説明

カウンタ及びその製造方法

【課題】 多層構造のカウンタであっても、深み感や立体感を効果的に現出することができるカウンタ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明のカウンタは、表面側に設けられ光を透過させる透光層73と、該透光層73の裏側を遮蔽するように設けられた遮蔽層74と、透光層73と遮蔽層74との界面に設けられ、一端に入光部64を有すると共に、透光層73との界面に出光面65を有する導光層6とを備えている。そして、透光層73と導光層6と遮蔽層74とが一体となり3層構造となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カウンタ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、システムキッチンのカウンタや化粧カウンタ等のカウンタに高級感を付与するために、人造大理石が用いられている。このような人造大理石のカウンタは、例えば、柄材や顔料を混入して合成樹脂組成物を形成し、この合成樹脂組成物を硬化させてなる合成樹脂成形品であり、単層(一層)構造で構成されている。
【0003】
ところで、人造大理石のカウンタのように、大理石調の外観を呈する表面が化粧面となったカウンタを成形するに当たっては、大理石調の模様、深み感や立体感を現出するために、高価な合成樹脂組成物を使用しなければならない。そのため、従来のようにカウンタ全体を単層で構成すると、外観に寄与しない部分も高価な合成樹脂組成物を使用することになるため、材料コストが高くなってしまうという問題がある。
【0004】
そこで、この問題を解決する策として、人造大理石のカウンタを2層で構成することが考えられる。すなわち、この人造大理石のカウンタの表面層に、大理石調の模様を現出するための高価な合成樹脂組成物を使うと共に、裏面層に大理石調の模様を現出する必要のない安価な合成樹脂組成物を使用して、コストダウンを図った2層構造のカウンタを製造するというものである。
【0005】
ここで、2層構造の合成樹脂成形品を製造する一般的な方法として、従来から特許文献1により示す方法が知られている。
【0006】
この特許文献1に示された2層構造の合成樹脂成形品は、以下のように製造される。
【0007】
まず、上面型と第1下面型とを型閉めすることで形成されるキャビティに、第1の合成樹脂組成物を注入する。この第1の合成樹脂組成物が硬化した後、第1下面型をこの硬化した第1の合成樹脂組成物(第1層)から離型すると共に、第1層を上面型に密着させたまま第2下面型を型閉めする。この第1層の下面と第2下面型との間に形成されるキャビティに第2の合成樹脂組成物を注入する。そして、第2の合成樹脂組成物を硬化させることで第2層が形成される。
【0008】
以上のような方法で、第1層と第2層とが積層した2層構造の合成樹脂成形品が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−162171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記特許文献1に示された合成樹脂成形品にあっては、外観上露出する第1層のみに柄材を含んだ合成樹脂組成物を使用し、該第1層を薄くしてコストダウンを図ろうとしたものである。ところがこの合成樹脂成形品は、大理石調の模様は現出できるものの、第1層の厚みは薄く、深み感や立体感を現出することは難しい。このため、従来の2層構造の合成樹脂成形品では、見た目の高級感が物足りないという問題があった。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、多層構造のカウンタであっても、深み感や立体感を効果的に現出することができるカウンタ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明のカウンタは以下の構成を備えている。
【0013】
すなわち、請求項1に係る本発明のカウンタは、表面側に設けられ光を透過させる透光層73と、該透光層73の裏側を遮蔽するように設けられた遮蔽層74と、透光層73と遮蔽層74との界面に設けられ、一端に入光部64を有すると共に、透光層73との界面に出光面65を有する導光層6とを備えている。そして、透光層73と導光層6と遮蔽層74とが一体となり3層構造となっている。
【0014】
導光層6の入光部64から光を入射させると、入射した光は、透光層73と導光層6との界面や導光層6と遮蔽層74との界面に反射しながら入光部64とは反対側の端部に向けて伝播する。このとき、この反射しながら伝播する光のうち一部の光は出光面65から出射し、透光層73を透過してカウンタ7表面から出光する。これにより、カウンタ7において該カウンタ7の深い部分を浮かび上がらせるような外観とすることができ、深み感や立体感を効果的に現出することができるようになる。
【0015】
また、本発明のカウンタ7は、導光層6が、透光層73側に突出する凸部62又は透光層73側の面が凹没する凹部63を有しているのが好ましい。
【0016】
このように導光層6に、透光層73側に突出する凸部62又は透光層73側の面が凹没する凹部63を設けると、この凸部62や凹部63に現れる立体形状をカウンタ7の外観に浮かび上がらせることができて、より一層深み感や立体感を現出することが可能となる。
【0017】
また、請求項3に係る本発明のカウンタの製造方法は、請求項1又は請求項2に記載のカウンタ7を製造するための製造方法である。固定型1に対して可動自在となった可動型2が、第1のキャビティ41を形成する第1の成形位置と、第2のキャビティ42を形成する第2の成形位置と、離型位置との間で移動自在とされる。可動型2を第1の成形位置に位置させることで第1のキャビティ41が形成されると共に、該第1のキャビティ41内に可動型2に沿って導光部材61が配設され、この状態で第1のキャビティ41内に第1の合成樹脂組成物71が注入される。その後、可動型2を第2の成形位置に移動させることで可動型2と対向する面に上記導光部材61が残置された第2のキャビティ42が形成され、この状態で第2のキャビティ42内に第2の合成樹脂組成物72が注入される。その後、可動型2を離型位置に移動させることで、第1の合成樹脂組成物71又は第2の合成樹脂組成物72のいずれか一方の合成樹脂組成物からなる透光層73と、その他方の合成樹脂組成物からなる遮蔽層74と、透光層73及び遮蔽層74と一体となった導光部材61からなる導光層6とで構成されたカウンタ7が得られる。
【0018】
このようなカウンタ7の製造方法によれば、第1のキャビティ41内に導光部材61を配設した上で、第1の合成樹脂組成物71を注入するようにしているから、この第1の合成樹脂組成物71が半硬化状態のまま可動型2を第2の成形位置に移動させても、第1の合成樹脂組成物71が可動型2に付着することがない。さらに、第2のキャビティ42内に第2の合成樹脂組成物72が注入される工程において、可動型2と対向する面に導光部材61が残置された状態で第2の合成樹脂組成物72を注入するようにしているから、第1の合成樹脂組成物72の硬化状態によらず、一定の厚みを保ったまま第2の合成樹脂組成物72を充填することができる。
【0019】
また、請求項4に係る本発明のカウンタの製造方法は、請求項1又は請求項2に記載のカウンタ7を製造するための製造方法である。導光部材61の表面側に第1の合成樹脂組成物71が注入されると共に導光部材61の裏面側に第2の合成樹脂組成物72が前記第1の合成樹脂組成物71の注入と同時に注入される。すると、第1の合成樹脂組成物71よりなる透光層73と、第2の合成樹脂組成物72よりなる遮蔽層74と、透光層73と遮蔽層74との界面に設けられてこれらと一体となった導光部材61からなる導光層6とで構成されたカウンタ7が製造される。
【0020】
このように、導光部材61の表面側と裏面側にそれぞれ第1の合成樹脂組成物71と第2の合成樹脂組成物72とを同時に注入するので、導光層6の表面側に透光層73が一体に積層され、且つ導光層6の裏面側に遮蔽層74が一体に積層された3層構造のカウンタ7の製造時間を短縮できる。
【発明の効果】
【0021】
本願発明によれば、多層構造のカウンタであっても深み感や立体感を効果的に現出することができるカウンタ及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態のカウンタの概略断面図である。
【図2】同上のカウンタに光源を設置した状態の概略断面図である。
【図3】本発明のカウンタの導光層の変形例を示す図であり(a)は断面図であり(b)は平面図である。
【図4】(a)〜(e)は、本発明の実施形態のカウンタの製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について添付図面に基づいて説明する。
【0024】
本実施形態のカウンタ7は図1に示されるような3層構造の人造大理石カウンタ7aである。この人造大理石カウンタ7aは、第1の合成樹脂組成物71からなる透光層73と、第2の合成樹脂組成物72からなる遮蔽層74と、透光層73と遮蔽層74との境界に設けられて透光層73と遮蔽層74と一体となった導光層6とで構成される3層構造の合成樹脂成形品である。
【0025】
透光層73は、人造大理石カウンタ7aの表面層を構成しており、光を透過させる半透明の層により構成され、前述のように第1の合成樹脂組成物71から成る。この第1の合成樹脂組成物71は、主剤となるビニルエステル樹脂等の熱硬化性樹脂に充填材が充填され、そこに顔料や柄材75が混入されて構成される。この柄材75は、顔料を混入した樹脂を主剤とする組成物でシートを作り、このシートを小さく破断することで形成される。なお、このような第1の合成樹脂組成物71から成る透光層73は、顔料により濃色系の樹脂層となる。
【0026】
遮蔽層74は、カウンタ7の裏面層を構成しており、透光層73の裏側を遮蔽するように設けられ、光をほぼ透過させない。この遮蔽層74は、前述のように第2の合成樹脂組成物72から成る。第2の合成樹脂組成物72は、主剤となるビニルエステル樹脂等の熱硬化性樹脂に充填材及び顔料が充填されている。なお、このような第2の合成樹脂組成物72から成る遮蔽層74は、顔料により白色系の樹脂層となる。
【0027】
なお、第1の合成樹脂組成物71のほうが第2の合成樹脂組成物72よりも高価なものとなっている。すなわち、第1の合成樹脂組成物71は柄材75を特別に製造する必要があり、その分だけ第2の合成樹脂組成物72よりも高価となるからである。
【0028】
導光層6は、透光層73と遮蔽層74との界面に設けられており、導光部材61としての導光板61aより成る。この導光板61aは、アクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル樹脂;PMMA(Poly methyl methacrylate))により構成されており、一端面から入射した光を導光板61aの両表面間で繰り返し反射させ、一端面とは反対側の他端面に向けて光を伝播させる。ここで、導光層6の裏面は、遮蔽層74が密着して設けられて遮蔽されており、しかも遮蔽層74は白色系の樹脂層となっている。このため、導光層6と遮蔽層74との界面は、光を反射させやすい状態となっており、反射面となっている。一端面(入光部64)から入射して反射面に反射した光は、透光層73側(表面側)に向けて反射する。透光層73は濃色系の樹脂層となっており、しかも透光層73と導光層6とはぴったりと隙間なく(空気層を介在させず)密着しているため、透光層73と導光層6との界面が出光面65となり、この出光面65から透光層73に向けて光が出光する。
【0029】
本実施形態の人造大理石カウンタ7aは、導光層6の表面側に透光層73を積層し、且つ導光層6の裏面側に遮蔽層74を積層して、これら3者が一体となった3層構造のカウンタ7となっている。そして、本実施形態の人造大理石カウンタ7aには光源5が取り付けられる。人造大理石カウンタ7aの導光層6の入光部64には、その端面に沿って複数の光源5が一直線状に並設されており、各光源5同士が一定の間隔で離間して配設される(図3参照)。
【0030】
このような構成の人造大理石カウンタ7aにおいて、導光層6の入光部64から光を入光させると、入光した光は、透光層73と導光層6との界面や導光層6と遮蔽層74との界面に反射しながら入光部64とは反対側の端部に向けて伝播する。このとき、図2に示されるように、この反射しながら伝播する光のうち一部の光は出光面65から出射し、透光層73を透過してカウンタ7表面から出光する。これにより、カウンタ7において該カウンタ7の深い部分を浮かび上がらせるような外観とすることができ、深み感や立体感を効果的に現出することができるようになる。
【0031】
特に本実施形態の透光層73には柄材75が含まれている。このため、透光層73の背面に設けられた導光層6からの光により、透光層73の柄材75が背面から照らされることとなり、しかもこの柄材75は透光層73の厚み方向に何重にも重なり合うように配設されているため、外観上見える柄材75として、厚み方向に多重的に重なり合った部分には陰影ができたり、重なり合わない部分は光が透過して光ったりする。しかも、この柄材75の重なり合った状態は、製品ごとに異なるものとなるため、光源5を発光させた場合の人造大理石カウンタ7aの外観も製品ごとに異なるものとなる。
【0032】
また、本実施形態の透光層73及び遮蔽層74のビニルエステル樹脂は、アクリル樹脂との密着性が良好であるため、導光層6と透光層73あるいは導光層6と遮蔽層74の界面の剥離を防止できる。
【0033】
ところで、導光層6の変形例として、図3に示されるようなものであってもよい。
【0034】
本変形例の導光層6は、透光層73側の面に凸部62及び凹部63が交互に繰り返し形成されている。この変形例における人造大理石カウンタ7aは、入光部64において導光層6の凸部62に対応する部分に光源5が複数互いに離間して並設されている。このような状態で光源5を発光させると、断面における凸部62の領域内で大部分の光が反射・伝播してゆき、凸部62の両側にある凹部63の領域にはそのうちの僅か一部の光しか漏れ出ない。つまり、図3に示されるように、平面視で一直線状の光の筋が複数並んで形成され、凸部62や凹部63の立体形状に沿った光の模様が浮かび上がる。これにより、従来にない外観を呈する商品価値の高い人造大理石カウンタ7aを提供することができる。なお、図3中の符号Sは、シンクを示し、符号Tは排水口を示している。
【0035】
また、その他の変形例として、この導光板61aには公知の導光板を適宜使用できる。つまり、導光板の表面側あるいは裏面側の面に導光パターンを印刷し、その導光パターンによって光を乱反射させ、透光層73と導光層6との界面の全面又は一部から発光させる。このような構成の導光層6であっても、カウンタ7において、該カウンタ7の深い部分から光らせることができたり、また光の模様等を浮かび上がらせたりすることができる。
【0036】
以上、本実施形態の人造大理石カウンタ7aの構成を説明した。以下、本実施形態の人造大理石カウンタ7aの製造方法の一例を説明する。
【0037】
本実施形態の製造方法は、図4に示す金型装置Aを用いることによって人造大理石カウンタ7aを製造する。
【0038】
金型装置Aは、金型8と、金型8内に合成樹脂組成物71,72を注入する第1のノズル91及び第2のノズル92とを備えている。この金型8は、固定型1と、固定型1に対して移動自在となった可動型2と、サイド型3とを有している。そして、この金型8には、上記実施形態の導光板61aの外周端部を保持するための導光板保持手段93が設けられている(図4)。
【0039】
固定型1には、可動型2と対向する面に第1の成形部11が設けられている。この第1の成形部11は固定型1に設けられた凹部で構成されている。第1の成形部11の周囲の部分には、サイド型3を載置可能なサイド型載置部12が設けられている。さらに、この固定型1においてサイド型3と対向する面が固定型側保持部13となっている。
【0040】
固定型1の第1の成形部11の底面には第1のノズル91が設けられている。この第1のノズル91は、導光板保持手段93に装着された状態の導光板61aに臨むように設けられている。
【0041】
サイド型3は、固定型1の第1の成形部11の周囲に設けられたサイド型載置部12の上部に、取り外し自在に設けられている。サイド型3には、サイド型載置部12に対向する面において、第1の成形部11側の縁部にサイド型側保持部32が設けられている。また、サイド型3の可動型2と対向する面(第1の成形部11に対し略直角な面)には、サイド型側摺接部33が設けられている。
【0042】
本実施形態の金型装置Aは、このサイド型側保持部32と固定型側保持部13とで、導光板61aの外周端部を保持するための導光板保持手段93を構成している。
【0043】
すなわち、固定型1の固定型側保持部13に、固定型1の第1の成形部11を導光板61aで覆うようにして、該導光板61aの外周端部を載置する。この状態で固定型1に対してサイド型3を型閉めして、固定型側保持部13とサイド型側保持部32とでこの導光板61aの外周端部を挟持する。
【0044】
可動型2は、導光板61aを介して固定型1の第1の成形部11と対向する部位に第2の成形部21が形成されている。この第2の成形部21は、可動型2に設けられると共に可動型2の移動方向に直角な平面からなる可動型側成形部22を有しており、この可動型側成形部22とサイド型3の一部とで構成されている。サイド型3と対向する可動型2の側面には、可動型側摺接部23が設けられている。可動型2はサイド型3に沿って移動し、可動型2の移動に際してこの可動型側摺接部23とサイド型側摺接部33とが摺接して、可動型2の移動がガイドされている。
【0045】
また、可動型2の可動型側成形部22の平面の一部には第2のノズル92が設けられている。この第2のノズル92は、第1のノズル91と同様に、導光板保持手段93に保持された状態の導光板61aに臨むように設けられており、第1のノズル91と第2のノズル92とは互いに対向する位置に設けられている。すなわち、第1のノズル91の注入方向と第2のノズル92の注入方向が、互いに導光板61aに向くように設置されている。
【0046】
なお、固定型1及び可動型2の第1及び第2のノズル91,92が設けられた部分とは反対側の端部には、図示しないベントノズルが設けられている。このベントノズルによって、第1及び第2のノズル91,92から合成樹脂組成物71,72を注入した際の脱気を行なうことができる。
【0047】
なお、可動型側摺接部23の一部には、注入した合成樹脂組成物72が外部に漏れるのを防止する漏れ防止手段34が設けられている。本実施形態の漏れ防止手段34は、サイド型3側に付勢されると共に先端がサイド型側摺接部33に当接した膨出部34aによって構成されており、膨出部34aがサイド型3に密着・当接することで、合成樹脂組成物72の外部への漏れを防止している。
【0048】
このような可動型2は、第1のキャビティ41を形成する第1の成形位置と、第2のキャビティ42を形成する第2の成形位置と、離型位置との間で移動自在となっている。
【0049】
第1の成形位置は、図4(a)に示す可動型2の位置をいう。可動型2を第1の成形位置に位置させると、平面からなる可動型側成形部22と固定型1の第1の成形部11の凹部63底面とが離間した状態となり、この可動型側成形部22に沿って配設された導光板61aと固定型1の第1の成形部11とで第1のキャビティ41が形成される。
【0050】
第2の成形位置は、図4(b)に示す可動型2の位置をいう。この第2の成形位置は、可動型2を前記第1の成形位置から固定型1とは離れる方向に所定の距離移動させた位置である。可動型2を第2の成形位置に移動させると、導光板61aを介して第1のキャビティ41とは反対側に、該第1のキャビティ41に沿って第2のキャビティ42が形成される。
【0051】
離型位置は、図4(d)に示す可動型2の位置をいう。この離型位置は、可動型2を前記第2の成形位置から更に固定型1とは離れる方向に移動させた位置である。可動型2を離型位置に位置させることによって、合成樹脂成形品を取り出すことができる。
【0052】
以上のように構成された金型装置Aを使用して、本実施形態の人造大理石カウンタ7aが以下のようにして製造される。
【0053】
導光板61aの外周端部を導光板保持手段93によって保持させる。そして、図4(a)に示されるように、可動型2を第1の成形位置に位置させると第1のキャビティ41が形成される。この状態の第1のキャビティ41内においては、第1の成形位置にある可動型2の固定型1に対向する面に沿って前記導光板61aが配設されている。この状態で、第1のノズル91から第1のキャビティ41内に第1の合成樹脂組成物71を注入する。すると、注入された第1の合成樹脂組成物71は、図4(a)の矢印のように導光板61aに当たって向きを変え、第1のキャビティ41内を前記導光板61aの表面に沿って流れる。このようにして、第1のキャビティ41内に第1の合成樹脂組成物71が充填される。
【0054】
次に、この状態のままで、第1の合成樹脂組成物71を硬化させるために固定型1を加熱させて、該第1の合成樹脂組成物71を半硬化又は硬化させる。
【0055】
この後固定型1を加熱した状態のまま、可動型2を第1の成形位置から第2の成形位置に移動させる。可動型2を第2の成形位置に位置させると、可動型2と対向した半硬化又は硬化状態の第1の合成樹脂組成物71に導光板61aが残置されたままとなる。そして、この導光板61aよりも可動型2側に、第1の合成樹脂組成物71に沿って第2のキャビティ42が形成される。なおこの時、第1の合成樹脂組成物71の可動型2側の部分が、仮に半硬化状態であっても、可動型2と第1の合成樹脂組成物71との間には導光板61aが介在しているため、可動型2を移動させても半硬化状態の第1の合成樹脂組成物71は可動型2に付着しない。
【0056】
次に、第2のキャビティ42が形成された状態で、第2のノズル92から第2のキャビティ42内に第2の合成樹脂組成物72を注入する。すると、注入された第2の合成樹脂組成物72は、図4(c)の矢印のように導光板61aに当たって向きを変え、第2のキャビティ42内を導光板61aの表面に沿って流れる。
【0057】
第2のキャビティ42内に第2の合成樹脂組成物72が注入されると、固定型1のみならず可動型2による加熱も開始し、可動型2及び固定型1の両側からの加熱によって合成樹脂組成物を完全に硬化させる。
【0058】
合成樹脂組成物71,72が完全に硬化したら、固定型1及び可動型2の加熱を停止すると共に、可動型2を離型位置に移動させて型開きする。可動型2を離型位置に位置させるとサイド型3を固定型1のサイド型載置部12から取り外すことが可能となるため、固定型1からサイド型3を取り外す。すると、硬化した状態の合成樹脂成形品を固定型1から取り外すことができるようになるため、固定型1から前記硬化した合成樹脂成形品を取り外す。
【0059】
脱型させた合成樹脂成形品は、成形の際に導光板61aの外周端部が導光板保持手段93によって保持されていたため、図4(e)に示されるように、この部分が突出した状態となっている。そこで、この導光板61aの外周端部の突出した部分を切断して除去する。このようにして、本実施形態の人造大理石カウンタ7aが完成する。
【0060】
ここで、第1のキャビティ41に第1の合成樹脂組成物71を充填する工程において、可動型2に沿って導光板61aを配設した上で前記合成樹脂組成物71を充填するようにしたため、この第1の合成樹脂組成物71が半硬化状態のままでも、可動型2に第1の合成樹脂組成物71を付着させないで該可動型2を第2の成形位置に移動させることができる。この結果、第1の合成樹脂組成物71の充填後、完全に硬化するまで時間を要していた従来のものに比べて、短時間で合成樹脂成形品を製造することができる。
【0061】
ところで、仮に導光板61aを配設せずに、第1及び第2の合成樹脂組成物71,72を注入すると、第1の合成樹脂組成物71と第2の合成樹脂組成物72とが一部混じり合ったり、あるいは第1の合成樹脂組成物71が第2の合成樹脂組成物72に食い込んだり、あるいは、第2の合成樹脂組成物72が第1の合成樹脂組成物71に食い込んだりしてしまう。このため、表面側の層の厚みを一定の厚みに確保できず、場合によっては裏面側の層が表面近くに位置したり、あるいは裏面側の層が表面に露出したりする場合もあった。しかし、本実施形態では、第2のキャビティ42に第2の合成樹脂組成物72を充填する工程において、第1の合成樹脂組成物71の可動型2側の面に導光板61aが残置された状態となっているため、第2のノズル92の注入圧や第1の合成樹脂組成物71の硬化状態に影響を受けずに第2の合成樹脂組成物72を充填することができる。これにより、第1及び第2の合成樹脂組成物71,72により形成される透光層73及び遮蔽層74の各厚みを、設計寸法通りに且つ一定の厚みに成形することができる。
【0062】
また、上記製造方法によれば、上記変形例における凹部63又は凸部62を有する導光板61aを用いた人造大理石カウンタ7aを製造するに当たっても、凹部63及び凸部62の隅部にまで隙間なく合成樹脂組成物71,72を行き亘らせることができ、ぴったりと密着した状態で透光層73と導光層6と遮蔽層74とを積層することができる。
【0063】
さらに、本実施形態の人造大理石カウンタ7aにおいて、導光層6が、導光パターンを形成した導光板61aで構成された場合であっても、上記製造方法によって好適に製造することができる。つまり、上記製造方法によれば、導光層6の表面に、導光パターンによって微細な凹凸が形成されていたとしても、その微細な凹凸に合成樹脂組成物71,72を隙間なく行き亘らせることができ、隙間なく密着した状態で導光層6と透光層73あるいは遮蔽層74とを積層することができる。これにより、より界面強度(層間の密着力)を向上できて層間剥離を防止することができる。
【0064】
なお、上記実施形態において、第1の合成樹脂組成物71を裏面側の遮蔽層74とすると共に第2の合成樹脂組成物72を表面側の透光層73としてもよいのはもちろんである。
【0065】
次に、本実施形態の人造大理石カウンタ7aの上記製造方法とは異なる製造方法の説明をする。
【0066】
本実施形態の人造大理石カウンタ7aの製造方法は、上記製造方法において使用した金型装置Aと同じ構成の金型装置Aを使用する。
【0067】
上記金型装置Aを用いて型閉めして、固定型1と可動型2とで形成されたキャビティを、導光板保持手段93により保持した導光板61aにより、第1のキャビティ41と第2のキャビティ42とに仕切る。この状態で第1のノズル91から第1の合成樹脂組成物71を第1のキャビティ41に注入すると共に、この第1の合成樹脂組成物71の注入と同時に第2のノズル92から第2の合成樹脂組成物72を第2のキャビティ42に注入する。
【0068】
このように、第1の合成樹脂組成物71と第2の合成樹脂組成物72とを同時に注入して導光板61aの表面側に透光層73を形成すると共に、導光板61aの裏面側に遮蔽層74を形成することで、第1の合成樹脂組成物71の注入と第2の合成樹脂組成物72の注入とに時間差を設ける従来の製造方法に比べて、単一の金型装置Aを用いて短時間で人造大理石カウンタ7aを製造することができる。
【0069】
以上、本実施形態の人造大理石カウンタ7aをその製造方法と共に説明したが、本発明の製造方法は、人造大理石カウンタ7aに限らず多層構造のカウンタ7であれば適用することができる。
【0070】
また、本実施形態の人造大理石カウンタ7aは、第1及び第2の合成樹脂組成物がビニルエステルを主剤とした構成とされていたが、本発明の第1及び第2の合成樹脂組成物はこのものに限定されない。この第1及び第2の合成樹脂組成物は、例えばエポキシ系,アクリル系,不飽和ポリエステル系などの熱硬化性樹脂を主剤としたものであってもよいし、あるいは熱可塑性樹脂を主剤としたものであってもよい。
【0071】
また、本実施形態の導光層6は導光板61aにより構成されていたが、本発明の導光層6は導光部材61であればよく、例えば導光機能を有する例えば導光シートのようなもので構成されていてもよい。
【0072】
なお、本実施形態の人造大理石カウンタ7aに取り付けられる光源5は、指向性のある点光源5が用いられる例によって説明したが、蛍光灯など線状の光源5が用いられたものであってもよい。
【符号の説明】
【0073】
6 導光層
64 入光部
7 カウンタ
7a 人造大理石カウンタ
71 第1の合成樹脂組成物
72 第2の合成樹脂組成物
73 透光層
74 遮蔽層
75 柄材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側に設けられ光を透過させる透光層と、
該透光層の裏側を遮蔽するように設けられた遮蔽層と、
透光層と遮蔽層との界面に設けられ、一端に入光部を有すると共に透光層との界面に出光面を有する導光層とを備え、
透光層と導光層と遮蔽層とが一体となり3層構造となっていることを特徴とするカウンタ。
【請求項2】
前記導光層は、透光層側に突出する凸部又は透光層側の面が凹没する凹部を有している請求項1記載のカウンタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のカウンタを製造するための製造方法であって、
固定型に対して可動自在となった可動型が、第1のキャビティを形成する第1の成形位置と、第2のキャビティを形成する第2の成形位置と、離型位置との間で移動自在とされ、
可動型を第1の成形位置に位置させることで第1のキャビティが形成される共に、該第1のキャビティ内に可動型に沿って導光部材が配設され、この状態で第1のキャビティ内に第1の合成樹脂組成物が注入され、
その後、可動型を第2の成形位置に移動させることで可動型と対向する面に上記導光部材が残置された第2のキャビティが形成され、この状態で第2のキャビティ内に第2の合成樹脂組成物が注入され、
その後、可動型を離型位置に移動させることで、第1の合成樹脂組成物又は第2の合成樹脂組成物のいずれか一方の合成樹脂組成物からなる透光層と、その他方の合成樹脂組成物からなる遮蔽層と、透光層及び遮蔽層と一体となった導光部材からなる導光層とで構成されたカウンタが得られることを特徴とするカウンタの製造方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のカウンタを製造するための製造方法であって、
導光部材の表面側に第1の合成樹脂組成物が注入されると共に導光部材の裏面側に第2の合成樹脂組成物が前記第1の合成樹脂組成物の注入と同時に注入され、
第1の合成樹脂組成物よりなる透光層と、第2の合成樹脂組成物よりなる遮蔽層と、透光層と遮蔽層との界面に設けられてこれらと一体となった導光部材からなる導光層とで構成されたカウンタが製造されることを特徴とするカウンタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−67444(P2011−67444A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221508(P2009−221508)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】