説明

カスパーゼインヒビターおよびそれらの使用

【課題】細胞のアポトーシスおよび炎症を媒介するカスパーゼを阻害する新規化合物を提供すること。
【解決手段】本発明は、式(I)の化合物を提供する:ここで、Zは酸素または硫黄であり;Rは、水素、−CHN、−R、−CHOR、−CHSR、または−CHYであり;Yは、電気陰性の脱離基であり;Rは、COH、CHCOH、またはそれらのエステル、アミドもしくはアイソスターであり;R、R、RおよびRは、明細書に記載されるとおりである。この化合物は、アポトーシスおよびIL−1β分泌の有効なインヒビターである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、医化学の分野にあり、そして細胞のアポトーシスおよび炎症を媒介するカスパーゼを阻害する新規化合物およびその薬学的組成物に関する。本発明はまた、本発明の化合物および薬学的組成物を使用して、カスパーゼ活性が関与する疾患を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
アポトーシス(すなわち、プログラム細胞死)は、生物体が望ましくない細胞を排除する主要な機構である。アポトーシスの調節不全は(過剰なアポトーシスまたはアポトーシスを起こし得ないことのいずれであっても)、多くの疾患(例えば、癌、急性炎症障害および自己免疫障害、虚血性疾患、ならびに特定の神経変性障害)に関与している(一般に、Science,1998,281,1283−1312;Ellisら,Ann.Rev.Cell.Biol.,1991,7,663を参照のこと)。
【0003】
カスパーゼは、アポトーシスおよび細胞の分解(disassembly)のためのシグナル伝達経路において重要なメディエイタであるシステインプロテアーゼ酵素のファミリーである(Thornberry,Chem.Biol.,1998,5,R97−R103)。これらのシグナル伝達経路は、細胞型および刺激に依存して変動するが、すべてのアポトーシス経路は、重要なタンパク質のタンパク質分解へと導く共通のエフェクター経路に収束するようである。カスパーゼは、シグナル伝達経路のエフェクター相およびその開始におけるさらなる上流の両方に関与する。開始事象に関与する上流のカスパーゼは活性化状態となり、次いで、アポトーシスのより後期の相に関与する他のカスパーゼを活性化させる。
【0004】
最初に同定されたカスパーゼであるカスパーゼ−1は、インターロイキン変換酵素(すなわち、「ICE」)としてもまた知られる。カスパーゼ−1は、前駆体インターロイキン−1β(「pIL−1β」)を、Asp−116とAla−117との間でのpIL−1βの特異的切断によって、プロ炎症活性形態へと変換する。カスパーゼ−1に加えて、他に11個の既知のヒトカスパーゼもまた存在し、このすべてが、アスパルチル残基で特異的に切断する。これらはまた、切断部位のN末端側にある少なくとも4個のアミノ酸残基について、厳密な要件を有することが観察されている。
【0005】
カスパーゼは、好ましいかまたは主に認識されるアミノ酸配列に依存して、3つの群に分類された。カスパーゼ1、4および5を含むカスパーゼの群は、切断部位のN末端側の4番目の位置で、疎水性の芳香族アミノ酸を好むことが示されている。カスパーゼ2、3および7を含む別の群は、切断部位のN末端側において1番目および4番目の位置の両方でアスパルチル残基を認識し、そして好ましくは、Asp−Glu−X−Aspの配列を認識する。カスパーゼ6、8、9および10を含む第3の群は、主な認識配列において多くのアミノ酸を許容するが、4番目の位置で分枝状脂肪族側鎖を有する残基(例えば、バリンおよびロイシン)を好むようである。
【0006】
カスパーゼはまた、その認識された機能に従って分類された。第1のサブファミリーは、カスパーゼ−1(ICE)、4および5からなる。これらのカスパーゼは、プロ炎症性サイトカインのプロセシングに関与し、従って、炎症において重要な役割を果たすことが示されている。このクラスのなかの最も研究された酵素であるカスパーゼ−1は、タンパク質分解性切断によって、IL−1β前駆体を活性化する。従って、この酵素は、炎症応答において重要な役割を果たす。カスパーゼ−1はまた、抗原提示、T細胞活性化および細胞接着を調節する重要な免疫調節因子であるインターフェロンγの産生を刺激する、インターフェロンγ誘導因子(IGIFまたはIL−18)のプロセシングに関与する。
【0007】
残りのカスパーゼは、第2および第3のサブファミリーを形成する。これらの酵素は、アポトーシスへと導く細胞内シグナル伝達経路において中心的な重要な酵素である。1つのサブファミリーは、アポトーシス経路における開始事象(形質膜からのシグナルの変換を含む)に関与する酵素からなる。このサブファミリーのメンバーは、カスパーゼ−2、8、9および10を含む。エフェクターカスパーゼ3、6および7から構成される他のサブファミリーは、アポトーシスによる組織的な細胞の分解および細胞の死を生じさせる、最終的な下流の切断事象に関与する。上流のシグナル変換に関与するカスパーゼは、下流のカスパーゼを活性化し、次いで、この下流のカスパーゼは、DNA修復機構を不能にし、DNAを断片化し、細胞骨格を破壊し、そして最終的に、細胞を断片化する。
【0008】
カスパーゼによって主に認識される4つのアミノ酸配列が、酵素基質について決定された。Talanianら,J.Biol.Chem.272,9677−9682,(1997);Thornberryら,J.Biol.Chem.272,17907−17911,(1997)。カスパーゼによって主に認識される4つのアミノ酸配列に関する見識は、カスパーゼインヒビターを設計するために使用されている。可逆的なテトラペプチドインヒビターが調製されており、これは、CHCO−[P4]−[P3]−[P2]−CH(R)CHCOH(ここでP2〜P4は、最適なアミノ酸認識配列を示し、そしてRは、カスパーゼのシステインスルフヒドリルに結合し得るアルデヒド、ニトリルまたはケトンである)を有する。RanoおよびThornberry,Chem.Biol.4,149−155(1997);Mjalliら,Bioorg.Med.Chem.Lett.3,2689−2692(1993);Nicholsonら,Nature 376,37−43(1995)。類似のテトラペプチド認識配列に基づく不可逆的なインヒビターが調製されており、ここでは、Rは、アシルオキシメチルケトン−COCHOCOR’である。R’は、2,6−ジクロロベンゾイルオキシのような必要に応じて置換されたフェニルにより例示され、そしてここでRは、COCHXであり、ここでXは、FまたはClのような脱離基である。Thornberryら,Biochemistry 33,3934(1994);Dolleら,J Med.Chem.37,563−564(1994)。
【0009】
細胞性アポトーシスの増加に関連付けられる、哺乳動物の種々の疾患状態を処置するためのカスパーゼインヒビターの用途が、ペプチド性カスパーゼインヒビターを用いて実証されている。例えば、げっ歯類モデルにおいて、カスパーゼインヒビターは、梗塞サイズを減少させ、そして心筋梗塞後の心筋細胞のアポトーシスを阻害すること、発作から生じる病変体積および神経学的欠損を減少させること、外傷性脳傷害における外傷後アポトーシスおよび神経学的欠損を減少させること、劇症性肝臓破壊を処置するにおいて有効であること、および内毒素性ショック後の生存を改善することが示されている。Yaoitaら,Circulation,97,276(1998);Endresら,J Cerebral Blood Flow and Metabolism,18,238,(1998);Chengら,J.Clin.Invest.,101,1992(1998);Yakovlevら,J Neuroscience,17,7415(1997);Rodriquezら,J.Exp.Med.,184,2067(1996),Grobmyerら,Mol.Med.,5,585(1999)。
【0010】
一般的に、上記のペプチド性インヒビターは、いくつかのカスパーゼ酵素に対して非常に効力を有する。しかし、この効力は、アポトーシスの細胞モデルにおいて常に示されるというわけではない。さらに、ペプチドインヒビターは代表的に、望ましくない薬理学的特性(例えば、経口吸収が乏しいこと、安定性が乏しいこと、および迅速な代謝が乏しいこと)によって特徴付けられる。PlattnerおよびNorbeck,Drug Discovery Technologies,ClarkおよびMoos編(Ellis Horwood,Chichester,England,1990)。
【0011】
改変されたペプチドインヒビターに関する報告が存在する。特許文献1および特許文献2は、以下の式:
Z−Q−Asp−Q
のペプチドICEインヒビターを開示しており、ここでZは、N末端の保護基であり;Qは、0〜4個のアミノ酸であり;そしてQは、陰性の脱離基である。
【0012】
特許文献3は、以下の式:
【0013】
【化3】

のジペプチドカスパーゼインヒビターを開示しており、ここでRは、N末端の保護基であり;AAは、天然のα−アミノ酸またはβ−アミノ酸の残基であり;Rは、水素またはCHであり、ここでRは、陰性の脱離基であり;そしてRは、アルキルまたは水素である。
【0014】
特許文献4は、以下の式:
【0015】
【化4】

のジペプチドカスパーゼインヒビターを開示しており、ここでRは、N末端の保護基であり;AAは、非天然のα−アミノ酸またはβ−アミノ酸の残基であり;そしてRは、必要に応じて置換されたアルキルまたは水素である。
【0016】
特許文献5は、以下の式:
【0017】
【化5】

を有する(置換)アシルジペプチドアポトーシスインヒビターを開示しており、ここでnは、0、1または2であり;qは、1または2であり;Aは、特定の天然または非天然のアミノ酸の残基であり;Bは、水素原子、重水素原子、C1−10の直鎖または分枝鎖のアルキル、シクロアルキル、フェニル、置換フェニル、ナフチル、置換ナフチル、2−ベンゾオキサゾリル、置換2−オキサゾリル、(CHシクロアルキル、(CHフェニル、(CH(置換フェニル)、(CH(1−または2−ナフチル)、(CHヘテロアリール、ハロメチル、CO13、CONR1415、CHZR16、CHOCOアリール、CHOCO(置換アリール)、CHOCO(ヘテロアリール)、CHOCO(置換ヘテロアリール)、またはCHOPO(R17)R18であり、ここでR13、R14、R15、R16、R17およびR18は、その出願において規定されており;Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、フェニル、置換フェニル、(CHNHを含む群から選択され;Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、フェニルアルキル、または置換フェニルアルキルであり;Xは、CH、C=O、O、S、NH、C=ONHまたはCHOCONHであり;そしてZは、酸素原子または硫黄原子である。
【0018】
特許文献6は、以下の式:
【0019】
【化6】

のインターロイキン−1β変換酵素のインヒビターを開示しており、ここでRは、H、アルキル、アルコキシ、炭素環、複素環、および種々の他の基を表し;AAおよびAAは、単結合またはアミノ酸であり;そしてYは、以下の式:
【0020】
【化7】

の基を表し、ここでTet環は、テトラゾール環を表し;そしてZは特に、アルキレン、アルケニレン、O、S、SOおよびSOを表す。
【0021】
特許文献7は、以下の式:
R−A−A−X−A
のICEインヒビターを開示しており、ここでRは、H、保護基、または必要に応じて置換されたPhCHO環であり;Aは、α−ヒドロキシ−またはα−アミノ酸の残基であり;Aは、α−ヒドロキシ酸残基またはα−アミノ酸であるか、あるいはAおよびAは一緒に、プソイドジペプチドまたはジペプチド擬似体残基を形成し;Xは、Aspに由来する残基であり、ここでAは、CHCOY、CHOY、CHSY、またはCH(CO)であり、ここで、Xは、OまたはSであり、mは、0または1であり、そしてY、Y、Y、およびYは、必要に応じて置換された環式脂肪族基またはアリール基である。
【0022】
特許文献8は、特に、以下の式:
【0023】
【化8】

のICEインヒビターを開示しており、ここでRおよびRは、この出願において記載される通りであり、そしてピロリジン環は、種々の基によって置換される。
【0024】
特許文献9は、以下の式:
【0025】
【化9】

のICEインヒビターを開示しており、ここでR’、R、RおよびYは、この出願において記載される通りであり、RおよびRは独立して、水素、C〜Cアルキル、OH、(CH−置換アリール、(CH−O−アリール、(CH−O−置換アリール、(CH−S−アリール、(CH−S−置換アリール、(CH−S−ヘテロアリール、(CH−S−置換ヘテロアリール、(CH−NR’−アリール、(CH−NR’−置換アリール、(CH−NR’−ヘテロアリール、(CH−NR’−置換ヘテロアリール、(CH−ヘテロアリール、(CH−置換ヘテロアリールであり、各々のnは、独立して0〜6である。
【0026】
多くのカスパーゼインヒビターが報告されているが、これらが、治療的に有用となるための適切な薬理学的特性を有しているか否かは明らかでない。従って、インビボでアポトーシスの有効な阻害を提供するために、強力であり、安定であり、かつ膜を貫通する、低分子のカスパーゼインヒビターについての必要性が依然として存在する。このような化合物は、カスパーゼ酵素が役割を果たす上述の疾患を処置するにおいて、非常に有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】国際公開第91/15577号パンフレット
【特許文献2】国際公開第93/05071号パンフレット
【特許文献3】国際公開第99/18781号パンフレット
【特許文献4】国際公開第99/47154号パンフレット
【特許文献5】国際公開第00/023421号パンフレット
【特許文献6】国際公開第97/24339号パンフレット
【特許文献7】欧州特許第618223号明細書
【特許文献8】国際公開第98/16502号パンフレット
【特許文献9】国際公開第99/56765号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0028】
(発明の要旨)
本発明は、以下を提供する。
(項目1)
患者において、カスパーゼインヒビターを用いる処置により緩和される疾患を処置する方法であって、該方法は、このような処置を必要とする患者に、以下の式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な誘導体の治療的有効量を投与する工程を包含する:
【化1】


ここで、
の隣の−−−は、単結合または二重結合を表し;
Zは酸素または硫黄であり;
は、水素、−CHN、−R、−CHOR、−CHSR、または−CHYであり;
Rは、C1−12脂肪族、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、またはヘテロシクリルアルキルであり;
Yは、電気陰性の脱離基であり;
は、COH、CHCOH、またはそれらのエステル、アミドもしくはアイソスターであり;
は、カスパーゼのS2サブサイトへ適合し得る基であり;
は、水素または必要に応じて、−O−、−S−、−SO−、−CO−、−NH−、または−N(C1−4アルキル)−により中断される、C1−6脂肪族基であるか、あるいは、RおよびRは、それらの介在原子と共に、必要に応じて、窒素、酸素、または硫黄から選択される0〜2個のヘテロ原子を有する3〜7員環を形成し;
環Aは、窒素、酸素、または硫黄から選択される、0〜5個のさらなる環へテロ原子を有する、窒素を含む単環式環系、二環式環系、または三環式環系であり;
環Bは、窒素、酸素、または硫黄から選択される、0〜2個のさらなる環へテロ原子を有する、窒素を含む5〜7員環であり;
は、R、(CH、COR、CO、SO、CON(R、またはSON(Rであり;
nは1〜3であり;そして
各Rは、水素、必要に応じて置換されたC1−4脂肪族基、必要に応じて置換されたC6−10アリール基、または5〜10個の環原子を有する単環式へテロアリール基もしくは二環式へテロアリール基から独立して選択される、方法。
(項目2)
の隣の−−−が、単結合を表し、そしてZが酸素である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記化合物が、式Iaの化合物である、項目2に記載の方法。
(項目4)
項目3に記載の方法であって、ここで前記化合物が、以下の特徴:
(i) Rは、水素、−R、−CHOR、−CHSR、または−CHYである;
(ii) Rは、COH、またはそのエステル、アミドもしくはアイソスターである;
(iii) Rは、140ダルトンまでの分子量を有する基である;
(iv) Rは、水素またはC1−6アルキルである;および
(v) 環Aは、単環式環系、二環式環系、または三環式環系であり、ここでこの系の各環は、5〜7個の環原子を有する、
の1以上を有する、方法。
(項目5)
項目4に記載の方法であって、ここで前記化合物が、以下の特徴:
(i) Rは、水素、−R、−CHOR、−CHSR、または−CHYである;
(ii) Rは、COH、またはそのエステル、アミドもしくはアイソスターである;
(iii) Rは、140ダルトンまでの分子量を有する基である;
(iv) Rは、水素またはC1−6アルキルである;および
(v) 環Aは、単環式、二環式、または三環式の複素環式環系またはヘテロアリール環系であり、ここで該系の各環は、5〜7個の環原子を有する、
を有する、方法。
(項目6)
が、−CHYである、項目5に記載の方法。
(項目7)
が、−CHFである、項目6に記載の方法。
(項目8)
が、C1−4アルキル基である、項目7に記載の方法。
(項目9)
環Aは、三環式のへテロ環式環系またはヘテロアリール環系であり、ここで、該系の各環は、5〜7個の環原子を有する、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記三環式環系の中間の環が、5員環または6員環である、項目9に記載の方法。
(項目11)
項目4に記載の方法であって、前記環Aが、インドール、イソインドール、インドリン、インダゾール、プリン、ジヒドロピリジン、ベンズイミダゾール、イミダゾール、イミダゾリン、ピロール、ピロリジン、ピロリン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、トリアゾール、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、カルバゾール、イミノスチルベン、フェノチアジン、フェノキサジン、ジヒドロフェナジン、ジヒドロシンノリン、ジヒドロキノキサリン、テトラヒドロキノリン、テトラヒドロイソキノリン、ジヒドロナフチリジン、テトラヒドロナフチリジン、ジヒドロアクリジン、β−カルボリン、ピリド[4,3−b]インドール、2,3,9−トリアザフルオレン、9−チア−2,10−ジアザアントラセン、3,6,9−トリアザフルオレン、チエノ[3,2−b]ピロール、またはジヒドロフェナントリジンから選択される、方法。
(項目12)
項目5に記載の方法であって、前記環Aが、インドール、イソインドール、インドリン、インダゾール、プリン、ジヒドロピリジン、ベンズイミダゾール、イミダゾール、イミダゾリン、ピロール、ピロリジン、ピロリン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、トリアゾール、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、カルバゾール、イミノスチルベン、フェノチアジン、フェノキサジン、ジヒドロフェナジン、ジヒドロシンノリン、ジヒドロキノキサリン、テトラヒドロキノリン、テトラヒドロイソキノリン、ジヒドロナフチリジン、テトラヒドロナフチリジン、ジヒドロアクリジン、β−カルボリン、ピリド[4,3−b]インドール、2,3,9−トリアザフルオレン、9−チア−2,10−ジアザアントラセン、3,6,9−トリアザフルオレン、チエノ[3,2−b]ピロール、またはジヒドロフェナントリジンから選択される、方法。
(項目13)
項目12に記載の方法であって、前記環Aが、カルバゾール、フェノチアジン、β−カルボリン、ピリド[4,3−b]インドール、2,3,9−トリアザフルオレン、9−チア−2,10−ジアザアントラセン、3,6,9−トリアザフルオレン、フェノキサジン、ジベンゾアゼピン、ジヒドロ−ジベンゾアゼピン、ジヒドロフェナジン、ジヒドロアクリジン、またはジヒドロフェナントリジンから選択される、方法。
(項目14)
前記化合物が、表1に列挙される化合物から選択される、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記化合物が、式Ibの化合物である、項目2に記載の方法。
(項目16)
項目15に記載の方法であって、ここで前記化合物が、以下の特徴:
(i) Rは、−CHOR、−CHSR、または−CHYである;
(ii) Rは、COH、またはそのエステル、アミドもしくはアイソスターである;
(iii) Rは、約140ダルトンまでの分子量を有する基である;
(iv) 環Bは、窒素、酸素、または硫黄から選択される0〜1個のさらなる環へテロ原子を有する、窒素含有5〜7員環である;および
(v) Rは、必要に応じて、置換されたC1−6脂肪族基、必要に応じて置換されたフェニル、または必要に応じて置換されたベンジル基である、
の1以上を有する、方法。
(項目17)
項目16に記載の方法であって、ここで前記化合物が、以下の特徴:
(i) Rは、−CHOR、−CHSR、または−CHYである;
(ii) Rは、COH、またはそのエステル、アミドもしくはアイソスターである;
(iii) Rは、約140ダルトンまでの分子量を有する基である;
(iv) 環Bは、窒素、酸素、または硫黄から選択される0〜1個のさらなる環へテロ原子を有する、窒素含有5〜7員環である;および
(v) Rは、必要に応じて、置換されたC1−6脂肪族基、必要に応じて置換されたフェニル、または必要に応じて置換されたベンジル基である、
を有する、方法。
(項目18)
が、−CHYである、項目17に記載の方法。
(項目19)
が、−CHFである、項目18に記載の方法。
(項目20)
が、C1−4アルキル基である、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記化合物が、表2に列挙される化合物から選択される、項目2に記載の方法。
(項目22)
項目1〜21のいずれかに記載の方法であって、ここで、前記疾患が、IL−1媒介性疾患、アポトーシス媒介性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、破壊的骨疾患、増殖性障害、感染性疾患、変性疾患、細胞死に関係する疾患、過剰食事アルコール摂取疾患、ウイルス媒介性疾患、ブドウ膜炎、炎症性腹膜炎、変形性関節症、膵炎、喘息、成人呼吸促進症候群、糸球体腎炎、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、慢性甲状腺炎、グレーヴズ病、自己免疫性胃炎、糖尿病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性好中球減少症、血小板減少症、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、炎症性腸疾患、クローン病、乾癬、アトピー性皮膚炎、瘢痕、対宿主性移植片病、器官移植拒絶、骨粗しょう症、白血病および関連した障害、脊髄形成異常症候群、多発性骨髄腫関連骨障害、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、転移性黒色腫、カポージ肉腫、多発性骨髄腫、出血性ショック、敗血症、敗血性ショック、熱傷、細菌性赤痢、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンティングトン病、ケネディ病、プリオン病、大脳虚血、癲癇、心筋虚血、急性および慢性の心疾患、心筋梗塞、うっ血性心不全、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈バイパス移植、棘筋萎縮、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、HIV関連脳炎、加齢、脱毛症、発作に起因する神経学的損傷、潰瘍性大腸結腸炎、外傷性脳損傷、脊椎損傷、B型肝炎、C型肝炎、G型肝炎、黄熱病、デング熱、または日本脳炎、アルコール性肝炎を含む肝臓疾患の種々の形態、腎臓疾患、ポリアプティック腎臓疾患、H.ピロリ関連胃潰瘍および十二指腸潰瘍疾患、HIV感染、結核症、および髄膜炎から選択される、方法。
(項目23)
項目1〜21のいずれかに記載の方法であって、ここで、前記化合物は細胞の保存のために用いられ、該方法は、該細胞を、該化合物またはその薬学的に受容可能な誘導体の溶液中に浸す工程を包含する、方法。
(項目24)
項目1〜21のいずれかに記載の方法であって、ここで、前記化合物またはその薬学的に受容可能な誘導体は、器官移植のため、または血液生成物を保存するために用いられる、方法。
(項目25)
項目1〜21のいずれかに記載の方法であって、ここで、前記化合物は、癌の処置のための免疫治療の成分として用いられる、方法。
(項目26)
以下の式Iaの化合物:
【化2】


またはその薬学的に受容可能な誘導体であって、ここで、
の隣の−−−は、単結合または二重結合を表し;
Zは酸素または硫黄であり;
は、−CHYであり;
Yは、電気陰性の脱離基であり;
は、COH、CHCOH、またはそれらのエステル、アミドもしくはアイソスターであり;
は、カスパーゼのS2サブサイトへ適合し得る基であり;
は、水素または、必要に応じて、−O−、−S−、−SO−、−CO−、−NH−、または−N(C1−4アルキル)−により中断される、C1−6脂肪族基であるか、あるいは、RおよびRは、それらの介在原子と共に、必要に応じて、窒素、酸素、または硫黄から選択される0〜2個のヘテロ原子を有する3〜7員環を形成し;
環Aは、窒素、酸素、または硫黄から選択される、0〜5個のさらなる環へテロ原子を有する、窒素を含む単環式環系、二環式環系、または三環式環系である、化合物。
(項目27)
Zが酸素であり、Rの次の隣の−−−が、単結合を表す、項目26に記載の化合物。
(項目28)
が、C1−4アルキル基である、項目27に記載の化合物。
(項目29)
項目28に記載の化合物であって、前記環Aが、インドール、イソインドール、インドリン、インダゾール、プリン、ジヒドロピリジン、ベンズイミダゾール、イミダゾール、イミダゾリン、ピロール、ピロリジン、ピロリン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、トリアゾール、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、カルバゾール、イミノスチルベン、フェノチアジン、フェノキサジン、ジヒドロフェナジン、ジヒドロシンノリン、ジヒドロキノキサリン、テトラヒドロキノリン、テトラヒドロイソキノリン、ジヒドロナフチリジン、テトラヒドロナフチリジン、ジヒドロアクリジン、β−カルボリン、ピリド[4,3−b]インドール、2,3,9−トリアザフルオレン、9−チア−2,10−ジアザアントラセン、3,6,9−トリアザフルオレン、チエノ[3,2−b]ピロール、またはジヒドロフェナントリジンから選択される、化合物。
(項目30)
項目29に記載の化合物であって、前記環Aが、カルバゾール、フェノチアジン、β−カルボリン、ピリド[4,3−b]インドール、2,3,9−トリアザフルオレン、9−チア−2,10−ジアザアントラセン、3,6,9−トリアザフルオレン、フェノキサジン、ジベンゾアゼピン、ジヒドロ−ジベンゾアゼピン、ジヒドロフェナジン、ジヒドロアクリジン、またはジヒドロフェナントリジンから選択される、化合物。
(項目31)
前記環Aが、カルバゾール、フェノチアジン、またはジヒドロフェナントリジンから選択される、項目30の化合物。
(項目32)
前記化合物が、表1に列挙される化合物から選択される、項目26に記載の化合物。
(項目33)
項目26〜32のいずれかに記載の化合物および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
【0029】
ここで、本発明の化合物およびその薬学的組成物は、カスパーゼおよび細胞性アポトーシスのインヒビターとして有効であることが見出された。これらの化合物は、以下の一般式I:
【0030】
【化10】

を有する。ここで、
に隣接した−−−は、単結合または二重結合を表し、
Zは、酸素または硫黄であり;
は、水素、−CHN、−R、−CHOR、−CHSR、または−CHYであり;
Rは、C1−12の脂肪族、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、またはヘテロシクリルアルキルであり;
Yは、陰性の脱離基であり;
は、COH、CHCOH、またはそのエステル、アミドもしくは同配体であり;
は、カスパーゼのS2サブ部位(sub−site)に嵌り得る基であり;
は、水素またはC1−6脂肪族基(これは、必要に応じて、−O−、−S−、−SO−、−CO−、−NH−、または−N(C1−4アルキル)−によって割り込まれる)であるか、あるいはRおよびRはその介在する原子と一緒になって、必要に応じて、窒素、酸素もしくは硫黄から選択される0〜2個のヘテロ原子を有する3〜7員環を形成し;
環Aは、窒素、酸素もしくは硫黄から選択される0〜5個のさらなる環ヘテロ原子を有する、窒素を含有する単環式環系、二環式環系、または三環式環系であり;
環Bは、窒素、酸素もしくは硫黄から選択される0〜2個のさらなる環ヘテロ原子を有する、窒素を含有する5〜7員環であり;
は、R、(CH、COR、CO、SO、CON(R、またはSON(Rであり;
nは、1〜3であり;そして
各Rは独立して、水素、必要に応じて置換されたC1−4脂肪族基、必要に応じて置換されたC6−10アリール基、または5〜10個の環原子を有する単環式ヘテロアリール基もしくは二環式ヘテロアリール基である。
【0031】
本発明の化合物は、アポトーシスの細胞モデルにおいて、優れた効力で、一定範囲のカスパーゼ標的にわたって阻害特性を有する。さらに、これらの化合物は、優れた細胞貫通特性および薬理学的特性を有し、かつその効能の結果として、カスパーゼが関与する疾患に対して優れた効力を有する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(発明の詳細な説明)
本発明は、カスパーゼインヒビターとして有用な、新規な化合物およびその薬学的に受容可能な誘導体を提供する。本発明はまた、カスパーゼ活性を阻害するためおよびカスパーゼ媒介疾患を処置するために上記化合物を使用するための方法を提供する。これらの化合物は、一般式I:
【0033】
【化11】

を有し、ここで、
の隣の−−−は、単結合または二重結合を表し;
Zは酸素または硫黄であり;
は、水素、−CHN、−R、−CHOR、−CHSR、または−CHYであり;
Rは、C1−12脂肪族、C1−12アリール、C1−12アラルキル、C1−12ヘテロシクリル、またはC1−12ヘテロシクリルアルキルであり;
Yは、電気陰性脱離基であり;
は、COH、CHCOH、またはそれらのエステル、アミドもしくはアイソスターであり;
は、カスパーゼのS2サブサイトへ適合し得る基であり;
は、水素であるか、または必要に応じて、−O−、−S−、−SO−、−CO−、−NH−、もしくは−N(C1−4アルキル)−が割り込んだC1−6脂肪族基であるか、または、RおよびRがそれらの介在原子と共に、必要に応じて、窒素、酸素、または硫黄から選択される0〜2個のヘテロ原子を有する3〜7員環を形成し;
環Aは、窒素、酸素、もしくは硫黄から選択される0〜5個のさらなる環ヘテロ原子を有する、窒素含有単環式環系、窒素含有二環式環系、または窒素含有三環式環系であり;
環Bは、窒素、酸素、または硫黄から選択される0〜2個のさらなる環ヘテロ原子を有する、窒素含有5〜7員環であり;
は、R、(CH、COR、CO、SO、CON(R、またはSON(Rであり;
nは1〜3であり;そして
各Rは、水素、必要に応じて置換されたC1〜4脂肪族基、必要に応じて置換されたC6〜10アリール基、または5〜10個の環原子を有する単環式ヘテロアリール基もしくは5〜10個の環原子を有する二環式ヘテロアリール基から独立して選択される。
【0034】
本明細書中で使用される場合、他のように示されない限り、以下の定義が適用される。用語「脂肪族」とは、本明細書中で使用される場合、完全に飽和されているかまたは1つ以上の不飽和単位を含む、直鎖C〜C12炭化水素または分枝鎖C〜C12炭化水素を意味する。脂肪族基は、置換または非置換の、直鎖状、分枝鎖状または環状の、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基、ならびにそれらのハイブリッド(例えば、(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキル、または(シクロアルキル)アルケニル)を包含する。単独で使用されるかより長い部分の一部として使用される用語「アルキル」とは、1〜12個の炭素原子を含む、直鎖および分枝鎖の両方を指す。用語アルキルがより長い部分の一部として使用される(アラルキルまたはヘテロアラルキルにおけるような)場合、そのアルキル部分は、好ましくは、1〜6個の炭素を含む。
【0035】
用語「ハロゲン」とは、F、Cl、Br、またはIを意味する。用語「アリール」とは、5〜14個の原子を有する単環式芳香環基または多環式芳香環基(例えば、フェニル、ナフチル、およびアントリル)を指す。
【0036】
用語「複素環式基」は、飽和および不飽和の単環式または多環式の環系であって、1個以上のヘテロ原子を含有し環の大きさが3員〜9員であるものを指す。このような基には、例えば、フラニル、チエニル、ピロリル、ピロリニル、ピロリジニル、ジオキソラニル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピラゾリル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ピラニル、ピリジニル、ピペリジニル、ジオキサニル、モルホリニル、ジチアニル、チオモルホリニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピペラジニル、トリアジニル、トリチアニル、インドリジニル、インドリル、イソインドリル、インドリニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンズチアゾリル、プリニル、キノリジニル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、1,8−ナフチリジニル、プテリジニル、キヌクリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、またはフェノキサジニルがある。「ヘテロアリール」とは、芳香族である複素環式環を指す。本発明の化合物は、安定な化合物として天然に存在し得る化合物に限定されることが理解される。
【0037】
用語「炭素環式基」は、3〜14個の炭素の、飽和した単環式または多環式の炭素環系を指し、これらは、アリール基または複素環式基に縮合され得る。例には、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロブチル、シクロプロピル、インダニル、テトラヒドロナフチルなどが挙げられる。
【0038】
単独で使用されるかまたはより長い部分の一部として使用される用語脂肪族、アルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、または炭素環式は、置換された基または置換されていない基を指す。置換される場合、これらの基は、1つ以上の置換基を含み得る。適切な置換基の例としては、ハロゲン、−R、−OR、−OH、−SH、−SR、保護されたOH(例えば、アシルオキシ)、フェニル(Ph)、置換Ph、−OPh、置換−OPh、−NO、−CN、−NH、−NHR、−N(R)、−NHCOR、−NHCONHR、−NHCON(R)、−NRCOR、−NHCOR、−COR、−COH、−COR、−CONHR、−CON(R)、−S(O)R、−SONH、−S(O)R、−SONHR、−NHS(O)R、=O、=S、=NNHR、=NNR、=N−OR、=NNHCOR、=NNHCOR、=NNHSOR、または=NRが挙げられ、ここで、Rは、脂肪族基であるか、または好ましくは1〜6個の炭素原子を有し、より好ましくは1〜4個の炭素原子を有する置換脂肪族基である。
【0039】
複素環式環上の置換可能な窒素は、必要に応じて置換され得る。その窒素上での適切な置換基としては、R、COR、S(O)R、およびCORが挙げられ、ここで、Rは、脂肪族基であるか、または好ましくは1〜6個の炭素原子を有し、より好ましくは1〜4個の炭素原子を有する置換脂肪族基である。
【0040】
窒素および硫黄は、その酸化形態であり得、そして窒素は、四級化形態であり得る。
【0041】
用語「電気陰性脱離基」は、当業者に公知の定義を有する(March,Advanced Organic Chemistry,4版、John Wiley & Sons,1992を参照のこと)。電気陰性脱離基の例には、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I)、アリール基およびアルキルスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ、OR、SR、−OC=O(R)、−OPO(R)(R)が挙げられ、ここで、Rは、脂肪族基、アリール基、アラルキル基、複素環式基またはヘテロシクリルアルキル基であり、そしてRおよびRは、独立して、RまたはORである。
【0042】
基がエステル形態またはアミド形態である場合、本発明の化合物は、対応するカルボン酸へと代謝切断される。このカルボン酸は、活性カスパーゼインヒビターである。これらは、代謝切断されるので、そのエステル基またはアミド基の正確な性質は、本発明の働きにとって重要ではない。R基の構造は、比較的単純なジエチルアミドからステロイドエステルまでの範囲であり得る。Rカルボン酸のエステルの例としては、C1〜12脂肪族(例えば、C1〜6アルキルまたはC3〜10シクロアルキル)、アリール(例えば、フェニル)、アラルキル(例えば、ベンジルまたはフェネチル)、ヘテロシクリルまたはヘテロシクリルアルキルが挙げられるが、これらに限定されない。適切なR複素環式環の例としては、1つまたは2つのヘテロ原子を有する5〜6員の複素環式環(例えば、ピペリジニル、ピペラジニル、またはモルホリニル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
カルボン酸のアミドは、一級であっても、二級であっても、三級であってもよい。そのアミド窒素上の適切な置換基としては、Rエステルアルコールについて上記された脂肪族基、アリール基、アラルキル基、複素環式基またはヘテロシクリルアルキル基から独立して選択される1つ以上の基が挙げられるが、これらに限定されない。同様に、他のプロドラッグは、本発明の範囲内に含まれる。一般的に、Advanced Drug Delivery Reviews(1996)、19、171〜202中のBradley D.Anderson、「Prodrugs for Improved CNS
Delivery」を参照のこと。
【0044】
カルボン酸、Rエステル、およびRアミドのアイソスターまたはバイオアイソスターは、親カルボン酸または親エステルと類似の生体特性を備えた新規化合物を作製するために、原子または原子群の交換から得られる。このバイオアイソスター置換は、物理化学的または位相幾何学的に基づき得る。カルボン酸についてのアイソスター置換の一例は、CONHSO(アルキル)であり、例えば、CONHSOMeである。
【0045】
は、既知のカスパーゼのS2サブサイトへと適合し得る任意の基であり得る。そのような基は、報告されている多くのカスパーゼインヒビターから公知である(WO91/15577、WO93/05071、WO99/18781、WO99/47154、WO00/023421、WO9724339、EP618223、WO9816502(これらはすべて上記されている)を参照のこと)。さらに、S−2サブサイトを含むカスパーゼ酵素のいくつかの構造もまた、公知である。そのカスパーゼ構造に対する言及としては、以下が挙げられる:Blanchard Hら、J.Mol.Biol.302(1)、9〜16(2000);Wei Yら、Chem.Biol.7(6):423〜32(2000);Lee Dら、J.Biol.Chem.275(21):16007〜14(2000);Blanchard Hら、Structure Fold Des.7(9):1125〜33(1999);Okamoto Yら、Chem.Pharm.Bull.(Tokyo)47(1):11〜21(1999);Margolin Nら、J.Biol.Chem.272(11)7223〜8(1997);Walker NPら、Cell 78(2):343〜52(1994);およびWilson KPら、Nature 370(6487):270〜5(1994)。
【0046】
基がそのS−2サブサイトに適合するか否かは、考慮される特定のカスパーゼに依存する。そのサブサイトのサイズは、C脂肪族基のサイズまでの基を許容するカスパーゼ3の小S−2サブサイトから、約140ダルトンまでの分子量を有する基(例えば、ナフチル基)を許容する比較的大きなサブサイトまでの範囲である。R基のサイズは、電気的性質とともに、そのインヒビターのカスパーゼ選択性に影響する。上記に提供される参考文献から、基が、カスパーゼのS−2サブサイトに都合良く適合し得るか否かを、例えば、標準的分子モデリングプログラム(例えば、QuantaまたはMacromodel)を使用することによって、当業者は容易に確認し得る。
【0047】
適切なR基としては、水素、天然α−アミノ酸の側鎖、または約140ダルトンまでの分子量を有する置換された基もしくは非置換基(脂肪族基、アリール基、アラルキル基、複素環式基、およびヘテロシクリルアルキル基から選択される)が挙げられる。R脂肪族基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、シクロブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、およびシクロヘキシルが挙げられる。Rアリール基の例としては、フェニル、インデニル、およびナフチルが挙げられる。R複素環式基の例としては、ピロリジニル、ピロリニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピペラジニル、ホモピペリジニル、およびキヌクリジニルが挙げられる。Rヘテロアリール基の例としては、フラニル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、フラザニル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリル、イソインドリル、インドリニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンズチアゾリル、プリニル、キノリニル、イソキノリニル、キノリジニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、プテリジニル、クロマニル、およびイソクロマニルが挙げられる。各基は、上記の1つ以上の置換基を含み得る。
【0048】
環Aは、必要に応じて置換された、窒素含有単環系、窒素含有二環系、または窒素含有三環系であり、窒素、酸素もしくは硫黄から選択される0〜5個のさらなる環ヘテロ原子を有し、好ましくは0〜3個のさらなる環ヘテロ原子を有する。そのような環としては、置換または非置換の、インドール、イソインドール、インドリン、インダゾール、プリン、ジヒドロピリジン、ベンゾイミダゾール、イミダゾール、イミダゾリン、ピロール、ピロリジン、ピロリン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、トリアゾール、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、カルバゾール、イミノスチルベン、フェノチアジン、フェノキサジン、ジヒドロフェナジン、ジヒドロシンノリン、ジヒドロキノキサリン、テトラヒドロキノリン、テトラヒドロイソキノリン、ジヒドロナフチリジン、テトラヒドロナフチリジン、ジヒドロアクリジン、5H−ジベンゾ[b,f]アゼピン、10,11−ジヒドロ−5H−ジベンゾ[b,f]アゼピン、β−カルボリン、ピリド[4,3−b]インドール、2,3,9−トリアザフルオレン、9−チア−2,10−ジアザアントラセン、3,6,9−トリアザフルオレン、チエノ[3,2−b]ピロール、またはジヒドロフェナントリジンが挙げられる。環A上での適切な置換基としては、以下から独立して選択される1つ以上の基が挙げられる:ハロゲン、−R、−OR,−OH、オキソ、−SH、−SR、保護されたOH(例えば、アシルオキシ)、フェニル(Ph)、置換Ph、−OPh、置換−OPh、−NO、−CN、−NH、−NHR、−N(R)、−NHCOR、−NHCONHR、−NHCON(R)、−NRCOR、−NHCOR、−COR、−COH、−COR、−CONHR、−CON(R)、−S(O)R、−SONH、−S(O)R、−SONHR、または−NHS(O)R。ここで、各Rは、脂肪族基または置換脂肪族基から独立して選択される。このR基は、好ましくは1〜6個の炭素を有し、より好ましくは1〜4個の炭素を有する。
【0049】
がCOOHである本発明の化合物は、γ−ケト酸であり、これは、開放形態1aまたは環化ヘミケタール形態1a’のいずれかとして溶液中に存在し得る。本明細書中でのいずれかの異性体形態の提示は、もう一方を包含することになっている。同様に、環化はまた、RがCHCOOHである場合に生じ得、そのような環化異性体は、環開放形態が本明細書中に提示される場合に包含されることが理解される。
【0050】
【化12】

同様に、本発明の特定の化合物は、互変異性形態または水和形態で存在し得、その化合物のそのような形態すべてが、本発明の範囲内にあることが、当業者に明らかである。他のように示されない限り、本明細書中に示される構造はまた、その構造のすべての立体化学形態(すなわち、各不斉中心についてのR配置およびS配置)を包含することになっている。従って、本発明の化合物の単一の立体化学異性体ならびにエナンチオマーおよびジアステレオマー混合物は、本発明の範囲内にある。他のように示されない限り、本明細書中に示される構造はまた、1つ以上の同位体濃縮された原子の存在のみ異なる化合物を包含するようになっている。例えば、重水素もしくはトリチウムによって水素が置換される以外、または13C濃縮炭素もしくは14C濃縮炭素によって炭素が置換される以外は、本発明の構造を有する化合物は、本発明の範囲内にある。
【0051】
本発明の1つの実施形態は、式Iaの化合物に関する。別の実施形態は、式Ibの化合物に関する。Zは酸素であることが好ましい。Rの隣の−−−は一重結合であることもまた好ましい。RまたはRが水素以外である場合、一重結合を有することによって立体異性体を提供する。
【0052】
好ましい本発明の立体異性体は、以下の配置を有する:
【0053】
【化13】

本発明の別の実施形態は、以下の特性の1つ以上、好ましくは全てを有する、式Iaの化合物に関する:
(i)Rは、水素、−R、−CHOR、CHSRまたは−CHYである。より好ましくは、Rは、−CHOR、−CHSRまたは−CHYである。さらにより好ましくは、Rは、−CHYである。最も好ましくは、Rは、−CHFである。
(ii)Rは、−COH、またはそのエステル、アミド、アイソスターである。
(iii)Rは、約140ダルトンまでの分子量を有する基、例えば、脂肪族基またはアラルキル基である。より好ましくは、Rは、ある範囲の既知のカスパーゼのS2サブサイトに適合するC〜Cアルキル基である。
(iv)Rは、水素またはC1〜6アルキルであるか、あるいは、RおよびRは一緒になって、窒素、酸素または硫黄より選択される0〜2個のヘテロ原子を有する5〜7個の環原子の環を形成する。
(v)環Aは、単環式、二環式または三環式の複素環式環系またはヘテロアリール環系であり、ここで、この系の各環は、5〜7個の環原子を有する。
【0054】
環Aは、式Iaの化合物の重要な特性である。環A部分について、二環式または三環式の複素環式環またはヘテロアリール環は、単環式環より好ましい。よって、好ましい実施形態は、以下の特性の1つ以上、好ましくは、全てを有する化合物に関する:(i)Zは、酸素である;(ii)Rは、−CHOR、−CHSRまたは−CHYであり、より好ましくは、Rは−CHYであり、最も好ましくは、Rは、−CHFである;(iii)Rは、COHまたはそのエステル、アミドもしくはアイソスターである;(iv)Rは、約140ダルトンまでの分子量を有する基、例えば、脂肪族基またはアラルキル基であり、より好ましくは、Rは、C1〜4アルキル基である;および/または(v)環Aは、二環式または三環式の複素環式環系またはヘテロアリール環系であり、ここで、この系の各環は、5〜7個の環原子を有する。
【0055】
環Aについて好ましい単環式環の例としては、トリアゾール、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、イミダゾール、ピロリジン、ピラゾールおよびピペラジンが挙げられる。環Aについて好ましい二環式環の例としては、インドール、イソインドール、インドリン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、チエノ[3,2−b]ピロール、ジヒドロキノキサリン、ジヒドロシンノリン(dihydrocinnoline)、ジヒドロナフチリジン、テトラヒドロナフチリジン、テトラヒドロキノリン、およびテトラヒドロイソキノリンが挙げられ、最も好ましくは、インドールまたはインドリンである。環Aについて好ましい三環式環の例としては、カルバゾール、フェノチアジン、β−カルボリン、ピリド[4,3−b]インドール、2,3,9−トリアザフルオレン、9−チア−2,10−ジアザアントラセン、3,6,9−トリアザフルオレン、フェノキサジン、ジベンゾアゼピン、ジヒドロジベンゾアゼピン、ジヒドロフェナジン、ジヒドロアクリジンまたはジヒドロフェナントリジンが挙げられ、最も好ましくは、カルバゾール、フェノチアジンまたはジヒドロフェナントリジンである。
【0056】
化合物Iの特定の例を、表1に示す。
【0057】
(表1:式Iaの化合物の例)
【0058】
【表1】







本発明の好ましい実施形態は、式Iaの化合物に関し、ここで、環Aは、窒素、酸素または硫黄より選択される1〜6個のヘテロ原子、好ましくは、1〜4個のヘテロ原子を有する三環式環系であり、ここで、この環系の末端の環は5〜7個の環原子を有し、中央の環は、5個または6個の環原子を有する。この実施形態の1つの局面は、式II:
【0059】
【化14】

の化合物に関し、
ここで、Xは、結合、−S−、−O−、−CH−または−NH−であり、そしてR、R、RおよびRは、上記されたとおりである。Xが−CH−である場合、メチレン水素の各々は、必要に応じておよび独立して、−OR、−OH、−SR、保護されたOH(例えば、アシルオキシ)、−CN、−NH、−NHR、−N(R)、−NHCOR、−NHCONHR、−NHCON(R)、−NRCOR、−NHCOR、−COR、−COH、−COR、−CONHR、−CON(R)、−S(O)R,、−SONH、−S(O)R、−SONHR、−NHS(O)R、=O、=S、=NNHR、=NNR、=N−OR、=NNHCOR、=NNHCOR、=NNHSORまたは=NR(ここで、Rは、C〜4脂肪族基である)によって置換され得る。Xが−NH−である場合、NH水素は、アルキル、CO(アルキル)、CO(アルキル)またはSO(アルキル)によって置換され得る。R、RおよびRについて好ましい基は、上記されるとおりである。
【0060】
本発明の別の実施形態は、以下の特性の1つ以上、好ましくは全てを有する、式Ibの化合物に関する:
(i)Rは、水素、−R、−CHOR、CHSRまたは−CHYである。より好ましくは、Rは、−CHOR、−CHSRまたは−CHYである。さらにより好ましくは、Rは、−CHYである。最も好ましくは、Rは、−CHFである。
(ii)Rは、−COH、またはそのエステル、アミドもしくはアイソスターである。
(iii)Rは、約140ダルトンまでの分子量を有する基、例えば、脂肪族基またはアラルキル基である。より好ましくは、Rは、ある範囲のカスパーゼのS2サブサイトに適合するC〜Cアルキル基である。
(iv)環Bは、窒素、酸素または硫黄より選択される0〜1個のさらなるヘテロ原子を有する、窒素を含有する5〜7員環である。
(v)Rは、必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基、必要に応じて置換されたフェニルまたは必要に応じて置換されたベンジル基である。
【0061】
式Ibの化合物の特定の例を、以下の表2に示す。
【0062】
(表2:式Ibの化合物の例)
【0063】
【化15】

本発明の化合物は、類似の化合物について当業者に公知の方法によって一般に調製され得、この方法は、以下の一般的なスキームおよび以下の調製例によって例示される。
【0064】
(スキームI)
【0065】
【化16】

試薬:(a)(COCl)/CHCl;(b)環A;(c)H、Pd/C;(d)EDC、DMAP、HOBt、RCHCH(NH)CH(OH)R;(e)(i)Dess−Martinペリオジナン(periodinane)、(ii)TFA/DCM。
【0066】
上記のスキームIは、式Iaの化合物を得るための合成経路を示す。出発化合物1は、置換コハク酸誘導体に関する分野において公知の種々の一般的な方法によって得られ得る。キラル中心でR基およびR基を保有する所望の立体化学を得るための不斉アプローチについては、「Stereoselective Alkylation Reactions of Chiral Metal Enolates」、Evans,D.A.,Asymetric Synthesis,Vol.3,Chapter 1 pages 1−110;Morrison,J.D.Ed.,Academic Press,New York,1983を参照のこと。工程(a)および(b)において、1の酸クロリドが形成され、次いで、アミド2を提供するために遊離アミンとしての環Aと結合される。工程(c)は、カルボキシル酸3を提供するためのベンジルエステルの水素化分解を示す。あるいは、化合物3は、適切なジエステル化条件を使用して他のエステルより得られ得る。工程(d)において、3は、アミド4を提供するためにアミノアルコールと結合される。RおよびRの性質に依存して、アミノアルコールの代わりにアミノケトンが使用され得、このアミノケトンは、後の酸化工程を回避する。RがCHFであるフルオロメチルケトンの場合、対応するアミノアルコールは、Revesz et al.,Tetrahedron Lett.,1994,35,9693の方法に従って得られ得る。最終的に、化合物4におけるヒドロキシル基は酸化され、そして得られる化合物は、Rの性質に従って適切に処理される。例えば、生成物IaはRがカルボキシル酸であることを必要とする場合、4のRは、好ましくはエステルであり、このスキーム中の最終工程は加水分解である。
【0067】
本発明の化合物は、カスパーゼを阻害するように設計される。よって、本発明の化合物は、アポトーシス、IL−1βの放出またはカスパーゼの活性を直接阻害するその能力についてアッセイされ得る。これらの活性の各々についてのアッセイは、以下の試験章(testing section)に記載され、そしてまた当該分野において公知である。
【0068】
本発明の1つの実施形態は、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩、および薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物に関する。
【0069】
本発明の化合物の薬学的に受容可能な塩がこれらの組成物に利用される場合、これらの塩は、好ましくは無機酸および無機塩基または有機酸または有機塩基から誘導される。このような酸塩としては、以下が挙げられる:アセテート、アジピラート、アルギネート、アスパルテート、ベンゾエート、ベンゼンスルホネート、ビスルフェート、ブチレート、シトレート、カンホレート、カンファースルフォネート、シクロペンタンプロピオネート、ジグルコネート、ドデシルスルフェート、エタンスルホネート、フマレート、グルコヘプタノエート、グリセロホスフェート、ヘミスルフェート、ヘプタノエート、ヘキサノエート、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホネート、ラクテート、マレエート、メタンスルホネート、2−ナフタレンスルホネート、ニコチネート、オキサレート、パモエート、ペクチネート、パースルフェート、3−フェニルプロピオネート、ピクレート、ピバレート、プロピオネート、スクシネート、タルトレート、チオシアネート、トシレートおよびウンデカノエート。塩基塩としては、以下が挙げられる:アンモニウム塩、アルカリ金属(例えば、ナトリウム塩およびカルシウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩およびマグネシウム塩)、有機塩基との塩(例えば、ジシクロヘキシルアミン塩、N−メチル−D−グルカミン)、およびアミノ酸との塩(例えば、アルギニン、リジンなど)。
【0070】
また、塩基性窒素含有基は、以下のような因子で四級化され得る:低級アルキルハライド(例えば、塩化メチル、塩化エチル、塩化プロピルおよび塩化ブチル、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピルおよび臭化ブチル、ならびにヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピルおよびヨウ化ブチル);ジアルキルスルフェート(例えば、ジメチルスルフェート、ジエチルスルフェート、ジブチルスルフェートおよびジアミルスルフェート)、長鎖ハライド(例えば、塩化デシル、塩化ラウリル、塩化ミリチイルおよび塩化ステアリル、臭化デシル、臭化ラウリル、臭化ミリチイルおよび臭化ステアリル、ならびにヨウ化デシル、ヨウ化ラウリル、ヨウ化ミリチイルおよびヨウ化ステアリル)、アラルキルハライド(例えば、臭化ベンジルおよび臭化フェネチニルなど)。水または油に可能性または分散性の生成物を、これにより得る。
【0071】
本発明の組成物および方法において利用される化合物はまた、選択的な生物学的な特性を増強するために適切な官能基を付加することによって改変され得る。このような改変は、当該分野において公知であり、そして以下が挙げられる:所定の生物学的系(例えば、血液、リンパ系、中枢神経系)への生物学的な浸透を増加する改変;経口アベイラビリティを増強する改変;注射による投与を可能にする可溶性を増強する改変;代謝を変更する改変および排出速度を変更する改変。
【0072】
これらの組成物において使用され得る薬学的に受容可能なキャリアとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:イオン交換体、アルミナ、アルミニウム、ステアレート、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝剤物質(例えば、ホスフェート、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム)、植物性飽和脂肪酸の部分的なグリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三珪酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂。
【0073】
好ましい実施形態に従って、本発明の組成物は、哺乳動物、好ましくは、ヒトに対する薬学的投与のために処方される。
【0074】
本発明のこのような薬学的組成物は、経口的に、非経口的に、吸入スプレーによって、局所的に、直腸に、鼻に、口腔に、膣に、または移植されたリザーバを介して投与され得る。本明細書中で使用される場合、用語「非経口的」は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液内、胸骨内、髄腔内、肝内、病変内および頭蓋内の注射または注入技術を包含する。好ましくは、組成物は、経口または静脈内で投与される。
【0075】
本発明の組成物の滅菌注射形態は、水性懸濁液または油性懸濁液であり得る。これらの懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して、当該分野において公知の技術に従って処方され得る。この滅菌注射調製物はまた、非毒性の非経口的に受容可能な希釈剤または溶媒中の、滅菌注射可能な溶液または懸濁液(例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液として)であり得る。使用され得る受容可能なビヒクルおよび溶媒は、水、リンガー液、および等張性塩化ナトリウム溶液である。さらに、滅菌された不揮発性油は、溶媒または懸濁媒体として慣用的に使用される。この目的について、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激の(bland)不揮発性油が使用され得る。脂肪酸(例えば、オレイン酸およびそのグリセリド誘導体)は、天然の薬学的に受容可能な油(例えば、オリーブ油またはヒマシ油、特にこれらのポリオキシエチレート形態)として注射可能物の調製に有用である。これらの油溶液または油懸濁液はまた、長鎖アルコールの希釈剤または分散剤(例えば、カルボキシルメチルセルロース)、または乳濁液および懸濁液を含む薬学的に受容可能な投薬形態の処方において一般に使用される類似の分散剤を含み得る。薬学的に受容可能な固体、液体もしくは他の投薬形態の製造において一般に使用される、一般に使用される他の界面活性剤(例えば、Tween、Span)および他の乳化剤、またはバイオアベイラビリティ増強剤もまた、処方の目的に使用され得る。
【0076】
本発明の薬学的組成物は、カプセル、錠剤、水性懸濁液または水溶液を含むがこれらに限定されない任意の経口的に受容可能な投薬形態中で、経口的に投与され得る。経口用途のための錠剤の場合において、一般に使用されるキャリアとしては、ラクトースおよびコーンスターチが挙げられる。潤沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)もまた、典型的に添加される。カプセル形態における経口投与について、有用な希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられる。水性懸濁液が経口用途に必要とされる場合、活性成分が、乳化剤および懸濁剤と合わせられる。所望ならば、特定の甘味料、矯味矯臭剤または着色料もまた添加され得る。
【0077】
あるいは、本発明の薬学的組成物は、直腸投与のための坐剤の形態で投与され得る。これらは、薬剤を、室温で固体であるが直腸温では液体でありよって直腸内で融解して薬物を放出する適切な無刺激賦形剤と混合することにより、調製され得る。このような材料としては、カカオバター、蜜蝋およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0078】
本発明の薬学的組成物はまた、特に、処置の標的が局所適用によって容易に接近可能な領域または器官を含む場合(眼、皮膚または下部腸管の疾患を含む)、局所的に投与され得る。適切な局所処方物は、これらの領域または器官の各々について容易に調製される。
【0079】
下部腸管に関する局所適用は、直腸坐剤処方物(上記を参照のこと)または適切な浣腸処方物において、もたらされ得る。局所経皮パッチもまた使用され得る。
【0080】
局所適用のために、薬学的組成物は、1以上のキャリア中に懸濁または溶解した活性成分を含む、適切な軟膏中に処方され得る。本発明の化合物の局所投与のためのキャリアとしては、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化蝋および水が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、薬学的組成物は、1以上の薬学的に受容可能なキャリアに懸濁または溶解した活性成分を含む、適切なローション剤またはクリーム剤中に処方され得る。適切なキャリアとしては、鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステル蝋、セテアリールアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
眼での使用のためには、薬学的組成物は、ベンジルアルコニウムクロリドのような保存剤を含むかまたは含まないかのいずれかの、pHを調整された等張性滅菌生理食塩水中の微小化された懸濁物、または好ましくは、pHを調整された等張性滅菌生理食塩水中の溶液として処方され得る。あるいは、眼での使用のためには、薬学的組成物は、ワセリンのような軟膏中に処方され得る。
【0082】
本発明の薬学的組成物はまた、鼻腔エアゾールまたは吸入によって投与され得る。このような組成物は、薬学的処方物の分野において周知の技術に従って調製され、そしてベンジルアルコールまたは他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティを増強するための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または他の従来の可溶化剤もしくは分散剤を使用して、生理食塩水中で溶液として調製され得る。
【0083】
上記の組成物は、以下に関する治療適用において特に有用である:IL−1媒介疾患、アポトーシス媒介疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、破壊的骨障害、増殖障害、感染症、変性疾患、細胞死に関連する疾患、過剰な食事アルコール摂取疾患、ウイルス媒介疾患、ブドウ膜炎、炎症性腹膜炎、変形性関節症、膵炎、喘息、成人呼吸促進症候群、糸球体腎炎、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、慢性甲状腺炎、グレーヴズ病、自己免疫性胃炎、糖尿病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性好中球減少、血小板減少、慢性活性肝炎、重症筋無力症、炎症性腸疾患、クローン病、乾癬、アトピー性皮膚炎、瘢痕、対宿主性移植片病、器官移植拒絶、骨粗鬆症、白血病および関連障害、骨髄形成異常症候群、多発性骨髄腫関連骨障害、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、転移性黒色腫、カポージ肉腫、多発性骨髄腫、出血性ショック、敗血症、敗血症性ショック、熱傷、細菌性赤痢、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンティングトン病、ケネディ病、プリオン病、大脳虚血、癲癇、心筋虚血、急性心臓疾患および慢性心臓疾患、心筋梗塞、うっ血性心不全、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈バイパス移植、棘筋萎縮、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、HIV関連脳炎、加齢、脱毛、発作に起因する神経学的損傷、潰瘍性大腸炎、外傷性脳傷害、脊髄傷害、B型肝炎、C型肝炎、G型肝炎、黄熱病、デング熱または日本脳炎(Japanese encephalitis)、種々の形態の肝臓疾患、腎臓疾患、多嚢胞(ポリアプティック;polyaptic)腎臓疾患、H.pylori関連の胃腸潰瘍疾患および十二指腸潰瘍疾患、HIV感染、結核および髄膜炎。これらの化合物および組成物はまた、冠状動脈バイパス移植に関連した合併症を処置する際に、そして種々の形態の癌の処置のための免疫治療の成分として有用である。
【0084】
本発明のカスパーゼインヒビターはまた、細胞(例えば、組織および器官)の保存において有用である。細胞保存の方法は、化合物またはその薬学的に受容可能な誘導体の溶液中に細胞を浸漬する工程を包含する。
【0085】
上記の組成物中に存在する化合物の量は、実施例に記載のいずれかのアッセイによって測定した場合、疾患の重篤度またはカスパーゼ活性および/もしくは細胞アポトーシスの検出可能な減少を引き起こすために充分であるべきである。
【0086】
本発明の化合物はまた、(臓器移植に、または血液製剤の保存に必要であり得るような)細胞を保存するための方法において有用である。カスパーゼインヒビターについての同様の使用は、報告されている(Schierleら,Nature Medicine,1999,5,97)。本方法は、カスパーゼインヒビターを含む溶液を用いて、保存されるべき細胞または組織を処理する工程を包含する。必要とされるカスパーゼインヒビターの量は、所定の細胞型に関するインヒビターの有効度および細胞のアポトーシス細胞死を防ぐことが必要な時間の長さに依存する。
【0087】
別の実施形態によれば、本発明の組成物は、別の治療剤をさらに含み得る。このような因子としては、血栓崩壊剤(例えば、組織プラスミノゲンアクチベーターおよびストレプトキナーゼ)が挙げられるが、これらに限定されない。第二の薬剤が用いられる場合、第二の薬剤は、本発明の化合物もしくは組成物を用いて、別個の投薬形態または単回投薬形態の一部のいずれかとして投与され得る。
【0088】
任意の特定の患者についての特定の投薬量および処置レジメンが、用いる特定の化合物の活性、年齢、体重、全般的健康状態、性別、食事、投与時間、排泄速度、薬物の組合せ、ならびに処置医の判断および処置される特定の疾患の重篤度を含む種々の要因に依存することもまた理解されるべきである。活性成分の量はまた、組成物中の(存在する場合)特定の化合物および他の治療剤に依存する。
【0089】
好ましい実施形態では、本発明は、上記の疾患のうちの1つを有する哺乳動物を処置する方法を提供し、この方法は、上記の薬学的に受容可能な組成物をこの哺乳動物に投与する工程を包含する。この実施形態では、患者が、別の治療剤またはカスパーゼインヒビターもまた投与される場合、これは、単回投薬形態で、または別個の投薬形態として、本発明の化合物と一緒に送達され得る。別個の投薬量形態として投与される場合、他方のカスパーゼインヒビターまたは薬剤は、本発明の化合物を含む薬学的に受容可能な組成物の投与の前に、投与と同時に、または投与後に投与され得る。
【0090】
本発明がより完全に理解されるように、以下の調製実施例および試験実施例を記載する。これらの実施例は、例示の目的のためのみであり、そして本発明の範囲を限定するとは決して解釈されるべきではない。
【実施例】
【0091】
(合成実施例)
以下の実施例は、本発明の選択された化合物についての合成手順を提供する。
【0092】
(実施例1)
【0093】
【化17】

([3S/R(2S)]−3−[2−(カルバゾール−9−イル−2−オキソ−エチル)−ペンタノイルアミノ]−5−フルオロ−4−オキソ−ペンタン酸)
(方法A:(4S)−ベンジル−3−ペンタノイル−オキサゾリジン−2−オン)
【0094】
【化18】

−78℃の無水THF(200ml)中の4(S)−(−)−ベンジル−2−オキサゾリジンオン(10g、56.43mmol)の溶液を、攪拌しながら、ヘキサン中の2.5M n−ブチルリチウム溶液(23.70ml、59.26mmol)で処理した。反応混合物を−78℃で30分間攪拌し、その後、塩化バレリル(7.57ml、62.10mmol)を添加した。次いで、反応混合物を15時間かけて周囲温度まで温め、その後、これをNHCl溶液で希釈し、酢酸エチルで希釈し、そしてブラインで洗浄した。有機相を乾燥させ(NaSO)、そして濃縮してゴム状物を得た。これを、フラッシュクロマトグラフィー(40/60ヘキサン中10% EtOAc)によって精製して、副題化合物(14.61g、99%)を無色のオイルとして得た:
【0095】
【数1】

(方法B:[4S(3R)]−3−(4−ベンジル−2−オキソ−オキサゾリジン−3−カルボニル)−ヘキサン酸tert−ブチルエステル)
【0096】
【化19】

−78℃のTHF(100mL)中の(4S)−ベンジル−3−ペンタノイルオキサゾリジン−2−オン(14.20g、54.34mmol)の溶液を、攪拌しながら、THF中のビス(トリメエチルシリル)アミドナトリウムの1M溶液(59.80ml、59.77mmol)で10分間処理した。反応混合物を−78℃で30分間攪拌し、その後、ブロモ酢酸tert−ブチル(10.43ml、70.64mmol)を添加した。次いで、反応混合物をさらに3.5時間にわたって−78℃で攪拌し、その後、これを、NHCl溶液で希釈し、酢酸エチルで希釈し、そしてNaHCO溶液およびブラインで順次洗浄した。有機相を乾燥し(NaSO)、そして濃縮してゴム状物を得た。静置したところ、白色固体が形成され、そしてこれを40/60のDCM/ヘキサンから再結晶化して、副題化合物(14.62g、72%)を白色固体として得た:
【0097】
【数2】

(方法C:(2R)−2−プロピル−コハク酸1−ベンジルエステル4−tert−ブチルエステル)
【0098】
【化20】

−20℃のTHF(80ml)中のベンジルアルコール(4.62ml、44.64mmol)の溶液を、攪拌しながら、ヘキサン中のn−ブチルリチウムの2.5M溶液(13.36ml、33.48mmol)で処理した。反応混合物を40分間かけて−5℃まで温め、その後、THF(20ml)中の[4S(3R)]−3−(4−ベンジル−2−オキソ−オキサゾリジン−3−カルボニル)−ヘキサン酸tert−ブチルエステル(8.38g、22.32mmol)の溶液を添加した。反応混合物を15時間かけて周囲温度まで温め、その後、これをNHCl溶液および酢酸エチルで希釈し、そしてブラインで洗浄した。有機相を乾燥し(NaSO)、そして濃縮してゴム状物を得た。これを、フラッシュクロマトグラフィー(40/60ヘキサン中の11% EtOAc)によって精製して、副題化合物(4.56g、67%)を無色オイルとして得た:
【0099】
【数3】

(方法D:(2R)−2−プロピル−コハク酸1−ベンジルエステル)
【0100】
【化21】

0℃の無水DCM(20mL)中の(2R)−2−プロピル−コハク酸1−ベンジルエステル4−tert−ブチルエステルの攪拌した溶液(4.56g、14.88mmol)を、無水DCM(10mL)中のトリフルオロ酢酸(10mL)の溶液で処理した。反応混合物を3時間かけて周囲温度まで温め、その後、減圧下で濃縮した。残渣を乾燥DCMに溶解し、その後、再度濃縮した。このプロセスを数回繰り返して過剰なトリフルオロ酢酸を除去して、副題化合物(3.70g、99%)をゴム状物として残した:
【0101】
【数4】

(方法E:(2R)−2−(2−カルバゾール−9−イル−2−オキソ−エチル)−ペンタン酸ベンジルエステル)
【0102】
【化22】

−78℃の無水THF(30mL)中のカルバゾール(2.49g、14.88mmol)の攪拌した溶液を、THF(14.88ml、14.88mmol)中のリチウムビス(トリメチルシリル)アミドの1.0M溶液で処理した。反応混合物を2時間かけて周囲温度まで温め、その後、−78℃まで再度冷却した。
【0103】
0℃で攪拌しながら、無水DCM(20mL)中の(2R)−2−プロピル−コハク酸1−ベンジルエステル(3.70g、14.78mmol)の溶液を、塩化オキサリル(1.43ml、16.37mmol)およびDMF(14滴)で処理した。反応混合物を0℃で1時間にわたって攪拌し、その後、減圧下で濃縮した。残渣を無水THF(10ml)中に溶解し、そして−78℃の、予め調製したカルバゾールのリチウムアニオンに添加した。反応混合物を40時間かけて周囲温度まで温め、その後、これを、NHCl溶液および酢酸エチルで希釈し、そして2N HCl、NaHCO溶液およびブラインで順次洗浄した。有機相を乾燥し(NaSO)、そして濃縮してゴム状物を得て、このゴム状物をフラッシュクロマトグラフィー(40/60ヘキサン中の10% EtOAc)によって精製して副題化合物(4.50g、76%)を、カルバゾールもまた含む半固体/オイルとして得た;
【0104】
【数5】

(方法F:(2R)−2−(2−カルバゾール−9−イル−2−オキソ−エチル)−ペンタン酸)
【0105】
【化23】

EtOAc(60mL)中の(2R)−2−(2−カルバゾール−9−イル−2−オキソ−エチル)−ペンタン酸ベンジルエステル(4.50g、11.26mmol)の攪拌した溶液を10%炭素担持Pd(約400mg)で処理し、次いで反応混合物を水素雰囲気下に配置した。1時間後、さらに10%炭素担持Pd(約300mg)を添加し、そして反応混合物を攪拌しながらさらに3時間にわたって水素下に配置し、その後、反応混合物を、セライトパッドを通して濾過し、そして濃縮して副題化合物(2.94g、84%)を、カルバゾールをも含む白色固体として得た:
【0106】
【数6】

(方法G:[3S/R,4S/R,(2R)]−3−[2−(2−カルバゾール−9−イル−2−オキソ−エチル)−ペンタノイルアミノ]−5−フルオロ−4−ヒドロキシ−ペンタン酸tert−ブチルエステル)
【0107】
【化24】

(2R)−2−(2−カルバゾール−9−イル−2−オキソ−エチル)−ペンタン酸(2.94g、9.50mmol)、3−アミノ−5−フルオロ−4−ヒドロキシ−ペンタン酸tert−ブチルエステル(2.07g、9.99mmol)、HOBT(1.41g、10.43mmol)、DMAP(1.34g、10.97mmol)および無水THF(40mL)の攪拌した混合物を0℃になるまで冷却し、次いでEDC(2.00g、10.43mmol)を添加した。混合物を16時間の間、室温まで温め、次いで、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(40/60ヘキサン中33% EtOAc)によって精製して、副題化合物(2.51g、53%)を泡状体として得た:
【0108】
【数7】

(方法H:[3S/R,(2R)]−3−[2−(2−カルバゾール−9−イル−2−オキソ−エチル)−ペンタノイルアミノ]−5−フルオロ−4−オキソ−ペンタン酸 tert−ブチルエステル)
【0109】
【化25】

無水DCM(60ml)中の[3S/R,4S/R,(2R)]−3−[2−(2−カルバゾール−9−イル−2−オキソ−エチル)−ペンタノイルアミノ]−5−フルオロ−4−ヒドロキシ−ペンタノン酸 tert−ブチルエステル(2.51g、5.03mmol)の攪拌溶液を、1,1,1−トリアセトキシ−1,1−ジヒドロ−1,2−ベンズヨードオキソール−3(1H)−オン(2.35g、5.53mmol)で、0℃で処理した。生じた混合液を、0℃で、3時間保存し、DCMで希釈し、次いで飽和水性チオ硫酸ナトリウム、NaHCO溶液およびブラインで、連続して洗浄した。有機相を乾燥させ(NaSO)、そして濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中の25%の酢酸エチル40/60)によって精製し、オフホワイトの固体(1.437g、57%)として、副題の化合物を得た。
【0110】
【数8】

(方法I:[3S/R,(2R)]−3−[2−(2−カルバゾール−9−イル−2−オキソ−エチル)−ペンタノイルアミノ]−5−フルオロ−4−オキソ−ペンタン酸)
【0111】
【化26】

無水DCM(20ml)中の[3S/R,(2R)]−3−[2−(2−カルバゾール−9−イル−2−オキソ−エチル)−ペンタノイルアミノ]−5−フルオロ−4−オキソ−ペンタン酸 tert−ブチルエステル(1.43g、2.88mmol)溶液を、無水DCM中のTFA溶液(10ml)で、攪拌して処理した。この混合物を、0℃で、2時間攪拌し、次いで室温で2時間攪拌した。この混合液を、減圧下で濃縮し、次いで残渣を、乾燥DCM中に溶解した。余分なトリフルオロ酢酸を除去するために、この工程を数回繰り返した。オフホワイトの固体を、EtO / 40/60ヘキサンから再結晶化し、白い粉末として、表題の化合物を得た(71mg)。
【0112】
【数8A】

(実施例2)
【0113】
【化27】

([3S/R(2S)]−3−[2−(2−カルバゾール−9−イル−2−オキソ−エチル)−3−メチル−ブチリルアミノ]−5−フルオロ−4−オキソ−ペンタン酸)
この化合物を、方法A−Iで記載した方法と同様の手順を用いて調製した。この生成物を、白い粉末(最終工程として71%)として単離した。
【0114】
【数9】

(試験方法)
(酵素アッセイ)
カスパーゼ阻害に関するアッセイは、ヒトの組換え精製したカスパーゼ−1、カスパーゼ−3、カスパーゼ−7またはカスパーゼ−8による、蛍光原基質の切断に基づく。このアッセイは、各々の酵素に対して特異的な基質を利用して、Garcia−Calvoら(J.Biol.Chem.273(1998),32608〜32613)で報告されたアッセイと本質的に同じ方法で実施される。カスパーゼ−1に対する基質は、アセチル−Tyr−Val−Ala−Asp−アミノ−4−メチルクマリンである。カスパーゼ−3、カスパーゼ−7およびカスパーゼ−8に対する基質は、アセチル−Asp−Glu−Val−Asp−アミノ−4−メチルクマリンである。特定のインヒビター濃度における、酵素不活性化の測定された速度(kobs)は、非線形最小自乗アッセイコンピュータプログラム(PRIUS 2.0;GraphPad software)を使用して、Thornberryら(Biochemistry 33(1994)、3943〜3939)によって導かれた式に、このデータを直接適用することによって算出される。2次反応速度定数を測定するために、kinact値、kobs値をそれらの各々の阻インヒビター濃度に対してプロットし、その後、kinact値を、コンピュータ化された線形回帰によって算出した。試験される本発明の化合物の多くは、以下の活性を示した:カスパーゼ1に対するkinact値は、25,000と1,500,000M−1−1との間;カスパーゼ3に対するkinact値は、9,000と1,500,000M−1−1との間;カスパーゼ8に対するkinact値は、10,000と700,000M−1−1との間。
【0115】
(末梢血単核球(PBMC)混合集団からのIL−1β分泌の阻害)
カスパーゼ−1によるプレ−IL−1βのプロセシングは、種々の細胞供給源を用いた細胞培養物中で、測定され得る。健康なドナーから得られたヒトPBMCは、多くのクラスの生理学的刺激物質に応答してインターロイキンおよびサイトカインのスペクトルを産出する、白血球および単核細胞の混合集団を提供する。
【0116】
(実験方法)
試験化合物を、ジメチルスホキシド(DMSO、Sigma ♯D−2650)中に溶解し、100mMのストック溶液とする。これを、10% 熱不活性化FCS(Gibco BRL #10099−141)、2mM L−グルタミン(Sigma ♯G−7513)、100U ペニシリンおよび100μg/ml ストレプトマイシン(Sigma ♯P−7539)を含むRPMIからなる、完全培地中に希釈する。試験化合物の最終濃度の範囲は、8回の希釈工程にわたって、100μM未満〜6nMである。試験化合物の最も高い濃度は、アッセイ中の0.1%DMSOに相当する。
【0117】
ヒトPBMCを、Ficoll−Paque髄鞘細胞分離培地(Amersham,#17−1440−02)の遠心分離を行うことで、血液バンクから得られる軟膜から単離し、細胞のアッセイを滅菌96ウェル平底プレート(Nunc)中で実施する。各々のウェルは、100μlの細胞懸濁液、1×10の細胞、50μlの希釈化合物および50μlのLPS(Sigma #L−3012)を含み、最終濃度は50ng/mlである。コントロールは、細胞+/−LPS刺激物および化合物と同じ方法で希釈されたDMSOの希釈液からなる。プレートを、5%COおよび湿度95%の空気中で、37℃、16〜18時間インキュベートする。
【0118】
16〜18時間後、プレートを100×g、18℃で、15分間遠心分離した後に、上澄みを回収し、それらのIL−1β含有量についてアッセイした。上澄み中の、成熟IL−1βの測定を、製造業者の使用説明書に従って、Quantikineキット(R&D
Systems)を用いて実施する。ポジティブコントロールのウェル中のPBMCについては、約600〜1500pg/mlレベルの成熟IL−1βが観察された。
【0119】
化合物の阻害能力は、インヒビターの濃度であるIC50値によって表し得、この値は、ポジティブコントロールと比較した場合、上澄み中で、50%の成熟IL−1βが検出されるインヒビターの濃度である。
【0120】
表5は、上記の方法で決定する場合、この発明の選択された化合物に対する、末梢血単核球由来のIL−1β分泌の阻害を表す。
【0121】
選択された化合物を、このアッセイで試験し、0.04μMと20μMとの間のIC50値での、IL−1β放出の阻害を示した。。
【0122】
(抗−Fas誘導アポトーシスアッセイ)
細胞のアポトーシスは、Fasリガンド(FasL)が、そのレセプターであるCD95(Fas)に結合することで誘導され得る。CD95は関連レセプターのファミリーの1つであり、カスパーゼ酵素カスケードの活性化を介して、細胞内のアポトーシスをトリガーし得る、致死(death)レセプターとして公知である。そのプロセスは、CD−95レセプター−リガンド複合体の細胞質ドメインに、アダプター分子FADD/MORT−1が結合することによって開始する。次いで、カスパーゼ−8はFADDと結合して活性状態となり、下流のカスパーゼの活性化およびその後の細胞死に関連する事象のカスケードを開始する。アポトーシスはまた、FasLではなく抗体を使用して、細胞表面のCD95に架橋するために、CD95を発現する細胞、例えば、Jurkat E6.1T細胞リンパ腫細胞株において誘導され得る。抗−Fas−誘導アポトーシスはまた、カスパーゼ−8の活性化を介しても、トリガーされる。このことは、カスパーゼ−8−媒介アポトーシス経路の阻害について、化合物をスクリーニングするために、細胞に基づくアッセイの基礎を提供する。
【0123】
(実験方法)
Jurkat E6.1細胞を、RPMI−1640(Sigma No)+10%ウシ胎児血清(Gibco BRL No.10099−141)+2mM L−グルタミン(Sigma No.G−7513)からなる、完全培地中で培養する。その細胞を、対数増殖期中に回収する。5〜8×10細胞/mlの細胞(100m)を滅菌した50mlFalcon遠沈管に移し、100×g、室温で、5分間遠心する。上澄みを除去し、合わせた細胞のペレットを、25mlの完全培地中に再懸濁する。細胞を計数し、完全培地を用いて、2×10細胞/mlに濃度を調整する。
【0124】
試験化合物を、ジメチルスルホキシド(DMSO)(Sigma No.D−2650)中に希釈し、100mMストック溶液とする。このストック溶液を、完全培地中に400μMに希釈し、次いで、細胞アッセイプレートに取りつける前に、96−ウェルプレート中で順次希釈した。
【0125】
100μlの細胞懸濁液(2×10細胞)を、滅菌96−ウェル丸底クラスタープレート(Costar No.3790)の各ウェルに添加する。適切に希釈した化合物溶液(50μl)および抗−FasであるクローンCH−11(50μl)(Kamiya
No.MC−060)(10ng/mlの最終濃度)を、ウェルに添加する。コントロールのウェルを、抗体マイナスおよび化合物マイナスだが、ビヒクルコントロールとしてDMSOの希釈液を含むように設定した。このプレートを、5%COおよび湿度95%、37℃、16〜18時間インキュベートする。
【0126】
細胞のアポトーシスを、Boehringer−Mannheim,No.1544 675由来の「細胞死検出アッセイ(Cell Death Detection Assay)」を用いて、DNA断片化の定量により測定する。16〜18時間のインキュベーション後、アッセイプレートを、100×g、室温で、5分間遠心する。150μlの上澄みを除去し、フレッシュな150μlの完全培地と取り換える。次いで、細胞を回収し、そしてアッセイキットに提供された200μlの溶解緩衝剤を各々のウェルに添加する。完全な溶解を確実にするために、細胞を粉砕し、4℃、30分間インキュベートする。次いで、このプレートを、1900×gで、10分間遠心し、そしてその上澄みを、提供されたインキュベーション緩衝剤中に、1:20希釈した。次いで、この溶液のうち100μlを、キットとともに提供された製造業者の使用説明書に従って、アッセイする。最終基質の添加後20分間、SPECTRAmax plus plate reader(Molecular Devices)中で、OD405nmを測定する。OD405nmを、化合物の濃度に対してプロットし、その化合物に対するIC50値を、4パラメーター適合オプションを使用する、曲線のあてはめプログラムSOFTmax Pro(Molecular Device)を使用して算出する。
【0127】
選択した化合物を、このアッセイで試験し、0.001μMと0.15μMとの間のIC50値でのJurkat細胞のFas−誘導アポトーシスの阻害が示された。
【0128】
発明者らは、本発明の複数の実施形態を記載する一方で、発明者らの基礎的な例を変更して、本発明の化合物および方法を利用する別の実施形態を提供しうることは、明らかである。それゆえ、本発明の範囲は、例として表される特定の実施形態ではなく、添付の特許請求により規定されることが、意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【公開番号】特開2009−185066(P2009−185066A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124521(P2009−124521)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【分割の表示】特願2002−590980(P2002−590980)の分割
【原出願日】平成14年5月23日(2002.5.23)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】