説明

カード用コネクタ

【課題】SIMカード等の小型のカードの挿入及び排出の操作性を向上させた、いわゆるプッシュ−プッシュ式のイジェクト機構を備えたカード用コネクタを提供する。
【解決手段】カード用コネクタ1は、ハウジング10に配置されてカード排出方向にカードCを排出するプッシュ−プッシュ式のイジェクト機構40を備えている。イジェクト機構40は、カードCの前部に当接し、カード排出方向にばね部材70により付勢され、嵌合位置、押圧位置及び排出位置間を移動可能なスライダ50を備える。スライダ50は、排出位置よりも後方へ突出した引き出し位置に移動可能であると共に、スライダ50と一体に形成され、カードCに当接するようカードCの後端辺に沿って延びる突出部54を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SIMカード(Subscriber Identity Module Card)等の小型のカードが接続されるカード用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メモリカード等のカードが接続されるカード用コネクタとしては、いわゆるプッシュ−プッシュ式のイジェクト機構を採用したものが知られている(特許文献1参照)。
この特許文献1に記載されたカード用コネクタは、カードが挿入されると共に複数のコンタクトを取り付けたハウジングと、ハウジングに配置されてカード排出方向にカードを排出するプッシュ−プッシュ式のイジェクト機構とを備えている。そして、このイジェクト機構は、カードの先端に当接し、カード排出方向にばね部材により付勢されてカードを排出するスライダと、スライダをカード排出方向に沿った嵌合位置及び排出位置に静止させるカム機構とを備えている。
【0003】
そして、このプッシュ−プッシュ式のイジェクト機構を備えたカード用コネクタにおいては、スライダが排出位置(最も後退した位置)にあるときにカードを挿入する。カードを挿入すると、カードの前端がスライダに当接する。この時点でカードの後端がコネクタから突出する。そして、更にカードの後端を押圧すると、スライダが前進して嵌合位置となり、カードとコンタクトとが電気的に接続され、カードの挿入が完了する。カードを排出する際には、カード挿入完了状態からカードを再度押圧してカードを離す。すると、ばね部材の作用によりスライダが後退して排出位置になり、カードもスライダとともに後退する。これにより、カードがコネクタから突出し、カードを排出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−353372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、携帯電話で使われている電話加入者を特定するための固有のID番号が記録されたICカードとして、いわゆるSIMカードが普及している。このSIMカードは、元来、カード用コネクタに対して頻繁に挿入及び排出をすることを想定したものではなかった。しかし、最近は、カード用コネクタに対して頻繁に挿入及び排出をする用途が求められるようになってきた。
【0006】
SIMカードは、特許文献1に記載されているカード用コネクタに接続されるカードと比べてその大きさが小さい。特に、micro−SIMカードと呼ばれているものは、その外形寸法が、幅15mm、奥行き12mm、厚み0.76mmである。
従って、特許文献1に記載されているカード用コネクタを採用して、小型のSIMカードを挿入及び排出を行おうとすると、カードの挿入及び排出の操作性が極めて困難なものとなってしまう。
【0007】
つまり、特許文献1に記載されているカード用コネクタにおいては、カードをカード用コネクタに挿入し、カードの前端がスライダに当接した時点(スライダが排出位置にある時点)でカードの後端がコネクタから突出することになる。ここで、カードが小型のSIMカードであると、その突出長が極めて小さい。この状態で更に手操作でカードの後端を押圧する必要があるが、カードの突出長が小さく、かつ、カード以外の操作部材がないため、カード挿入の操作性は困難を極めてしまう。
【0008】
また、カードの排出時においても、スライダの排出位置において、カードはコネクタから突出している。この際に、カードが小型のSIMカードであると、その突出長が極めて小さい。この状態で手操作によりカードを排出する必要があるが、カードの突出長が小さく、かつ、カード以外の操作部材がないため、カード排出の操作性は困難を極めてしまう。
従って、本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、SIMカード等の小型のカードの挿入及び排出の操作性を向上させた、いわゆるプッシュ−プッシュ式のイジェクト機構を備えたカード用コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に係るカード用コネクタは、カードが挿入されると共に前記カードの導電パッドに接触するコンタクトを取り付けたハウジングと、該ハウジングに配置されてカード排出方向にカードを排出するプッシュ−プッシュ式のイジェクト機構とを備え、該イジェクト機構が、前記カードの前部に当接し、前記カード排出方向にばね部材により付勢され、嵌合位置、押圧位置及び排出位置間を移動可能なスライダを備えたカード用コネクタにおいて、前記スライダは、前記排出位置よりも後方へ突出した引き出し位置に移動可能であると共に、前記スライダと一体に形成され、前記カードに当接するよう前記カードの後端辺に沿って延びる突出部を有することを特徴としている。
【0010】
また、本発明のうち請求項2に係るカード用コネクタは、請求項1記載のカード用コネクタにおいて、前記突出部が、爪との係合部を有することを特徴としている。
更に、本発明のうち請求項3に係るカード用コネクタは、請求項1又は2記載のカード用コネクタにおいて、前記突出部が、前記カードの幅方向一端側から幅方向略中央部に至るまで前記カードの後端辺に沿って延びていることを特徴としている。
また、本発明のうち請求項4に係るカード用コネクタは、請求項1又は2記載のカード用コネクタにおいて、前記突出部が、前記カードの幅方向一端側から幅方向他端側に至るまで前記カードの後端辺に沿って延びていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るカード用コネクタによれば、スライダは、排出位置よりも後方へ突出した引き出し位置に移動可能であると共に、スライダと一体に形成され、カードに当接するようカードの後端辺に沿って延びる突出部を有する。このため、カードの挿入操作においては、スライダが排出位置よりも後方へ突出した引き出し位置で、カードをハウジング内に挿入し、カードの前部をスライダに当接させるとともにカードの後端辺をスライダの突出部に当接させる。そして、スライダの突出部を後側から押圧し、スライダ及びカードを前進させることにより、カードを挿入できる。従って、カードの挿入に際し、ハウジングの後端部からスライダの突出部を含む後端部までの突出長が長い状態でスライダの突出部を後側から押圧すればよい。このため、カードがSIMカード等の小型のカードであってもカードの挿入操作を容易に行うことができる。また、カードを直接押すことなく、カードの後端辺に当接したスライダの突出部を押すので、突出部の分だけ突出長を長くでき、カードの挿入操作を容易に行うことができる。
【0012】
また、カード挿入完了状態において、スライダの突出部が、カードの後端辺に当接しているため、カードの引き抜きを防止することができる。また、カードの引き抜きを防止する突出部は、スライダと一体に形成されているから、カードの引き抜きを防止するための別部品を設ける必要はない。また、カードの引き抜きを防止するためにカードに切欠等を形成する必要はない。
【0013】
更に、カードの排出時には、スライダの排出位置からスライダの突出部を後方へ引くことにより、スライダを引き出し位置に位置させ、この状態で、カードを持ち上げてスライダから取り出す。スライダの引き出し位置では、ハウジングの後端部からスライダの突出部を含む後端部までの突出長が排出位置での突出長よりも長いので、カードがSIMカード等の小型のカードであってもカードの排出操作を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るカード用コネクタの実施形態を示す斜視図である。但し、カム機構を表すためシェルの一部は切欠いてある。
【図2】図1に示すカード用コネクタからシェルを取り外した状態の斜視図である。
【図3】図1に示すカード用コネクタの平面図である。但し、カム機構を表すためシェルの一部は切欠いてある。
【図4】図1に示すカード用コネクタからシェルを取り外した状態の平面図である。
【図5】図1に示すカード用コネクタにカードを挿入する工程を示すもので、スライダが引き出し位置にあるときのカードが挿入された状態の模式図である。
【図6】図1に示すカード用コネクタにカードを挿入する工程を示すもので、スライダが排出位置にあるときのカードが挿入された状態の模式図である。
【図7】図1に示すカード用コネクタにカードを挿入する工程を示すもので、スライダが押圧位置にあるときのカードが挿入された状態の模式図である。
【図8】図1に示すカード用コネクタにカードを挿入する工程を示すもので、スライダが嵌合位置にあるときのカードが挿入された状態の模式図である。
【図9】図1に示すカード用コネクタに用いられるスライダの斜視図である。
【図10】図1に示すカード用コネクタに用いられるスライダの変形例の斜視図である。
【図11】図1に示すカード用コネクタに用いられるスライダの別の変形例を用いたカード用コネクタの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るカード用コネクタの実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4に示すカード用コネクタ1は、SIMカード等の小型のカードC(図5参照)が挿入及び排出されるものである。カードCは、カードCを基準として後方(図5における下方)から前方(図5における上方)へ挿入される。以下、図5における「下」を「後」、図5における「上」を「前」とする。
【0016】
カード用コネクタ1は、カードCが挿入されるハウジング10と、複数のコンタクト20と、カード検知スイッチ機構30と、プッシュ−プッシュ式のイジェクト機構40と、金属製のシェル80とを備えている。
ここで、ハウジング10は、略矩形状に形成され、上側から取り付けられるシェル80との間にカードCが挿入されるカード挿入空間15を有する。ハウジング10の底板部には、コンタクト20が上方に突出するための複数の開口11が設けられている。ハウジング10は、絶縁性の合成樹脂を成形することによって形成される。
【0017】
また、複数のコンタクト20は、ハウジング10の幅方向(図3における左右方向)に沿って複数列状(本実施形態にあっては2列状)にハウジング10に取り付けられる。各コンタクト20は、導電性金属板を打抜き及び曲げ加工することによって形成される。各コンタクト20の接触部は、ハウジング10の開口11から上方、即ちカード挿入空間15内に突出し、当該カード挿入空間15に挿入されるカードCの導電パッドC1(図5参照)に接触する。各コンタクト20の基板接続部は、ハウジング10の下方に延びて図示しない回路基板に接続される。
【0018】
カード検知スイッチ機構30は、ハウジング10の前端(図5における上端)にある基部12に取り付けられた金属製の第1端子31と、シェル80の前端に設けられた金属製の第2端子32とからなる。第1端子31と第2端子32とは互いに接触可能となっている。
イジェクト機構40は、いわゆるプッシュ−プッシュ式と呼ばれるものであり、ハウジング10に配置されてカード排出方向(前から後方向)にカードCを排出するものである。このイジェクト機構40は、図2乃至図4に示すように、スライダ50と、カム機構60とから構成されている。
【0019】
スライダ50は、ハウジング10の幅方向一端側(図1においては右端側)に配置され、図5に示す引き出し位置、図6に示す排出位置、図7に示す押圧位置、及び図8に示す嵌合位置間を移動可能になっている。スライダ50は、図2及び図4に示すように、ハウジング10とスライダ50との間に配置されたばね部材70によりカード排出方向に付勢される。
【0020】
スライダ50は、図2及び図9に示すように、ハウジング10の前後方向に延びる断面略矩形状のスライダ基部51と、スライダ基部51の幅方向外側に設けられたカム基台部58とを備えている。スライダ50は、内部に金属部材をイサート成形して製造される。金属部材をイサート成形することにより、スライダ50の機械的強度を向上させることができる。そして、基部51の前端であってカム基台部58の幅方向内側には、ばね部材70を配置するための切欠52が形成されている。そして、この切欠52には、ばね部材70を支持するための支持突起53が前方に向けて突出形成されている。ばね部材70は、スライダ50に設けられた支持突起53と、ハウジング10の前壁に設けられた支持突起13とにより両端が支持される。
【0021】
また、スライダ基部51の前端には、幅方向内側に向けて突出する突起部57が設けられ、スライダ基部51の後端には、幅方向内側に向けて突出する突出部54が設けられている。突起部57は、スライダ基部51と一体に形成され、図5に示す位置で、カードCが挿入された際に、カードCの前部が当接する。一方、突出部54は、スライダ基部51と一体に形成され、図5に示すように、カードCが挿入された際に、カードCに当接するようにカードCの後端辺に沿って延びている。そして、突出部54は、カードCの幅方向一端側から幅方向略中央部に至るまでカードCの後端辺に沿って延びている。また、突出部54の上面には、指の爪との係合部55が設けられている。この係合部55の形状は、図3、図4、及び図9に示すように、その外形が上方から見て円弧を直線状部で切断した形状で、これを突出部54の上面から凹ませた略円弧状凹部55aである。
【0022】
また、カム機構60は、図4に示すように、ハート形のカム溝56と、カム溝56に沿って揺動するカムロッド61とから構成されている。カム溝56は、図4に示すように、スライダ50のカム基台部58の上面に形成され、前後方向に延びる直線状部56aを備えている。また、カム溝56は、直線状部56aの後端から幅方向外側にそれる迂回部56bと、直線状部56aの後端から幅方向内側にそれる迂回部56dと、迂回部56bと迂回部56dとをつなぐ連結部56cとを備えている。一方、カムロッド61は、図4に示すように、ハウジング10の後端部14に揺動自在に軸支され、カムロッド61の前端部がカム溝56に沿って揺動するようになっている。カムロッド61は、直線状の金属棒の両端を同一方向に折り曲げて形成される。
【0023】
また、シェル80は、金属板を打抜き及び曲げ加工することによって形成され、ハウジング10の上面を覆う略平板状に形成される。そして、シェル80の幅方向両側壁部及び前壁によりハウジング10に固定される。このシェル80には、図5乃至図8に示すように、カムロッド61を上方から押える舌片81が設けられている。
【0024】
次に、本発明の作用について図5乃至図8を参照して説明する。
先ず、ハウジング10内にカードCが挿入されておらず、カードCを挿入するときには、スライダ50を引いて、図5に示す引き出し位置に位置させる。この引き出し位置は、後述するスライダ50の排出位置よりもスライダ50を後方へ引き出した位置で、ハウジング10の後端部からスライダ50の突出部54を含む後端部までの突出長がS1となっている。このスライダ50の引き出し位置においては、カムロッド61の前端部がカム溝56の直線状部56aの前端部に当接しており、スライダ50の更なる引き出しは阻止されている。また、ばね部材70の付勢力は働いていない。
【0025】
この状態で、カードCを斜めにしてハウジング10の後側からハウジング10内に挿入し、カードCの前部をスライダ50の突起部57に当接させるとともにカードCの後端辺をスライダ50の突出部54に当接させる。
そして、スライダ50の突出部54を後側から押圧し、スライダ50及びカードCを前進させる。すると、スライダ50及びカードCは図6に示す排出位置に位置する。この排出位置は、カムロッド61の前端部がカム溝56の直線状部56aに位置した状態で、ハウジング10の後端部からスライダ50の突出部54を含む後端部までの長さがS1より短いS2となっている。
【0026】
スライダ50の押圧を続行し、スライダ50がハウジング10の前壁に当接するまでスライダ50及びカードCを前進させる。すると、スライダ50及びカードCは図7に示す押圧位置に位置する。この押圧位置は、カムロッド61の前端部がカム溝56の迂回部56bの最後端に位置した状態で、ハウジング10の後端部からスライダ50の突出部54を含む後端部までの突出長がS2より短いS3となっている。この状態では、ばね部材70は最も付勢力が大きい状態に圧縮されている。
【0027】
この状態で、スライダ50の突出部54から手を離すと、ばね部材70の作用により、スライダ50がカード排出方向(後方向)に付勢され、カードCもスライダ50とともにカード排出方向に移動し、図8に示す嵌合位置となる。この嵌合位置では、カムロッド61の前端部がカム溝56の連結部56cに位置し、スライダ50の前後方向の移動は規制される。スライダ50の嵌合位置では、ハウジング10の後端部からスライダ50の突出部54を含む後端部までの突出長がS3より長いS4となっている。そして、この嵌合位置で、カードCの挿入が完了し、カードCの下面に形成された導電パッドC1にコンタクト20の接触部が接触する。
【0028】
このカードCの挿入が完了した状態、即ち、スライダ50の嵌合位置では、前述したように、カムロッド61の前端部がカム溝56の連結部56cに位置し、スライダ50の前後方向の移動は規制されている。そして、スライダ50の突出部54が、図8に示すように、カードCの後端辺に当接している。この突出部54のカードCの後端辺に対する当接作用により、カードCの引き抜きを防止することができる。また、カードCの引き抜きを防止する突出部54は、スライダ50と一体に形成されているから、カードCの引き抜きを防止するための例えばロックばね等の別部品を設ける必要はない。また、カードCの引き抜きを防止するためにカードCに切欠等を形成する必要はない。
【0029】
以上で述べたカードCの挿入操作においては、スライダ50が排出位置よりも後方へ突出した引き出し位置で、カードCをハウジング10内に挿入し、カードCの前部をスライダ50の突起部57に当接させるとともにカードCの後端辺をスライダ50の突出部50に当接させる。引き出し位置では、ハウジング10の後端部からスライダ50の突出部54を含む後端部までの突出長S4が排出位置での突出長S3よりも長い。この状態で、スライダ50の突出部54を後側から押圧し、スライダ50及びカードCを前進させる。従って、カードCの挿入に際し、ハウジング10の後端部からスライダ50の突出部54を含む後端部までの突出長が長い状態でスライダ50の突出部54を後側から押圧すればよい。このため、カードCがSIMカード等の小型のカードであっても、カードの挿入操作を容易に行うことができる。また、カードCを直接押すことなく、カードCの後端辺に当接したスライダ50の突出部54を押すので、突出部54の分だけ突出長を長くでき、カードの挿入操作を容易に行うことができる。
【0030】
一方、カードCの排出を行うときには、図8に示す嵌合位置の状態からスライダ50の突出部54を再度押圧してスライダ50がハウジング10の前壁に当接するまでスライダ50及びカードCを前進させる。すると、スライダ50及びカードCは、図7に示す押圧位置になる。このとき、カムロッド61の前端部がカム溝56の迂回部56dの最後端に位置する。
【0031】
そして、この状態で、スライダ50の突出部54から手を離すと、ばね部材70の作用により、スライダ50がカード排出方向(後方向)に付勢され、カードCもスライダ50とともにカード排出方向に移動し、図6に示す排出位置となる。この排出位置では、カムロッド61の前端部がカム溝56の直線状部56aに位置する。そして、カードCの下面に形成された導電パッドC1とコンタクト20の接触部との接触状態が解除される。
【0032】
更に、この状態から、スライダ50の突起部54を後方へ引く。すると、スライダ50及びガードCが図5に示す引き出し位置に位置する。この状態で、カードCを持ち上げてスライダ50から取り出す。これにより、カードCを取り出すことができる。
ここで、スライダ50の引き出し位置では、ハウジング10の後端部からスライダ50の突出部54を含む後端部までの突出長S1が排出位置での突出長S3よりも長い。この状態で、カードCを持ち上げてスライダ50から取り出すので、カードCがSIMカード等の小型のカードであってもカードの排出操作を容易に行うことができる。
【0033】
ここで、スライダ50及びカードCを図5に示す引き出し位置に位置させる際に、カードCの後端辺に当接している突出部54を後方へ引けばよいから、スライダ50及びカードCの引き出し操作を容易に行うことができる。
また、突起部54には、爪との係合部55が形成されている。このため、スライダ50及びカードCの引き出し操作の際に、指の爪を係合部55に係合させて突出部54を引けばよい。これにより、スライダ50及びカードCの引き出し操作をより容易に行うことができる。即ち、係合部55を構成する略円弧状凹部55aに指の爪を引っ掛けて突出部54を引けばよい。
【0034】
また、スライダ50の突出部54は、カードCの幅方向一端側から幅方向略中央部に至るまでカードCの後端辺に沿って延びている。このため、引き出し位置に引き出されたスライダ50からカードCを取り出す際に、突出部54が存在しないカードCの幅方向他端部からカードCにアクセスできる。従って、カードCをスライダ50から容易に取り出すことができる。
【0035】
次に、図10を参照してスライダの変形例について説明する。図10において、図9と同一の部材には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図10に示すスライダ50は、図9に示すスライダ50と基本構成は同様であるが、係合部55の形状が相違している。
即ち、図10に示すスライダ50の係合部55は、突出部54が延びる全域にわたって突出部54の後側上面から上方に隆起した隆起部55bで形成されている。図10に示すスライダ50によれば、スライダ50及びカードCの引き出し操作の際に、係合部55を構成する隆起部55bに指の爪を係合させて突出部54を引けばよい。これにより、スライダ50及びカードCの引き出し操作を容易に行うことができる。
【0036】
また、図11を参照してスライダの別の変形例について説明する。図11において、図1乃至図9と同一の部材には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図11に示すカード用コネクタ1に用いられるスライダ50は、図1乃至図9に示すスライダ50と基本構成は同様であるが、突出部54の形状が相違している。
即ち、図11におけるスライダ50の突出部54は、カードCの幅方向一端側から幅方向他端側に至るまでカードCの後端辺に沿って延びている。このように、突出部54を、カードCの幅方向一端側から幅方向他端側に至るまで延ばすことにより、例えば、携帯電話等の筐体90の開口91からカード用コネクタ1に対してカードCを挿抜するように実装した際に、突出部94が開口91に対する蓋としての機能を併せ持つことができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
例えば、カード用コネクタ1に挿入されるカードCとしては、小型のものであれば、SIMカードに限定されない。
また、突出部54は、カードCに当接するようカードCの後端辺に沿って延びていればよく、必ずしもカードCの幅方向一端側から幅方向略中央部に至るまで、あるいはカードCの幅方向一端側から幅方向他端側に至るまで延びていなくてもよい。
また、スライダ50は、内部に金属部材をインサート成形して製造される必要はなく、合成樹脂のみを成形することによって製造されてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 カード用コネクタ
10 ハウジング
20 コンタクト
40 イジェクト機構
50 スライダ
54 突出部
55 係合部
70 ばね部材
C カード
C1 導電パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードが挿入されると共に前記カードの導電パッドに接触するコンタクトを取り付けたハウジングと、該ハウジングに配置されてカード排出方向にカードを排出するプッシュ−プッシュ式のイジェクト機構とを備え、該イジェクト機構が、前記カードの前部に当接し、前記カード排出方向にばね部材により付勢され、嵌合位置、押圧位置及び排出位置間を移動可能なスライダを備えたカード用コネクタにおいて、
前記スライダは、前記排出位置よりも後方へ突出した引き出し位置に移動可能であると共に、前記スライダと一体に形成され、前記カードに当接するよう前記カードの後端辺に沿って延びる突出部を有することを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項2】
前記突出部が、爪との係合部を有することを特徴とする請求項1記載のカード用コネクタ。
【請求項3】
前記突出部が、前記カードの幅方向一端側から幅方向略中央部に至るまで前記カードの後端辺に沿って延びていることを特徴とする請求項1又は2記載のカード用コネクタ。
【請求項4】
前記突出部が、前記カードの幅方向一端側から幅方向他端側に至るまで前記カードの後端辺に沿って延びていることを特徴とする請求項1又は2記載のカード用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−181932(P2012−181932A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42172(P2011−42172)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000227995)タイコエレクトロニクスジャパン合同会社 (340)
【Fターム(参考)】