説明

ガスタービンエンジンのロータモジュール及びタービンアッセンブリ並びにタービンアッセンブリ組み付け方法

【課題】ハードウエアの複雑性及び重量を減少させる一体的なロータモジュールを提供する。
【解決手段】低圧タービン46内に配されたロータモジュール62は、セラミック複合材料からなるCMCエアフォイル64A,64B,64C、CMCドラム66、ベーン68A,68B、及び分割ケース60を含む。CMCエアフォイル64A,64B,64Cは、複数の列をなしており、共通のCMCドラムから延びる。CMCエアフォイル64A,64B,64Cは、CMCベーン68A,68Bと交互に配置される。ロータモジュール62は、取付部70を有し、取付部70は、エアフォイル列68Bに隣接した共通のドラム66の軸方向に延びる中心軸位置から半径方向内側に延び、ロータモジュール62を内側シャフト40に一体的に取付ける。ロータモジュール62は、ナイフエッジシール72などの独立した特徴部をさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンエンジンに関し、特にガスタービンエンジンのセラミック複合材料(CMC:Ceramic Matrix Composites)からなる構成要素に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンのタービンセクションは、著しく酸化状態にあるガス流環境において高温下で作動するものであり、通常、高温超合金から製造される。タービンロータアッセンブリは、通常、ボルト、タイロッドや他の留め具で互いに固定される複数のロータディスクを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記留め具は、留め具自体だけでなく、留め具を支持するための材料等によって重量を増加させる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の例示的な態様によるガスタービンエンジンのロータモジュールは、セラミック複合材料(CMC)からなる共通のCMCドラムから延びる複数のCMCエアフォイルの列を備える。
【0005】
本発明の例示的な態様によるガスタービンエンジンのタービンアッセンブリは、軸を中心に画定された分割ケースと、セラミック複合材料(CMC)からなる共通のCMCドラムと、セラミック複合材料(CMC)からなり、共通のCMCドラムから延びる複数のCMCエアフォイルの列と、を備え、軸を中心に回転するタービンロータモジュールと、を備える。
【0006】
本発明の例示的な態様によるガスタービンエンジンのタービンアッセンブリ組み付け方法は、軸を中心に画定されるセラミック複合材料(CMC)からなる共通のCMCドラムの周囲で分割ケースを組み付けるステップを含み、共通のCMCドラムから、セラミック複合材料(CMC)からなる複数のCMCエアフォイルの列が延びる。
【0007】
以下に開示する例示的な実施例についての詳細な説明を参照することによって、当業者であれば本発明の種々の特徴を理解されるであろう。以下に記載する発明を実施するための形態に伴う図面について簡単に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ガスタービンエンジンの概略的な断面図。
【図2】ガスタービンエンジンの一部の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1にガスタービンエンジン20を概略的に図示する。本明細書においては、二重スプールターボファンエンジンとしてガスタービンエンジン20を図示している。該エンジンは、ファンセクション22、圧縮セクション24、燃焼セクション26及びタービンセクション28を有する。別の実施例のエンジンは、他のシステムや特徴部に加えてオグメンタセクション(図示せず)を有する。ファンセクション22は、バイパス流路に沿って空気を送る。次いで、圧縮セクション24は、圧縮のためコア流路に沿って空気を送る。空気は燃焼セクション26を通過した後、タービンセクション28を通って膨張する。例示的な実施例ではターボガスタービンエンジンを例示しているが、本発明はターボガスタービンエンジンに限定されず、他の形式のタービンエンジンにも適用可能である。
【0010】
ガスタービンエンジン20は、通常、低速スプール30及び高速スプール32を有する。低速スプール30及び高速スプール32は、ベアリングシステム38を介してエンジンの固定構造体36に対してエンジンの長手方向の中心軸Aを中心に回転するように取付けられる。付加的に又は別の実施例として、種々のベアリングシステム38を種々の位置に設けてもよいことを理解されたい。
【0011】
低速スプール30は、通常、ファン42、低圧圧縮機44及び低圧タービン46を相互に接続する内側シャフト40を有する。内側シャフト40は、低速スプール30よりも低速でファン42を駆動させるようにギア付き構造体48を通してファン42に接続される。高速スプール32は、高圧圧縮機52及び高圧タービン54を相互に接続する外側シャフト50を有する。燃焼器56は、高圧圧縮機52と高圧タービン54との間に配される。内側シャフト40及び外側シャフト50は、同心をなし、各々の長手方向軸と同一線上にある長手方向の中心軸Aを中心に回転する。
【0012】
コア空気流は、低圧圧縮機44、次いで高圧圧縮機52により圧縮され、燃焼器56において燃料と混合されて燃焼され、高圧タービン54及び低圧タービン46において膨張する。タービン54,46は、膨張により低速スプール30及び高速スプール32をそれぞれ回転駆動する。
【0013】
図2を参照すると、低圧タービン46は、通常、複数(少なくとも2つ)の低圧タービン(LPT)段を含むケース60を有する。開示する例示的な実施例では、ケース60は、セラミック複合材料(CMC)又は金属超合金(metal superalloy)からなる。本明細書に開示する例示的な構成要素に用いられるCMCは、例えば、S200及びSiC/SiCを含むが、これに限定されない。本明細書に開示する例示的な構成要素に用いられる金属超合金は、例えば、INCO718及びWaspaloyを含むが、これに限定されない。
【0014】
ロータモジュール62は、CMCからなり、複数の列をなすエアフォイル64A,64B,64C(以下、CMCエアフォイルという)を含み、該CMCエアフォイル64A,64B,64Cは、CMCからなる共通のドラム66(以下、CMCドラムという)からそれぞれ延びている。CMCエアフォイル64A,64B,64Cの列は、CMCからなるベーン68A,68B(以下、CMCベーンという)の列と交互に配設され、低圧タービン段(ステージ)を形成する。各ロータ段のCMCにおける繊維は、高負荷の領域(すなわち、ハブ、翼のある付加物(winged appendage)など)における強度を増加させるように複数の材料から形成されるハイブリッド段及び各段を連結するように延びていてもよい。各段は、完全に環状のリング支柱リング構造(full hoop ring−strut ring construction)を含んでいてもよい。本明細書において、「完全に環状」とは、中断されず連続した部材を意味し、該部材は該部材の開口をベーンが貫通しないような構成となっている。開示した実施例では、低圧タービンとして図示しているが、本発明は低圧タービンに限定されず、高圧タービン、高圧圧縮機、低圧圧縮機、中圧タービン、又は三重スプール構造のガスタービンエンジンの中圧タービンなど他のセクションに適用され得る。
【0015】
ロータモジュール62は、半径方向内側に延びる取付部70を有する。該取付部70は、リング状の留め具や他のインタフェースを介して、ロータモジュール62を内側シャフト40に一体的に取付ける(図1)。取付部70は、エアフォイル列68Bに隣接した共通のドラム66の軸方向に延びる中心軸位置から半径方向内側に延びている。ロータモジュール62は、従来各ブレードに要求されていたモミの木状の取付部を用いることなく、共通のCMCドラム66を用いて複数の列をなすCMCエアフォイル64A,64B,64Cを統合する一体的な構造体からなる。
【0016】
ロータモジュール62は、ナイフエッジシール72などの独立した特徴部(通常、幾何学的に複雑な部材)をさらに受ける単一の一体的なCMC構造体とし得る。ナイフエッジシール72及び他のそのような特徴部は、セラミック複合材料(CMC)と異なるモノリシックセラミックスや金属合金からなる。ナイフエッジシール72は、ロータモジュール62に接合されるか、あるいは他の方法で取り付けられる。
【0017】
一体的なロータモジュール62によりハードウエアの複雑性及び重量が著しく減少する。ロータモジュール62は、段(ステージ)間の留め具を排除するとともに、留め具領域における応力を低下させるための付加的な材料による重量を排除することができる。ロータモジュール62は、アッセンブリ用の分割された低圧ケース(分割ケース)60を必要とすることがある。すなわち、ロータモジュール62は、一体的なモジュールであるため、ロータモジュール62の周囲で分割されたケース60が組み付けられる。ケース60は、例えば、複数の留め具fによって互いに組み付けられる2つの長手方向のケース半体から構成される
図面において同様の部品については同様の参照数字を付している。図示した実施例では、特定の配置について開示しているが、他の配置や構成であってもよいことを理解されたい。
【0018】
特定の手順について図示、開示しているが、当該手順については、他の順番であってもよいし、独立又は組み合わせてもよいことを理解されたい。
【0019】
上記の説明は例示的なものであって、限定的なものではない。当業者であれば、以下の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく、種々の変更や修正がなされることを理解されるであろう。
【符号の説明】
【0020】
30 低速スプール
32 高速スプール
36 エンジン固定構造体
38 ベアリングシステム
40 内側シャフト
42 ファン
44 低圧圧縮機
46 低圧タービン
48 ギア付き構造体
50 外側シャフト
52 高圧圧縮機
54 高圧タービン
56 燃焼器
60 ケース
62 ロータモジュール
64A,64B,64C CMCエアフォイル
66 CMCドラム
68A,68B CMCベーン
70 取付部
72 ナイフエッジシール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック複合材料(CMC)からなり、軸を中心に画定される共通のCMCドラムと、
セラミック複合材料からなり、共通のCMCドラムから延びる複数のCMCエアフォイルの列と、
を備えることを特徴とするガスタービンエンジンのロータモジュール。
【請求項2】
分割ケースをさらに備え、該ケース内でロータモジュールが回転することを特徴とする請求項1に記載のガスタービンエンジンのロータモジュール。
【請求項3】
共通のCMCドラムに取り付けられるモノリシックセラミックス製の特徴部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のガスタービンエンジンのロータモジュール。
【請求項4】
モノリシックセラミックス製の特徴部はナイフエッジシールであることを特徴とする請求項3に記載のガスタービンエンジンのロータモジュール。
【請求項5】
共通のCMCドラムに取り付けられる金属合金製の特徴部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のガスタービンエンジンのロータモジュール。
【請求項6】
金属合金製の特徴部はナイフエッジシールであることを特徴とする請求項5に記載のガスタービンエンジンのロータモジュール。
【請求項7】
複数のCMCエアフォイルの列は、ガスタービンエンジンの圧縮セクション内に位置することを特徴とする請求項1に記載のガスタービンエンジンのロータモジュール。
【請求項8】
複数のCMCエアフォイルの列は、ガスタービンエンジンの高圧圧縮セクション内に位置することを特徴とする請求項1に記載のガスタービンエンジンのロータモジュール。
【請求項9】
複数のCMCエアフォイルの列は、ガスタービンエンジンのタービンセクション内に位置することを特徴とする請求項1に記載のガスタービンエンジンのロータモジュール。
【請求項10】
複数のCMCエアフォイルの列は、ガスタービンエンジンの低圧タービンセクション内に位置することを特徴とする請求項1に記載のガスタービンエンジンのロータモジュール。
【請求項11】
軸を中心に画定された分割ケースと、
セラミック複合材料(CMC)からなる共通のCMCドラムと、セラミック複合材料からなり、共通のCMCドラムから延びる複数のCMCエアフォイルの列と、を備え、軸を中心に回転するタービンロータモジュールと、
を備えることを特徴とするガスタービンエンジンのタービンアッセンブリ。
【請求項12】
共通のCMCドラムに取り付けられるモノリシックセラミックス製の特徴部をさらに備えることを特徴とする請求項11に記載のガスタービンエンジンのタービンアッセンブリ。
【請求項13】
モノリシックセラミックス製の特徴部はナイフエッジシールであることを特徴とする請求項12に記載のガスタービンエンジンのタービンアッセンブリ。
【請求項14】
共通のCMCドラムに取り付けられる金属合金製の特徴部をさらに備えることを特徴とする請求項12に記載のガスタービンエンジンのタービンアッセンブリ。
【請求項15】
金属合金製の特徴部はナイフエッジシールであることを特徴とする請求項14に記載のガスタービンエンジンのタービンアッセンブリ。
【請求項16】
タービンロータモジュールは、ガスタービンエンジンの低圧タービンセクション内に位置することを特徴とする請求項11に記載のガスタービンエンジンのタービンアッセンブリ。
【請求項17】
軸を中心に画定されるセラミック複合材料(CMC)からなる共通のCMCドラムの周囲で分割ケースを組み付けるステップを含み、
共通のCMCドラムから、セラミック複合材料からなる複数のCMCエアフォイルの列が延びることを特徴とするガスタービンエンジンのタービンアッセンブリ組み付け方法。
【請求項18】
分割ケースの2つの軸方向の半体を複数の留め具で組み付けることを特徴とすることを特徴とする請求項17に記載のタービンアッセンブリ組み付け方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−246918(P2012−246918A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−101927(P2012−101927)
【出願日】平成24年4月27日(2012.4.27)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】