説明

ガスエンジンの制御装置及び制御方法

【課題】 ノッキングを抑制することと、効率を向上させることとを両立する。
【解決手段】 本発明に係るガスエンジン1の制御装置100は、ガスエンジン1の気筒4内に向けて水を噴射する水噴射手段14と、水噴射手段14を制御する水噴射制御手段56と、気筒4におけるノッキング出現率の測定値RMを測定するノッキング出現率測定手段45とを備えており、水噴射制御手段57は、測定値RMと目標値RTとの偏差に基づき、気筒4内に向けての水噴射量が設定されるように水噴射手段14を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノッキングを抑制するための制御を実行するガスエンジンの制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低燃費及び高発電効率を得るため、発電機の駆動源に大型レシプロガスエンジンを適用した発電プラントが提案されている。このような発電用ガスエンジンにおける混合気の点火方式として、点火プラグの電極間で発生する火花で混合気を点火する火花点火方式が知られている。ガスエンジンの効率を最適化して発電プラントの省エネ化を一層推進するためには、点火時期をいわゆるMBT(Minimum advance for Best Torque)まで進角させた状態にしてガスエンジンを稼動することが必要と考えられる。しかし、点火時期が進角すると、燃焼室内温度及び圧力が上昇するので、ノッキングが発生しやすくなるし、NOxの排出量が増加する。ノッキングの多発はエンジンが損傷する原因となり、NOxは大気汚染の原因となる。
【0003】
特許文献1は、車両用ガソリンエンジンのノッキング抑制装置を開示している。この制御装置によれば、エンジンの運転状態が高負荷域内にあるときに、水が気筒に向けて噴射される。この制御では、水の蒸発潜熱で気筒が冷却され、それによりノッキングが抑制されることが期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−10164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示される制御装置によれば、スロットル開度やエンジン回転数等に応じて水噴射量が調整され、ノッキングが実際に発生しているか否かという実際の燃焼状態とは関係なく、水が噴射されるに過ぎない。つまり、実際の燃焼状態に照らして水の噴射を必要とする状況であるか否かとは関係なく、水が噴射される。このような制御手法をとるので、制御装置は、水を噴射した結果として燃焼状態がどのようになったのかを関知することもない。それゆえに、制御装置は、水を噴射した結果として燃焼状態がどのようになっているかをその後の制御に反映することもできない。このように、従来の制御装置によれば、実際の燃焼状態に良好に対応してノッキングを抑制することができないし、ノッキングを抑制しつつエンジンの効率を向上させることにまで視野を入れた制御を実行することができない。
【0006】
そこで本発明は、実際の燃焼状態に良好に対応してノッキングを抑制し、さらには、ノッキングを抑制しつつガスエンジンの効率の向上を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るガスエンジンの制御装置は、ガスエンジンの気筒内に向けて水を噴射する水噴射手段と、前記水噴射手段からの水噴射量を制御する水噴射制御手段と、前記気筒におけるノッキング出現率の測定値を測定するノッキング出現率測定手段と、を備え、前記水噴射制御手段は、前記測定値と目標値との偏差に基づき、前記気筒内に向けての水噴射量が設定されるように前記水噴射手段を制御する。
【0008】
ここで、「ノッキング出現率」は、ノッキングの出現頻度又は出現割合を直接的に示す指標であって実際の燃焼状態を示す指標であり、例えば、現時点から過去に遡って所定数のエンジンサイクルが経過する間にノッキングが発生したエンジンサイクルの総数を当該所定数で除算することによって算出され、時間変化しうる。このように「ノッキング出現率」は、ある1つのエンジンサイクルにおけるノッキングセンサによって得られる単一の測定値を評価するものではなく、過去から現在に至る所定期間のエンジンサイクルにおけるノッキングセンサによって得られる複数の測定値を評価するものである。このように、「ノッキング出現率」は、過去の履歴を含んでいるため、急峻な変動のない安定した評価指標として取扱い可能であるとの特性を有する。また、ノッキング出現率は移動平均(単純移動平均、加重移動平均、指数加重移動平均)の手法によって算出されても良い。なお、本明細書では、ガスエンジンにおける給気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程の4つの行程を経るサイクルを、一のエンジンサイクルと称する。
【0009】
本発明によれば、このような特性を有したノッキング出現率の測定値が目標値と比較され、測定値と目標値との偏差に基づき、気筒内に向けて噴射される水噴射量が設定される。このように、やみくもに又はノッキングの発生状況を直接的に示さない運転パラメータに基づき水が噴射されるのではなく、ノッキングの出現頻度と目標値とに基づき、水噴射量が設定される。つまり、実際の燃焼状態に基づき水が噴射される。すると、気筒内に噴射された水の蒸発潜熱で気筒内温度が低下していき、点火時期を遅角することなく、ノッキングが低減される。点火時期の遅角なしにノッキングが低減されると、ノッキング出現率の測定値が過剰に上昇するのを防ぎ得る範囲内で点火時期の進角代(進角可能な量)を確保することができる。このため、ガスエンジンの効率の向上を図ることができる。
【0010】
前記気筒内に供給される混合気を点火する点火手段と、前記点火手段を制御する点火制御手段と、前記ガスエンジンの効率向上のために設定される点火時期の適値を記憶した適値記憶手段と、を更に備え、前記点火制御手段は、前記測定値が前記目標値未満であるときに、点火時期が前記適値よりも遅角しているか否かを判断し、点火時期が前記適値よりも遅角していれば点火時期を進角補正してもよい。前記構成によれば、水の噴射により測定値が目標値未満になるまで低下したような場合、点火時期が適値と比較され、点火時期が適値よりも遅角していれば点火時期が進角補正される。これにより、ノッキング出現率が過剰に高い値になるのを防ぎながら、ガスエンジンの効率を向上していくことができる。前述した水噴射の制御と相まって、制御の実行時間が長期に亘れば、点火時期を適値付近で収束させることと、ノッキング出現率の測定値を目標値付近で収束させることとが両立する。
【0011】
前記水噴射制御手段は、前記測定値と前記目標値との偏差に基づき前記水噴射量の補正値を設定し、前回のエンジンサイクルで設定された水噴射量に前記補正量を反映させるものであってもよい。前記構成によれば、前回のエンジンサイクルで設定された水噴射量に補正量を反映させるため、水噴射量が大きく増減することがなく、ノッキング出現率の測定値を目標値に好適に近づけることができるようになる。
【0012】
所定強度以上の強ノッキングを検出する強ノッキング検出手段を更に備え、前記水噴射制御手段は、前記強ノッキングが検出されたときに、前記水噴射量を増加補正してもよい。前記構成によれば、強ノッキングが発生したときに、気筒内温度を速やかに低下させることができる。よって、ノッキング出現率を制御しながら、エンジンの損傷が懸念されるような事象が発生した場合には、これに即座に対応して当該事象を速やかに抑制することもできる。
【0013】
本発明に係るガスエンジンの制御方法は、ガスエンジンの気筒におけるノッキング出現率の測定値を測定する測定ステップと、前記測定値を所定の目標値と比較する出現率比較ステップと、前記測定値と前記目標値との偏差に基づき、前記気筒内に向けての水噴射量を設定する水噴射ステップと、を備える。このような方法によっても、ノッキング出現率の測定値と目標値との偏差に基づき気筒内への水噴射量が設定されるようにしているので、ノッキングの抑制とガスエンジンの効率の向上とを両立させることができる。
【0014】
前記測定値が前記目標値未満であるときに、点火時期を前記ガスエンジンの効率向上のために設定される点火時期の適値と比較する点火時期比較ステップと、点火時期が前記適値よりも遅角しているときに、点火時期を進角補正する進角補正ステップと、を更に備えていてもよい。これにより、ノッキング出現率の測定値が目標値未満であり、点火時期が適値よりも遅角しているときには、点火時期が進角補正される。このため、ノッキング出現率を目標値に近づくように上昇させ、ガスエンジンの効率を向上させることができる。
【0015】
前記水噴射ステップが、前記測定値と前記目標値との偏差を演算する偏差演算ステップ、該偏差に応じて前記水噴射量の補正量を設定する補正量設定ステップ、及び、前回のエンジンサイクルで設定された前記水噴射量に前記補正量を反映させる水噴射量設定ステップを有していてもよい。これにより、前回のエンジンサイクルで設定された水噴射量に補正量を反映させるため、水噴射量が大きく増減することがなく、ノッキング出現率の測定値を目標値に好適に近づけることができるようになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、実際の燃焼状態に良好に対応してノッキングを抑制することと、ガスエンジンの効率を向上することとを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るガスエンジンの全体構成を示す概念図である。
【図2】本発明の実施形態に係るガスエンジンの制御装置の要部構成を示す概念図である。
【図3】図2に示すノッキング出現率測定部の構成を示すブロック線図である。
【図4】点火時期と効率との間の関係、点火時期とNOx排出量との間の関係、水噴射量とNOx排出量との間の関係を示すグラフである。
【図5】水噴射及び点火制御の処理の一部を示すフローチャートである。
【図6】水噴射及び点火制御の処理の一部を示すフローチャートであり、ノッキング出現率の測定値が目標値以上である場合の水噴射量の指令値及び点火時期の指令値を設定する処理を示すフローチャートである。
【図7】水噴射及び点火制御の処理の一部を示すフローチャートであり、ノッキング出現率の測定値が目標値未満である場合の水噴射量の指令値及び点火時期の指令値を設定する処理を示すフローチャートである。
【図8】図5〜図7に示す処理を実行した場合のノッキング出現率、水噴射量及び点火時期の時間変化の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、同一又は相当する要素には全ての図を通じて同一の符号を付し、重複する詳細説明を省略する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係るガスエンジン1の全体構成を示す概念図である。図1に示すガスエンジン1は、ガス燃料及び過給されたエアの混合気を燃焼して出力軸2で回転出力を発生する。出力軸2は、例えば交流発電機3に接続される。出力軸2は、交流発電機3に替えて、舶用推進装置に接続されていてもよい。このように、本実施形態に係るガスエンジン1は、交流発電機3の駆動源として又は舶用推進装置として好適に利用することができる。
【0020】
ガスエンジン1は、レシプロ式4ストロークエンジンであり、複数の気筒4を有している。なお、気筒4の配列は、図1に便宜的に示されている並列型に限られず、V型であってもよい。特に、発電用又は舶用においては、ガスエンジン1が多数(例えば、8〜20)の気筒を有して大型化するので、気筒がV型に配列されると好適である。
【0021】
ガスエンジン1には、給気通路5、排気通路6及び過給機(図示せず)が設けられている。給気通路5は、過給機からの給気を気筒4に供給するための通路である。給気通路5は、複数の給気ポート7と、給気管8とにより構成される。給気ポート7は、気筒4毎に設けられ、エンジン本体内に形成される。給気ポート7は、下流端部で対応する気筒4に開口している一方、上流端部でエンジン本体の外面に開口している。給気管8は、共通管部8a及び複数の枝管部8bを有している。共通管部8aは、エンジン本体の外部を気筒配列方向に沿って延びている。枝管部8bは、気筒4毎に設けられ、共通管部8aの内部を給気ポート7の上流端部に接続している。排気通路6は、気筒4からの排気を過給機を介して外部に送るための通路である。排気通路6は、気筒4毎に設けられた排気ポート9と、各排気ポート9と接続される排気管10とにより構成される。
【0022】
各気筒4には、第1燃料噴射弁11、第2燃料噴射弁12、点火プラグ13及び水噴射弁14が設けられている。第1燃料噴射弁11及び第2燃料噴射弁12は、燃料供給源から燃料供給ライン15に沿って送られるガス燃料を気筒4内に向けて噴射する。点火プラグ13は、気筒4内に供給される混合気を点火燃焼させるため、適宜点火時期で火花を発生する。水噴射弁14は、対応する気筒4のノッキングを抑制するため、給水源から給水ライン16に沿って送られる水を気筒4内に向けて噴射する。
【0023】
図2は、本発明の実施形態に係るガスエンジン1の制御装置100の構成を示す概念図である。なお、図2では、1つの気筒4のみ示しているが、他の気筒も同様の構成を有している。図2に示すように、気筒4内には、ピストン21が往復動可能に挿入されている。ピストン21はコネクティングロッド22を介して出力軸2(図1参照)に連結されている。気筒4のうちピストン21の上面側の空間が、主燃焼室23を成している。主燃焼室23は、副燃焼室24と隔壁25を介して区画されている一方、隔壁25に形成された連通孔(図示せず)を介して副燃焼室24と連通している。気筒4には、給気弁26及び排気弁27が設けられている。給気弁26は、給気ポート7の下流端部を開閉する。排気弁27は、排気ポート9の上流端部を開閉する。第1燃料噴射弁11は、その燃料噴射口が給気ポート7内に臨むようにして設けられている。第2燃料噴射弁12は、その燃料噴射口が副燃焼室24内に臨むようにして設けられている。点火プラグ13は、火花を発生する電極が副燃焼室24内に臨むようにして設けられている。
【0024】
ピストン21が下動する給気行程では、給気弁26が給気ポート7を開き、第1燃料噴射弁11がガス燃料を噴射する。これにより、給気ポート7を流れる給気とガス燃料との混合気が主燃焼室23内に供給される。ピストン21が上動する圧縮行程では、混合気が主燃焼室23内及び副燃焼室24内で圧縮される。なお、第2燃料噴射弁12は、給気行程又は圧縮行程において、副燃焼室24内にガス燃料を噴射する。圧縮行程が終了する時期近傍で、点火プラグ13が火花を発生し、これにより副燃焼室24内の混合気が点火燃焼される。副燃焼室24内の火炎は連通孔を介して主燃焼室23内へと伝播し、それにより主燃焼室23内の混合気が燃焼され、ピストン21が下動する。この膨張行程後の排気行程では、排気弁27が排気ポート9を開き、主燃焼室23内及び副燃焼室24内のガスが排気通路6へと排出される。なお、本明細書では、ガスエンジン1における上記の給気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程の4つの行程を経るサイクルを、一のエンジンサイクルと称する。
【0025】
このガスエンジン1の制御装置100は、点火プラグ11、水噴射弁14、位相角センサ41、筒内圧センサ42及び制御器50を備えている。制御器50は、例えば、CPU、ROM、RAM及び入出力インターフェイスを主体にして構成されたマイクロコンピュータである。制御器50の入力側は、位相角センサ41及び筒内圧センサ42と接続されている。位相角センサ41は、出力軸2(図1参照)の回転位相角を検出する。筒内圧センサ42は、気筒4の内圧を検出する。制御器50の出力側は、点火プラグ11及び水噴射弁14と接続される。
【0026】
水噴射弁14は、その水噴射口14aが給気ポート7内に臨むようにして設けられている。水噴射弁14は、水噴射口14aを開閉する常閉電磁開閉弁であり、水噴射口14aを開けているときに、給水ライン16に沿って送られる水を給気ポート7内に噴射する。水噴射弁14に送られてくる水の圧力(以下、「給水圧」と称す)は略一定であるので、制御器50は、水噴射弁14の開弁期間を制御することによって、水噴射量を制御することができる。
【0027】
水噴射弁14より噴射された水は、給気に乗って気筒4内へと供給される。水が気筒4内へと良好に供給されるようにするため、水を噴射する時期は、概ね給気行程の間に設定され、給水圧は、給気圧に対抗して給気ポート7内に水を噴射するために十分高い値に調整される。
【0028】
制御装置100は、全ての気筒4のノッキング出現率が気筒個体差に関わらず目標値に近づくように、また、全ての気筒4の効率が気筒個体差に関わらず最適化されるように、気筒4毎に水噴射量及び点火時期を制御する。制御器50は、このような制御を実現するための機能部として、ノッキング検出部51、ノッキング出現率演算部53、出現率目標値記憶部54、時期記憶部55、水噴射制御部56及び点火制御部57を有する。また、筒内圧センサ42が、気筒4毎に設けられる。位相角センサ41は、全ての気筒4に共通して設けられている。
【0029】
ノッキング検出部51は、筒内圧センサ42の検出結果に基づき、ノッキングが出現したか否かをエンジンサイクル毎に気筒4毎に検出する。ノッキング出現率演算部53は、ノッキング検出部51の検出結果に基づき、ノッキング出現率の測定値をエンジンサイクル毎に気筒4毎に演算する。このように、筒内圧センサ42、ノッキング検出部51及びノッキング出現率演算部53は、気筒4におけるノッキング出現率を測定するためのノッキング出現率測定部45を構成する。
【0030】
ここで、「ノッキング出現率」とは、ノッキングの出現頻度又は出現割合を直接的に示す指標であって実際の燃焼状態を示す指標であり、例えば、現時点から過去に遡って所定数のエンジンサイクルが経過する間にノッキングが発生したエンジンサイクルの総数を当該所定数で除算することによって算出され、時間変化しうるものである。このように「ノッキング出現率」は、ある1つのエンジンサイクルにおけるノッキングセンサによって得られる単一の測定値を評価するものではなく、過去から現在に至る所定期間のエンジンサイクルにおけるノッキングセンサによって得られる複数の測定値を評価するものである。このように、「ノッキング出現率」は、過去の履歴を含んでいるため、急峻な変動のない安定した評価指標として取扱い可能であるとの特性を有する。また、ノッキング出現率は移動平均(単純移動平均、加重移動平均、指数加重移動平均)の手法によって算出されても良い。
【0031】
図3は、ノッキング出現率測定部45の構成を示す概念図である。図3に示すように、ノッキング検出部51は、波形計測部61、抽出部62、平均値算出部63、ノック閾値比較部64、筒内圧比較部65、失火閾値比較部66、燃焼状態判定部67及び過去値記憶部68を有している。
【0032】
波形計測部61は、筒内圧センサ42により検出される筒内圧の波形を計測する。抽出部62は、圧縮行程終了時点から所定時間が経過するまでの筒内圧波形データをフィルタに通し、その高周波成分を抽出する。平均値算出部63は、当該所定時間内における複数個の高周波成分をサンプリングし、サンプリングされた高周波成分の平均値を算出する。ノック閾値比較部64は、算出された平均値を第1ノック閾値及び第2ノック閾値と比較する。筒内圧比較部65は、筒内圧波形データに基づき、圧縮行程終了時点前後の筒内圧偏差ΔPを算出する。失火閾値比較部66は、算出された筒内圧偏差ΔPが失火閾値以上であるか否かを判定する。
【0033】
燃焼状態判定部67は、ノック閾値比較部64及び失火閾値比較部66の比較結果に基づき、燃焼状態が「強ノッキング」、「軽ノッキング」、「正常」及び「失火」の4つの状態のいずれに属するのかを、エンジンサイクル毎に気筒4毎に判定する。つまり、平均値が第1ノック閾値以上である場合には、燃焼状態が「強ノッキング」と判定される。平均値が第1ノック閾値未満且つ第2ノック閾値以上である場合には、燃焼状態が「軽ノッキング」と判定される。筒内圧偏差ΔPが失火閾値未満である場合には、燃焼状態が「失火」と判定される。平均値が第2ノック閾値未満であり且つ筒内圧偏差ΔPが失火閾値以上である場合には、燃焼状態が「正常」と判定される。なお、「強ノッキング」は、第1ノック閾値により規定される所定強度以上のノッキングが発生している状態であることを示す。「軽ノッキング」は、第1ノック閾値により規定される所定強度未満のノッキングが発生している状態であることを示す。
【0034】
過去値記憶部68は、燃焼状態の判定結果を逐次記憶する。ノッキング出現率演算部53は、過去値記憶部68に記憶されている燃焼状態の判定結果を読み出し、現時点から過去に遡って所定数のエンジンサイクルの間に軽ノッキング又は強ノッキングが発生していると判定されたエンジンサイクルの総数を、当該所定数で除算することによって、ノッキング出現率の測定値RMを求める。
【0035】
図2に示すように、出現率目標値記憶部54は、ノッキング出現率の目標値RTを予め記憶している。ノッキング出現率の測定値RMがこの目標値RTに近い状態でガスエンジン1が継続して運転されると、ガスエンジン1に大きな損傷を与えることなく、ガスエンジン1の効率を向上できるようになる。なお、このような作用を得るための目標値の具体的数値は、実機を用いた運転試験又は数値解析などを通じて知得可能である。本実施形態では、出現率目標値記憶部54が、全ての気筒4に共通する一つの目標値RTを記憶しているものとする。
【0036】
時期記憶部55は、点火時期の適値TT及び初期値を記憶している。適値TTは、ガスエンジン1の効率向上のために設定される点火時期である。図4中の線Aは、ある気筒における点火時期とガスエンジン1の効率との間の相関を示している。線Aは、横軸を点火時期として縦軸を効率とする二次元直交座標系において、上に凸の曲線を描く。すなわち、点火時期が進角すれば、ある時期(MBT)までは効率が向上していく一方、点火時期がMBTを越えて更に進角しても、効率は低下していく。MBTは、効率の増減傾向が逆転して効率が最大値をとる点火時期である。時期記憶部55は、MBT又はその近傍の値を適値TTとして記憶している。MBTは、気筒4毎に個体差がある。このため、時期記憶部55は、適値TTを気筒4毎に記憶しており、適値TTは、実際のガスエンジン1の運転状況に応じて調整及び更新可能であってもよい。各気筒4におけるMBTは、実機を用いた運転試験などを通じて知得可能である。なお、点火時期の初期値は、適値TTよりも遅角された値であり、例えば図4のグラフの原点における点火時期である。
【0037】
図2に示すように、水噴射制御部56は、ノッキング出現率の測定値RM、ノッキング出現率の目標値RT、ノッキング検出部51からの強ノッキングが発生している旨示す信号、給水系の状態などに基づき、水噴射量の指令値を求め、指令値が示す量の水が噴射されるように水噴射弁14を制御する。点火制御部57は、ノッキング出現率の測定値RM、ノッキング出現率の目標値RT、点火時期の適値TT、水噴射制御部56からの水噴射停止信号などに基づき、点火時期の指令値を求め、指令値が示す時期に点火するように点火プラグ11を制御する。
【0038】
図5〜図7は、図2に示す制御器50により実行される水噴射及び点火制御を示すフローチャートである。図5〜図7に示す一連の処理は、例えば、ガスエンジン1の起動処理が終わってから、1エンジンサイクル毎に繰り返される。図5に示すように、水噴射制御部56が、給水系の状態に基づいて、水を気筒4に向けて好適に噴射することができる状態であるか否かを判断する(ステップS1)。例えば、水噴射制御部56は、各種センサからの入力に基づき、給水圧が必要圧未満であるか否か、給水源にトラブルが発生しているか否かを判断する。水を好適に噴射することができれば(S1:YES)、ノッキング出現率測定部45が、ノッキング出現率の測定値RMを測定する(ステップS2)。次に、水噴射制御部56及び点火制御部57が、ノッキング出現率の測定値RMと目標値RTとを比較する(ステップS3)。測定値RMが目標値RT以上であれば(S3:YES)、図6に示すフローに進み、測定値RMを目標値RTに向かって低下させるための制御が実行される。測定値RMが目標値RT未満であれば(S3:NO)、図7に示すフローに進み、測定値RMを目標値RTに向かって上昇させるための制御が実行される。
【0039】
図6に示すように、測定値RMが目標値RT以上であれば、水噴射制御部56が、目標値RTと測定値RMとの間の偏差を算出する(ステップS11)。次に、水噴射制御部56が、算出された偏差に応じて、第1補正量を算出する(ステップS12)。次に、水噴射制御部56は、今回のエンジンサイクルにおける一次指令値を設定する(ステップS13)。水噴射量の一次指令値は、前回のエンジンサイクルにおいてステップS13で算出された水噴射量の指令値に、今回のエンジンサイクルにおいてステップS12で算出された第1補正量を加算することによって求められる。
【0040】
次に、水噴射制御部56は、ノッキング検出部51の検出結果に基づき、今回のエンジンサイクルにおける燃焼状態が強ノッキングであるか否かを判断する(ステップS14)。強ノッキングが発生していなければ(S14:NO)、水噴射制御部56は、次回のエンジンサイクルにおける水噴射量の指令値を、ステップS13で算出された一次指令値に設定する(ステップS16)。強ノッキングが発生していれば(S14:YES)、水噴射制御部56は、第2補正量を算出し、今回のエンジンサイクルにおける水噴射量の指令値(直後の水噴射機会における水噴射量の指令値)を第2補正量に設定する(ステップS15)。なお、第2補正量は、ステップS13で算出された一次指令値よりも大きい値であり、これにより強ノッキングが検出されたときに水噴射量が増加補正される。第2補正量は、ノッキング強度によって設定されてもよいし、ステップS13で算出された一次指令値に予め定められた補正量を加算することによって設定されてもよい。このとき、今回のエンジンサイクルで算出された指令値は、次回のエンジンサイクルにおけるステップS13での一次指令値設定処理で、減少するように変更される。これにより、強ノッキングの発生のため水噴射量を増加補正しても、次回以降のエンジンサイクルの水噴射量の指令値が乱されない。
【0041】
次に、点火制御部57は、前回のエンジンサイクルの点火時期の指令値が、適値TT未満であるか否かを判断する(ステップS21)。前回指令値が適値TT未満であれば(S21:YES)、点火制御部57は、今回のエンジンサイクルのおける点火時期の指令値を、前回指令値に設定する(ステップS22)。前回指令値が適値TT以上であれば(S21:NO)、点火制御部57は、前回指令値に所定の遅角補正量を減算し、今回のエンジンサイクルにおける点火時期の指令値をこの減算値に設定する(ステップS23)。なお、前回指令値と適値TTが等しい場合は、点火時期の指令値は、前回のエンジンサイクルの指令値に微小な進角量α(>0)だけ進角補正した値としてもよいし、微小な遅角量α(<0)だけ遅角補正した値としてもよい。
【0042】
また、ノッキング出現率を制御すること以外の目的で点火時期を制御量とした他の制御が並行実施される場合もある。このような他制御の並行実施があれば、当該他制御で設定された指令値を加味して、点火時期が補正される(ステップS25)。このような他制御の並行実施がなければ(S24:NO)、点火時期の指令値は、ステップS22又はS23で設定された指令値どおりとなる。
【0043】
このようにして、水噴射量及び点火時期の各指令値が設定されると、水噴射制御部56は、位相角センサ41からの入力を参照しながら、指令値が示す量の水が給気行程の間に噴射されるように水噴射弁14を制御する。また、点火制御部57は、位相角センサ41からの入力を参照しながら、指令値が示す時期に点火させるように点火プラグ13を制御する。そして、次回のエンジンサイクルにおける処理が、ステップS1から再開する。
【0044】
図7に示すように、測定値RMが目標値RT未満であれば、水噴射制御部56が、目標値RTと測定値RMとの間の偏差を算出する(ステップS31)。次に、水噴射制御部56が、算出された偏差に応じて、第1補正量を算出する(ステップS32)。次に、水噴射制御部56は、今回のエンジンサイクルにおける一次指令値を設定する(ステップS33)。水噴射量の一次指令値は、前回のエンジンサイクルにおいてステップS33で算出された水噴射量の指令値に、今回のエンジンサイクルにおいてステップS32で算出された第1補正量を減算することによって求められる。また、特にガスエンジン1の起動時から定常運転に至るまでにおいては、水噴射制御部56は、今回のエンジンサイクルにおける一次指令値を、前回のエンジンサイクルの一次指令値に設定してもよい。
【0045】
次に、水噴射制御部56は、前述したステップS14〜S16と同様の処理をする。つまり、今回のエンジンサイクルにおいて強ノッキングが発生しているか否かが判断される(ステップS34)。発生していなければ(S34:NO)、水噴射制御部56は、次回のエンジンサイクルにおける水噴射量の指令値を、水噴射量の指令値がステップS33で算出された一次指令値に設定される(ステップS36)。発生していれば(S34:YES)、水噴射量の指令値が、第2補正量に設定される(ステップS35)。なお、第2補正量は、ステップS33で算出された一次指令値よりも大きい値であり、これにより強ノッキングが検出されたときに水噴射量が増加補正される。第2補正量は、ノッキング強度によって設定されてもよいし、ステップS33で算出された一次指令値に予め定められた補正量を加算することによって設定されてもよい。このとき、今回のエンジンサイクルで算出された指令値は次回のエンジンサイクルにおけるステップS13での一次指令値設定処理で、減少するように変更される。これにより、強ノッキングの発生のため水噴射量を増加補正しても、次回以降のエンジンサイクルの水噴射量の指令値が乱されない。
【0046】
また、測定値RMが目標値RT未満であれば、点火制御部57は、前回のエンジンサイクルの点火時期の指令値が、適値TT未満であるか否かを判断する(ステップS41)。前回指令値が適値TT未満であれば(S41:YES)、点火制御部57は、前回指令値に所定の進角補正量を加算し、今回のエンジンサイクルにおける点火時期の指令値をこの加算値に設定する(ステップS42)。前回指令値が適値TT以上であれば(S41:NO)、点火制御部57は、前回指令値に所定の遅角補正量を減算し、今回のエンジンサイクルにおける点火時期の指令値をこの減算値に設定する(ステップS43)。なお、前回指令値と適値TTが等しい場合は、点火時期の指令値は、前回のエンジンサイクルの指令値に微小な進角量α(>0)だけ進角補正した値としてもよいし、微小な遅角量α(<0)だけ遅角補正した値としてもよい。点火時期の初期値は適値TTよりも遅角した小さな値であるので、当該制御の実施当初は、ステップS41からステップS42に進むケースが支配的となる。
【0047】
そして、前述したステップS24,S25と同様にして、他制御の並行実施を考慮した点火時期の補正が適宜行われ得る(ステップS44,S45)。
【0048】
このように水噴射量及び点火時期の各指令値が設定されると、前述同様にして水噴射弁14及び点火プラグ11が制御され、次回のエンジンサイクルにおける処理がステップS1から再開する。
【0049】
図8は、図5〜図7に示す水噴射及び点火制御が実行された場合における、ノッキング出現率の測定値、水噴射量及び点火時期の時間変化の一例を示すフローチャートである。なお、ガスエンジン1の起動処理が終わった時点では、ノッキング出現率の測定値は、目標値未満であってゼロ付近の小さい値である。点火時期の指令値は、時期記憶部55に予め記憶されている初期値に設定される。水噴射量の指令値は、ゼロに設定される。点火時期の初期値は、適値よりも遅角されている。
【0050】
したがって、図5に示す処理がステップS42を経由するようにして繰り返される。これにより、水噴射量がゼロのままで推移する一方、点火時期は進角され続けていく。水を噴射することなく点火時期が進角していくので、燃焼温度が徐々に上昇して、ノッキング出現率の測定値が目標値RMに向かって上昇していく。ノッキング出現率の測定値が目標値RMを超えると、図6に示す処理が実行される。これにより、点火時期の進角が止まる一方、水噴射量が増加し続ける。これにより、気筒内温度が水の蒸発潜熱で低下していくので、ノッキング出現率の測定値は低下する。このとき、点火時期が遅角していないので、ノッキング出現率の測定値を低下させながらも、効率は殆ど低下しない。
【0051】
水噴射量を増加させた効果により、ノッキング出現率の測定値が目標値未満になるまで低下すると、図5に示す処理が実行され、水噴射量の増加が止まる一方、点火時期が再び適値TTに向かって進角する。これにより、ノッキング出現率の測定値が、目標値に向けて再び上昇する。これ以降、点火時期が適値に達するまで、水噴射量の増加と点火時期の進角とが交互に繰り返される。点火時期が適値に達するまで上昇した後は、ノッキング出現率の測定値が目標値付近で収束し、点火時期が適値付近で収束する。
【0052】
本実施形態に係るガスエンジン1の制御装置100によれば、ノッキング出現率の測定値が目標値と比較され、水が気筒内に向けて噴射される。つまり、やみくもに又はノッキング発生状況を直接的に示さない運転パラメータに基づき水が噴射されるのではなく、ノッキングの出現頻度と目標値とに基づき、水噴射量が設定される。すると、気筒内に噴射された水の蒸発潜熱で気筒内温度が低下していき、ノッキングが低減される。ノッキングが低減されると、ノッキング出現率の測定値が過剰に上昇するのを防止しうる範囲内で点火時期の進角代(進角可能な量)を確保することができる。このため、効率の向上を図ることができる。
【0053】
特に、水噴射制御部56は、測定値と目標値との偏差を演算し、該偏差に応じて算出された補正量だけ水噴射量の指令値を補正する。これにより、測定値を好適に目標値へと近づけることができるようになる。したがって、ノッキング出現率を目標値付近に収束させつつ、測定値を目標値に向けて上昇させるために確保された点火時期の進角代(進角可能な量)を最大限に活用することができ、ガスエンジン1の効率を良好に向上させることができる。
【0054】
図4中の線B及びCは、点火時期とNOx排出量との間の相関を示している。線Bは、水が全く噴射されない場合における点火時期に対するNOx排出量を示している。線Cは、水を噴射した効果によりノッキング出現率が目標値に維持されている場合における点火時期に対するNOx排出量を示している。線Bが示すように、水の噴射を伴わずに点火時期が進角すると、燃焼温度が上昇するので、NOx排出量も増加する。これに対し、線Cが示すように、水の噴射を伴って点火時期が進角すると、燃焼温度の上昇を良好に抑制することができるので、点火時期が適値TT付近まで進角した状態で運転していても、NOx排出量が増加するのを良好に抑制することができる。NOx排出量を基準にして考えれば、水噴射を利用してノッキング出現率を目標値に維持する制御を実行することにより、点火時期差分ΔTに応じた効率差分Δεだけ、効率を向上させることができるとも言える。
【0055】
このように、本実施形態の制御装置100によれば、ノッキング出現率を目標値に収束させることと、効率を点火時期との関係において最適化してできる限り高くすることと、NOx排出量の増加を抑制することとを両立することができる。なお、ノッキング出現率を測定するには過去値を必要とする一方、ノッキングの発生しやすさはエンジンの負荷変動に依存する。このため、発電用大型ガスエンジンや舶用大型ガスエンジン等、負荷変動が相対的に小さいガスエンジンに適用されれば、上記の両立効果が顕著となり、特に有益である。
【0056】
図8は、水噴射量が瞬間的に増加している時点を例示しているが、この瞬間的な増加は、強ノッキングの発生によって、水噴射量の指令値が第2増加補正量を用いて増加補正されたことを模式的に示している。このように、強ノッキングが発生すれば、次回のエンジンサイクルにおいて水噴射量が瞬間的に増加補正され、気筒内温度を速やかに低下させることができる。よって、ノッキング出現率という過去値を用いて測定されるデータを制御しながらも、エンジンの損傷が懸念されるような事象が突発した場合に、これに即座に対応して当該事象を速やかに抑制することもできる。このような制御を実現するため、本実施形態では、水噴射量の指令値を求めるに際し、強ノッキングが発生すれば、第2補正量を水噴射量の指令値として算出するようにしている。また、第2補正量は、ノッキング強度によって設定されてもよい。このとき、今回のエンジンサイクルで算出された指令値は次回以降に変更される。これにより、強ノッキングの発生のため水噴射量を増加補正しても、次回以降のエンジンサイクルの指令値が乱されない。
【0057】
また、図5に示すように、水を好適に噴射することが困難になれば(S1:NO)、水噴射制御部56は、水噴射量の指令値をゼロに設定するなどして、水噴射を停止するよう水噴射弁14を制御する(ステップS51)。点火制御部57は、これを受けて、点火時期を所定時期まで遅角させる(ステップS52)。この所定時期は、水の噴射を止めてもノッキングが発生しにくい点火時期であり、例えば初期値、または初期値よりも遅角された時期である。このような処理を組み込むことにより、水を好適に噴射し得ない状況下であっても、ノッキングが多発する事態を回避することができる。
【0058】
これまで本発明の実施形態について説明したが、上記構成は本発明の範囲内で適宜変更可能である。例えば、水噴射弁14は、対応する気筒4内に向けて水を噴射可能であればよく、水噴射口14aが副燃焼室24の内部又は枝管部8bの内部に臨むようにして設けられていてもよい。気筒に水を噴射する手段は、水噴射弁14に限定されず、キャブレタ等の他の装置が適用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、ノッキングを抑制することと、効率を向上させることとを良好に両立することができるとの作用効果を奏し、多気筒レシプロガスエンジン、特に、発電用大型ガスエンジン又は舶用大型ガスエンジンに利用すると有益である。
【符号の説明】
【0060】
1 ガスエンジン
4 気筒
13 点火プラグ(点火手段)
14 水噴射弁(水噴射手段)
42 筒内圧センサ
45 ノッキング出現率測定部
51 ノッキング検出部
53 ノッキング出現率演算部
54 出現率目標値記憶部
55 時期記憶部
56 水噴射制御部
57 点火制御部
100 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスエンジンの気筒内に向けて水を噴射する水噴射手段と、
前記水噴射手段から噴射される水噴射量を制御する水噴射制御手段と、
前記気筒におけるノッキング出現率の測定値を測定するノッキング出現率測定手段と、を備え、
前記水噴射制御手段は、前記測定値と目標値との偏差に基づき、前記気筒内に向けての前記水噴射量が設定されるように前記水噴射手段を制御する、ガスエンジンの制御装置。
【請求項2】
前記気筒内に供給される混合気を点火する点火手段と、
前記点火手段を制御する点火制御手段と、
前記ガスエンジンの効率向上のために設定される点火時期の適値を記憶した時期記憶手段と、を更に備え、
前記点火制御手段は、前記測定値が前記目標値未満であるときに、点火時期が前記適値よりも遅角しているか否かを判断し、点火時期が前記適値よりも遅角していれば点火時期を進角補正する、請求項1に記載のガスエンジンの制御装置。
【請求項3】
前記水噴射制御手段は、前記測定値と前記目標値との偏差に基づき前記水噴射量の補正量を設定し、前回のエンジンサイクルで設定された水噴射量に前記補正量を反映させる、請求項1又は2に記載のガスエンジンの制御装置。
【請求項4】
所定強度以上の強ノッキングを検出する強ノッキング検出手段を更に備え、
前記水噴射制御手段は、前記強ノッキングが検出されたときに、前記水噴射量を増加補正する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガスエンジンの制御装置。
【請求項5】
ガスエンジンの気筒におけるノッキング出現率の測定値を測定する測定ステップと、
前記測定値を所定の目標値と比較する出現率比較ステップと、
前記測定値と前記目標値との偏差に基づき、前記気筒内に向けての水噴射量を設定する水噴射ステップと、を備える、ガスエンジンの制御方法。
【請求項6】
前記測定値が前記目標値未満であるときに、点火時期を前記ガスエンジンの効率向上のために設定される点火時期の適値と比較する点火時期比較ステップと、
点火時期が前記適値よりも遅角しているときに、点火時期を進角補正する進角補正ステップと、を更に備える、請求項5に記載のガスエンジンの制御方法。
【請求項7】
前記水噴射ステップが、前記測定値と前記目標値との偏差を演算する偏差演算ステップ、該偏差に応じて水噴射量の補正量を設定する補正量設定ステップ、及び、前回のエンジンサイクルで設定された前記水噴射量に前記補正量を反映させる水噴射量設定ステップを有する、請求項5又は6に記載のガスエンジンの制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−225319(P2012−225319A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95830(P2011−95830)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】