カテーテル用複合バルーン及びその製造方法
【課題】 バルーンの高強度化と拡張時の寸法安定性を維持しつつ柔軟性や通過性に優れたバルーンを提供すること。
【解決手段】 少なくとも1つの外層を形成する材質が基材層を形成する材質よりも融点が低い樹脂によって構成されたバルーン全体を、ファイバーで編組またはコイル状に覆い、そのファイバーをバルーン表面に固着または一体化させること。ファイバーで編組またはコイル状に覆われたバルーン全体を加熱することで、基材層を形成する材質よりも融点が低い樹脂によって形成される外層が溶融し、ファイバーとバルーン表面が固着または一体化される。こうしてできる複合バルーンは、ファイバーとバルーン表面を固着または一体化する際に接着剤を使用する必要がないため、バルーンの膜厚を薄肉化することが可能となる。
【解決手段】 少なくとも1つの外層を形成する材質が基材層を形成する材質よりも融点が低い樹脂によって構成されたバルーン全体を、ファイバーで編組またはコイル状に覆い、そのファイバーをバルーン表面に固着または一体化させること。ファイバーで編組またはコイル状に覆われたバルーン全体を加熱することで、基材層を形成する材質よりも融点が低い樹脂によって形成される外層が溶融し、ファイバーとバルーン表面が固着または一体化される。こうしてできる複合バルーンは、ファイバーとバルーン表面を固着または一体化する際に接着剤を使用する必要がないため、バルーンの膜厚を薄肉化することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカテーテル用複合バルーン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管内の疾患は、通常、経皮的腔内血管形成術(PTA)や経皮的冠動脈形成術(PTCA)等の低侵襲的な手技により治療される。これらの血管形成術には、通常、バルーンカテーテルが使用される。バルーンカテーテルは、血管内の狭窄部位を拡張するために、通常、ガイドカテーテルとガイドワイヤーとのセットで使用される。このバルーンカテーテルを用いた血管成形術は、まずガイドカテーテルを患者の血管内へ挿入して目的の位置へ配置させる。次にガイドワイヤーをガイドカテーテル内のルーメンを通して搬送させ、狭窄部位を超えて前進させる。その後バルーンカテーテルをガイドワイヤーに沿って前進させ、バルーンを狭窄部位に位置させた状態で膨張させて狭窄部位を拡張する手順で行ない、そしてバルーンを収縮させて体外に除去する。血管成形術は多くの医療機関において多数の術例があり、この種の症例における手術としては一般的である。しかし、バルーンカテーテルは、動脈狭窄の治療だけに限定されず、血管内への挿入、ならびに種々の体腔への挿入を含む多くの医療的用途に有用である。
【0003】
カテーテルシャフトの遠位部に設けられたバルーンは、屈曲した血管の追随性、高度狭窄部位の通過性、石灰化した狭窄部位の拡張性といった観点から、柔軟性、薄膜化、高強度といった種々の特徴が要求される。特に、石灰化した非常に硬い狭窄部位を拡張するためには非常に高い耐圧強度が必要で、従来はポリエチレンテレフタレート(PET)などの高強度、高弾性率材料を用いたり、バルーン膜厚を厚くしたりすることで非常に高い耐圧強度を確保してきた。しかし、PET製のバルーンは石灰化病変との接触によりピンホール破壊を招き、血管内でバルーンが破壊した場合は血管壁に高い応力が局所的に加わり、血管壁の損傷を招く危険性が極めて高いため好ましくない。また、バルーン膜厚を厚くすることは、耐圧強度が確保される一方で、バルーンの柔軟性や通過性を犠牲にすることになり、その両立が難しい。さらに、バルーンに非常に高い圧力をかけることでバルーンが肥大化し、径方向の伸びが血管の過拡張を引き起こしたり、軸方向の伸びが正常な血管までも拡張させてしまったりする恐れがある。
【0004】
これらの問題を解決すべく、これまでバルーンの薄肉化や高強度化、拡張時の寸法安定化に関して、幾多の方法が開示されている。
【0005】
特許文献1ではポリエチレンテレフタレート(PET)によるバルーンが開示されている。このバルーンは薄肉で高強度を実現し、寸法安定性にも優れている。しかし、先に述べたように柔軟性に欠けること、ピンホール破壊が起こりやすいことがデメリットとして挙げられる。
【0006】
特許文献2や特許文献3には、バルーンの長さは変わらずに予め定めた最大直径まで膨張可能な編成チューブにより補強されているバルーンが開示されている。このバルーンは3層を備え、ウレタン膜の内外層と編成チューブの中間層を液状ウレタンに浸漬することで固着し得られるものである。この方法で得られるバルーンは、寸法安定性には優れているが、ウレタン膜は強度に乏しく、バルーンに非常に高い圧力を加えることが難しいため好ましくない。
【0007】
特許文献4には、3層構造のバルーンで、内外層はゴム管、中間層は筒状の補強布であり、その補強布は接着剤で接着されたバルーンの製造法が開示されている。このバルーンは中間層の補強布が最大形状を規制するため、寸法安定性には優れるが、バルーンがゴム管と補強布の3層構造であること、接着剤で3層を固着していることから、バルーンの肉厚は厚くなり易く柔軟性に欠けるため好ましくない。また、バルーン材質は強度に乏しいウレタン膜やゴム素材である場合が多いため、高強度化を考慮した構造とは言い難い。
【0008】
一方、特許文献5にはバルーン拡張時の寸法安定化と高強度化を両立したバルーンが開示されている。このバルーンは、ポリマーでできたバルーンの上に高強度で弾力性のないファイバーが軸方向に均等に添われ、さらにその上を高強度で弾力性のないファイバーがバルーンの形状に沿って周方向に均等に巻いてあるもので、これらの2層のファイバーは実質的に直交しているバルーンである。このバルーンは非常に高い圧力を加えてもバルーンが容易に変形したり破裂したりすることはなく、またバルーン径方向、軸方向の伸びも抑えることができる。しかし、2層のファイバーとバルーンを固着するために接着剤が使用されており、バルーンが厚くなって嵩張るため、薄肉化が考慮された構造とは言い難い。
【0009】
このほかにも、バルーン拡張時の寸法安定化といった観点で、ファイバーで巻いたバルーンや編組で補強されたバルーンに関する先行技術は存在するものの、バルーンとファイバーを接着剤等で固定しているため、バルーンの肉厚は厚くなり易く、薄肉化を考慮した構造とは言い難い。
【0010】
このように、バルーンの薄肉化、高強度化、拡張時の寸法安定化の全てを満足し、柔軟性や通過性に優れるバルーンは実現できていないが、血管形成術を行う医療の現場では、依然このようなバルーン及びバルーンカテーテルが求められている。
【特許文献1】特開昭63−183070号
【特許文献2】特開昭61−103453号
【特許文献3】特開平6−238004号
【特許文献4】特開平2−174849号
【特許文献5】米国特許第6746425号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、バルーンの高強度化と拡張時の寸法安定性を維持しつつ薄肉で柔軟性や通過性に優れたバルーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決したものであって、次に示す構成を内容とする。すなわち本発明は、バルーン全体が編組またはコイル状に形成されたファイバー層により覆われ、前記バルーンが、基材層と基材層を構成する材質よりも融点が低い樹脂によって構成される外層を有し、前記ファイバー層が、前記基材層よりも融点が低い樹脂によって、バルーンの表面に固着または一体化されていることを特徴とする、カテーテル用複合バルーンに関する。
【0013】
また本発明は、前記ファイバーが、バルーン軸方向に平行して配置されることを特徴とする前記複合バルーンに関する。
【0014】
また本発明は、前記ファイバーが高強度、高弾性率繊維からなることを特徴とする前記複合バルーンに関する。
【0015】
また本発明は、前記ファイバーがマルチフィラメントであることを特徴とする前記複合バルーンに関する。
【0016】
また本発明は、前記ファイバーがモノフィラメントであることを特徴とする前記複合バルーンに関する。
【0017】
また本発明は、基材層と基材層を構成する材質よりも融点が低い樹脂によって構成される外層を有するバルーンの表面に、編組またはコイル状のファイバー層を形成した後、前記基材層よりも融点が低い樹脂を溶融させることにより、前記ファイバー層を、バルーンの表面に固着または一体化することを特徴とする、カテーテル用複合バルーンの製造方法に関する。
【0018】
また本発明は、基材層と基材層を構成する材質よりも融点が低い樹脂によって構成される外層を有するバルーンの表面に、編組またはコイル状のファイバー層を形成した後、バルーンと同形状の金型内に配置し、バルーンに内圧をかけた状態で金型を加熱媒体にて加熱し、一定時間保持することにより、前記ファイバー層をバルーンの表面に固着または一体化することを特徴とするカテーテル用複合バルーンの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ファイバーをバルーンに編組またはコイル状に巻くことで、バルーンを高強度化させる際に障壁となっているバルーン周方向、軸方向の過度な伸長を防止することができる。また本発明によれば、接着剤等を塗布することなくバルーンとファイバーを固着できるため、これまでのファイバー等で複合化されたバルーンよりも膜厚をより薄くすることが可能で、柔軟性や通過性に優れたバルーンを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、多くの異なった形態で具体化することができうるが、ここでは一部の好ましい実施形態を図示して本明細書に記載する。よって、本発明の開示はここに記載されたもののみに限定されるものではない。
【0021】
上記のように、本発明は、バルーン全体が編組またはコイル状に形成されたファイバー層により覆われ、前記バルーンが、基材層と基材層を構成する材質よりも融点が低い樹脂によって構成される外層を有し、前記ファイバー層が、前記基材層よりも融点が低い樹脂によって、バルーンの表面に固着または一体化されていることを特徴とする、カテーテル用複合バルーンに関する。
【0022】
より具体的な構造を以下に述べる。通常、バルーン1は、押出成形によって押出された樹脂チューブを金型に配置し、二軸延伸ブロー成形することによって得られる。本発明で用いる樹脂チューブは、基材層となる材質と少なくとも1つの外層となる材質の多層チューブ1を押出成形することで得られる。多層チューブ5の層構造は、図3に示すように、最内層である基材層6と外層7の2層構造であってもよいが、図4に示すように、外層を最外層7aと7bの2層あるいはそれ以上の層構造とししてもよい。両層の剥離性などを考慮し、基材層と内層の間に、中間層を設けることも可能である。
【0023】
このような多層チューブ5を二軸延伸ブロー成形することによって得られるバルーン1は、金型の形状によって自在に形状付けされる。一般的なバルーン形状としては、図1に示されるような、近位テーパー部4と遠位テーパー部2が円錐状で、略中間部3が円筒状である場合が多いが、この形状に限定されるものではない。なお、バルーン1は必ずしも多層チューブを二軸延伸ブロー成形する必要はなく、その他の製造方法によって製作されても構わない。
【0024】
上記バルーン1の基材層6の材質はバルーンに好適な材料であれば特に制限されるものではないが、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、またはこれらの混合物から選ばれることが望ましい。例えばポリアミドの中でバルーンに好適な材料として、ナイロン12、ナイロン11等が挙げられるが、ブロー成形する際、比較的容易に成形可能であるという観点から、ナイロン12が好適に用いることが出来る。バルーン薄膜化、柔軟性の観点からさらに望ましい例として、ポリアミドエラストマーが挙げられる。ポリアミドエラストマーの中でバルーンに好適な材料として、ポリエーテルエステルアミドエラストマー、およびポリアミドエーテルエラストマーが挙げられるが、降伏強度が高く、バルーンの寸法安定性がより良いという観点から、ポリエーテルエステルアミドエラストマーが望ましい。
【0025】
基材層を構成する材質よりも融点が低い材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂などの比較的融点が低い材質が好適に用いるまた、基材層6の材質よりも融点が低くなければならない。例えば、一般的なポリエチレンの融点はおよそ110℃〜130℃であり、基材層6の材質よりも融点が低い材質として用いることが可能である。また、ポリエチレンには低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンなどがあるが、バルーン基材層6の材質との耐剥離性といった観点では基材層の外側に低密度ポリエチレンからなる外層を設けることが好ましい。また、表面の滑り性や平滑性、摺動性といった観点では外層として高密度ポリエチレンが好ましい。図4に示すような構造の多層チューブにおいては、最外層7aと外層7bの少なくとも一方に基材層6を構成する材質よりも融点が低い材質が用いられていればよい。すなわち、最外層7aが基材層6よりも融点が低い樹脂で構成される場合、外層7bを構成する材質としては、最外層7aさらには基材層6よりも融点が高くてもよい。一方、外層7bに基材層6よりも融点が低い樹脂を用いるには、最外層7aを構成する材質の融点が、外層7bを構成する材質の融点に比し、きわめて高いか基材層6よりも高い場合には、ファイバー層の固定が困難となりうる場合がある。は、基材層6の表面に外層7bとして低密度ポリエチレンの層を設け、さらにその外側に最外層7aとして高密度ポリエチレンの順に積層化することが、耐剥離性、表面の滑り性や平滑性、摺動性等、要求性能の多くを満足させうる点で好ましい。
【0026】
上記バルーン1には、ファイバー9がバルーンの形状に沿って全体を覆うように編組またはコイル状に巻かれることにより、ファイバー層が形成される。バルーンを編組またはコイル状に巻く際は、隙間が生じないほど精巧に形状付けされるのが望ましい。ファイバーの編み方や巻き方については特に限定されず、一般的な編組機で編む方法やコイリングマシンで巻く方法が採用可能である。編組あるいはコイル状であるファイバーのピッチが大きすぎるとバルーン層10が剥き出しになる面積が増えるため、高い圧力に耐え切れず破裂しやすくなる。また、バルーン拡張時の寸法変化も起こりやすくなる。一方、ピッチを小さくするとバルーン層10が剥き出しになる面積が減るため、非常に高い圧力にも耐えることができ、バルーン拡張時の寸法変化も起こり難くなる。しかし、ピッチが小さすぎるとファイバー9が重なり合う部分が生じて嵩張るため、バルーン膜が厚肉になり柔軟性が損なわれる。以上の観点から、ファイバー層を形成するファイバーのピッチは、ファイバー5の太さに応じて適宜最適化した方が好ましい。
【0027】
また、上記バルーン1にファイバー9をバルーン軸方向に平行して配置したあと、ファイバー9にて編組またはコイル状に巻いてもよい。このように配置することでバルーン拡張時の寸法変化を更に抑えることができ、より寸法安定性に優れたバルーンが得られる。
【0028】
バルーン軸方向に平行してファイバー9を配置する場合には、図13のようにバルーン周方向に均等に配置されるのが好ましい。このように配置したバルーン1に非常に高い圧力を加えると、図14のような良好な拡張形状が得られる。しかし、図15のように軸方向に平行して配置されるファイバー9がバルーン1の周方向にばらばらに配置されて編組またはコイル状に巻かれると、バルーンに非常に高い圧力が加えられることで偏拡張が発生し、バルーン形状が保持出来なくなる。より極端な具体例で示すと、図16のように軸方向に平行して配置されるファイバー9がバルーンの周方向の1方向のみに配置された場合、バルーン1に非常に高い圧力が加えられることで、図17のようにバナナ形状のようなU字型となってしまうため好ましくない。
【0029】
本発明で用いるファイバー9に好ましい材料としては、ポリアリレート繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、PBO繊維、炭素繊維などの高強度、高弾性率繊維を用いる。これらの繊維は比較的融点が高く、熱による寸法変動も受けにくい。
【0030】
また、本発明で用いるファイバー9は、図18に示すような単一のフィラメントからなるモノフィラメントであってもよいし、図19に示すような複数のフィラメントから構成されるマルチフィラメントであってもよい。
【0031】
このファイバー9で編組またはコイル状に巻かれた上記バルーン1は、外層の材質が溶融される温度域で加熱される。加熱方法としてはいくつかの方法が挙げられるが、より好ましい方法として図20に示すように、バルーンと同形状の金型11内に上記バルーン1を配置し、金型11を外層の材質が溶融される温度域まで加熱媒体12にて加熱し、バルーン1に内圧をかけた状態で一定時間保持する方法がある。この方法を用いれば、バルーン形状を維持したままの状態で溶融された外層の材質が糊や接着剤と同じ役割を果たし、ファイバー9とバルーン1が固着され、一体化した複合バルーンが得られる。しかし、この加熱方法に限定されるものではない。
【0032】
本発明において、得られた複合バルーンのファイバー9の影響で表面性が悪い場合には、ウレタン樹脂やその他の材料を使用してコーティングし、表面を平滑化しても構わない。コーティング方法としては一般的にはディッピング法が挙げられるが、用途に合った適切な方法を用いることが可能である。
【0033】
本発明の複合バルーンの軸方向に対して平行に切断した場合の詳細断面図を示す。本発明の複合バルーンは、ファイバー9がバルーン1に図21のように編組されたファイバー9aと、同時にバルーン軸方向に平行してファイバー9bが配置されてもよい。また本発明によれば、ファイバー9はバルーン1に図22のようにコイル状に巻かれ、さらに同時にバルーン軸方向に平行して配置されてもよい。このように編組またはコイル状に巻かれたファイバー9aと、同時にバルーン軸方向に平行してファイバー9bが配置されたバルーン1を、バルーンと同形状の金型11内に配置し、金型11を外層の材質が溶融される温度域まで加熱媒体12にて加熱し、バルーン1に内圧をかけた状態で一定時間保持する。その後、金型11から取り出されたバルーンは、図23や図24のように外層7の材質がバルーン1とファイバー9を固着させ、一体化した複合バルーンとなる。
【0034】
一方、既存の複合バルーンの一般的な製造方法は、図25や図26のようにファイバー9がバルーン1に編組またはコイル状に巻かれ、さらに同時にバルーン軸方向に平行して配置される際、ファイバー9とバルーン1を固着するために接着剤13等が塗布される。その後、ファイバー9がほどけるのを防止したり、ファイバー9の隙間からはみ出た接着剤をカバーしたり、表面性を良くする目的で最外層にコーティング14されたり、フィルム14が巻かれたりする。
【0035】
こうして得られた本発明の複合バルーンと既存の複合バルーンを比較すると、本発明の複合バルーンは、接着剤等を使用せずとも直接バルーン1とファイバー9とを固着することが可能で、バルーンの厚みを薄くすることができる。一方、既存の複合バルーンは、接着剤13等を使用しなければバルーン1とファイバー9とを固着することができず、さらには最外層にコーティング14やフィルム14が巻かれるため、バルーンの厚みは必然的に厚くなる。
【0036】
このように、本発明の複合バルーンは、接着剤等を使用しなくともバルーン1とファイバー9を固着することができるためバルーンが薄肉化でき、バルーン1とファイバー9を接着剤13等で固定するような既存の複合バルーンよりも柔軟性や通過性が飛躍的に向上する。また、ファイバー9がバルーン1に編組またはコイル状に巻かれているため、高強度かつ拡張時の寸法安定性が維持される。
【実施例】
【0037】
以下、本発明のバルーンカテーテル用複合バルーンの具体的実施例を説明する。
【0038】
(実施例1)
押出成形によって押出された多層チューブを金型に配置し、二軸延伸ブロー成形により多層バルーンを作製した。使用した多層チューブの層構造は、多層バルーンの基材層となる材質がポリアミドエラストマー(PEBAX7233、アルケマ社)、多層バルーンの外層となる材質が低密度ポリエチレン(PX3080、EQUISTAR社)、高密度ポリエチレン(ノバテックHD HB530、日本ポリエチレン(株))の順に積層化されたものである。多層バルーン作製に用いた金型の寸法は、円筒部の径がφ6.0mm、長さが40mmである。二軸延伸ブロー成形により作製した多層バルーンの円筒部の平均膜厚は42μm、平均破裂強度は16.2atmであった。この多層バルーンにポリアリレート繊維のモノフィラメント(ベクリー、(株)クラレ)をピッチ2.5mmで編組後、バルーンと同形状の金型内に配置し、金型を150℃で加熱し、多層バルーンに10atmの内圧をかけた状態で3分間保持し取り出した。
【0039】
こうして得られた複合バルーンの円筒部の膜厚は75μm、破裂強度は40.1atmであった。また10atm加圧時の複合バルーン円筒部の径は6.01mm、長さは39.2mm、30atm加圧時の複合バルーン円筒部の径は6.01mm、長さは46.0mmであった。
【0040】
(実施例2)
実施例1にて作製した多層バルーンに、ポリアリレート繊維のマルチフィラメント(ベクトランHT28dtex、(株)クラレ)をバルーン軸方向に平行して16本均等に配置し、ピッチ0.2mmでコイル巻きした後、バルーンと同形状の金型内に配置し、金型を150℃で加熱し、バルーンに10atmの内圧をかけた状態で3分間保持し取り出した。
【0041】
こうして得られた複合バルーンの円筒部の膜厚は52μm、破裂強度は43.8atmであった。また10atm加圧時のバルーン円筒部の径は6.00mm、長さは38.2mm、30atm加圧時のバルーン円筒部の径は6.01mm、長さは39.6mmであった。
【0042】
(比較例1)
実施例1、2で得られた複合バルーンと比較するため、ファイバー層が存在せず、破裂強度が40atm程度になるように、円筒部の平均膜厚を調整することにより、破裂強度が40atm程度になるような同寸法のバルーンをポリアミドエラストマー(PEBAX7233、アルケマ社)で作製した。
【0043】
こうして得られたファイバー層が存在しない単層構造のポリアミドエラストマー製バルーンの円筒部の平均膜厚は120μm、平均破裂強度は40.8atmであった。また10atm加圧時のバルーン円筒部の径は5.73mm、長さは39.3mm、30atm加圧時のバルーン円筒部の径は6.47mm、長さは47.2mmであった。
【0044】
(比較例2)
押出成形によって押出された樹脂チューブを金型に配置し、二軸延伸ブロー成形によりバルーンを作製した。バルーンの材質はポリアミドエラストマー(PEBAX7233、アルケマ社)で、作製に用いた金型の寸法は、円筒部の径がφ6.0mm、長さが40mm、作製した単層構造のポリアミドエラストマー製バルーンの円筒部の平均膜厚は24μm、平均破裂強度は16.8atmであった。この単層構造のポリアミドエラストマー製バルーンにウレタン接着剤を塗布した後、ポリアリレート繊維のマルチフィラメント(ベクトランHT28dtex、(株)クラレ)をバルーン軸方向に平行して16本均等に配置し、ピッチ0.2mmでコイル巻きして硬化させた。最後にバルーンと繊維がほどけないようにウレタン溶液に浸漬して表面をコーティングした。
【0045】
こうして得られた複合バルーンの円筒部の膜厚は76μm、破裂強度は43.8atmであった。また10atm加圧時の複合バルーン円筒部の径は6.11mm、長さは38.0mm、30atm加圧時の複合バルーン円筒部の径は6.13mm、長さは39.3mmであった。
【0046】
(実施例3)
実施例1にて作製した多層バルーンに、アラミド繊維のマルチフィラメント(KEVLAR49、東レ・デュポン(株))をバルーン軸方向に平行して16本均等に配置し、ピッチ1.0mmでコイル巻きした後、バルーンと同形状の金型内に配置し、金型を150℃で加熱し、バルーンに10atmの内圧をかけた状態で3分間保持し取り出した。
【0047】
こうして得られた複合バルーンの円筒部の膜厚は77μm、破裂強度は50atm以上(測定機器の都合上、50atm以上は測定不能)であった。また10atm加圧時のバルーン円筒部の径は6.11mm、長さは40.0mm、30atm加圧時のバルーン円筒部の径は6.12mm、長さは41.5mmであった。
【0048】
(比較例3)
比較例2にて作製した単層構造のポリアミドエラストマー製バルーンに、ウレタン接着剤を塗布した後、アラミド繊維のマルチフィラメント(KEVLAR49、東レ・デュポン(株))をバルーン軸方向に平行して16本均等に配置し、ピッチ1.0mmでコイル巻きして硬化させた。最後にバルーンと繊維がほどけないようにウレタン溶液に浸漬して表面をコーティングした。
【0049】
こうして得られた複合バルーンの円筒部の膜厚は106μm、破裂強度は50atm以上(測定機器の都合上、50atm以上は測定不能)であった。また10atm加圧時のバルーン円筒部の径は6.15mm、長さは40.0mm、30atm加圧時のバルーン円筒部の径は6.16mm、長さは41.5mmであった。
【0050】
(実施例4)
実施例1にて作製した多層バルーンに、PBO繊維のマルチフィラメント(ザイロンHM273dtex、東洋紡績(株))をバルーン軸方向に平行して8本均等に配置し、ピッチ1.0mmでコイル巻きした後、バルーンと同形状の金型内に配置し、金型を150℃で加熱し、バルーンに10atmの内圧をかけた状態で3分間保持し取り出した。
【0051】
こうして得られた複合バルーンの円筒部の膜厚は85μm、破裂強度は50atm以上(測定機器の都合上、50atm以上は測定不能)であった。また10atm加圧時のバルーン円筒部の径は6.10mm、長さは40.6mm、30atm加圧時のバルーン円筒部の径は6.12mm、長さは41.8mmであった。
【0052】
(比較例4)
比較例2にて作製した単層構造のポリアミドエラストマー製バルーンにウレタン接着剤を塗布した後、PBO繊維のマルチフィラメント(ザイロンHM273dtex、東洋紡績(株))をバルーン軸方向に平行して16本均等に配置し、ピッチ1.0mmでコイル巻きして硬化させた。最後にバルーンと繊維がほどけないようにウレタン溶液に浸漬して表面をコーティングした。
【0053】
こうして得られた複合バルーンの円筒部の膜厚は115μm、破裂強度は50atm以上(測定機器の都合上、50atm以上は測定不能)であった。また10atm加圧時のバルーン円筒部の径は6.18mm、長さは40.1mm、30atm加圧時のバルーン円筒部の径は6.18mm、長さは41.6mmであった。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明で用いるファイバーを巻く前の一般的なバルーンを示す斜視図。
【図2】本発明で用いるファイバーを巻く前の一般的なバルーンを示す側面図。
【図3】本発明で使用する多層チューブまたはバルーンの断面図。
【図4】本発明で使用する多層チューブまたはバルーンの断面図。
【図5】本発明のバルーンを示す側面図。
【図6】本発明のバルーンを示す側面図。
【図7】図5の一部を拡大した側面図。
【図8】図6の一部を拡大した側面図。
【図9】本発明のバルーンを示す側面図。
【図10】本発明のバルーンを示す側面図。
【図11】図9の一部を拡大した側面図。
【図12】図10の一部を拡大した側面図。
【図13】バルーン軸方向に平行して配置されるファイバーがバルーン周方向に均等に配置された状態を示す断面図。
【図14】バルーン軸方向に平行して配置されるファイバーが図13のように配置された後に編組され、バルーンを高圧拡張したときの形状を示す側面図。
【図15】バルーン軸方向に平行して配置されるファイバーがバルーン周方向にばらばらに配置された状態を示す断面図。
【図16】バルーン軸方向に平行して配置されるファイバーがバルーン周方向の1方向のみに配置された状態を示す断面図。
【図17】バルーン軸方向に平行して配置されるファイバーが図16のように配置された後に編組され、バルーンを高圧拡張したときの形状を示す側面図。
【図18】ファイバーがモノフィラメントであることを示す斜視図。
【図19】ファイバーがマルチフィラメントであることを示す斜視図。
【図20】ファイバーで編組またはコイル状に巻かれたバルーンの加熱方法を示す側断面図。
【図21】ファイバーがバルーンに編組され、さらに同時にバルーン軸方向に平行して配置されていることを示す側断面図。
【図22】ファイバーがバルーンにコイル状に巻かれ、さらに同時にバルーン軸方向に平行して配置されていることを示す側断面図。
【図23】図21のバルーンを図20の加熱方法で加熱した後の側断面図。
【図24】図22のバルーンを図20の加熱方法で加熱した後の側断面図。
【図25】バルーンにファイバーが編組された既存の一般的な複合バルーンの側断面図。
【図26】バルーンにファイバーがコイル状に巻かれた既存の一般的な複合バルーンの側断面図。
【図27】バルーンにファイバーが巻かれた状態を示す断面図。
【図28】図27を図20の加熱方法で加熱した後の状態を示す断面図。
【図29】バルーンに接着剤が塗布された後にファイバーが巻かれた状態を示す断面図。
【図30】図29の周りをコーティングまたはフィルムで巻いた後の状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0055】
1 バルーン
2 遠位テーパー部
3 略中間部
4 近位テーパー部
5 多層チューブ
6 基材層
7 外層
7a 外層を構成する層の最外層
7b 外層を構成する層
9 ファイバー
9a 編組またはコイル状に巻かれたファイバー
9b 軸方向に平行して配置されたファイバー
10 バルーン層
11 金型
12 加熱媒体
13 接着剤
14 コーティングまたはフィルム
【技術分野】
【0001】
本発明はカテーテル用複合バルーン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管内の疾患は、通常、経皮的腔内血管形成術(PTA)や経皮的冠動脈形成術(PTCA)等の低侵襲的な手技により治療される。これらの血管形成術には、通常、バルーンカテーテルが使用される。バルーンカテーテルは、血管内の狭窄部位を拡張するために、通常、ガイドカテーテルとガイドワイヤーとのセットで使用される。このバルーンカテーテルを用いた血管成形術は、まずガイドカテーテルを患者の血管内へ挿入して目的の位置へ配置させる。次にガイドワイヤーをガイドカテーテル内のルーメンを通して搬送させ、狭窄部位を超えて前進させる。その後バルーンカテーテルをガイドワイヤーに沿って前進させ、バルーンを狭窄部位に位置させた状態で膨張させて狭窄部位を拡張する手順で行ない、そしてバルーンを収縮させて体外に除去する。血管成形術は多くの医療機関において多数の術例があり、この種の症例における手術としては一般的である。しかし、バルーンカテーテルは、動脈狭窄の治療だけに限定されず、血管内への挿入、ならびに種々の体腔への挿入を含む多くの医療的用途に有用である。
【0003】
カテーテルシャフトの遠位部に設けられたバルーンは、屈曲した血管の追随性、高度狭窄部位の通過性、石灰化した狭窄部位の拡張性といった観点から、柔軟性、薄膜化、高強度といった種々の特徴が要求される。特に、石灰化した非常に硬い狭窄部位を拡張するためには非常に高い耐圧強度が必要で、従来はポリエチレンテレフタレート(PET)などの高強度、高弾性率材料を用いたり、バルーン膜厚を厚くしたりすることで非常に高い耐圧強度を確保してきた。しかし、PET製のバルーンは石灰化病変との接触によりピンホール破壊を招き、血管内でバルーンが破壊した場合は血管壁に高い応力が局所的に加わり、血管壁の損傷を招く危険性が極めて高いため好ましくない。また、バルーン膜厚を厚くすることは、耐圧強度が確保される一方で、バルーンの柔軟性や通過性を犠牲にすることになり、その両立が難しい。さらに、バルーンに非常に高い圧力をかけることでバルーンが肥大化し、径方向の伸びが血管の過拡張を引き起こしたり、軸方向の伸びが正常な血管までも拡張させてしまったりする恐れがある。
【0004】
これらの問題を解決すべく、これまでバルーンの薄肉化や高強度化、拡張時の寸法安定化に関して、幾多の方法が開示されている。
【0005】
特許文献1ではポリエチレンテレフタレート(PET)によるバルーンが開示されている。このバルーンは薄肉で高強度を実現し、寸法安定性にも優れている。しかし、先に述べたように柔軟性に欠けること、ピンホール破壊が起こりやすいことがデメリットとして挙げられる。
【0006】
特許文献2や特許文献3には、バルーンの長さは変わらずに予め定めた最大直径まで膨張可能な編成チューブにより補強されているバルーンが開示されている。このバルーンは3層を備え、ウレタン膜の内外層と編成チューブの中間層を液状ウレタンに浸漬することで固着し得られるものである。この方法で得られるバルーンは、寸法安定性には優れているが、ウレタン膜は強度に乏しく、バルーンに非常に高い圧力を加えることが難しいため好ましくない。
【0007】
特許文献4には、3層構造のバルーンで、内外層はゴム管、中間層は筒状の補強布であり、その補強布は接着剤で接着されたバルーンの製造法が開示されている。このバルーンは中間層の補強布が最大形状を規制するため、寸法安定性には優れるが、バルーンがゴム管と補強布の3層構造であること、接着剤で3層を固着していることから、バルーンの肉厚は厚くなり易く柔軟性に欠けるため好ましくない。また、バルーン材質は強度に乏しいウレタン膜やゴム素材である場合が多いため、高強度化を考慮した構造とは言い難い。
【0008】
一方、特許文献5にはバルーン拡張時の寸法安定化と高強度化を両立したバルーンが開示されている。このバルーンは、ポリマーでできたバルーンの上に高強度で弾力性のないファイバーが軸方向に均等に添われ、さらにその上を高強度で弾力性のないファイバーがバルーンの形状に沿って周方向に均等に巻いてあるもので、これらの2層のファイバーは実質的に直交しているバルーンである。このバルーンは非常に高い圧力を加えてもバルーンが容易に変形したり破裂したりすることはなく、またバルーン径方向、軸方向の伸びも抑えることができる。しかし、2層のファイバーとバルーンを固着するために接着剤が使用されており、バルーンが厚くなって嵩張るため、薄肉化が考慮された構造とは言い難い。
【0009】
このほかにも、バルーン拡張時の寸法安定化といった観点で、ファイバーで巻いたバルーンや編組で補強されたバルーンに関する先行技術は存在するものの、バルーンとファイバーを接着剤等で固定しているため、バルーンの肉厚は厚くなり易く、薄肉化を考慮した構造とは言い難い。
【0010】
このように、バルーンの薄肉化、高強度化、拡張時の寸法安定化の全てを満足し、柔軟性や通過性に優れるバルーンは実現できていないが、血管形成術を行う医療の現場では、依然このようなバルーン及びバルーンカテーテルが求められている。
【特許文献1】特開昭63−183070号
【特許文献2】特開昭61−103453号
【特許文献3】特開平6−238004号
【特許文献4】特開平2−174849号
【特許文献5】米国特許第6746425号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、バルーンの高強度化と拡張時の寸法安定性を維持しつつ薄肉で柔軟性や通過性に優れたバルーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決したものであって、次に示す構成を内容とする。すなわち本発明は、バルーン全体が編組またはコイル状に形成されたファイバー層により覆われ、前記バルーンが、基材層と基材層を構成する材質よりも融点が低い樹脂によって構成される外層を有し、前記ファイバー層が、前記基材層よりも融点が低い樹脂によって、バルーンの表面に固着または一体化されていることを特徴とする、カテーテル用複合バルーンに関する。
【0013】
また本発明は、前記ファイバーが、バルーン軸方向に平行して配置されることを特徴とする前記複合バルーンに関する。
【0014】
また本発明は、前記ファイバーが高強度、高弾性率繊維からなることを特徴とする前記複合バルーンに関する。
【0015】
また本発明は、前記ファイバーがマルチフィラメントであることを特徴とする前記複合バルーンに関する。
【0016】
また本発明は、前記ファイバーがモノフィラメントであることを特徴とする前記複合バルーンに関する。
【0017】
また本発明は、基材層と基材層を構成する材質よりも融点が低い樹脂によって構成される外層を有するバルーンの表面に、編組またはコイル状のファイバー層を形成した後、前記基材層よりも融点が低い樹脂を溶融させることにより、前記ファイバー層を、バルーンの表面に固着または一体化することを特徴とする、カテーテル用複合バルーンの製造方法に関する。
【0018】
また本発明は、基材層と基材層を構成する材質よりも融点が低い樹脂によって構成される外層を有するバルーンの表面に、編組またはコイル状のファイバー層を形成した後、バルーンと同形状の金型内に配置し、バルーンに内圧をかけた状態で金型を加熱媒体にて加熱し、一定時間保持することにより、前記ファイバー層をバルーンの表面に固着または一体化することを特徴とするカテーテル用複合バルーンの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ファイバーをバルーンに編組またはコイル状に巻くことで、バルーンを高強度化させる際に障壁となっているバルーン周方向、軸方向の過度な伸長を防止することができる。また本発明によれば、接着剤等を塗布することなくバルーンとファイバーを固着できるため、これまでのファイバー等で複合化されたバルーンよりも膜厚をより薄くすることが可能で、柔軟性や通過性に優れたバルーンを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、多くの異なった形態で具体化することができうるが、ここでは一部の好ましい実施形態を図示して本明細書に記載する。よって、本発明の開示はここに記載されたもののみに限定されるものではない。
【0021】
上記のように、本発明は、バルーン全体が編組またはコイル状に形成されたファイバー層により覆われ、前記バルーンが、基材層と基材層を構成する材質よりも融点が低い樹脂によって構成される外層を有し、前記ファイバー層が、前記基材層よりも融点が低い樹脂によって、バルーンの表面に固着または一体化されていることを特徴とする、カテーテル用複合バルーンに関する。
【0022】
より具体的な構造を以下に述べる。通常、バルーン1は、押出成形によって押出された樹脂チューブを金型に配置し、二軸延伸ブロー成形することによって得られる。本発明で用いる樹脂チューブは、基材層となる材質と少なくとも1つの外層となる材質の多層チューブ1を押出成形することで得られる。多層チューブ5の層構造は、図3に示すように、最内層である基材層6と外層7の2層構造であってもよいが、図4に示すように、外層を最外層7aと7bの2層あるいはそれ以上の層構造とししてもよい。両層の剥離性などを考慮し、基材層と内層の間に、中間層を設けることも可能である。
【0023】
このような多層チューブ5を二軸延伸ブロー成形することによって得られるバルーン1は、金型の形状によって自在に形状付けされる。一般的なバルーン形状としては、図1に示されるような、近位テーパー部4と遠位テーパー部2が円錐状で、略中間部3が円筒状である場合が多いが、この形状に限定されるものではない。なお、バルーン1は必ずしも多層チューブを二軸延伸ブロー成形する必要はなく、その他の製造方法によって製作されても構わない。
【0024】
上記バルーン1の基材層6の材質はバルーンに好適な材料であれば特に制限されるものではないが、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、またはこれらの混合物から選ばれることが望ましい。例えばポリアミドの中でバルーンに好適な材料として、ナイロン12、ナイロン11等が挙げられるが、ブロー成形する際、比較的容易に成形可能であるという観点から、ナイロン12が好適に用いることが出来る。バルーン薄膜化、柔軟性の観点からさらに望ましい例として、ポリアミドエラストマーが挙げられる。ポリアミドエラストマーの中でバルーンに好適な材料として、ポリエーテルエステルアミドエラストマー、およびポリアミドエーテルエラストマーが挙げられるが、降伏強度が高く、バルーンの寸法安定性がより良いという観点から、ポリエーテルエステルアミドエラストマーが望ましい。
【0025】
基材層を構成する材質よりも融点が低い材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂などの比較的融点が低い材質が好適に用いるまた、基材層6の材質よりも融点が低くなければならない。例えば、一般的なポリエチレンの融点はおよそ110℃〜130℃であり、基材層6の材質よりも融点が低い材質として用いることが可能である。また、ポリエチレンには低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンなどがあるが、バルーン基材層6の材質との耐剥離性といった観点では基材層の外側に低密度ポリエチレンからなる外層を設けることが好ましい。また、表面の滑り性や平滑性、摺動性といった観点では外層として高密度ポリエチレンが好ましい。図4に示すような構造の多層チューブにおいては、最外層7aと外層7bの少なくとも一方に基材層6を構成する材質よりも融点が低い材質が用いられていればよい。すなわち、最外層7aが基材層6よりも融点が低い樹脂で構成される場合、外層7bを構成する材質としては、最外層7aさらには基材層6よりも融点が高くてもよい。一方、外層7bに基材層6よりも融点が低い樹脂を用いるには、最外層7aを構成する材質の融点が、外層7bを構成する材質の融点に比し、きわめて高いか基材層6よりも高い場合には、ファイバー層の固定が困難となりうる場合がある。は、基材層6の表面に外層7bとして低密度ポリエチレンの層を設け、さらにその外側に最外層7aとして高密度ポリエチレンの順に積層化することが、耐剥離性、表面の滑り性や平滑性、摺動性等、要求性能の多くを満足させうる点で好ましい。
【0026】
上記バルーン1には、ファイバー9がバルーンの形状に沿って全体を覆うように編組またはコイル状に巻かれることにより、ファイバー層が形成される。バルーンを編組またはコイル状に巻く際は、隙間が生じないほど精巧に形状付けされるのが望ましい。ファイバーの編み方や巻き方については特に限定されず、一般的な編組機で編む方法やコイリングマシンで巻く方法が採用可能である。編組あるいはコイル状であるファイバーのピッチが大きすぎるとバルーン層10が剥き出しになる面積が増えるため、高い圧力に耐え切れず破裂しやすくなる。また、バルーン拡張時の寸法変化も起こりやすくなる。一方、ピッチを小さくするとバルーン層10が剥き出しになる面積が減るため、非常に高い圧力にも耐えることができ、バルーン拡張時の寸法変化も起こり難くなる。しかし、ピッチが小さすぎるとファイバー9が重なり合う部分が生じて嵩張るため、バルーン膜が厚肉になり柔軟性が損なわれる。以上の観点から、ファイバー層を形成するファイバーのピッチは、ファイバー5の太さに応じて適宜最適化した方が好ましい。
【0027】
また、上記バルーン1にファイバー9をバルーン軸方向に平行して配置したあと、ファイバー9にて編組またはコイル状に巻いてもよい。このように配置することでバルーン拡張時の寸法変化を更に抑えることができ、より寸法安定性に優れたバルーンが得られる。
【0028】
バルーン軸方向に平行してファイバー9を配置する場合には、図13のようにバルーン周方向に均等に配置されるのが好ましい。このように配置したバルーン1に非常に高い圧力を加えると、図14のような良好な拡張形状が得られる。しかし、図15のように軸方向に平行して配置されるファイバー9がバルーン1の周方向にばらばらに配置されて編組またはコイル状に巻かれると、バルーンに非常に高い圧力が加えられることで偏拡張が発生し、バルーン形状が保持出来なくなる。より極端な具体例で示すと、図16のように軸方向に平行して配置されるファイバー9がバルーンの周方向の1方向のみに配置された場合、バルーン1に非常に高い圧力が加えられることで、図17のようにバナナ形状のようなU字型となってしまうため好ましくない。
【0029】
本発明で用いるファイバー9に好ましい材料としては、ポリアリレート繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、PBO繊維、炭素繊維などの高強度、高弾性率繊維を用いる。これらの繊維は比較的融点が高く、熱による寸法変動も受けにくい。
【0030】
また、本発明で用いるファイバー9は、図18に示すような単一のフィラメントからなるモノフィラメントであってもよいし、図19に示すような複数のフィラメントから構成されるマルチフィラメントであってもよい。
【0031】
このファイバー9で編組またはコイル状に巻かれた上記バルーン1は、外層の材質が溶融される温度域で加熱される。加熱方法としてはいくつかの方法が挙げられるが、より好ましい方法として図20に示すように、バルーンと同形状の金型11内に上記バルーン1を配置し、金型11を外層の材質が溶融される温度域まで加熱媒体12にて加熱し、バルーン1に内圧をかけた状態で一定時間保持する方法がある。この方法を用いれば、バルーン形状を維持したままの状態で溶融された外層の材質が糊や接着剤と同じ役割を果たし、ファイバー9とバルーン1が固着され、一体化した複合バルーンが得られる。しかし、この加熱方法に限定されるものではない。
【0032】
本発明において、得られた複合バルーンのファイバー9の影響で表面性が悪い場合には、ウレタン樹脂やその他の材料を使用してコーティングし、表面を平滑化しても構わない。コーティング方法としては一般的にはディッピング法が挙げられるが、用途に合った適切な方法を用いることが可能である。
【0033】
本発明の複合バルーンの軸方向に対して平行に切断した場合の詳細断面図を示す。本発明の複合バルーンは、ファイバー9がバルーン1に図21のように編組されたファイバー9aと、同時にバルーン軸方向に平行してファイバー9bが配置されてもよい。また本発明によれば、ファイバー9はバルーン1に図22のようにコイル状に巻かれ、さらに同時にバルーン軸方向に平行して配置されてもよい。このように編組またはコイル状に巻かれたファイバー9aと、同時にバルーン軸方向に平行してファイバー9bが配置されたバルーン1を、バルーンと同形状の金型11内に配置し、金型11を外層の材質が溶融される温度域まで加熱媒体12にて加熱し、バルーン1に内圧をかけた状態で一定時間保持する。その後、金型11から取り出されたバルーンは、図23や図24のように外層7の材質がバルーン1とファイバー9を固着させ、一体化した複合バルーンとなる。
【0034】
一方、既存の複合バルーンの一般的な製造方法は、図25や図26のようにファイバー9がバルーン1に編組またはコイル状に巻かれ、さらに同時にバルーン軸方向に平行して配置される際、ファイバー9とバルーン1を固着するために接着剤13等が塗布される。その後、ファイバー9がほどけるのを防止したり、ファイバー9の隙間からはみ出た接着剤をカバーしたり、表面性を良くする目的で最外層にコーティング14されたり、フィルム14が巻かれたりする。
【0035】
こうして得られた本発明の複合バルーンと既存の複合バルーンを比較すると、本発明の複合バルーンは、接着剤等を使用せずとも直接バルーン1とファイバー9とを固着することが可能で、バルーンの厚みを薄くすることができる。一方、既存の複合バルーンは、接着剤13等を使用しなければバルーン1とファイバー9とを固着することができず、さらには最外層にコーティング14やフィルム14が巻かれるため、バルーンの厚みは必然的に厚くなる。
【0036】
このように、本発明の複合バルーンは、接着剤等を使用しなくともバルーン1とファイバー9を固着することができるためバルーンが薄肉化でき、バルーン1とファイバー9を接着剤13等で固定するような既存の複合バルーンよりも柔軟性や通過性が飛躍的に向上する。また、ファイバー9がバルーン1に編組またはコイル状に巻かれているため、高強度かつ拡張時の寸法安定性が維持される。
【実施例】
【0037】
以下、本発明のバルーンカテーテル用複合バルーンの具体的実施例を説明する。
【0038】
(実施例1)
押出成形によって押出された多層チューブを金型に配置し、二軸延伸ブロー成形により多層バルーンを作製した。使用した多層チューブの層構造は、多層バルーンの基材層となる材質がポリアミドエラストマー(PEBAX7233、アルケマ社)、多層バルーンの外層となる材質が低密度ポリエチレン(PX3080、EQUISTAR社)、高密度ポリエチレン(ノバテックHD HB530、日本ポリエチレン(株))の順に積層化されたものである。多層バルーン作製に用いた金型の寸法は、円筒部の径がφ6.0mm、長さが40mmである。二軸延伸ブロー成形により作製した多層バルーンの円筒部の平均膜厚は42μm、平均破裂強度は16.2atmであった。この多層バルーンにポリアリレート繊維のモノフィラメント(ベクリー、(株)クラレ)をピッチ2.5mmで編組後、バルーンと同形状の金型内に配置し、金型を150℃で加熱し、多層バルーンに10atmの内圧をかけた状態で3分間保持し取り出した。
【0039】
こうして得られた複合バルーンの円筒部の膜厚は75μm、破裂強度は40.1atmであった。また10atm加圧時の複合バルーン円筒部の径は6.01mm、長さは39.2mm、30atm加圧時の複合バルーン円筒部の径は6.01mm、長さは46.0mmであった。
【0040】
(実施例2)
実施例1にて作製した多層バルーンに、ポリアリレート繊維のマルチフィラメント(ベクトランHT28dtex、(株)クラレ)をバルーン軸方向に平行して16本均等に配置し、ピッチ0.2mmでコイル巻きした後、バルーンと同形状の金型内に配置し、金型を150℃で加熱し、バルーンに10atmの内圧をかけた状態で3分間保持し取り出した。
【0041】
こうして得られた複合バルーンの円筒部の膜厚は52μm、破裂強度は43.8atmであった。また10atm加圧時のバルーン円筒部の径は6.00mm、長さは38.2mm、30atm加圧時のバルーン円筒部の径は6.01mm、長さは39.6mmであった。
【0042】
(比較例1)
実施例1、2で得られた複合バルーンと比較するため、ファイバー層が存在せず、破裂強度が40atm程度になるように、円筒部の平均膜厚を調整することにより、破裂強度が40atm程度になるような同寸法のバルーンをポリアミドエラストマー(PEBAX7233、アルケマ社)で作製した。
【0043】
こうして得られたファイバー層が存在しない単層構造のポリアミドエラストマー製バルーンの円筒部の平均膜厚は120μm、平均破裂強度は40.8atmであった。また10atm加圧時のバルーン円筒部の径は5.73mm、長さは39.3mm、30atm加圧時のバルーン円筒部の径は6.47mm、長さは47.2mmであった。
【0044】
(比較例2)
押出成形によって押出された樹脂チューブを金型に配置し、二軸延伸ブロー成形によりバルーンを作製した。バルーンの材質はポリアミドエラストマー(PEBAX7233、アルケマ社)で、作製に用いた金型の寸法は、円筒部の径がφ6.0mm、長さが40mm、作製した単層構造のポリアミドエラストマー製バルーンの円筒部の平均膜厚は24μm、平均破裂強度は16.8atmであった。この単層構造のポリアミドエラストマー製バルーンにウレタン接着剤を塗布した後、ポリアリレート繊維のマルチフィラメント(ベクトランHT28dtex、(株)クラレ)をバルーン軸方向に平行して16本均等に配置し、ピッチ0.2mmでコイル巻きして硬化させた。最後にバルーンと繊維がほどけないようにウレタン溶液に浸漬して表面をコーティングした。
【0045】
こうして得られた複合バルーンの円筒部の膜厚は76μm、破裂強度は43.8atmであった。また10atm加圧時の複合バルーン円筒部の径は6.11mm、長さは38.0mm、30atm加圧時の複合バルーン円筒部の径は6.13mm、長さは39.3mmであった。
【0046】
(実施例3)
実施例1にて作製した多層バルーンに、アラミド繊維のマルチフィラメント(KEVLAR49、東レ・デュポン(株))をバルーン軸方向に平行して16本均等に配置し、ピッチ1.0mmでコイル巻きした後、バルーンと同形状の金型内に配置し、金型を150℃で加熱し、バルーンに10atmの内圧をかけた状態で3分間保持し取り出した。
【0047】
こうして得られた複合バルーンの円筒部の膜厚は77μm、破裂強度は50atm以上(測定機器の都合上、50atm以上は測定不能)であった。また10atm加圧時のバルーン円筒部の径は6.11mm、長さは40.0mm、30atm加圧時のバルーン円筒部の径は6.12mm、長さは41.5mmであった。
【0048】
(比較例3)
比較例2にて作製した単層構造のポリアミドエラストマー製バルーンに、ウレタン接着剤を塗布した後、アラミド繊維のマルチフィラメント(KEVLAR49、東レ・デュポン(株))をバルーン軸方向に平行して16本均等に配置し、ピッチ1.0mmでコイル巻きして硬化させた。最後にバルーンと繊維がほどけないようにウレタン溶液に浸漬して表面をコーティングした。
【0049】
こうして得られた複合バルーンの円筒部の膜厚は106μm、破裂強度は50atm以上(測定機器の都合上、50atm以上は測定不能)であった。また10atm加圧時のバルーン円筒部の径は6.15mm、長さは40.0mm、30atm加圧時のバルーン円筒部の径は6.16mm、長さは41.5mmであった。
【0050】
(実施例4)
実施例1にて作製した多層バルーンに、PBO繊維のマルチフィラメント(ザイロンHM273dtex、東洋紡績(株))をバルーン軸方向に平行して8本均等に配置し、ピッチ1.0mmでコイル巻きした後、バルーンと同形状の金型内に配置し、金型を150℃で加熱し、バルーンに10atmの内圧をかけた状態で3分間保持し取り出した。
【0051】
こうして得られた複合バルーンの円筒部の膜厚は85μm、破裂強度は50atm以上(測定機器の都合上、50atm以上は測定不能)であった。また10atm加圧時のバルーン円筒部の径は6.10mm、長さは40.6mm、30atm加圧時のバルーン円筒部の径は6.12mm、長さは41.8mmであった。
【0052】
(比較例4)
比較例2にて作製した単層構造のポリアミドエラストマー製バルーンにウレタン接着剤を塗布した後、PBO繊維のマルチフィラメント(ザイロンHM273dtex、東洋紡績(株))をバルーン軸方向に平行して16本均等に配置し、ピッチ1.0mmでコイル巻きして硬化させた。最後にバルーンと繊維がほどけないようにウレタン溶液に浸漬して表面をコーティングした。
【0053】
こうして得られた複合バルーンの円筒部の膜厚は115μm、破裂強度は50atm以上(測定機器の都合上、50atm以上は測定不能)であった。また10atm加圧時のバルーン円筒部の径は6.18mm、長さは40.1mm、30atm加圧時のバルーン円筒部の径は6.18mm、長さは41.6mmであった。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明で用いるファイバーを巻く前の一般的なバルーンを示す斜視図。
【図2】本発明で用いるファイバーを巻く前の一般的なバルーンを示す側面図。
【図3】本発明で使用する多層チューブまたはバルーンの断面図。
【図4】本発明で使用する多層チューブまたはバルーンの断面図。
【図5】本発明のバルーンを示す側面図。
【図6】本発明のバルーンを示す側面図。
【図7】図5の一部を拡大した側面図。
【図8】図6の一部を拡大した側面図。
【図9】本発明のバルーンを示す側面図。
【図10】本発明のバルーンを示す側面図。
【図11】図9の一部を拡大した側面図。
【図12】図10の一部を拡大した側面図。
【図13】バルーン軸方向に平行して配置されるファイバーがバルーン周方向に均等に配置された状態を示す断面図。
【図14】バルーン軸方向に平行して配置されるファイバーが図13のように配置された後に編組され、バルーンを高圧拡張したときの形状を示す側面図。
【図15】バルーン軸方向に平行して配置されるファイバーがバルーン周方向にばらばらに配置された状態を示す断面図。
【図16】バルーン軸方向に平行して配置されるファイバーがバルーン周方向の1方向のみに配置された状態を示す断面図。
【図17】バルーン軸方向に平行して配置されるファイバーが図16のように配置された後に編組され、バルーンを高圧拡張したときの形状を示す側面図。
【図18】ファイバーがモノフィラメントであることを示す斜視図。
【図19】ファイバーがマルチフィラメントであることを示す斜視図。
【図20】ファイバーで編組またはコイル状に巻かれたバルーンの加熱方法を示す側断面図。
【図21】ファイバーがバルーンに編組され、さらに同時にバルーン軸方向に平行して配置されていることを示す側断面図。
【図22】ファイバーがバルーンにコイル状に巻かれ、さらに同時にバルーン軸方向に平行して配置されていることを示す側断面図。
【図23】図21のバルーンを図20の加熱方法で加熱した後の側断面図。
【図24】図22のバルーンを図20の加熱方法で加熱した後の側断面図。
【図25】バルーンにファイバーが編組された既存の一般的な複合バルーンの側断面図。
【図26】バルーンにファイバーがコイル状に巻かれた既存の一般的な複合バルーンの側断面図。
【図27】バルーンにファイバーが巻かれた状態を示す断面図。
【図28】図27を図20の加熱方法で加熱した後の状態を示す断面図。
【図29】バルーンに接着剤が塗布された後にファイバーが巻かれた状態を示す断面図。
【図30】図29の周りをコーティングまたはフィルムで巻いた後の状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0055】
1 バルーン
2 遠位テーパー部
3 略中間部
4 近位テーパー部
5 多層チューブ
6 基材層
7 外層
7a 外層を構成する層の最外層
7b 外層を構成する層
9 ファイバー
9a 編組またはコイル状に巻かれたファイバー
9b 軸方向に平行して配置されたファイバー
10 バルーン層
11 金型
12 加熱媒体
13 接着剤
14 コーティングまたはフィルム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルーン全体が編組またはコイル状に形成されたファイバー層により覆われ、前記バルーンが、基材層と基材層を構成する材質よりも融点が低い樹脂によって構成される外層を有し、前記ファイバー層が、前記基材層よりも融点が低い樹脂によって、バルーンの表面に固着または一体化されていることを特徴とする、カテーテル用複合バルーン。
【請求項2】
前記ファイバーが、バルーン軸方向に平行して配置されることを特徴とする請求項1に記載のバルーン。
【請求項3】
前記ファイバーが高強度、高弾性率繊維からなることを特徴とする請求項1に記載のバルーン。
【請求項4】
前記ファイバーがマルチフィラメントであることを特徴とする請求項1に記載のバルーン。
【請求項5】
前記ファイバーがモノフィラメントであることを特徴とする請求項1に記載のバルーン。
【請求項6】
基材層と基材層を構成する材質よりも融点が低い樹脂によって構成される外層を有するバルーンの表面に、編組またはコイル状のファイバー層を形成した後、前記基材層よりも融点が低い樹脂を溶融させることにより、前記ファイバー層を、バルーンの表面に固着または一体化することを特徴とする、請求項1〜5記載のカテーテル用複合バルーンの製造方法。
【請求項7】
基材層と基材層を構成する材質よりも融点が低い樹脂によって構成される外層を有するバルーンの表面に、編組またはコイル状のファイバー層を形成した後、バルーンと同形状の金型内に配置し、バルーンに内圧をかけた状態で金型を加熱媒体にて加熱し、一定時間保持することにより、前記ファイバー層をバルーンの表面に固着または一体化することを特徴とする、請求項6記載のカテーテル用複合バルーンの製造方法。
【請求項1】
バルーン全体が編組またはコイル状に形成されたファイバー層により覆われ、前記バルーンが、基材層と基材層を構成する材質よりも融点が低い樹脂によって構成される外層を有し、前記ファイバー層が、前記基材層よりも融点が低い樹脂によって、バルーンの表面に固着または一体化されていることを特徴とする、カテーテル用複合バルーン。
【請求項2】
前記ファイバーが、バルーン軸方向に平行して配置されることを特徴とする請求項1に記載のバルーン。
【請求項3】
前記ファイバーが高強度、高弾性率繊維からなることを特徴とする請求項1に記載のバルーン。
【請求項4】
前記ファイバーがマルチフィラメントであることを特徴とする請求項1に記載のバルーン。
【請求項5】
前記ファイバーがモノフィラメントであることを特徴とする請求項1に記載のバルーン。
【請求項6】
基材層と基材層を構成する材質よりも融点が低い樹脂によって構成される外層を有するバルーンの表面に、編組またはコイル状のファイバー層を形成した後、前記基材層よりも融点が低い樹脂を溶融させることにより、前記ファイバー層を、バルーンの表面に固着または一体化することを特徴とする、請求項1〜5記載のカテーテル用複合バルーンの製造方法。
【請求項7】
基材層と基材層を構成する材質よりも融点が低い樹脂によって構成される外層を有するバルーンの表面に、編組またはコイル状のファイバー層を形成した後、バルーンと同形状の金型内に配置し、バルーンに内圧をかけた状態で金型を加熱媒体にて加熱し、一定時間保持することにより、前記ファイバー層をバルーンの表面に固着または一体化することを特徴とする、請求項6記載のカテーテル用複合バルーンの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2009−254625(P2009−254625A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107811(P2008−107811)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】
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