説明

オルメサルタンメドキソミル及びアムロジピンの固形製剤

本発明は、オルメサルタンメドキソミル及び、アムロジピン又はその薬理学的に許容される塩を含有する、安定な固形製剤に関する。特に、本発明は、還元糖を含まない固形製剤に関する。安定な固形製剤は、場合によりさらにヒドロクロロチアジド又はその薬理学的に許容される塩を含有しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルメサルタンメドキソミル及びアムロジピンを含有し、そして場合によりヒドロクロロチアジドをさらに含有する固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
オルメサルタンメドキソミルは、米国特許第5,616,599号に開示されるように、高血圧及び他の医学的適応症を治療するために開発されたアンジオテンシンII受容体拮抗薬である。その化学名は2,3−ジヒドロキシ−2−ブテニル 4−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)−2−プロピル−1−[p−(o−1H−テトラゾール−5−イルフェニル)ベンジル]イミダゾール−5−カルボキシレート、環状2,3−カーボネートエステル、又は(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチル 4−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)−2−プロピル−1−{4−[2−(テトラゾール−5−イル)フェニル]フェニル}メチルイミダゾール−5−カルボキシレートであり、下記の構造を有する:
【0003】
【化1】

【0004】
オルメサルタンメドキソミルは、Olmetec(登録商標)又はBenicar(登録商標)の商品名のもとで、三共により販売されている。これは、5mg、10mg、20mg及び40mgの強度の経口錠剤として入手可能である。Olmetec(登録商標)錠剤中の非活性成分には、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、乳糖一水和物、ヒドロキシプロピルセルロース及びステアリン酸マグネシウムが含まれる。
【0005】
オルメサルタンメドキソミルは、摂取の後に活性な代謝物である4−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)−2−プロピル−1−[[2′−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル]メチル]−1H−イミダゾール−5−カルボン酸(RNH−6270)のみを遊離するプロドラッグである。RNH−6270の化学構造は下記である:
【0006】
【化2】

【0007】
酸性又は塩基性条件下、及び水の存在下においてオルメサルタンメドキソミルのエステル結合の加水分解によりRNH−6270が生成する。
【0008】
アムロジピンは、米国特許第4,572,909号及び米国特許第4,879,303号に開示されるように、高血圧及び他の医学的適応症を治療するために開発されたカルシウムチャネル遮断薬である。その化学名は3−エチル−5−メチル−(±)−2−[(2−アミノエトキシ)メチル]−4−(2−クロロフェニル)−1,4−ジヒドロ−6−メチルピリジン−3,5−ジカルボキシレートであり、下記の構造を有する:
【0009】
【化3】

【0010】
アムロジピンは、Norvasc(登録商標)の商品名のもとで、ファイザーにより販売されている。これは2.5mg、5mg及び10mgの強度の経口錠剤として入手可能である。Norvasc(登録商標)錠剤中の非活性成分には、微結晶セルロース、無水第二リン酸カルシウム、デンプングリコール酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムが含まれる。
【0011】
国際公開第2006/059217号には、アムロジピンは吸湿性が高く、湿気を吸収し、これにより分解に至ることが開示されている。主要な分解ルートの1つは、触媒的酸化工程を経由するものであり、これはpHに依存する。主要な分解生成物の1つは、3−エチル−5−メチル−2−[(2−アミノエトキシ)メチル]−4−(2−クロロフェニル)−6−メチルピリジン−3,5−ジカルボキシレート(不純物D)である。不純物Dの化学構造は下記である:
【0012】
【化4】

【0013】
Pharmaceutical Development and Technology, vol. 9, No. 1, pp. 15-24, 2004には、乳糖、塩基性賦形剤及び水の混合物は、1級アミノ基と乳糖との間のメイラード反応により、ベシル酸アムロジピンにおいていくらかの不安定性を誘発することが開示されている。
【0014】
アムロジピンは不安定な化合物であるため、妥当な安定性を有する医薬組成物を処方するためには的を得た手法が要求される。
【0015】
国際公開第04/067003号及び欧州特許第1604664号にはオルメサルタンメドキソミル及びアムロジピンを含有する医薬が開示されているが、オルメサルタンメドキソミル及びアムロジピンを含有する安定な固形製剤は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第5,616,599号公報
【特許文献2】米国特許第4,572,909号公報
【特許文献3】米国特許第4,879,303号公報
【特許文献4】国際公開第2006/059217号公報
【特許文献5】国際公開第04/067003号公報
【特許文献6】欧州特許第1604664号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Pharmaceutical Development and Technology, vol. 9, No. 1, pp. 15-24, 2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
オルメサルタンメドキソミルとアムロジピンの作用の機構は、高血圧又は高血圧により生じる疾病の治療又は予防において好都合に協働すると考えられている。臨床データの増加によりこの予測が支持されるにつれて、有効成分であるオルメサルタンメドキソミルとアムロジピンを含有する固定容量複合薬の必要性が高まっている。しかしながら、オルメサルタンメドキソミル及びアムロジピンの両方は、前記有効成分の安定性に関する問題に起因して、処方することが難しい化合物である。このため、十分な薬安定性及び溶解性を薬理学的な薬効と組み合わせた固定容量複合薬の必要性が明確にあるにもかかわらず、これを達成するためにはいくつもの技術的問題を克服しなければならない。本発明の目的は、そのような固定用量複合薬を提供することである。
【0019】
検討されうる固形製剤には様々なタイプがあるが、これらの固形製剤のいずれのものが、製品の安定性、溶解性、及び薬理学的な薬効とを最良の状態で合わせ持つのかを予測することはできない。一般的に、速やかな放出を意図した固定用量複合薬は、二つの有効成分と必要な賦形剤との共顆粒化物の粉末混合物を作成することにより調製され、これは対応する単一薬剤製剤のベース処方を維持し、これに単に第二の薬剤構成成分を加えることでなされる。
【0020】
オルメサルタンメドキソミルとアムロジピンとの組み合わせでは、アムロジピンは従来のオルメサルタンメドキソミルの処方と適合しないため、この手法は実現不可能なようである。固定用量複合薬にOlmetec(登録商標)をベースとした処方を使用すると、処方中の乳糖とアムロジピンとの間で起こるメイラード反応により製剤中に分解生成物が現れる。一方、Norvasc(登録商標)をベースとした処方を使用すると、オルメサルタンメドキソミルの溶解性とバイオアベイラビリティが低下する。さらに、現在市場に出ているオルメサルタンメドキソミルとアムロジピンの製剤には、いくつかの欠点がある。既知のOlmetec(登録商標)の錠剤とNorvasc(登録商標)の錠剤の重量は、比較的高い(それぞれ、Olmetec(登録商標)の錠剤においては218mg及び432mg、Norvasc(登録商標)の錠剤においては200mg及び400mg)。処方中に存在する賦形剤の量が多いため、Olmetec(登録商標)及びNorvasc(登録商標)の処方の錠剤サイズは比較的大きく、そのような錠剤は特に高齢の患者にとって飲み込むのが困難である。本発明は、オルメサルタンメドキソミル及びアムロジピンを含有し、上記の問題を克服する安定な固形製剤の製造に向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の目的は、オルメサルタンメドキソミル及び、アムロジピン又はその薬理学的に許容される塩を含有し、有効成分の安定性が向上し、かつ重量が低減された固形製剤を提供することである。本発明によれば、オルメサルタンメドキソミル及び、アムロジピン又はその薬理学的に許容される塩を含有する固形製剤の製造に関連した問題は、処方中に還元糖を実質的に含まない処方を製造するという手段により最も良好に対処できる。
【0022】
本発明は、オルメサルタンメドキソミル及び、アムロジピン又はその薬理学的に許容される塩を含有する固形製剤であって、RNH−6270の含有量が2.5%未満(w/w)であり、不純物Dの含有量が0.4%未満(w/w)であり、全不純物の含有量が5.1%未満(w/w)であり、かつ還元糖を実質的に含まないことを特徴とする固形製剤(特に高血圧の予防又は治療のための製剤)、前記固形製剤(特に高血圧の予防又は治療のための製剤)を製造するためのオルメサルタンメドキソミル及び、アムロジピン又はその薬理学的に許容される塩の使用、薬理学的な有効量のオルメサルタンメドキソミル及び、アムロジピン又はその薬理学的に許容される塩を含有する前記固形製剤を温血動物(特にヒト)に投与することを含む疾病(特に高血圧)の予防又は治療方法、及び疾病(特に高血圧)の予防又は治療のための医薬の製造においてオルメサルタンメドキソミル及び、アムロジピン又はその薬理学的に許容される塩を含有する固形製剤の使用を提供する。本発明の好ましい実施形態において、本発明の固形製剤はさらにチアジド系利尿薬であるヒドロクロロチアジドを含有し、これは以下の構造式を有する:
【0023】
【化5】

【0024】
具体的には、本発明は、
(1) オルメサルタンメドキソミル及び、アムロジピン又はその薬理学的に許容される塩を含有し、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)−2−プロピル−1−[[2′−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル]メチル]−1H−イミダゾール−5−カルボン酸(RNH−6270)の含有量が2.5%未満(w/w)である固形製剤。
(2) オルメサルタンメドキソミル及び、アムロジピン又はその薬理学的に許容される塩を含有し、3−エチル−5−メチル−2−[(2−アミノエトキシ)メチル]−4−(2−クロロフェニル)−6−メチルピリジン−3,5−ジカルボキシレート(不純物D)の含有量が0.4%未満(w/w)である固形製剤。
(3) オルメサルタンメドキソミル及び、アムロジピン又はその薬理学的に許容される塩を含有し、全不純物の含有量が5.1%未満(w/w)である固形製剤。
(4) オルメサルタンメドキソミル及び、アムロジピン又はその薬理学的に許容される塩を含有し、RNH−6270の含有量が2.5%未満(w/w)であり、全不純物の含有量が5.1%未満(w/w)である固形製剤。
(5) ヒドロクロロチアジド又はその薬理学的に許容される塩をさらに含有する、(1)又は(2)に記載の固形製剤。
(6) 全不純物の含有量が7.3%未満(w/w)である、(5)に記載の固形製剤。
(7) 還元糖を実質的に含まない、オルメサルタンメドキソミル及び、アムロジピン又はその薬理学的に許容される塩を含有する固形製剤。
(8) 還元糖を実質的に含まない、(1)に記載の固形製剤。
(9) 還元糖を実質的に含まない、(2)に記載の固形製剤。
(10) 還元糖を実質的に含まない、(3)に記載の固形製剤。
(11) 還元糖を実質的に含まない、(4)に記載の固形製剤。
(12) 還元糖を実質的に含まない、(5)又は(6)に記載の固形製剤。
(13) 還元糖の含有量が2.0%未満(w/w)である、(7)乃至(12)のいずれか1つに記載の固形製剤。
(14) 還元糖の含有量が0.3%未満(w/w)である、(7)乃至(12)のいずれか1つに記載の固形製剤。
(15) 還元糖の含有量が0.05%未満(w/w)である、(7)乃至(12)のいずれか1つに記載の固形製剤。
(16) RNH−6270の含有量が0.5%未満(w/w)である、(1)、(5)及び(7)乃至(15)のいずれか1つに記載の固形製剤。
(17) RNH−6270の含有量が0.4%未満(w/w)である、(1)、(5)及び(7)乃至(15)のいずれか1つに記載の固形製剤。
(18) 不純物Dの含有量が0.3%未満(w/w)である、(2)、(5)及び(7)乃至(15)のいずれか1つに記載の固形製剤。
(19) 不純物Dの含有量が0.05%未満(w/w)である、(2)、(5)及び(7)乃至(15)のいずれか1つに記載の固形製剤。
(20) 全不純物の含有量が1.5%未満(w/w)である、(3)及び(5)乃至(15)のいずれか1つに記載の固形製剤。
(21) RNH−6270の含有量が0.5%未満(w/w)であり、全不純物の含有量が1.5%未満(w/w)である、(4)乃至(15)のいずれか1つに記載の固形製剤。
(22) RNH−6270の含有量が0.4%未満(w/w)であり、全不純物の含有量が1.5%未満(w/w)である、(4)乃至(15)のいずれか1つに記載の固形製剤。
(23) 前記各不純物が、前記固形製剤を3ヶ月間40℃75%の条件下で加速試験を行った後に測定されたものである、(1)乃至(6)及び(16)乃至(22)のいずれか1つに記載の固形製剤。
(24) アムロジピンが、そのベシレート塩の形態で存在する、(1)乃至(23)のいずれか1つに記載の固形製剤。
(25) 1種又はそれ以上の薬学的に許容される添加剤をさらに含有する、(1)乃至(24)のいずれか1つに記載の固形製剤。
(26) 前記1種又はそれ以上の薬学的に許容される添加剤が、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、乳化剤、安定剤、矯味剤及び希釈剤から選択される、(25)に記載の固形製剤。
(27) 前記賦形剤が、ケイ化微結晶セルロース及び/又はマンニトールである、(26)に記載の固形製剤。
(28) 前記滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウムである、(26)に記載の固形製剤。
(29) 前記崩壊剤が、アルファ化デンプン及び/又はクロスカルメロースナトリウムである、(26)に記載の固形製剤。
(30) 前記固形製剤が、錠剤を含む、(1)乃至(29)のいずれか1つに記載の固形製剤。
(31) 前記錠剤が、直打法により製造される、(30)に記載の固形製剤。
(32) 前記錠剤が、少なくとも1つの弾性膜でコートされている、(30)又は(31)に記載の固形製剤。
(33) 前記弾性膜が、少なくとも1種の親水性ポリマーを含んでいる、(32)に記載の固形製剤。
(34) 前記親水性ポリマーが、ポリビニルアルコール及び/又はマクロゴールである、(33)に記載の固形製剤。
(35) オルメサルタンメドキソミルを20乃至40mg含有する、(1)乃至(34)のいずれか1つに記載の固形製剤。
(36) アムロジピン5乃至10mg又はアムロジピン5乃至10mgと等価な薬理学的に許容されるアムロジピンの塩を含有する、(1)乃至(35)のいずれか1つに記載の固形製剤。
(37) ヒドロクロロチアジド12.5乃至25mg又はヒドロクロロチアジド12.5乃至25mgと等価な薬理学的に許容されるヒドロクロロチアジドの塩を含有する、(1)乃至(36)のいずれか1つに記載の固形製剤。
(38) 高血圧の治療又は予防を必要とする温血動物の治療又は予防方法であって、前記動物に(1)乃至(37)のいずれか1つに記載の固形製剤の有効量を投与することを含む方法。
(39) 高血圧の治療又は予防のための医薬の製造における、(1)乃至(37)のいずれか1つに記載の固形製剤の使用。
(40) 高血圧の治療又は予防における使用のための、(1)乃至(37)のいずれか1つに記載の固形製剤。
を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】試験例1においてOlmetec(登録商標)、Norvasc(登録商標)、実施例1の処方、及び参考例1の処方に関して不純物DとRNH−6270の濃度を測定した結果を示したものである。
【図2】試験例2において実施例1の処方及び参考例1の処方に関して溶出率を測定した結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の固形製剤は、有効成分としてオルメサルタンメドキソミル及び、アムロジピン又はその薬理学的に許容される塩を含み、場合によりさらにヒドロクロロチアジド又はその薬理学的に許容される塩を含む。
【0027】
オルメサルタンメドキソミルは、本技術において開示されている方法にしたがって容易に製造可能であり、その適切な例には米国特許第5,616,599号に開示されている方法が含まれる。
【0028】
アムロジピンは、本技術において開示されている方法にしたがって容易に製造可能であり、その適切な例には米国特許第4,572,909号に開示されている方法が含まれる。アムロジピンは、遊離塩基の形態だけでなく、薬理学的に許容される酸付加塩としても使用することができ、例えばベシル酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、カンシル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、メシル酸塩、ニコチン酸塩、グルコン酸塩等がある。これらのうち、好ましくはベシル酸アムロジピンが使用される。
【0029】
ヒドロクロロチアジドは、本技術において開示されている方法にしたがって容易に製造可能であり、その適切な例には米国特許第3,025,292号に開示されている方法が含まれる。ヒドロクロロチアジドの化合物名は、6−クロロ−3,4−ジヒドロ−2H−1,2,4−ベンゾチアジアジン−7−スルホンアミド1,1−ジオキシドである。本発明のヒドロクロロチアジドはその薬理学的に許容される塩を含み、例えばフッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩もしくはヨウ化水素酸塩のようなハロゲン化水素酸塩;硝酸塩;過塩素酸塩;硫酸塩;リン酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩もしくはエタンスルホン酸塩のような、場合によりハロゲン原子で置換されていてもよいC1〜C4アルカンスルホン酸塩;ベンゼンスルホン酸塩もしくはp−トルエンスルホン酸塩のような、場合によりC1〜C4アルキル基で置換されていてもよいC6〜C10アリールスルホン酸塩;酢酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩もしくはマレイン酸塩のようなC1〜C6脂肪族酸塩;又はグリシン塩、リシン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩もしくはアスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩がある。好ましい塩は、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩もしくはリン酸塩であり、特に好ましいのは塩酸塩である。
【0030】
本発明の1つの側面において、固形製剤中のRNH−6270の含有量は2.5%未満(w/w)であり、好ましくは0.5%未満(w/w)であり、そしてさらに好ましくは0.4%未満(w/w)である。本発明の別の側面において、固形製剤中の、不純物Dの含有量は0.4%未満(w/w)であり、好ましくは0.3%未満(w/w)であり、そしてさらに好ましくは0.05%未満(w/w)である。さらに別の側面において、固形製剤中の、全不純物の含有量は5.1%未満(w/w)であり、好ましくは1.5%未満(w/w)である。
【0031】
1つの好ましい側面においては、固形製剤はさらにヒドロクロロチアジド又はその薬理学的に許容される塩を含有する。好ましい側面である、この三つを組み合わせた固形製剤(オルメサルタンメドキソミル、アムロジピン又はその薬理学的に許容される塩、及びヒドロクロロチアジド又はその薬理学的に許容される塩を含有する)において、固形製剤中の、RNH−6270の含有量は2.5%未満(w/w)であり、好ましくは0.5%未満(w/w)であり、そしてさらに好ましくは0.4%未満(w/w)である。本発明の三つを組み合わせた固形製剤の別の好ましい側面において、固形製剤中の、不純物Dの含有量は0.4%未満(w/w)であり、好ましくは0.3%未満(w/w)であり、そしてさらに好ましくは0.05%未満(w/w)である。さらに別の側面において、三つを組み合わせた固形製剤は、固形製剤中の、全不純物の含有量は7.3%未満(w/w)であり、好ましくは1.5%未満(w/w)である。
【0032】
ここで使用される用語「安定」とは、固形製剤中のオルメサルタンメドキソミル及び/又はアムロジピンもしくはその薬理学的に許容される塩の化学的安定性を意味し、RNH−6270の含有量が2.5%未満(w/w)及び/又は不純物Dの含有量が0.4%未満(w/w)及び/又は全不純物の含有量が5.1%未満(w/w)を示す。ヒドロクロロチアジド又はその薬理学的に許容される塩をさらに含有する本発明の固形製剤に対しては、ここで使用される用語「安定」とは固形製剤中のオルメサルタンメドキソミル及び/又はアムロジピンもしくはその薬理学的に許容される塩の化学的安定性を意味し、RNH−6270の含有量が2.5%未満(w/w)及び/又は不純物Dの含有量が0.4%未満(w/w)及び/又は全不純物の含有量が7.3%未満(w/w)を示す。好ましくは、安定性はHPLCを使用して測定され、3ヶ月間40℃において75%の相対湿度下で加速試験を行なった後に存在する関連物質を、活性物質に由来する不純物のパーセント濃度として活性物質に対して測定したものであり、例えば2.5%濃度(w/w)のRNH−6270とは、測定時のRNH−6270の量が同じ時に測定されたオルメサルタンメドキソミルの量の2.5%であることを意味する。この安定性のデータは、これらが由来する活性物質に対するパーセント濃度(w/w)として以下の表1に示される。
【0033】
ここで使用される用語「全不純物」とは、オルメサルタンメドキソミル及び、アムロジピン又はその薬理学的に許容される塩に由来する全分解生成物を意味する。固形製剤がヒドロクロロチアジド又はその薬理学的に許容される塩をさらに含有する場合には、「全不純物」は、前記ヒドロクロロチアジド又はその薬理学的に許容される塩に由来する分解生成物をさらに含む。
【0034】
還元糖とは、アルデヒド基を有するタイプの糖であり、これにより糖は、例えばメイラード反応又はベネディクト反応において還元剤として作用することができる。「還元糖」の非限定的な例は、乳糖、ブドウ糖、果糖、グリセルアルデヒド、アラビノース、マンノース、ガラクトース、マルトース、キシロース、セロビオース、メリビオース、マルトトリオース等、及びその水和物を含む。
【0035】
ここで使用される用語「実質的に含まない」とは、賦形剤として使用されるのに適切な濃度より低い濃度で還元糖を使用することを意味する。固形製剤中の還元糖含有量は、好ましくは2.0%(w/w)未満であり、さらに好ましくは0.3%(w/w)未満であり、そして最も好ましくは0.05%(w/w)未満である。
【0036】
本発明の固形製剤は、所望により、適切な薬理学的に許容される賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、乳化剤、安定剤、矯味剤又は希釈剤のようなさらなる添加物の少なくとも一つをさらに含有することができる。
【0037】
適切な「賦形剤」は、ショ糖、トレハロース、マンニトール又はソルビトールのような非還元性糖誘導体;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、αデンプン又はデキストリンのようなデンプン誘導体;微結晶セルロース又はケイ化微結晶セルロースのようなセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;及びプルランをはじめとする有機賦形剤ならびに軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウムのようなケイ酸誘導体;二塩基性リン酸水素カルシウム又はリン酸水素カルシウム二水和物のようなリン酸塩;炭酸カルシウムのような炭酸塩;及び硫酸カルシウムのような硫酸塩をはじめとする無機賦形剤を、単独又は組み合わせて含むがこれらに限定されない。これらのうち、好ましくはケイ化微結晶セルロース及びマンニトールが使用される。
【0038】
適切な「滑沢剤」は、ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム又はステアリン酸マグネシウムのようなステアリン酸金属塩;タルク;コロイドシリカ;ミツロウ又はゲイロウのようなロウ;ホウ酸;アジピン酸;硫酸ナトリウムのような硫酸塩;グリコール;フマル酸;安息香酸ナトリウム;D,L−ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム又はラウリル硫酸マグネシウムのようなラウリル硫酸塩;ケイ酸無水物又はケイ酸塩水和物のようなケイ酸塩;及び前述のデンプン誘導体を、単独又は組み合わせで含むが、これらに限定されない。これらのうち、好ましくはステアリン酸マグネシウムが使用される。
【0039】
適切な「結合剤」は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール及び前述の賦形剤に類似した化合物を、単独又は組み合わせて含むが、これらに限定されない。
【0040】
適切な「崩壊剤」は、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルシウムカルボキシメチルセルロース又は内部架橋ナトリウムカルボキシメチルセルロースのようなセルロース誘導体;架橋ポリビニルピロリドン;及びカルボキシメチルデンプン、ナトリウムカルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルデンプンナトリウム、アルファ化デンプン又はクロスカルメロースナトリウムのような化学修飾されたデンプン/セルロースを、単独又は組み合わせて含むが、これらに限定されない。これらのうち、好ましくはアルファ化デンプン及びクロスカルロースナトリウムが使用される。
【0041】
適切な「乳化剤」は、ベントナイト又はビーガムのようなコロイドクレー;水酸化マグネシウム又は水酸化アルミニウムのような金属水酸化物;ラウリル硫酸ナトリウム又はステアリン酸カルシウムのようなアニオン界面活性剤;塩化ベンザルコニウムのようなカチオン界面活性剤;及びポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル又はショ糖脂肪酸エステルのようなノニオン界面活性剤を、単独又は組み合わせて含むが、これらに限定されない。
【0042】
適切な「安定剤」は、メチルパラベン又はプロピルパラベンのようなパラヒドロキシ安息香酸エステル;クロロブタノール、ベンジルアルコール又はフェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール又はクレゾールのようなフェノール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;及びソルビン酸を、単独又は組み合わせて含むが、これらに限定されない。
【0043】
適切な「矯味剤」は、サッカリンナトリウム又はアスパルテームのような甘味料;クエン酸、リンゴ酸又は酒石酸のような酸味料;及びメントール、レモン又はオレンジ香料のような香料を、単独又は組み合わせて含むが、これらに限定されない。
【0044】
適切な「希釈剤」は、マンニトール、ショ糖、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及びそれらの混合物を、単独又は組み合わせて含むが、これらに限定されない。
【0045】
本発明の「固形製剤」は、一つ以上の薬理学的有効成分を固形で患者に送達するために当業者によって使用されるあらゆる製剤を含む。適切な固形製剤は、当業者には周知であり、本発明の固形製剤の例は、錠剤(舌下錠及び口の中で崩壊する錠剤を含む)、カプセル(ソフトカプセル及びマイクロカプセルを含む)、顆粒、丸剤及びロゼンジを含むが、これらに限定されない。これらのうち、錠剤が最も好ましい。
【0046】
本発明の固形製剤は、製薬処方技術の当業者にとって既知の、一般に使用されているいかなる方法によっても製造されうるものであり、これは特に限定されない。適切な方法の例は、Powder Technology and Pharmaceutical Processes [D. Chulia et al., Elsevier Science Pub. Co. (December 1, 1993)] 等の刊行物に開示されているものを含む。
【0047】
本発明の錠剤は、直打法により得ることができる。直打法において、有効成分は、1つ又はそれ以上の薬理学的に許容される添加剤と共に適切な混合器中で混合され、次に圧縮機へ直接移され、プレスされて錠剤になる。湿式造粒や乾式造粒などの他の従来方法も使用できる。
【0048】
さらに、本発明の錠剤は、少なくとも一層のフィルムコーティングを設けてもよい。フィルムコーティングが望まれる場合、当該技術で周知のタイプのフィルムコーティング形成装置を使用することができ、フィルムコーティング基剤として適切な例は、糖衣基剤、親水性皮膜基剤、腸溶性皮膜基剤及び徐放性皮膜基剤を含む。
【0049】
糖衣基剤の適切な例は、ショ糖を含み、これらを、タルク、沈降炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン及びプルランのような添加物の一つ以上と組み合わせて使用することができる。
【0050】
親水性皮膜基剤の適切な例は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、Colorcon, Inc.から市販されているOpadry(登録商標)OY S 38956(白))、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース及びナトリウムカルボキシメチルセルロースのようなセルロース誘導体;ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(例えば、Colorcon, Inc.から市販されているOpadry(登録商標)II)、ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコール グラフトコポリマー(例えば、BASFから市販されているKollicoat(登録商標)IR)及びマクロゴールのような合成ポリマー;ならびにプルランのような多糖を含む。これらのうち、好ましくはポリビニルアルコール及びマクロゴールが使用される。
【0051】
腸溶性皮膜基剤の適切な例は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタレートヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース及びセルロースアセテートフタレートのようなセルロース誘導体;メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD及びメタクリル酸コポリマーSのようなアクリル酸誘導体;ならびにシェラックのような天然物質を含む。
【0052】
徐放性皮膜基剤の適切な例は、エチルセルロースのようなセルロース誘導体;及びアミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、エチルアクリレート−メチルメタクリレートコポリマーエマルションのようなアクリル酸誘導体を含む。
【0053】
上記のような二つ以上の異なる皮膜基剤の適切な比の混合物を使用することもできる。加えて、皮膜はまた可塑剤、賦形剤、滑沢剤、不透明剤、着色剤又は防腐剤のような適切な薬理学的に許容される添加物を必要に応じて含有することができる。
【0054】
本発明の固形製剤中の有効成分であるオルメサルタンメドキソミル及び、アムロジピン又はその薬理学的に許容される塩、そして適用可能である場合にはヒドロクロロチアジド又はその薬理学的に許容される塩の用量及び用量比は、各有効成分の活性ならびに患者の症状、年齢及び体重のような種々の要因に依存して変更することができる。用量は、症状、年齢などに依存して異なるが、ヒト成人に対する経口投与の場合でオルメサルタンメドキソミルの用量は一般に、1日5mg乃至80mg、好ましくは10乃至40mgであり、アムロジピン又はその薬理学的に許容される塩の用量は一般に、1日2.5mg乃至20mg、好ましくは5乃至10mgのアムロジピンと等価であり、ヒドロクロロチアジド又はその薬理学的に許容される塩の用量は一般に、1日5mg乃至50mg、好ましくは12.5乃至25mgのヒドロクロロチアジドと等価である。用量は、患者の症状に依存して1日1乃至6回、好ましくは1回投与することができる。
【0055】
加えて、本発明の固形製剤中の有効成分であるオルメサルタンメドキソミル及び、アムロジピン又はその薬理学的に許容される塩の用量比もまた、広い範囲で変更することができる。例えば、オルメサルタンメドキソミル及び、アムロジピン又はその薬理学的に許容される塩の重量基準の用量比は、一般には1:50乃至50:1の範囲内、好ましくは1:5乃至5:1の範囲内であることができる。現在のところ、好ましい製剤はオルメサルタンメドキソミル及び、アムロジピン又は当該アムロジピンの量と等価であるその薬理学的に許容される塩を、それぞれ40/10mg、40/5mg、20/10mg、20/5mg、10/10mg及び10/5mgで含有する錠剤である。ヒドロクロロチアジド又はその薬理学的に許容される塩をさらに含有する三剤複合薬におけるオルメサルタンメドキソミル、アムロジピン又はその薬理学的に許容される塩、及びヒドロクロロチアジド又はその薬理学的に許容される塩の重量標準の用量比は、一般には1:50:1乃至50から50:1乃至50の範囲、好ましくは1:5:1乃至5から5:1:1乃至5の範囲である。現在のところ、好ましい製剤はオルメサルタンメドキソミル、アムロジピン又は当該アムロジピンの量と等価であるその薬理学的に許容される塩、及びヒドロクロロチアジン又は当該ヒドロクロロチアジンの量と等価であるその薬理学的に許容される塩を、それぞれ40/10/12.5mg、40/5/12.5mg、40/10/25mg、40/5/25mg、20/10/12.5mg及び20/5/12.5mgで含有する錠剤である。
【0056】
オルメサルタンメドキソミル及び、アムロジピン又はその薬理学的に許容される塩のみを有効成分として含有し、オルメサルタンメドキソミルを40mg含有する固形製剤の総重量は、合計100mg乃至300mg、好ましくは約200mgに達する。オルメサルタンメドキソミル及び、アムロジピン又はその薬理学的に許容される塩のみを有効成分として含有し、オルメサルタンメドキソミルを20mg含有する固形製剤の総重量は、合計50mg乃至150mg、好ましくは約100mgに達する。オルメサルタンメドキソミル、アムロジピン又はその薬理学的に許容される塩、及びヒドロクロロチアジン又はその薬理学的に許容される塩を含有し、オルメサルタンメドキソミルを40mg含有する三剤複合の固形製剤の総重量は、合計100mg乃至400mg、好ましくは約300mgに達する。
【0057】
本発明の方法を使用して得ることができる固形製剤は、たとえば高血圧又は高血圧によって引き起こされる疾病[より具体的には、高血圧、心疾患(狭心症、心筋梗塞、不整脈、心不全又は心肥大)、腎疾患(糖尿病性腎症、糸球体腎炎又は腎硬化)又は脳血管疾患(脳梗塞又は脳出血)]などの予防又は治療に有効である。
【実施例】
【0058】
以下の実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲がそれらに限定されることはない。
【0059】
実施例1
錠剤の組成:
オルメサルタンメドキソミル 40.00mg
ベシル酸アムロジピン 13.89mg
アルファ化デンプン 70.00mg
ケイ化微結晶セルロース 65.31mg
クロスカルメロースナトリウム 10.00mg
ステアリン酸マグネシウム 0.80mg
Opadry(登録商標)II 8.00mg
総重量 208.00mg
【0060】
以下の手順を用いて上記に記載した組成にしたがって錠剤を調製した。
有効成分(粉砕したオルメサルタンメドキソミル及びベシル酸アムロジピン)をアルファ化デンプン、ケイ化微結晶セルロース及びクロスカルメロースナトリウムと共に回転式混合器中で混合し、粉末混合物を調製した。
次に粉末混合物を、1.9mmのふるいを備えたスクリーニングミルを用いて整粒した。整粒された粉末混合物を、回転式混合器中で再度混合した。
ステアリン酸マグネシウムを粉末混合物に加え、回転式混合器中で混合して最終混合物を得た。最終混合物を、輪転機を用いて、錠剤強度に適切な大きさと形状になるように僅かに凸状の錠剤に成形した。
皮膜懸濁液を、純水中にOpadry(登録商標)IIを懸濁させることにより調製した。錠剤の核に、標準的な成膜装置を用いてフィルムコーティング処理を行った。
【0061】
実施例2
錠剤の組成:
オルメサルタンメドキソミル 40.00mg
ベシル酸アムロジピン 13.89mg
ヒドロクロロチアジド 12.50mg
アルファ化デンプン 105.00mg
ケイ化微結晶セルロース 112.41mg
クロスカルメロースナトリウム 15.00mg
ステアリン酸マグネシウム 1.20mg
Opadry(登録商標)II 10.00mg
総重量 310.00mg
【0062】
以下の手順を用いて上記に記載した組成にしたがって錠剤を調製した。
有効成分(粉砕したオルメサルタンメドキソミル、ベシル酸アムロジピン及びヒドロクロロチアジド)をアルファ化デンプン、ケイ化微結晶セルロース及びクロスカルメロースナトリウムと共に回転式混合器中で混合し、粉末混合物を調製した。
次に粉末混合物を、1.9mmのふるいを備えたスクリーニングミルを用いて整粒した。整粒された粉末混合物を、回転式混合器中で再度混合した。
ステアリン酸マグネシウムを粉末混合物に加え、回転式混合器中で混合して最終混合物を得た。最終混合物を、輪転機を用いて、錠剤強度に適切な大きさと形状になるように僅かに凸状の錠剤に成形した。
皮膜懸濁液を、純水中にOpadry(登録商標)IIを懸濁させることにより調製した。錠剤の核に、標準的な成膜装置を用いてフィルムコーティング処理を行った。
【0063】
参考例1(Olmetec(登録商標)ベースの処方)
錠剤の組成:
オルメサルタンメドキソミル 40.00mg
ベシル酸アムロジピン 13.89mg
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 80.00mg
微結晶セルロース 40.00mg
乳糖一水和物 232.51mg
ヒドロキシプロピルセルロース 10.00mg
ステアリン酸マグネシウム 3.60mg
Opadry(登録商標)OY S 38956 12.00mg
総重量 432.00mg
【0064】
以下の手順を用いて上記に記載した組成にしたがって錠剤を調製した。
有効成分(粉砕したオルメサルタンメドキソミル、ベシル酸アムロジピン)を低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、乳糖一水和物及びヒドロキシプロピルセルロースと共に高せん断造粒機中で混合し、次に純水中で混練することで粉末混合物を調製した。
湿潤顆粒を、9.5mmのふるいを備えたスクリーニングミルを用いて整粒し、次に流動層乾燥機中で乾燥した。
乾燥顆粒を、1.9mmのふるいを備えたスクリーニングミルを用いて整粒した。
ステアリン酸マグネシウムを整粒顆粒に加え、回転式混合器中で混合して最終混合物を得た。
最終混合物を、輪転機を用いて、錠剤強度に適切な大きさと形状になるように僅かに凸状の錠剤に成形した。
皮膜懸濁液を、純水中にOpadry(登録商標)OY S 38956(白)を懸濁させることにより調製した。錠剤の核に、標準的な成膜装置を用いてフィルムコーティング処理を行った。
【0065】
試験例1 保存安定性試験
試験対象の実施例1の錠剤を、乾燥剤と共にHDPEボトルに入れ、HDPEねじを用いてボトルを堅く閉めた。ボトル中の錠剤を、3ヶ月間40℃において75%の相対湿度下で保存した(加速試験)。
【0066】
錠剤中のオルメサルタンメドキソミル及びアムロジピンの分解に由来する不純物を、HPLC(Agilent 1100 systems, Agilent Technologies Co., Ltd.)で決定した。結果は以下のとおりであった:
【0067】
【表1】

【0068】
表1及び図1でわかるように、本発明の処方である実施例1の処方は、Olmetec(登録商標)及びNorvasc(登録商標)として市販されているオルメサルタンメドキソミル及びアムロジピンの処方のそれぞれと比較して、優れた安定性を示した。
【0069】
表1及び図1に示される結果に基づいて、不純物の生成と、処方中の還元糖の有無との間に関連性を見出すことができる。処方中に乳糖を有する参考例1は、3ヶ月後に比較的高い水準の全不純物を有していた。対照的に、実施例1の処方は処方中に還元糖を実質的に含まず、その結果として参考例1と比較して著しく低い水準の全不純物を有していた。
【0070】
したがって、表1及び図1のデータは、オルメサルタンメドキソミル及びアムロジピンを含有する製剤の安定性は、処方中の還元糖の有無に依存して向上させることが可能であることを示している。
【0071】
試験例2 溶出試験
実施例1の錠剤の溶出試験には、多成分分析(MCA)に適しているダイオードアレイ分光光度計を備えたEP/USP溶出試験機を用いた。
【0072】
主要なパラメータは以下のとおりである:
媒体: リン酸緩衝溶液pH6.8+/-0.5(日本薬局方)
用量: 900+/-9mL
温度: 37.0+/-0.5℃
バスタイプ: USP apparatus 2
撹拌機: 50rpm+/-2rpm
【0073】
溶出したオルメサルタンメドキソミル及びアムロジピンの量は、試験を行った溶液の濾過部分を、対応する参考溶液と比較して多成分分析(MCA)することにより決定した。
【0074】
【表2】



【0075】
表2及び図2でわかるように、実施例1の処方は参考例1の処方と比較して、オルメサルタンメドキソミル及びベシル酸アムロジピンの両方に関して優れた溶出性を示した。
【0076】
試験例3 保存安定性試験
試験対象である実施例2の錠剤を、乾燥剤と共にHDPEボトルに入れ、HDPEねじを用いてボトルを堅く閉めた。ボトル中の錠剤を、3ヶ月間40℃において75%の相対湿度下で保存した(加速試験)。
【0077】
3ヶ月の期間の終わりにおける、錠剤中のオルメサルタンメドキソミル、アムロジピン、及びヒドロクロロチアジンの分解に由来する不純物を、HPLC(Agilent 1100 systems, Agilent Technologies Co., Ltd.)で決定した。結果は以下のとおりであった:
【0078】
【表3】

【0079】
表3でわかるように、本発明の三剤複合の処方である実施例2の処方は、3ヶ月の促進試験の後においてさえも、それぞれOlmetec(登録商標)及びNorvasc(登録商標)として市販されているオルメサルタンメドキソミル及びアムロジピンの処方と比較して、著しく低い水準のRNH−6270及び不純物Dを示し、優れた安定性を示した。本発明の三剤複合の処方は、卓越した安定性を示し;実際、上記の比較により、試験例1において試験した本発明の二剤複合の処方よりもさらに安定性が多少高いことが理解される。
【0080】
試験例4 溶出試験
実施例2の錠剤の溶出試験には、多成分分析(MCA)に適しているダイオードアレイ分光光度計を備えたEP/USP溶出試験機を用いた。
【0081】
主要なパラメータは以下の通りである:
媒体: リン酸緩衝溶液pH6.8+/-0.5(日本薬局方)
用量: 900+/-9mL
温度: 37.0+/-0.5℃
バスタイプ: USP apparatus 2
撹拌機: 50rpm+/-2rpm
【0082】
溶出したオルメサルタンメドキソミル、アムロジピン及びヒドロクロロチアジドの量は、試験を行った溶液の濾過部分を、対応する参考溶液と比較して多成分分析(MCA)することにより決定した。
【0083】
【表4】

【0084】
表4でわかるように、実施例2の処方は、オルメサルタンメドキソミル、ベシル酸アムロジピン及びヒドロクロロチアジドに関して卓越した溶出性を示した。
【0085】
上記の実験に基づいて、本発明にしたがって調製される実施例1及び2の錠剤の品質及び安定性の両方が十分に満足のいくものであることを直ちに判断することができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明によれば、オルメサルタンメドキソミル及び、アムロジピン又はその薬理学的に許容される塩を含有し、そして場合によりヒドロクロロチアジドを含有する、安定な固形製剤が得られる。






【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルメサルタンメドキソミル及び、アムロジピン又はその薬理学的に許容される塩を含有し、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)−2−プロピル−1−[[2′−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル]メチル]−1H−イミダゾール−5−カルボン酸(RNH−6270)の含有量が2.5%未満(w/w)である固形製剤。
【請求項2】
オルメサルタンメドキソミル及び、アムロジピン又はその薬理学的に許容される塩を含有し、3−エチル−5−メチル−2−[(2−アミノエトキシ)メチル]−4−(2−クロロフェニル)−6−メチルピリジン−3,5−ジカルボキシレート(不純物D)の含有量が0.4%未満(w/w)である固形製剤。
【請求項3】
オルメサルタンメドキソミル及び、アムロジピン又はその薬理学的に許容される塩を含有し、全不純物の含有量が5.1%未満(w/w)である固形製剤。
【請求項4】
オルメサルタンメドキソミル及び、アムロジピン又はその薬理学的に許容される塩を含有し、RNH−6270の含有量が2.5%未満(w/w)であり、全不純物の含有量が5.1%未満(w/w)である固形製剤。
【請求項5】
ヒドロクロロチアジド又はその薬理学的に許容される塩をさらに含有する、請求項1又は2記載の固形製剤。
【請求項6】
全不純物の含有量が7.3%未満(w/w)である、請求項5記載の固形製剤。
【請求項7】
還元糖を実質的に含まない、オルメサルタンメドキソミル及び、アムロジピン又はその薬理学的に許容される塩を含有する固形製剤。
【請求項8】
還元糖を実質的に含まない、請求項1記載の固形製剤。
【請求項9】
還元糖を実質的に含まない、請求項2記載の固形製剤。
【請求項10】
還元糖を実質的に含まない、請求項3記載の固形製剤。
【請求項11】
還元糖を実質的に含まない、請求項4記載の固形製剤。
【請求項12】
還元糖を実質的に含まない、請求項5又は6記載の固形製剤。
【請求項13】
還元糖の含有量が2.0%未満(w/w)である、請求項7乃至12のいずれか1項記載の固形製剤。
【請求項14】
還元糖の含有量が0.3%未満(w/w)である、請求項7乃至12のいずれか1項記載の固形製剤。
【請求項15】
還元糖の含有量が0.05%未満(w/w)である、請求項7乃至12のいずれか1項記載の固形製剤。
【請求項16】
RNH−6270の含有量が0.5%未満(w/w)である、請求項1、5及び7乃至15のいずれか1項記載の固形製剤。
【請求項17】
RNH−6270の含有量が0.4%未満(w/w)である、請求項1、5及び7乃至15のいずれか1項記載の固形製剤。
【請求項18】
不純物Dの含有量が0.3%未満(w/w)である、請求項2、5及び7乃至15のいずれか1項記載の固形製剤。
【請求項19】
不純物Dの含有量が0.05%未満(w/w)である、請求項2、5及び7乃至15のいずれか1項記載の固形製剤。
【請求項20】
全不純物の含有量が1.5%未満(w/w)である、請求項3及び5乃至15のいずれか1項記載の固形製剤。
【請求項21】
RNH−6270の含有量が0.5%未満(w/w)であり、全不純物の含有量が1.5%未満(w/w)である、請求項4乃至15のいずれか1項記載の固形製剤。
【請求項22】
RNH−6270の含有量が0.4%未満(w/w)であり、全不純物の含有量が1.5%未満(w/w)である、請求項4乃至15のいずれか1項記載の固形製剤。
【請求項23】
前記の各不純物が、前記固形製剤を3ヶ月間40℃75%の条件下で加速試験を行った後に測定されたものである、請求項1乃至6及び16乃至22のいずれか1項記載の固形製剤。
【請求項24】
アムロジピンが、そのベシレート塩の形態である、請求項1乃至23のいずれか1項記載の固形製剤。
【請求項25】
1種又はそれ以上の薬学的に許容される添加剤をさらに含有する、請求項1乃至24のいずれか1項記載の固形製剤。
【請求項26】
前記1種又はそれ以上の薬学的に許容される添加剤が、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、乳化剤、安定剤、矯味剤及び希釈剤から選択される、請求項25記載の固形製剤。
【請求項27】
前記賦形剤が、ケイ化微結晶セルロース及び/又はマンニトールである、請求項26記載の固形製剤。
【請求項28】
前記滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウムである、請求項26記載の固形製剤。
【請求項29】
前記崩壊剤が、アルファ化デンプン及び/又はクロスカルメロースナトリウムである、請求項26記載の固形製剤。
【請求項30】
前記固形製剤が、錠剤を含む、請求項1乃至29のいずれか1項記載の固形製剤。
【請求項31】
前記錠剤が、直打法により製造される、請求項30記載の固形製剤。
【請求項32】
前記錠剤が、少なくとも1つの弾性膜でコートされている、請求項30又は31記載の固形製剤。
【請求項33】
前記弾性膜が、少なくとも1種の親水性ポリマーを含んでいる、請求項32記載の固形製剤。
【請求項34】
前記親水性ポリマーが、ポリビニルアルコール及び/又はマクロゴールである、請求項33記載の固形製剤。
【請求項35】
オルメサルタンメドキソミルを20乃至40mg含有する、請求項1乃至34のいずれか1項記載の固形製剤。
【請求項36】
アムロジピン5乃至10mg又はアムロジピン5乃至10mgと等価な薬理学的に許容されるアムロジピンの塩を含有する、請求項1乃至35のいずれか1項記載の固形製剤。
【請求項37】
ヒドロクロロチアジド12.5乃至25mg又はヒドロクロロチアジド12.5乃至25mgと等価な薬理学的に許容されるヒドロクロロチアジドの塩を含有する、請求項1乃至36のいずれか1項記載の固形製剤。
【請求項38】
高血圧の治療又は予防を必要とする温血動物の治療又は予防方法であって、前記動物に請求項1乃至37のいずれか1項記載の固形製剤の有効量を投与することを含む方法。
【請求項39】
高血圧の治療又は予防のための医薬の製造における、請求項1乃至37のいずれか1項記載の固形製剤の使用。
【請求項40】
高血圧の治療又は予防における使用のための、請求項1乃至37のいずれか1項記載の固形製剤。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−500505(P2011−500505A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527899(P2009−527899)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【国際出願番号】PCT/GB2007/003933
【国際公開番号】WO2008/032107
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(307010166)第一三共株式会社 (196)
【Fターム(参考)】