説明

カラー撮像装置

【課題】 本発明は、色シェーディング補正の補正効果を十分に引き出すことのできるカラー撮像装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明のカラー撮像装置は、撮影レンズが形成する被写界の像を撮像して保存用の画像を生成する第1のカラー撮像素子(16)と、前記第1のカラー撮像素子とは別に設けられ、前記被写界の色分布を検出する第2のカラー撮像素子(22)と、前記第2のカラー撮像素子が検出した色分布に基づき前記被写界を照明する照明光の種類を判定する判定手段(29)と、前記第1のカラー撮像素子が生成した画像に施すべき色シェーディング補正の補正量を前記判定手段が判定した種類に応じて設定する設定手段(29)とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、カラー撮像素子の色シェーディングは、撮影レンズのF値などにより変化するが、被写界を照明する照明光の色温度によっても変化することが経験的に知られている。これに対処するため、カラー撮像素子が撮像前に生成した画像(スルー画像)に基づき照明光の色温度を判定し、その色温度に応じて色シェーディング補正の補正量を調節する電子カメラが提案されている(特許文献1等を参照)。
【特許文献1】特開2005−278004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の補正方法では、電子カメラの使用状況に依り補正効果が十分に現れない可能性のあることが判明した。
【0004】
そこで本発明は、色シェーディング補正の補正効果を十分に引き出すことのできるカラー撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のカラー撮像装置は、撮影レンズが形成する被写界の像を撮像して保存用の画像を生成する第1のカラー撮像素子と、前記第1のカラー撮像素子とは別に設けられ、前記被写界の色分布を検出する第2のカラー撮像素子と、前記第2のカラー撮像素子が検出した色分布に基づき前記被写界を照明する照明光の種類を判定する判定手段と、前記第1のカラー撮像素子が生成した画像に施すべき色シェーディング補正の補正量を前記判定手段が判定した種類に応じて設定する設定手段とを備えたことを特徴とする。
【0006】
なお、前記設定手段は、前記判定手段が判定した種類と、前記撮影レンズのF値と、前記撮影レンズの開口絞りの位置とに基づき前記補正量の設定を行ってもよい。
【0007】
また、本発明の何れかのカラー撮像装置は、前記設定手段が設定した補正量で前記第1のカラー撮像素子が生成した画像へ色シェーディング補正を施す補正手段を更に備えてもよい。
【0008】
また、本発明の何れかのカラー撮像装置は、前記設定手段が設定した補正量を前記第1のカラー撮像素子が生成した画像と共に保存する記録手段を更に備えてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、色シェーディング補正の補正効果を十分に引き出すことのできるカラー撮像装置が実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態は、電子カメラの実施形態である。
【0011】
先ず、電子カメラの撮影機構を説明する。図1は、電子カメラの光学系の構成を示す模式図である。図1に示すとおり電子カメラは、カメラ本体11と、撮影レンズ12を収容したレンズユニット13とを有する。レンズユニット13は、不図示のマウントを介してカメラ本体11に交換可能に装着される。その状態でレンズユニット13はカメラ本体11に対し電気的に接続される。
【0012】
カメラ本体11には、メインミラー14と、メカニカルシャッタ15と、カラー撮像素子16と、ファインダ光学系(17〜20)とが配置される。メインミラー14、メカニカルシャッタ15およびカラー撮像素子16は、撮影レンズ12の光軸に沿って配置され、ファインダ光学系(17〜20)はカメラ本体11の上部領域に配置される。
【0013】
メインミラー14は不図示の回動軸の周りを回動し、それによって観察状態と退避状態との間で切り替わる。観察状態のメインミラー14は、メカニカルシャッタ15およびカラー撮像素子16の前方で傾斜配置される。この観察状態のメインミラー14は、撮影レンズ12が捉えた光束を上方へ反射してファインダ光学系(17〜20)へ導く。なお、メインミラー14の中央はハーフミラーとなっており、このときに撮影レンズ12が捉えた光束の一部はそのハーフミラー及びサブミラー(不図示)を介して焦点検出部(不図示)へ導かれる。
【0014】
一方、退避状態のメインミラー14は、上方に跳ね上げられて撮影レンズ12の光路から外れる。メインミラー14が退避状態にあるときには撮影レンズ12が捉えた光束の全部がメカニカルシャッタ15へ導かれる。
【0015】
ファインダ光学系(17〜20)は、焦点板17と、コンデンサレンズ18と、ペンタプリズム19と、接眼レンズ20とを有している。また、ペンタプリズム19の近傍には再結像レンズ21および分割測光センサ22なども配置されている。
【0016】
焦点板17は、退避状態にあるメインミラー14の上方に位置している。この焦点板17で結像した光束はコンデンサレンズ18を介してペンタプリズム19の下面へ入射する。ペンタプリズム19の下面へ入射した光束は、ペンタプリズム19の内部へ進入してペンタプリズム19の内面を反射した後、ペンタプリズム19の下面と垂直な面(射出面)からペンタプリズム19の外部へ射出し、接眼レンズ20へ向かう。
【0017】
なお、ペンタプリズム19の下面へ入射した光束の一部は、ペンタプリズム19の内部へ進入してペンタプリズム19の内面を反射した後、前記射出面からペンタプリズム19の外部へ射出し、再結像レンズ21を介して分割測光センサ22へ向かう。
【0018】
次に、電子カメラの回路構成を説明する。図2は、電子カメラの回路構成を示すブロック図である。図2に示すとおりカメラ本体11には、カラー撮像素子16と、AFE16aと、タイミングジェネレータ(TG)16bと、分割測光センサ22と、A/D変換回路22aと、画像処理回路23と、バッファメモリ(MEM)24と、記録インタフェース(記録I/F)25と、操作スイッチ(SW)26と、CPU29と、RAM28と、ROM27と、バス31とが備えられる。このうち画像処理回路23、バッファメモリ24、記録インタフェース25、CPU29、RAM28、ROM27は、バス31を介して互いに接続されている。また、操作スイッチ26は、CPU29に接続されている。
【0019】
カラー撮像素子16は、保存用の画像(本画像)を生成するために備えられたものである。カラー撮像素子16は、その撮像面に形成された被写界像を光電変換することにより、本画像の画像信号(アナログ信号)を生成する。
【0020】
なお、カラー撮像素子16の撮像面には、被写界像をカラー検出するために、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3種類のカラーフィルタが例えばベイヤ配列で配置されている。これによって、カラー撮像素子16の撮像面には、R画素とG画素とB画素との3種類の画素が配置され、本画像の画像信号はR信号、G信号、B信号の3種類の信号から構成されることになる。なお、カラー撮像素子16の撮像面の全体には、光学ローパスフィルタや赤外光カットフィルタなどが設けられている。
【0021】
AFE16aは、カラー撮像素子16が生成する画像信号に対して信号処理を施すアナログフロントエンド回路である。このAFE16aは、画像信号の相関二重サンプリングや、画像信号のゲイン調整や、画像信号のA/D変換などを行う。このAFE16aが出力する画像信号(ディジタル信号)は、本画像の画像データとして画像処理回路23へ入力される。
【0022】
タイミングジェネレータ16bは、CPU29からの指示に従いカラー撮像素子16及びAFE16aの各々へ向けて駆動信号を送出し、それによって両者の駆動タイミングを制御する。
【0023】
分割測光センサ22は、モニタ用の画像(モニタ画像)を生成するために備えられたカラー撮像素子である。分割測光センサ22の撮像面には、カラー撮像素子16の撮像面に形成されるのと同じ被写界像が形成される。分割測光センサ22は、その被写界像を光電変換することによりモニタ画像の画像信号(アナログ信号)を生成する。
【0024】
なお、分割測光センサ22の撮像面には、被写界像をカラー検出するためにカラーフィルタが配置されている。よって、モニタ画像の画像信号も、R信号、G信号、B信号の3種類の信号から構成される。この分割測光センサ22が出力する画像信号は、A/D変換回路22aを介してCPU29へ入力される。
【0025】
画像処理回路23は、AFE16aが出力する本画像の画像データに対して各種の画像処理を施す。画像処理回路23には、画像データへ色シェーディング補正を施す色シェーディング補正部23a、画像データへホワイトバランス補正を施すホワイトバランス補正部(WB)23b、画像データへ色補間処理を施す色補間処理部23c、画像データへ色変換処理などのその他の処理を施す処理部(その他の処理部)23dが配置される。これらの処理部に色シェーディング補正、ホワイトバランス補正、色補間処理、その他の処理は、パイプライン処理であり、この順に画像データへ施される。
【0026】
なお、色シェーディング補正は、画像データのR信号、B信号へゲインgr,gbをそれぞれ乗算するものである。但し、色シェーディング量は画像上の位置(主に像高)によって異なるので、ゲインgr,gbの値は画像上のブロックによって異なる。ここで、画像上のブロックとは、画像を分割してできるできる複数のブロックのことであり、例えば、画像を縦25個、横30個に分割してできる750個のブロックである。以下、i番目のブロックを「第iブロック」と称し、第iブロック内の各画素のR信号に乗算されるゲインgrを「gri」とおき、第iブロック内の各画素のB信号に乗算されるゲインgbを「gbi」とおく。なお、この色シェーディング補正で使用される全てのゲイン(ゲイン群)gr1,…,gr750,gb1,…,gb750は、CPU29によって画像毎に算出・設定される。この算出方法の詳細については後述する。
【0027】
また、ホワイトバランス補正は、画像データのR信号、B信号へゲインGr,Gbをそれぞれ乗算するものである。ゲインGr,Gbの値は画像上の全てのブロックで共通である。なお、このホワイトバランス補正で使用されるゲインCr,Gbも、CPU29によって画像毎に算出・設定される。この算出方法の詳細については後述する。
【0028】
バッファメモリ24は、画像処理回路23やCPU29による個々の処理の速度差を補償するために、本画像の画像データを一時的に記憶するメモリである。
【0029】
記録インタフェース25には、記憶媒体32を接続するためのコネクタが形成されている。記録インタフェース25は、そのコネクタに接続された記憶媒体32にアクセスし、本画像の画像データの書き込みや読み込みを行う。なお、記憶媒体32はハードディスクや、半導体メモリを内蔵したメモリカードなどで構成される。
【0030】
操作スイッチ26は、レリーズボタン、コマンドダイヤル、マルチセレクタなどであり、ユーザによる操作内容に応じてCPU29へ信号を与えるものである。例えばユーザは、レリーズボタンを全押しすることにより撮影の指示をCPU29へ与えることができる。また、ユーザは、マルチセレクタを操作することにより記録モードの切り替え指示をCPU29に与えることができる。
【0031】
なお、記録モードには通常記録モードとRAW記録モードとがあり、通常記録モードはCPU29が画像処理後の本画像の画像データを記憶媒体32に保存する記録モードであり、RAW記録モードは、CPU29が画像処理前の本画像の画像データ(RAWデータ)を記憶媒体32に保存する記録モードである。
【0032】
CPU29は、電子カメラの統括的な制御を行うプロセッサである。CPU29は、ROM27に予め格納されたシーケンスプログラムをRAM28へ読み出し、そのプログラムを実行することにより、各処理のパラメータ(前述したゲインなど)を算出したり、電子カメラの各部を制御したりする。
【0033】
なお、CPU29がレンズユニット13のレンズCPU(不図示)に対し撮影レンズ12のF値を指定すると、レンズCPUは、撮影レンズ12の開口絞り(不図示)の径を調節する。これによって撮影レンズ12のF値が設定される。
【0034】
また、CPU29が焦点検出部(不図示)において生成されたデフォーカス信号をレンズユニット13のレンズCPUに与えると、レンズCPUは、そのデフォーカス信号がゼロとなるように撮影レンズ12の撮影距離を変化させる。これによって撮影レンズ12の自動焦点調節(AF)が行われる。
【0035】
また、CPU29は、モニタ画像の画像信号から輝度評価値を抽出し、その輝度評価値と予め用意されたプログラム線図とに基づきメカニカルシャッタ15の開放時間、カラー撮像素子16の電荷蓄積時間、撮影レンズ12のF値、ストロボ発光のオン/オフなどの設定が行われる。
【0036】
また、CPU29は、レンズユニット13のレンズCPU(不図示)からレンズ情報を取り込むことができる。そのレンズ情報には、撮影レンズ12の焦点距離、被写体距離、絞り値(F値)、射出瞳位置(EPD)などの情報が含まれる。因みに、CPU29によるレンズ情報の取り込みは、撮影レンズ12の状態が変化する毎に、或いは定期的に行われるので、CPU29は常に最新のレンズ情報を認識することができる。
【0037】
また、CPU29は、プログラムの実行によって、被写界を照明する照明光の種類(照明種類)を判定することもできる。この判定には、例えば教師有り学習によって予め算出された判定基準が使用される。CPU29は、モニタ画像の画像信号から特徴量を抽出し、その特徴量と判別基準とを比較することにより照明種類を判定する。
【0038】
ROM27には、前述したプログラムの一部として、CPU29が照明種類を判定するのに必要な情報や、色シェーディング補正のゲイン群gr1,…,gr750,gb1,…,gb750を算出するのに必要な情報なども予め格納される。その情報には、図3(a)に示すとおりゲイン群gr1,…,gr750を算出するためのルックアップテーブルTRと、図3(b)に示すとおりゲイン群gb1,…,gb750を算出するためのルックアップテーブルTBとがある。以下、これらのルックアップテーブルTR,TBを詳しく説明する。
【0039】
(ルックアップテーブルTR
ルックアップテーブルTRの内容は、カラー撮像素子16のR画素に関する色シェーディング(=G画素の感度を基準としたR画素の相対感度の撮像面上の分布)によって予め決められる。
【0040】
通常、R画素に関する色シェーディングは、画像上の位置に依存する(主に像高に依存する)が、撮影レンズ12のF値と、撮影レンズ12のEPDとの組み合わせによっても変化する。さらには、図4(a)に示すとおり照明種類によっても変化する。
【0041】
図4(a)は、F値及びEPDが同じであって照明種類のみが異なるときのR画素に関する色シェーディングを説明する概念図である。図4(a)に示すとおり、R画素に関する色シェーディングは、照明種類が蛍光灯、水銀ランプ、ナトリウムランプなどである場合には少ししか発生しないが、照明種類が人工太陽光、ハロゲンランプ、ストロボ光などである場合には多く発生する。
【0042】
その理由は、蛍光灯、水銀ランプ、ナトリウムランプなどの光源のシーンは赤外光が少ないシーンである可能性が高いのに対し、人工太陽光、ハロゲンランプ、ストロボ光などの光源のシーンは赤外光が多いシーンである可能性が高いことと、R画素に関する色シェーディングは入射する赤外光の絶対量が多いときほど大きくなることにあると考えられる。
【0043】
因みに、蛍光灯の色温度は約4500K、水銀ランプの色温度は約4200K、ナトリウムランプの色温度は約2100K、人工太陽光の色温度は約5000〜約6000K、ハロゲンランプの色温度は約4200K、ストロボ光の色温度は約5000〜約15000Kであるので、ハロゲンランプと水銀ランプとは色温度が同程度とみなせる。しかし、図4(a)に明らかなとおり、ハロゲンランプと水銀ランプとでは、R画素に関する色シェーディング量は互いに異なる。したがって、本実施形態では、R画素に関する色シェーディング量は、照明光の色温度ではなく種類(照明種類)に依存するとみなす。
【0044】
そこで本実施形態では、ルックアップテーブルTRを、F値及びEPD及び照明種類の様々な組み合わせと、それら組み合わせの各々に適したゲイン群gr1,…,gr750とを互いに対応付けて格納した三次元ルックアップテーブルとする。図3(a)に示すとおり、このルックアップテーブルTRに対しF値及びEPD及び照明種類が入力されると、そのF値及びEPD及び照明種類の組み合わせに適したゲイン群gr1,…,gr750がルックアップテーブルTRから出力される。
【0045】
(ルックアップテーブルTB
ルックアップテーブルTBの内容は、カラー撮像素子16のB画素に関する色シェーディング(=G画素の感度を基準としたB画素の相対感度の撮像面上の分布)によって予め決められる。
【0046】
通常、B画素に関する色シェーディングは、画像上の位置に依存する(主に像高い依存する)が、撮影レンズ12のF値と、撮影レンズ12のEPDとの組み合わせによっても変化する。但し、図4(b)に示すとおりB画素に関する色シェーディングは照明種類によって殆ど変化しない。
【0047】
図4(b)は、F値及びEPDが同じであって照明種類のみが異なるときのB画素に関する色シェーディングを説明する概念図である。図4(b)に示すとおり、B画素に関する色シェーディングは、照明種類に依らず一定である。その理由は、B画素に関する色シェーディングは、入射する赤外光の絶対量によって殆ど変化しないことにある。
【0048】
そこで本実施形態では、ルックアップテーブルTBを、F値及びEPDの様々な組み合わせと、それら組み合わせの各々に適したゲイン群gB1,…,gB750とを互いに対応付けて格納した二次元ルックアップテーブルとする。図3(b)に示すとおり、このルックアップテーブルTBに対しF値及びEPDが入力されると、そのF値及びEPDの組み合わせに適したゲイン群gB1,…,gB750がルックアップテーブルTBから出力される。
【0049】
次に、撮影に関するCPU29の動作の流れを説明する。図5は、撮影に関するCPU29の動作フローチャートである。ここでは、電子カメラのオートホワイトバランス機能がオンされ、電子カメラの記録モードが通常記録モードに設定されていると仮定する。また、フローチャートの開始時点では、メインミラー14は観察状態の位置にあり、ユーザが被写界を接眼レンズ20から観察できるものとする。
【0050】
ステップS101:CPU29は、レリーズボタンが半押しされたか否かを判別し、レリーズボタンが半押しされた場合はステップS102に移行し、レリーズボタンが半押しされていない場合はステップS101を繰り返す。
【0051】
ステップS102:CPU29は、分割測光センサ22の連続駆動を開始する。これによってモニタ画像の画像信号が分割測光センサ22から出力され始める。
【0052】
ステップS103:CPU29は、焦点検出部(不図示)が生成するデフォーカス信号をレンズCPUへ与えることにより撮影レンズ12の自動焦点調節を行うと共に、モニタ画像から抽出される輝度評価値に基づき自動露出制御を行う。これによって撮影条件(メカニカルシャッタ15の開放時間、カラー撮像素子16の電荷蓄積時間、撮影レンズ12のF値、撮影レンズ12の撮影距離、撮影レンズ12のEPD、ストロボ発光の有無など)が設定される。
【0053】
ステップS104:CPU29は、モニタ画像から特徴量を抽出し、その特徴量と前述した判別基準とを比較することにより、現在の被写界を照らしている照明種類を判定する。
【0054】
ステップS105:CPU29は、レリーズボタンが全押しされたか否かを判別する。レリーズボタンが全押しされていない場合はS106へ移行し、レリーズボタンが全押しされた場合はS107へ移行する。
【0055】
ステップS106:CPU29は、レリーズボタンの半押しが解除されたか否かを判別し、レリーズボタンの半押しが解除された場合には、分割測光センサ22の動作を停止させてからステップS101に戻り、レリーズボタンの半押しが継続されている場合は、ステップS105に戻る。
【0056】
ステップS107:CPU29は、ステップS103で設定された撮影条件の下で撮影(本画像の画像データの取得)を行う。すなわちCPU29は、メインミラー14を退避状態とし、メカニカルシャッタ15及びタイミングジェネレータ16bを駆動することにより、本画像の画像データを取得する。このときCPU29は、必要に応じて不図示のストロボ装置を駆動してストロボ光を発光する。なお、この撮影で取得された本画像のデータは、AFE16aを通過してからバッファメモリ24にバッファリングされる。撮影が終了すると、メインミラー14は再び観察状態に戻される。
【0057】
ステップS108:CPU29は、ステップS104で判定した照明種類と、最新のF値と、最新のEPDとを図3(a)に示したルックアップテーブルTRへ入力することによりゲイン群gr1,…,gr750を取得する。但し、ステップS107における撮影がストロボ撮影であった場合は、ストロボ光の影響が被写界に対して支配的であるとみなし、CPU29は、ルックアップテーブルTRへ入力する照明種類を、ステップS104で判定した照明種類に拘わらず「ストロボ光」とする。
【0058】
また、CPU29は、最新のF値と、最新のEPDとを図3(b)に示したルックアップテーブルTBへ入力することによりゲイン群gb1,…,gb750を取得する。そして、CPU29は、取得したゲイン群gr1,・・・,gr750,gb1,…,gb750を、色シェーディング補正部23aへ設定する。
【0059】
ステップS109:CPU29は、ステップS104で判定した照明種類に基づき照明光の相関色温度を算出し、本画像中でその相関色温度を持った領域を無彩色化するのに必要なゲインGr,Gbを算出し、それをホワイトバランス補正部23bに設定する。なお、相関色温度の算出は、例えば次の(1)〜(3)の手順で行われる。
【0060】
(1)CPU29は、本画像を複数のブロックに分割し、個々のブロックの色度(ブロック内の平均色度)を算出し、その色度に応じて個々のブロックを色度座標上へ写像する。
【0061】
(2)CPU29は、それらブロックの中から、現在の照明種類に相当する色度範囲へと写像されたブロック群を見出し、それらブロック群の色度座標上の重心位置を算出する。なお、その算出では、輝度の高いブロックの個数を多めに計上してもよい。
【0062】
(3)CPU29は、算出した重心位置の色度を相関色温度に換算し、それを照明光の相関色温度とする。
【0063】
ステップS120:CPU29は、画像処理回路23に対し画像処理の指示を与える。このとき画像処理回路23は、本画像の画像データに対し色シェーディング補正、ホワイトバランス補正、色補間処理、及びその他の処理を施す。その際、色シェーディング補正ではステップS108で設定されたゲインが使用され、ホワイトバランス補正ではステップS109で設定されたゲインが使用される。そして、画像処理後の本画像の画像データは、CPU29によって圧縮処理され、記憶媒体32に保存される。
【0064】
以上、本実施形態の電子カメラは、本画像を生成するカラー撮像素子16とは別に、モニタ画像を生成する分割測光センサ22を備え、そのモニタ画像に基づき照明種類を判定する。そして、本実施形態の電子カメラは、その照明種類に応じて色シェーディング補正のゲインを算出する。
【0065】
よって、本実施形態の電子カメラは、色シェーディング補正のゲインを算出するためにカラー撮像素子16を駆動する必要は無い。したがって、カラー撮像素子16が温度上昇する可能性は低く抑えられ、本画像の劣化は生じにくい。したがって、本画像に対する色シェーディング補正の効果は高い。
【0066】
また、本実施形態の電子カメラは、R画素に関する色シェーディング補正のゲインを、照明光の色温度に応じて算出する代わりに、照明種類に応じて算出する。前述したとおり、R画素に関する色シェーディングは、照明光の色温度に依存するのではなく、照明種類に依存するので、この算出方法によれば、色シェーディング補正のゲインを高精度に算出し、色シェーディング補正の効果を高めることができる。
【0067】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態を説明する。本実施形態も、電子カメラの実施形態である。ここでは、第1実施形態との相違点のみ説明する。相違点は、ROM27に格納されるルックアップテーブルと、ステップS108における処理とにある。
【0068】
本実施形態のROM27には、図6(a),(b),(c)に示すとおり、二次元のルックアップテーブルTRと、一次元のルックアップテーブルTCと、二次元のルックアップテーブルTBとが予め格納される。
【0069】
図6(a)に示すとおり、ルックアップテーブルTRは、F値及びEPDの様々な組み合わせと、それら組み合わせの各々に適したゲイン群gr1,…,gr750とを互いに対応づけて格納した二次元ルックアップテーブルである。但し、これらのゲイン群gr1,…,gr750は、何れも標準照明(例えば「蛍光灯」)に適したゲイン群である。
【0070】
図6(b)に示すとおり、ルックアップテーブルTCは、様々な照明種類と、それら照明種類の各々に適した調整データ群Δgr1,…,Δgr750とを互いに対応づけて格納した一次元ルックアップテーブルである。この調整データ群Δgr1,…,Δgr750は、標準照明に適したゲイン群gr1,…,gr750を、個々の照明種類に適したゲイン群gr1’,…,gr750’に調整するためのデータ群である。
【0071】
なお、ここではgri’=gri−Δgriの関係がすべてのiに関して満たされるものとする。よって、「蛍光灯」に対応する調整データ群Δgr1,…,Δgr750はゼロとなる。また、「人口太陽光」や「ハロゲンランプ」や「ストロボ光」などに対応する調整データ群Δgr1,…,Δgr750は、「水銀ランプ」、「ナトリウムランプ」などに対応する調整データ群Δgr1,…,Δgr750よりも大きくなる。
【0072】
図6(c)に示すとおり、ルックアップテーブルTBは、F値及びEPDの様々な組み合わせと、それら組み合わせの各々に適したゲイン群gb1,…,gb750とを互いに対応づけて格納した二次元ルックアップテーブルである。
【0073】
そして、本実施形態のCPU29は、ステップS108において次の(1)〜(5)のとおり動作する。
【0074】
(1)CPU29は、最新のF値と、最新のEPDとを図6(a)に示したルックアップテーブルTRへ入力することによりゲイン群gr1,…,gr750を取得する。
【0075】
(2)CPU29は、ステップS104で判定した照明種類を図6(b)に示したルックアップテーブルTCへ入力することにより調整データ群Δgr1,…,Δgr750を取得する。但し、ステップS107における撮影がストロボ撮影であった場合、CPU29は、ルックアップテーブルTRへ入力する照明種類を、ステップS104で判定した照明種類に拘わらず「ストロボ光」とする。
【0076】
(3)CPU29は、ゲイン群gr1,…,gr750の各々から調整データ群Δgr1,…,Δgr750を差し引くことにより、現在の照明種類に適したゲイン群gr1’,…,gr750’を取得する。
【0077】
(4)CPU29は、最新のF値と、最新のEPDとを図6(c)に示したルックアップテーブルTBへ入力することによりゲイン群gb1,…,gb750を取得する。
【0078】
(5)CPU29は、取得したゲイン群gr1’,・・・,gr750’,gb1,…,gb750を、色シェーディング補正部23aへ設定する。
【0079】
つまり、本実施形態の電子カメラは、三次元のルックアップテーブルを使用する代わりに、二次元のルックアップテーブルと一次元のルックアップテーブルとを組み合わせて使用する。したがって、ROM27に予め格納すべき情報の情報量は、第1実施形態のそれよりも抑えられる。
【0080】
[その他]
なお、第2実施形態では、R信号に関する2つのルックアップテーブルを、標準照明に適したゲイン群を算出するための二次元ルックアップテーブル(図6(a))と、そのゲイン群を現在の照明種類に適したゲイン群に調整するための一次元ルックアップテーブル(図6(b))との組み合わせとしたが、次の(A),(B)の何れかの組み合わせに代えてもよい。
【0081】
(A)標準F値に適したゲイン群を算出するための二次元ルックアップテーブルと、そのゲイン群を現在のF値に適したゲイン群に調整するための一次元ルックアップテーブルとの組み合わせ。なお、その場合、二次元ルックアップテーブルに入力される情報は、EPD及び照明種類であり、一次元ルックアップテーブルに入力される情報は、F値である。
【0082】
(B)標準EPDに適したゲイン群を算出するための二次元ルックアップテーブルと、そのゲイン群を現在のEPDに適したゲイン群に調整するための一次元ルックアップテーブルとの組み合わせ。なお、その場合、二次元ルックアップテーブルに入力される情報は、F値及び照明種類であり、一次元ルックアップテーブルに入力される情報は、EPDである。
【0083】
また、上記した何れかの実施形態では、ルックアップテーブルに格納される情報を、全てのブロックに関する情報としたが、一部のブロックに関する情報のみに制限してルックアップテーブルの情報量を低減してもよい。色シェーディング補正の補正量は主に像高に依存するので、画像を上下左右に4分割してできる1つの領域内の各ブロックに関する情報のみに制限してもよい。その場合、CPU29は、それらブロックに関する情報から他のブロックの情報を演算によって取得すればよい。但し、撮影後の画像処理を高速化するためには、前記した何れかの実施形態のように全ブロックに関する情報をルックアップテーブルに格納することが望ましい。
【0084】
また、上記した何れかの実施形態では、照明種類の判定結果がレリーズボタンの半押し期間中に保持されたが、照明種類の判定がレリーズボタンの半押し期間に繰り返し行われ、判定結果がその都度更新されることとしてもよい。
【0085】
また、上記した何れかの実施形態では、電子カメラの記録モードが通常記録モードである場合を想定したので、画像処理後の画像データを保存したが、RAW記録モードであった場合、CPU29は、判定した照明種類のデータを付帯情報として本画像のRAWデータと共に記憶媒体32へ記録すればよい。その後、RAWデータの現像処理を行う際に、CPU29が記憶媒体32からRAWデータを読み込み、上述したステップS108以降を実行すればよい。
【0086】
また、上記した何れかの実施形態では、色シェーディング補正の補正量の算出処理を電子カメラが実行したが、それら処理の一部又は全部をコンピュータに実行させてもよい。その場合、処理に必要なプログラムがコンピュータへインストールされる。そのインストールは、CD−ROMなどの記憶媒体やインターネットなどを介して行われる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】電子カメラの構成を示す模式図である。
【図2】電子カメラの回路構成を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態で使用されるルックアップテーブルを説明する図である。
【図4】照明種類と色シェーディングとの関係を説明する概念図である。
【図5】撮影に関するCPUの動作フローチャートである。
【図6】第2実施形態で使用されるルックアップテーブルを説明する図である。
【符号の説明】
【0088】
11…カメラ本体,16…カラー撮像素子,16a…AFE,22…分割測光センサ,22a…A/D変換回路,23…画像処理回路,24…バッファメモリ,25…記録インタフェース,26…操作スイッチ,29…CPU,28…RAM,27…ROM,31…バス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影レンズが形成する被写界の像を撮像して保存用の画像を生成する第1のカラー撮像素子と、
前記第1のカラー撮像素子とは別に設けられ、前記被写界の色分布を検出する第2のカラー撮像素子と、
前記第2のカラー撮像素子が検出した色分布に基づき前記被写界を照明する照明光の種類を判定する判定手段と、
前記第1のカラー撮像素子が生成した画像に施すべき色シェーディング補正の補正量を前記判定手段が判定した種類に応じて設定する設定手段と
を備えたことを特徴とするカラー撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載のカラー撮像装置において、
前記設定手段は、
前記判定手段が判定した種類と、前記撮影レンズのF値と、前記撮影レンズの開口絞りの位置とに基づき前記補正量の設定を行う
ことを特徴とするカラー撮像装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のカラー撮像装置において、
前記設定手段が設定した補正量で前記第1のカラー撮像素子が生成した画像へ色シェーディング補正を施す補正手段を更に備えた
ことを特徴とするカラー撮像装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のカラー撮像装置において、
前記設定手段が設定した補正量を前記第1のカラー撮像素子が生成した画像と共に保存する記録手段を更に備えた
ことを特徴とするカラー撮像装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−88800(P2009−88800A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253760(P2007−253760)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】