説明

ガス分離材の製造方法

【課題】対向拡散CVDにより形成されるシリカ膜を備えたガス分離材の製造方法において、欠陥が存在する多孔質基材を用いても、良好な性能を有するシリカ膜を安定して形成することができるガス分離材の製造方法を提供すること。
【解決手段】多孔質基材12とシリカ膜とを備えるガス分離材を製造する方法が提供される。該方法は、多孔質基材12を用意する工程と、前記基材12の一方の面側12aにシリカ源含有ガス2として不活性ガスと共に供給される気化したシリカ源と、該基材12の他方の面側12bに供給される酸素含有ガス3とを反応させる化学蒸着法によって、該基材12にシリカ膜21を形成する工程と、前記シリカ膜21を形成する工程において排出されるガス組成をガスクロマトグラフィーにてモニタリングすることによって、前記シリカ膜21の形成の終了点を決定する工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガス分離材その他のガス分離材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池や触媒膜リアクタ等において水素を供給するために用いられる水素ガス分離材が知られている。このような水素ガス分離材は、典型的には高い水素透過性に加えて、耐熱性及び耐水蒸気性にも優れていることが好ましい。このような水素ガス分離材を製造する一つの代表的な方法として、例えば、セラミックス材料から構成されて細孔径50nm以上の細孔を有する多孔質基材に、0.6nm以下の細孔径を有する多孔質シリカ膜を形成し、これにより該基材の有する細孔の開口サイズを縮小する過程を含む方法が知られている。かかるシリカ膜を形成する方法の代表例として、化学蒸着法(Chemical Vapor Desorption:CVD)及びゾル−ゲル法が例示される。CVDを用いたシリカ膜形成に関する従来技術文献として、特許文献1,2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−254161号公報
【特許文献2】特開2009−106912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1,2に記載されたCVDによるシリカ膜の形成方法は、テトラエトキシシラン(Tetraethyl
Orthosilicate:TEOS)又はテトラメトキシシラン(Tetramethyl Orthosilicate:TMOS)等のシリカ源を気化させて、ガス状態で多孔質基材の一方の面から供給すると共に、該基材の他方の面(裏面)からオゾン(O)や酸素(O)等のガスを供給することによって、該基材の細孔内でこれらを反応させてシリカ膜を形成するというものである(以下、この種のCVDを「対向拡散CVD」ということもある。)。
【0005】
上記対向拡散CVDを適用して水素ガス分離材その他のガス分離材を製造する場合、上述したガスが多孔質基材に供給されるが、その多孔質基材には、しばしば、ピンホールと呼ばれる粗大孔(欠陥)が存在する。この欠陥を多孔質基材から完全に除去することは極めて困難であるとともに、欠陥を有する多孔質基材を検査によって分別した場合、その検査工程に多大なコストがかかってしまう。さらには、多孔質基材の歩留まりが著しく低下することになるので、結果的に、ガス分離材の製造コストの増大を招いてしまう。
しかしながら、欠陥を有する多孔質基材を用いて一定の成膜条件下で対向拡散CVDにてガス分離材を製造すると、当該ガス分離材のガス分離性能は、多孔質基材の欠陥の有無ないし量に大きく影響をうけてしまう。即ち、製造されるガス分離材の性能の再現性を著しく低下させてしまうことを招く。
【0006】
そこで本発明は、対向拡散CVDにより形成されるシリカ膜を備えた水素ガス分離材その他のガス分離材の製造方法において、欠陥が存在する多孔質基材を用いても、良好な性能を有するシリカ膜を安定して形成することができるガス分離材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を実現するべく、本発明によって多孔質基材とシリカ膜とを備えるガス分離材(典型的には水素ガス分離材)を製造する方法が提供される。即ち、ここに開示される製造方法は、上記多孔質基材を用意する工程を包含する。また、上記基材の一方の面側にシリカ源含有ガスとして不活性ガスと共に供給される気化したシリカ源と、該基材の他方の面側に供給される酸素含有ガスとを反応させる化学蒸着法によって、該基材にシリカ膜を形成する工程を包含する。さらに、上記シリカ膜を形成する工程において排出されるガス組成をモニタリングすることによって、上記シリカ膜の形成の終了点を決定する工程を包含する。
上記化学蒸着法、即ち対向拡散CVDにより多孔質基材にシリカ膜を蒸着する場合、欠陥を有する多孔質基材を用いると、多孔質基材の欠陥の有無ないし量に影響を受けて、製造されるガス分離材の性能の再現性を著しく低下させてしまう。一方で、欠陥のない多孔質基材を用いると、ガス分離材の製造コストが増大してしまう。
本発明に係る製造方法では、上記シリカ膜を形成する工程において排出されるガス組成をモニタリングすることによって、上記シリカ膜の形成の終了点を決定するので、欠陥を有する多孔質基材を用いても、良好な性能を有するシリカ膜を安定して形成することができる。それゆえに、ガス分離材(例えば水素ガス分離材)の製造コスト増大を抑制することができる。
【0008】
ここに開示されるガス分離材の製造方法の好ましい一態様において、上記モニタリングは、ガスクロマトグラフィーによって行われる。好ましくは、上記シリカ膜の形成の終了点を決定する工程では、ガスクロマトグラフィーにて上記不活性ガスの量をモニタリングする。典型的には、上記不活性ガスは窒素ガスである。本態様の製造方法によると、ガスクロマトグラフィーにてリアルタイムで窒素ガスその他の不活性ガスをモニタリングし、それによって、対向拡散CVDにおける反応の終了点を定めることができる。
【0009】
ここに開示される水素ガス分離材その他のガス分離材の製造方法の好ましい一態様において、上記シリカ膜を形成する工程において使用する酸素含有ガスは、純粋酸素ガス又は25vol%以上の酸素を含む混合ガスである。このようなガスを反応性ガスとして使用することにより、良好な対向拡散CVDを行うことができる。
【0010】
ここに開示される水素ガス分離材その他のガス分離材の製造方法の好ましい一態様において、上記シリカ膜の形成の終了点を決定する工程では、上記基材の一方の面側に供給されたシリカ源含有ガス中に含まれる不活性ガスであって、該基材を通過し、上記基材の他方の面側に供給された酸素含有ガス中に含まれるに至った不活性ガスの濃度を基準にする。
かかるガス分離膜の形成に係わる不活性ガス(例えば、窒素)の濃度であって、多孔質基材を挟んで該ガスを供給した側とは反対側にリークした当該不活性ガスの濃度をモニタリングする(典型的にはガスクロマトグラフィーを採用する。)ことによって、対向拡散CVDにおけるCVD反応の好適な終了点を精度よく定めることができる。
【0011】
また、ここに開示されるガス分離材の製造方法の一つの好ましい態様において、上記多孔質基材として、多孔質支持体上に形成された、平均細孔径又は細孔径分布のピーク値が2nm〜100nmである膜状の多孔質基材を用いる。
かかる平均細孔径又は細孔径分布のピーク値の多孔質基材に対向拡散CVDを適用してシリカ膜を形成することにより、該基材の有する細孔を微細なサイズの分子種からなるガスの分離、典型的には水素ガスの分離に適したサイズにまで効率よく縮小することができる。また、該基材は上記多孔質支持体(典型的にはセラミック材料により形成された支持体)に支持されているので、必要な機械的強度を確保しつつ該基材をより薄膜化することができる。したがって、水素ガス透過性と選択(分離)性とのバランスに優れた水素ガス分離材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態において、多孔質基材にシリカ膜を形成する工程を説明する図であり、多孔質構造体の模式的な斜視図である。
【図2】図1内の点線IIで囲んだ部分を拡大して示す模式図である。
【図3】図2の要部をさらに拡大して示す模式図である。
【図4】シリカ膜形成工程に使用されるシリカ膜形成装置の一好適例を示す概略構成図である。
【図5】シリカ膜形成工程に使用されるシリカ膜形成装置の他の好適例を示す概略構成図である。
【図6】シリカ膜形成装置の一部を構成する多管モジュールの一好適例を説明する模式的な断面図である。
【図7】図6のVII−VII線断面図である。
【図8】一実施例に係るシリカ膜形成工程において反応管の内管出口から排出されたガス組成を、製膜時間とともにプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0014】
ここに開示される水素ガス分離材の製造方法に使用される多孔質基材ならびに必要に応じて採用される多孔質支持体の材質は、CVDによりシリカ膜を形成できて、かつ使用時(即ちガス分離時)の使用環境に耐え得るものであればよい。例えば、α‐アルミナ、γ‐アルミナ、シリカ、ジルコニア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、チタニア、カルシア、各種ゼオライト等のセラミック材料を好ましく使用することができる。また、これらの複合物又は混合物から形成された多孔質基材(ならびに必要に応じて採用される多孔質支持体)であってもよい。
【0015】
多孔質基材が有する細孔のサイズは、後述する蒸着工程時に形成されるシリカ膜によって所定のガス種(例えば水素ガス)の分離に適したサイズの細孔が形成され得るサイズであればよい。例えば、水素ガス(即ち水素分子)の分離に用いる場合、平均細孔径(又は細孔径分布のピーク値;典型的には細孔径分布のピーク値は平均細孔径と近似し得る。)が凡そ100nm以下の多孔質基材を好ましく使用することができ、該細孔径が凡そ50nm以下(例えば凡そ20nm以下、さらには凡そ10nm以下)がより好ましい。
多孔質基材の細孔径のサイズが上記範囲を超えると、シリカ膜を形成して該細孔径を所望のガス(例えば水素ガス)の分離に適したサイズにまで縮小するのに長時間を要する。即ち、ガス分離材の製造効率が落ちる。一方、多孔質基材の細孔径のサイズが小さすぎると、該細孔径を所望のガス分離に適したサイズに縮小するのに必要なシリカ膜の厚みが小さすぎてしまい、該シリカ膜の厚みにばらつきが生じ易くなり得る。
したがって、多孔質基材の製造容易性及びシリカ膜の形成効率(水素ガス分離材の製造効率)を考慮すれば、平均細孔径又は細孔径分布のピーク値が2nm以上であることが適当であり、4nm以上であることが好ましい。例えば、平均細孔径又は細孔径分布のピーク値が2nm〜100nm(例えば4nm〜100nm)の多孔質基材、さらには2nm〜50nm(例えば4nm〜50nm)の多孔質基材、さらには2nm〜20nm(例えば4nm〜20nm)の多孔質基材、特には2nm〜10nm(例えば4nm〜10nm)の多孔質基材を好ましく使用することができる。なお、細孔径分布の狭い(細孔サイズの均一性が高い)多孔質基材が好ましい。
なお、本明細書において平均細孔径(又は細孔径分布のピーク値)とは、例えば一般的なバブルポイント試験法(JIS K3832;例えば細孔径が2nm〜50nmの範囲内の場合)や水銀圧入法(JIS R1655;例えば細孔径が20nm〜100nm若しくはそれ以上の場合)に基づいて算出される平均細孔径(又は細孔径分布のピーク値)をいう。
【0016】
多孔質基材の形状は特に限定されず、用途に応じた種々の形状をとり得る。より高い水素ガス透過率を向上させるための有利な形状の好適例の一つとして、膜状(薄板状)の多孔質基材を好ましく採用することができる。例えば、厚さ0.1μm〜100μm程度(より好ましくは0.1μm〜10μm、例えば0.5μm〜5μm)の膜状の多孔質基材(多孔質膜)の使用が好ましい。この多孔質基材の孔隙率(空隙率)は、通常は20vol%〜60vol%程度とすることが適当であり、例えば孔隙率が30vol%〜50vol%程度の多孔質基材を好ましく使用することができる。
【0017】
好ましい一態様では、このような膜状(薄板状)の多孔質基材が、多孔質支持体上に形成されて(設けられて)いる。このように多孔質支持体(以下、単に「支持体」ということもある。)に支持された多孔質基材を使用することにより、必要な機械的強度を保持しつつ、該基材をより薄膜化することができる。
かかる薄膜化によって、該多孔質基材にシリカ膜を形成してなる水素ガス分離材において、より高い水素ガス分離性能(例えば、より高い水素ガス透過率及び/又は選択性を発揮すること、或いは水素ガス透過率と選択性とをより高いレベルでバランスよく発揮すること)が実現され得る。
【0018】
この支持体の形状は特に限定されず、用途に応じて管形状、膜(薄板)形状、シート状、モノリス形状、ハニカム形状、多角形平板形状、その他の立体形状であり得る。これらの形状のうち、管形状のものが、水素ガス分離モジュールとして改質器等のリアクタに適用し易く好適である。例えば、管形状の多孔質支持体の外周面及び/又は内周面(典型的には外周面のみ)に膜状の多孔質基材(多孔質膜)が設けられた構成の多孔質構造体を用意し、該構造体を後述するシリカ膜形成工程(対向拡散CVD)に供することが好ましい。
また、この支持体は積層構造であってもよく、例えば、多孔質基材を形成する側に向けて、相対的な平均細孔径が徐々に小さくなるように2層以上の多孔質層が積層された構造の支持体でもよい。また、該多孔質層の各層の材質は同じでも異なっていてもよい。なお、所望する形状の支持体は、従来行われている周知の成形技法(押出成形、プレス成形、鋳込み成形等)やセラミック焼成技法を実施することによって製造することができる。かかる技法自体は本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
【0019】
支持体が有する細孔の孔径は、水素ガス、酸素ガス等のガス透過を顕著に妨げない限り特に限定されない。多孔質基材の平均細孔径よりも大きな(典型的には2倍〜200倍程度に大きな)平均細孔径を有するものが適当である。
例えば細孔径分布のピーク値及び/又は平均細孔径が好ましくは凡そ10nm〜10000nm、より好ましくは50nm〜1000nmの支持体が使用される。細孔径分布の狭い支持体が好ましい。
また、該支持体の孔隙率は、例えば20vol%〜60vol%程度とすることができ、通常は該孔隙率を30vol%〜50vol%程度とすることが好ましい。
支持体の厚みには、用途に応じて所望される機械的強度を保持しつつ多孔質基材を適切に支持し得るように適宜設定することができる。特に限定するものではないが、例えば、多孔質基材の厚みが0.1μm〜10μm程度である場合には、支持体の厚みを100μm〜10mm程度とすることができる。
【0020】
多孔質支持体の材質としては、多孔質基材を構成する材質とは同一でも異なってもよいが多孔質基材との接合強度保持の観点からは、上述した多孔質基材と同様の材質のものを使用することが好ましい。例えば、多孔質支持体と多孔質基材とがいずれもセラミック材(アルミナ、シリカ等)からなるものが好ましい。多孔質支持体と多孔質基材とが同種のセラミック材から構成されていることが特に好ましい。。例えば、α−アルミナからなる支持体(典型的には平均細孔径50nm以上、例えば平均細孔径50nm〜1000nm程度の支持体)と、γ−アルミナやシリカから構成された多孔質基材(典型的には平均細孔径が2nm以上、例えば平均細孔径2nm〜20nm程度の多孔質基材)との組み合わせを好ましく採用することができる。
かかる構成の多孔質構造体を後述するシリカ膜形成工程(対向拡散CVD)に供することにより、該多孔質構造体(典型的には該構造体を構成する多孔質基材)にシリカ膜を形成して水素ガス分離材を好ましく製造することができる。
【0021】
支持体の表面に多孔質基材を膜状に形成する手法は特に限定されず、従来公知の種々の手法を適宜採用することができる。例えば、上述した好ましい細孔径を有する多孔質セラミック膜の形成に適した手法の一例として、一般的なゾル−ゲル法を好ましく採用することができる。
かかるゾル−ゲル法の典型的な態様では、目的とするセラミック膜の組成に応じたセラミック前駆体(対応する金属のアルコキシド等)を含むゾルを調製し、該ゾルをディップコーティング等により多孔質支持体に付与して乾燥させることにより上記セラミック前駆体を含むゲル状被膜を形成する。そのゲル状被膜を焼成することにより、多孔質支持体上に多孔質セラミック膜を形成することができる。また、これにより多孔質支持体上に多孔質セラミック膜(多孔質基材)を備えた構成の多孔質構造体が得られる。
【0022】
例えば、多孔質支持体上に多孔質基材としてのγ−アルミナ膜をゾル−ゲル法を利用して形成する場合には、一例として以下のような方法で行うとよい。即ち、アルミニウムアルコキシド(好ましくは炭素原子数1〜3程度のアルコキシド、例えばイソプロポキシド)を加水分解し、酸で解こうしてベーマイトゾルを調製する。
このベーマイトゾルを多孔質支持体の所望の部分(例えば、管形状の多孔質支持体の外周面)に対して、例えばディップコーティング法等で付与する。この場合にディップ時間は例えば5秒〜30秒程度とすることができる。また、ゾル中から支持体を例えば0.5mm/秒〜2.0mm/秒程度の引上げ速度で取り出すとよい。これを室温〜60℃程度の温度で6時間〜18時間程度乾燥させた後、400℃〜900℃程度の温度で5時間〜10時間程度焼成することによりγ−アルミナ膜が形成される。
上記ゾルの付与、乾燥及び焼成操作は、必要に応じて一部の操作又はこれら一連の操作を複数回繰り返して行うことができる。通常は該繰り返しによってγ−アルミナ膜を形成することが好ましい。
【0023】
また、支持体の表面に上述した好ましい細孔径を有する多孔質セラミック膜(多孔質基材)を形成するのに適した手法の他の一例として、該セラミック膜を構成するセラミックからなる微粒子(好ましくは、平均粒径20nm〜200nm程度のセラミック微粒子)を適当な液状媒体に分散させた分散液を支持体に付与して乾燥させ、これを焼成する手法を採用してもよい。
【0024】
次に、シリカ膜形成工程について説明する。
ここに開示されるガス分離材の製造方法におけるシリカ膜形成工程では、上記多孔質基材の一方の面側に供給されるシリカ源含有ガスと、該基材の他方の面側に供給される酸素含有ガスとを反応させる化学蒸着法、即ち対向拡散CVDにより、該多孔質基材上にシリカ膜を形成する。
ここで、シリカ源含有ガスとは、気化したシリカ源とキャリアガス(不活性ガス)とからなる混合ガスをいう。該シリカ源含有ガスは、多孔質基材の一方の面側に供給される。一方、酸素含有ガスは該多孔質基材の他方の面側から供給されて、該多孔質基材の細孔を通じてその一方の面側へ拡散する。
この酸素含有ガスとシリカ源含有ガスとを高温条件下で接触させることにより、これらを反応させて(典型的には、上記シリカ源を熱分解或いは酸化させて)、多孔質基材上にシリカ膜を形成する。
該シリカ膜が形成される箇所は、シリカ源含有ガスと酸素含有ガスとが接触する位置によって異なり得る。このため、シリカ源含有ガスと酸素含有ガスとが主として多孔質基材の細孔内、及び/又は該基材の一方の面側における細孔開口部近傍(細孔の入り口付近又はその周縁)で接触するように対向拡散CVDを行うことが好ましい。これにより、多孔質基材の細孔サイズは酸素や窒素よりも分子サイズの小さいガス種、典型的には水素ガスの分離に適したサイズに縮小される。
【0025】
ここで、対向拡散CVDによって多孔質基材にシリカ膜が形成される様子を図1〜3を参照して説明する。
図1は、多孔質基材12にシリカ膜21(図3参照)を形成する工程を説明する図であり、多孔質構造体10の模式的な斜視図である。図2は、図1内の点線IIで囲んだ部分を拡大して示す模式図である。図3は、図2の要部をさらに拡大して示す模式図である。
ここでは、該多孔質基材の好ましい一つの態様として、多孔質支持体上に形成された多孔質膜を挙げて説明するが、本発明に係る方法における多孔質基材を限定する意図ではない。
かかる態様では、図1に示されるように、多孔質支持体14上に多孔質基材12を備える多孔質構造体10に対向拡散CVDを適用してシリカ膜21(図3参照)を形成することができる。特に限定するものではないが、典型的には上記多孔質構造体10の支持体14側から酸素含有ガス3を供給し、多孔質基材(多孔質膜)12側にシリカ源含有ガス2を供給して対向拡散CVDを行うことが好ましい。
図1に示されるように、多孔質基材12が管形状の支持体14の外周面上に形成された構成であり、全体として管形状の多孔質構造体10に対して対向拡散CVDを適用する際は、この多孔質構造体10の外周面側10aを(即ち多孔質構造体10の外壁に沿って)シリカ源2aを含むシリカ源含有ガス2を流通させると共に、多孔質構造体10の内部(中空部10b)に酸素含有ガス3を流通させるとよい。なお、酸素原子(Oの他にOでもよい)からなる分子3aを含む反応性ガスを「酸素含有ガス3」という。
【0026】
該多孔質構造体10の中空部10bに酸素含有ガス(例えば高純度Oガス)3を流通させる(供給する)と、図1の点線部分IIの部分拡大図である図2に示されるように、この酸素含有ガス3の少なくとも一部は支持体14の内周側(多孔質構造体10の中空部10b)から該支持体14の細孔を通じて外周側に拡散することにより、多孔質基材12の内周面12bに到達し、さらに多孔質基材12の細孔を通じて多孔質基材12の外周面12aに向けて拡散していく。
一方、多孔質構造体10の外周面側10aを流通する(供給される)シリカ源含有ガス2の少なくとも一部は、多孔質基材12の外周面12aから該基材12の細孔を通じて内周側(内周面12b)に向けて拡散しようとする。この結果、多孔質基材12の両面12a,12bから対向して拡散されるシリカ源含有ガス2と酸素含有ガス3とが接触して反応することによりシリカ膜21(図3参照)が形成される。
【0027】
かかる対向拡散CVDは、好ましくは、図3に示されるように、対向拡散されるシリカ源含有ガス2と酸素含有ガス3とが、主として多孔質基材12の有する細孔20の内部及び/又は該細孔20の一方の面側12aにおける開口部近傍で接触し、これにより細孔20の内部又は上記開口部近傍にシリカ膜21が形成されるように行われる。
通常、Oガスに代表される酸素原子からなるガス分子3に比べてシリカ源2aは分子サイズが大きいので、細孔20のサイズ(細孔径)を適切に設定することにより、シリカ源2と酸素原子からなるガス分子3の分子サイズの違いを利用して、上記箇所にシリカ膜21を効率よく形成されるように制御することができる。
かかるシリカ膜21によって細孔20のサイズを所定のガス(例えば水素ガス)の分離に適したサイズに縮小して目的のガス分離材1が得られる。
なお、図1〜3に示される例とは逆に、多孔質構造体10の外周面側10aを(即ち多孔質基材12の外周面12aに沿って)酸素含有ガス3を流通させ、多孔質構造体10の中空部10bにシリカ源含有ガス2を流通させる態様によってシリカ膜21を形成してもよい。
【0028】
ここに開示される方法では、上記シリカ膜形成工程においてシリカ膜を形成するために用いられるシリカ源として、酸素含有ガスとの反応によりシリカ(SiO)を形成させ得るケイ素化合物を好ましく用いることができる。
かかるケイ素化合物としては、TEOS、TMOS等のテトラアルコキシシラン(典型的には炭素原子数1〜4程度の低級アルキル基を含んだアルコキシ基を備えるテトラ低級アルコキシシラン);メチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、m,p−エチルフェネチルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン;ジフェニルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン;オクチルジメチルメトキシシラン等のモノアルコキシシラン;SiCl等のハロシラン;シラン(SiH);ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン等のジシロキサン;等を例示することができる。
また、上記シリカ膜形成工程において使用される好適なシリカ源含有ガスは、かかるシリカ源と不活性ガスとの混合ガスである。該不活性ガスは特に限定されないが、例えば、窒素(N)ガス、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス等から選択される一種又は二種以上を好適に用いることができる。これらのうち、特にNガスの使用が好ましい。
【0029】
上記シリカ膜形成工程において使用される酸素含有ガスとしては、分子内に少なくとも一つの酸素原子を有するガス種を含み、シリカ膜形成時にシリカ源と反応してSiOを生成し得るガス(当該ガス種のみからなる純粋ガス若しくは当該ガス種を含む混合ガス)を使用することができる。
例えば、酸素の同素体ガス(即ち、Oガス及びOガス)並びにHOガス(水蒸気)から選択される一種又は二種以上の酸素源(ガス種)を含むガスを好ましく使用することができる。これらのうちOガス分子を含むものの使用が特に好ましい。この種の酸素含有ガスとしては、酸素含有率100mol%の純粋酸素ガス又は90mol%以上の高純度酸素ガスでもよく、或いは上述の不活性ガスとの混合ガスでもよい。
該混合ガスの場合にはOガス及び/又はOガスを20vol%以上(例えば25vol%以上、好ましくは40vol%以上、さらに好ましくは60vol%以上)の濃度で使用することが好ましい。
【0030】
シリカ膜形成工程において、シリカ膜の形成は、典型的には上記多孔質基材を200℃〜700℃程度の温度に加熱した条件下で行われ、好ましくは400℃〜700℃である。ただし、より好ましい膜形成温度(製膜温度又は反応温度)は、使用するシリカ源の種類、酸素含有ガスの種類、該シリカ源及び酸素含有ガスの供給量等によっても異なり得る。
シリカ膜を形成する(シリカ源を蒸着する)時間は、該シリカ膜によって多孔質基材の細孔サイズを適度に縮小し得るように設定すればよく、特に限定されない。例えば、該形成時間(製膜時間又は反応時間)を3分〜180分程度とすることができ、典型的には3分〜60分程度とすることが好ましい。
【0031】
ここに開示される方法におけるシリカ膜形成工程は、例えば図4に示される概略構成を備えるシリカ膜形成装置100を用いて好ましく実施することができる。ここでは、図1に示されるように管状の多孔質支持体14の外周面に多孔質膜12が形成された構成の多孔質構造体10に対してシリカ膜形成工程を実施する場合を例として説明する。
【0032】
図4に示されるように、シリカ膜形成装置100は、上記構成の多孔質構造体10が配置される反応管30を備える。この反応管30は、同軸の内管と外管とからなる略二重管構造を有する。多孔質構造体10は、該二重管構造を構成する内管の一部を担うように反応管30と略同軸に配置される。
ここで、反応管30の内管及び該内管の一部を担う多孔質構造体10の外周面(多孔質基材12の外周面12a)と、外管の内周面とで区画形成された空間を外部ガス通路30aとする。また、上記反応管30の内管の内部及び該内管の一部を担う多孔質構造体10の中空部10bからなる空間を内部ガス通路30bとする。すると、上記多孔質構造体10の外周面(多孔質基材12の外周面12a)は外部ガス通路30aに面し、該構造体10の内周面(多孔質支持体14の内周面)は内部ガス通路30bに面するように該構造体10は配置される。なお、反応管30の両端部では内管と外管との間がシールされており、これにより外部ガス通路30aの長手方向の両端は閉塞されている。
反応管30の外周には管状ヒータ(例えば電気炉)36が配設されている。このヒータ36は、例えば反応管30内の温度を検出する温度検出器37からの入力に基づいて出力を調節することにより、反応管30の温度を所定の温度プロファイルに合わせて(例えば一定の温度を維持するように)制御可能に構成されている。
【0033】
反応管30には、シリカ膜形成工程時に酸素含有ガス3を供給する酸素含有ガス供給部40及びシリカ源供給部50が接続されている。
酸素含有ガス供給部40は、酸素含有ガス(ここではOガス)供給源42から供給されマスフローコントローラ(MFC)43により流速制御された酸素含有ガス(Oガス)3を、内管の長手方向の一端に設けられた内管入口32から内部ガス通路30bに導入し得るように構成されている。内管の長手方向の他端に設けられた内管出口33からは、未反応の酸素含有ガス(Oガス)3、シリカ源2aの熱分解による複生成物(例えば二酸化炭素や水)等が排出される。
また、シリカ源供給部50は、内部にシリカ源2a(典型的には液状)を貯留可能な気化器52を備え、Nガス供給源54から供給されMFC55により流速制御されたNガスを気化器52に導入して該Nガスをバブリングすることにより上記シリカ源2aを気化させ、その気化されたシリカ源2aをNガスと共に、外管の一端側の側方に設けられた外管入口34から外部ガス通路30aに導入し得るように構成されている。
外管の他端側の側方に設けられた外管出口35からは、未反応のシリカ源2a、Nガス等が排出される。外管出口35から排出された未反応のシリカ源2aは、トラップ(例えばコールドトラップ)38にて回収される。
【0034】
さらに、反応管30の内管出口33には、シリカ膜形成工程時に排出されるガス組成をモニタリングするガスクロマトグラフ60が接続されている。ガスクロマトグラフ60は、移動相に気体を用いてクロマトグラフィーを行う装置であり、当該ガスクロマトグラフで測定される試料はカラムで分離され、分離された試料は検出器で検出されることになる。
【0035】
本実施形態のガスクロマトグラフ60は、シリカ膜形成工程時において反応管30の内管出口33から排出される不活性ガス(ここではNガス)及び/又は酸素含有ガス(ここではOガス)をモニタリングする。そのモニタリングによって、多孔質基材10を拡散する不活性ガス(Nガス)及び/又は酸素含有ガス(ここではOガス)の量が一定値となる時点(例えば、極小となる時点)をシリカ膜形成工程の終了点にすることができる。具体的には、反応管30の内管出口33から排出されたOガス中のNガスの濃度が一定値(例えば、1mol%、2mol%、3mol%または5mol%など)になった時点を、シリカ膜形成工程の終了点にすることができる。
ここで「一定値になった時点」とは、ガスクロマトグラフにより測定される値の変動が所定の値(例えば2mol%)に収束している状態をいう。例えば当該所定値を中心として測定値の変動幅が所定範囲(例えば所定値の±10%以内)に収まる状態に至った場合に上記「一定値になった時点」と判断できる。
【0036】
図4に示した構成例では、反応管30とガスクロマトグラフ60とをつなぐ配管に流量メータ62が接続されており、反応管30の内管出口33から排出されるガス流量を測定することができる。また、ガスクロマトグラフ60が接続されている配管には、真空ポンプ64および圧力ゲージ66が接続されている。
【0037】
上記のように構成されたシリカ膜形成装置100を用いたシリカ膜の形成は、例えば以下のようにして行うことができる。
即ち、ヒータ36を作動させて反応管30内を所定の温度(好ましくは200℃〜700℃、例えば550℃〜600℃)に加熱する。該温度を維持しつつ、Oガス供給源42からのOガス3を所定の供給速度(ガス流速)で内部ガス通路30b(多孔質構造体10の中空部10b)を流通させて、多孔質基材12の他方の面12bに供給する。
一方、Nガス供給源54からNガスを所定の供給速度で気化器52に導入してシリカ源2aを気化させ、この気化したシリカ源2a及びNガス(シリカ源含有ガス2)を外部ガス通路30a(多孔質構造体10の外周面側10a)に流通させて、多孔質基材12の一方の面12aに供給する。これにより、反応管30内においてOガス3とシリカ源含有ガス中のシリカ源2aが多孔質基材12の厚み方向に対して対向拡散され、Oガス3と接触したシリカ源2aが酸化(熱分解)して、多孔質基材12の細孔20の内部及び/又は該細孔20の一方の面側12aにおける開口部近傍にシリカ膜21を形成することができる。
なお、例えば後述する実施例で使用するようなサイズの管形状の多孔質支持体の外周面に膜状多孔質基材が形成された構成の多孔質構造体である場合、Oガスの供給量及びNガスの供給量は、例えばそれぞれ凡そ100mL/分〜1000mL/分程度とすることができる。また、気化器52内に貯留されているシリカ源2aは、必要に応じて加温しておくことができる。例えば、該シリカ源2aを気化器52内において30℃〜80℃程度の温度に加温しておくとよい。
【0038】
ここで、シリカ膜形成工程における初期段階では、多孔質基材12の細孔20の開口部近傍はシリカ膜21によって閉塞されていないので、窒素(N)と酸素(O)は、多孔質基材12の細孔20の内部を拡散透過する。しかし、シリカ膜21の形成反応が進行していき、シリカ膜21によって細孔20の開口部近傍が閉塞され始めると、シリカ膜21によって狭められた開口部の寸法よりも分子径が大きい窒素(N)と酸素(O)の拡散透過(基材を挟んで供給側とは反対の側にリーク(流出)する量)は減少し始める。
本実施形態の水素ガス分離材の製造方法では、窒素(N)及び/又は酸素(O)が拡散透過する量をガスクロマトグラフ60によって測定し、それによって、シリカ膜21の形成工程を実行しながら、シリカ膜21の製膜状態を確認することができる。したがって、欠陥が存在する多孔質基材12を用いた場合において当該多孔質基材12にシリカ膜21を蒸着する際に、ガスクロマトグラフ60によってシリカ膜21の製膜状態を確認しながら、対向拡散CVD反応の終了点を決定することができる。
即ち、欠陥が存在する多孔質基材12にシリカ膜21を蒸着させることによって水素ガス分離材を製造する場合、反応終了点を一定の製膜時間で決定してしまうと、多孔質基材12が有する欠陥の有無ないし量に影響を受けて、製造される水素ガス分離材の性能が大きくばらついてしまう。一方、本実施形態の製造方法では、製膜時間で反応終了点を決定するのではなく、シリカ膜形成工程において排出されるガス組成をガスクロマトグラフィーにてリアルタイムでモニタリングすることによって、使用する基材毎に反応終了点を決定することができる。したがって、欠陥を有する多孔質基材12を用いても、良好な性能を有するシリカ膜21を安定して形成することができる。
【0039】
また、本実施形態に係る水素ガス分離材の製造方法は、図4に示したシリカ膜形成装置100を用いたものに限定されず、他のシリカ膜形成装置を用いて実行することも可能である。例えば、軸方向(長尺方向)の一方の端部が封止された管状の多孔質構造体10や、多孔質構造体(エレメント)10を複数本備えた多管モジュール70(図6参照)に対してシリカ膜を形成する際には、図5に示されるような概略構成を備えるシリカ膜形成装置110を用いて行うことができる。このシリカ膜形成装置110について、シリカ膜形成装置100と異なる点は酸素含有ガス供給部40である。
図5に示されるように、該酸素含有ガス供給部40は、Oガス供給源42とMFC43に加えて、多孔質構造体10の軸方向の一端部に取り付けて該構造体10を固定させるための中空状(管状)の構造体固定部材44と、該構造体固定部材44の中空部と、固定された多孔質構造体10の中空部10bとに挿入されるOガス供給管45とから構成される。
多孔質構造体10は、軸方向の一端部を封止栓11で封止されている。封止された側とは反対側の端部を介して多孔質構造体10が構造体固定部材44に固定されると、該固定部材44は該構造体10を固定させた状態で反応管30に挿入される。なお、反応管30は、該固定部材44が挿入された状態でも密閉性は保たれるように閉塞可能な構成である。
【0040】
酸素含有ガス3を多孔質基材12の他方の面12b側(多孔質構造体10の中空部10b)に供給する際は、Oガス(酸素含有ガス)3は以下の経路を流通する。即ち、該ガス3は、MFC43に制御された流量でOガス供給源42から流出し、Oガス供給管45を通り、多孔質構造体10の中空部10b内に供給(放出)される。
その後、上記Oガス3は、多孔質構造体10の内周面(多孔質支持体14の内周面)とOガス供給管45の外周面とで構成される空間を流れながら多孔質構造体10の中空部10bを出て、構造体固定部材44の内周面とOガス供給管45の外周面とで構成される空間内に流入し、排出口44aから流出する。
【0041】
また、排出口44aから延びた配管には、シリカ膜形成工程時に排出されるガス組成をモニタリングするガスクロマトグラフ60が接続されている。上述したようにガスクロマトグラフ60による測定値のモニタリングによって、シリカ膜形成工程の終了点を決定することができる。なお、図5では明示していないが、図4に示した構成と同様に、流量メータ62、真空ポンプ64および圧力ゲージ66を設けることができる。
また、上記シリカ膜形成装置110において、シリカ源含有ガス2を反応管30の外部ガス通路30aに供給する経路はシリカ膜形成装置100と同じであり、シリカ源含有ガス2及び酸素含有ガス3のそれぞれは、反応管30の外管入口(反応管入口)34から外部ガス通路30aに供給され、外管出口(反応管出口)35から排出される。
【0042】
図5に示されるシリカ膜形成装置110を好適に適用し得る多管モジュールとして、例えば図6及び図7に示されるような円筒状の多管モジュール70が挙げられる。図6は、多管モジュール70の縦断面図である。図7は、図6のVII−VII線断面図である。
多管モジュール70は、例えばガラス製の円筒状の反応容器71と、複数本(図6及び図7では6本)の多孔質構造体(エレメント)10と、アルミナ等からなる緻密質なOガス供給管72、及び多孔質構造体10の軸方向の両端部を挟むようにして支持する一対の対向した支持部材73a,73bとから構成される。
反応容器71には、その軸方向の一端部にシリカ源供給ガス2の流入口74が設けられており、他方の端部付近には流出口75が設けられている。支持部材73a,73bはともに緻密質なアルミナ等からなる中空の略円盤体である。
【0043】
多孔質構造体10及びOガス供給管72における両端部は、一方の端部を反応容器71内における流入口74側の端部に配置される支持部材73bに、もう一方の端部を流出口75側の端部に配置される支持部材73aに差し込まれ、各支持部材73a,73bの中空状の内部にまで挿入されている。このようにして、支持部材73a,73bは、多孔質構造体10及びOガス供給管72を介して対向した構成になっている。
上記支持部材73aでは、その中空内部を支持部材73bと対向する面からその反対側に向けてOガス供給管72が貫通していると共に、該反対側の円板部分には、排気管76が形成されている。
【0044】
図7に示されるように、支持部材73aの円板部分における多孔質構造体10及びOガス供給管72の配置については、その中心部にOガス供給管72が配置され、その周囲を等間隔に囲むように多孔質構造体10が配置されている。上記中心部に緻密質なOガス供給管72が配されているため、複数本の多孔質支持体10と支持部材73a,73bとからなる組立体の機械的強度が増して該組立体の形状保持に効果的である。
【0045】
多管モジュール70内におけるシリカ源含有ガス2の流通経路は以下の通りである。即ち、反応容器71の流入口74から供給されたシリカ源含有ガス2は、各多孔質構造体10の外周面を沿うように流通し、流出口75から流出する。
一方、シリカ膜形成時に供給される酸素含有ガス3の流通経路は以下の通りである。即ち、該酸素含有ガス(Oガス)3は、Oガス供給管72を通って反応容器71内に流入し、支持部材73bの中空内部に供給(放出)される。該ガス3は、各多孔質構造体10の中空部10bを通って、支持部材73aの中空内部にまで流れ、排気管76を通って反応容器71から流出する。
この多管モジュール70を導入したシリカ膜形成装置110については、図5において、反応容器30を多管モジュール70に、外管入口34を流入口74に、外管出口35を流出口75にそれぞれ置き換え、Oガス供給管45をOガス供給管72とみなせばよい。
【0046】
図5に示したシリカ膜形成装置110でも、構造体固定部材44の排出口44aから排出されたガス組成(例えば、窒素(N)及び/又は酸素(O))をガスクロマトグラフ60によって測定することができ、それによって、シリカ膜21の形成工程を実行しながら、シリカ膜21の製膜状態を確認することができる。したがって、図5に示したシリカ膜形成装置110においても、欠陥が存在する多孔質基材12にシリカ膜21を蒸着する際に、ガスクロマトグラフ60によってリアルタイムにシリカ膜21の製膜状態を確認しながら、対向拡散CVD反応の終了点を決定することが可能である。
【0047】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明を係る実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0048】
<実施例1>
以下に説明する手順により、図1に模式的に示したような構成を有するガス分離材(水素ガス分離材)1を製造した。
まず、図4に示したシリカ膜形成装置100にセットされる多孔質構造体10を準備した。準備した多孔質構造体10は、円管形状(外径6mm、内径4mm、長さ140mm)を有し、多孔質構造体10の両端20mmずつに対してガラスにて緻密シールを行った。なお、このような多孔質構造体10を「単管」と称することがある。
【0049】
多孔質構造体10は、α−アルミナからなる多孔質支持体14(α−アルミナ支持体)、および、多孔質膜12から構成されている。この実施例における多孔質膜12は、二層構造を有しており、多孔質支持体14の外周面に形成されたα−アルミナからなる第1多孔質層と、その第1多孔質層の外周面に形成されたγ−アルミナからなる第2多孔質層から構成されている。
多孔質支持体14の平均細孔径は700nmであり、孔隙率(気孔率)35vol%であった。α−アルミナからなる第1多孔質層の厚さは50μmであり、平均細孔径は70nmであり、孔隙率(気孔率)は35vol%であった。また、γ−アルミナからなる第2多孔質層(即ち多孔質基材)の厚さは1μmであり、平均細孔径4nm、孔隙率(気孔率)50vol%であった。
【0050】
次に、得られた単管(多孔質構造体10)を図4に示される概略構成を有するシリカ膜形成装置100にセットし、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)をシリカ源として対向拡散CVDを行った。シリカ膜形成工程において使用される酸素含有ガスとしては、Oガスを使用した。この対向拡散CVDにより、図3に示すように、この単管を構成する多孔質膜12(γ−アルミナ膜)にシリカ膜21を形成した。
【0051】
上記対向拡散CVDは、反応温度(シリカ膜の形成温度)600℃、Nガス供給速度200mL/分、Oガス供給速度200mL/分の条件で行った。気化器52では45℃に加温されたHMDSをNガスでバブリングして気化させた。反応時間(シリカ膜の形成時間又は製膜時間)は、ガスクロマトグラフ60によるNガスの濃度をモニタリングすることによって決定した。ガスクロマトグラフ60は、VARIAN社製のMicro−GC、CP−2002であり、カラムには、MOLSIEVE SAを利用した。本実施例1では、ガスクロマトグラフ60にて、酸素および窒素のピークを検出した。
【0052】
以上の工程により、単管の水素ガス分離材1を得た。なお、図4におけるHガス供給源58は、製膜後のガス分離膜(水素ガス分離膜)1の評価に用いたものである。
図8は、シリカ膜形成工程において反応管30の内管出口33から排出されたガス組成を、製膜時間とともにプロットしたグラフである。図8に示したグラフでは、酸素中における窒素濃度(mol%)をプロットしている。図8に示すように、製膜開始後75分で、排出した酸素中の窒素濃度は2mol%(又はそれ以下)となり、その後の変化はわずかとなった。その結果に基づいて、本例では、製膜の終了点を窒素濃度2mol%と定めた。
【0053】
また、得られた水素ガス分離材1について、水素(H)ガス透過率及び窒素(N)ガス透過率を測定し、これらのガス透過率からHガスとNガスとの透過係数比(H/N)を算出した。
ここで、上記透過係数比(H/N)は、同条件下におけるHガス透過率とNガス透過率との比率、即ち同条件下でのHガス透過量のNガス透過量に対するモル比をいう。ここでHガス透過率[mol/m・s・Pa]及びNガス透過率[mol/m・s・Pa]は、それぞれ差圧(水素ガス分離材1を挟んでガス供給側圧力とガス透過側圧力との差)が1Paであるときの単位時間(1秒)及び単位膜表面積(1m)当たりのHガス透過量[mol]及びNガス透過量[mol]で表わされる。
【0054】
上記Hガス透過率及びNガス透過率の測定は、図4に示されるシリカ膜形成装置100を利用して、以下のようにして行った。即ち、必要に応じてヒータ36を作動させることにより反応管30内を600℃の測定温度に調整し、Nガス供給源54及びHガス供給源58からそれぞれMFC55,59により制御された所定の流量でNガス及びHガスを外部ガス通路30aに供給した。
このとき、水素ガス分離材の外周側(即ち外部ガス通路30a)と内周側(即ち内部ガス通路30b)との差圧が2.0×10Paとなるようにした。そしてセッケン膜流量計(図示せず)によって透過側(即ち内部ガス通路30b)のガス流速を測定しつつ、TCD検出器を備えたガスクロマトグラフによって対象ガス組成を分析した。
【0055】
なお、Hガス及びNガスそれぞれのガス透過率は次式:Q=A/{(Pr−Pp)・S・t};から算出した。ここで、Qはガス透過率[mol/m・s・Pa]を、Aは透過量(mol)を、Prは供給側即ち外部ガス通路30a側の圧力[Pa]を、Ppは内部ガス通路30b側の圧力[Pa]を、Sは断面積[m]を、tは時間[秒:s]を、それぞれ表す。また、透過係数比(H/N)は、Hガス透過率とNガス透過率との比率即ち次式:α=QH2/QN2;から算出できる。ここで、αは透過係数比(透過率比)を、QH2はHガス透過率を、QN2はNガス透過率を、それぞれ表す。
【0056】
下記の表1は、本実施例1の条件で製膜を行った場合の10個の水素ガス分離材1の性能の結果を示している。具体的には、表1は、製膜時間、500℃での水素透過率、窒素透過率、透過係数比(水素透過率/窒素透過率)の測定結果を示している。ここでは、排出した酸素中の窒素濃度が2mol%となった時点を製膜終了点としている。
【0057】
【表1】

【0058】
表1に示されるように、本実施例1に係る水素ガス分離材では、一定の製膜時間を終了基準とせずに、排出した酸素中の窒素濃度が2mol%となった時点を製膜終了点としたことにより、良好な性能を有する水素ガス分離材を安定して形成できることがわかった。具体的には、透過係数比(水素透過率/窒素透過率)がいずれも300を超える良好な特性のものを安定して得ることができた。また、水素透過率の特性におけるバラツキが少なく、総じて均一なものに揃えることができた。即ち、本実施例1では、欠陥が存在する多孔質基材を用いても、良好な性能を有するシリカ膜を安定して形成できることが確認された。
【0059】
<比較例>
次に、本比較例では、実施例1と同様の多孔質構造体10および製膜条件にて、10個の水素ガス分離膜を製造した。実施例1の条件と異なる点は、本比較例では、製膜終了を75分で一定とした点である。得られた結果を下記表2に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
表2に示されるように、比較例に係る水素ガス分離材では、製膜時間を一定としたにもかかわらず、性能のバラツキが生じた。具体的には、比較例に係る水素ガス分離材では、1000を超える高い透過係数比を有する水素ガス分離材が得られた一方で、100を下回る透過係数比を有する水素ガス分離材も得られた。これは、欠陥が存在する多孔質基材を用いた場合に、その欠陥の有無または量に影響を受けて、製造される水素ガス分離材の性能が変動してしまうことを意味している。
【0062】
<実施例2>
本実施例2では、実施例1と同じ多孔質基材12および製膜条件にて、シリカ膜形成工程を実行した。即ち、本実施例2でも、シリカ膜形成工程時に排出されるガス組成をガスクロマトグラフ60の測定値に基づくガスクロマトグラフィーでモニタリングしながら、シリカ膜形成工程を実行した。本実施例2では、排出される酸素中の窒素濃度が5mol%、2mol%、1mol%に達した時点で製膜を終了するようにシリカ膜形成工程を実行した。本実施例2の結果を下記表3に示す。なお、酸素中の窒素濃度2mol%で製膜を終了した例は、実施例1のサンプルNo.1と同じものである。
【0063】
【表3】

【0064】
表3に示されるように、排出酸素中の窒素濃度1mol%で製膜を終了した場合は、製膜時間は120分であり、そして、排出酸素中の窒素濃度2mol%および5mol%で製膜を終了した場合は、それぞれ、製膜時間は70分および20分であった。
排出酸素中の窒素濃度5mol%で製膜を終了した例では、窒素濃度2mol%で製膜を終了した例と比較して、透過係数比(水素透過率/窒素透過率)は低い値(38.1)を示したが、その一方で、非常に高い水素透過率(8.50×10−7)を示した。一方、排出酸素中の窒素濃度1mol%で製膜を終了した例では、窒素濃度2mol%で製膜を終了した例と比較して、水素透過率の値(9.08×10−8)は低下したが、非常に高い透過係数比(2820)を示した。
したがって、本実施例2の結果が示すように、排出したガス組成のモニタリングをしながら製膜を実行することによって、例えば、高選択性を有する水素ガス分離材、または、高水素透過率を有する水素ガス分離材などを作製することができ、即ち、水素ガス分離材の分離特性をコントロールできることがわかった。
【0065】
<実施例3>
本実施例3では、実施例1と同じ製膜条件にて、表4に示した基材1、基材2、基材3にシリカ膜形成工程を実行した。本実施例3では、排出酸素中の窒素濃度が2mol%となった時点を製膜終了点として、シリカ膜形成工程を実行した。基材1、基材2、基材3においてはそれぞれ多孔質基材12の平均細孔径が異なるように構成されている。
本実施例3の基材1は、実施例1のサンプルNo.1と同じものである。具体的には、基材1における多孔質支持体14の平均細孔径は700nmであり、第1多孔質層(α−アルミナ)の平均細孔径は70nm(厚さ50μm)であり、そして、第2多孔質層(γ−アルミナ)の平均細孔径は4nm(厚さ1μm)であった。
また、基材2における多孔質支持体14の平均細孔径は700nmであり、第1多孔質層(α−アルミナ)の平均細孔径は70nm(厚さ50μm)であり、そして、シリカからなる第2多孔質層の平均細孔径は20nm(厚さ1μm)であった。
さらに、基材3における多孔質支持体14の平均細孔径は700nmであり、第1多孔質層(α−アルミナ)の平均細孔径は70nm(厚さ50μm)であった。なお、基材3では、第2多孔質層は設けていない。本実施例3の結果を下記表4に示す。
【0066】
【表4】

【0067】
表4に示されるように、基材1の製膜時間は70分であり、そして、基材2および基材3の製膜時間は、それぞれ、110分および210分であった。そして、それぞれ平均細孔径が異なる基材1、基材2、基材3において、透過係数比(水素透過率/窒素透過率)はいずれも300程度の良好な特性のものを得ることができた。なお、基材1、基材2、基材3において水素透過率の値は変化しているが、これは、基材1、基材2および基材3間において、製膜された水素分離膜(シリカ膜)の膜厚が変化していることに基づくものである。具体的には、上記のとおり、基材1では第2多孔質層の平均細孔径が4nmと相対的に小さいため、該第2多孔質層の細孔を適切に塞ぐために必要なシリカ膜の厚みも相対的に小さく、それ故に製膜時間も相対的に短くてよい。一方、基材2では第2多孔質層の平均細孔径が20nmと相対的に大きいため、該第2多孔質層の細孔を適切に塞ぐために必要なシリカ膜の厚みは相対的に大きくなり、それ故に製膜時間も相対的に長くなる。さらに、基材3では第2多孔質層が存在しないため、第1多孔質層の細孔を適切に塞ぐために必要なシリカ膜の厚みは第2多孔質層が存在する基材1及び基材2よりも大きくなり、製膜時間もいっそう長くなる。
【0068】
以上説明した通り、本実施形態の水素ガス分離材の製造方法によれば、多孔質基材にピンホールと呼ばれる粗大孔(欠陥)が存在する場合でも、排出したガス組成のモニタリングをしながら製膜を実行することによって、良好な性能を有するシリカ膜を安定して形成することが可能である。また、本実施形態の製造方法によれば、排出したガス組成のモニタリングをしながら製膜を実行することにより、水素ガス分離材の分離特性をコントロールすることも可能である。さらには、多孔質基材(多孔質層)12の平均細孔径が異なるものを用いて製膜を行ったとしても、ほぼ同じような値の良好な透過係数比(水素透過率/窒素透過率)を有する水素ガス分離材を製造することも可能である。
【0069】
なお、上記実施例では、多孔質基材の一方の面側に供給されたシリカ源含有ガス中に含まれる窒素ガス(不活性ガス種)であって、該基材を通過し、該基材の他方の面側に供給された酸素含有ガス(ここでは純粋酸素ガス)中に含まれるに至った窒素ガスの濃度を基準にして対向拡散CVDにおける反応の終了点を定めたが、それに限定されるものではない。シリカ源含有ガスにおけるキャリアガスとしての不活性ガスがアルゴンであっても、窒素の場合と同様、該基材を通過して該基材の他方の面側に供給された酸素含有ガス中に含まれるに至ったアルゴンガスの濃度を基準にして、対向拡散CVDにおける反応の終了点を定めることができる。
或いは逆に、多孔質基材の一方の面側に供給された酸素含有ガス中に含まれる酸素ガスであって、該基材を通過し、該基材の他方の面側に供給されたシリカ源ガス中に含まれるに至った酸素ガスの濃度を基準にして対向拡散CVDにおける反応の終了点を定めてもよい。
【0070】
以上、本発明を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明は、さらに別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加えうるものである。一例を挙げると、図1〜3に示される例とは逆に、多孔質構造体10の外周面側10aにおいて酸素含有ガス3を流通させ、多孔質構造体10の中空部10bにシリカ源含有ガス2を流通させる態様によってシリカ膜21を形成する場合、ガスクロマトグラフ60の配管が適宜好適に変更されて、ガスクロマトグラフィーにより適切な排出ガスをモニタリングできるように、シリカ膜形成装置の構成を改変することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 ガス分離材
2 シリカ源含有ガス
2a シリカ源
3 シリカ膜形成工程で供給される酸素含有ガス
3a 酸素原子からなるガス分子
10 多孔質構造体
10a 外周面側
10b 中空部
12 多孔質基材(多孔質膜)
12a 一方の面
12b 他方の面
14 多孔質支持体
20 細孔
21 シリカ膜
30 反応管
30a 外部ガス通路
30b 内部ガス通路
45 Oガス供給管
52 気化器
70 多管モジュール
72 Oガス供給管
100,110 シリカ膜形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材とシリカ膜とを備えるガス分離材を製造する方法であって:
前記多孔質基材を用意する工程;
前記基材の一方の面側にシリカ源含有ガスとして不活性ガスと共に供給される気化したシリカ源と、該基材の他方の面側に供給される酸素含有ガスとを反応させる化学蒸着法によって、該基材にシリカ膜を形成する工程;及び、
前記シリカ膜を形成する工程において前記基材に供給された後に排出されるガスの組成をモニタリングすることによって、前記シリカ膜の形成の終了点を決定する工程;
を包含する、製造方法。
【請求項2】
前記シリカ膜の形成の終了点を決定する工程では、ガスクロマトグラフィーにて前記不活性ガスの量をモニタリングする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記不活性ガスは窒素ガスである、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記シリカ膜を形成する工程において使用する酸素含有ガスは、純粋酸素ガス又は25vol%以上の酸素を含む混合ガスである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記シリカ膜の形成の終了点を決定する工程では、前記基材の一方の面側に供給されたシリカ源含有ガス中に含まれる不活性ガスであって、該基材を通過し、前記基材の他方の面側に供給された酸素含有ガス中に含まれるに至った不活性ガスの濃度を基準にする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記多孔質基材として、多孔質支持体上に形成された平均細孔径又は細孔径分布のピーク値が2nm〜100nmである膜状の多孔質基材を用いる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−250183(P2012−250183A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125059(P2011−125059)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000004293)株式会社ノリタケカンパニーリミテド (449)
【Fターム(参考)】