カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤誘導体
改善された医薬活性および高められた忍容性を有するドルゾラミドおよびブリンゾラミドのニトロ誘導体が記載されている。これらは、緑内障、高眼圧症、加齢性黄斑変性、糖尿病性黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、高血圧性網膜症および網膜血管症の治療に適用され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、新規なカルボニックアンヒドラーゼ(carbonic anhydrase)阻害剤誘導体に関する。より詳細には、本発明はドルゾラミド(dorzolamide)および ブリンゾラミド(brinzolamide)のニトロオキシ誘導体、それらを含む医薬組成物、ならびに緑内障、高眼圧症、加齢性黄斑変性、糖尿病性黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、高血圧性網膜症および網膜血管症の治療用医薬としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
緑内障は眼神経の障害であり、しばしば眼内圧の上昇(IOP)を伴い、進行性、不可逆性の失明へと進む。
米国でおよそ300万人の人々、世界では1400万人の人々が緑内障を患っており、これは世界で盲目の3番目の原因となっている。
緑内障は、眼中の液体(水性液)の産生および排出の不均衡により眼圧が不健康なレベルまで上昇したときに起こる。
【0003】
β−アドレナリン作用性アンタゴニスト、α−アドレナリン作用性アゴニスト、コリン作用性物質、プロスタグランジン類似物またはカルボニックアンヒドラーゼ阻害剤のような 、眼中の水性液の産生を低下させるか、または該液体の排出を増加させる薬物を投与することにより、上昇したIOP を少なくとも部分的に制御できることが知られている。
【0004】
緑内障の治療に一般に用いられている医薬は、いくつかの副作用を伴っている。
局所用のβ−アドレナリン作用性アンタゴニストは、重篤な肺の副作用、うつ病、倦怠感、錯乱、不能症、脱毛症、不毛症および徐脈を示す。
局所用のα−アドレナリン作用性アゴニストは、かなり高い出現率でアレルギー性または毒性の反応を有しており、局所用のコリン作用性物質(縮瞳薬)は視覚の副作用を起すことがある。
【0005】
緑内障の治療に用いられる局所用のプロスタグランジン類似物(ビマトプロスト、ラタノプロスト、トラボプラストおよびウノプロストン)は、虹彩の色素沈着の増加、眼性過敏症、結膜の充血、虹彩炎、ブドウ膜炎および黄斑エデマ(oedema)のような眼の副作用を起こすことがある(Martindale, 33版、1445頁)。
【0006】
最後に、経口のカルボニックアンヒドラーゼ阻害剤に伴う副作用は、倦怠感、食欲不振、うつ病、感覚異常および血清電解質異常を含む(The Merck Manual of Diagnosis and Therapy、17版、M. H. Beers および R. Berkow編Sec. 8, Ch. 100)。
【0007】
WO 2006/052899は、新規なニトロソ化および/またはニトロシル化された化合物またはその医薬的に許容される塩、ならびにニトロソ化および/またはニトロシル化された少なくとも一つの化合物と、任意にN-オキサイドドナーおよび/またはα−アドレナリン作用性レセプターアゴニスト、ACE インヒビター、抗菌剤、β−アドレナリン作用性アンタゴニスト、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤、非ステロイド性抗炎症薬、プロスタグランジン、COX-2阻害剤およびステロイドからなる群から選択される少なくとも一つの治療薬とを含む、眼の障害を治療する新規な組成物を開示している。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、親化合物に伴う副作用を除くか、少なくとも低減させるだけでなく、医薬としての活性を改善し得る、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤の新規な誘導体を提供することである。
【0009】
驚くべきことに、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤のニトロオキシ誘導体が、元のカルボニックアンヒドラーゼに比べて、より広範な薬理活性、高められた忍容性、および持続性の眼圧低下作用のいずれの点においても、著しく改善された総体的なプロフィルを有することが見出された。
【0010】
特に、本発明のカルボニックアンヒドラーゼ阻害剤ニトロ誘導体は、高眼圧症の治療および緑内障の予防に用いられ得ることが確認された。
さらに、本発明の誘導体は、加齢性黄斑変性、糖尿病性黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、高血圧性網膜症および網膜血管症の治療に有効であることが見出された。
【0011】
本発明の化合物は、末梢の虹彩切開術またはレーザーイリドプラスティ(iridoplasty)を受けた開放視覚型緑内障または慢性の視角閉鎖症を患っている患者において、眼内圧の低下を示す。
【0012】
本発明の目的は、酸化窒素を放出し得るカルボニックアンヒドラーゼ阻害剤の有効量を投与することを含む、それを必要としている患者における眼の障害、特に緑内障、高眼圧症、加齢性黄斑変性、糖尿病性黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、高血圧性網膜症および網膜血管症を治療する方法である。
【0013】
カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤は、イソエンザイムCAIIに対する阻害定数(Ki)を0.01-200 nMの範囲に有する化合物である。該カルボニックアンヒドラーゼ活性は、以下に報告されるように、カルボニックアンヒドラーゼ阻害に対する試験により測定される。
【0014】
酸化窒素を放出し得るカルボニックアンヒドラーゼ阻害剤は、血管緊張低下において1-50μMの範囲のEC50 値を有する化合物である。該血管緊張低下は、以下に報告されるように、血管の緊張に対する試験により測定される。
【0015】
より具体的には、本発明の目的は、次の一般式(I)のドルゾラミドおよびブリンゾラミドのニトロ誘導体、およびその医薬的に許容される塩または立体異性体である:
R-(X-Y-ONO2)m (I)
(式中、
m は1または2の整数であり;
R は
【化1】
(ここで、
R1 は -CH3 または -(CH2)3-OCH3であり;
R2 はH または一つの基-(X-Y-ONO2)に結合し得る遊離原子価であり;
R' は H または一つの基 -(X-Y-ONO2) に結合し得る遊離原子価であり;
A は炭素または窒素原子であり;
X は -CO-、-COO-であり;
Y は次の意味を有する2価の基である;
【0016】
a) −ハロゲン原子、ヒドロキシ、-ONO2 もしくは T(ここで、Tは-OC(O)(C1-C10 アルキル)-ONO2 または-O(C1-C10 アルキル)-ONO2である)からなる群から選択される一つ以上の置換基で任意にされていてもよい直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C20 アルキレン;
−環が側鎖T1(ここでT1 は直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C10 アルキルである)で任意に置換されていてもよい、シクロアルキレン環中に5〜7の炭素原子を有するシクロアルキレン;
【0017】
b)
【化2】
【0018】
c)
【化3】
(ここで、n は0〜20の整数であり、n1 は1〜20の整数である)
【0019】
d)
【化4】
(ここで、X1 は-OCO- または -COO- であり、R3 は H または-CH3であり、Z は -(CH2)n1- または上記のb)で定義された2価の基であり、n1 は上記で定義されたとおりであり、n2 は0〜2の整数である)
【0020】
e)
【化5】
(ここで、Y1は -CH2-CH2-(CH2)n2-または -CH=CH-(CH2) n2-であり、Z、n1、n2、R3 および X1 は上記で定義されたとおりである)
【0021】
f)
【化6】
(ここで、n1 および R3 は上記で定義されたとおりであり、R0 は H または -COCH3である、
ただし、Y がb)-f)で述べられた2価の基から選択されるとき、末端の-ONO2基は-(CH2)n1に結合している)
【0022】
g)
【化7】
(ここで、X2 は -O- または -S-であり、n3 は 1〜6の整数であり、R3 は上記で定義されたとおりである);
【0023】
h)
【化8】
(ここで、n4は0〜10の整数であり、n5 は1 〜10の整数であり、R4、R5、R6、R7 は、同一または異なって、H または直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C4 アルキルである);
ここで、-ONO2基は
【化9】
(ここで、n5 は上記で定義されたとおりである)
に結合している)、
【0024】
Y2 は窒素、酸素、硫黄から選択される一つ以上のヘテロ原子を含む複素環式飽和もしくは不飽和の、または芳香族の5 もしくは6 員環であり、
【化10】
からなる群から選択される)。
【0025】
この明細書で用いられている用語「C1-C20 アルキレン」は、分枝鎖状もしくは直鎖状のC1-C20の炭化水素鎖を意味し、好ましくはメチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、n-ブチレン、ペンチレン、n-ヘキシレンなどのような1〜10 の炭素原子を有するアルキレンを意味する。
【0026】
この明細書で用いられている用語「C1-C10 アルキル」は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、 イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチルなどを含む、1〜10の炭素原子を有する、分枝鎖状もしくは直鎖状のアルキル基を意味する。
【0027】
この明細書で用いられている用語「シクロアルキレン」は、直鎖状もしくは分枝鎖状の(C1-C10)-アルキル、好ましくはCH3のような側鎖で任意に置換されていてもよい、5〜7の炭素原子を有する環を意味し、シクロペンチレン、シクロヘキシレンを含むが、これらに限定されるものではない。
【0028】
この明細書で用いられている用語「複素環」は、例えばピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピロリジン、モルホリン、イミダゾールなどのような、窒素、酸素、硫黄から選択される一つ以上のヘテロ原子を含む、飽和、不飽和もしくは芳香族の5または6員環を意味する。
【0029】
式(I)の好ましい化合物は、m、R および X が上記で定義されたとおりであり、Y が次の意味を有する2価の基である化合物である。
a) −ハロゲン原子、ヒドロキシ、-ONO2 もしくは T(ここで、Tは-OC(O)(C1-C10 アルキル)-ONO2 または-O(C1-C10 アルキル)-ONO2である)からなる群から選択される一つ以上の置換基で任意にされていてもよい直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C20 アルキレン;
−環が側鎖T1(ここでT1 はCH3である)で任意に置換されていてもよい、シクロアルキレン環中に5〜7の炭素原子を有するシクロアルキレン;
【0030】
b)
【化11】
【0031】
c)
【化12】
(ここで、n は0〜5の整数であり、n1 は1〜5の整数である)
【0032】
d)
【化13】
(ここで、X1 は-OCO- または -COO- であり、R3 は H または-CH3であり、Z は -(CH2) n1- または上記のb)で定義された2価の基であり、n1 は1〜10の整数であり、n2 は0〜2の整数である)
【0033】
e)
【化14】
(ここで、Y1は -CH2-CH2-または -CH=CH-(CH2) n2-であり、Z、n1、n2、R3 および X1 は上記で定義されたとおりである)
【0034】
f)
【化15】
(ここで、n1 および R3 は上記で定義されたとおりであり、R0 は-COCH3である、
ただし、Y がb)-f)で述べられた2価の基から選択されるとき、末端の-ONO2基は-(CH2) n1に結合している)
【0035】
g)
【化16】
(ここで、X2 は -O- または -S-であり、n3 は 1〜4の整数であり、R3 は上記で定義されたとおりである);
【0036】
h)
【化17】
(ここで、n4は0〜3の整数であり、n5 は1 〜3の整数であり、R4、R5、R6、R7 はHである);
ここで、-ONO2基は
【化18】
(ここで、n5 は上記で定義されたとおりである)
に結合している、
【0037】
Y2 は
【化19】
から選択される。
【0038】
以下の化合物は、本発明による好ましい化合物である。
【化20】
【0039】
【化21】
【0040】
【化22】
【0041】
【化23】
【0042】
【化24】
【0043】
【化25】
【0044】
【化26】
【0045】
【化27】
【0046】
【化28】
【0047】
【化29】
【0048】
【化30】
【0049】
【化31】
【0050】
【化32】
【0051】
【化33】
【0052】
【化34】
【0053】
【化35】
【0054】
【化36】
【0055】
【化37】
【0056】
【化38】
【0057】
上記のように、本発明は、式(I)の化合物の医薬的に許容される塩およびその立体異性体も含む。
医薬的に許容される塩の例は、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびアルミニウムの水酸化物のような無機塩基との塩、またはリジン、アルギニン、トリエチルアミン、ジベンジルアミン、ピペリジンおよびその他の許容される有機アミンのような有機塩基との塩の両方である。
【0058】
本発明による化合物は、その分子内に塩となり得る窒素原子を1つ含むとき、アセトニトリル、テトラヒドロフランのような有機溶媒中で、有機酸または無機酸と反応させることにより、対応する塩に変換することができる。
有機酸の例は、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸である。無機酸の例は、硝酸、塩酸、硫酸、リン酸である。硝酸との塩が好ましい.
【0059】
一つ以上の不斉炭素原子を有する本発明の化合物は、光学的に純粋なエナンチオマー、光学的に純粋なジアステレオマー、エナンチオマー混合物、ジアステレオマー混合物、エナンチオマーのラセミ混合物、ラセミ化合物もしくはラセミ混合物として存在することもできる。
【0060】
本発明の範囲には、式(I)の化合物の可能な異性体、立体異性体、および特定の異性体が豊富な混合物を含み、それらの混合物のすべてが含まれる。
前記のように、本発明の目的は、本発明の式(I)の少なくとも一つの化合物を、医薬の分野で通常用いられている非毒性のアジュバントおよび/または担体とともに含む医薬組成物でもある。
好ましい投与経路は局所投与である。
【0061】
本発明の化合物は、眼科的に許容される媒体中の溶液、懸濁液または乳液(分散液)として投与することができる。
ここで用いられる「眼科的に許容される媒体」という用語は、化合物と非反応性であり、かつ患者への投与に適している物質、および物質の組合せを意味する。好ましいのは、患者の眼に局所的に適用するのに適した水性の媒体である。
本発明の眼科用組成物中で用いるのに望ましいその他の成分は、抗菌剤、保存剤、補助溶媒、界面活性剤および増粘剤を含む。
【0062】
本発明は、緑内障または高眼圧症を治療する方法にも関するものであり、該方法は眼圧を下げ、その眼圧を下げられたレベルに維持するために、眼内圧を低下させるのに有効な量の組成物を眼と接触させることからなる。
【0063】
カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤のニトロ誘導体の用量は、標準的な臨床技術により決定することができ、Physician's Desk Reference, Medical Economics Company, Inc., Oradell, N.J., 58版, 2004年; The pharmacological basis of therapeutics, Goodman and Gilman, J. G. Hardman, L. e. Limbird, 10版に報告されているように、誘導体化されていない市販のドルゾラミドおよびブリンゾラミドと同じ範囲、またはそれより少ない量である。
【0064】
本発明の化合物は、緑内障または高眼圧症を治療するのに有用であると知られているその他の医薬と、別々にまたは組み合わせて用いることもできる。
例えば、本発明の化合物は(i)チモロール、ベタキソロール、レボブノロールなどのようなベータ−ブロッカー(米国特許第4,952,581号参照)、(ii)ビマトプロスト、ラタノプロスト、トラボプロストまたはウノプロストンのようなプロスタグランジン類似体、 (iii)アプラクロニジンまたはブリモニジンのようなクロニジン誘導体を含むα−アドレナリン作用性アゴニスト(米国特許第5,811,443号参照)と組み合わせることができる。
【0065】
また、上記の化合物のニトロオキシ誘導体、例えばベータ−ブロッカーのニトロオキシ誘導体(米国特許第6,242,432号)、またはプロスタグランジン類似体のニトロオキシ誘導(WO 2005/068421号)との組合せも可能である。
【0066】
合成方法
1.上記の一般式(I):(式中、
X は-CO-であり、m は1であり、R およびYは上記で定義されたとおりであり、 ここでR'はHであり、R2は遊離原子価である)の化合物は、以下の方法を含む方法により得ることができる。
【0067】
1a. 式Bの化合物を、式(IIIa)の化合物:
【化39】
(式中、Yは上記で定義されたとおりであり、BはRに等しく、R2はHであり、R'はPGであり、ここでPGはジメチルホルムアミジンのようなスルホンアミド保護基である)
と、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDAC)もしくはN,N'-カルボニルジイミダゾール(CDI)またはHATUのようなそのほか公知の縮合剤のような縮合剤の存在下に、DMF、THF、クロロホルムのような溶媒中、-5℃〜50℃の範囲の温度で、例えばDMAP のような塩基の存在下もしくは非存在下に反応させ、次いで得られる化合物をメタノール中で塩酸と反応させて脱保護する。
【0068】
式(IIIa)の硝酸エステル化合物は、市販されている式HOOC-Y-OH (IIIb)の対応するアルコールを硝酸および無水酢酸と-50℃〜0℃の範囲の温度で反応させるか、あるいはWO 2006/008196号に記載されているように、市販されている式HOOC-Y-Hal (IIIc) (ここで、Halはハロゲン原子、好ましくはCl、Br、Iである)の対応するハロゲン誘導体をAgNO3 と反応させることにより、得ることができる。
式B(ここで、R'およびR2はHである)の化合物は、ドルゾラミドおよびブリンゾラミドとして知られている。
【0069】
1b. 上記のように定義された式Bの化合物を、式(IIId)の化合物と反応させる。
【化40】
(式中、Yは上記で定義されたとおりであり、Halはハロゲン原子である)
この反応は、一般に、無機または有機塩基の存在下に、DMF、THFまたはCH2Cl2のような非プロトン性の極性/非極性溶媒中、0℃〜65℃の範囲の温度で行われるか、あるいは2相系H2O/Et2Oで、20℃〜40℃の範囲の温度で行われ、得られる化合物をメタノール中で塩酸と反応させることにより脱保護する。
【0070】
式(IIId)の化合物は、対応する化合物(IIIa)から周知の反応により、例えばトルエン、クロロホルム、DMFなどのような不活性の溶媒中、チオニルもしくはオキサリルクロライド、PIII もしくは PVのハライドと反応させることにより得られる。
【0071】
1c. 式R-X-Y-Hal (IVa)(ここで、R、X、YおよびHalは1-1a において上記で定義されたとおりである)の化合物をAgNO3と反応させ、得られる化合物をメタノール中で塩酸と反応させることにより脱保護する。
化合物(IVa)は、上記で定義されたような化合物Bを化合物(IIIc)と、上記のようにDCCまたはCDIのような縮合剤とともに反応させることにより得られる。
【0072】
1d. 式R-X-Y-OH (Va)(ここで、R、XおよびYは1.で定義されたとおりである)の化合物を、DMF、THFまたはCH2Cl2のような非プロトン性の極性/非極性溶媒中、-60℃〜65℃の範囲の温度で、無水トリフリック酸/テトラアルキルアンモニウムナイトレート塩と反応させ、得られる化合物をメタノール中で塩酸と反応させることにより脱保護する。
化合物(Va)は、上記で定義されたような化合物Bを化合物(IIIb)と、上記のような縮合剤とともに反応させることにより得られる。
【0073】
2.上記で定義された一般式(I):(式中、X は-CO-であり、mは1であり、Rは上記で定義されたとおりであり、R'はHであり、R2は遊離価であり、Yは-ONO2 基で置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C20 アルキルである)の化合物は、以下の方法を含む方法により得ることができる。
【0074】
2a. 式R-X-Y' (VIa)(ここで、Y'は直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C20 アルケニルであり、Rは上記で定義されたとおりであり、R2 はHであり、R'はPGであり、PGはジメチルホルムアミジンのようなスルホンアミド保護基である)化合物を、アセトニトリル中、ヨウ素および硝酸銀と、-20℃〜80℃の範囲の温度で反応させ、得られる化合物をメタノール中で塩酸と反応させることにより脱保護する。
【0075】
化合物(VIa)は、化合物Bを化合物HOOC-Y' (VIIa)と、DMF、THF、クロロホルムのような溶媒中、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDAC)またはN,N'-カルボニルジイミダゾール(CDI) またはHATUのようなその他の公知の縮合剤のような縮合剤の存在下に、-5℃〜50℃の範囲の温度で、例えばDMAPのような塩基の存在下もしくは非存在下に反応させることにより得ることができる。
化合物(VIIa)は市販されている。
【0076】
3.上記の一般式(I):(式中、Xは-COO-であり、mは1であり、RおよびYは上記で定義されたとおりであり、R'はHであり、R2は遊離原子価である)の化合物は、以下の方法を含む方法により得ることができる。
【0077】
3a. 式Bの化合物を、式(VIIIa)の化合物と反応させる。
【化41】
(式中、BはRと同じであり、R2 はHであり、R'はPGであり、PGは ジメチルホルムアミジンのようなスルホンアミド保護基であり、Xは-COO-であり、HalおよびYは上記で定義されたとおりである)
【0078】
この反応は、一般に、無機もしくは有機塩基の存在下に、DMF、THFもしくはCH2Cl2のような非プロトン性の極性/非極性溶媒中、0℃〜65℃の範囲の温度で行われるか、あるいは2相系H2O/Et2Oで、20℃〜40℃の範囲の温度で行われ、次いで得られる化合物をメタノール中で塩酸と反応させることにより脱保護する。
【0079】
式(VIIIa)の化合物は、対応するアルコールHO-Y-ONO2 (VIIIb)から、有機塩基の存在下にトリホスゲンと反応させることにより得られる。
式(VIIIb)の硝酸エステル化合物は、市販されている式HO-Y-OH (VIIIc)の対応するアルコールから、硝酸および無水酢酸と-50℃〜0℃の範囲の温度で反応させるか、あるいは市販されている式HO-Y-Hal (VIIId)(ここで、Halはハロゲン原子、好ましくはCl、BrまたはIである)の対応するハロゲン誘導体を、国際出願WO 2006/008196にすでに記載されているように、AgNO3 と反応させることにより得られる。
【0080】
3b. 式R-X-Y-Hal (IXa) (ここで、R、X、YおよびHalは上記で定義されたとおりである)をAgNO3 と反応させ、次いで得られる化合物をメタノール中で塩酸と反応させることにより脱保護する。
式(IXa)の化合物は、化合物Bを化合物Hal-X-Y-Hal (Xa)と反応させることにより得られる。この反応は、一般に上記のように、無機もしくは有機塩基の存在下に、DMF、THFもしくはCH2Cl2のような非プロトン性の極性/非極性溶媒中、0℃〜65℃の範囲の温度で行われる。化合物(Xa)は市場で入手できる。
【0081】
4.上記で定義された一般式(I):(式中、Xは-COO-であり、m は1であり、Rは上記で定義されたとおりであり、R'はHであり、R2 は遊離原子価であり、Yは-ONO2 基で置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C20アルキルである)の化合物は、以下の方法を含む方法により得ることができる。
【0082】
4a. 式R-X-Y' (XIa)(ここで、Y'は直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C20 アルケニルであり、Rは上記で定義されたとおりであり、R2はHであり、R'はPG であり、PGはジメチルホルムアミジンのようなスルホンアミド保護基である)の化合物を、アセトニトリル中、-20℃〜80℃の間の温度でヨウ素および硝酸銀と反応させ、得られる化合物をメタノール中で塩酸と反応させることにより脱保護する。
【0083】
化合物(XIa)は、化合物Bを化合物Hal-X-Y' (XIIa)と、無機もしくは有機塩基の存在下に、DMF、THFもしくはCH2Cl2のような非プロトン性の極性/非極性溶媒中、0℃〜65℃の範囲の温度で反応させるか、あるいは2相系H2O/Et2Oで 20℃〜40℃の間の温度で反応させることにより得られる。化合物(XIIa) は市場で入手することができる。
【0084】
5.上記で定義された一般式(I)(ここで、Xは-CO-であり、mは1であり、RおよびYは上記で定義されたとおりであり、R2はHであり、R'は遊離価である)の化合物は、以下の方法を含む方法により得ることができる。
【0085】
5a. 式Bの化合物を式(IIIa):
【化42】
(式中、Yは上記で定義されたとおりであり、BはRと同じであり、R2はPG1 であり、PG1 はFmocもしくはAllocのようなアミノ保護基であり、R'はHである)
の化合物と、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDAC)もしくはN,N'-カルボニルジイミダゾール(CDI)、またはHATUのようなその他公知の縮合剤のような縮合剤の存在下に、DMF、THF、クロロホルムのような溶媒中、-5℃〜50℃の範囲の温度で、例えばDMAPのような塩基の存在下もしくは非存在下に反応させ、次いで得られる化合物を、アセトニトリルのような溶媒中、ピペリジンのような有機塩基と20℃〜40℃の範囲の温度で反応させるか、あるいはテトラヒドロフラン中、パラジウムテトラキスの存在下にモルホリンと20℃〜40℃の間の温度で反応させることにより脱保護する。
【0086】
上記で定義された化合物Bは、アミノを基PG1 (ここでPG1 は上記で定義されたとおりである)で保護し、メタノール中で塩酸と反応させてスルホンアミド基を脱保護することにより、1.1a.で定義された化合物Bから得ることができる。
5b. 上記で定義された式Bの化合物を、式(IIId)の化合物と反応させる。
【化43】
(式中、Yは上記で定義されたとおりであり、Actはハロゲン原子、または次のようなペプチド化学で用いられるカルボン酸を活性化させる基である。
【化44】
【0087】
この反応は、一般に、DMF、THFまたはCH2Cl2のような非プロトン性の極性/非極性溶媒中、無機もしくは有機塩基の存在下に0℃〜65℃の範囲の温度で行われるか、または2相系H2O/Et2Oで20℃〜40℃の範囲の温度で行われるか、あるいはDMAP とSc(OTf)3もしくはBi(OTf) 3のようなルイス酸の存在下に、DMF, CH2Cl2のような溶媒中で行われ、得られる化合物をアセトニトリルのような溶媒中、ピペリジンのような有機塩基と20℃〜40℃の範囲の温度で反応させることにより、またはテトラヒドロフラン中パラジウムテトラキスの存在下にモルホリンと20℃〜40℃の範囲の温度で反応させることにより脱保護する。
式(XIIId)の化合物は、WO 2006/008196に記載されているようにして得られる。
【0088】
5c. 式R-X-Y-Hal (XIVa) (ここで、R、X、YおよびHalは5-1aで定義されたとおりである)の化合物をAgNO3と反応させ、得られる化合物をアセトニトリルのような溶媒中、ピペリジンのような有機塩基と20℃〜40℃の範囲の温度で反応させるか、あるいはテトラヒドロフラン中パラジウムテトラキスの存在下にモルホリンと20℃〜40℃の範囲の温度で反応させることにより脱保護する。
【0089】
化合物 (XIVa) は、化合物Bを上記で定義された化合物(IIIc)と、上記のように、DCCまたはCDIのような縮合剤とともに反応させることにより得られる。
5d. 式R-X-Y-OH (XVa)(ここで、R、XおよびYは5.で定義されたとおりである)の化合物を、無水トリフリック酸/テトラアルキルアンモニウム硝酸塩と、DMF、THFもしくはCH2Cl2のような非プロトン性の極性/非極性溶媒中、-60℃〜65℃の範囲の温度で反応させ、得られる化合物をアセトニトリルのような溶媒中、ピペリジンのような有機塩基と20℃〜40℃の範囲の温度で反応させるか、あるいはテトラヒドロフラン中パラジウムテトラキスの存在下にモルホリンと20℃〜40℃の範囲の温度で反応させることにより脱保護する。
化合物(XVa)は、化合物Bを上記で定義された化合物(IIIb) と、上記のような縮合剤とともに反応させることにより得られる。
【0090】
6.上記で定義された一般式(I)(ここで、X は-CO-であり、mは1であり、R は上記で定義されたとおりであり、R2はHであり、R' は遊離原子価であり、Yは-ONO2で置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C20アルキルである)の化合物は、以下の方法を含む方法により得ることができる。
【0091】
6a. 式R-X-Y' (XVIa)(ここで、Y'は直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C20 アルケニルであり、Rは上記で定義されたとおりであり、R'はHであり、R2 はPG1 であり、PG1はFmocもしくはAllocのようなアミノ保護基であり、R'はHである)の化合物を、アセトニトリル中、ヨウ素および硝酸銀と、-20℃〜80°C の間の温度で反応させ、得られる化合物をアセトニトリルのような溶媒中、ピペリジンのような有機塩基と20℃〜40℃の範囲の温度で反応させるか、あるいはテトラヒドロフラン中パラジウムテトラキスの存在下にモルホリンと20℃〜40℃の範囲の温度で反応させることにより脱保護する。
【0092】
化合物(XVIa)は、化合物Bを、DMF、THF、クロロホルムのような溶媒中、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDAC)もしくはN,N’-カルボニルジイミダゾール(CDI)、またはHATUのようなその他公知の縮合剤のような縮合剤の存在下に、化合物 HOOC-Y' (XVIIa)と、-5℃〜50℃の範囲の温度で、例えばDMAPのような塩基の存在下もしくは非存在下に反応させることにより得られる。
化合物(XVIIa)は市場で入手できる。
【0093】
7.上記で定義された一般式(I)(ここで、Xは-COO-であり、mは1であり、RおよびYは上記で定義されたとおりであり、R2はHであり、R'は遊離原子価である)の化合物は、以下の方法を含む方法により得られる。
7a. 式Bの化合物を式(VIIIa)の化合物と反応させる。
【化45】
(式中、BはRと同じであり、R2 はPG1 であり、PG1 はFmoc もしくはAlloc のようなアミノ保護基であり、R'はHであり、Xは-COO-であり、HalおよびYは上記で定義されたとおりである)
【0094】
この反応は、一般に、DMF、THFもしくはCH2Cl2のような非プロトン性の極性/非極性溶媒中、無機もしくは有機塩基の存在下に、0℃〜65℃の範囲の温度で行われるか、あるいは2相系H2O/Et2O中、20℃〜40℃の範囲の温度で行われ、得られる化合物をアセトニトリルのような溶媒中、ピペリジンのような有機塩基と20℃〜40℃の範囲の温度で反応させるか、あるいはテトラヒドロフラン中パラジウムテトラキスの存在下に、モルホリンと20℃〜40℃の範囲の温度で反応させることにより脱保護する。
【0095】
7b. 式R-X-Y-Hal (XIXa)(ここで、R、X、YおよびHalは上記で定義されたとおりである)の化合物を、AgNO3 と反応させ、得られる化合物を上記のようにして脱保護する。
式(XIXa)の化合物は、化合物Bを化合物Hal-X-Y-Hal (Xa)と反応させることにより得られる。
この反応は、一般に、DMF、THFもしくはCH2Cl2 のような非プロトン性の極性/非極性溶媒中、無機もしくは有機塩基の存在下に、0℃〜65℃の範囲の温度で、上記のように行われる。
【0096】
8.上記で定義された一般式(I)(ここで、Xは-COO-であり、mは1であり、Rは上記で定義されたとおりであり、R2はHであり、R'は遊離原子価であり、 Yは-ONO2 基で置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C20アルキルである)の化合物は、以下の方法を含む方法により得られる。
【0097】
8a. 式R-X-Y' (XXa)(ここで、Y'は直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C20アルケニルであり、Rは上記で定義されたとおりであり、R'はHであり、R2はPG であり、PGはジメチルホルムアミジンのようなスルホンアミド保護基である)の化合物を、アセトニトリル中、ヨウ素および硝酸銀と-20℃〜80℃の間の温度で反応させ、得られる化合物をメタノール中で塩酸と反応させることにより脱保護する。
【0098】
化合物(XXa)は、化合物Bを、DMF、THFもしくはCH2Cl2のような非プロトン性の極性/非極性溶媒中、無機もしくは有機塩基の存在下に、化合物Hal-X-Y'(XXIa)と0℃〜65℃の範囲の温度で反応させるか、あるいは2相系H2O/Et2O中2℃〜40℃の範囲の温度で反応させることにより得られる。
化合物(XXIa)は市場で入手できる。
【0099】
9.上記で定義された一般式(I)(ここで、Xは-CO-または-COO-であり、mは2であり、RおよびYは上記で定義されたとおりであり、R'およびR2は遊離原子価である)の化合物は、上記の1-8のような方法により得られる。
【実施例】
【0100】
実施例1
式(33)の化合物の合成:
(4S-トランス)-4-(エチルアミノ)-5,6-ジヒドロ-6-メチル-4H-チエノ[2,3-b]チオピラン-2-スルホニルアミド-N((6-ニトロオキシ)ヘキサノイル)-7,7-ジオキサイド
【化46】
【0101】
A) (4S-トランス)-4-(エチルアミノ)-5,6-ジヒドロ-6-メチル-4H-チエノ[2,3-b]チオピラン-2-スルホニルアミド-N-(ジメチルアミノメチレン)-7,7-ジオキサイド
【化47】
【0102】
DMF(1.4 mL)中のドルゾラミド塩酸塩(722 mg, 2.0 mmol)の溶液に、トリエチルアミン(0.31 mL, 2.2 mmol)およびN,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール (0.32 mL, 2.4 mmol)を加えた。反応をCH2Cl2/MeOH 95/5 (化合物AのRf = 0.41)で溶出するTLC でモニターした。窒素雰囲気下に室温で3時間撹拌した後、氷冷水浴を用いて反応液を0℃に冷却し、水(10 mL)を加えた。水溶液を酢酸エチル(3 x10 mL)で抽出した。AcOEt抽出液を合わせ、水(10 mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、真空下に濃縮して、イミン誘導体A(608 mg, 80%)を白色の固形物として得た。
【0103】
B) (4S-トランス)-4-(アミノ-N-エチル-N-Fmoc)-5,6-ジヒドロ-6-メチル-4H-チエノ[2,3-b]チオピラン-2-スルホニルアミド-N-(ジメチルアミノメチレン)-7,7-ジオキサイド
【化48】
【0104】
ジオキサン(18 mL)およびNa2CO3の10%水溶液(18 mL)中の化合物A(2.65 g, 7 mmol)の溶液を0℃に冷却し、これにFmocCl (1.8g, 7 mmol)のジオキサン(15 mL)溶液を滴下した。0℃で4時間撹拌し、室温で8時間撹拌した後 (反応はn-ヘキサン/i-PrOH 1/1 (化合物BのRf =0.36)で溶出するTLC でモニターした)、反応混合物を真空下に濃縮した。残留する水溶液をAcOEt (3 x 15 mL)で抽出し、有機抽出液を合わせ、Na2SO4 で乾燥し、真空下に濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(グラディエントn-ヘキサン/ AcOEt 90/10〜n-ヘキサン/酢酸エチル20/80)により精製して、化合物B(1.1 g, 34%)を得た。
【0105】
C) (4S-トランス)-4-(アミノ-N-エチル-N-Fmoc)-5,6-ジヒドロ-6-メチル-4H-チエノ[2,3-b]チオピラン-2-スルホニルアミド-7,7-ジオキサイド
【化49】
【0106】
MeOH(30 ml)および37%水性HCl(12 ml)中の化合物B(1.76 g, 3 mmol)の溶液を50℃で12時間撹拌し、還流温度で2時間撹拌し、次いで反応混合物を真空下に濃縮した。濃縮物をCH2Cl2 (20 mL)に溶解し、食塩水(2 x 10 mL)で洗浄した。CH2Cl2抽出液を合わせ、Na2SO4で乾燥し、真空下に濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(n-ヘキサン/アセトン 6/4)により精製して、化合物Cを白色の固形物(0.9 g, 55%)として得た。(CH2Cl2/MeOH 95/5で溶出するTLCでRf=0.58)。
【0107】
D) 4S-トランス)-4-(アミノ-N-エチル-N-Fmoc)-5,6-ジヒドロ-6-メチル-4H-チエノ[2,3-b]チオピラン-2-スルホニルアミド-N-8(6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル)-7,7-ジオキサイド
【化50】
化合物C(0.899 g, 1.64 mmol)のCH2Cl2 (10 ml)溶液に、DMAP (200 mg, 1.64 mmol)およびスカンジウムトリフレート(162 mg, 0.33 mmol)を加えた。この混合物を0℃に冷却し、これに6-(ニトロオキシ)ヘキサノエートペンタフルオロフェニルエステル(0.596 mg, 1.4 mmol)のCH2Cl2 (5 mL)溶液を滴下した。室温で24時間撹拌した後、氷水浴を用いて反応混合物を0℃に冷却し、これに水(20 mL)を加えた。水溶液をCH2Cl2 (3 x10 mL)で抽出した。CH2Cl2抽出液を合わせ、Na2SO4で乾燥し、真空下に濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(溶出液n-ヘキサン/アセトン 50/50)により精製して、化合物D(0.634 g, 55%)を得た。
【0108】
E) 4S-トランス)-4-(アミノ-N-エチル)-5,6-ジヒドロ-6-メチル-4H-チエノ[2,3-b]チオピラン-2-スルホニルアミド-N-8(6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル)-7,7-ジオキサイド
【化51】
化合物D(0.634 g, 0.9 mmol)のアセトニトリル(10 ml)溶液にモルホリン(0.439 mL, 4.5 mmol)を加えた。室温で3時間撹拌した後、反応液を真空下に濃縮した。濃縮物を酢酸エチル(20 mL)に溶解し、NaH2PO4 溶液(2 x 10 mL)で洗浄した。有機抽出液を合わせ、Na2SO4で乾燥し、真空下に濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(グラディエントCH2Cl2 100%〜CH2Cl2/MeOH 94/6)により精製して、化合物E (0.125 g, 37%)を得た。
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 7.40 (1H, s); 4.47 (2H, t); 4.00-3.80 (2H, m); 2.81-2.52 (2H, m); 2.45-2.20( 2H, m); 2.00 (2H, t); 1.55 (2H, m); 1.50-1.40 (2H, m); 1.33 (3H,d), 1.32-1.20 (2H, m); 1.05 (3H, t).
【0109】
実施例2
式(62)の化合物の合成:
(4S-トランス)-4-(アミノ-N-エチル-N-(2,3-ビス(ニトロオキシ) プロピルオキシカルボニル)-5,6-ジヒドロ-6-メチル-4H-チエノ[2,3-b]チオピラン-2-スルホニルアミド-7,7-ジオキサイド
【化52】
【0110】
F) (4S-トランス)-4-(アミノ-N-エチル-N-(2,3- プロペニルオキシカルボニル)-5,6-ジヒドロ-6-メチル-4H-チエノ[2,3-b]チオピラン-2-スルホニルアミド-N-(ジメチルアミノメチレン)-7,7-ジオキサイド
【化53】
【0111】
化合物A(2.65 g, 7 mmol)をCH2Cl2 (30 mL)に溶解し、0℃に冷却し、次いでピリジン(0.56 mL, 7 mmol)、DMAP (33 mg, 0.27 mmol)およびAllocCl (1.27 g, 10.5 mmol CH2Cl2 30 ml中)の溶液を順次加えた。室温で1夜撹拌した後、反応混合物を水(20 mL)中に注ぎ、CH2Cl2 (3 x 10 mL)で抽出した。CH2Cl2 抽出液を合わせ、水(20 mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、真空下に濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(n-ヘキサン/アセトン 1/1 Rf=0.26)で精製して、化合物Fを白色の固形物(1.1 g, 34%)として得た。
【0112】
G) (4S-トランス)-4-(アミノ-N-エチル-N-(2,3- プロペニルオキシカルボニル) -5,6-ジヒドロ-6-メチル-4H-チエノ[2,3-b]チオピラン-2-スルホニルアミド-7,7-ジオキサイド
【化54】
【0113】
化合物F (1.1 g, 2.37 mmol)をMeOH (24 mL)および37% HCl 水溶液(9.5 ml)に溶解した。反応をCH2Cl2/MeOH 95/5 (化合物GのRf=0.26)で溶出するTLC でモニターした。50℃で12時間撹拌し、還流温度で2時間撹拌した後、反応混合物を真空下に濃縮した。残留する濃縮物をCH2Cl2 (20 mL)に溶解し、NaHCO3飽和溶液(10 mL)および食塩水(2 x 10 mL)で洗浄した。CH2Cl2抽出液をNa2SO4で乾燥し、濃縮して、化合物G(530 mg, 55%)を得た。
【0114】
H) (4S-トランス)-4-(アミノ-N-エチル-N-(2,3-ビス(ニトロオキシ) プロピルオキシカルボニル)-5,6-ジヒドロ-6-メチル-4H-チエノ[2,3-b]チオピラン-2-スルホニルアミド-7,7-ジオキサイド
【化55】
【0115】
化合物G(0.265 g, 0.64 mmol)のアセトニトリル(11 mL)溶液に、ヨウ素 (0.165 g, 0.649 mmol)および硝酸銀(331 mg, 1.95 mmol)を加えた。70℃で20時間撹拌した後、反応混合物を真空下に濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(n-ヘキサン/酢酸エチル 1/1)により精製して、モノナイトレート誘導体とジナイトレート誘導体の混合物(0.138 g)を得た。この混合物をアセトニトリル(1,4 mL)に溶解し、硝酸銀(0.098 g)を加えた。マイクロウェーブを用いて120℃で20分間反応を行った。反応混合物を真空下に濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(n-ヘキサン/酢酸エチル1/1)により精製して、化合物Hを白色の固形物(0.066 g, 20%)として得た。
1H-NMR (CDCl3) δ: 7.39 (1H, s); 5.48-5.32 (3H, m); 5.30-5.21 (1H, m); 4.91-4.84 (1H, m); 4.80-4.56 (2H, m); 3.75-3.50(1H, m); 3.45-3.25 (1H, m); 3.3.20-3.08 (1H, m); 3.00-2.85 (1H, m); 2.61-2.45 (1H, m); 1.53 (3H, d); 1.30-1.17 (3H, dt).
【0116】
カルボニックアンヒドラーゼ阻害試験
光物理式停止フローを適用した器具SX.18MV-Rを、CA CO2水和活性を試験するために用いた。フェノールレッド(0.2 mM)をインジケータ(pH 6.8-8.4)として用い、極大吸収557 nmで操作した。緩衝液は10 mM HEPES, 0.1 M Na2SO4およびTRIZMA塩酸塩0.01 Mからなり、NaOH (0,1 M)で溶液のpHを7.5 に調整した。
【0117】
CA-触媒 CO2水和反応を、用いられたイソフォルムによって1〜20秒間行った。CO2の飽和蒸留水中のSatured溶液を基質として20℃で用いた。
阻害剤(1 mM)のストック溶液を10-20% (v/v) DMSOの緩衝液で調製し、0.1 nMまで希釈した。E-Iコンプレックスの生成を考慮して、試験に先立ってインヒビターと酵素の溶液を室温で15分間、前培養した。酵素の濃度はCA IIに対して0.1 μMであった。ヒトCA IIは市場で入手できる。各試験をそれぞれ3回行った。
【0118】
血管のトーンの試験
カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤のニトロ誘導体の血管緊張低下を誘発する能力を、自然のCAIと比較して、ラビットの単離した胸の大動脈組織標本を用いインビトロで試験した(Wanstall J.C.ら、Br. J. Pharmacol., 134:463-472, 2001)。雄のニュージーランドラビットをチオペンタール-Na (50 mg/kg, iv) で麻酔し、瀉血により殺し、次いで胸郭を開き、大動脈を切り離した。大動脈の環状標本 (長さ4 mm) を、小さい器官容器(5 ml)中で37℃の生理食塩水(PSS)にセットした。PSSの組成物は(mM): NaCl 130、NaHCO3 14.9、KH2PO4 1.2、MgSO4 1.2、HEPES 10、CaCl2、アスコルビン酸170およびグルコース1.1 (95% O2 /5% CO2 ; pH 7.4)であった。各環を2 gの受動的緊張下にすえつけた。収縮筋末端が固定された緊張を、BIOPAC MP150システムに取り付けられたGrassトランスデューサ(Grass FT03)で記録した。
【0119】
製剤を1時間平衡させ、次いでノルアドレナリン(NA, 1 μM)で収縮させ、収縮が安定したとき、アセチルコリン(ACh, 10 μM)を加えた。Achに対する緊張緩和応答は、機能的な内皮の存在を示した。NAを収縮させることができなかった血管、またはAchに対して緊張緩和を示さなかった血管は捨てた。安定した前収縮に達したとき、血管緊張緩和剤に対する累積した濃度−リスポンス曲線が機能する内皮の存在下に得られた。動脈の各環は、阻害剤と血管緊張緩和剤との単一の組合せに曝された。さらに、可溶性のグアニリルサイクラーゼ阻害剤ODQ (1-H-(1,2,4)-オキサジアゾール(4,3-a)キノキサリン-1-オン)の、化合物によって引き出された血管緊張緩和に対する効果が、動脈の環をODQ (10 μM)とともに20分間、前培養して調べられた。
【0120】
緊張緩和剤に対するリスポンスを残留する収縮のパーセンテージとして表し、試験化合物の濃度に対してプロットした。これらのプロットから、EC50値(ここで、EC50は試験化合物に対する最大の緊張緩和の50%を引き起こす濃度である)を求めた。
試験期間中、NAで得られた横ばい期は、動脈の環における収縮の顕著な自発的な減損を伴わず安定していた。このような実験条件下で、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤は、試験されたいかなる濃度でも緊張緩和を引き起こさず、曲線は媒体だけの存在下に得られたものと異なっていなかった。
本発明のニトロ誘導体は、1-50μM の範囲のEC50値を有している。さらに、ODQ (10 μM)の存在下に行われた試験において、試験化合物に対する緊張緩和リスポンスは阻害された。
【技術分野】
【0001】
この発明は、新規なカルボニックアンヒドラーゼ(carbonic anhydrase)阻害剤誘導体に関する。より詳細には、本発明はドルゾラミド(dorzolamide)および ブリンゾラミド(brinzolamide)のニトロオキシ誘導体、それらを含む医薬組成物、ならびに緑内障、高眼圧症、加齢性黄斑変性、糖尿病性黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、高血圧性網膜症および網膜血管症の治療用医薬としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
緑内障は眼神経の障害であり、しばしば眼内圧の上昇(IOP)を伴い、進行性、不可逆性の失明へと進む。
米国でおよそ300万人の人々、世界では1400万人の人々が緑内障を患っており、これは世界で盲目の3番目の原因となっている。
緑内障は、眼中の液体(水性液)の産生および排出の不均衡により眼圧が不健康なレベルまで上昇したときに起こる。
【0003】
β−アドレナリン作用性アンタゴニスト、α−アドレナリン作用性アゴニスト、コリン作用性物質、プロスタグランジン類似物またはカルボニックアンヒドラーゼ阻害剤のような 、眼中の水性液の産生を低下させるか、または該液体の排出を増加させる薬物を投与することにより、上昇したIOP を少なくとも部分的に制御できることが知られている。
【0004】
緑内障の治療に一般に用いられている医薬は、いくつかの副作用を伴っている。
局所用のβ−アドレナリン作用性アンタゴニストは、重篤な肺の副作用、うつ病、倦怠感、錯乱、不能症、脱毛症、不毛症および徐脈を示す。
局所用のα−アドレナリン作用性アゴニストは、かなり高い出現率でアレルギー性または毒性の反応を有しており、局所用のコリン作用性物質(縮瞳薬)は視覚の副作用を起すことがある。
【0005】
緑内障の治療に用いられる局所用のプロスタグランジン類似物(ビマトプロスト、ラタノプロスト、トラボプラストおよびウノプロストン)は、虹彩の色素沈着の増加、眼性過敏症、結膜の充血、虹彩炎、ブドウ膜炎および黄斑エデマ(oedema)のような眼の副作用を起こすことがある(Martindale, 33版、1445頁)。
【0006】
最後に、経口のカルボニックアンヒドラーゼ阻害剤に伴う副作用は、倦怠感、食欲不振、うつ病、感覚異常および血清電解質異常を含む(The Merck Manual of Diagnosis and Therapy、17版、M. H. Beers および R. Berkow編Sec. 8, Ch. 100)。
【0007】
WO 2006/052899は、新規なニトロソ化および/またはニトロシル化された化合物またはその医薬的に許容される塩、ならびにニトロソ化および/またはニトロシル化された少なくとも一つの化合物と、任意にN-オキサイドドナーおよび/またはα−アドレナリン作用性レセプターアゴニスト、ACE インヒビター、抗菌剤、β−アドレナリン作用性アンタゴニスト、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤、非ステロイド性抗炎症薬、プロスタグランジン、COX-2阻害剤およびステロイドからなる群から選択される少なくとも一つの治療薬とを含む、眼の障害を治療する新規な組成物を開示している。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、親化合物に伴う副作用を除くか、少なくとも低減させるだけでなく、医薬としての活性を改善し得る、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤の新規な誘導体を提供することである。
【0009】
驚くべきことに、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤のニトロオキシ誘導体が、元のカルボニックアンヒドラーゼに比べて、より広範な薬理活性、高められた忍容性、および持続性の眼圧低下作用のいずれの点においても、著しく改善された総体的なプロフィルを有することが見出された。
【0010】
特に、本発明のカルボニックアンヒドラーゼ阻害剤ニトロ誘導体は、高眼圧症の治療および緑内障の予防に用いられ得ることが確認された。
さらに、本発明の誘導体は、加齢性黄斑変性、糖尿病性黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、高血圧性網膜症および網膜血管症の治療に有効であることが見出された。
【0011】
本発明の化合物は、末梢の虹彩切開術またはレーザーイリドプラスティ(iridoplasty)を受けた開放視覚型緑内障または慢性の視角閉鎖症を患っている患者において、眼内圧の低下を示す。
【0012】
本発明の目的は、酸化窒素を放出し得るカルボニックアンヒドラーゼ阻害剤の有効量を投与することを含む、それを必要としている患者における眼の障害、特に緑内障、高眼圧症、加齢性黄斑変性、糖尿病性黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、高血圧性網膜症および網膜血管症を治療する方法である。
【0013】
カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤は、イソエンザイムCAIIに対する阻害定数(Ki)を0.01-200 nMの範囲に有する化合物である。該カルボニックアンヒドラーゼ活性は、以下に報告されるように、カルボニックアンヒドラーゼ阻害に対する試験により測定される。
【0014】
酸化窒素を放出し得るカルボニックアンヒドラーゼ阻害剤は、血管緊張低下において1-50μMの範囲のEC50 値を有する化合物である。該血管緊張低下は、以下に報告されるように、血管の緊張に対する試験により測定される。
【0015】
より具体的には、本発明の目的は、次の一般式(I)のドルゾラミドおよびブリンゾラミドのニトロ誘導体、およびその医薬的に許容される塩または立体異性体である:
R-(X-Y-ONO2)m (I)
(式中、
m は1または2の整数であり;
R は
【化1】
(ここで、
R1 は -CH3 または -(CH2)3-OCH3であり;
R2 はH または一つの基-(X-Y-ONO2)に結合し得る遊離原子価であり;
R' は H または一つの基 -(X-Y-ONO2) に結合し得る遊離原子価であり;
A は炭素または窒素原子であり;
X は -CO-、-COO-であり;
Y は次の意味を有する2価の基である;
【0016】
a) −ハロゲン原子、ヒドロキシ、-ONO2 もしくは T(ここで、Tは-OC(O)(C1-C10 アルキル)-ONO2 または-O(C1-C10 アルキル)-ONO2である)からなる群から選択される一つ以上の置換基で任意にされていてもよい直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C20 アルキレン;
−環が側鎖T1(ここでT1 は直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C10 アルキルである)で任意に置換されていてもよい、シクロアルキレン環中に5〜7の炭素原子を有するシクロアルキレン;
【0017】
b)
【化2】
【0018】
c)
【化3】
(ここで、n は0〜20の整数であり、n1 は1〜20の整数である)
【0019】
d)
【化4】
(ここで、X1 は-OCO- または -COO- であり、R3 は H または-CH3であり、Z は -(CH2)n1- または上記のb)で定義された2価の基であり、n1 は上記で定義されたとおりであり、n2 は0〜2の整数である)
【0020】
e)
【化5】
(ここで、Y1は -CH2-CH2-(CH2)n2-または -CH=CH-(CH2) n2-であり、Z、n1、n2、R3 および X1 は上記で定義されたとおりである)
【0021】
f)
【化6】
(ここで、n1 および R3 は上記で定義されたとおりであり、R0 は H または -COCH3である、
ただし、Y がb)-f)で述べられた2価の基から選択されるとき、末端の-ONO2基は-(CH2)n1に結合している)
【0022】
g)
【化7】
(ここで、X2 は -O- または -S-であり、n3 は 1〜6の整数であり、R3 は上記で定義されたとおりである);
【0023】
h)
【化8】
(ここで、n4は0〜10の整数であり、n5 は1 〜10の整数であり、R4、R5、R6、R7 は、同一または異なって、H または直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C4 アルキルである);
ここで、-ONO2基は
【化9】
(ここで、n5 は上記で定義されたとおりである)
に結合している)、
【0024】
Y2 は窒素、酸素、硫黄から選択される一つ以上のヘテロ原子を含む複素環式飽和もしくは不飽和の、または芳香族の5 もしくは6 員環であり、
【化10】
からなる群から選択される)。
【0025】
この明細書で用いられている用語「C1-C20 アルキレン」は、分枝鎖状もしくは直鎖状のC1-C20の炭化水素鎖を意味し、好ましくはメチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、n-ブチレン、ペンチレン、n-ヘキシレンなどのような1〜10 の炭素原子を有するアルキレンを意味する。
【0026】
この明細書で用いられている用語「C1-C10 アルキル」は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、 イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチルなどを含む、1〜10の炭素原子を有する、分枝鎖状もしくは直鎖状のアルキル基を意味する。
【0027】
この明細書で用いられている用語「シクロアルキレン」は、直鎖状もしくは分枝鎖状の(C1-C10)-アルキル、好ましくはCH3のような側鎖で任意に置換されていてもよい、5〜7の炭素原子を有する環を意味し、シクロペンチレン、シクロヘキシレンを含むが、これらに限定されるものではない。
【0028】
この明細書で用いられている用語「複素環」は、例えばピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピロリジン、モルホリン、イミダゾールなどのような、窒素、酸素、硫黄から選択される一つ以上のヘテロ原子を含む、飽和、不飽和もしくは芳香族の5または6員環を意味する。
【0029】
式(I)の好ましい化合物は、m、R および X が上記で定義されたとおりであり、Y が次の意味を有する2価の基である化合物である。
a) −ハロゲン原子、ヒドロキシ、-ONO2 もしくは T(ここで、Tは-OC(O)(C1-C10 アルキル)-ONO2 または-O(C1-C10 アルキル)-ONO2である)からなる群から選択される一つ以上の置換基で任意にされていてもよい直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C20 アルキレン;
−環が側鎖T1(ここでT1 はCH3である)で任意に置換されていてもよい、シクロアルキレン環中に5〜7の炭素原子を有するシクロアルキレン;
【0030】
b)
【化11】
【0031】
c)
【化12】
(ここで、n は0〜5の整数であり、n1 は1〜5の整数である)
【0032】
d)
【化13】
(ここで、X1 は-OCO- または -COO- であり、R3 は H または-CH3であり、Z は -(CH2) n1- または上記のb)で定義された2価の基であり、n1 は1〜10の整数であり、n2 は0〜2の整数である)
【0033】
e)
【化14】
(ここで、Y1は -CH2-CH2-または -CH=CH-(CH2) n2-であり、Z、n1、n2、R3 および X1 は上記で定義されたとおりである)
【0034】
f)
【化15】
(ここで、n1 および R3 は上記で定義されたとおりであり、R0 は-COCH3である、
ただし、Y がb)-f)で述べられた2価の基から選択されるとき、末端の-ONO2基は-(CH2) n1に結合している)
【0035】
g)
【化16】
(ここで、X2 は -O- または -S-であり、n3 は 1〜4の整数であり、R3 は上記で定義されたとおりである);
【0036】
h)
【化17】
(ここで、n4は0〜3の整数であり、n5 は1 〜3の整数であり、R4、R5、R6、R7 はHである);
ここで、-ONO2基は
【化18】
(ここで、n5 は上記で定義されたとおりである)
に結合している、
【0037】
Y2 は
【化19】
から選択される。
【0038】
以下の化合物は、本発明による好ましい化合物である。
【化20】
【0039】
【化21】
【0040】
【化22】
【0041】
【化23】
【0042】
【化24】
【0043】
【化25】
【0044】
【化26】
【0045】
【化27】
【0046】
【化28】
【0047】
【化29】
【0048】
【化30】
【0049】
【化31】
【0050】
【化32】
【0051】
【化33】
【0052】
【化34】
【0053】
【化35】
【0054】
【化36】
【0055】
【化37】
【0056】
【化38】
【0057】
上記のように、本発明は、式(I)の化合物の医薬的に許容される塩およびその立体異性体も含む。
医薬的に許容される塩の例は、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびアルミニウムの水酸化物のような無機塩基との塩、またはリジン、アルギニン、トリエチルアミン、ジベンジルアミン、ピペリジンおよびその他の許容される有機アミンのような有機塩基との塩の両方である。
【0058】
本発明による化合物は、その分子内に塩となり得る窒素原子を1つ含むとき、アセトニトリル、テトラヒドロフランのような有機溶媒中で、有機酸または無機酸と反応させることにより、対応する塩に変換することができる。
有機酸の例は、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸である。無機酸の例は、硝酸、塩酸、硫酸、リン酸である。硝酸との塩が好ましい.
【0059】
一つ以上の不斉炭素原子を有する本発明の化合物は、光学的に純粋なエナンチオマー、光学的に純粋なジアステレオマー、エナンチオマー混合物、ジアステレオマー混合物、エナンチオマーのラセミ混合物、ラセミ化合物もしくはラセミ混合物として存在することもできる。
【0060】
本発明の範囲には、式(I)の化合物の可能な異性体、立体異性体、および特定の異性体が豊富な混合物を含み、それらの混合物のすべてが含まれる。
前記のように、本発明の目的は、本発明の式(I)の少なくとも一つの化合物を、医薬の分野で通常用いられている非毒性のアジュバントおよび/または担体とともに含む医薬組成物でもある。
好ましい投与経路は局所投与である。
【0061】
本発明の化合物は、眼科的に許容される媒体中の溶液、懸濁液または乳液(分散液)として投与することができる。
ここで用いられる「眼科的に許容される媒体」という用語は、化合物と非反応性であり、かつ患者への投与に適している物質、および物質の組合せを意味する。好ましいのは、患者の眼に局所的に適用するのに適した水性の媒体である。
本発明の眼科用組成物中で用いるのに望ましいその他の成分は、抗菌剤、保存剤、補助溶媒、界面活性剤および増粘剤を含む。
【0062】
本発明は、緑内障または高眼圧症を治療する方法にも関するものであり、該方法は眼圧を下げ、その眼圧を下げられたレベルに維持するために、眼内圧を低下させるのに有効な量の組成物を眼と接触させることからなる。
【0063】
カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤のニトロ誘導体の用量は、標準的な臨床技術により決定することができ、Physician's Desk Reference, Medical Economics Company, Inc., Oradell, N.J., 58版, 2004年; The pharmacological basis of therapeutics, Goodman and Gilman, J. G. Hardman, L. e. Limbird, 10版に報告されているように、誘導体化されていない市販のドルゾラミドおよびブリンゾラミドと同じ範囲、またはそれより少ない量である。
【0064】
本発明の化合物は、緑内障または高眼圧症を治療するのに有用であると知られているその他の医薬と、別々にまたは組み合わせて用いることもできる。
例えば、本発明の化合物は(i)チモロール、ベタキソロール、レボブノロールなどのようなベータ−ブロッカー(米国特許第4,952,581号参照)、(ii)ビマトプロスト、ラタノプロスト、トラボプロストまたはウノプロストンのようなプロスタグランジン類似体、 (iii)アプラクロニジンまたはブリモニジンのようなクロニジン誘導体を含むα−アドレナリン作用性アゴニスト(米国特許第5,811,443号参照)と組み合わせることができる。
【0065】
また、上記の化合物のニトロオキシ誘導体、例えばベータ−ブロッカーのニトロオキシ誘導体(米国特許第6,242,432号)、またはプロスタグランジン類似体のニトロオキシ誘導(WO 2005/068421号)との組合せも可能である。
【0066】
合成方法
1.上記の一般式(I):(式中、
X は-CO-であり、m は1であり、R およびYは上記で定義されたとおりであり、 ここでR'はHであり、R2は遊離原子価である)の化合物は、以下の方法を含む方法により得ることができる。
【0067】
1a. 式Bの化合物を、式(IIIa)の化合物:
【化39】
(式中、Yは上記で定義されたとおりであり、BはRに等しく、R2はHであり、R'はPGであり、ここでPGはジメチルホルムアミジンのようなスルホンアミド保護基である)
と、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDAC)もしくはN,N'-カルボニルジイミダゾール(CDI)またはHATUのようなそのほか公知の縮合剤のような縮合剤の存在下に、DMF、THF、クロロホルムのような溶媒中、-5℃〜50℃の範囲の温度で、例えばDMAP のような塩基の存在下もしくは非存在下に反応させ、次いで得られる化合物をメタノール中で塩酸と反応させて脱保護する。
【0068】
式(IIIa)の硝酸エステル化合物は、市販されている式HOOC-Y-OH (IIIb)の対応するアルコールを硝酸および無水酢酸と-50℃〜0℃の範囲の温度で反応させるか、あるいはWO 2006/008196号に記載されているように、市販されている式HOOC-Y-Hal (IIIc) (ここで、Halはハロゲン原子、好ましくはCl、Br、Iである)の対応するハロゲン誘導体をAgNO3 と反応させることにより、得ることができる。
式B(ここで、R'およびR2はHである)の化合物は、ドルゾラミドおよびブリンゾラミドとして知られている。
【0069】
1b. 上記のように定義された式Bの化合物を、式(IIId)の化合物と反応させる。
【化40】
(式中、Yは上記で定義されたとおりであり、Halはハロゲン原子である)
この反応は、一般に、無機または有機塩基の存在下に、DMF、THFまたはCH2Cl2のような非プロトン性の極性/非極性溶媒中、0℃〜65℃の範囲の温度で行われるか、あるいは2相系H2O/Et2Oで、20℃〜40℃の範囲の温度で行われ、得られる化合物をメタノール中で塩酸と反応させることにより脱保護する。
【0070】
式(IIId)の化合物は、対応する化合物(IIIa)から周知の反応により、例えばトルエン、クロロホルム、DMFなどのような不活性の溶媒中、チオニルもしくはオキサリルクロライド、PIII もしくは PVのハライドと反応させることにより得られる。
【0071】
1c. 式R-X-Y-Hal (IVa)(ここで、R、X、YおよびHalは1-1a において上記で定義されたとおりである)の化合物をAgNO3と反応させ、得られる化合物をメタノール中で塩酸と反応させることにより脱保護する。
化合物(IVa)は、上記で定義されたような化合物Bを化合物(IIIc)と、上記のようにDCCまたはCDIのような縮合剤とともに反応させることにより得られる。
【0072】
1d. 式R-X-Y-OH (Va)(ここで、R、XおよびYは1.で定義されたとおりである)の化合物を、DMF、THFまたはCH2Cl2のような非プロトン性の極性/非極性溶媒中、-60℃〜65℃の範囲の温度で、無水トリフリック酸/テトラアルキルアンモニウムナイトレート塩と反応させ、得られる化合物をメタノール中で塩酸と反応させることにより脱保護する。
化合物(Va)は、上記で定義されたような化合物Bを化合物(IIIb)と、上記のような縮合剤とともに反応させることにより得られる。
【0073】
2.上記で定義された一般式(I):(式中、X は-CO-であり、mは1であり、Rは上記で定義されたとおりであり、R'はHであり、R2は遊離価であり、Yは-ONO2 基で置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C20 アルキルである)の化合物は、以下の方法を含む方法により得ることができる。
【0074】
2a. 式R-X-Y' (VIa)(ここで、Y'は直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C20 アルケニルであり、Rは上記で定義されたとおりであり、R2 はHであり、R'はPGであり、PGはジメチルホルムアミジンのようなスルホンアミド保護基である)化合物を、アセトニトリル中、ヨウ素および硝酸銀と、-20℃〜80℃の範囲の温度で反応させ、得られる化合物をメタノール中で塩酸と反応させることにより脱保護する。
【0075】
化合物(VIa)は、化合物Bを化合物HOOC-Y' (VIIa)と、DMF、THF、クロロホルムのような溶媒中、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDAC)またはN,N'-カルボニルジイミダゾール(CDI) またはHATUのようなその他の公知の縮合剤のような縮合剤の存在下に、-5℃〜50℃の範囲の温度で、例えばDMAPのような塩基の存在下もしくは非存在下に反応させることにより得ることができる。
化合物(VIIa)は市販されている。
【0076】
3.上記の一般式(I):(式中、Xは-COO-であり、mは1であり、RおよびYは上記で定義されたとおりであり、R'はHであり、R2は遊離原子価である)の化合物は、以下の方法を含む方法により得ることができる。
【0077】
3a. 式Bの化合物を、式(VIIIa)の化合物と反応させる。
【化41】
(式中、BはRと同じであり、R2 はHであり、R'はPGであり、PGは ジメチルホルムアミジンのようなスルホンアミド保護基であり、Xは-COO-であり、HalおよびYは上記で定義されたとおりである)
【0078】
この反応は、一般に、無機もしくは有機塩基の存在下に、DMF、THFもしくはCH2Cl2のような非プロトン性の極性/非極性溶媒中、0℃〜65℃の範囲の温度で行われるか、あるいは2相系H2O/Et2Oで、20℃〜40℃の範囲の温度で行われ、次いで得られる化合物をメタノール中で塩酸と反応させることにより脱保護する。
【0079】
式(VIIIa)の化合物は、対応するアルコールHO-Y-ONO2 (VIIIb)から、有機塩基の存在下にトリホスゲンと反応させることにより得られる。
式(VIIIb)の硝酸エステル化合物は、市販されている式HO-Y-OH (VIIIc)の対応するアルコールから、硝酸および無水酢酸と-50℃〜0℃の範囲の温度で反応させるか、あるいは市販されている式HO-Y-Hal (VIIId)(ここで、Halはハロゲン原子、好ましくはCl、BrまたはIである)の対応するハロゲン誘導体を、国際出願WO 2006/008196にすでに記載されているように、AgNO3 と反応させることにより得られる。
【0080】
3b. 式R-X-Y-Hal (IXa) (ここで、R、X、YおよびHalは上記で定義されたとおりである)をAgNO3 と反応させ、次いで得られる化合物をメタノール中で塩酸と反応させることにより脱保護する。
式(IXa)の化合物は、化合物Bを化合物Hal-X-Y-Hal (Xa)と反応させることにより得られる。この反応は、一般に上記のように、無機もしくは有機塩基の存在下に、DMF、THFもしくはCH2Cl2のような非プロトン性の極性/非極性溶媒中、0℃〜65℃の範囲の温度で行われる。化合物(Xa)は市場で入手できる。
【0081】
4.上記で定義された一般式(I):(式中、Xは-COO-であり、m は1であり、Rは上記で定義されたとおりであり、R'はHであり、R2 は遊離原子価であり、Yは-ONO2 基で置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C20アルキルである)の化合物は、以下の方法を含む方法により得ることができる。
【0082】
4a. 式R-X-Y' (XIa)(ここで、Y'は直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C20 アルケニルであり、Rは上記で定義されたとおりであり、R2はHであり、R'はPG であり、PGはジメチルホルムアミジンのようなスルホンアミド保護基である)の化合物を、アセトニトリル中、-20℃〜80℃の間の温度でヨウ素および硝酸銀と反応させ、得られる化合物をメタノール中で塩酸と反応させることにより脱保護する。
【0083】
化合物(XIa)は、化合物Bを化合物Hal-X-Y' (XIIa)と、無機もしくは有機塩基の存在下に、DMF、THFもしくはCH2Cl2のような非プロトン性の極性/非極性溶媒中、0℃〜65℃の範囲の温度で反応させるか、あるいは2相系H2O/Et2Oで 20℃〜40℃の間の温度で反応させることにより得られる。化合物(XIIa) は市場で入手することができる。
【0084】
5.上記で定義された一般式(I)(ここで、Xは-CO-であり、mは1であり、RおよびYは上記で定義されたとおりであり、R2はHであり、R'は遊離価である)の化合物は、以下の方法を含む方法により得ることができる。
【0085】
5a. 式Bの化合物を式(IIIa):
【化42】
(式中、Yは上記で定義されたとおりであり、BはRと同じであり、R2はPG1 であり、PG1 はFmocもしくはAllocのようなアミノ保護基であり、R'はHである)
の化合物と、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDAC)もしくはN,N'-カルボニルジイミダゾール(CDI)、またはHATUのようなその他公知の縮合剤のような縮合剤の存在下に、DMF、THF、クロロホルムのような溶媒中、-5℃〜50℃の範囲の温度で、例えばDMAPのような塩基の存在下もしくは非存在下に反応させ、次いで得られる化合物を、アセトニトリルのような溶媒中、ピペリジンのような有機塩基と20℃〜40℃の範囲の温度で反応させるか、あるいはテトラヒドロフラン中、パラジウムテトラキスの存在下にモルホリンと20℃〜40℃の間の温度で反応させることにより脱保護する。
【0086】
上記で定義された化合物Bは、アミノを基PG1 (ここでPG1 は上記で定義されたとおりである)で保護し、メタノール中で塩酸と反応させてスルホンアミド基を脱保護することにより、1.1a.で定義された化合物Bから得ることができる。
5b. 上記で定義された式Bの化合物を、式(IIId)の化合物と反応させる。
【化43】
(式中、Yは上記で定義されたとおりであり、Actはハロゲン原子、または次のようなペプチド化学で用いられるカルボン酸を活性化させる基である。
【化44】
【0087】
この反応は、一般に、DMF、THFまたはCH2Cl2のような非プロトン性の極性/非極性溶媒中、無機もしくは有機塩基の存在下に0℃〜65℃の範囲の温度で行われるか、または2相系H2O/Et2Oで20℃〜40℃の範囲の温度で行われるか、あるいはDMAP とSc(OTf)3もしくはBi(OTf) 3のようなルイス酸の存在下に、DMF, CH2Cl2のような溶媒中で行われ、得られる化合物をアセトニトリルのような溶媒中、ピペリジンのような有機塩基と20℃〜40℃の範囲の温度で反応させることにより、またはテトラヒドロフラン中パラジウムテトラキスの存在下にモルホリンと20℃〜40℃の範囲の温度で反応させることにより脱保護する。
式(XIIId)の化合物は、WO 2006/008196に記載されているようにして得られる。
【0088】
5c. 式R-X-Y-Hal (XIVa) (ここで、R、X、YおよびHalは5-1aで定義されたとおりである)の化合物をAgNO3と反応させ、得られる化合物をアセトニトリルのような溶媒中、ピペリジンのような有機塩基と20℃〜40℃の範囲の温度で反応させるか、あるいはテトラヒドロフラン中パラジウムテトラキスの存在下にモルホリンと20℃〜40℃の範囲の温度で反応させることにより脱保護する。
【0089】
化合物 (XIVa) は、化合物Bを上記で定義された化合物(IIIc)と、上記のように、DCCまたはCDIのような縮合剤とともに反応させることにより得られる。
5d. 式R-X-Y-OH (XVa)(ここで、R、XおよびYは5.で定義されたとおりである)の化合物を、無水トリフリック酸/テトラアルキルアンモニウム硝酸塩と、DMF、THFもしくはCH2Cl2のような非プロトン性の極性/非極性溶媒中、-60℃〜65℃の範囲の温度で反応させ、得られる化合物をアセトニトリルのような溶媒中、ピペリジンのような有機塩基と20℃〜40℃の範囲の温度で反応させるか、あるいはテトラヒドロフラン中パラジウムテトラキスの存在下にモルホリンと20℃〜40℃の範囲の温度で反応させることにより脱保護する。
化合物(XVa)は、化合物Bを上記で定義された化合物(IIIb) と、上記のような縮合剤とともに反応させることにより得られる。
【0090】
6.上記で定義された一般式(I)(ここで、X は-CO-であり、mは1であり、R は上記で定義されたとおりであり、R2はHであり、R' は遊離原子価であり、Yは-ONO2で置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C20アルキルである)の化合物は、以下の方法を含む方法により得ることができる。
【0091】
6a. 式R-X-Y' (XVIa)(ここで、Y'は直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C20 アルケニルであり、Rは上記で定義されたとおりであり、R'はHであり、R2 はPG1 であり、PG1はFmocもしくはAllocのようなアミノ保護基であり、R'はHである)の化合物を、アセトニトリル中、ヨウ素および硝酸銀と、-20℃〜80°C の間の温度で反応させ、得られる化合物をアセトニトリルのような溶媒中、ピペリジンのような有機塩基と20℃〜40℃の範囲の温度で反応させるか、あるいはテトラヒドロフラン中パラジウムテトラキスの存在下にモルホリンと20℃〜40℃の範囲の温度で反応させることにより脱保護する。
【0092】
化合物(XVIa)は、化合物Bを、DMF、THF、クロロホルムのような溶媒中、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDAC)もしくはN,N’-カルボニルジイミダゾール(CDI)、またはHATUのようなその他公知の縮合剤のような縮合剤の存在下に、化合物 HOOC-Y' (XVIIa)と、-5℃〜50℃の範囲の温度で、例えばDMAPのような塩基の存在下もしくは非存在下に反応させることにより得られる。
化合物(XVIIa)は市場で入手できる。
【0093】
7.上記で定義された一般式(I)(ここで、Xは-COO-であり、mは1であり、RおよびYは上記で定義されたとおりであり、R2はHであり、R'は遊離原子価である)の化合物は、以下の方法を含む方法により得られる。
7a. 式Bの化合物を式(VIIIa)の化合物と反応させる。
【化45】
(式中、BはRと同じであり、R2 はPG1 であり、PG1 はFmoc もしくはAlloc のようなアミノ保護基であり、R'はHであり、Xは-COO-であり、HalおよびYは上記で定義されたとおりである)
【0094】
この反応は、一般に、DMF、THFもしくはCH2Cl2のような非プロトン性の極性/非極性溶媒中、無機もしくは有機塩基の存在下に、0℃〜65℃の範囲の温度で行われるか、あるいは2相系H2O/Et2O中、20℃〜40℃の範囲の温度で行われ、得られる化合物をアセトニトリルのような溶媒中、ピペリジンのような有機塩基と20℃〜40℃の範囲の温度で反応させるか、あるいはテトラヒドロフラン中パラジウムテトラキスの存在下に、モルホリンと20℃〜40℃の範囲の温度で反応させることにより脱保護する。
【0095】
7b. 式R-X-Y-Hal (XIXa)(ここで、R、X、YおよびHalは上記で定義されたとおりである)の化合物を、AgNO3 と反応させ、得られる化合物を上記のようにして脱保護する。
式(XIXa)の化合物は、化合物Bを化合物Hal-X-Y-Hal (Xa)と反応させることにより得られる。
この反応は、一般に、DMF、THFもしくはCH2Cl2 のような非プロトン性の極性/非極性溶媒中、無機もしくは有機塩基の存在下に、0℃〜65℃の範囲の温度で、上記のように行われる。
【0096】
8.上記で定義された一般式(I)(ここで、Xは-COO-であり、mは1であり、Rは上記で定義されたとおりであり、R2はHであり、R'は遊離原子価であり、 Yは-ONO2 基で置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C20アルキルである)の化合物は、以下の方法を含む方法により得られる。
【0097】
8a. 式R-X-Y' (XXa)(ここで、Y'は直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C20アルケニルであり、Rは上記で定義されたとおりであり、R'はHであり、R2はPG であり、PGはジメチルホルムアミジンのようなスルホンアミド保護基である)の化合物を、アセトニトリル中、ヨウ素および硝酸銀と-20℃〜80℃の間の温度で反応させ、得られる化合物をメタノール中で塩酸と反応させることにより脱保護する。
【0098】
化合物(XXa)は、化合物Bを、DMF、THFもしくはCH2Cl2のような非プロトン性の極性/非極性溶媒中、無機もしくは有機塩基の存在下に、化合物Hal-X-Y'(XXIa)と0℃〜65℃の範囲の温度で反応させるか、あるいは2相系H2O/Et2O中2℃〜40℃の範囲の温度で反応させることにより得られる。
化合物(XXIa)は市場で入手できる。
【0099】
9.上記で定義された一般式(I)(ここで、Xは-CO-または-COO-であり、mは2であり、RおよびYは上記で定義されたとおりであり、R'およびR2は遊離原子価である)の化合物は、上記の1-8のような方法により得られる。
【実施例】
【0100】
実施例1
式(33)の化合物の合成:
(4S-トランス)-4-(エチルアミノ)-5,6-ジヒドロ-6-メチル-4H-チエノ[2,3-b]チオピラン-2-スルホニルアミド-N((6-ニトロオキシ)ヘキサノイル)-7,7-ジオキサイド
【化46】
【0101】
A) (4S-トランス)-4-(エチルアミノ)-5,6-ジヒドロ-6-メチル-4H-チエノ[2,3-b]チオピラン-2-スルホニルアミド-N-(ジメチルアミノメチレン)-7,7-ジオキサイド
【化47】
【0102】
DMF(1.4 mL)中のドルゾラミド塩酸塩(722 mg, 2.0 mmol)の溶液に、トリエチルアミン(0.31 mL, 2.2 mmol)およびN,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール (0.32 mL, 2.4 mmol)を加えた。反応をCH2Cl2/MeOH 95/5 (化合物AのRf = 0.41)で溶出するTLC でモニターした。窒素雰囲気下に室温で3時間撹拌した後、氷冷水浴を用いて反応液を0℃に冷却し、水(10 mL)を加えた。水溶液を酢酸エチル(3 x10 mL)で抽出した。AcOEt抽出液を合わせ、水(10 mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、真空下に濃縮して、イミン誘導体A(608 mg, 80%)を白色の固形物として得た。
【0103】
B) (4S-トランス)-4-(アミノ-N-エチル-N-Fmoc)-5,6-ジヒドロ-6-メチル-4H-チエノ[2,3-b]チオピラン-2-スルホニルアミド-N-(ジメチルアミノメチレン)-7,7-ジオキサイド
【化48】
【0104】
ジオキサン(18 mL)およびNa2CO3の10%水溶液(18 mL)中の化合物A(2.65 g, 7 mmol)の溶液を0℃に冷却し、これにFmocCl (1.8g, 7 mmol)のジオキサン(15 mL)溶液を滴下した。0℃で4時間撹拌し、室温で8時間撹拌した後 (反応はn-ヘキサン/i-PrOH 1/1 (化合物BのRf =0.36)で溶出するTLC でモニターした)、反応混合物を真空下に濃縮した。残留する水溶液をAcOEt (3 x 15 mL)で抽出し、有機抽出液を合わせ、Na2SO4 で乾燥し、真空下に濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(グラディエントn-ヘキサン/ AcOEt 90/10〜n-ヘキサン/酢酸エチル20/80)により精製して、化合物B(1.1 g, 34%)を得た。
【0105】
C) (4S-トランス)-4-(アミノ-N-エチル-N-Fmoc)-5,6-ジヒドロ-6-メチル-4H-チエノ[2,3-b]チオピラン-2-スルホニルアミド-7,7-ジオキサイド
【化49】
【0106】
MeOH(30 ml)および37%水性HCl(12 ml)中の化合物B(1.76 g, 3 mmol)の溶液を50℃で12時間撹拌し、還流温度で2時間撹拌し、次いで反応混合物を真空下に濃縮した。濃縮物をCH2Cl2 (20 mL)に溶解し、食塩水(2 x 10 mL)で洗浄した。CH2Cl2抽出液を合わせ、Na2SO4で乾燥し、真空下に濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(n-ヘキサン/アセトン 6/4)により精製して、化合物Cを白色の固形物(0.9 g, 55%)として得た。(CH2Cl2/MeOH 95/5で溶出するTLCでRf=0.58)。
【0107】
D) 4S-トランス)-4-(アミノ-N-エチル-N-Fmoc)-5,6-ジヒドロ-6-メチル-4H-チエノ[2,3-b]チオピラン-2-スルホニルアミド-N-8(6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル)-7,7-ジオキサイド
【化50】
化合物C(0.899 g, 1.64 mmol)のCH2Cl2 (10 ml)溶液に、DMAP (200 mg, 1.64 mmol)およびスカンジウムトリフレート(162 mg, 0.33 mmol)を加えた。この混合物を0℃に冷却し、これに6-(ニトロオキシ)ヘキサノエートペンタフルオロフェニルエステル(0.596 mg, 1.4 mmol)のCH2Cl2 (5 mL)溶液を滴下した。室温で24時間撹拌した後、氷水浴を用いて反応混合物を0℃に冷却し、これに水(20 mL)を加えた。水溶液をCH2Cl2 (3 x10 mL)で抽出した。CH2Cl2抽出液を合わせ、Na2SO4で乾燥し、真空下に濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(溶出液n-ヘキサン/アセトン 50/50)により精製して、化合物D(0.634 g, 55%)を得た。
【0108】
E) 4S-トランス)-4-(アミノ-N-エチル)-5,6-ジヒドロ-6-メチル-4H-チエノ[2,3-b]チオピラン-2-スルホニルアミド-N-8(6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル)-7,7-ジオキサイド
【化51】
化合物D(0.634 g, 0.9 mmol)のアセトニトリル(10 ml)溶液にモルホリン(0.439 mL, 4.5 mmol)を加えた。室温で3時間撹拌した後、反応液を真空下に濃縮した。濃縮物を酢酸エチル(20 mL)に溶解し、NaH2PO4 溶液(2 x 10 mL)で洗浄した。有機抽出液を合わせ、Na2SO4で乾燥し、真空下に濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(グラディエントCH2Cl2 100%〜CH2Cl2/MeOH 94/6)により精製して、化合物E (0.125 g, 37%)を得た。
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 7.40 (1H, s); 4.47 (2H, t); 4.00-3.80 (2H, m); 2.81-2.52 (2H, m); 2.45-2.20( 2H, m); 2.00 (2H, t); 1.55 (2H, m); 1.50-1.40 (2H, m); 1.33 (3H,d), 1.32-1.20 (2H, m); 1.05 (3H, t).
【0109】
実施例2
式(62)の化合物の合成:
(4S-トランス)-4-(アミノ-N-エチル-N-(2,3-ビス(ニトロオキシ) プロピルオキシカルボニル)-5,6-ジヒドロ-6-メチル-4H-チエノ[2,3-b]チオピラン-2-スルホニルアミド-7,7-ジオキサイド
【化52】
【0110】
F) (4S-トランス)-4-(アミノ-N-エチル-N-(2,3- プロペニルオキシカルボニル)-5,6-ジヒドロ-6-メチル-4H-チエノ[2,3-b]チオピラン-2-スルホニルアミド-N-(ジメチルアミノメチレン)-7,7-ジオキサイド
【化53】
【0111】
化合物A(2.65 g, 7 mmol)をCH2Cl2 (30 mL)に溶解し、0℃に冷却し、次いでピリジン(0.56 mL, 7 mmol)、DMAP (33 mg, 0.27 mmol)およびAllocCl (1.27 g, 10.5 mmol CH2Cl2 30 ml中)の溶液を順次加えた。室温で1夜撹拌した後、反応混合物を水(20 mL)中に注ぎ、CH2Cl2 (3 x 10 mL)で抽出した。CH2Cl2 抽出液を合わせ、水(20 mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、真空下に濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(n-ヘキサン/アセトン 1/1 Rf=0.26)で精製して、化合物Fを白色の固形物(1.1 g, 34%)として得た。
【0112】
G) (4S-トランス)-4-(アミノ-N-エチル-N-(2,3- プロペニルオキシカルボニル) -5,6-ジヒドロ-6-メチル-4H-チエノ[2,3-b]チオピラン-2-スルホニルアミド-7,7-ジオキサイド
【化54】
【0113】
化合物F (1.1 g, 2.37 mmol)をMeOH (24 mL)および37% HCl 水溶液(9.5 ml)に溶解した。反応をCH2Cl2/MeOH 95/5 (化合物GのRf=0.26)で溶出するTLC でモニターした。50℃で12時間撹拌し、還流温度で2時間撹拌した後、反応混合物を真空下に濃縮した。残留する濃縮物をCH2Cl2 (20 mL)に溶解し、NaHCO3飽和溶液(10 mL)および食塩水(2 x 10 mL)で洗浄した。CH2Cl2抽出液をNa2SO4で乾燥し、濃縮して、化合物G(530 mg, 55%)を得た。
【0114】
H) (4S-トランス)-4-(アミノ-N-エチル-N-(2,3-ビス(ニトロオキシ) プロピルオキシカルボニル)-5,6-ジヒドロ-6-メチル-4H-チエノ[2,3-b]チオピラン-2-スルホニルアミド-7,7-ジオキサイド
【化55】
【0115】
化合物G(0.265 g, 0.64 mmol)のアセトニトリル(11 mL)溶液に、ヨウ素 (0.165 g, 0.649 mmol)および硝酸銀(331 mg, 1.95 mmol)を加えた。70℃で20時間撹拌した後、反応混合物を真空下に濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(n-ヘキサン/酢酸エチル 1/1)により精製して、モノナイトレート誘導体とジナイトレート誘導体の混合物(0.138 g)を得た。この混合物をアセトニトリル(1,4 mL)に溶解し、硝酸銀(0.098 g)を加えた。マイクロウェーブを用いて120℃で20分間反応を行った。反応混合物を真空下に濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(n-ヘキサン/酢酸エチル1/1)により精製して、化合物Hを白色の固形物(0.066 g, 20%)として得た。
1H-NMR (CDCl3) δ: 7.39 (1H, s); 5.48-5.32 (3H, m); 5.30-5.21 (1H, m); 4.91-4.84 (1H, m); 4.80-4.56 (2H, m); 3.75-3.50(1H, m); 3.45-3.25 (1H, m); 3.3.20-3.08 (1H, m); 3.00-2.85 (1H, m); 2.61-2.45 (1H, m); 1.53 (3H, d); 1.30-1.17 (3H, dt).
【0116】
カルボニックアンヒドラーゼ阻害試験
光物理式停止フローを適用した器具SX.18MV-Rを、CA CO2水和活性を試験するために用いた。フェノールレッド(0.2 mM)をインジケータ(pH 6.8-8.4)として用い、極大吸収557 nmで操作した。緩衝液は10 mM HEPES, 0.1 M Na2SO4およびTRIZMA塩酸塩0.01 Mからなり、NaOH (0,1 M)で溶液のpHを7.5 に調整した。
【0117】
CA-触媒 CO2水和反応を、用いられたイソフォルムによって1〜20秒間行った。CO2の飽和蒸留水中のSatured溶液を基質として20℃で用いた。
阻害剤(1 mM)のストック溶液を10-20% (v/v) DMSOの緩衝液で調製し、0.1 nMまで希釈した。E-Iコンプレックスの生成を考慮して、試験に先立ってインヒビターと酵素の溶液を室温で15分間、前培養した。酵素の濃度はCA IIに対して0.1 μMであった。ヒトCA IIは市場で入手できる。各試験をそれぞれ3回行った。
【0118】
血管のトーンの試験
カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤のニトロ誘導体の血管緊張低下を誘発する能力を、自然のCAIと比較して、ラビットの単離した胸の大動脈組織標本を用いインビトロで試験した(Wanstall J.C.ら、Br. J. Pharmacol., 134:463-472, 2001)。雄のニュージーランドラビットをチオペンタール-Na (50 mg/kg, iv) で麻酔し、瀉血により殺し、次いで胸郭を開き、大動脈を切り離した。大動脈の環状標本 (長さ4 mm) を、小さい器官容器(5 ml)中で37℃の生理食塩水(PSS)にセットした。PSSの組成物は(mM): NaCl 130、NaHCO3 14.9、KH2PO4 1.2、MgSO4 1.2、HEPES 10、CaCl2、アスコルビン酸170およびグルコース1.1 (95% O2 /5% CO2 ; pH 7.4)であった。各環を2 gの受動的緊張下にすえつけた。収縮筋末端が固定された緊張を、BIOPAC MP150システムに取り付けられたGrassトランスデューサ(Grass FT03)で記録した。
【0119】
製剤を1時間平衡させ、次いでノルアドレナリン(NA, 1 μM)で収縮させ、収縮が安定したとき、アセチルコリン(ACh, 10 μM)を加えた。Achに対する緊張緩和応答は、機能的な内皮の存在を示した。NAを収縮させることができなかった血管、またはAchに対して緊張緩和を示さなかった血管は捨てた。安定した前収縮に達したとき、血管緊張緩和剤に対する累積した濃度−リスポンス曲線が機能する内皮の存在下に得られた。動脈の各環は、阻害剤と血管緊張緩和剤との単一の組合せに曝された。さらに、可溶性のグアニリルサイクラーゼ阻害剤ODQ (1-H-(1,2,4)-オキサジアゾール(4,3-a)キノキサリン-1-オン)の、化合物によって引き出された血管緊張緩和に対する効果が、動脈の環をODQ (10 μM)とともに20分間、前培養して調べられた。
【0120】
緊張緩和剤に対するリスポンスを残留する収縮のパーセンテージとして表し、試験化合物の濃度に対してプロットした。これらのプロットから、EC50値(ここで、EC50は試験化合物に対する最大の緊張緩和の50%を引き起こす濃度である)を求めた。
試験期間中、NAで得られた横ばい期は、動脈の環における収縮の顕著な自発的な減損を伴わず安定していた。このような実験条件下で、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤は、試験されたいかなる濃度でも緊張緩和を引き起こさず、曲線は媒体だけの存在下に得られたものと異なっていなかった。
本発明のニトロ誘導体は、1-50μM の範囲のEC50値を有している。さらに、ODQ (10 μM)の存在下に行われた試験において、試験化合物に対する緊張緩和リスポンスは阻害された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化窒素を放出し得るカルボニックアンヒドラーゼ阻害剤の治療的有効量を投与することを含む、それを必要とする患者における眼の障害を治療する方法。
【請求項2】
眼の障害が、緑内障、高眼圧症、加齢性黄斑変性、糖尿病性黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、高血圧性網膜症および網膜血管症である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤が、イソエンチームCAII に対して0.01-200 nMの範囲の阻害定数(Ki)を有する化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
酸化窒素を放出し得るカルボニックアンヒドラーゼ阻害剤が、1-50μMの範囲のEC50値を有する化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
一般式(I) の化合物、またはその医薬的に許容される塩もしくはそれらの立体異性体:
R-(X-Y-ONO2)m (I)
(式中、
m は1または2の整数であり;
R は
【化1】
(ここで、
R1 は -CH3 または -(CH2)3-OCH3であり;
R2 はH または一つの基-(X-Y-ONO2)に結合し得る遊離価であり;
R’ は H または一つの基 -(X-Y-ONO2) に結合し得る遊離原子価であり;
A は炭素または窒素原子であり;
X は -CO-、-COO-であり;
Y は次の意味を有する2価の基である;
a) −ハロゲン原子、ヒドロキシ、-ONO2 もしくは T(ここで、Tは-OC(O)(C1-C10 アルキル)-ONO2 または-O(C1-C10 アルキル)-ONO2である)からなる群から選択される一つ以上の置換基で任意にされていてもよい直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C20 アルキレン;
−環が側鎖T1(ここでT1 は直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C10 アルキルである)で任意に置換されていてもよい、シクロアルキレン環中に5〜7の炭素原子を有するシクロアルキレン;
b)
【化2】
c)
【化3】
(ここで、n は0〜20の整数であり、n1 は1〜20の整数である)
d)
【化4】
(ここで、X1 は-OCO- または -COO- であり、R3 は H または-CH3であり、Z は -(CH2) n1- または上記のb)で定義された2価の基であり、n1 は上記で定義されたとおりであり、n2 は0〜2の整数である)
e)
【化5】
(ここで、Y1は -CH2-CH2-(CH2) n2-または -CH=CH-(CH2) n2-であり、Z、n1、n2、R3 および X1 は上記で定義されたとおりである)
f)
【化6】
(ここで、n1 および R3 は上記で定義されたとおりであり、R0 は H または -COCH3である、
ただし、Y がb)-f)で述べられた2価の基から選択されるとき、末端の-ONO2基は-(CH2) n1に結合している)
g)
【化7】
(ここで、X2 は -O- または -S-であり、n3 は 1〜6の整数であり、R3 は上記で定義されたとおりである);
h)
【化8】
(ここで、n4は0〜10の整数であり、n5 は1 〜10の整数であり、R4、R5、R6、R7 は、同一または異なって、H または直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C4 アルキルであり、
-ONO2基は
【化9】
(ここで、n5 は上記で定義されたとおりである)
に結合しており、
Y2 は窒素、酸素、硫黄から選択される一つ以上のヘテロ原子を含む複素環式飽和もしくは不飽和の、または芳香族の5 もしくは6 員環であり、
【化10】
からなる群から選択される)。
【請求項6】
Yが以下の意味を有する2価の基である、請求項5に記載の一般式(I)の化合物:
a) −ハロゲン原子、ヒドロキシ、-ONO2 もしくは T(ここで、Tは-OC(O)(C1-C10 アルキル)-ONO2 または-O(C1-C10 アルキル)-ONO2である)からなる群から選択される一つ以上の置換基で任意にされていてもよい直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C10アルキレン;
−環が側鎖T1(ここでT1 はCH3である)で任意に置換されていてもよい、シクロアルキレン環中に5〜7の炭素原子を有するシクロアルキレン;
b)
【化11】
c)
【化12】
(ここで、n は0〜5の整数であり、n1 は1〜5の整数である)
d)
【化13】
(ここで、X1 は-OCO- または -COO- であり、R3 は H または-CH3であり、Z は -(CH2)n1- または上記のb)で定義された2価の基であり、n1 は1〜10の整数であり、n2 は0〜2の整数である)
e)
【化14】
(ここで、Y1は -CH2-CH2-または -CH=CH-(CH2)n2-であり、Z、n1、n2、R3 および X1 は上記で定義されたとおりである)
f)
【化15】
(ここで、n1 および R3 は上記で定義されたとおりであり、R0 は-COCH3である、
ただし、Y がb)-f)で述べられた2価の基から選択されるとき、末端の-ONO2基は-(CH2)n1に結合している)
g)
【化16】
(ここで、X2 は -O- または -S-であり、n3 は 1〜4の整数であり、R3 は上記で定義されたとおりである);
h)
【化17】
(ここで、n4は0〜3の整数であり、n5 は1 〜3の整数であり、R4、R5、R6、R7 はHである);
ここで、-ONO2基は
【化18】
(ここで、n5 は上記で定義されたとおりである)
に結合している)
Y2 は
【化19】
から選択される。
【請求項7】
以下の化合物からなる群から選択される、請求項5または6に記載の化合物。
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【請求項8】
医薬として使用するための、請求項5〜7のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
請求項5〜7のいずれかに記載の一般式(I)の化合物および/またはその塩もしくは立体異性体を投与することを含む、緑内障、高眼圧症、加齢性黄斑変性、糖尿病性黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、高血圧性網膜症および網膜血管症の治療方法。
【請求項10】
請求項5〜7のいずれかに記載の一般式(I)の化合物および/またはその塩もしくは立体異性体の医薬的有効量、および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項11】
局所投与に適した形態にある、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
一般式(I)の化合物が、眼科的に許容される媒体中の溶液、懸濁液または乳液として投与される、請求項10または11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
請求項5に記載の一般式(I)の化合物と、(i)β−アドレナリン作用性アンタゴニスト、または(ii)プロスタグランジン類似体、または(iii) α−アドレナリン作用性アゴニスト、あるいはそれらのニトロオキシ誘導体との混合物を含む医薬組成物。
【請求項14】
請求項5に記載の一般式(I)の化合物およびチモロールもしくはそのニトロオキシ誘導体の混合物を含む医薬組成物。
【請求項15】
請求項5に記載の一般式(I)の化合物とラタノプロストまたはそのニトロオキシ誘導体との混合物を含む医薬組成物。
【請求項16】
請求項10に記載の組成物、ならびに(i)β−アドレナリン作用性アンタゴニスト、または(ii)プロスタグランジン類似体、または(iii) α−アドレナリン作用性アゴニスト、あるいはそれらのニトロオキシ誘導体を、同時に、引き続いて、または前もって投与するための医薬的キット。
【請求項17】
請求項10〜15のいずれかに記載の医薬組成物を投与することを含む、緑内障、高眼圧症、加齢性黄斑変性、糖尿病性黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、高血圧性網膜症および網膜血管症の治療方法。
【請求項1】
酸化窒素を放出し得るカルボニックアンヒドラーゼ阻害剤の治療的有効量を投与することを含む、それを必要とする患者における眼の障害を治療する方法。
【請求項2】
眼の障害が、緑内障、高眼圧症、加齢性黄斑変性、糖尿病性黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、高血圧性網膜症および網膜血管症である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤が、イソエンチームCAII に対して0.01-200 nMの範囲の阻害定数(Ki)を有する化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
酸化窒素を放出し得るカルボニックアンヒドラーゼ阻害剤が、1-50μMの範囲のEC50値を有する化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
一般式(I) の化合物、またはその医薬的に許容される塩もしくはそれらの立体異性体:
R-(X-Y-ONO2)m (I)
(式中、
m は1または2の整数であり;
R は
【化1】
(ここで、
R1 は -CH3 または -(CH2)3-OCH3であり;
R2 はH または一つの基-(X-Y-ONO2)に結合し得る遊離価であり;
R’ は H または一つの基 -(X-Y-ONO2) に結合し得る遊離原子価であり;
A は炭素または窒素原子であり;
X は -CO-、-COO-であり;
Y は次の意味を有する2価の基である;
a) −ハロゲン原子、ヒドロキシ、-ONO2 もしくは T(ここで、Tは-OC(O)(C1-C10 アルキル)-ONO2 または-O(C1-C10 アルキル)-ONO2である)からなる群から選択される一つ以上の置換基で任意にされていてもよい直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C20 アルキレン;
−環が側鎖T1(ここでT1 は直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C10 アルキルである)で任意に置換されていてもよい、シクロアルキレン環中に5〜7の炭素原子を有するシクロアルキレン;
b)
【化2】
c)
【化3】
(ここで、n は0〜20の整数であり、n1 は1〜20の整数である)
d)
【化4】
(ここで、X1 は-OCO- または -COO- であり、R3 は H または-CH3であり、Z は -(CH2) n1- または上記のb)で定義された2価の基であり、n1 は上記で定義されたとおりであり、n2 は0〜2の整数である)
e)
【化5】
(ここで、Y1は -CH2-CH2-(CH2) n2-または -CH=CH-(CH2) n2-であり、Z、n1、n2、R3 および X1 は上記で定義されたとおりである)
f)
【化6】
(ここで、n1 および R3 は上記で定義されたとおりであり、R0 は H または -COCH3である、
ただし、Y がb)-f)で述べられた2価の基から選択されるとき、末端の-ONO2基は-(CH2) n1に結合している)
g)
【化7】
(ここで、X2 は -O- または -S-であり、n3 は 1〜6の整数であり、R3 は上記で定義されたとおりである);
h)
【化8】
(ここで、n4は0〜10の整数であり、n5 は1 〜10の整数であり、R4、R5、R6、R7 は、同一または異なって、H または直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C4 アルキルであり、
-ONO2基は
【化9】
(ここで、n5 は上記で定義されたとおりである)
に結合しており、
Y2 は窒素、酸素、硫黄から選択される一つ以上のヘテロ原子を含む複素環式飽和もしくは不飽和の、または芳香族の5 もしくは6 員環であり、
【化10】
からなる群から選択される)。
【請求項6】
Yが以下の意味を有する2価の基である、請求項5に記載の一般式(I)の化合物:
a) −ハロゲン原子、ヒドロキシ、-ONO2 もしくは T(ここで、Tは-OC(O)(C1-C10 アルキル)-ONO2 または-O(C1-C10 アルキル)-ONO2である)からなる群から選択される一つ以上の置換基で任意にされていてもよい直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C10アルキレン;
−環が側鎖T1(ここでT1 はCH3である)で任意に置換されていてもよい、シクロアルキレン環中に5〜7の炭素原子を有するシクロアルキレン;
b)
【化11】
c)
【化12】
(ここで、n は0〜5の整数であり、n1 は1〜5の整数である)
d)
【化13】
(ここで、X1 は-OCO- または -COO- であり、R3 は H または-CH3であり、Z は -(CH2)n1- または上記のb)で定義された2価の基であり、n1 は1〜10の整数であり、n2 は0〜2の整数である)
e)
【化14】
(ここで、Y1は -CH2-CH2-または -CH=CH-(CH2)n2-であり、Z、n1、n2、R3 および X1 は上記で定義されたとおりである)
f)
【化15】
(ここで、n1 および R3 は上記で定義されたとおりであり、R0 は-COCH3である、
ただし、Y がb)-f)で述べられた2価の基から選択されるとき、末端の-ONO2基は-(CH2)n1に結合している)
g)
【化16】
(ここで、X2 は -O- または -S-であり、n3 は 1〜4の整数であり、R3 は上記で定義されたとおりである);
h)
【化17】
(ここで、n4は0〜3の整数であり、n5 は1 〜3の整数であり、R4、R5、R6、R7 はHである);
ここで、-ONO2基は
【化18】
(ここで、n5 は上記で定義されたとおりである)
に結合している)
Y2 は
【化19】
から選択される。
【請求項7】
以下の化合物からなる群から選択される、請求項5または6に記載の化合物。
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【請求項8】
医薬として使用するための、請求項5〜7のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
請求項5〜7のいずれかに記載の一般式(I)の化合物および/またはその塩もしくは立体異性体を投与することを含む、緑内障、高眼圧症、加齢性黄斑変性、糖尿病性黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、高血圧性網膜症および網膜血管症の治療方法。
【請求項10】
請求項5〜7のいずれかに記載の一般式(I)の化合物および/またはその塩もしくは立体異性体の医薬的有効量、および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項11】
局所投与に適した形態にある、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
一般式(I)の化合物が、眼科的に許容される媒体中の溶液、懸濁液または乳液として投与される、請求項10または11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
請求項5に記載の一般式(I)の化合物と、(i)β−アドレナリン作用性アンタゴニスト、または(ii)プロスタグランジン類似体、または(iii) α−アドレナリン作用性アゴニスト、あるいはそれらのニトロオキシ誘導体との混合物を含む医薬組成物。
【請求項14】
請求項5に記載の一般式(I)の化合物およびチモロールもしくはそのニトロオキシ誘導体の混合物を含む医薬組成物。
【請求項15】
請求項5に記載の一般式(I)の化合物とラタノプロストまたはそのニトロオキシ誘導体との混合物を含む医薬組成物。
【請求項16】
請求項10に記載の組成物、ならびに(i)β−アドレナリン作用性アンタゴニスト、または(ii)プロスタグランジン類似体、または(iii) α−アドレナリン作用性アゴニスト、あるいはそれらのニトロオキシ誘導体を、同時に、引き続いて、または前もって投与するための医薬的キット。
【請求項17】
請求項10〜15のいずれかに記載の医薬組成物を投与することを含む、緑内障、高眼圧症、加齢性黄斑変性、糖尿病性黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、高血圧性網膜症および網膜血管症の治療方法。
【公表番号】特表2010−513262(P2010−513262A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540886(P2009−540886)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【国際出願番号】PCT/IB2007/003856
【国際公開番号】WO2008/075155
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(398034032)ニコックス エス エイ (36)
【住所又は居所原語表記】Taissounieres HB4,1681 route des Dolines−BP313,06560 Sophia Antipolis−Valbonne,France
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【国際出願番号】PCT/IB2007/003856
【国際公開番号】WO2008/075155
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(398034032)ニコックス エス エイ (36)
【住所又は居所原語表記】Taissounieres HB4,1681 route des Dolines−BP313,06560 Sophia Antipolis−Valbonne,France
【Fターム(参考)】
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