説明

カーディオイドハイドロホンとそれを用いたハイドロホン装置

【課題】小型軽量で単一球形によってカーディオイド指向性を三軸の各方向に形成することを可能とする。
【解決手段】中空な球形圧電子に、音響整合レジン製の貫通軸が、球形圧電子の中心を通り両端が球形圧電子の外殻を貫通突出して配置固定され、球形圧電子の中心を座標軸の原点とし各軸が直交するXYZ座標系のX,Y及びZとなる仮想軸線のうちいずれかの軸線を貫通軸の軸線に対して直交配置し、且つ他の2軸を貫通軸からそれぞれ等距離となる位置として球形圧電子の外殻にそれぞれ対向する如く一対ずつに円形の切欠部を貫通形成し、各切欠部に円形圧電子が嵌め込まれて球形圧電子に接合係着され、各円形圧電子が球形圧電子の中心に対して等間隔な6方向とされてなり、これら3組の円形圧電子にてカーディオイド指向性をX,Y,Zの三軸方向に得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、試験船甲板設置のケーブルドラム装置から、えい航ケーブルを水中に船尾を経由して繰出し、船体から遠く離して、えい航しながら遠隔海中測定を行うための長尺のホース状アレイにおいて該内部に音響センサ、姿勢センサ等を内蔵した海中音計測用アレイの受波ンサとして配設するため、到来水中音波を効果的に受波するべくカーディオイド指向性を単一の中空球形圧電子で三次元すなわち、前後、左右及び上下の各方向に形成する三次元カーディオイド球形ハイドロホン装置の具現化である。
【背景技術】
【0002】
カーディオイド指向性は、角度に対する相対感度において、0°方向で最大感度、横方向で0°方向の半分, また、180度で最小感度となる特性であり、受波周波数帯の上限で約四分の一波長以下となるような配置の全指向性受波素子によって構成される。
カーディオイド指向性を得るには、例えば、3個の全指向性受波センサを直線状に配列し、受波感度の等しい両端の受波センサ出力E1 ,E2 を逆相並列接続すると、圧力傾度型となって、その出力E3 は(1)式で表される。
【0003】
【数1】

【0004】
上記出力と、位相をπ/2だけずらし、かつ、受波センサの感度を等しく調整等を行う電子回路部を介して中央配置の全指向性受波センサと直列または並列接続した合成出力によって得ることができる。
【0005】
すなわち、(1)式において、kd・sinθ/2≪1の場合
【0006】
【数2】

【0007】
k=2π/λ (λ:音波の波長)
【0008】
中心配置の受波センサの指向性を
【0009】
【数3】

【0010】
とすると、3個の受波センサ出力の合成和は、(3)式になる。
【0011】
【数4】

【0012】
これがカーディオイド指向特性“A(1+cosθ)”になるためには、A=A0 kd,φ=±jπ/2とする必要がある。
【0013】
すなわち、出力を圧力傾度型の最大出力である直線配列方向の値と一致させ、位相をπ/2だけずらせば、それらの合成和によって図2に示すカーディオイド指向性が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第3002722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
カーディオイド指向性を得る場合には、従来の単一の受波センサを同一面に所要間隔で複数個配列構成する。また、上記特許文献1の円筒形カーディオイドハイドロホンでは、単一の円筒形センサを用いた単一方向のみのカーディオイド指向性であるため、新たな技術的向上を企図する装置の高度化には対応が難しい。
【0016】
そこで、収納円筒筐体の軸に対して、単一の中空球形圧電子で、前後、左右及び上下の三軸方向にカーディオイド指向性を保有させたハイドロホン装置が必要となった。
ここでは、単一球によって三次元カーディオイド球形ハイドロホン装置の具現化を課題とするものである。
【0017】
各方向に複数のカーディオイド指向性を得る場合の複数の受波センサをベース上に所要の間隔に配列した場合には、入射音波がベースや各受波センサ間での反射による音波の重畳の影響によってカーディオイド指向性パターンが乱されることが多々ある。
【0018】
また、複数の受波センサの配列で構造が複雑になるばかりか、そのような構造にあっては受波センサの配列構成の組立部全体に複雑な共振を生じ、それが音響信号に重畳することによって、極めて好ましくない周波数特性のハイドロホンになり、良好とする平坦な受波感度周波数特性を想定して構築した指向性が所定のパターンから逸脱して拙いことになる。
【0019】
また、中空球形圧電子の組立部全体の振動による共振特性がある場合、水温や水圧によっても特性が著しく変わるため、計測のつど、その補正やそのための余分な計測作業と共に煩雑で細かい計算作業が発生する。しかも、複合による影響を個々の要因毎に分離することが極めて難しいので、正確な補正を行うことも困難である。ひいては、計測精度の劣化に及ぼす影響も否めない。
【0020】
上記の配列構成によってハイドロホンを製作する場合、従来方法によれば、ハイドロホン各部の材質は、合成ゴム又は合成樹脂製のブーツ、キャップ、ゴム座及びチタン・ジルコン酸鉛系磁器振動子等の構成部品の他は、主として、黄銅とアルミ合金であり、このため、比較的大重量となって、中性浮力を企図から大きく逸脱してしまう。
【0021】
それに伴って強度のある太いケーブルを使うはめになって、ますます重量増となり、持ち運びやケーブル捌き作業にそれだけ人手を余分に要することになる。特に、試験の目的によっては、ハイドロホンを中性浮力にしてケーブルによってえい航する場合とか水中に浮遊させて音響計測をする必要のある時もあるが、上記の材質の場合には、重量の点で、それらの実現が難しい
【0022】
そこで、本発明は、上述した従来の問題点を一挙に解決すべく、小型軽量で単一球形によってカーディオイド指向性を三軸の各方向に形成することができるカーディオイドハイドロホン装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記の目的を達成するために、所定方向からの音波を受波すべく、カーディオイド指向性を持つハイドロホンに関して、円筒筐体の内部に長さ方向に沿うように収納配置して、単一のカーディオイド指向性を径方向に付与する上記特許文献1の円筒形カーディオイドハイドロホンの技術的改善と性能の向上を行うものである。
【0024】
すなわち、本願は、課題の具現化のために、上記円筒形カーディオイドハイドロホンの基本的な技術を発展させ、カーディオイドハイドロホンを構築すると共に、中空球形圧電子を好適な支持構造で構成したハイドロホン装置を特徴とするものである。
【0025】
これを、図1乃至図9の実施の形態を参照して説明すれば、本発明の請求項1記載のカーディオイドハイドロホンは、中空な球形圧電子に、音響的に透明なレジン樹脂よりなる貫通軸が、前記球形圧電子の中心を通り両端が該球形圧電子の外殻を貫通突出して配置固定されており、前記球形圧電子の中心を座標軸の原点とし各軸が直交するXYZ座標系のX軸,Y軸及びZ軸となる仮想軸線のうちいずれかの軸線を前記貫通軸の軸線に対して直交配置し、且つ他の2軸を前記貫通軸からそれぞれ等距離となる位置として、該球形圧電子の外殻を通る前記各仮想軸線を中心としてそれぞれ対向する如く一対ずつに円形の切欠部を前記外殻に貫通形成し、各切欠部には、円板形状の円形圧電子がそれぞれ嵌め込まれ、前記球形圧電子に接合係着され、前記各円形圧電子が前記球形圧電子の中心に対して等間隔な6方向とされてなることを特徴とする。
【0026】
請求項2の発明は、請求項1記載のカーディオイドハイドロホンにおいて、前記球形圧電子は、それぞれが半球形状の二分割構造とされ、互いが接合する接合面に沿い、且つ前記中心を通る位置に前記貫通軸が配設されるとともに、該貫通軸に直交し、前記接合面を通る前記仮想軸線に位置して、前記円形圧電子のいずれか1組が位置し、前記各円形圧電子がそれぞれ配置されることを特徴とする。
【0027】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載のカーディオイドハイドロホンにおいて、前記円形圧電子は、前記球形圧電子の外側球面と同径の球面を備えることを特徴とする。
【0028】
請求項4の発明は、請求項1又は2又は3記載のカーディオイドハイドロホンにおいて、前記球形圧電子のX,Y,Zの各仮想軸線に位置して配置された前記各円形圧電子の出力端子において、対向配置される2個を1対として差し込み圧電材としての円形圧電子の出力を逆相接続して、各仮想軸線方向にて双指向性を得るとともに、前記球形圧電子の前記切欠部を除く他の圧電部位の接続にて全指向性出力を得ることを特徴とする。
【0029】
請求項5の発明は、請求項1,2,3,4のいずれか1つに記載のカーディオイドハイドロホンにおいて、前記円形圧電子による双指向性出力と全指向性出力の各々において、電子回路で互いに90度の位相差を持たせて、前記各仮想軸線上に配置される3組の円形圧電子にてカーディオイド指向性をX,Y,Zの三軸方向に得ることを特徴とする。
【0030】
請求項6の発明は、樹脂素材よりなり中空な球形に形成される球形基盤に、音響的に透明なレジン樹脂よりなる貫通軸が、前記球形基盤の中心を通り両端が該球形基盤の外殻を貫通突出して配置固定されており、該球形基盤の中心を座標軸の原点として各軸が直交するXYZ座標系のX軸,Y軸及びZ軸となる仮想軸線と交わる位置で円形の切欠部を互いに対向する3組として穿設し、各切欠部には樹脂素材よりなり前記球形基盤の球面と同等の球面を有する円形基盤が配設され、該円形基盤は前記球形基盤に対してコンパウンド接合装着されるとともに、該円形基盤の表裏両面に、可撓性を有する高分子圧電材が装着され、前記仮想軸線上の一組における表面又は裏面のいずれか一方の面の前記高分子圧電材を同相並列接続または、同相直列接続して全指向性出力とし、他方の面の前記高分子圧電材を逆相並列接続または、逆相直列接続して双方向性出力として、前記全指向性出力と双方向性出力との合成出力によりカーディオイド指向性を得て、前記球形基盤による単一球形で、前記X,Y,Zの各方向の前記高分子圧電材にて3軸方向にカーディオイド指向性を得ることを特徴とする。
【0031】
請求項7の発明は、請求項6記載のカーディオイドハイドロホンにおいて、前記球形基盤には、表裏を貫通し音響油が出入り可能な流入出孔が形成されていることを特徴とする。
【0032】
請求項8のハイドロホン装置の発明は、前記請求項1〜7のいずれか1つに記載のカーディオイドハイドロホンを用いたハイドロホン装置において、
前記外殻より突出する前記貫通軸の両端を保持するとともに、該外殻表面に対して所定間隔をあけて枠状に配置し、該外殻の表面を囲むガードフレームを備え、良好な音響媒質よりなる音響油内に前記カーディオイドハイドロホンを収容したことを特徴とする。
【0033】
請求項9の発明は、請求項8記載のハイドロホン装置において、前記貫通軸の両端位置で、前記ガードフレームに一端を固定され、前記貫通軸の軸線に対して直交方向に延出して設けられる転動抑止板を具備することを特徴とする。
【0034】
請求項10の発明は、請求項8又は9記載のハイドロホン装置において、円筒形状の収容体よりなり、該収容体の軸線に対し前記貫通軸を斜め方向に配置するとともに、前記収容体の長手方向に沿う軸線と前記仮想軸線の1つを同軸線上とし、前後,左右,上下の6方向に前記各円形圧電子を向けることを特徴とする。
【0035】
本発明は、単一球の三次元の各方向であるX,Y,Z軸方向にカーディオイド指向性の形成付与の検討結果、単一の中空の球形圧電子において、外殻部分の外周面と内周面の肉厚部に複数の円形の切欠部を設け、そこに配設した単独振動する複数の対向する三対の円形圧電子と、それらの出力信号と球形圧電子自体の出力信号を前置増幅器及び制御部の主増幅器、移相器、加算器へ送出し、方向毎に所要の移相と振幅を演算させることにより、単一の中空な球形構造で三軸方向の各々にカーディオイド指向性を実現させるものである。
【0036】
また、球形圧電子を形状及び質量の中心支持で構成することによって、全方向が加速度出力バランスになり、機械的振動に基因する加速度出力電圧の発生が無いという球形における形状特有の優位性を以下の通り検証し知見を得た。
【0037】
すなわち、径方向に分極された球形の圧電素子の半球合体型の単一球において、加振機による加速度感度試験によって、半球合体型接合面支持の平行方向及び垂直方向、いわゆる全方向に加速度感度が無いこと。
【0038】
及び、加速度印加方向を変えた角度に対する加速度出力電圧の測定試験結果において、全周の各方向ともに、加速度出力電圧の発生が無いこと、である。
【0039】
また、球形圧電子は、円筒形や他の形状よりも音響的に点受波器の扱いができる優位性があり、より高周波数域で、高い指向性利得が保有される。さらに、球形圧電子は全指向性で広帯域受波感度周波数特性を保有し、内面が空気室の場合には、比較的高感度であることが知られている。
【0040】
上記事項を踏まえると共に、三次元の各方向にカーディオイド指向性の形成付与の検討結果、単一の中空の球形圧電子において、その外周上に単独振動する複数の対向する三対の円形圧電子を小円径な切欠部に設けることによって、それらの出力信号と各切欠部以外の部位による中空な球形の圧電子自体の出力信号を前置増幅器及び制御器等へ送出し、方向毎に所要の位相と振幅を演算させることにより、単一の球形圧電子で三軸方向の各々にカーディオイド指向性を実現させるものである。
【0041】
なお、機械的振動による加速度出力電圧の発生しない中空な球形圧電子をただ単に収納円筒内に配置するだけでは次に示す理由等によって性能が十分に発揮できない。これは、運用時の微振動環境下における周囲との擦れよる雑音発生、器体からの振動等の混入、及び位置ずれの発生が装置のセンサ部のSN比(S:信号、N:雑音)の劣化となってシステム全体の性能に影響を及ぼすことになる。
【0042】
すなわち、水中音の計測に用いられる水中用受波器において、水中に延出されたケーブルの先端に取り付けられたケーブル軸方向に長尺な円筒体である収納円筒により成る音響受波器群が用いられていて、この種の水中用受波器にあっては、筒内の軸心上に受波素子が保持されていて、水中用受波器に到来した水中の音響波は、水中用受波器のケースを透過して受感部に受波され、その信号電圧は、信号線を経て、船舶等の外部計測機器本体に入力されるようになっている。
【0043】
効果を最大限に引き出すためには、受感部として用いる中空な球形圧電子を形状及び質量の中心支持構成として媒質中に宙ずり状態で保持させ、近隣・近接部品に当たらず、触らず、擦らず、を基本とする球形圧電子の支持設計が肝要である。
【0044】
そのため、本発明においては、以下に述べる新規技術・工夫を取り入れてある。
まず、中空な球形圧電子5の二分割面に沿って球形の中心を通り対向端を貫く音響的に透明となる音響整合レジン樹脂よりなる貫通軸9を装着して、形状および質量中心で支持すること。
【0045】
音響整合レジン樹脂よりなる貫通軸9の装着は、球形圧電子5として合体前の一方の半球において、球形圧電子5の中心を通り対向する両端部位に貫通軸9を水密コンパウンドで接合したのち、さらに他方の半球を被せて合体し、単一の中空な球形圧電子5にすること。
【0046】
なお、音響整合レジン樹脂よりなる貫通軸9には球形の中心軸に相当する部位に渡って貫通孔を設け、球形内周面電極に接合された信号導線8を挿入させ貫通させた後、水密コンパウンド22にて充填接合すること。
【0047】
更にまた、この中空球形圧電子5の外形に沿って外殻表面に対して所定間隔をあけて包囲させ、アレイ収納円筒17等からの伝達振動の影響を回避し、他の器体と直接触れないように、このアレイ17内にカーディオイドハイドロホン4を安置する音響整合レジン樹脂よりなるガードフレーム13を保持させて収納させること。
【0048】
また、位置ずれや擦れ雑音の影響を併せて回避するための音響整合レジン樹脂よりなるガードフレーム13の上下部、例えば貫通軸9の両端に形成した両雄ネジ部12,12に異なる方向に延出するように設けた対となる転動抑止板14を設ける。
【0049】
これを機械的振動の減衰効果を有し、かつ、音響油16の含浸透によって音響透過の良好なる切抜き形成による収容空間部26を有する緩衝発泡体型枠25に、埋納すると共に、その片側に同様な他方の収容空間部26を有する緩衝発泡体型枠25を被せる。
【0050】
また、水中音を受波する球形圧電子5を緩衝発泡体25及び音響媒質、例えば、ひまし油又はシリコンオイルなどの中に浮いている状態の環境下とすることによって、他の器体と直接触れることの無いようにさせて、器体等からの振動の影響を避けること。これにより、良好な受波感度周波数特性とカーディオイド指向特性が得られる。
【0051】
また、球形圧電子5を好適に支持することによって、ハイドロホンとして具備すべき加速度感度を低くし、受波感度を高く維持して、感度比(加速度感度と受波感度の比)の向上及び良好な広帯域受波感度周波数特性が見込まれる。
【0052】
さらに、上記をテンションメンバとして機能し、各センサの位置ずれを防止する円筒状に形成し、センサを出し入れするための孔が切欠いてある円筒織布24に該センサ等を組み入れ所望のテンションを持たせて包納すること。
【発明の効果】
【0053】
本発明のカーディオイドハイドロホンは、振動環境下で使用される長尺柔軟アレイの中空な球形圧電子として、球形圧電子そのものだけでの構成、また、カーディオイドハイドロホンを用いたハイドロホン装置として、極めて好適な小寸法に構成できる上、曲げ半径も小さくてなって艦上ウインチやその付帯設備が小型になる等、以下に示す効果がある。
【0054】
単一の中空な球形圧電子によって、X,Y,Zの三軸方向にカーディオイド指向性を水中側(ウエットエンド側)のセンサ部で実現させたことにより、捜索センサアレイの新たなる広範な運用展開が可能となった。また、船上側(ドライエンド側)の多額の経費による信号処理の複雑なソフトウエア構築を解消させ、かつまた、電子回路が簡便化できので、著しい経費削減と工数低減効果となる。
【0055】
特に、細径・長尺柔軟アレイの軸方向にもカーディオイド指向性の形成を実現させたことは、従来、不可能とされていた長尺アレイのブラインドゾーン等の改善・解消することが可能となる。
【0056】
また、アレイをえい航するえい航ケーブルが、無捻回設計してあっても、ケーブルヤードでのコイル状保管による巻癖等により、実海面で運用時にケーブル捻じれが生じ、えい航速度に伴う水流抵抗に大きく依存し、後続接続してある受波アレイを軸方向に傾かせる。このような好ましくないアレイの軸方向傾きは、水中探査装置の性能に大きく影響を及ぼし、えい航速度に大きく依存する。しかしながら、えい航ケーブル等を巻き込み・繰り出しすると共に、軸方向にも回転させるケーブルドラム装置との組み合わせによって、また、長尺アレイに内蔵の姿勢センサのうちのロール角出力に基づき、ケーブルドラム装置で、えい航ケーブルを軸方向に回転制御させて、後続接続の長尺アレイを所要ロール角に設定して、えい航ができるので、水中音響探査装置の目標音到来方向の判定を確実・容易にさせて捜索の性能向上と捜索エリアの拡大が出来る。また、多くの工数と多額な経費構築のソフトウエア補完が不用になるので費用効果は絶大である。
【0057】
さらに、従来の円筒形圧電子の構造よりも受波アレイの細径化が可能になることによる流体抵抗の低減効果は、その分、ウエットエンドの連接部複雑構造が比較的簡易化できる等、製造工数が大幅に低減できる。
【0058】
また、長尺の受波アレイに内蔵収納した姿勢センサのうちの径方向姿勢センサ出力信号に基づき、試験船の甲板上に設置したケーブルドラム装置を用いることによって、受波アレイの径方向姿勢が容易に制御できるので、到来音波方向が正確に把握可能となる。加えて、径方向の指向性形成を行うために、複数本の長尺アレイを水平並列えい航する方法よりも、本願のカーディオイドハイドロホンによれば、単一アレイでカーディオイド指向性が実現するので、水中えい航体を用いた従来の概念よりも極めて斬新である。本願は、それよりも、えい航ケーブルの強度をより低く、細径化設計が可能となって、さらには、甲板ウインチの小型化と所要パワーの低減化、並びに、付帯設備の小型化が図られる。また、これによって、運用作業の煩雑性回避、試験船運航難易の回避に著しい効果があり、それらのトータルコスト低減効果は極めて大きいものである。
【0059】
運用面においても、有効なカーディオイド指向性形成には、複数本の長尺アレイを並行にえい航する必要があるが、本発明のカーディオイドハイドロホンによれば、単一アレイにより、従来の円筒形圧電子に比べて構造がより単純になって、長尺アレイの細径化ができ、構造の簡易化となり、またアレイの曲げ半径も小さくてなって艦上ウインチ並びに付帯設備も小型になるほか、流体抵抗の低減効果により、高速運用を可能として、捜索エリアの拡大が出来る等、省力化及び多くの経費節減と運用に対する利便性の効果は絶大である。
【0060】
また、本発明のカーディオイドハイドロホンでは、樹脂製の球形基盤よりなり、媒質に全没できて空気室が無く、併せて高分子圧電材よりなる円形圧電子を用いて、高水圧環境下においても有効に機能するなど、単一な球形で浅深度から深深度までX,Y,Z軸に沿う3軸方向にカーディオイド指向性を形成させることが可能となる。
【0061】
このような構造によれば、振動環境下で使用される長尺柔軟アレイの中空球形圧電子として極めて好適である。
【0062】
さらに、このようなセンサ構成としたことで、僅かな工夫で加速度出力電圧の低減と静電容量と信号出力電圧を勘案した直並列接続で受波感度を高く、かつ、低出力インピーダンスにすることができるので、ソフトウエア対応では至難な装置のSN比が容易に向上できる。
【0063】
また、X,Y,Zの三軸方向にカーディオイド指向性を有し、かつまた、広帯域周波数特性及び加速度バランス等の優位性を持つ中空球形圧電子で配列整相した本発明は、従来の円筒形状や他の形状よりも音響的に点受波器の扱いができる優位性があるため、より高周波数域まで、高い指向性利得が保有される。また、ライン状に整相した場合、本発明は、円筒形状や他の形状の受波素子よりも副極のレベルが大幅に改善されて高指向性利得になり、目標音の到来方向の判定が極めて向上する。また、SN比のより高い好適な信号が後続する信号処理、整相処理の主要回路に送出でき、システムとしての性能が飛躍的に向上する等、費用効果と効果は絶大である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明によるカーディオイドハイドロホンの外観を示す斜視図である。
【図2】カーディオイド指向性パターンを示す図である。
【図3】本発明によるハイドロホン装置に備えられるカーディオイドハイドロホンのガードフレーム外観を示す斜視図である。
【図4】本発明によるカーディオイドハイドロホンを用いたハイドロホン装置の斜視図である。
【図5】本発明によるハイドロホン装置の中央部断面図である。
【図6】本発明のカーディオイドハイドロホンの構成系統を示す図である。
【図7】本発明よるハイドロホン装置の実施形態図である。
【図8】本発明の他の実施の形態によるカーディオイドハイドロホンの構成外観を示す斜視図である。
【図9】本発明の図8のカーディオイドハイドロホンを用いたハイドロホン装置の中央断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図1は、本発明によるカーディオイドハイドロホンの外観を示す斜視図である。
本発明のカーディオイドハイドロホンは、図1に示すように、球形圧電子5と、円形圧電子7と、貫通軸9とで略構成されている。
【0066】
球形圧電子5は、半球形に二分割な構造とされ、この分割構造を接合部充填材11にて一体に接合して中空な球形状構造としている。貫通軸9は音響整合レジン樹脂よりなり、球形圧電子5に貫通して設けられる。
【0067】
この貫通軸9は、球形圧電子5を合体組立てさせる際の接合材等の施工と共に組み付けられる。球形圧電子5に対する組み付け位置は、半球状となる互いの接合面5aに沿い、且つ球の中心を通る位置とされ、貫通軸9の両端は、球形圧電子5の外方に突出する。
【0068】
球形圧電子5において、貫通軸9と平行する分割面5a上の中心軸を基準にし、且つ球の中心を基準として球形圧電子5の均等6方向、すなわち球面上にいわゆる正六面体を想定する各面に相当した位置の互いに対向する面となる周面上のX,Y及びZ軸方向に対応する箇所、別言すると、球形圧電子5の中心を座標軸の原点とし各軸が直交するXYZ座標系のX軸、Y軸、Z軸となる仮想軸線と球形圧電子5の外殻と交わる位置に計6個の小円径な切欠部6が形成されている。
【0069】
この切欠部6にて切り抜かれた圧電子(圧電材)、或いは別構成の圧電材よりなる円形圧電子7を、この切欠部6に充填剤10等で球形圧電子5に嵌め、切欠部6を塞ぐように設ける。このときに同時に、上記分割した半球の圧電材で音響整合レジン樹脂製の貫通軸9を挟むと共に再び球形にすべく合体接合させる。
【0070】
なお、各円形圧電子7は、平滑な円板形状としてもよく、球形圧電子5の球面と同等の球面にて形成されるものであってもよい。
【0071】
これによって、図1に示すように球形圧電子5の外周面の均等な三組の各方向、計6個に独立センサとして、対向する3組のリード線36を具備する円形圧電子7を有し、音響整合レジン樹脂製の貫通軸9で支持する中空な球形圧電子5を備えるカーディオイドハイドロホンが得られる。
【0072】
図4は、本発明によるカーディオイドハイドロホンを用いたハイドロホン装置の斜視図、図5は、本発明によるハイドロホン装置の中央部断面図である。
つぎに、上記構成のカーディオイドハイドロホン4を用いたハイドロホン装置100は、収納筐体と球形圧電子5の受音面との接触、擦れの防止のために、球形圧電子5の外周面上に沿う形状の音響整合レジン樹脂よりなる図3に示すガードフレーム13内に球形圧電子5を組み込み包納した構成とされる。なお、このガードフレーム13は、図3に示しように、湾曲枠形状とされて、上下の締め付け袋ナット15等にて貫通軸9と締結固定される。
【0073】
本発明のカーディオイドハイドロホン4において構成する電子回路は、図6のカーディオイドハイドロホン装置の構成系統で示すように、前記全指向性出力2と双指向性出力3とをインピーダンス変換して出力する前置増幅器28と、前記双指向性出力3の互いに180度の向きの最大感度と前記全指向性出力2の感度を等しくさせる主増幅器34と前記全指向性出力2または双指向性出力3の位相を2分のπずらす移相器30と加算器31を、X,Y及びZ方向の各軸に備えたことを特徴とする。
【0074】
すなわち、共通使用する球形圧電子5の切欠部6以外の圧電部位を全指向性出力2の信号線端子から、前置増幅器28でインピーダンス変換し、制御部29において双指向性出力3と全指向性出力2の各々を振幅調整と90度の位相差を持たせて加算器31で加算させカーディオイド指向性1を形成させる。
【0075】
このようにして、X軸,Y軸,Z軸の各軸方向毎に単一球構造によってカーディオイドハイドロホン4を用いたハイドロホン装置100が得られる。
【0076】
これを、図7のハイドロホン装置100の概略斜視図を示すように、細径な構成であり且つ柔軟とされ、長尺な形状の受波アレイである円筒形状の収納体17に、カーディオイドハイドロホン4を構成する音響整合レジン樹脂よりなる貫通軸9を、収容体17の軸線方向に対し斜めに、好ましくは45°となるように収容する。これによって受波アレイである収容体17の長さ方向に対して、前後、左右及び上下の各方向となる6方向に円形圧電子7が向くこととなって、カーディオイド指向性が単一の球形の構造によって実現できる。なお、ハイドロホン装置100として構成されるこの収容体17には、円筒形の内部に発泡樹脂などで構成される円筒部27、この円筒部27の内部に軸線方向で配置されるテンションメンバ23、このテンションメンバ23を支持する円筒織布24、円筒織布24の内部でカーディオイドハイドロホン4を収容し支持するとともに、このカーディオイドハイドロホン4に接続される信号導線8を支持する緩衝発泡体型枠25を具備してなる。そして、緩衝発泡体型枠25には、収容空間部26が形成され、上記したカーディオイドハイドロホン4が収容され固定される。収容空間部26内では、カーディオイドハイドロホン4は、上記した通り、貫通軸9が支持固定され、且つこの貫通軸9の両端に固定される転動抑止板14が固定されて、さらに空間内には音響油16が満たされる。
【0077】
また、図8に示す他の実施の形態は、軽量で音響的に透明な樹脂である音響整合レジン樹脂よりなる球形基盤20を用いたカーディオイドハイドロホン4Aの場合であって、次の通りである。
【0078】
この実施の形態のカーディオイドハイドロホン4Aは、球形基盤20の構成として、上記球形圧電子5と同様の形状構成とされ、すなわち二分割構造とされて、半球状の各部を接合面にて合体している。また、音響整合レジン樹脂よりなる貫通軸9が、球形基盤20の接合面と平行とされ、球の中心を通る位置に配置され、両端は球形基盤20よりも突出するように貫通配置されている。
【0079】
また、球形基盤20の外殻には、この球形基盤の中心を座標軸の原点として各軸が直交するXYZ座標系のX軸,Y軸及びZ軸となる仮想軸線と交わる位置となる6か所に円形の切欠部18を互いに対向する3組として穿設されている。6個の各切欠部18には、樹脂素材よりなり前記球形基盤20の球面と同等の球面を有する円形基盤35が配設され、球形基盤20に対してコンパウンド22にて接合装着されている。
【0080】
また、この球形基盤20の6個の切欠部18を除く他の部位には、流入出孔21が外殻の表裏を貫通して設けられている。この流入出孔21は、球形基盤20の内外を良好な音響媒質よりなる音響油が出入り可能となる。
【0081】
球形基盤20の切欠部18に装着される円形基盤35には、円形圧電子19が装着されている。この圧電材としては、圧電磁器、高分子圧電材及び圧電ゴム並びに光ファイバーがある。
【0082】
本発明では、そのうちの一例として、球形基盤20と同等の素材である音響整合レジン樹脂よりなる円形基盤35を用いて、その表面と裏面の両面に高分子圧電材よりなる円形圧電子19を装着し、これをコンパウンド接合材で球形基盤20の所要箇所、すなわち上述した6個の切欠部18に嵌め込みを行うと共に、球形基盤20を構成する二分割構造の半球を音響整合レジン樹脂よりなる貫通軸9で挟み、再び球形にすべく接合合体させる構成としている。
【0083】
本実施の形態のカーディオイドハイドロホン4Aに適用している高分子圧電材よりなる円形圧電子19は、従来の箔膜フィルムのように、補強材である基盤の伸縮による歪みに依存した出力電圧を得るものとは異なり、0.5mm以上の厚さを有するものであり、主として、高分子圧電材自体(円形圧電子19自体)の体積変化によって出力電圧を得るものである。
これによって、球形基盤20の周面の均等三方向、すなわち上述したX,Y,Z軸の3方向に独立センサとして対向する3組の円形基盤35の円形圧電子19を表裏に有し、音響整合レジン樹脂よりなる貫通軸9で支持されるカーディオイドハイドロホン4Aが球形基盤20によって得ることができる。
【0084】
この実施の形態のカーディオイドハイドロホン4Aでは、例えば、球形基盤20の表面の円形圧電子19の対向する各出力端子を逆相接続した双指向出力を前置増幅器28でインピーダンス変換して双指向性、すなわちX,Y,Zの各軸方向に双指向性を得る。
【0085】
そして、図6に示すように、球形基盤20の裏面の円形圧電子19の個々の出力を同相接続して、すなわち、全指向性出力2を、互いに接続して共有使用し、その出力を前置増幅器28でインピーダンス変換し、制御部29において双指向性出力3と全指向性出力2の各々を振幅調整と加算させる。すなわち、移相器30で互いに90度の位相差を持たせて、それを加算器31で加算させることよって、カーディオイド指向性1を形成させる。
【0086】
このようにして、第1から第3番目まで,すなわち、X,Y,Zの各軸方向に単一球構造によって得られ、また、軽量で音響的に透明な樹脂である音響整合レジン樹脂製の球形基盤20を用いて、かつまた、深々度まで使用するための音響油16の流入出による内外圧平衡方式採用の構造によって、図9の中央断面図で示すハイドロホン装置200が実現できる。
【0087】
これを、上記実施の形態と同様に図7に示すように、長尺な受波アレイである円筒形状の収容体17に、音響整合レジン樹脂製の貫通軸9を斜めに、本実施の形態では45°となるように収容する。これによって運用時には、受波アレイである収容体17の前後、左右及び上下の各方向となる6方向に円形圧電子19が向き、カーディオイド指向性1を形成するものである。
【0088】
併せて、音響整合レジン樹脂製の球形基盤20の内部には、この球形基盤20に流入出孔21が複数穿設されており、音響油16が流出入し、内外圧平衡となって深々度まで運用可能なカーディオイドハイドロホンを用いたハイドロホン装置200が実現できる。
【0089】
本発明は、すなわち、以下の構成を必須とするものである。
二分割形状を接合して構成される単一な球形構造となる中空な球形圧電子5と、この球形圧電子5の中心を通り両端が外殻を貫通して突出する音響整合レジン製の貫通軸9と、球形圧電子5の中心を座標軸の原点とし各軸が直交するXYZ座標系のX軸,Y軸及びZ軸となる仮想軸線のうちいずれかの軸線を貫通軸9の軸線に対して直交配置し、且つ他の2軸を貫通軸9からそれぞれ等距離となる位置として、球形圧電子5の外殻を通る均等三方向の各仮想軸線を中心としてそれぞれ対向する如く一対ずつに6個の円形の切欠部6を外殻に貫通形成して、各切欠部6には、独立センサとして円板形状の円形圧電子7がそれぞれ嵌め込まれて3組構成とし、球形圧電子5に接合係着され、各リード線36付きの円形圧電子7が球形圧電子5の中心に対して等間隔な6方向とされてなり、これをカーディオイドハイドロホン4とし、このカーディオイドハイドロホン4を構成する球形圧電子5の受音面との接触防止のために、球形圧電子5の外周面上に沿う音響整合レジン樹脂製のガードフレーム13を備え、対向して二個一対となる円形圧電子7出力の各々を逆相接続して、X,Y,Zの各軸方向に双指向性3を得ること、同時に球形圧電子5の切欠部6以外のリード線36付き圧電子部位を共通使用して全指向性出力2を得ること、また、双指向性出力3と全指向性出力2の各々を用いて、カーディオイド指向性1をX,Y,Zの各軸方向に得ること、さらに、円筒形受波アレイ収納体17に収容し構成させることによって、受波アレイ収容体17の前後、左右及び上下の各方向、すなわち三次元方向にカーディオイド指向性を単一球構造にて実現させることを可能とするハイドロホン装置100を得る。
【0090】
また、深々度まで使用するために内外圧平衡を可能として構成されるカーディオイドハイドロホン4A、及びそれを用いたハイドロホン装置200として、単一な構造となる球形基盤20を用いて、球形基盤20の均等要部、すなわち上記同様に球形基盤20の中心に対し均等な6方向に穿孔して設けた6個の小円径な切欠部18に、球形基盤20と同等の樹脂素材で球形基盤20の球面と同等の球面に掲載される円形基盤35の表裏両面に、例えば、可撓性を有する高分子圧電材よりなる円形圧電子を装着し、その周辺をコンパウンド充填接合係着によって、単一な球形基盤20のX,Y,Zの三軸方向に独立センサとして円形圧電子による受感部を対向する3組、すなわち6方向にに得る。併せて、中空構造の球形基盤20の必要箇所に受波アレイ収容体17に充填される音響油16が自在に流出入するための音響油流入出孔21を設ける構成とする。このような構成により、深々度まで使用するための内外圧平衡にして成るカーディオイドハイドロホン4Aを用いたハイドロホン装置200が実現される。
【符号の説明】
【0091】
4.4A…カーディオイドハイドロホン
5…球形圧電子
6,18…切欠部
7,19…円形圧電子
9…貫通軸
13…ガードフレーム
14…転動抑止板
17…収納体
20…球形基盤
21…流入出孔
35…円形基盤
100,200…ハイドロホン装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空な球形圧電子に、音響的に透明なレジン樹脂よりなる貫通軸が、前記球形圧電子の中心を通り両端が該球形圧電子の外殻を貫通突出して配置固定されており、前記球形圧電子の中心を座標軸の原点とし各軸が直交するXYZ座標系のX軸,Y軸及びZ軸となる仮想軸線のうちいずれかの軸線を前記貫通軸の軸線に対して直交配置し、且つ他の2軸を前記貫通軸からそれぞれ等距離となる位置として、該球形圧電子の外殻を通る前記各仮想軸線を中心としてそれぞれ対向する如く一対ずつに円形の切欠部を前記外殻に貫通形成し、各切欠部には、円板形状の円形圧電子がそれぞれ嵌め込まれ、前記球形圧電子に接合係着され、前記各円形圧電子が前記球形圧電子の中心に対して等間隔な6方向とされてなることを特徴とするカーディオイドハイドロホン。
【請求項2】
前記球形圧電子は、それぞれが半球形状の二分割構造とされ、互いが接合する接合面に沿い、且つ前記中心を通る位置に前記貫通軸が配設されるとともに、該貫通軸に直交し、前記接合面を通る前記仮想軸線に位置して、前記円形圧電子のいずれか1組が位置し、前記各円形圧電子がそれぞれ配置されることを特徴とする請求項1記載のカーディオイドハイドロホン。
【請求項3】
前記円形圧電子は、前記球形圧電子の外側球面と同径の球面を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のカーディオイドハイドロホン。
【請求項4】
前記球形圧電子のX,Y,Zの各仮想軸線に位置して配置された前記各円形圧電子の出力端子において、対向配置される2個を1対として差し込み圧電材としての円形圧電子の出力を逆相接続して、各仮想軸線方向にて双指向性を得るとともに、前記球形圧電子の前記切欠部を除く他の圧電部位の接続にて全指向性出力を得ることを特徴とする請求項1又は2又は3記載のカーディオイドハイドロホン。
【請求項5】
前記円形圧電子による双指向性出力と全指向性出力の各々において、電子回路で互いに90度の位相差を持たせて、前記各仮想軸線上に配置される3組の円形圧電子にてカーディオイド指向性をX,Y,Zの三軸方向に得ることを特徴とする請求項1,2,3,4のいずれか1つに記載のカーディオイドハイドロホン。
【請求項6】
樹脂素材よりなり中空な球形に形成される球形基盤に、音響的に透明なレジン樹脂よりなる貫通軸が、前記球形基盤の中心を通り両端が該球形基盤の外殻を貫通突出して配置固定されており、該球形基盤の中心を座標軸の原点として各軸が直交するXYZ座標系のX軸,Y軸及びZ軸となる仮想軸線と交わる位置で円形の切欠部を互いに対向する3組として穿設し、各切欠部には樹脂素材よりなり前記球形基盤の球面と同等の球面を有する円形基盤が配設され、該円形基盤は前記球形基盤に対してコンパウンド接合装着されるとともに、該円形基盤の表裏両面に、可撓性を有する高分子圧電材よりなる円形圧電子が装着され、前記仮想軸線上の一組における表面又は裏面のいずれか一方の面の前記円形圧電子を同相並列接続または、同相直列接続して全指向性出力とし、他方の面の前記円形圧電子を逆相並列接続または、逆相直列接続して双方向性出力として、前記全指向性出力と双方向性出力との合成出力によりカーディオイド指向性を得て、前記球形基盤による単一球形で、前記X,Y,Zの各方向の前記円形圧電子にて3軸方向にカーディオイド指向性を得ることを特徴とするカーディオイドハイドロホン。
【請求項7】
前記球形基盤には、表裏を貫通し音響媒質よりなる流体が通過可能な流入出孔が形成されていることを特徴とする請求項6記載のカーディオイドハイドロホン。
【請求項8】
前記請求項1〜7のいずれか1つに記載のカーディオイドハイドロホンを用いたハイドロホン装置において、
前記外殻より突出する前記貫通軸の両端を保持するとともに、該外殻表面に対して所定間隔をあけて枠状に配置し、該外殻の表面を囲むガードフレームを備え、音響媒質よりなる音響油内に前記カーディオイドハイドロホンを収容したことを特徴とするハイドロホン装置。
【請求項9】
前記貫通軸の両端位置で、前記ガードフレームに一端を固定され、前記貫通軸の軸線に対して直交方向に延出して設けられる転動抑止板を具備することを特徴とする請求項8記載のハイドロホン装置。
【請求項10】
円筒形状の収容体よりなり、該収容体の軸線に対し前記貫通軸を斜め方向に配置するとともに、前記収容体の長手方向に沿う軸線と前記仮想軸線の1つを同軸線上とし、前後,左右,上下の6方向に前記各円形圧電子を向けることを特徴とする請求項8又は9記載のハイドロホン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−212874(P2010−212874A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55182(P2009−55182)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(390014306)防衛省技術研究本部長 (169)
【Fターム(参考)】