説明

ガスセンサ

【課題】 センシング電極部や基板接続用の接続用電極といった電極部が、測定環境下に露出するのを防止し、かつ感湿部の開口度をあげることでセンサの応答性を高め、信頼性の高い湿度センサを提供する。
【解決手段】 センサチップの一面3側はその全面を測定環境下にさらし、一面5側には半導体膜6を形成後、センシング電極7,8、および該センシング電極からの信号を処理するための信号処理回路部9が形成されている。配線部材11によりターミナル基板1を通し、外部と電気的に接続されている。センシング電極7,8および信号処理回路部9は耐湿性材料よりなる保護膜10により被覆保護されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理回路とガスセンサ部が同一半導体基材部に形成されたガスセンサ、特にガスセンサ部は、湿度に応じて容量値または抵抗値が変化する感湿膜として機能する多孔質膜と該多孔質膜の容量値変化または抵抗値変化を検出するための電極により構成されたものに関する。
【背景技術】
【0002】
(1)感湿部の構造
感湿部は、一般に湿度に応じて容量値または抵抗値が変化する感湿膜を用いており、大きく分けて二種類の構造がある。一つ目は半導体やセラミック、有機材料等よりなるセンサチップの一面側に、この感湿膜の容量変化または抵抗値変化を検出するためのセンシング電極を備えた構造で、二つ目は感湿膜の両面にセンシング電極を備えた構造となっている。
【0003】
また、センサチップには、センシング電極から引き回された接続用電極が設けられ、この接続用電極を介して、上記センシング電極を外部接続用の配線部材と電気的に接続するようにしている。
【0004】
・感湿膜の長期安定性
感湿膜としては、有機材料を利用することがあるが、高温高湿な雰囲気下では耐久性に課題があり、長期信頼性が劣化する場合もある。シリコン基板上に多孔質領域を形成しガスセンサ部とし、センサ部は無機材料であり、かつ、多孔質シリコンの表面を熱的・科学的に安定な酸化シリコンで被覆しておけば、長期安定性に優れる。
【0005】
・信号処理回路の1チップ化
さらに同一基板の非多孔質部に信号処理回路を形成すれば、センサ部と信号処理回路を1チップ化し、小型化、低コスト化などのメリットがあるが、いくつかの課題がある。
【0006】
多孔質シリコンを感湿部とするセンサは、例えば、Sensors and Actuators B 95 188-193, 2003や特公平6-23709に開示されている。
【特許文献1】特公平6-23709号公報
【非特許文献1】Sensors and Actuators B 95 188-193, 2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
・電極の腐食
しかしながら、上記したような湿度センサにあっては、センサチップに設けられた電極部すなわちセンシング電極および接続用電極が高湿度環境にさらされた場合に腐食しやすい、という問題がある。そのため、上記電極部として、貴金属等の腐食しにくい耐食性電極材料を用いることも考えられるが、電極材料に制約が生じてしまう。特に信号処理回路と同一基板上にセンサ部を配置し、信号処理回路を形成する際の半導体プロセスでの電極・配線形成技術でセンサ部の電極を形成しようとする場合には、半導体プロセスで一般的な材料を使用することが望ましい。
【0008】
・電極配置の得失
信号処理回路を形成した半導体基板上に有機材料を用いた感湿部を形成する場合、感湿部をセンスする電極は感湿材料を配置する位置に予め形成しておいて、その上に感湿材を塗布などの方法によって形成することが一般的である。しかし、多孔質シリコンを感湿材として利用する場合においては、半導体基板の一部を陽極化成などの方法で多孔質化するので、多孔質層の下部に電極を配置するのは容易でない。
【0009】
一方、電極を感湿部の上面に配置する構造の場合、感湿膜上の電極が透湿の障害となり、感湿膜の吸湿特性が制限される。また、腐食、コストの面からも電極部材に制約が生じてしまう。
【0010】
すなわち、長期安定性に優れる無機材料の感湿部、特に多孔質シリコン、多孔質酸化シリコン等の材料を用いる場合に、電極の腐食を克服するための電極配置と、電極の感湿面被覆による開口率低下による感湿特性の劣化の得失が矛盾する、という課題があった。
【0011】
本発明は上記問題を鑑み、センサ部に多孔質シリコン、あるいは、多孔質酸化シリコンを用いることで、高湿な雰囲気下でのセンサの劣化という問題を解決するとともに、多孔質シリコンを形成する基板がシリコンであることを利用し信号処理回路を同一基板上に形成しセンサチップを小型化する場合には、センシング電極や基板との接続用電極といった電極部が測定環境下に露出するのを防止し、かつ感湿部の開口率を上昇させ、応答性に優れた信頼性の高い湿度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明では、センサチップ2の一面5側に容量値変化または抵抗値変化の検出用のセンシング電極7、8、電気信号処理用の信号処理回路部9、及び外部と電気的に接続するための配線11、それらを保護する耐湿性材料からなる保護膜10を備え、一面3側はその全面が測定環境にさらされるような構造を特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、センシング電極7、8、および信号処理回路部9が保護膜10にて被覆され、かつセンサチップ2の一面5側に構成できるため、測定環境下に露出するのを防止することができる。
【0014】
それにより、電極部の材料として耐食性の無い材料(例えばAlまたはAl合金などの材料)を用いることができるため、センサチップを通常の半導体プロセスにて製造することができ、微細化、大量生産が可能となる。
【0015】
また、請求項1に記載の発明では、センサチップの一面3側を感湿部として用いることを特徴とする。それによれば、感湿膜へ進入しようとする水分子が電極により妨げられることがない。また水分子の脱離の際にも同様の効果があり、センサの応答性を高くすることができ好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。図1は本発明の実施の形態に係る容量式湿度センサの概略断面構成を示す図である。
【0017】
・センサ構造の説明(図1)
〔全体〕
図1において1はセンサチップをフリップチップ実装するための実装基板であり、センサチップの電極をハンダボール等の配線部材11で接続する。2は、信号処理回路を形成したセンサチップの一面5側が実装基板と対向して設置されたセンサチップである。センサチップは半導体基板に信号処理するための信号処理回路部9と半導体基板を多孔質化して形成した感湿膜4が配置されている。このセンサチップ2の一面3側は、湿度に応じて容量値が変化する感湿膜4が測定環境に露出するように配置されている。センサチップ2の一面5側には半導体膜6、及び2個のセンシング電極7,8が形成されている。このセンシング電極7,8は感湿多孔質膜4の容量変化を検出する為のものであり、形状は特に限定されない。
【0018】
本発明では、センサチップの一面3側が感湿部となり周囲の湿度変化に応じて2個のセンシング電極7,8間の容量が変化するため、この容量変化に基づいて湿度検出が可能となっている。本例のように感湿部は第2の主面の必ずしも全面に感湿部が形成されている必要は無く、一部でもよい。
【0019】
センシング電極7,8とは、電気的に接続された信号処理回路部9は例えばスイッチドキャパシタ回路を構成し、周囲の湿度変化に応じて変化する両センシング電極7,8間の容量変化を、電圧に変換して出力することにより、湿度を検出することができるようになっている。また、湿度の検出としては本例のように必ずしも容量検出型としなくともよく、他の実施の形態として例えば、センシング電極7,8間の抵抗値の変化を検出する抵抗検出型を用いてもよい。その場合、信号処理用として設けている信号処理回路9は抵抗変化を電圧に変換して出力する回路を構成することが必要となる。
【0020】
〔電極部〕
また、感湿部は多孔質構造であるため、水蒸気が多孔質層を浸透して、センシング電極7,8及び信号処理回路部9に到達し、腐食しないように保護膜10が形成されている。
【0021】
本発明の好適な保護膜の配置は例えば以下が挙げられる。
【0022】
(例1)
センシング電極7,8の隙間の感湿部の第1の主面側に露出している部分を被覆するように保護膜を配置する。保護膜は絶縁膜が好ましい。あるいは、シリコンのような樹脂材料、高分子材料12を実装基板との隙間に充填することにより、実質的に保護膜を形成するものであっても構わない。
【0023】
(例2)
感湿部が容量変化型である場合には、センシング電極の形成に先立って、センサチップの一面5側の感湿部全面に絶縁性材料からなる保護膜を形成し、この上に電極を配置する。このように配置することで、電極の感湿部に面した側の腐食も防止できる。
【0024】
(例3)
感湿部のセンサチップの一面5側全体に半導体膜を形成し、その一部を2つのセンシング電極とし、隙間部はpn接合分離、あるいは、半導体膜を酸化して絶縁体化することで電気的に分離する方法であってもよい。
【0025】
なお、いずれの方法にあっても実装基板とセンサチップの間には樹脂材料等12を隙間無く充填し、水分等の浸入を防止することが好ましい。
【0026】
(保護膜の材質)
保護膜には例えばシリコン窒化膜、シリコン酸化膜、あるいは、シリコン膜(単結晶、多結晶、非晶質)、あるいは、樹脂等のいずれであっても構わないが、透湿性が無い材料であることが構成要件である。また、保護膜の導電性については、対象とするセンサ特性によって適宜選択すればよい。例えば、静電容量変化の場合には、導電性、絶縁性、半導体のいずれも選択しうるが、抵抗変化の場合には絶縁性は好ましくないことになる。
【0027】
以下にその他の部材について説明する。
【0028】
図2にセンサチップの製造工程を示す。
【0029】
(半導体基板)
多孔質層を形成する半導体基板20としては、CZ法、MCZ法あるいはFZ法などで作製された単結晶シリコンウェハのみならず、基板表面が水素アニール処理されたウェハ、あるいはエピタキシャルシリコンウェハなどを用いることができる。勿論、シリコンに限らず化合物半導体基板として例えばGaAs基板あるいはInP基板等の化合物半導体基板も用いることができる。
【0030】
(感湿膜)
該基板20の一面より陽極化成により感湿膜として機能する多孔質Si層を形成する。多孔質膜が感湿膜として機能することは例えば、文献A.Kaan Kalkan et al.;IEEE Vol.25,NO.8,pp.256-528(2004)に記載されている。多孔質Si層の厚さは数百μmから0.1μm程度まで使用できる。より好ましくは、0.1μmから10μmの範囲である。また多孔度は自由に設定できるが、ガスが多孔質層の孔の中に浸透するように孔が多孔質層の表面から最奥部まで連通している必要がある。多孔質層は単一の多孔度の層で構成してもよいし、多孔度の異なる複数の層で構成してあっても構わない。特にあとに述べる分離工程においても多孔質層を利用する場合には、感湿膜として機能する低多孔度層と、分離層と機能する高多孔度層の2層構成とすることもできる。高多孔度層の多孔度は、10%から90%、低多孔度層の場合の多孔度は、70%以下の範囲で利用可能である。多孔度の異なる複数の層の形成は、陽極化成の際の電流密度を変えたり、化成溶液の種類あるいは濃度をかえることで実現できる。
【0031】
また、容量検出型センサの場合、該多孔質Si層は酸化することが好適である。酸化多孔質Si層とすることにより絶縁膜を形成し、かつ、水分子の吸着率が上がる。
【0032】
多孔質層に水分子が吸着すれば、水分子は誘電率が大きいので侵入した水分量に応じて多孔質膜の誘電率が大きく変化し、結果、両センシング電極間の容量値も変化するようになっている。
【0033】
(半導体膜)
信号処理回路を形成する半導体膜22は、非多孔質単結晶シリコン薄膜の他、GaAs、InP、GaAs等の化合物半導体膜を用いることもできる。半導体膜が単結晶シリコンの場合に原料ガスとして、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiH4を用い、必要に応じ、HClガスを添加しても良い。形成方法はCVD法に限らず、MBE法、スパッター法等も可能である。半導体膜は、単結晶が好ましいが、多結晶や非晶質であっても構わない。
【0034】
陽極化成により多孔質層を形成した場合には、該多孔質層上への半導体膜22を形成させるに先立って、多孔質の孔の内壁に窒化膜あるいは酸化膜などの保護膜を設ける保護膜形成工程や水素を含む雰囲気中での熱処理工程を行うのが良い。勿論、上記保護膜形成工程後、前記熱処理工程を行う事も好ましい。
【0035】
(分離層)
なお、陽極化成を用いて多孔質層を形成する場合には、当該多孔質層を多孔度の異なる複数の層で構成することもできる。例えば、エピ膜領域21側から低多孔度層、高多孔度層の2層構造にすることが可能である。多孔度を調整して2層構造にすることで、該2層目より選択的に分離されるので、分離には好適である。
【実施例1】
【0036】
(製法)
まず、シリコン基板を陽極化成し、表面に感湿膜として機能する多孔質膜23、及び分離層として機能する多孔質層24を備えた2層構造の多孔質層を形成する。例えば、本例での具体的条件を示す。
【0037】
比抵抗0.01Ω・cmのP型の単結晶Si基板を用意し、HF溶液中において基板表面の陽極化成を行い、2層の多孔湿層を形成した。以下、感湿膜として機能する層23を第1層、分離層として機能する層24を第2層と呼ぶ。陽極化成条件は以下の通りであった。
【0038】
第1層
電流密度:10(mA・cm-2)
陽極化成溶液:HF:H2O:C2H5OH=1.5:1:7.5
時間:2(分)
多孔質Si層の厚み:3(μm)
第2層
電流密度:33(mA・cm-2)
陽極化成溶液:HF:H2O:C2H5OH=1.5:1:7.5
時間:8(分)
多孔質Si層の厚み:12(μm)
感湿層として機能する第1層は、当該多孔質Si層上に高品質エピタキシャルSi層を形成させることができ、さらに感湿膜として用いることができるよう多孔度を調整した。具体的には、60%であった。第2層についても分離層として機能するよう多孔度を調整した。
【0039】
その後、この多孔質Si層の表面をフッ酸に浸漬し、孔の内壁の酸化膜を残して、多孔質Si層の表面の酸化膜のみ除去した。次に多孔質酸化膜上にCVD法により単結晶Si層22を3μmエピタキシャル成長した。成長条件は以下の通りである。
【0040】
ソースガス:SiH2C12/H2
ガス流量:0.5/180 1/min
ガス圧力:80Torr
温度:950℃
成長速度:0.3μm/min
こうして部材20を形成した。
【0041】
また、成長条件によりエピ膜の膜厚は調整でき、エピ膜上の処理回路に合わせて任意に作りこむことが可能である。
その後、多孔質層上に形成したエピ膜に対し、2個のセンシング電極30,31を形成する。センシング電極面積、センシング電極間の距離は、エピ膜上の信号検出処理回路の能力に合わせて設計すればよいが、電極面積は大きく、電極間距離は小さくとることで電極間の容量値を稼ぐことができる。センシング電極の形状は限定されないが、本例では各センシング電極が互いに櫛歯状をなし、互いの櫛歯部がかみ合って対向したものである。特に容量型センサの場合には、このような櫛歯の電極を採用することにより、容量を大きくできるので、電極の配置面積を小さくすることができる。本例では電極材料としてPt-Pdを用いているが限定はされない。例えば、AlまたはAl合金を主成分とする材料よりなるものを採用でき、その他、Pt,Ti、Au、Al,Cu、Poly-Si等の通常の半導体製造ラインで使用可能な材料を採用することができる。
【0042】
これら2個のセンシング電極上には、耐湿性材料からなる保護膜32を形成する。本例では、保護膜32は、両センシング電極及び両センシング電極の間(櫛歯の間)を覆っている。次に2個のセンシング電極を電気的に分離するためにエピ膜をエッチングする。さらにエピ膜上に通常の半導体プロセスを経て、周囲の湿度の変化に応じた2個のセンシング電極間の容量値の変化(センシング電極からの信号)を信号処理するための信号処理回路部33を形成する。該信号処理回路部もセンシング電極同様に、耐湿性材料からなる保護膜34にて被覆されている。
【0043】
なお、信号処理回路を形成した後、電極を形成するという順序で行っても良い。
【0044】
(分離)
次に前もって作製してあった分離層35でウエハ全面を、基板側36とデバイス側37に分離する。
【0045】
デバイス側には前もって分離に耐えうるよう、有機樹脂等38で被覆を施し、薄膜の強度を上げておくことで、分離の際に起こりうる破壊を防ぐ必要がある。また、フレキシブルなシート、ガラス基板、プラスチック基板等を接着し、分離後除去するといった方法も有効である。
【0046】
分離は流体の圧力を利用した。具体的には、分離層35側面に流体ジェットを吹き付けて分離を行うことができる。流体としては、液体であれば水、エッチング液、アルコールなど、気体であれば空気、窒素ガス、アルゴンガス等を用いることができる。分離の際に超音波振動を用いてもよい。流体は非常に微小な隙間へも流入し内部の圧力を上げることが可能で、外圧を分散して印加できることが特徴である。本発明のように、半導体デバイスがすでに作製されている薄層全面を分離するには最適の手段である。
【0047】
また、図3に示す通り基板側をエッチングすることによりセンサチップを取り出すという方法もある。部材40の一面41側より、基板をエッチングすることによりセンサ部を測定環境に対して露出させる。このときのエッチング深さは、少なくともセンサ部の一面42側が測定環境に対して露出していれば良い。この場合には、必ずしも分離層として形成した多孔質2層は必要としない。
【0048】
(実装)
その後、デバイス層側37をダイシングによってチップサイズに切り、それぞれのチップのパッケージングを行う。
【0049】
分離層から行うチップ化は、通常用いられるダイシング装置を用いることができる他、エッチングやレーザーアブレーション、超音波カッター、高圧ジェット(例えば、ウォータージェット)なども用いることができる。
【0050】
このとき図1のようにセンサチップ2の一面5側をパッケージ台と接触させ封止することにより、センシング電極や周辺回路が湿度環境にさらされて腐食しやすい、いう問題を防止する。上記電極部として、貴金属等の腐食しにくい耐食性電極を用いることも考えられるが、本発明ではその必要は無く、電極材料に制約を受けることなく自由に選ぶことができる。
【0051】
また、センサチップ2の一面3側を感湿膜として用いることにより、電極が水分の透過を妨げるといった問題は解消される。
【0052】
本実施形態では、上記したように、信号処理用の回路素子部が集積化されたセンサチップ2を、通常の半導体プロセスにて製造することができ、センサ部が電極により覆われていないので、高感度化、微細化、高集積化、大量生産が可能でかつ小型の湿度センサを提供できる。
【実施例2】
【0053】
以下、本発明を図に示す実施の第2の形態について説明する。図4は本発明の実施2に係るガスセンサの概略断面構成を示す図である。
【0054】
多孔質層を形成する部材50としては、実施例1と同様にCZ法、MCZ法あるいはFZ法などで作製された単結晶シリコンウェハのみならず、基板表面が水素アニール処理されたウェハ、あるいはエピタキシャルシリコンウェハなどを用いることができる。勿論、シリコンに限らずSiGe基板やGaAs基板あるいはInP基板等の化合物半導体基板も用いることができる。
【0055】
該基板50に対し、一面51側に感湿部として機能する多孔質部52を形成する。多孔質層の深さは数百μmから0.1μmまで利用できる。
【0056】
センサとして用いる領域に対して部分化成により多孔質層52を形成した後、実施例1と同様にして半導体膜53を形成する。その後、該半導体膜に対して、信号処理回路54、電極55,56、およびそれらに対し保護膜を形成する。その後、エッチングにより両電極を電気的に分離する。
【0057】
このようにしてデバイス部を形成した後に、部材50の一面57側からエッチングにより、デバイス層の分離を行う。このときのエッチング深さは少なくとも、センサ部の一面58が測定環境に対し、露出していれば良い。
【0058】
その後、実施例1で述べた通り、ダイシングによりチップ単位に切り分けた後、センサモジュールを形成する。
【0059】
本実施例においては、エピ膜を形成する工程を含まず、安価なセンサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態に係るセンサモジュールの概略断面図
【図2】図1に示すセンサチップの製造工程
【図3】デバイス層分離の形態
【図4】実施例2によるセンサの製造工程
【符号の説明】
【0061】
1 実装基板
2 センサチップ
3 センサチップの一面
4 多孔質膜
5 センサチップの他面
6 半導体膜
7、8 センシング電極
9 信号処理回路
10 保護膜
11 ハンダボール
12 保護部材
20 センサチップの一面
21 センサチップの他面
22 半導体膜
23 感湿用多孔質膜
24 分離用多孔質膜、
30、31 センシング電極
32 保護膜
33 信号処理回路
34 保護膜
35 分離層
36 部材の一面
37 部材の他面
38 保護部材
40 基板
41 部材の一面
42 センサ部の一面
50 基板
51 基板の一面
52 多孔質層
53 半導体膜
55,56 電極
57 基板の一面
58 センサの一面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスセンサ部と信号処理回路部が同一半導体基材上に形成されたガスセンサにおいて
(1) 第一の主面側に前記信号処理回路部、および、ガスセンサ部の電極を有し、
(2) 多孔質構造のガス吸着部材からなるガスセンサ部が該基材を貫通して配置され、第二の主面にガス検知面を有し、かつ、
(3) 前記信号処理回路部の表面部分、および、前記電極は耐湿材料により被覆されていること
を特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記ガスセンサ部は多孔質シリコンまたは酸化多孔質シリコンのいずれか、またはその混合体よりなることを特徴とした請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記ガスセンサ部は、湿度により静電容量が変化する湿度センサであることを特徴とする請求項1ないし2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記耐湿材料は絶縁性材料であることを特徴とする請求項3に記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記ガスセンサ部の電極面側は、非多孔質絶縁性耐湿材料で被覆され、この上に電極が配置されていることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項6】
信号処理回路、電極、感湿膜が同一基板上に形成されたセンサの作製方法において、少なくとも以下の工程を含むことを特徴とするセンサの作製方法。
(1) 半導体基板上に少なくとも一部に多孔質層を形成する工程、
(2) 該多孔質層上に信号処理回路を形成する半導体膜を形成する工程、
(3) 多孔質層の上部に電極を形成する工程、
(4) 信号処理回路を形成する工程、
(5) 前記半導体基板を除去し、多孔質層の下部を露出させる工程、
および、
(6) 該電極、および、信号処理回路を耐湿材料で被覆する工程
【請求項7】
信号処理回路、電極、感湿膜が同一基板上に形成されたセンサの作製方法において、少なくとも以下の工程を含むことを特徴とするセンサの作製方法。
(1) 半導体基板上に少なくとも一部に多孔質層を形成する工程、
(2) 該多孔質層上に信号処理回路を形成する半導体膜を形成する工程、
(3) 多孔質層の上部に電極を形成する工程、
(4) 信号処理回路を形成する工程、
(5) 多孔質層中、ないし、多孔質層と基板の界面で分離することにより、多孔質層と信号処理回路を形成した半導体層、および、電極と、基板を分離する工程、
および、
(6) 該電極、および、信号処理回路を耐湿材料で被覆する工程

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−192628(P2007−192628A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10021(P2006−10021)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】