬の化学量論に基づいた理論値(%):C、49.64;H、6.53;F、21.71;N、2.56;O、19.55。測定値:C、50.78;H、6.89;F、19.33;N、2.50。
【0127】
実施例2:ペンダントビニル基を有するα,ω−BAL−ポリ(LDI(アリル)/PTMO)の合成(化合物3)
【化15】

【0128】
化合物1−酸(12.03g、12.11mmol)、DMAP(0.74g、6.05mmol)、アリルアルコール(4.22g、72.64mmol)および脱水DCM(100mL)を、攪拌バーを入れた250mLフラスコ中に秤取した。フラスコの内容物を全ての成分が溶解するまで磁気撹拌した。次に、EDC(6.96g、36.32mmol)白色固体をフラスコに加えた。反応フラスコをアルミホイルで覆い、溶液を室温でN下に3日間攪拌した。3日後、DCMをロータリーエバポレータによって25℃で除去して、粘稠粗生成物を得た。粗生成物をHCl水溶液で3回(各回で0.1N HCl 30mLおよび蒸留水60mLの混合物を使用)、最後に蒸留水(100mL)自体で洗浄した。有機可溶物のジエチルエーテル溶媒への抽出(所望の生成物を含む)、固体MgSOでの有機溶媒の脱水および室温でのロータリーエバポレータによる溶媒の除去によって、わずかに黄色の液体を得た。その液体について、最初にジエチルエーテル、ジエチルエーテル/DCM(50/50、重量基準)混合物、DCM自体および次にDCM/MeOH(80/20、重量基準)混合物を用いるカラムクロマトグラフィーを行って、不透明液体(化合物3)、6.34g(50.6%)を得た。元素分析:試薬の化学量論に基づいた理論値(%):C、49.61;H、6.60;F、23.24;N、2.75;O、17.80.測定値:C、49.47;H、6.64;F、24.87;N、2.65.H−NMR(CDCl、300MHz):δ5.92(CHCH、アリル)、5.30(CHCHC(ジェミナル、アリル))、4.74(NH)、4.64(CCHCH、アリル)、4.37(OCH、BALおよびNHC、LDI)、4.08(NH(O)COC、PTMO)、3.42(OCCH、PTMO)、3.15(NHC、LDI)、2.46(OCH、BAL)、1.87−1.20(CH、LDIおよびCH、PTMO)。2.47ppmでのBALおよび6.12ppmでのアリルアルコールの積分に基づき、反応後のオリゴマーに結合したアリルアルコールの量を、72%と計算した。2.46ppmでのBAL、3.42ppmでのPTMO、3.15ppmでのLDIおよび5.92ppmでのアリルに対する外部基準としてペンタフルオロベンゼン(6.90ppm)を用いて、絶対数平均分子量(Mn)を1845g/molと計算した。19F−NMR(CDCl、300MHz、内部基準標準としてのCFCl):δ−81.26(CF)、−114.02(CF)、−122.41(CF)、−123.40(CF)、−124.15(CF)、−126.75(CF)。GPC分析:生成物をジオキサンに溶かし、ポリスチレンカラムおよびUV検出器を用いるGPC系で流した。遊離モノマーは検出されなかった。HPLC分析:保持時間40分(化合物3)、遊離アリルモノマーは検出されなかった。逆相HPLC、C18カラム、MeOHおよびpH9PBS移動相(勾配)。FT−IR(KBr円板、無希釈):3318(N−H、広い)、2933−2794(脂肪族C−H)、1704(C=O)、1650(C=C)、1530、1436、1355、1255、1100、843、809、778、745、734、707、697cm−1
【0129】
実施例3:ペンダントビニル基を有するα,ω−アリル−ポリ(LDI(BAL)/PTMO)の合成(化合物4)
実施例11からの化合物13にフッ素化基を連結させることによって、化合物4を製造した。
【化16】

【0130】
実施例11からの化合物13−酸(7.52g、10.95mmol)、DMAP(0.67g、5.48mmoL)、BAL(23.06g、65.71mmol、外部基準としてペンタフルオロベンゼンを用いてH−NMRによって測定したM=351ダルトン)および脱水DCM(100g)を攪拌バーを入れた250mLフラスコ中に秤取した。全ての成分が溶解するまでフラスコを磁気撹拌した。EDC(6.30g、32.86mmol)白色固体をフラスコに加えた。反応フラスコをアルミホイルで覆い、溶液を室温でN下に5日間攪拌した。5日後、DCMをロータリーエバポレータによって25℃で除去して、黄色粗生成物を得た。粗生成物をHCl水溶液(各回で0.1N HCl 30mLおよび蒸留水60mLの混合物を使用)、最後に蒸留水(100mL)自体で3回洗浄した。有機可溶物(所望の生成物を含む)のジエチルエーテル溶媒への抽出、固体MgSOでの有機溶媒の脱水および室温でのロータリーエバポレータによる溶媒の除去によって、わずかに黄色の液体を得た。液体を少量のアセトンに溶かし、そのアセトン溶液をメトキシパーフルオロブタン溶媒(150g)の入ったビーカーに滴下して乳濁液を形成した。3400rpmでの乳濁液の遠心およびフッ素化溶媒の廃棄によって、透明液体である化合物4を得た。元素分析:試薬の化学量論に基づいた理論値(%):C、49.61;H、6.60;F、23.24;N、2.74;O、17.80.測定値:C、53.42;H、7.76;F、16.25;N、2.70。H−NMR(CDCl、300MHz):δ5.92(CHCH、アリル)、5.25(CHCHC(ジェミナル、アリル))、4.74(N)、4.57(CCHCH、アリル)、4.44(OC、BAL)、4.32(NHC、LDI)、4.08(NH(O)COC、PTMO)、3.42(OC、PTMO)、3.17(NHC、LDI)、2.50(OCH、BAL)、1.87−1.20(CH、LDIおよびCH、PTMO)。2.47ppmでのBALおよび3.17ppmでのLDIの積分に基づき、反応後にオリゴマーに結合したBALの量を67%と計算した。5.92ppmでのアリル、3.42ppmでのPTMO、2.50ppmでのBALおよび3.17ppmでのLDIに対する外部基準としてペンタフルオロベンゼン(6.90ppm)を用いて、絶対数平均分子量(Mn)を2007g/molと計算した。19F−NMR(CDCl、300MHz、内部基準標準としてのCFCl):δ−81.14(CF)、−113.86(CF)、−122.19(CF)、−123.30(CF)、−123.89(CF)、−126.46(CF)。GPC分析:生成物をジオキサンに溶かし、ポリスチレンカラムおよびUV検出器を用いるGPC系で流した。遊離モノマーは検出されなかった。HPLC分析:遊離モノマーは検出されなかった。逆相HPLC、C18カラム、MeOHおよびpH9PBS移動相(勾配)。FTIR(KBr、無希釈):3315(N−H、広い)、2933−2794(脂肪族C−H)、1720(C=O)、1644(C=C)、1530、1436、1365、1247、1110、778、742、733、706、696cm−1
【0131】
実施例4:ペンダントアミノエチルメタクリレートを有するα,ω−BAL−ポリ(LDI/PTMO)の合成(化合物5)
【化17】

【0132】
化合物1−酸(0.5g、約0.43mmol酸)を2頸フラスコ中で秤取し、脱気し、DMF(5mL)に溶かした。その溶液を冷却して0℃とし、それにDMF(1mL)に溶かしておいたEDC(0.245g、1.28mmol)を加えた。溶液を昇温させて室温とし、窒素雰囲気および光からの保護下に2時間攪拌した。次に、DMAP(0.026g、0.21mmol)およびAEMA・HCl(0.035g、0.21mmol)をフラスコに加え、全ての化合物が溶解するまで攪拌した。溶液を1時間攪拌状態に維持した。生成物(化合物5)が沈澱し、水で洗浄した。生成物をアセトンに再懸濁させ、MgSOで脱水し、溶媒を室温で留去した。H NMR(400MHz、CDCl)δ(ppm)6.13(AEMAビニルH)、5.61(AEMAビニルH)、4.36(O−CH−BAL)、4.25(CH、AEMA)、4.07(−CH−O−COPTMO)、3.75(少量のLジエステルCH)、3.41(CH−OPTMO)、3.18(C−NH、LDI)、2.45(−CH−CF−BAL)、1.95(−CH、AEMA)、1.62(PTMOおよびLDIのCH)。GPC分析:化合物5をTHFに溶かし、ポリスチレンカラムおよびUV検出器を用いるGPC系で流した。この分析では遊離のAEMAモノマーは検出されなかった。
【0133】
実施例5:ペンダントビニル基を有するα,ω−FEO1−ポリ(LDI/PTMO)の合成(化合物6)
【化18】

【0134】
PTMO(10g、10mmol、脱気)を脱水DMAc(50mL)に溶かした。LDI(4.11g、20mmol、蒸留)およびDBDL触媒を脱水DMAc(25mL)に溶かし、前記PTMO溶液に滴下し、反応液を70℃でN下に2時間維持した。ヒドロキシパーフルオロアクリレート(4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11−ヘプタデカフルオロ−2−ヒドロキシウンデシルアクリレート)(FEO1、12.058g、22mmol)をDBDLを含むDMAc(25mL)に溶かし、前記反応溶液に滴下した。リアクターをN下に密閉状態とし、室温で終夜攪拌した。生成物を水中で沈澱させ(2リットル)、ジエチルエーテル(100mL、100ppmBHT)に再溶解させ、MgSOで脱水し、濾過した。エーテル溶液をヘキサン(400mL)に滴下して生成物を沈澱させ、未反応試薬を抽出した。ヘキサンを傾斜法で除去し、その溶媒抽出手順を2回繰り返した。精製した生成物(化合物6)をジエチルエーテル(50mL)に溶かし、溶媒をロータリーエバポレータ留去によって室温で除去した。H NMR(400MHz、CDCl)δ(ppm)6.40−6.52(FEO1ビニルH)、6.09−6.23(FEO1ビニルH)、5.80−5.95(FEO1ビニルH)、4.15−4.53(C−HFEO1、O−CH−FEO1)、4.00−4.15(−CH−O−COPTMO)、3.75(LジエステルCH)、3.31−3.50(CH−OPTMO)、3.05−3.25(C−NH、LDI)、2.35−2.61(−CH−CF−FEO1)、1.25−1.73(PTMOおよびLDICH)。GPC分析:化合物6をジオキサンに溶かし、ポリスチレンカラムおよびUV検出器を用いるGPC系で流した。遊離のFEO1モノマーは、この分析では検出されなかった。IR分析:1634cm−1(C=C)。
【0135】
実施例6:ペンダントビニル基を有するα,ω−FEO2−ポリ(LDI/PTMO)の合成(化合物7)
【化19】

【0136】
PTMO(2.012g、2mmol、脱気)を脱水DMAc(10mL)に溶かした。LDI(0.848g、4mmol、蒸留)およびDBDL触媒を脱水DMAc(5mL)に溶かし、前記PTMO溶液に滴下した。プレポリマー反応液を60から70℃でN下に2時間維持した。パーフルオロ−エン−オール(1H,1H,2H,3H−ノナフルオロヘプト−2−エン−オール)(FEO2、1.214g、4.4mmol)を、DBDLを含むDMAc(5mL)に溶かし、前記プレポリマー溶液に滴下した。リアクターをN下に密閉状態とし、室温で終夜攪拌した。生成物を水中で沈澱させ(0.5L)、ジエチルエーテル(20mL、100ppmBHT)に再溶解させ、MgSOで脱水し、濾過した。そのエーテル溶液をヘキサン(80mL)に滴下して生成物を沈澱させ、未反応試薬を抽出した。ヘキサンを傾斜法で除去し、その溶媒抽出手順を2回繰り返した。精製された生成物(化合物7)をジエチルエーテル(50mL)に溶かし、溶媒をロータリーエバポレータ留去によって室温で除去した。H NMR(400MHz、CDCl)δ(ppm)6.37−6.51(ビニルH、FEO2)、5.76−5.95(ビニルH、FEO2)、5.80−5.95(FEO1ビニルH)、4.66−4.87(CH、FEO2)、4.24−4.38((−CH−O−COLDI)、3.97−4.12(−CH−O−COPTMO)、3.66−3.77(LジエステルCH)、3.27−3.52(CH−OPTMO)、3.05−3.23(C−NH、LDI)、1.28−1.94(PTMOおよびLDICH)。GPC分析:(化合物7)をジオキサンに溶かし、ポリスチレンカラムおよびUV検出器を用いるGPC系で流した。遊離FEO2モノマーは、この分析では検出されなかった。IR分析:1634cm−1(C=C)。
【0137】
実施例7:ペンダントビニル基を有するα,ω−FEO3−ポリ(LDI/PTMO)の合成(化合物8)
【化20】

【0138】
PTMO(10g、10mmol、脱気)を脱水DMAc(50mL)に溶かした。LDI(4.241g、20mmol、蒸留)およびDBDL触媒を脱水DMAc(22mL)に溶かし、前記PTMO溶液に滴下した。プレポリマー反応液を60から70℃でN下に2時間維持した。ヒドロキシパーフルオロアクリレート(3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート)(FEO3、9.068g、22mmol)を、DBDLを含んだDMAc(23mL)に溶かし、前記プレポリマー溶液に滴下した。リアクターをN下に密閉状態とし、室温で終夜攪拌した。生成物を水中で沈澱させ(2リットル)、ジエチルエーテル(100mL、100ppmBHT)に再溶解させ、MgSOで脱水し、濾過した。そのエーテル溶液をヘキサン(400mL)に滴下して、生成物を沈澱させ、未反応試薬を抽出した。ヘキサンを傾斜法で除去し、その溶媒抽出手順を2回繰り返した。精製された生成物(化合物8)をジエチルエーテル(50mL)に溶かし、空気流フード中にて室温で留去することで溶媒を除去した。H NMR(400MHz、CDCl)δ(ppm)6.10−6.16(FEO3ビニルH)、5.66−5.89(FEO3ビニルH)、4.27−4.41(−O−CH−FEO3)、4.15−4.27(−O−CH−FEO3)4.00−4.14(−CH−O−COPTMO)、3.75(LジエステルCH)、3.27−3.52(CH−OPTMO)、3.05−3.21(C−NH、LDI)、2.34−2.61(−CH−CF−FEO3)、1.90−1.99(CH、FEO3)、1.22−1.90(PTMOおよびLDIのCH)。GPC分析:化合物8をジオキサンに溶かし、ポリスチレンカラムおよびUV検出器を用いるGPC系で流した。遊離FEO3モノマーは、この分析では検出されなかった。IR分析:1634cm−1(C=C)。
【0139】
実施例7′:ペンダントビニル基を有するα,ω−C8−ポリ(LDI(ヒドロキシパーフルオロアクリレート)/PTMO)の合成(化合物9′)
【化21】

【0140】
PTMO(10.0g、10.0mmol)を、攪拌バーを入れた250mL丸底フラスコ中で秤取した。そのフラスコを油浴を用いて加熱して30℃とし、2時間減圧下に保持して微量の水を除去した。フラスコを冷却して室温とし、脱水DMAc(50mL)を加えてPTMOを溶解させた。LDI(3.18g、15.0mmol)、DBDLおよび脱水DMAc(5mL)を混合し、注射器によってフラスコに移し入れた。反応フラスコを油浴中で加熱して70℃とし、反応混合物を2時間攪拌した。次に、1−オクタノール(1.43g、11mmol)を注射器注入によってリアクターに導入し、反応混合物を室温で終夜(17時間)攪拌状態に維持した。翌日、反応混合物を蒸留水3リットル中で沈澱させた。その洗浄手順を蒸留水(3リットル)で2回繰り返した。生成物を真空乾燥して、最終生成物である化合物8′−エステルを得た。H−NMR(CDCl、300MHz):δ4.07(NH(O)COC、PTMO)、3.74(−OC、LDI)、3.41(OCCHCHO、PTMOおよび(O)COC(CHCH、オクタノール)、3.16(NHC、LDI)、1.62(CHCCHNH、LDI、OCHCHO、PTMOおよび(O)COCH(CCH、オクタノール)、0.88((O)COCH(CH、オクタノール)。GPC測定による検出で、化合物8′−エステルの分子量は、化合物1の分子量と比較して大きかった。
【0141】
化合物8′−エステル(5.0g、5.2mmolエステル)を250mLビーカー中で秤取し、アセトン(50mL)に溶かした。NaOH 1.0N(5.18mL)をビーカーに滴下し、混合物を室温で6時間攪拌した。反応混合物を1.0N HCl水溶液5.70mLで中和し、追加の水を加えて白色沈澱を得た。洗浄水を除去して、中間体生成物を回収し、蒸留水(1.0リットル)で2回洗浄した。最終生成物を18時間真空乾燥して、不透明粘稠生成物である化合物8′−酸を得た。H−NMR(CDCl、300MHz):3.74(−OCH)の1重線を用いて、エステル基の加水分解度をモニタリングした。
【0142】
化合物8′−酸(0.43g、0.46mmol酸)、DMAP(27.2mg、0.22mmoL)、FEO1(1.46g、2.67mmol)および脱水DCM(7mL)を、攪拌バーを入れた50mLフラスコ中に秤取した。全ての成分が溶解するまでフラスコの内容物を磁気撹拌した。次に、EDC(0.256g、1.3mmol)白色固体をフラスコに加えた。反応フラスコをアルミホイルで覆い、溶液を室温でN下に終夜攪拌した。翌日、DCMを25℃でのロータリーエバポレータ留去によって除去して粗生成物を得た。その粗生成物を溶媒および水抽出を用いて洗浄し、MgSOで脱水し、溶媒をロータリーエバポレータ留去によって除去した。最終生成物(化合物9′)を真空乾燥した。H−NMR(CDCl、300MHz):δ6.45、6.19、5.43(ビニルH、FEO1)、4.07(NH(O)COC、PTMO)、3.74(少量−OC、LDI)、3.41(OCCHCHO、PTMOおよび(O)COC(CHCH、オクタノール)、3.16(NHC、LDI)、2.42(−CH−CF−、FEO1)、1.62(CHCCHNH、LDI、OCHCHO、PTMOおよび(O)COCH(CCH、オクタノール)、0.88((O)COCH(CH、オクタノール)。GPC分析:化合物9′をジオキサンに溶かし、ポリスチレンカラムおよびUV検出器を用いるGPC系で流した。遊離のFEO1モノマーは、この分析では検出されなかった。
【0143】
上記のFEO1の連結を、FEO3を用いて再現した。化合物8′−酸(2.5g、2.59mmol酸)、DMAP(0.158g、1.29mmoL)、FEO3(6.396g、15.52mmol)および脱水DCM(13mL)を攪拌バーを入れた100mLフラスコ中に秤取した。全ての成分が溶解するまでフラスコの内容物を磁気撹拌した。次に、EDC(1.487g、7.76mmol)をフラスコに加えた。それ以降の合成および精製段階は、FEO1反応と同一とした。H−NMR(CDCl、300MHz):δ6.14、5.64(ビニルH、FEO3)、4.07(NH(O)COC、PTMO)、3.74(少量−OC、LDI)、3.41(OCCHCHO、PTMOおよび(O)COC(CHCH、オクタノール)、3.16(NHC、LDI)、2.4(−CH−CF−、FEO3)、1.94(CH、FEO3)、1.62(CHCCHNH、LDI、OCHCHO、PTMOおよび(O)COCH(CCH、オクタノール)、0.88((O)COCH(CH、オクタノール)。GPC分析:化合物9′(b)をジオキサンに溶かし、ポリスチレンカラムおよびUV検出器を用いるGPC系で流した。遊離のFEO3モノマーは、この分析では検出されなかった。
【0144】
実施例8:ペンダントビニル基を有するα,ω−BAL−ポリ(LDI(HEMA)/PSi)の合成(化合物10)
【化22】

【0145】
ポリ(ジメチルシロキサン)、ビス(3−アミノプロピル)末端(30.2g、12.1mmol、M=2500、アルドリッチ(Aldrich))を攪拌バーを入れた250mL丸底フラスコ中に秤取した。油浴を用いて真空ポンプ下にフラスコを加熱して45℃として2時間経過させて、微量の水を除去した。フラスコを油浴から外し、放冷して室温としてから、それをLDI、BAL、脱水DCM溶媒の入った1リットル瓶および攪拌バーを入れてある火炎乾燥した空の250mL丸底フラスコの入ったグローブボックスに移し入れた。そのグローブボックス中、LDI(5.13g、24.2mmol)および脱水DCM(100mL)を空のフラスコに移し入れた。脱水DCM(50mL)も、脱水ポリ(ジメチルシロキサン)の入ったフラスコに移し、内容物が完全に溶解するまでそのフラスコを旋回させた。次に、反応混合物を室温で攪拌しながら、前記ポリ(ジメチルシロキサン)の溶液を、LDI溶液の入ったフラスコに滴下した。添加を10分以内に完了し、反応混合物をさらに20分間攪拌状態に維持した。次に、BAL(8.48g、24.2mmol、外部基準としてペンタフルオロベンゼンを用いるH−NMRによる測定でM=351g/mol)をリアクターに移し入れた。そのリアクターにゴムセプタムのキャップを施し、グローブボックスから取り出した。油浴でN下に反応混合物を加熱して65℃としながら、DBDL(0.02mL)を注射器によってリアクターに移した。リアクターを65℃で終夜(17時間)攪拌状態に維持した。翌日、反応混合物を冷却して室温とし、DCM溶媒をロータリーエバポレータによって除去して、液体生成物(化合物9−エステル)を得た。
【0146】
化合物9−エステル(30.5g、16.8mmol)およびDCM(100mL)を、攪拌バーの入った500mLフラスコに移した。脱イオン水(3.33g、18.5mmol)およびNaOHのMeOH中溶液(0.10N、185mL、18.5mmol)をリアクターに加えた。留意すべき点として、NaOH溶液および水の添加中にエステル前駆体溶液が濁ったら、混合物が透明になるまで追加のDCM溶媒が必要であった。反応混合物を室温で8時間攪拌状態に維持し、1.0N HCl(水溶液)(20mL、20.0mmol)で中和した。反応混合物を分液漏斗に移し、それを脱イオン水で2回洗浄し、有機溶媒をロータリーエバポレータによって除去して、わずかに黄色の粘稠液体を得た。残留有機溶媒を完全に除去することで、透明粘稠液体である化合物9−酸を得た。
【0147】
化合物9−酸(20.8g、11.56mmol)、DMAP(0.71g、5.78mmol)、HEMA(9.03g、69.37mmol)および脱水DCM(150mL)を、攪拌バーを入れた500mLフラスコに移し入れた。全ての成分が溶解するまで、フラスコの内容物を磁気撹拌した。次に、白色固体EDC(6.65g、34.69mmol)をフラスコに加えた。反応フラスコをアルミホイルで覆い、室温でN下に3日間攪拌状態に維持した。3日後、DCMをロータリーエバポレータによって25℃で除去して、粘稠粗生成物を得た。粗生成物を蒸留水で3回洗浄した(各回150mL)。有機可溶物のジエチルエーテル溶媒への抽出、固体MgSOでの有機溶媒の脱水および室温でのロータリーエバポレータによる溶媒の除去によって粘稠液体を得た。その粘稠液体をMeOH(HPLC用、各回150mL)で3回洗浄して、未反応のHEMAを除去した。MeOH溶媒を廃棄し、真空ポンプによって完全に除去して、透明粘稠液体である化合物10を得た。
【0148】
実施例9:ペンダントビニル基を有するα,ω−BAL−ポリ(LDI(HEMA)/PCL)の合成(化合物11′)
【化23】

【0149】
ポリカプロラクトンジオール(PCLジオール)(10g、8mmol、脱気)を脱水DMAc(50mL)に溶かした。LDI(3.39g、16mmol、蒸留)およびDBDL触媒を脱水DMAc(18mL)に溶かし、PCLジオール溶液に滴下した。プレポリマー反応液をN下に60から70℃で2時間維持した。BAL(7.39g、18mmol)およびDBDLを脱水DMAc(25mL)に溶かし、プレポリマー溶液に滴下した。リアクターをN下に密閉状態とし、室温で終夜攪拌した。生成物(化合物11−エステル)を水中で沈澱させ(3リットル)、アセトンに再懸濁させ、アセトン溶液をSCXSPEカラムに通過させることで精製した。そのアセトン溶液を気流乾燥機中40℃で溶媒留去し、生成物を真空乾燥した。PCLジオールおよび化合物11−エステルをジオキサンに溶かし、ポリスチレンカラムおよびUV検出を用いるGPCによって分析した。化合物11−エステルクロマトグラムには、未反応PCLジオールは含まれていない。H NMR(400MHz、CDCl)δ(ppm)4.28−4.46(−C−O−CONH−、BAL)、4.16−4.27(−C−O−CONH−、PCL)、3.98−4.11(−CH−O−、PCL)、3.71−3.77(CH、LDI)、3.09−3.22(C−O−CONH−、LDI)、2.38−2.54(CH−CF、BAL)、2.26−2.38(O−CO−CH−、PCL)、1.45−1.76(−CH−、PCL)、1.20−1.45(−CH−、PCL)。
【0150】
化合物11−エステル(0.5g、0.4mmolLジエステル)をアセトン(5mL)に溶かし、溶解したら、室温で高撹拌しながら1N NaOH(0.4mL、0.4mmol)を加えて3時間時間経過させた。生成物を1N HCl(0.4mL、0.4mmol)で中和し、水を加えて沈澱を完了させ、生成物を洗浄した。生成物(化合物11−酸)を60℃で真空乾燥した。エステル官能基の酸基への変換を、プロトンNMR分析によってモニタリングした。
【0151】
化合物11−酸(2.0g、約2.4mmol酸)、DMAP(0.145g、1.19mmol)、HEMA(1.863g、14.3mmol)およびDCM(10mL)を100mLフラスコに加え、全ての化合物が溶解するまで攪拌した。そのDCM溶液にEDC(1.372g、7.16mmol)を加え、EDCが溶解したら、窒素雰囲気および光からの保護下に溶液を室温で24時間攪拌した。反応混合物をロータリーエバポレータ留去によって減量して粘稠液体とし、水で洗浄した。洗浄した生成物をエーテルに溶かし、その溶液をMgSOと1時間混合することで水を除去した。その溶液を重力濾過によって透明とし、ロータリーエバポレータ留去によって溶媒を除去した。生成物(化合物11′)をエーテルに再溶解させ、ヘキサンによる沈澱によって精製した。H NMR(400MHz、CDCl)δ(ppm)6.08−6.17(ビニルH、HEMA)、5.57−5.64(ビニルH、HEMA)、4.30−4.54(−C−O−CONH−、BAL)、4.21−4.27(−C−O−CONH−、PCL)、3.99−4.13(−CH−O−、PCL)、3.62−3.77(少量、CH、LDI)、3.09−3.22(C−O−CONH−、LDI)、2.43−2.56(CH−CF、BAL)、2.24−2.40(O−CO−CH−、PCL)、1.92−1.99(CH、HEMA)、1.30−1.90(−CH−、PCL)。
【0152】
実施例10:ペンダントビニル基を有するα,ω−FEO1−ポリ(LDI/PCL)の合成(化合物12)
【化24】

【0153】
PCLジオール(10g、8mmol、脱気し)を脱水DMAc(50mL)に溶かした。LDI(3.39g、16mmol、蒸留)およびDBDL触媒を脱水DMAc(17mL)に溶かし、PCLジオール溶液に滴下した。そのプレポリマー反応液を60から70℃でN下に2時間維持した。FEO1(9.648g、18mmol)をDBDLを含むDMAc(24mL)に溶かし、前記プレポリマー溶液に滴下した。リアクターをN下に密閉状態とし、室温で終夜攪拌した。生成物を水中で沈澱させ(3リットル)、クロロホルム(100mL、100ppmBHT)に再溶解させ、MgSOで脱水し、遠心し、上清を傾斜法によって分離した。そのクロロホルム溶液をヘキサン(400mL)に滴下して、生成物を沈澱させ、未反応試薬を抽出した。ヘキサンを傾斜法で除去し、その溶媒抽出手順を2回繰り返した。精製された生成物(化合物12)をクロロホルム(50mL)に溶かし、溶媒を気流フード中にて室温で除去した。H NMR(400MHz、CDCl)δ(ppm)6.41−6.49(FEO1ビニルH)、6.10−6.21(FEO1ビニルH)、5.87−5.94(FEO1ビニルH)、4.29−4.37(O−CH、FEO1)、4.17−4.27(−CH−O−CONH−、PCL、O−CH、FEO1)、3.98−4.11(−CH−O−、PCL)、3.73−3.78(CH、LDI)、3.64−3.73(C−H、FEO1)3.10−3.21(CH−O−CONH−、LDI)、2.40−2.58(CH−CF、FEO1)、2.26−2.38(O−CO−CH−、PCL)、1.45−1.74(−CH−、PCL)、1.18−1.44(−CH−、PCL)。GPC分析:化合物12をTHFに溶かし、ポリスチレンカラムおよびUV検出器を用いるGPC系で流した。遊離のFEO1モノマーは、この分析では検出されなかった。IR分析:1634cm−1(C=C)。
【0154】
実施例11:ペンダントビニル基を有するα,ω−アリル−ポリ(LDI/PTMO)の合成(化合物13)
【化25】

【0155】
PTMO(20.00g、23.23mmol、外部基準としてペンタフルオロベンゼンを用いるH−NMRによる測定でM=861ダルトン)を攪拌バーを入れた250mL丸底フラスコ中で秤取した。フラスコを、油浴を用いて加熱して45℃とし、減圧下に2時間維持することで、ごく微量の水を除去した。フラスコを油浴から外し、放冷して室温としてから、2本の別個の注射器を用いてLDI(9.86g、46.46mmol)および脱水DMAc(100mL)をフラスコに移した。反応フラスコを油浴で加熱して65℃とし、DBDLをフラスコに注射器で入れた。反応混合物を65℃で3時間攪拌し、氷浴で冷却して室温とした。次に、液体アリルアルコール(2.70g、46.46mmoL)を注射器注入によってリアクター中に導入し、反応混合物を室温で終夜(17時間)にわたり攪拌状態に維持した。翌日、反応混合物を、蒸留水900mLの入った1リットルビーカーに注ぎ込んで、ポリマーを沈澱させた。洗浄水を除去することで、粗液体生成物を得た。洗浄を蒸留水(500mL)で2回繰り返すことで、わずかに黄色の液体が得られた。その液体を18時間真空乾燥させて、液体(化合物13−エステル)を得た。元素分析:試薬の化学量論に基づいた理論値(%):C、60.64;H、9.46;N、4.00;O、25.90。測定値:C、60.52;H、9.55;N、3.77;O、25.36。H−NMR(CDCl、300MHz):δ5.92(CHCH、アリル)、5.25(CHCHC,ジェミナル、アリル)、4.74(N)、4.57(CCHCH、アリル)、4.34(NHC、LDI)、4.08(NH(O)COC、PTMO)、3.74(−OC、LDI)、3.42(OCCHCHO、PTMO)、3.17(NHC、LDI)、1.87−1.20(CHCCHNH、LDIおよびOCHCHO、PTMO)。3.17ppmでのLDIおよび2.47ppmでのアリルの積分数に基づいて、5.92ppmの、反応後にオリゴマーに結合したアリル基の量を71%と計算した。5.92ppmでのアリル、3.42ppmでのPTMOおよび3.17ppmでのLDIに対する外部基準としてペンタフルオロベンゼン(6.90ppm)を用いて絶対数平均分子量(Mn)を、1099g/molと計算した。GPC(DMF、1mL/分、標準として直鎖PS、280nmでのUVおよびRI検出器)。FTIR(KBr、無希釈):3315(N−H、広い)、2933−2794(脂肪族C−H)、1720(C=O)、1644(C=C)、1530、1436、1365、1247、1110、778、742cm−1
【0156】
MeOH(HPLC用)150mLおよび攪拌バーの入った500mLフラスコ中に化合物13−エステル(25.0g、35.67mmoL)を秤取した。蒸留水4.20gに溶かした固体NaOH 1.62g(40.5mmoL)の塩基溶液をフラスコに滴下し、混合物を室温で18時間攪拌した。翌日、反応混合物を6.0N HCl水溶液7.0mLで中和し、蒸留水1.4リットルの入った2リットルビーカーに注ぎ入れて、白色沈澱を得た。有機可溶物(所望の生成物を含む)のジエチルエーテル溶媒での抽出、固体MgSOでの有機溶媒の脱水および室温でのロータリーエバポレータによる溶媒の除去によって透明液体を得た。有機溶媒をさらに18時間真空乾燥して、透明粘稠生成物である化合物13−酸を得た。元素分析:試薬の化学量論に基づいた理論値(%):C、60.13;H、9.36;N、4.08;O、26.46。測定値:C、60.05;H、9.58;N、3.36;O、25.64.H−NMR(CDCl、300MHz):δ5.92(CHCH、アリル)、5.25(CHCHC、ジェミナル、アリル)、4.74(N)、4.57(CCHCH、アリル)、4.34(NHC、LDI)、4.08(NH(O)COC、PTMO)、3.42(OCCHCHO、PTMO)、3.17(NHC、LDI)、1.87−1.20(CHCCHNH、LDIおよびOCHCHO、PTMO)。3.74(−OCH)での1重線はほぼ完全に消失して、エステル基の加水分解が確認された。ピーク積分に基づくと、エステルの酸基への変換率推算値は97%であった。FTIR(KBr、無希釈):3315(N−H、広い)、2933−2794(脂肪族C−H)、1720(C=O)、1644(C=C)、1530、1436、1365、1247、1110、778、742cm−1
【0157】
実施例12:ペンダントビニル基を有するα,ω−C8−ポリ(LDI(HEMA)/PTMO)の合成(化合物15)
【化26】

【0158】
PTMO(41.29g、40.01mmol、Mn=1032ダルトン、ヒドロキシル基の滴定によって測定)を攪拌バーを入れた250mL丸底フラスコ中で秤取した。油浴を用いてフラスコを加熱して45℃とし、2時間減圧下に保持して、微量の水を除去した。フラスコを油浴から外し、放冷して室温としてから、2本の別個の注射器を用いてLDI(16.97g、80.02mmol)および脱水DMAc(100mL)をフラスコに移した。反応フラスコを油浴で加熱して65℃とし、DBDL(0.05mL)を注射器でフラスコに入れた。反応混合物を65℃で3時間攪拌した。次に、注射器注入によって1−オクタノール(10.42g、80.02mmoL)をリアクターに導入し、反応混合物を65℃で終夜(17時間)にわたり攪拌状態に維持した。翌日、反応混合物を冷却して室温とし、蒸留水900mLの入った1リットルビーカーに注ぎ入れてポリマーを沈澱させた。洗浄水の除去により、粗液体生成物を得た。洗浄を蒸留水(500mL)で2回繰り返すことで、わずかに黄色の液体(化合物14−エステル)を得た。その液体を18時間真空乾燥し、粘度の高くなった液体を得た。元素分析:試薬の化学量論に基づく理論値(%):C、63.13;H、10.24;N、3.26;O、23.36。測定値:C、62.28;H、10.13;N、3.33;O、24.19.H−NMR(CDCl、300MHz):δ5.23(N)、4.72(N)、4.34(NHCH、LDI)、4.08(NH(O)COC、PTMO)、3.74(−OC、LDI)、3.42(OCCHCHO、PTMOおよび(O)COC(CHCH、オクタノール)、3.17(NHC、LDI)、1.84−1.18(CHCCHNH、LDI、OCHCHO、PTMOおよび(O)COCH(CCH、オクタノール)、0.89((O)COCH(CH、オクタノール)。3.17ppmでのLDIおよび0.89ppmでのオクタノールの積分数に基づくと、反応後にオリゴマーに結合したオクタノールの量は、89%と計算された。0.89ppmでのオクタノール、3.42ppmでのPTMOおよび3.17ppmでのLDIに対する外部基準としてペンタフルオロベンゼン(6.90ppm)を用いて絶対数平均分子量(Mn)を、1425g/molと計算した。FTIR(KBr、無希釈):3314(N−H、広い)、2933−2728(脂肪族C−H)、1710(C=O)、1524、1437、1364、1245、1238、1204、1107、778cm−1
【0159】
MeOH(HPLC用)150mLおよび攪拌バーの入った500mLフラスコ中で化合物14−エステル(45.0g、52.4mmoL)を秤取した。蒸留水6gに溶かした固体NaOH2.31g(57.7mmoL)の塩基溶液をフラスコに滴下し、混合物を室温で21時間攪拌した。翌日、6.0N HCl水溶液11.0mLで反応混合物を中和し、蒸留水1.4リットルの入った2リットルビーカーに注ぎ入れて、白色沈澱を得た。洗浄水を除去したら、粗ロウ状生成物が得られた。これを蒸留水(1.0リットル)で2回洗浄し、最終生成物を18時間真空乾燥して、不透明粘稠生成物(化合物14−酸)を得た。元素分析:試薬の化学量論に基づく理論値(%):C、62.76;H、10.18;N、3.32;O、23.74。測定値:C、62.08;H、10.15;N、3.32;O、23.19。H−NMR(CDCl、300MHz):δ5.23(N)、4.72(N)、4.34(NHC、LDI)、4.08(NH(O)COC、PTMO)、3.42(OCCHCHO、PTMOおよび(O)COC(CHCH、オクタノール)、3.17(NHC、LDI)、1.84−1.18(CHCCHNH、LDI、OCHCHO、PTMOおよび(O)COCH(CCH、オクタノール)、0.89((O)COCH(CH、オクタノール)。3.74(−OCH)の1重線が消失しエステル基の加水分解が確認された。ピーク積分に基づいて、エステルの酸への変換率計算値は81%であった。0.89ppmでのオクタノール、3.42ppmでのPTMOおよび3.17ppmでのLDIに対する外部基準としてペンタフルオロベンゼン(6.90ppm)を用いて絶対数平均分子量(Mn)を、1430g/molと計算した。FTIR(KBr、無希釈):3314(N−H、広い)、2933−2728(脂肪族C−H)、1710(C=O)、1524、1437、1364、1245、1238、1204、1107、778cm−1
【0160】
化合物14−酸(12.20.0g、14.45mmol)、DMAP(0.88g、7.23mmoL)、HEMA(11.28g、86.70mmol)および脱水DCM(150g)を攪拌バーを入れた250mLフラスコ中に秤取した。フ全ての成分が溶解するまでラスコの内容物を磁気撹拌した。次に、EDC(8.31g、43.35mmol)をフラスコに加えた。反応フラスコをアルミホイルで覆い、溶液を室温でN下に5日間攪拌した。5日後、DCMをロータリーエバポレータによって25℃で除去して粘稠粗生成物を得た。粗生成物をHCl水溶液で3回洗浄し(各回で0.1N HCl 30mLおよび蒸留水60mLの混合物を使用)、最後に蒸留水(100mL)自体で洗浄した。有機可溶物(所望の生成物を含む)のジエチルエーテル溶媒への抽出、固体MgSOでの有機溶媒の脱水および室温でのロータリーエバポレータによる溶媒の除去によって、わずかに黄色の液体を得た。最初にジエチルエーテル、ジエチルエーテル/DCM混合物(50/50、重量基準)、DCM自体および次にDCM/MeOH混合物(70/30、重量基準)を用いて前記粘稠液体のカラムクロマトグラフィーを行って、透明粘稠液体(化合物15)6.35g(46%)を得た。元素分析:試薬の化学量論に基づく理論値(%):C、62.95;H、9.83;N、2.93;O、24.31。測定値:C、62.17;H、9.84;N、3.18;O、24.11。H−NMR(CDCl、300MHz):δ6.12(ジェミナルC、HEMA)、5.60(ジェミナルC、HEMA)、5.24(N)、5.23(N)、4.77(N)、4.34(NHC、LDIおよびOCO、HEMA)、4.08(NH(O)COC、PTMO)、3.51−3.30(OCCHCHO、PTMOおよび(O)COC(CHCH、オクタノール)、3.14(NHC、LDI)、1.95((O)CC(C)CH、HEMA)、1.84−1.18(CHCCHNH、LDI、OCHCHO、PTMOおよび(O)COCH(CCH、オクタノール)、0.89((O)COCH(CH、オクタノール)。COOHのCO−HEMAへの推定変換率は、6.12ppm(HEMA)および3.14ppm(LDI)のH−NMRシフト面積に基づいて48%である。0.89ppmでのオクタノール、3.42ppmでのPTMOおよび3.17ppmでのLDIに対する外部基準としてペンタフルオロベンゼン(6.90ppm)を用いて絶対数平均分子量(Mn)を、1722g/molと計算した。GPC分析:生成物をに溶かしジオキサン、を用いるGPC系で流しポリスチレンカラムおよびUV検出器:遊離モノマーは検出されなかった。HPLC分析:保持時間41分(化合物15)、遊離モノマーは検出されなかった。逆相HPLC、C18カラム、MeOHおよびpH9PBS移動相(勾配)。FTIR(KBr、無希釈):3314(N−H、広い)、2933−2728(脂肪族C−H)、1710(C=O)、1636(C=C)、1524、1437、1364、1245、1238、1204、1107、778cm−1
【0161】
実施例13:ペンダントビニル基を有するα,ω−C8−ポリ(LDI(アリル)/PTMO)の合成(化合物16)
【化27】

【0162】
化合物14−酸(9.83g、11.64mmol)、DMAP(0.71g、5.82mmol)、アリルアルコール(4.06、69.86mmol)および脱水DCM(100g)を中攪拌バーを入れた250mLフラスコに秤取した。全ての成分が溶解するまでフラスコの内容物を磁気撹拌した。次に、EDC(6.70g、34.93mmol)白色固体をフラスコに加えた。反応フラスコをアルミホイルで覆い、溶液を室温でN下に3日間攪拌した。3日後、ロータリーエバポレータによって25℃でDCMを除去して、粘稠粗生成物を得た。粗生成物をHCl水溶液で3回洗浄し(各回で0.1N HCl 30mLおよび蒸留水60mLの混合物を使用)、最後に蒸留水自体(100mL)で洗浄した。有機可溶物(所望の生成物を含む)のジエチルエーテル溶媒への抽出、固体MgSOでの有機溶媒の脱水および室温でのロータリーエバポレータによる溶媒の除去によって透明液体を得た。最初にジエチルエーテル、ジエチルエーテル/DCM混合物(50/50、重量基準)、DCM自体、次にDCM/MeOH混合物(70/30、重量基準)を用いる粘稠液体のカラムクロマトグラフィーによって、透明粘稠生成物(化合物16)6.21g(収率60%)を得た。元素分析:試薬の化学量論に基づいた理論値(%):C、63.99;H、10.17;N、3.17;O、22.67。測定値:C、62.51;H、9.97;N、3.19;O、24.01。H−NMR(CDCl、300MHz):δ5.92(CHCH、アリル)、5.28(CHCHC(ジェミナル、アリル))、4.74(N)、4.64(CCHCH、アリル)、4.35(NHC、LDI)、4.08(NH(O)COC、PTMO)、3.42(OCCHCHO、PTMOおよび(O)COC(CHCH、オクタノール)、3.15(NHC、LDI)、1.84−1.18(CHCCHNH、LDI、OCHCHO、PTMOおよび(O)COCH(CCH、オクタノール)、0.89((O)COCH(CH、オクタノール)。COOHのCO−アリルアルコールへの変換率計算値は、5.92ppm(アリル)および3.15ppm(LDI)のH−NMRシフト面積に基づいて38%である。ペンタフルオロベンゼン(6.90ppm)に対する外部基準として0.89ppmでのオクタノール、5.92ppmでのアリル、3.42ppmでのPTMOおよび3.17ppmでのLDIを用いて、絶対数平均分子量(Mn)を1576g/molと計算した。GPC分析:生成物をジオキサンに溶かし、ポリスチレンカラムおよびUV検出器を用いるGPC系で流した。遊離モノマーは検出されなかった。HPLC分析:保持時間41分(化合物16)、遊離モノマーは検出されなかった。逆相HPLC、C18カラム、MeOHおよびpH9PBS移動相(勾配)。FTIR(KBr、無希釈):3314(N−H、広い)、2933−2728(脂肪族C−H)、1710(C=O)、1650(C=C)、1524、1437、1364、1245、1238、1204、1107、778cm−1
【0163】
実施例14:空気中でのUV硬化によって製造される化合物2のホモ架橋フィルム
化合物2(0.50g)およびHMP(0.0025g)を20mLバイアルに秤取した。少量のMeOH(HPLC用、0.3g)をバイアルに加え、混合物の粘度を低下させ、良好な混合を確保した。成分が完全に良好に混合されるまでバイアルを渦攪拌した。混合物をステンレス製の円板またはプレート、アルミニウム秤量皿およびKBr円板などの各種基体上に乗せた。アルミニウムホイル下に、MeOH溶媒を室温で1時間留去させた。液体サンプルの入ったステンレス製の基体、秤量皿およびKBr円板をUVボックスの中心に入れてから、UVランプを5分間オンにして、固体ポリマーフィルムを形成した。全ての基体をボックスから出し、冷却して室温としてから、フィルム分析を行った。
【0164】
ゲル含有量、膨潤比、接触角測定、DSCおよびTGA分析を行った。ステンレス製基体上で製造したフィルムについてこれらフィルムの代表的な厚さは0.4mmであった。秤量皿で鋳造したフィルムについてXPS分析を行った。ゲル含有量:98%±3(n=3)。膨潤比:1.6±0.2(n=3)。接触角:131.0°±2.7(5スポット、3測定/スポット)。XPS分析(90°):(頂面:C:68.84%、N:4.08%、O:14.24%、F:28.44%.)DSC:負の熱流:−70.34℃(PTMOのTg)。TGA:2つの開始点:(A)259.1℃、28.3%質量損失および(B)404.9℃、69.4%質量損失。KBr円板上に製造したフィルムについてC=C基変換をモニタリングした。C=C変換を記録した。
【0165】
実施例15:2つの異なる濃度の開始剤(0.5および1重量%)を用いるアルゴン下でのUV硬化によって製造される化合物2のホモ架橋フィルム
化合物2(2.9815gまたは2.9542g)およびHMP(0.0145gまたは0.0298g)を20mLバイアル中に秤取した。MeOH(HPLC用、5g)をバイアルに加えて、混合物の粘度を低下させ、良好な混合を確保した。成分が完全に良好に混合されるまでバイアルを渦攪拌した。気泡が生じる場合は、気泡が全て消えるまでバイアルを室温で静置してから、混合物をテフロン鋳型、ステンレス製の円板、アルミニウム秤量皿およびKBr円板などの所望の基体上に乗せた。MeOH溶媒を室温で1時間またはアルミニウムホイル下に24時間留去させた。1時間後、液体サンプルの入ったステンレス製の円板、アルミニウム秤量皿およびKBr円板をUVボックスの中心に入れた。ボックスをアルゴンガスで10分間パージしてから、UVランプを5分間オンにした。全ての基体をボックスから出し、冷却して室温としてから、フィルム分析を行った。24時間後、テフロン鋳型に入れたサンプルに対して、UV硬化手順を繰り返した。ステンレス製の円板上に製造したフィルムについて、ゲル含有量、膨潤比、接触角測定、TGA分析を行った。これらフィルムの代表的な厚さは0.4mmであった。秤量皿で鋳造したフィルムについてXPS分析を行った。KBr円板上に製造したフィルムについてC=C基変換をFTIRによってモニタリングし、実施した。これら後者の2個のフィルムの平均厚さは約0.03mmであった。張力測定については、気泡のない透明ポリマーフィルムを鋳型から取り出し、犬用骨形状にカットした(図1)。その犬用骨形サンプルをインストロン(instron)装置上に気密状態で乗せて、その後の張力試験測定に供した。インストロン4301システムを用いて、速度10mm/分で、23℃にて相対湿度57%で、50Nのクロスヘッド負荷でサンプルの試験を行った。0.1から0.3mmの範囲のカリパスによってサンプル厚を測定した。各サンプルの結果は、4または5個の犬用骨形サンプルの平均を表すものである。
【表2】

【0166】
実施例16:UV硬化によって製造される化合物3のホモ架橋フィルム
化合物3(0.5934g)、HMP(0.0029g)およびMeOH(HPLC用、0.3g)を20mLバイアルに秤取した。全ての成分が十分に混合されるまでバイアルを渦攪拌した。気泡が生じる場合は、気泡が全て消えるまでバイアルを室温で静置してから、混合物を所望の基体(ステンレス製の円板、アルミニウム秤量皿およびKBr円板)上に乗せた。アルミニウムホイル下にMeOH溶媒を室温で1時間留去させた。液体サンプルの入ったステンレス製の円板、アルミニウム秤量皿およびKBr円板をUVボックスの中心に入れた。ボックスをアルゴンガスで10分間パージしてから、UVランプを5分間オンにした。全ての基体をボックスから出し、冷却して室温としてから、フィルム分析を行った。ステンレス製円板上に製造されたフィルムについて、ゲル含有量、膨潤比、接触角測定、DSCおよびTGA分析を実施した。これらフィルムの代表的な厚さは0.4mmであった。アルミニウム秤量皿上で鋳造されたフィルムについてXPS分析を実施した。KBr円板上に製造したフィルムについて、C=C基変換をFTIRによってモニタリングし、実施した。後者2個のフィルムの平均厚さは約0.03mmであった。ゲル含有量:56.3%接触角:広がり、約4.5分以内に分離して、分離液滴の平均角度=71°。DSC:負の熱流−67℃。TGA:2つの開始点:(A)240.8℃、34.09%質量損失、(B)417.5℃、62.99%質量損失。XPS:C:56.2%、N:3.80%、O:14.14%、F:25.79%。
【0167】
実施例17:UV硬化によって製造される化合物4のホモ架橋フィルム
化合物4(0.4056g)およびHMP(0.0022g)を20mLバイアル中に秤取した。少量のMeOH(HPLC用、0.3g)をバイアルに加えて、混合物の粘度を低下させ、良好な混合を確保した。全ての成分が良好に混合されるまでバイアルを渦攪拌した。混合物をステンレス製の円板、アルミニウム秤量皿およびKBr円板などの各種基体上に乗せた。アルミニウムホイル下にMeOH溶媒を室温で1時間留去させた。不透明液体サンプルの入ったステンレス製の基体、アルミニウム秤量皿およびKBr円板をUVボックスの中心に入れた。ボックスをアルゴンガスで10分間パージしてから、UVランプを5分間オンにした。全ての基体をボックスから出し、冷却して室温としてから、フィルム分析を行った。ステンレス製の円板上に製造したフィルムについてゲル含有量、膨潤比、接触角測定、DSCおよびTGA分析を行った。これらフィルムの代表的な厚さは0.4mmであった。アルミニウム秤量皿上で鋳造されたフィルムについてXPS分析を実施した。KBr円板上に製造したフィルムについてC=C基変換をFTIRによってモニタリングし、実施した。後者2個のフィルムの平均厚さは約0.03mmであった。ゲル抽出分析(アセトン):56.3%ゲル、550%膨潤。接触角:水滴が表面に接触すると広がり、約1分以内に針から離れる。DSC:負の熱流−68℃。TGA:2つの開始点:(A)288.4℃、31.4%質量損失、(B)411.8℃、67.2%質量損失。XPS:C:58.31%、N:2.86%、O:15.97%、F:21.89%。
【0168】
実施例18:UV硬化によって製造される化合物10のホモ架橋フィルム
化合物10(3.9782g)およびHMP(0.0191g)を20mLバイアル中に秤取した。DCM(6g)をバイアルに加えて、混合物の粘度を低下させ、良好な混合を確保した。全ての成分が良好に混合されるまでバイアルを渦攪拌した。溶液は透明に見えた。気泡が生じる場合は、気泡が全て消えるまでバイアルを室温で静置してから、混合物をテフロン鋳型、ステンレス製の円板、アルミニウム秤量皿およびKBr円板などの所望の基体上に乗せた。DCM溶媒を室温で1時間または24時間アルミニウムホイル下に留去させた。1時間後、液体サンプルの入ったステンレス製の円板、アルミニウム秤量皿およびKBr円板をUVボックスの中心に入れた。サンプルは透明に見えた。ボックスをアルゴンガスで10分間パージしてから、UVランプを5分間オンにした。全ての基体をボックスから出し、冷却して室温としてから、フィルム分析を行った。24時間後、テフロン鋳型上に乗せたサンプルについてUV硬化手順を繰り返した。フィルムの特徴を記録した。
【0169】
実施例19:ある範囲のBPO開始剤濃度での熱硬化によって製造される化合物2のホモ架橋フィルム
ある範囲のBPO濃度(0、0.05、0.1、0.5および1重量%のBPO)を、化合物2の硬化の有効性について評価した。BPO(0、0.05、0.1、0.5および1重量%)を用いて製造した化合物2をトルエンに溶かした(0.1g/mL)。これらの溶液500μLを4mLガラスバイアル中に入れ、トルエンを室温で留去し、フィルムをNパージしたオーブン中にて60℃で硬化させた。0、0.05および0.1重量%のBPO含有量で製造したフィルムは、物理的操作ができるほど硬化しなかった。0.5および1重量%のBPOを用いて製造したフィルムについて、ゲル含有量(アセトン抽出)を分析した:1重量%BPOフィルム(100%ゲル)、0.5重量%BPOフィルム(58%ゲル)。ポリマー溶液25μLを用いてKBr円板でも同等のフィルムを製造し、これらのフィルムをFTIRによって分析した。0から0.1重量%のBPOを用いて製造したフィルムは1634cm−1(C=Cピーク)に1重線を有しているが、0.5および1重量%のBPOを用いて製造したフィルムは肉眼で見られる1634cm−1シグナルを持たない。
【0170】
1重量%BPO開始剤での化合物2のより大きいフィルムを製造して、さらなる分析に供した。化合物2を、BPO開始剤(1mg、化合物2の量の1重量%)を含むトルエンに溶かした(0.1g/mL)。そのトルエン溶液を4cm×4cmPTFEウェル(6mL/ウェル)に流し入れ、PTFE鋳造プレートを半密閉のチャンバ中に室温で1日間置いた。次に、化合物2のフィルムをNパージした60℃オーブン中にて12時間硬化させた。得られたフィルムは透明で弾性であった(図2)。ゲル抽出分析(アセトン):95%ゲル、129%膨潤。接触角分析:水:118°、ブタ:113°、ブタ血液:121°。XPS分析(90°):(頂面:C:41.4%、N:1.1%、O:9.9%、F:45.4%)(底面:C:46.3%、N:2.2%、O:11.1%、F:39.5%)。DSC分析:Tg=−69℃.TGA分析:174℃に開始する分解。
【0171】
化合物のフィルムを、1重量%のV−70開始剤を用いて製造し、BPO硬化フィルムと同様にして硬化させた。DSC分析により、V−70は有効な開始剤であることが認められた。
【0172】
化合物2の成型品を製造した。化合物2をBPO開始剤(1mg、化合物2の量の1重量%)を含むトルエン(0.1g/mL)に溶かした。トルエン溶液を円形および6角形の鋳型に流し入れ、それらの鋳型を半密閉チャンバ中に室温で1日間入れた。次に、化合物2フィルムをNパージした60℃オーブン中で12時間硬化させた。得られた成形品を鋳型から取り出すことができ、それは弾性であった(図3)。
【0173】
実施例20:熱硬化によって製造される化合物6のホモ架橋フィルム
BPO(0、0.05、0.1、0.5および1重量%)を用いて製造した化合物6をトルエン(0.1g/mL)に溶かした。各溶液1.5mLを24mLガラスバイアルに流し入れ、トルエンを室温で留去し、フィルムをNパージしたオーブン中60℃で硬化させた。0%BPOフィルムを除く全てのフィルムが堅く、透明であった。0%BPOを用いて製造したフィルムは柔らかく、粘着性であった。ゲル含有量(アセトン抽出):0重量%BPOフィルム(完全に溶解)、0.05、0.1、0.5および1重量%BPOフィルム(>99%ゲル)。アセトン抽出溶液を減量して乾固させ、H NMR(400MHz、CDCl)によって分析した。全ての抽出物が化合物6のスペクトラムと一致するNMRシグナルを有していた。0および0.05重量%BPOフィルム抽出スペクトラムは、未硬化化合物6と一致するビニルシグナル(5.80から6.40ppm)を含んでいたが、残りの抽出物スペクトラムはビニル化学の証拠を示さなかった。BPOを含むフィルムの抽出物も7.1および8.1ppmにシグナルを有しており、BPO開始剤を示唆した。上記ポリマー溶液25μLを用いて、KBr円板上にも硬化フィルムを製造し、これらのフィルムをFTIRによって分析した。
【0174】
1重量%のBPOを用いた化合物6のより大きいフィルムを製造して、さらなる分析に供した。1重量%のBPOを用いて化合物6のフィルムを製造した。化合物6を、BPO開始剤(化合物6の1重量%)を含むトルエンに溶かした(0.05または0.1g/mL)。そのトルエン溶液(6mL)を4cm×4cmPTFEウェルに流し入れ、PTFE鋳造プレートを鋳造槽中に室温で1日間置いた。化合物6のフィルムをNパージした60℃オーブン中にて12時間硬化させた。得られたフィルムは透明で弾性であった(図4)。0.1g/mLフィルムのゲル含有量(アセトン抽出):96%ゲル、126%膨潤。0.05mg/mLフィルムのゲル含有量(トルエン抽出):92%ゲル、193%膨潤。0.1mg/mLフィルムのゲル含有量(トルエン抽出):>99%ゲル、180%膨潤。図5には、トルエン曝露の前後における0.05および0.1g/mL溶液を用いて製造した硬化化合物6のフィルムを示してあり、フィルム形態に変化がないことを示している。接触角分析:水:114°、ブタ血漿:119°、ブタ血液:116°。XPS分析(90°):(頂面:C:56.5%、N:2.6%、O:16.4%、F:23.7%)(底面:C:52.6%、N:2.4%、O:14.0%、F:30.3%)。DSC分析:Tg=−65℃。TGA分析:200℃で分解開始。引張試験:破壊時応力=2.4MPa、破壊時歪み=42%。1重量%のV−70開始剤を用いて化合物6のフィルムも製造し、BPO硬化フィルムと同様にして硬化させた。DSC分析により、V−70は有効な開始剤であることが認められた。
【0175】
実施例21:熱硬化によって製造される化合物8のホモ架橋フィルム
化合物8を、BPO(化合物8の1重量%)を含むトルエン(0.1g/mL)に溶かした。そのトルエン溶液(6mL)を4cm×4cmPTFEウェルに流し入れ、PTFE鋳造プレートを鋳造槽中に室温で1日間置いた。化合物8のフィルムをNパージした60℃オーブン中にて12時間硬化させた。得られたフィルムは透明、粘着性および弾性であった。ゲル抽出分析:91%ゲル、117%膨潤。接触角分析:前進角:119°。XPS分析(90°):(頂面:C:59.9%、N:2.8%、O:17.5%、F:19.8%)(底面:C:58.0%、N:2.5%、O:16.3%、F:23%)。引張試験:破壊時応力=1.5MPa、破壊時歪み=35%。1重量%のV−70開始剤を用いて、化合物8のフィルムも製造し、BPO硬化フィルムと同様にして硬化させた。DSC分析により、V−70は有効な開始剤であることが認められた。
【0176】
実施例22:熱硬化によって製造される化合物12のホモ架橋フィルム
化合物12をBPO(化合物12の1重量%)を含むTHF(0.1g/mL)に溶かした。そのTHF溶液(6mL)を4cm×4cmPTFEウェルに流し入れ、PTFE鋳造プレートを鋳造槽中に室温で1日間置いた。化合物12のフィルムをNパージした60℃オーブン中にて12時間硬化させた。得られたフィルムは半透明および弾性であった(図6)。ゲル抽出分析:97%ゲル、136%膨潤。接触角分析:前進角:118°。XPS分析(90°):(頂面:C:50.6%、N:1.9%、O:14.5%、F:32.8%)(底面:C:49.7%、N:1.7%、O:13.3%、F:35.3%)。引張試験:破壊時応力=2.0MPa、破壊時歪み=33%。
【0177】
ヘテロ架橋に基づく硬化系
実施例23:UV硬化によって製造される、混合された化合物2および化合物15のヘテロ架橋フィルム
化合物2(2.0311g)、化合物15(2.0345g)およびHMP(0.0195g)を20mLバイアル中に秤取した。MeOH(HPLC用、5g)をバイアルに加えて、混合物の粘度を低下させ、良好な混合を確保した。化合物が全て非常に良好に混合されるまでバイアルを渦攪拌した。気泡が生じる場合は、気泡が全て消えるまでバイアルを室温で静置してから、混合物を所望の基体(テフロン鋳型、ステンレス製の円板、アルミニウム秤量皿およびKBr円板)上に乗せた。溶液は透明に見えた。MeOH溶媒を室温で1時間およびアルミニウムホイル下に24時間留去させた。全てのフィルムが不透明に見えた。不透明液体サンプルを含むステンレス製の基体、アルミニウム秤量皿およびKBr円板をUVボックスの中心に入れた。ボックスをアルゴンガスで10分間パージしてから、UVランプを5分間オンにした。全ての基体をボックスから出し、冷却して室温としてから、フィルム分析を行った。24時間後、テフロン鋳型に入れたサンプルに対して、UV硬化手順を繰り返した。ステンレス製の円板上に製造したフィルムについてゲル含有量、膨潤比、接触角測定およびTGA分析を行った。これらフィルムの代表的な厚さは0.4mmであった。アルミニウム秤量皿上で鋳造されたフィルムについてXPS分析を実施した。KBr円板上で製造したフィルムについて、C=C基変換をFTIRによってモニタリングし、実施した。これら後者の2個のフィルムの平均厚さは約0.03mmであった。張力測定については、気泡のない不透明ポリマーフィルムを鋳型から取り出し、犬用骨形状にカットした。その犬用骨形サンプルをインストロン装置上に気密状態で乗せて、その後の張力試験測定に供した。インストロン4301システムを用いて、速度10mm/分で、23℃にて相対湿度57%で、50Nのクロスヘッド負荷でサンプルの試験を行った。0.1から0.3mmの範囲のカリパスによってサンプル厚を測定した。各サンプルの結果は、5個の犬用骨形サンプルの平均を表すものである。
【表3】

【0178】
ホモ架橋に基づく硬化系
実施例24:UV硬化によって製造される混合された化合物2および化合物10のヘテロ架橋フィルム
化合物10(1.9639g)、化合物2(2.0037g)およびHMP(0.0221g)を20mLバイアル中に秤取した。DCM(5g)をバイアルに加え、そのバイアルを全ての成分が十分に溶解するまで渦攪拌した。溶液は半透明に見え、相分離を示した。ジエチルエーテル(4g)をバイアルに加え、そのバイアルを渦攪拌し、室温で静置した。再度、相分離が生じた。混合物を、テフロン鋳型、ステンレス製の円板、アルミニウム秤量皿およびKBr円板などの所望の基体上に乗せた。DCMおよびジエチルエーテル溶媒を、室温で1時間またはアルミニウムホイル下に24時間蒸発させた。1時間後、液体サンプルの入ったステンレス製の円板、アルミニウム秤量皿およびKBr円板をUVボックスの中心に入れた。全ての基体上のサンプルが肉眼で観察される液滴を有して透明であった。ボックスをアルゴンガスで10分間パージしてから、UVランプを5分間オンにした。全ての基体をボックスから出し、冷却して室温としてから、フィルム分析を行った。24時間後、UV硬化手順を、テフロン鋳型上に流し入れたサンプルについて繰り返した。
【0179】
実施例25:UV硬化によって製造される混合された化合物2およびビニルピロリドンのヘテロ架橋フィルム
化合物2(2.9929g)、ビニルピロリドン(0.9822g)、HMP(0.0191g)およびMeOH(HPLC用、5g)を20mLバイアル中に秤取した。そのバイアルを、内容物が全て良好に混合されるまで渦攪拌した。気泡が生じる場合は、気泡が全て消えるまでバイアルを室温で静置してから、混合物をテフロン鋳型、ステンレス製の基体、アルミニウム秤量皿およびKBr円板上に流し入れた。MeOH溶媒を室温で1時間またはアルミニウムホイル下に24時間留去させた。1時間後、液体サンプルの入ったステンレス製の円板、アルミニウム秤量皿およびKBr円板をUVボックスの中心に入れた。ボックスをアルゴンガスで10分間パージしてから、UVランプを5分間オンにした。全ての基体をボックスから出し、冷却して室温としてから、フィルム分析を行った。24時間後、テフロン鋳型に入れたサンプルに対して、UV硬化手順を繰り返した。ステンレス製の基体上で製造したフィルムについて、ゲル含有量、膨潤比、接触角測定およびTGA分析を実施した。これらフィルムの代表的な厚さは0.4mmであった。アルミニウム秤量皿上で鋳造したフィルム(厚さ0.03mm)についてXPS分析を実施した。ゲル抽出分析:85%ゲル、180%膨潤。接触角:134.5°±2.1。TGA:2つの開始点:(A)293.2℃、25.9%質量損失、(B)418.2℃、68.5%質量損失。FTIR分析:C=C基の脱離をモニタリングして、KBr円板上で製造した材料の重合を観察した。引張試験:破壊時応力=7.3MPa、破壊時歪み=69.8%。XPS分析(90°):C:47.65%、N:3.45%、O:10.53%、F:38.42%。
【0180】
実施例26:UV硬化によって製造した、混合された化合物2およびHEMAのヘテロ架橋フィルム
化合物2(0.4003g)、HEMA(0.1485g)およびHMP(0.0033g)を20mLバイアル中に秤取した。化合物2が完全に溶解するまでバイアルを渦攪拌した。気泡が生じる場合は、気泡が全て消えるまでバイアルを室温で静置してから、混合物を所望の基体(ステンレス製の円板、アルミニウム秤量皿およびKBr円板)上に乗せた。液体サンプルの入ったステンレス製の基体、秤量皿およびKBr円板をUVボックスの中心に入れた。ボックスをアルゴンガスで10分間パージしてから、UVランプを5分間オンにした。全ての基体をボックスから出し、冷却して室温としてから、フィルム分析を行った。ステンレス製の基体上で製造したフィルムについて、ゲル含有量、膨潤比、接触角測定およびTGA分析を実施した。これらフィルムの代表的な厚さは0.4mmであった。アルミニウム秤量皿上で鋳造したフィルム(厚さ0.03mm)について、XPS分析を実施した。ゲル抽出分析:90.3%ゲル、192%膨潤。接触角:フィルム表面上で水滴が急速に広がり、約1分以内に針から離れた。離れた液滴の接触角は、約65°±2である(n=3)。DSC:Tg=10.3℃。TGA:2つの開始点:(A)299.4℃、27.8%質量損失、(B)414.7℃、66.1%質量損失。IR:KBr円板上に製造したフィルムについてC=C基変換をFTIRによってモニタリングし、実施した。XPS分析(90°):C:50.94%、N:3.38%、O:11.41%、F:34.27%。
【0181】
実施例27:UV硬化によって製造される、混合した化合物2およびメタクリル酸のヘテロ架橋フィルム
化合物2(0.4047g)、MAA(0.1321g)およびHMP(0.0035g)を20mLバイアル中に秤取した。化合物2が完全に溶解するまでバイアルを渦攪拌した。気泡が生じる場合は、気泡が全て消えるまでバイアルを室温で静置してから、混合物を所望の基体(ステンレス製の円板、アルミニウム秤量皿およびKBr円板)上に乗せた。液体サンプルの入ったステンレス製の基体、アルミニウム秤量皿およびKBr円板をUVボックスの中心に入れた。そのボックスをアルゴンガスで10分間パージしてから、UVランプを5分間オンにした。全ての基体をボックスから出し、冷却して室温としてから、フィルム分析を行った。ステンレス製基体上で製造したフィルムについて、ゲル含有量、膨潤比、接触角測定、DSCおよびTGA分析を行った。これらフィルムの代表的な厚さは0.4mmであった。ゲル抽出分析:91.4%ゲル、175%膨潤。接触角:水滴がフィルム表面上で広がり、針から約5分以内に離れた。離れた液滴の接触角は約74°±1(n=4)である。DSC:第1の熱:23.5℃で負の熱流。これは、純粋なPTMOポリマーのTg(約−70℃)における純粋なMAAポリマーのTg(Tg約228℃)へのシフトを表す。TGA:2つの開始点:(A)234.9℃、30.2%質量損失、(B)407.4℃、65.5%質量損失。IR:KBr円板上に製造したフィルムについてC=C基変換をFTIRによってモニタリングし、実施した。
【0182】
実施例28:UV硬化によって製造される、混合された化合物2およびメチルメタクリレートのヘテロ架橋フィルム
化合物2(3.0335g)、MMA(3.0182g)およびHMP(0.0200g)を20mLバイアル中に秤取した。化合物2が完全に溶解するまでバイアルを渦攪拌した。気泡が生じる場合は、気泡が全て消えるまでバイアルを室温で静置してから、混合物を所望の基体(テフロン鋳型、ステンレス製の基体、アルミニウム秤量皿およびKBr円板)上に乗せた。液体サンプルの入ったテフロン鋳型、ステンレス製の基体、秤量皿およびKBr円板をUVボックスの中心に入れた。そのボックスをアルゴンで1分間パージしてから、UVランプを5分間オンにした。全ての基体をボックスから出し、冷却して室温としてから、フィルム分析を行った。ステンレス製の基体上で製造したフィルムについて、ゲル含有量、膨潤比、接触角測定およびTGA分析を実施した。これらフィルムの代表的な厚さは0.4mmであった。アルミニウム秤量皿上で鋳造したフィルム(厚さ0.03mm)について、XPS分析を実施した。ゲル抽出分析:93.5%ゲル、230%膨潤。接触角:132.9°±2.2。TGA:2つの開始点:(A)296.5℃、27.4%質量損失、(B)411.4℃、69.5%質量損失。IR:KBr円板上で製造したフィルムについて、C=C基変換をFTIRによってモニタリングし、実施した。引張試験:降伏応力=9.2MPa、破壊時応力=13.6MPa、破壊時歪み=9.9%。XPS分析(90°):C:47.5%、N:3.93%、O:11.02%、F:37.45%。
【0183】
実施例28′:UV硬化によって製造される、混合した化合物2およびTEGMAのヘテロ架橋フィルム
化合物2(0.37500g)、TEGDMA(0.1250g)およびHMP(0.005g)を20mLバイアル中に秤取した。化合物2が完全に溶解するまで、バイアルを渦攪拌した。気泡が生じる場合は、気泡が全て消えるまでバイアルを室温で静置してから、混合物を所望の基体(ステンレス製の基体、アルミニウム秤量皿およびKBr円板)上に乗せた。液体サンプルの入ったステンレス製の基体、秤量皿およびKBr円板をUVボックスの中心に入れた。ボックスをアルゴンガスで1分間パージしてから、UVランプを5分間オンにした。全ての基体をボックスから出し、冷却して室温としてから、フィルム分析を行った。ステンレス製基体上で製造したフィルムについて、ゲル含有量、膨潤比、接触角測定およびTGA分析を行った。これらフィルムの代表的な厚さは0.4mmである。アルミニウム秤量皿上に鋳造されたフィルム(厚さ0.03mm)についてXPS分析を実施した。ゲル抽出分析:89.8%ゲル、140%膨潤。接触角:急速に広がった。TGA:246.5℃、97.35%質量損失。IR:KBr円板上で鋳造されたフィルムについて実施したFTIRによって、C=C基変換をモニタリングした。XPS分析(90°):C:49.07%、N:3.14%、O:12.56%、F:35.22%。
【0184】
実施例29:UV硬化によって製造される化合物2およびSIBSポリマーのヘテロ架橋フィルム
SIBS溶液(トルエン中0.5g/mL)をステンレス製の基体およびアルミニウム秤量皿上に乗せた。トルエンを室温で終夜留去した。20mLバイアル中、化合物2、HMPおよびMeOH(HPLC用)を秤取した。成分が完全に良好に混合されるまでバイアルを渦攪拌した。気泡が生じる場合は、気泡が全て消えるまでバイアルを室温で静置した。化合物2溶液をバイアルから50mLHDPEスプレー瓶に移した。そのスプレー瓶を用いて、SIBSフィルムの頂部に化合物2およびHMPの薄層を成膜した。アルミニウムホイル下に、MeOH溶媒を室温で1時間留去した。化合物2およびHMPでコーティングされたSIBSフィルムを含むステンレス製の基体および秤量皿をUVボックスの中心に入れた。ボックスを5分間アルゴンガスでパージしてから、UVランプを5分間オンにした。全ての基体をボックスから出し、冷却して室温としてから、フィルム分析を行った。接触角:128°。XPS分析(90°):(SIBS)C:98.90%、N:0.18%、O:0.45%、F:0.47%。(SIBS+化合物2)C:53.50%、N:3.95%、O:15.11%、F:27.63%。
【0185】
実施例30:UV硬化によって製造される化合物2およびEVAポリマーのヘテロ架橋フィルム
EVA溶液(トルエン中0.5g/mL)をステンレス製の基体およびアルミニウム秤量皿上に乗せた。トルエンを室温で終夜留去した。20mLバイアル中、化合物2、HMPおよびMeOH(HPLC用)を秤取した。成分が完全に良好に混合されるまでバイアルを渦攪拌した。気泡が生じる場合は、気泡が全て消えるまでバイアルを室温で静置する。化合物2の溶液をバイアルから50mLHDPEスプレー瓶に移した。そのスプレー瓶を用いて、EVAフィルムの頂部に化合物2およびHMPの薄層を成膜した。アルミニウムホイル下に、MeOH溶媒を室温で1時間留去させた。化合物2およびHMPでコーティングしたEVAフィルムを含むステンレス製の基体および秤量皿をUVボックスの中心に入れた。ボックスをアルゴンガスで5分間パージしてから、UVランプを5分間オンにした。全ての基体をボックスから出し、冷却して室温としてから、フィルム分析を行った。接触角:126°。XPS分析(90°):(EVA)C:84.61%、N:4.03%、O:11.36%、F:0%。(EVA+化合物2)C:72.72%、N:4.08%、O:12.59%、F:10.21%。
【0186】
実施例31:化合物2および化合物6の混合物を用いて製造されるヘテロ架橋フィルム
化合物2(0.3g)をBPO(3mg、化合物2の量の1重量%)を含むトルエン(0.1g/mL)に溶かした。化合物6(0.3g)を、BPO(3mg、化合物6の量の1重量%)を含むトルエン(0.1g/mL)に溶かした。これら二つの溶液を50:50の比で混合し、この合わせた溶液6mLを4cm×4cmのPTFEウェルに流し入れた。PTFE鋳造プレートを半密閉チャンバ中に室温で1日間置いた。次に、フィルムを、Nパージした60℃オーブン中にて12時間硬化させた。得られたフィルムは透明、弾性および非粘着性であった(図7)。ゲル抽出分析(アセトン):96%ゲル、141%膨潤。接触角分析:前進角:116°。XPS分析(90°):(頂面:C:51.4%、N:2.5%、O:14.8%、F:31.1%)(底面:C:48.7%、N:1.9%、O:13.0%、F:35.5%)。
【0187】
実施例32:化合物6および化合物8の組み合わせを用いて製造されるヘテロ架橋フィルム
化合物6(0.3g)をBPO(3mg、化合物6の量の1重量%)を含むトルエン(0.1g/mL)に溶かした。化合物8(0.3g)をBPO(3mg、化合物8の量の1重量%)を含むトルエン(0.1g/mL)に溶かした。これら二つの溶液を50:50の比で混合し、この合わせた溶液6mLを、4cm×4cmPTFEウェルに流し入れた。PTFE鋳造プレートを、半密閉チャンバに室温で1日間置いた。次に、そのフィルムをNパージした60℃オーブン中で12時間硬化させた。得られたフィルムは、透明、弾性、引き裂き耐性および非粘着性であった(図8)。ゲル抽出分析(アセトン):96%ゲル、154%膨潤。接触角分析:前進角:127°。XPS分析(90°):(頂面:C:54.2%、N:2.5%、O:16.4%、F:26.8%)(底面:C:49.2%、N:1.8%、O:12.2%、F:36.1%)。
【0188】
実施例33:化合物6およびビニルモノマー(FEO1)の組み合わせを用いて製造されるヘテロ架橋フィルム
化合物6(0.3g)をBPO(3mg、化合物6の量の1重量%)を含むトルエン(0.1g/mL)に溶かした。FEO1(0.3g)をBPO(3mg、の1重量%FEO1の量)を含むトルエン(0.1g/mL)に溶かした。これら二つの溶液を50:50の比で混合し、この合わせた溶液6mLを、4cm×4cmPTFEウェルに流し入れた。PTFE鋳造プレートを、半密閉チャンバに室温で1日間置いた。次に、そのフィルムをNパージした60℃オーブン中にて12時間硬化させた。得られたフィルムは、透明、弾性、引き裂き耐性および非粘着性であった(図9)。ゲル抽出分析(アセトン):93%ゲル、133%膨潤。接触角分析:前進角:104°。XPS分析(90°):(頂面:C:47.8%、N:1.0%、O:13.4%、F:36.2%)(底面:C:46.2%、N:0.6%、O:11.7%、F:39.0%)。
【0189】
実施例34:化合物6およびビニルモノマー(HEMA)の組み合わせを用いて製造されるヘテロ架橋フィルム
化合物6(0.3g)をBPO(3mg、化合物6の量の1重量%)を含むトルエン(0.1g/mL)に溶かした。HEMA(0.3g)をBPO(3mg、HEMAの量の1重量%)を含むトルエン(0.1g/mL)に溶かした。これら二つの溶液を50:50の比で混合し、この合わせた溶液6mLを、4cm×4cmPTFEウェルに流し入れた。PTFE鋳造プレートを、半密閉チャンバに室温で1日間置いた。次に、そのフィルムをNパージした60℃オーブン中で12時間硬化させた。得られた硬化材料は、堅く、不透明であった(図10)。ゲル抽出分析(アセトン):93%ゲル、153%膨潤。XPS分析(90°):(頂面:C:53.4%、N:2.5%、O:16.2%、F:27.2%)(底面:C:51.1%、N:1.8%、O:13.1%、F:33.8%)。
【0190】
実施例35:化合物2および化合物1の組み合わせを用いて製造されるヘテロ架橋フィルム
化合物2(0.1g)をBPO(1mg、化合物2の量の1重量%)を含むトルエン(0.1g/mL)に溶かした。化合物1−エステル(0.1g)を、BPO(1mg、化合物1−エステルの量の1重量%)を含むトルエン(0.1g/mL)に溶かした。これら二つの溶液を50:50の比で混合し、この合わせた溶液2mLを、2cm×2cmPTFEウェルに流し入れた。PTFE鋳造プレートを、半密閉チャンバに室温で1日間置いた。次に、そのフィルムをNパージした60℃オーブン中で12時間硬化させた。得られた硬化材料は均一で、堅かった。ゲル抽出分析(アセトン):87%ゲル.XPS分析(90°):頂面:C:41.4%、N:1.1%、O:9.9%、F:45.4%。
【0191】
実施例36:HEMAモノマーを用いて製造されるホモ架橋フィルム
HEMA(0.6g)をBPO(6mg、HEMAの量の1重量%)を含むトルエン(6mL、0.1g/mL)に溶かし、この溶液を4cm×4cmPTFEウェルに流し入れた。PTFE鋳造プレートを、半密閉チャンバに室温で1日間置いた。次に、そのフィルムをNパージした60℃オーブン中で12時間硬化させた。得られた硬化材料は硬く、厚さが一定でなかった。ゲル抽出分析(アセトン):>99%ゲル、136%膨潤。
【0192】
実施例37:FEO1モノマーを用いて製造されるホモ架橋フィルム
FEO1(0.6g)を、BPO(6mg、FEO1の量の1重量%)を含むトルエン(6mL、0.1g/mL)に溶かし、この溶液を4cm×4cmPTFEウェルに流し入れた。PTFE鋳造プレートを、半密閉チャンバに室温で1日間置いた。次に、そのフィルムをNパージした60℃オーブン中で12時間硬化させた。得られた硬化材料は硬く、厚さが一定でなかった。ゲル抽出分析(アセトン):84%ゲル。
【0193】
実施例38:化合物1およびHEMAモノマーの混合物を用いて製造されるヘテロ架橋フィルム
化合物1−エステル(0.3g)をBPO(3mg、化合物1−エステルの量の1重量%)を含むトルエン(0.1g/mL)に溶かした。HEMA(0.3g)を、BPO(3mg、HEMAの量の1重量%)を含むトルエン(0.1g/mL)に溶かした。これら二つの溶液を50:50の比で混合し、この合わせた溶液6mLを、4cm×4cmPTFEウェルに流し入れた。PTFE鋳造プレートを、半密閉チャンバに室温で1日間置いた。そのフィルムを、Nパージした60℃オーブン中で12時間硬化させた。得られた硬化材料は化合物1より堅かったが、鋳型内で縮み、柔らかすぎてフィルムとして取り扱うことができなかった。
【0194】
実施例39:化合物1およびFEO1モノマーの混合物を用いて製造されるヘテロ架橋フィルム
化合物1−エステル(0.3g)をBPO(3mg、化合物1−エステルの量の1重量%)を含むトルエン(0.1g/mL)に溶かした。FEO1(0.3g)を、BPO(3mg、FEO1の量の1重量%)を含むトルエン(0.1g/mL)に溶かした。これら二つの溶液を50:50の比で混合し、この合わせた溶液6mLを、4cm×4cmPTFEウェルに流し入れた。PTFE鋳造プレートを、半密閉チャンバに室温で1日間置いた。次に、そのフィルムをNパージした60℃オーブン中で12時間硬化させた。得られた硬化材料は硬く、鋳型内では均一に見えたが、柔らかすぎてフィルムとして扱うことはできなかった。
【0195】
ステントプラットホーム上での重合
実施例40:噴霧および熱硬化によって製造されるステント上の化合物2のコーティング
化合物2(200mg)をトルエンに溶かし(4mL、0.05g/mL)、室温で90分間攪拌し、BPO(2mg、化合物2の量の1重量%)を加え、混合物をさらに30分間攪拌した。その混合溶液を、EFD噴霧システムを用いてステント上に噴霧し、コーティングをNパージしたオーブン中60℃で12時間硬化させた。SEM分析(図11)では、ステントが均一にコーティングされていることが示された。さらに、化合物2コーティングしたステントをバルーンに圧着し、約68.9KPa(10psi)で展開した。コーティングは無傷のままであった(図12)。
【0196】
実施例41:噴霧および熱硬化によって製造されるステント上の化合物6のコーティング
化合物6(200mg)をトルエンに溶かし(4mL、0.05g/mL)、室温で90分攪拌し、BPO(2mg、化合物6の量の1重量%)を加え、混合物をさらに30分間攪拌した。混合溶液を、EFD噴霧システムを用いてステント上に噴霧し、コーティングを60℃でNパージしたオーブン中で12時間硬化させた。SEM分析(図13)は、ステントが均一にコーティングされていることを示していた。24時間硬化させた後、化合物6でコーティングしたステントをトルエンで抽出し、SEM画像は、コーティングは溶媒抽出後に無傷のままであることを示唆していた(図14)。さらに、化合物6コーティングしたステントをPBS7.4緩衝液でも24時間抽出し、SEM画像はコーティングが緩衝液抽出後に無傷であることを示唆していた(図15)。
【0197】
実施例42:噴霧および熱硬化によって製造されるステント上の化合物8のコーティング
化合物8(200mg)をトルエンに溶かし(4mL、0.05g/mL)、室温で90分間攪拌し、BPO(2mg、化合物8の量の1重量%)を加え、混合物をさらに30分間攪拌した。混合溶液を、EFD噴霧システムを用いてステント上に噴霧し、コーティングをNパージしたオーブン中にて60℃で12時間硬化させた。SEM分析(図16)は、ステントが均一にコーティングされていることを示していた。
【0198】
実施例43:噴霧および熱硬化によって製造されるステント上の化合物12のコーティング(トルエン溶媒)
化合物12(200mg)をトルエンに溶かし(4mL、0.05g/mL)、室温で90分間攪拌し、BPO(2mg、化合物12の量の1重量%)を加え、混合物をさらに30分間攪拌した。混合溶液を、EFD噴霧システムを用いてステント上に噴霧し、コーティングをNパージしたオーブン中60℃で12時間硬化させた。SEM分析(図17)は、ステントが適当なコーティングを示すことを示していた。
【0199】
実施例44:噴霧および熱硬化によって製造されるステント上の化合物12のコーティング(トルエン/THF溶媒)
化合物12(200mg)を75:25トルエン:THF(4mL、0.05g/mL)に溶かし、室温で90分間攪拌し、BPO(2mg、化合物12の量の1重量%)を加え、混合物をさらに30分間攪拌した。混合溶液をEFD噴霧システムを用いてステント上に噴霧し、コーティングをNパージしたオーブン中60℃で12時間硬化させた。SEM分析(図18)は、ステントが均一にコーティングされていることを示していた。
【0200】
実施例45:噴霧および熱硬化によって製造される、ステント上の化合物2および化合物6の混合物のコーティング
化合物2および化合物6(1:1、合計200mg)をトルエン(4mL、0.05g/mL)に溶かし、室温で90分間攪拌し、BPO(2mg、化合物2および化合物6の合計量の1重量%)を加え、混合物をさらに30分間攪拌した。混合溶液を、EFD噴霧システムを用いてステント上に噴霧し、コーティングをNパージしたオーブン中60℃で12時間硬化させた。SEM分析(図19)は、ステントが均一にコーティングされていることを示していた。
【0201】
実施例46:噴霧および熱硬化によって製造される、ステント上の化合物6および化合物8の混合物のコーティング
化合物6および化合物8(1:1、合計200mg)をトルエン(4mL、0.05g/mL)に溶かし、室温で90分間攪拌し、BPO(2mg、化合物6および化合物8の合計量の1重量%)を加え、混合物をさらに30分間攪拌した。混合溶液を、EFD噴霧システムを用いてステント上に噴霧し、コーティングをNパージしたオーブン中60℃で12時間硬化させた。SEM分析(図20)は、ステントが均一にコーティングされていることを示していた。
【0202】
実施例47:噴霧および熱硬化によって製造される、ステント上の化合物6およびパクリタキセルの混合物のコーティング
化合物6(200mg)を75:25トルエン:THF(4mL、0.05g/mL)に溶かし、室温で90分間攪拌し、パクリタキセル(17.6mg、化合物6の量の8.8重量%)およびBPO(2mg、化合物6の量の1重量%)を加え、混合物をさらに30分間攪拌した。混合溶液をEFD噴霧システムを用いてステント上に噴霧し、コーティングをNパージしたオーブン中60℃で12時間硬化させた。SEM分析(図21)は、ステントが均一にコーティングされていることを示していた。
【0203】
生体適合性アッセイ
実施例48:化合物2のMEM溶出アッセイ
実施例19からのフィルムのサンプル(1cm×2cm)を秤取し、MEM培地中で24時間インキュベートした。L−929マウス線維芽細胞培養物のカウント済み小分けサンプルを各MEM抽出物に接種し、24時間後に、細胞群の安定性をトリパンブルー排除法を用いて評価した。この細胞傷害性評価方法によると、化合物2のフィルムは無毒性であった。
【0204】
実施例49:炎症細胞相互作用について評価される熱硬化によって製造された化合物2のホモ架橋フィルム
化合物2をBPO開始剤(化合物2の量の1重量%)を含むトルエン(0.1g/mL)に溶かした。そのトルエン溶液を96ウェルのポリプロピレンプレート(6ウェル/プレート)に流し、プレートを半密閉チャンバ中に室温で1日間置いた。化合物2フィルムを、Nパージした60℃のオーブン中にて12時間硬化させ、真空乾燥した。比較のため、SIBSのフィルムを第2の96ウェルプレートに流し入れ、SIBSの0.1g/mLトルエン溶液を6個のウェルに入れ、プレートを半密閉チャンバ中に室温で1日間置き、60℃オーブンで1日乾燥させ、真空乾燥した。SIBSの入ったプレートに、316ステンレス製挿入物を挿入した。プレートをUVランプ下に1時間滅菌してから、各サンプルウェルをPBS 200μLを用いて水和させた。PMA存在下に各サンプルに、約2.5×10のU937単球様細胞を接種し、高湿度インキュベータ中37℃で3日間インキュベートした。付着性U937マクロファージを、CyQuantアッセイを用いて数えた(図27)。同様の実験で、化合物2およびSIBSフィルムをステンレス製挿入物上で製造した(図28)。
【0205】
実施例50:化合物2のホモ架橋フィルムのコーン・プレートアッセイ
実施例19からの化合物2フィルムのサンプルおよび316ステンレス(4cm×4cm)を、コーン・プレート装置の個々のウェル中に固定した。51Cr標識血小板(血小板250000個/μL)および125I標識フィブリノゲンを含む全血懸濁液の1.2mL小分けサンプルをフィルム上にピペットで注ぎ、コーンを下げて各ウェルに入れ、直ちに200rpmで15分間回転させた。次に、フィルムを外し、リンスし、付着性血小板およびフィブリノゲンをガンマカウンタによって定量した(図29)。
【0206】
実施例51:化合物6のホモ架橋フィルムのMEM溶出アッセイ
実施例20からのフィルムのサンプル(1cm×2cm)を秤取し、MEM培地中で24時間インキュベートした。L−929マウス線維芽細胞培養物のカウント済み小分けサンプルを各MEM抽出物に接種し、24時間後に、細胞群の安定性をトリパンブルー排除法を用いて評価した。この細胞傷害性評価方法によると、化合物6のフィルムは無毒性であった。
【0207】
実施例52:炎症細胞相互作用について評価される熱硬化によって製造された化合物6のホモ架橋フィルム
化合物6をBPO開始剤(化合物6の量の1重量%)を含むトルエン(0.1g/mL)に溶かした。そのトルエン溶液を96ウェルのポリプロピレンプレート(6ウェル/プレート)に流し、プレートを半密閉チャンバ中に室温で1日間置いた。化合物6フィルムを、Nパージした60℃のオーブン中にて12時間硬化させ、真空乾燥した。比較のため、SIBSのフィルムを第2の96ウェルプレートに流し入れ、SIBSの0.1g/mLトルエン溶液を6個のウェルに入れ、プレートを半密閉チャンバ中に室温で1日間置き、60℃オーブンで1日乾燥させ、真空乾燥した。SIBSの入ったプレートに、316ステンレス製挿入物も挿入した。プレートをUVランプ下に1時間滅菌してから、各サンプルウェルをPBS 200μLを用いて水和させた。PMA存在下に各サンプルに、約2.5×10のU937単球様細胞を接種し、高湿度インキュベータ中37℃で3日間インキュベートした。付着性U937マクロファージを、CyQuantアッセイを用いて数えた(図27)。同様の実験で、化合物6およびSIBSフィルムをステンレス製挿入物上で製造した(図28)。
【0208】
実施例53:化合物6のホモ架橋フィルムのコーン・プレートアッセイ
実施例20からの化合物6フィルムのサンプルおよび316ステンレス(4cm×4cm)を、コーン・プレート装置の個々のウェル中に固定した。51Cr標識血小板(血小板250000個/μL)および125I標識フィブリノゲンを含む全血懸濁液の1.2mL小分けサンプルをフィルム上にピペットで注ぎ、コーンを下げて各ウェルに入れ、直ちに200rpmで15分間回転させた。次に、フィルムを外し、リンスし、付着性血小板およびフィブリノゲンをガンマカウンタによって定量した(図29)。
【0209】
実施例54:炎症細胞相互作用について評価される熱硬化によって製造された化合物8のホモ架橋フィルム
化合物8をBPO開始剤(化合物8の量の1重量%)を含むトルエン(0.1g/mL)に溶かした。そのトルエン溶液を96ウェルのポリプロピレンプレート(6ウェル/プレート)に流し、プレートを半密閉チャンバ中に室温で1日間置いた。化合物8フィルムを、Nパージした60℃のオーブン中にて12時間硬化させ、真空乾燥した。比較のため、SIBSのフィルムを第2の96ウェルプレートに流し入れ、SIBSの0.1g/mLトルエン溶液を6個のウェルに入れ、プレートを半密閉チャンバ中に室温で1日間置き、60℃オーブンで1日乾燥させ、真空乾燥した。SIBSの入ったプレートに、316ステンレス製挿入物も挿入した。プレートをUVランプ下に1時間滅菌してから、各サンプルウェルをPBS 200μLを用いて水和させた。PMA存在下に各サンプルに、約2.5×10のU937単球様細胞を接種し、高湿度インキュベータ中37℃で3日間インキュベートした。付着性U937マクロファージを、CyQuantアッセイを用いて数えた(図27)。同様の実験で、化合物8およびSIBSフィルムをステンレス製挿入物上で製造した(図28)。
【0210】
実施例55:炎症細胞相互作用について評価される熱硬化によって製造された化合物12のホモ架橋フィルム
化合物12をBPO開始剤(化合物12の量の1重量%)を含むトルエン(0.1g/mL)に溶かした。そのトルエン溶液を96ウェルのポリプロピレンプレート(6ウェル)に流し、プレートを半密閉チャンバ中に室温で1日間置いた。化合物12フィルムを、Nパージした60℃のオーブン中にて12時間硬化させ、真空乾燥した。比較のため、SIBSのフィルムを第2の96ウェルプレートに流し入れ、SIBSの0.1g/mLトルエン溶液を6個のウェルに入れ、プレートを半密閉チャンバ中に室温で1日間置き、60℃オーブンで1日乾燥させ、真空乾燥した。SIBSの入ったプレートに、316ステンレス製挿入物も挿入した。プレートをUVランプ下に1時間滅菌してから、各サンプルウェルをPBS 200μLを用いて水和させた。PMA存在下に各サンプルに、約2.5×10のU937単球様細胞を接種し、高湿度インキュベータ中37℃で3日間インキュベートした。付着性U937マクロファージを、CyQuantアッセイを用いて数えた(図27)。同様の実験で、化合物12およびSIBSフィルムをステンレス製挿入物上で製造した(図28)。
【0211】
薬剤の取り込みおよび放出
セクション1からの化合物は、活性薬剤の固定化および封入に好適な官能基を有するポリマープラットホームを提供する。化合物6、7および8は、活性薬剤との共有結合的相互作用のための官能基を有する。活性薬剤を含むフィルムまたはステントコーティングは、セクション2および3の方法に従って製造する。
【0212】
実施例56:化合物2およびアスピリン(90:10)のフィルム、UV硬化
化合物2(1.6481g)、ASA(0.1841g)、HMP(0.0088g)およびMeOH(HPLC用、4.01g)を20mLバイアル中に秤取した。全ての成分が良好に混合されるまでバイアルを渦攪拌した。気泡が生じる場合は、気泡が全て消えるまでバイアルを室温で静置してから、混合物を所望の基体(ステンレス製の円板、アルミニウム秤量皿およびKBr円板)上に乗せた。アルミニウムホイル下にMeOHを室温で1時間および24時間にわたって留去した。1時間後、液体サンプルの入ったステンレス製の基体、アルミニウム秤量皿およびKBr円板をUVボックスの中心に入れた。ボックスをアルゴンガスで10分間パージしてから、UVランプを2分間オンとした。全ての基体をボックスから出し、冷却して室温としてから、フィルム分析を行った。24時間後、テフロン基体上に乗せたサンプルについて、UV硬化手順を繰り返した。ステンレス製基体上で製造したフィルムについて、ゲル含有量、膨潤比、接触角測定、DSCおよびTGA分析を行った。これらフィルムの代表的な厚さは0.4mmであった。アルミニウム秤量皿上に鋳造されたフィルム(厚さ0.03mm)について、XPS分析を実施した。ゲル含有量:82%、膨潤=180%。接触角:131.8°±2.0。DSC:−64℃での負の熱流(PTMOのTgに関連)。TGA:2つの開始点:(A)234.9℃、30.2%質量損失、(B)407.4℃、65.5%質量損失。IR:KBr円板上に製造したフィルムについて、C=C基変換をFTIRによってモニタリングし、実施する。XPS:C:50.68%、N:3.02%、O:12.00%、F:34.31%。テフロン鋳型上に鋳造したフィルムについて、アスピリン放出を調べた(図22)。
【0213】
実施例57:化合物2およびアスピリン(75:25)のフィルム、UV硬化
化合物2(100mg)、HMP(1mg)およびASA(33mg)を、2.5g/mL溶液としてDMSOに溶かした。その溶液を4mLガラスバイアルに流し入れ、その材料をUV光下に2分間硬化させた。得られた透明弾性フィルムをPBS溶液中にて37℃で24時間インキュベートしながら、1、2、3、4、7および24時間の時点でUV分光光度計測定によって、ASA放出の測定を行った(図23)。
【0214】
実施例58:化合物2およびイブプロフェン(75:25)のフィルム、熱硬化
イブプロフェンを、BPO(1重量%)を含むトルエン(0.1g/mL)中の化合物2(合計量の25重量%)とともに混合し、60℃でN下に硬化させた。硬化したフィルムからのイブプロフェンの放出を、UV分光光度計測定によって37℃のPBS溶液中にて96時間にわたって測定した(図24)。
【0215】
実施例59:化合物2およびシプロフロキサシン−HEMA(化合物17)のフィルム
【化28】

【0216】
N−トリチルシプロフロキサシン、EDCおよびDMAP(1:8:0.5モル比の化学量論量で)を脱水DCMに溶かした。次に、COOH基のモル比に対して10%過剰のHEMAを反応系に加えた。反応混合物を室温でN下に7日間攪拌した。溶媒をロータリーエバポレータで除去した後、固体残留物を室温でジエチルエーテルによって抽出した。この反応の粗生成物を粗く乾燥させてから、DCMに溶かした。その溶液にTFAc(DCMの10体積%)を加え、室温で14時間攪拌した。ロータリーエバポレータ留去によって室温で、溶媒を除去した。固体粗生成物をジエチルエーテル中で攪拌し、3回濾過した。沈澱生成物(化合物17)を室温で真空乾燥した。19F NMR(300MHz、DMSO):−120.8ppmに一つの多重線ピークが認められた。H NMR(300MHz、CDCl)実測値:δ(ppm):8.44(s、FCcipCH)、7.80(b、FCcipCCH)、7.5(b、OCcipCHN)、6.10(s、CH=CHEMA)、5.70(s、HC=CHEMA)、4.40(s、OCHCHHEMA)、3.45(br、Ncip)、2.80(s、HEMACCH)、1.77(s、cipNCCHN)、1.25(m、cipNCHCHNH)、1.25(m、cipNCHCHNH)、1.12(t、cipNH)。
【0217】
化合物17(0.050g)、化合物2(0.500g)、BPO(0.0055g)およびピリジン(2mL)を20mLバイアルに移した。そのバイアルを、成分が完全に良好に混合されるまで渦攪拌した。混合物を、ステンレス製の円板およびアルミニウム秤量皿などの所望の基体上に乗せた。ピリジン溶媒を、ドラフト中にてアルミニウムホイル下に室温で17時間留去させた。液体サンプルの入ったステンレス製の基体およびアルミニウム秤量皿をオーブンに入れた。そのオーブンをNで3回パージしてから、加熱を110℃でオンとして17時間経過させた。その間、緩やかなN気流を、オーブンに陽圧流で維持した。110℃での17時間の硬化後、サンプルをN下に冷却して室温とし、オーブンから取り出して分析に供した。ステンレス製基体上で製造したフィルムについて、ゲル含有量、膨潤比、接触角測定、DSCおよびTGA分析を行った。アルミニウム秤量皿上に鋳造されたフィルム(厚さ0.03mm)について、XPS分析を実施した。ゲル抽出(アセトン):86.2%ゲル、220%膨潤。接触角:109°。XPS分析(90°):C:54.77%、N:4.15%、O:15.14%、F:24.85%.DSC:−69℃での負の熱流(PTMOのTgに関連)。TGA:2つの開始点:(A)227℃、19%質量損失、(B)392℃、76%質量損失。
【0218】
実施例60:化合物2およびヒドロコルチゾン−MA(化合物18)のフィルム
【化29】

【0219】
ヒドロコルチゾン(2.5g、6.90mmol)を、攪拌バーを入れた火炎乾燥250mL反応フラスコに移した。そのフラスコにゴムセプタムによるキャップを施し、風船によって提供されるNで満たした。脱水DCM(100mL)を注射器によってフラスコに移した。ヒドロコルチゾンはDCMには完全には溶解せずに、白濁懸濁液を生じた。TEA(1.10mL、7.89mmol)を、注射器によって反応フラスコに移した。アクリロイルクロライドの溶液(0.65g、脱水DCM10mL中7.18mmol)を、注射器によって反応フラスコに滴下した。添加には約10分を要した。アクリロイルクロライドの溶液を加えている間に、懸濁液の白濁度が低下した。反応フラスコを室温で16時間攪拌状態に維持した。DCM約80mLをロータリーエバポレータによって除去して、白濁懸濁液を得た。DCMを溶離液として用いるその白濁懸濁液のフラッシュカラムクロマトグラフィーによって、純粋なヒドロコルチゾン含有アクリレートである化合物18を得た。阻害薬としての2重量%エタノールを含むジエチルエーテル中の化合物18のR値:0.46。H NMR(300MHz、CDCl)実測値:δ(ppm)6.49(1H、dd、−OCCCH)、6.23(1H、dd、−OCHC)、5.92(1H、dd、−CHC)、5.68(1H、s、CHC)、5.13(1H、d、OCCO−)、4.94(1H、d、OCCO−)、4.48(1H、b、C11HCHO)、2.87(1H、m、C11HCOH)、2.60−0.94(25H、m、CHC、CHC、CHC、CHC、CHC、CHC、C12HC、C14HC、C15HC、C16HC、C18HC、C19HC)。
【0220】
化合物18(0.050g)、化合物2(0.500g)、BPO(0.0055g)およびピリジン(2mL)を20mLバイアルに移した。そのバイアルを成分が完全に良好に混合されるまで渦攪拌した。混合物を、ステンレス製の円板およびアルミニウム秤量皿などの所望の基体上に乗せた。ドラフト中アルミニウムホイル下に室温で17時間にわたり、ピリジン溶媒を留去させた。液体サンプルの入ったステンレス製の基体およびアルミニウム秤量皿をオーブンに入れた。オーブンをNで3回パージしてから、加熱をオンとして110℃として17時間経過させた。この間、緩やかなN気流を、オーブンに陽圧流で維持した。110℃での17時間の硬化後、サンプルをN環境下に冷却して室温とし、オーブンから取り出して分析に供した。ステンレス製基体上で製造したフィルムについて、ゲル含有量、膨潤比、接触角測定、DSCおよびTGA分析を行った。アルミニウム秤量皿上に鋳造されたフィルム(厚さ0.03mm)について、XPS分析を実施した。ゲル抽出(アセトン):96.8%ゲル、161%膨潤。接触角:109°。XPS分析(90°):C:50.94%、N:3.38%、O:11.41%、F:34.27%.。DSC:−68.7℃での負の熱流(PTMOのTgに関連)。TGA:2つの開始点:(A)251℃、17%質量損失、(B)409℃、78%質量損失。
【0221】
実施例61:化合物6およびヒドロコルチゾン(99:1)のフィルム、熱硬化
ヒドロコルチゾンを、開始剤(1重量%)を含むトルエン中の化合物6(合計量の1重量%)(0.1g/mL)と混合し、60℃でN下に硬化させた。硬化したフィルムからのヒドロコルチゾンの放出を、HPLC測定によって37℃のPBS溶液中にて24時間にわたって測定した(図25)。ステントを、同じ流し込み溶液および硬化法を用いて硬化させた(図26)。
【0222】
実施例62:化合物6およびデキサメタゾン(99:1)のフィルム、熱硬化
デキサメタゾンを、開始剤(1重量%)を含むトルエン(0.1g/mL)中の化合物6(合計量の1重量%)と混合し、60℃でN下に硬化させた。硬化したフィルムからのデキサメタゾンの放出を、HPLC測定によって37℃でPBS溶液中にて24時間にわたって測定した(図25)。
【0223】
他の実施形態
本明細書で言及した刊行物、特許および特許出願明細書はいずれも、あたかも各々の独立の刊行物または特許出願明細書が参照によって具体的にかつ個別に示されたものと同程度で、参照によって本明細書に組み組まれるものとする。
【0224】
以上、具体的実施形態との関連で本発明について説明したが、理解すべき点として、本発明に対してさらなる変更が可能であり、本願は、本発明の原理に従う本発明の変形形態、使用もしくは改変を網羅するものであり、それらの改変には、本発明が関係し、上記で記載の本質的特徴に適用可能であって、特許請求の範囲に記載されている当業界の範囲に含まれる公知もしくは一般的な実務の範囲内である本開示からの逸脱が含まれる。
【0225】
他の実施形態は特許請求の範囲に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)2以上の架橋領域および
(ii)第1の架橋領域に共有結合的に連結された第1の末端および第2の架橋領域に共有結合的に連結された第2の末端を有するオリゴマー部分
を含み、
前記架橋領域のうちの少なくとも一つがオリゴフッ素化架橋領域である
モノマー。
【請求項2】
さらに下記式(I)によって記載される請求項1に記載のモノマー。
【化1】

[式中、
オリゴはオリゴマー部分であり、
各Dは架橋領域であり、
nは1から20の整数であり、
少なくとも一つのDがオリゴフッ素化架橋領域である。]
【請求項3】
さらに下記式(II)によって記載される請求項1に記載のモノマー。
【化2】

[式中、
オリゴはオリゴマー部分であり、
各Dは架橋領域であり、
はオリゴフルオロ基であり、
各リンクA−Fは第1のオリゴ、第2のオリゴおよびFに共有結合した有機部分であり、
nは1から20の整数であり、
mは1から20の整数であり、
少なくとも1個のDがオリゴフッ素化架橋領域である。]
【請求項4】
前記架橋領域がビニル類、エポキシド類、アジリジン類およびオキサゾリン類から選択される反応性部分を含む請求項1に記載のモノマー。
【請求項5】
前記オリゴフッ素化架橋領域が下記のものから選択される請求項1から4のうちのいずれか1項に記載のモノマー。
【化3】

【請求項6】
下記式(III)によってさらに記載される請求項1に記載のモノマー。
【化4】

[式中、
オリゴはオリゴマー部分であり、
ビニルはラジカル開始重合を受けることができる不飽和部分を含む架橋領域であり、
は前記ビニルおよび/または前記オリゴに共有結合的に連結されたオリゴフルオロ基であり、
各n、mおよびoは独立に1から5の整数であり、
前記モノマーは少なくとも1個のオリゴフッ素化架橋領域を含む。]
【請求項7】
下記式(IV)によってさらに記載される請求項6に記載のモノマー。
【化5】

[式中、
オリゴはオリゴマー部分であり、
ビニルはラジカル開始重合を受けることができる不飽和部分を含む架橋領域であり、
はオリゴフルオロ基であり、
各リンクAは独立にオリゴ、Fおよびビニルに共有結合した有機部分であり、
a、bおよびcは0より大きい整数である。]
【請求項8】
が、下記式を有する請求項3から7のうちのいずれか1項に記載のモノマー。
【化6】

[式中、
XはCHCH−、(CHCHO)、CHCH(OD)CHO−、CHCH(CHOD)O−またはD−から選択され、
Dは連鎖成長重合可能な部分であり、
pは2から20の整数であり、
nは1から10の整数である。]
【請求項9】
前記ビニル基が、メチルアクリレート、アクリレート、アリル、ビニルピロリドンおよびスチレン誘導体から選択される請求項4から8のうちのいずれか1項に記載のモノマー。
【請求項10】
前記オリゴが、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアミド類、ポリアルキレンオキサイド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリラクトン、ポリシリコーン、ポリエーテルスルホン、ポリペプチド、多糖類、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイドおよびこれらの組み合わせから選択される請求項4から8のうちのいずれか1項に記載のモノマー。
【請求項11】
前記モノマーに共有結合的に連結された1以上の生理活性剤をさらに有する請求項1から10のうちのいずれか1項に記載のモノマー。
【請求項12】
前記生理活性剤が、タンパク質、ペプチド、炭水化物、抗生物質、抗増殖剤、ラパマイシンマクロリド類、鎮痛薬、麻酔薬、血管新生阻害剤、抗血栓剤、血管作用薬、抗凝血剤、免疫調節薬、細胞傷害薬、抗ウイルス薬、抗体、神経伝達物質、向精神薬、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ビタミン類、脂質およびこれらのプロドラッグから選択される請求項11に記載のモノマー。
【請求項13】
(a)物品を請求項1から12のうちのいずれか1項のモノマーと接触させる段階、(b)前記モノマーを重合させて架橋コーティングを形成する段階を有する、物品のコーティング方法。
【請求項14】
(a)請求項1から12のうちのいずれか1項のモノマーを重合させて基材ポリマーを形成する段階および(b)前記基材ポリマーを成形して成形品を形成する段階を有する成形品の製造方法。
【請求項15】
前記成形品が埋め込み可能医療機器である請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記埋め込み可能医療機器が、心臓補助装置、カテーテル、ステント、補綴用インプラント、人工括約筋および薬剤送達機器から選択される請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記埋め込み可能医療機器がステントである請求項16に記載の埋め込み可能医療機器。
【請求項18】
前記成形品が非埋め込み可能医療機器である請求項13または14に記載の方法。
【請求項19】
前記重合が、加熱、UV照射、光開始剤またはフリーラジカル開始剤によって開始される請求項13から18のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記重合が加熱によって開始される請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記重合がさらに、前記モノマーをビニル基を有する第2の化合物と混合する段階を有する請求項13から18のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の化合物が請求項1から12のうちのいずれか1項のモノマーである請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第2のビニルモノマーが、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、グリシジルアクリレート、ビニルアクリレート、アリルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2−アミノエチルメタクリレート、グリセロールモノメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−(3−アミノプロピル)メタクリルアミド、クロトンアミド、アリルアルコールおよび1,1,1−トリメチルプロパンモノアリルエーテルから選択される請求項22に記載の方法。
【請求項24】
(a)生理活性剤を請求項1から12のうちのいずれか1項に記載のモノマーと接触させる段階および(b)前記モノマーを重合させてオリゴフッ素化架橋ポリマーを形成する段階を有する、生理活性剤をポリマー中にカプセル封入する方法。
【請求項25】
前記生理活性剤が、タンパク質、ペプチド、炭水化物、抗生物質、抗増殖剤、ラパマイシンマクロリド類、鎮痛薬、麻酔薬、血管新生阻害剤、抗血栓剤、血管作用薬、抗凝血剤、免疫調節薬、細胞傷害薬、抗ウイルス薬、抗体、神経伝達物質、向精神薬、オリゴヌクレオチド、ビタミン類、脂質およびこれらのプロドラッグから選択される請求項24に記載の方法。
【請求項26】
(i)m個の求核性基(m≧2)で置換されたコアを有する第1の成分;およびn個の求電子性基(n≧2およびm+n>4)で置換されたコアを有する第2の成分を含む組成物であって、前記組成物が少なくとも1個のオリゴフッ素化求核性基または1個のオリゴフッ素化求電子性基を含み、前記第1の成分および前記第2の成分が反応してオリゴフッ素化架橋ポリマーを形成する組成物。
【請求項27】
前記第1の成分が、第1の求核性基に共有結合的に連結された第1の末端および第2の求核性基に共有結合的に連結された第2の末端を有するオリゴマー部分を含み、
前記第1の求核性基または前記第2の求核性基がオリゴフッ素化求核性基である請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記第2の成分が、第1の求電子性基に共有結合的に連結された第1の末端および第2の求電子性基に共有結合的に連結された第2の末端を有するオリゴマー部分を含み、
前記第1の求電子性基または前記第2の求電子性基がオリゴフッ素化求電子性基である請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
前記第1の成分または前記第2の成分がさらに下記式(V)によって記載される請求項26に記載の組成物。
【化7】

[式中、
オリゴはオリゴマー部分であり、
Gは求核性基または求電子性基であり、
nは1から5の整数であり、
少なくとも1個のGがオリゴフッ素化求核性基またはオリゴフッ素化求電子性基である。]
【請求項30】
前記第1の成分または前記第2の成分がさらに下記式(VI)によって記載される請求項26に記載の組成物。
【化8】

[式中、
オリゴはオリゴマー部分であり、
Gは求核性基または求電子性基であり、
はオリゴフルオロ基であり、
各リンクAは独立にオリゴ、FおよびGに共有結合した有機部分であり、
a、bおよびcは0より大きい整数である。]
【請求項31】
が下記式を有する請求項30に記載の組成物。
【化9】

[式中、
XはCHCH−、(CHCHO)、CHCH(OD)CHO−、CHCH(CHOD)O−またはD−から選択され、
Dは連鎖成長重合可能な部分であり、
pは2から20の整数であり、
nは1から10の整数である。]
【請求項32】
前記求核性基および前記求電子性基が求核置換反応、求電子付加反応またはその両方を受ける請求項26から31のうちのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
前記求核性基が、1級アミン類、2級アミン類、チオール類、アルコール類およびフェノール類から選択される請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記求電子性基が、カルボン酸エステル類、酸塩化物基、無水物、イソシアナト、チオイソシアナト、エポキシド、活性化ヒドロキシル基、スクシニミジルエステル、スルホスクシニミジルエステル、マレイミドおよびエテンスルホニルから選択される請求項32に記載の組成物。
【請求項35】
前記混合物中の求核性基の数が、前記混合物中の求電子性基の数とほぼ等しい請求項26に記載の組成物。
【請求項36】
求核性基のモル数の求電子性基のモル数に対する比が約2:1から1:2である請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記比が1:1である請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
(a)物品を請求項26から37のうちのいずれか1項に記載の組成物と接触させる段階;および(b)前記物品上の前記組成物を重合させて架橋コーティングを形成する段階を有する、物品のコーティング方法。
【請求項39】
(a)請求項26から37のうちのいずれか1項に記載の組成物を重合させて基材ポリマーを形成する段階および(b)前記基材ポリマーを成形して成形品を形成する段階を有する、成形品の製造方法。
【請求項40】
前記物品が埋め込み可能医療機器である請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
前記埋め込み可能医療機器が、心臓補助装置、カテーテル、ステント、補綴用インプラント、人工括約筋および薬剤送達機器から選択される請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記埋め込み可能医療機器がステントである請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記成形品が非埋め込み可能医療機器である請求項38または39に記載の方法。
【請求項44】
ステントの表面で重合反応を開始して重合コーティングを形成するステントのコーティング方法。
【請求項45】
前記重合コーティングが架橋ポリマーコーティングである請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記重合コーティングがオリゴフッ素化架橋ポリマーコーティングである請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記重合反応が連鎖成長重合反応である請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記重合反応が求核置換反応および/または求電子付加反応である請求項44に記載の方法。
【請求項49】
(a)前記ステントを請求項1から12のうちのいずれか1項に記載のモノマーまたは請求項26から36のうちのいずれか1項に記載の組成物と接触させる段階;および(b)前記モノマーを重合させるか前記組成物を重合させて架橋コーティングを形成する段階を有する、請求項44から48のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
コーティングされていない埋め込み可能医療機器をコーティングして、コーティングされた埋め込み可能医療機器を製造し、前記コーティングされた埋め込み可能医療機器が、動物に埋め込んだ場合に、前記コーティングされていない埋め込み可能医療機器と比較してタンパク質沈着が少なく、フィブリノゲン沈着が少なく、血小板沈着が少なく、または炎症性細胞付着が少ない請求項13または38に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公表番号】特表2011−502182(P2011−502182A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527308(P2010−527308)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際出願番号】PCT/CA2008/001761
【国際公開番号】WO2009/043174
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(508215131)インターフェース バイオロジクス,インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】