ガス検出装置
【課題】吸着燃焼式ガスセンサの感応素子及び補償素子における温度上昇特性の差異によって生じる誤差電位差を小さくして、検出対象ガスの検出感度を向上できるガス検出装置を提供する。
【解決手段】ガス検出装置1は、吸着燃焼式ガスセンサ回路部10、並びに、複数の比較回路部20、を含むブリッジ回路2を備える。ブリッジ回路2には、複数の比較回路部20のうち1つの比較回路部20を増幅器6に接続する比較回路部切換器50が設けられ、そして、吸着燃焼式ガスセンサ回路部10が備える感応素子及び補償素子の温度が上昇する過渡期間において、所定の比較回路部切換情報に基づき、複数の比較回路部20のうち、感応素子と補償素子との温度上昇特性の差異により生じるブリッジ回路2の誤差電位差が最も小さくなる比較回路部20が増幅器6に接続されるように、比較回路部切換器50を制御する。
【解決手段】ガス検出装置1は、吸着燃焼式ガスセンサ回路部10、並びに、複数の比較回路部20、を含むブリッジ回路2を備える。ブリッジ回路2には、複数の比較回路部20のうち1つの比較回路部20を増幅器6に接続する比較回路部切換器50が設けられ、そして、吸着燃焼式ガスセンサ回路部10が備える感応素子及び補償素子の温度が上昇する過渡期間において、所定の比較回路部切換情報に基づき、複数の比較回路部20のうち、感応素子と補償素子との温度上昇特性の差異により生じるブリッジ回路2の誤差電位差が最も小さくなる比較回路部20が増幅器6に接続されるように、比較回路部切換器50を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着燃焼式ガスセンサを用いたガス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来知られている接触燃焼式ガスセンサは、感応素子と補償素子を有し、検出対象となるガスを感応素子の触媒作用により燃焼させ、この燃焼熱を白金コイルの抵抗値変化として捉えるように構成されている。検出対象となるガスのうちトルエンや酢酸、エタノール等のように、極性が大きく吸着力の大きなガスは、低温駆動時に、ガス分子が感応素子の触媒表面に吸着し、高温駆動時に、吸着したガスが瞬時に燃焼すると共に接触燃焼反応も同時に起こるので、センサ出力は、短時間でピークに達しその後徐々に減少するピーク波形(山形波形)を生じる。一方、メタンや水素、一酸化炭素等の無極性または極性の小さいガスは、吸着力も小さいので上記のような現象は起こらず、センサ出力は、定常値で安定するまで徐々に増加していく。
【0003】
このように、トルエン等の特定種類のガスにおいて固有のピーク波形を呈することを利用して、接触燃焼式ガスセンサを用いてガス濃度の検出やガス種の分別などを行うことができる。このような特定種類のガスの吸着現象を利用する接触燃焼式ガスセンサは、吸着燃焼式ガスセンサとも呼ばれている。上述したような吸着燃焼式ガスセンサは、ガス濃度検出装置やガス種別検出装置などの種々のガス検出装置において用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
吸着燃焼式ガスセンサを備えた従来のガス検出装置の構成例を図9に示す。図9に示されるガス検出装置801は、検出対象ガスと感応する感応素子811及び感応素子811と直列に接続された検出対象ガスと感応しない補償素子812からなる吸着燃焼式ガスセンサ回路部810、並びに、吸着燃焼式ガスセンサ回路部810と並列接続されるとともに互いに直列接続された一対の固定抵抗器821、822からなる比較回路部820、で構成されたブリッジ回路802と、感応素子811の温度が検出対象ガスを吸着する低温となる低温駆動電圧、及び、感応素子811の温度が感応素子811に吸着した検出対象ガスを燃焼させる高温となる高温駆動電圧、をブリッジ回路802に順次供給する電圧供給源805と、感応素子811及び補償素子812間に生じる第1電圧V1と一対の固定抵抗器821、822間に生じる第2電圧V2とが入力されるように、吸着燃焼式ガスセンサ回路部810と比較回路部820とに接続されて、これら第1電圧V1と第2電圧V2との電位差(以下、「中点電位差Vc」という)を所定の増幅率で増幅する計装アンプ806と、計装アンプ860で増幅された中点電位差Vcをアナログ値からデジタル値に変換するA/Dコンバータ807と、A/Dコンバータ807によってデジタル値に変換された中点電位差Vcに基づいて、検出対象ガスの濃度を検出する周知のマイクロコンピュータ(MPU)860と、を備えている。ブリッジ回路802は、検出対象ガスを含まない雰囲気中において高温駆動電圧を供給されたときに、各素子の温度変化が収束した定常状態で平衡(即ち、中点電位差Vcが0)となるように、一対の固定抵抗器821、822の抵抗値が定められている。
【0005】
この中点電位差Vcは、感応素子811の抵抗値をRs、補償素子812の抵抗値をRr、固定抵抗器821の抵抗値をR1、固定抵抗器822の抵抗値をR2、ブリッジ回路2への供給電圧をVbrgとすると、次の式(1)で示される。
【0006】
Vc=((Rs/(Rs+Rr))−(R1/(R1+R2)))×Vbrg・・・(1)
【0007】
上記式(1)から明らかなように、中点電位差Vcは、値が固定される抵抗値R1、抵抗値R2及び供給電圧Vbrgの影響は受けず、つまり、中点電位差Vcは、温度変化に応じて値が変化する感応素子811の抵抗値Rs及び補償素子812の抵抗値Rrによって決定される。
【0008】
そして、吸着燃焼式ガスセンサ回路部810の感応素子811及び補償素子812は、供給電圧Vbrgが低温駆動電圧から高温駆動電圧に切り替わると温度上昇を開始するが、これら感応素子811と補償素子812とは、それぞれの熱容量や熱伝導特性、放熱特性などが異なるので、各素子の温度が安定した定常状態に至るまでの過渡状態の期間(過渡期間)における温度上昇カーブ、即ち、温度上昇特性が異なり、そのため、温度上昇に伴う抵抗値の変化に差異が生じて、過渡期間において、温度上昇特性の差異による中点電位差Vc、即ち、誤差電位差Veが生じてしまう(図10のグラフに示す)。このような各素子の温度上昇特性の差異によって生じる誤差電位差Veを防ぐために、各素子の製造方法の精度向上や選別等を行うことが考えられるが、完全に温度上昇特性を一致させることは不可能である。そして、このような吸着燃焼式ガスセンサは、高温駆動時の中点電位差Vcの変化(即ち、応答波形)に基づいてガス検出を行うので、上述したような、温度上昇特性の差異によって生じる誤差電位差Veが影響して、ガス検出の精度が低下してしまう。
【0009】
そこで、ガス検出装置801では、感応素子811及び補償素子812における温度上昇特性の差異によって生じる中点電位差Vc、即ち、誤差電位差Veの影響を回避するため、以下のようにして検出対象ガスの濃度を検出していた。
【0010】
まず、検出対象ガスを含まない雰囲気中において、ブリッジ回路802に低温駆動電圧を供給したのちに高温駆動電圧を供給したときの中点電位差Vc(即ち、誤差電位差Ve)を所定のサンプリング周期で計測し、この計測した複数の中点電位差Vcを積算して誤差電位差積分値を算出する。次に、検出対象ガスの濃度を検出する雰囲気中において、ブリッジ回路802に低温駆動電圧を供給したのちに高温駆動電圧を供給したときの中点電位差Vcを同様に所定のサンプリング周期で計測し、この計測した複数の中点電位差Vcを積算して濃度電位差積分値を算出する。そして、濃度電位差積分値から誤差電位差積分値を差し引いた値に基づいて、検出対象ガスの濃度を検出する。このようにして、温度上昇特性の差異によって生じる誤差電位差Veの影響を回避して、検出対象ガスの濃度検出の精度低下を防いでいた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−83950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した中点電位差Vcは微小電圧であるので、計装アンプ806において所定の増幅率で増幅されたあとに、後段のA/Dコンバータ807に入力される。一般的に、計装アンプはその最大出力電圧(通常は電源電圧と同じ又は若干低い電圧)が定められており、そのため、計装アンプ806が出力する電圧がこの最大出力電圧以下になるように、その増幅率が定められる。また同様に、A/Dコンバータについても、最大入力電圧が定められており、そのため、A/Dコンバータ807に入力される電圧がこの最大入力電圧以下になるように、計装アンプ806の増幅率が定められる。そして、計装アンプ806の増幅率が高いほど、微小電圧を大きな電圧に変換できるので、検出感度を向上できる。しかしながら、中点電位差Vcに含まれる上述した誤差電位差Veの値が大きいと、低い増幅率でも上記最大入力電圧または上記最大出力電圧に達してしまうので、計装アンプ806の増幅率を高めることが出来ず、検出対象ガスの検出感度の向上が望めなかった。
【0013】
本発明は、上記課題に係る問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、吸着燃焼式ガスセンサの感応素子及び補償素子における温度上昇特性の差異によって生じる誤差電位差を小さくして、検出対象ガスの検出感度を向上できるガス検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、図1の基本構成図に示すように、(a)検出対象ガスと感応する感応素子及び前記感応素子と直列に接続された前記検出対象ガスと感応しない補償素子からなる吸着燃焼式ガスセンサ回路部10、並びに、前記吸着燃焼式ガスセンサ回路部10と並列接続されるとともに互いに直列接続された一対の固定抵抗器からなる比較回路部20、を含むブリッジ回路2と、(b)前記感応素子の温度が前記検出対象ガスを吸着する低温となる低温駆動電圧、及び、前記感応素子の温度が前記感応素子に吸着した前記検出対象ガスを燃焼させる高温となる高温駆動電圧、を前記ブリッジ回路2に順次供給する電圧供給源5と、(c)前記感応素子及び前記補償素子間に生じる第1電圧と前記一対の固定抵抗器間に生じる第2電圧とが入力されるように前記吸着燃焼式ガスセンサ回路部10及び前記比較回路部20と接続されて、これら前記第1電圧と前記第2電圧との電位差を所定の増幅率で増幅する、増幅器6と、を有するガス検出装置1において、前記ブリッジ回路2には、前記一対の固定抵抗器間の抵抗値の比率が互いに異なる複数の前記比較回路部20と、前記複数の比較回路部20のうち1つの前記比較回路部20を前記増幅器6に接続する比較回路部切換器50と、が設けられ、そして、前記電圧供給源5によって前記ブリッジ回路2に前記高温駆動電圧が供給されたあとの前記感応素子及び前記補償素子の温度が上昇する過渡期間において、予め設定された比較回路部切換情報に基づき、前記複数の比較回路部20のうち、前記感応素子と前記補償素子との温度上昇特性の差異によって生じる前記第1電圧と前記第2電圧との電位差が所定の最低電圧以上で且つ最も小さくなる前記比較回路部20が前記増幅器6に接続されるように、前記比較回路部切換器50を制御する回路切換手段61aが設けられていることを特徴とするガス検出装置である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載された発明によれば、ブリッジ回路には、一対の固定抵抗器間の抵抗値の比率が互いに異なる複数の比較回路部と、複数の比較回路部のうち1つの比較回路部を増幅器に接続する比較回路部切換器と、が設けられ、そして、電圧供給源によってブリッジ回路に高温駆動電圧が供給されたあとの感応素子及び補償素子の温度が上昇する過渡期間において、予め設定された比較回路部切換情報に基づき、複数の比較回路部のうち、感応素子と補償素子との温度上昇特性の差異によって生じる第1電圧と第2電圧との電位差(即ち、誤差電位差)が所定の最低電圧以上で且つ最も小さくなる比較回路部が増幅器に接続されるように、比較回路部切換器を制御するので、吸着燃焼式ガスセンサ回路部と複数の比較回路部とを組み合わせた複数のブリッジ回路のうち、上記過渡期間における誤差電位差が所定の最低電圧以上で且つ最小となるブリッジ回路を増幅器に接続でき、そのため、誤差電位差を小さくして、増幅器における増幅率をより高めることができ、検出感度を向上できる。また、ブリッジ回路に複数の比較回路部及び比較回路部切換器を設けた簡易な回路で構成されるとともに、比較回路部切換器に対する制御も簡易であるので、検出感度を向上できるガス検出装置を低コストで提供できる。さらに、吸着燃焼式ガスセンサの感応素子と補償素子との温度上昇特性を高精度で一致させる必要がないので、現状の素子が利用でき、さらに、コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のガス検出装置の基本構成を示す図である。
【図2】本発明のガス検出装置の一実施形態であるガス濃度検出装置を示す構成図である。
【図3】(A)、(B)及び(C)は、それぞれ、図2のガス濃度検出装置が備える吸着燃焼式ガスセンサ回路のガスセンサユニットの平面図、背面図、及び、平面図におけるA−A線に沿う断面図である。
【図4】図2のガス濃度検出装置が備えるCPUが行う比較回路部切換情報取得処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】図2のガス濃度検出装置が備えるCPUが行うガス濃度検出処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】図2のガス濃度検出装置における誤差電位差(増幅率1倍)を示すグラフである。
【図7】従来のガス濃度検出装置における誤差電位差(増幅率1倍)を示すグラフである。
【図8】図2のガス濃度検出装置における誤差電位差及び従来のガス濃度検出装置における誤差電位差をA/Dコンバータの最大入力電圧まで増幅したグラフである。
【図9】従来のガス濃度検出装置の構成図である。
【図10】従来のガス濃度検出装置における誤差電位差のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るガス検出装置の一実施形態としてのガス濃度検出装置を、図2〜図8を参照して説明する。
【0018】
ガス濃度検出装置1は、図2に示すように、ブリッジ回路2と、電圧供給源5と、増幅器としての計装アンプ6と、A/Dコンバータ7と、マイクロコンピュータ60と、図示しない気体収容室と、図示しない表示装置と、を備えている。
【0019】
ブリッジ回路2は、吸着燃焼式ガスセンサ回路部10と、複数の比較回路部20(20A、20B、20C)と、比較回路部切換器としてのアナログスイッチ50と、を備えている。
【0020】
吸着燃焼式ガスセンサ回路部10は、ガスセンサユニット15を備えており、ガスセンサユニット15に設けられた感応素子11及び補償素子12が互いに直列に接続されて構成されている。
【0021】
ガスセンサユニット15は、図3(A)〜(C)に示すように、所定厚さ(例えば、400μm程度)のシリコン(Si)ウェハ41上に、所定厚さ(例えば、600nm程度)の酸化シリコン(SiO2)膜48c、所定厚さ(例えば、250nm程度)の窒化シリコン(SiN)膜48b、および所定厚さ(例えば、30nm程度)の酸化ハフニウム(HfO2)膜48aの絶縁薄膜が順次成膜され、多層絶縁膜が形成されている。
【0022】
この多層絶縁膜上に、感応素子11として、所定厚さ(例えば、250nm程度)の第1のヒータとしての白金(Pt)ヒータ42が形成されていると共に、この白金ヒータ42と熱的に接触するとともに、触媒物質として、例えば、検出対象ガスを吸着及び燃焼させるパラジウム(Pd)などの白金族を担持した酸化アルミニウム(Al2O3)からなる触媒層43が所定厚さ(例えば、1〜40μm程度)で形成されている。
【0023】
また、多層絶縁膜上には、補償素子12として、所定厚さ(例えば、250nm程度)の第2のヒータとしての白金(Pt)ヒータ44と、この白金ヒータ44と熱的に接触する酸化アルミニウム(Al2O3)のみからなる非触媒層45が所定厚さ(例えば、1〜40μm程度)で形成されている。
【0024】
また、図3(C)に示すように、シリコンウェハ41を異方性エッチングして、感応素子11及び補償素子12に対応する位置に凹部46、47を形成し、それにより、上述の各絶縁薄膜による薄膜ダイヤフラムDsおよびDrが形成されている。
【0025】
感応素子11及び補償素子12は、検出対象ガスを含まない雰囲気中において、後述する電圧供給源5によって低温駆動電圧及び高温駆動電圧が供給されたのちにそれらの温度変化が収束した定常状態では、感応素子11の白金ヒータ42と補償素子12の白金ヒータ44とが同一の抵抗値となるように形成されている。
【0026】
また、感応素子11は触媒層43を備えているとともに、補償素子12は非触媒層45を備えている(即ち、触媒を備えていない)ので、電圧供給源5によってブリッジ回路2、即ち、吸着燃焼式ガスセンサ回路部10に所定の低温駆動電圧が供給されると、感応素子11では検出対象ガスが触媒層43に吸着され、その一方で、補償素子12では検出対象ガスが非触媒層45に吸着されず、そして、電圧供給源5によって吸着燃焼式ガスセンサ回路部10に所定の高温駆動電圧が供給されると、感応素子11では触媒により検出対象ガスが燃焼し、その一方で、補償素子12では検出対象ガスが燃焼しない。即ち、感応素子11は検出対象ガスと感応し、補償素子12は検出対象ガスと感応しない。
【0027】
このため、感応素子11及び補償素子12は、検出対象ガスを含む雰囲気中において、電圧供給源5によって低温駆動電圧が供給されたのちに高温駆動電圧が供給されると、感応素子11に吸着した検出対象ガスが爆発的に燃焼する。すると、この燃焼エネルギーにより感応素子11の温度が補償素子12の温度より高くなり、感応素子11と補償素子12とのそれぞれに検出対象ガスの濃度に応じた温度差が生じて、この温度差によって感応素子11の白金ヒータ42と補償素子12の白金ヒータ44との抵抗値に差が生じる。そして、感応素子11と補償素子12とが直列に接続されているので、検出対象ガスの濃度に応じて、感応素子11と補償素子12との抵抗値の比率が変化することにより、これら感応素子11及び補償素子12間に生じる電圧(感応素子11及び補償素子12によって分圧された電圧、以下、「第1電圧V1」という)が変動する。第1電圧V1は、感応素子11の抵抗値をRs、補償素子12の抵抗値をRr、吸着燃焼式ガスセンサ回路部10に供給される電圧をVbrgとすると、次の式、
V1=(Rs/(Rs+Rr))×Vbrg[V]・・・(2)
で示される。
【0028】
吸着燃焼式ガスセンサ回路部10は、図示しない気体収容室内に設置されている。この気体収容室には、検出対象ガスを含まない0ガス雰囲気(エアベース)、及び、検出対象ガスの濃度を検出する雰囲気(被検ガス)が、後述するマイクロコンピュータ60の制御によって充填される。
【0029】
複数の比較回路部20(具体的には、3つの比較回路部20A、20B、20C)は、それぞれ互いに直列に接続された一対の固定抵抗器21、22を備えている。複数の比較回路部20のそれぞれは、上述した吸着燃焼式ガスセンサ回路部10と並列に接続されている。以下、複数の比較回路部20をそれぞれ区別して説明するときは、符号の末尾にA、B、Cを付して説明する。
【0030】
複数の比較回路部20は、各比較回路部20が備える一対の固定抵抗器21、22間の抵抗値の比率が互いに異なるように、それぞれの固定抵抗器21、22の抵抗値が定められている。換言すると、複数の比較回路部20のそれぞれは、電圧供給源5によってブリッジ回路2に電圧が供給されたとき、固定抵抗器21、22間に生じる電圧(固定抵抗器21、22によって分圧された電圧、以下、「第2電圧V2」という)が互いに異なるように、それぞれの固定抵抗器21、22の抵抗値が定められている。例えば、比較回路部20Aは、固定抵抗器21Aが10kΩ、固定抵抗器22Aが、10kΩ、比較回路部20Bは、固定抵抗器21Bが10.16kΩ、固定抵抗器22Bが、10kΩ、比較回路部20Cは、固定抵抗器21Cが10.33kΩ、固定抵抗器22Cが、10kΩ、に設定されている。上記各固定抵抗器の抵抗値は一例であり、ガス濃度検出装置の構成などに応じて適宜定められる。複数の比較回路部20は、上述した過渡期間において、誤差電位差Veを相殺又は小さくするため、比較回路部20A、20B、・・・、nと順次第2電圧V2が高くなっていくように設定されているのが望ましい。
【0031】
第2電圧V2は、固定抵抗器21の抵抗値をR1、固定抵抗器22の抵抗値をR2、比較回路部20に供給される電圧をVbrgとすると、次の式、
V2=(R1/(R1+R2))×Vbrg[V]・・・(3)
で示される。
【0032】
また、複数の比較回路部20のうち1つの比較回路部20(例えば、比較回路部20A)は、検出対象ガスを含まない雰囲気中において、ブリッジ回路2に電圧供給源5によって高温駆動電圧が供給されたときに、感応素子11の温度及び補償素子12の温度変化が収束した定常状態で平衡となるように、即ち、感応素子11及び補償素子12間に生じる第1電圧V1と一対の固定抵抗器21、22間に生じる第2電圧V2との電位差(以下、中点電位差Vc(Vc=V1−V2[V]・・・(4))という)が0となるように、一対の固定抵抗器21、22(例えば、一対の固定抵抗器21A、22A)の抵抗値が定められている。さらに、このような比較回路部20は、例えば、一対の固定抵抗器21、22間に可変抵抗器(半固定抵抗器やデジタルポテンショメータなど)を設けて、上記定常状態での平衡調整を可能とする構成としてもよい。また、固定抵抗器21、22は、複数の固定抵抗器を直列、並列、または、直列及び並列に組み合わせて構成してもよく、或いは、ガス濃度測定時に抵抗値を固定して用いるものであれば、例えば、平衡調整のためなどに抵抗値を変更できる、可変抵抗器であってもよい。
【0033】
ブリッジ回路2における補償素子12と複数の固定抵抗器22(22A、22B、22C)とを接続する信号線は、電圧供給源5に接続されている。ブリッジ回路2における感応素子11と複数の固定抵抗器21(21A、21B、21C)とを接続する信号線は、接地点(GND)に接続されている。
【0034】
アナログスイッチ50は、例えば、少なくとも3つの信号系統(チャネル)を備えた単極単投型(SPST)の周知の電子部品である。アナログスイッチ50の各信号系統の一端子S1、S2、S3(入力側)には、比較回路部20Aの一対の固定抵抗器21A、22A間(中点)の信号線、比較回路部20Bの一対の固定抵抗器21B、22B間(中点)の信号線、及び、比較回路部20Cの一対の固定抵抗器21C、22C間(中点)の信号線、がそれぞれ接続されている。つまり、各比較回路部20A、20B、20Cにおける第2電圧V2a、V2b、V2cが入力されている。また、アナログスイッチ50の各信号系統の他端子(出力側)は、出力端子Dに接続されている。アナログスイッチ50は、後述するMPU60からの切換制御信号に応じて、3つの信号系統のうち1つの信号系統のみオン(接続)し、他の2つの信号系統はオフ(切断)する。即ち、複数の比較回路部20のうちひとつの比較回路部20を接続する。なお、このようなアナログスイッチ以外にも、切換制御信号に応じて、入力された複数のアナログ信号のうち1つのアナログ信号を出力するセレクタ回路などを用いてもよい。
【0035】
電圧供給源5は、ブリッジ回路2に所定の電圧を供給する電圧供給回路である。電圧供給源5は、後述するMPU60に接続されるとともに、該MPU60からの電圧制御信号に応じて、感応素子11の温度が検出対象ガスを吸着する低温(例えば、200度)となる低温駆動電圧、及び、感応素子11の温度が感応素子11に吸着した検出対象ガスを燃焼させる高温(例えば、400度)となる高温駆動電圧、などのパルス状の供給電圧Vbrgをブリッジ回路2に供給する。
【0036】
計装アンプ6は、差動入力・シングルエンド出力の平衡入力アンプであり、同相信号除去比(CMRR)を大きくとれるという特徴を有する周知の増幅器である。計装アンプ6は、それぞれ高インピーダンスの一対の差動入力端子に入力された信号の電位差を、所定の増幅率で増幅して出力する。計装アンプ6の差動入力端子の一方(V+)には、吸着燃焼式ガスセンサ回路部10の感応素子11及び補償素子12間(中点)の信号線が接続されており、他方(V−)には、アナログスイッチ50の出力端子Dが接続されている。つまり、計装アンプ6は、吸着燃焼式ガスセンサ回路部10の中点の電位(即ち、第1電圧V1)と、複数の比較回路部20のうち1つの比較回路部20の中点の電位(即ち、第2電圧V2)と、が入力されて、これら第1電圧V1と第2電圧V2の電位差(即ち、中点電位差Vc)を、所定の増幅率で増幅して出力端子から出力する。計装アンプ6には出力可能な最大電圧(最大出力電圧)が定められており、計装アンプ6の増幅率は、中点電位差Vcを増幅したときに、この最大出力電圧を超えないように定められている。
【0037】
A/Dコンバータ7は、入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換して出力する周知のアナログ−デジタル変換器である。A/Dコンバータ7の入力部には、計装アンプ6において増幅された中点電位差Vcが入力される。また、A/Dコンバータ7の出力部は、MPU60に接続されており、デジタル信号に変換された中点電位差VcがMPU60に向けて出力される。また、A/Dコンバータ7には、入力可能な最大電圧(最大入力電圧)が定められており、この最大入力電圧を超えないように、計装アンプ6の増幅率が定められている。
【0038】
マイクロコンピュータ(MPU)60は、周知のように、予め定めたプログラムに従って各種の処理や制御などを行う中央演算処理装置(CPU)61、CPU61のためのプログラムや各種パラメータ(例えば、低温駆動電圧値、高温駆動電圧値、複数の比較回路部20の数、サンプリング上限数など)を格納した読み出し専用のメモリであるROM62、各種データを格納するとともにCPU61の処理作業に必要なエリア(例えば、ループ変数、誤差電位差格納領域、誤差電位差積分値1、濃度電位差積分値など)を有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM63、及び、電力供給が断たれた場合でも、格納された各種データの保持が可能であり、CPU61の処理作業に必要な各種格納エリア(例えば、比較回路部切換情報格納領域、誤差電位差積分値など)を有するEEPROM64等を備えている。CPU61は、ROM62に格納された各種プログラムを実行することにより、回路切換手段として機能する。
【0039】
MPU60は、図示しない入出力ポートや各種インタフェース機能を備えた外部接続部をさらに備えている。MPU60は、この外部接続部を介して、A/Dコンバータ7、電圧供給源5及びアナログスイッチ50と接続されている。MPU60は、A/Dコンバータ7からデジタル信号に変換された中点電位差Vcを受信して、この中点電位差Vcに基づいてガス濃度を検出する。MPU60は、処理に応じて、例えば、低温駆動電圧を所定のガス吸着期間供給した後、高温駆動電圧を所定のガス燃焼期間供給するように、電圧供給源5に向けて電圧制御信号を送信する。MPU60は、処理に応じて、適切な比較回路部20が計装アンプ6に接続されるように、アナログスイッチ50に向けて切換制御信号を送信する。また、MPU60は、この外部接続部を介して、図示しない表示装置に接続されており、例えば、検出した検出対象ガスの濃度に関する情報を含む表示制御信号を、該表示装置に向けて送信する。そして、表示装置は、この表示制御信号に応じた情報、即ち、検出対象ガスの濃度などを表示する。また、MPU60は、この外部接続部を介して、ポンプなどを備えた気体収容室に接続されており、処理に応じて各種気体を該気体収容室に充填する。
【0040】
次に、上述したCPU61が実行する本発明に係る処理(比較回路部切換情報取得処理)の一例を、図4に示すフローチャートを参照して、以下に説明する。
【0041】
ガス濃度検出装置1に電源が投入されると、CPU61は、気体収容室内に検出対象ガスを含まない0ガス雰囲気を充填した後、その処理をステップS110に進める。
【0042】
ステップS110では、本フローチャートの処理に用いられる、RAM63上に設けられたループ変数を初期化する(比較回路部切換ループ回数s=1、サンプリングループ回数n=1)。また、アナログスイッチ50に対して、複数の比較回路部20のうちひとつの比較回路部20(例えば、比較回路部20A)を計装アンプ6に接続するための切換制御信号を送信する。そして、ステップS120に進む。
【0043】
ステップS120では、電圧供給源5に対して、ブリッジ回路2に低温駆動電圧を供給するための電圧制御信号を送信する。そして、ステップS130に進む。
【0044】
ステップS130では、感応素子11の温度及び補償素子12の温度が安定するまで(温度安定期間、例えば、60秒)待つ。そして、温度安定期間が経過した後、ステップS140に進む。
【0045】
ステップS140では、アナログスイッチ50に対して、比較回路部切換ループ回数sに応じた比較回路部20(s=1のときは比較回路部20A、s=2のときは比較回路部20B、s=3のときは比較回路部20C)を計装アンプ6に接続するための切換制御信号を送信する。そして、ステップS150に進む。
【0046】
ステップS150では、電圧供給源5に対して、ブリッジ回路2に、高温駆動電圧を供給するための電圧制御信号を送信する。そして、ステップS160に進む。
【0047】
ステップS160では、計装アンプ6で増幅されるとともにA/Dコンバータ7でデジタル信号に変換された中点電位差Vcを、誤差電位差Veとして取得して、RAM63上に設けられた誤差電位差格納領域[s、n]に格納する。この誤差電位差格納領域[s、n]は二次元配列データ構造を有しており、比較回路部切換ループ回数s及びサンプリングループ回数nをインデックスとして、取得した誤差電位差Veの格納位置が指定される。例えば、比較回路部切換ループ回数s=1で、サンプリングループ回数n=3のときは、誤差電位差Veは誤差電圧格納領域[1、3]に格納される。その後、サンプリングループ回数nを1増加する。そして、ステップS170に進む。
【0048】
ステップS170では、所定のサンプリング間隔時間が経過するまで待つ。このサンプリング間隔時間とは、一例を挙げると、サンプリングが行われる期間(過渡期間、例えば、400ms)をROM62に格納された所定のサンプリング上限数(例えば、400回)で除した値(例えば、1ms)などが用いられる。サンプリング間隔時間は、概ね、数百μs〜数msの範囲で設定される。そして、サンプリング間隔時間が経過した後、ステップS180に進む。
【0049】
ステップS180では、サンプリングループ回数nがサンプリング上限数を超えたか否かを判定し、サンプリング上限数を超えていたときは、現在の比較回路部20における誤差電位差Veの取得が終了したものとして、比較回路部切換ループ回数sを1増加したのち、ステップS190に進み(S180でY)、サンプリング上限数以下のときは、現在の比較回路部20における誤差電位差Veの取得を継続するものとして、ステップS160に戻る(S180でN)。
【0050】
ステップS190では、比較回路部切換ループ回数sが、ROM62に格納された、ブリッジ回路2が備える複数の比較回路部20の数(即ち、3つ)を超えたか否かを判定し、比較回路部20の数を超えていたときは、複数の比較回路部20の全てにおいて誤差電位差Veの取得が終了したものとして、ステップS200に進み(S190でY)、比較回路部20の数以下のときは、まだ誤差電位差Veを取得していない比較回路部20が残っているものとして、ステップS120に戻る(S190でN)。
【0051】
ステップS200では、ループ変数等を初期化する(サンプリングループ回数n=1、誤差電位差積分値1=0)。そして、ステップS210に進む。
【0052】
ステップS210では、誤差電位差格納領域[s、n]においてサンプリングタイミングが同一(即ち、nが同一)のものの中から、誤差電位差Veが0より大きく且つ最も小さいものを選定し、この選定された誤差電位差格納領域[s、n]における比較回路部20を特定する情報(即ち、s)を、EEPROM64上に設けられた比較回路部切換情報格納領域[n]に格納する。この比較回路部切換情報格納領域[n]は、一次元配列データ構造を有しており、サンプリングループ回数nをインデックスとして、比較回路部20を示す情報の格納位置が指定される。一例(計装アンプ6の増幅率が1の場合)を挙げると、誤差電位差格納領域[1、35]=41mV、誤差電位差格納領域[2、35]=22mV、誤差電位差格納領域[3、35]=0mVのとき、比較回路部切換情報格納領域[35]に、誤差電位差Veが0より大きく且つ最も小さい「2」を格納する。そして、ステップS220に進む。なお、本実施形態においては、誤差電位差格納領域[s、n]においてサンプリングタイミングが同一(即ち、nが同一)のものの中から、誤差電位差Veが0より大きく且つ最も小さいものを選定するものであったが、これに限らず、例えば、各素子の経時劣化などに伴う抵抗値の変動等により誤差電位差Veが0を下回るのを防ぐために、所定の最低電圧以上(例えば、5mV以上など)で且つ最も小さいものを選定するようにしてもよい。
【0053】
ステップS220では、ステップS210で選定された誤差電位差格納領域[s、n]に格納されている誤差電位差VeをRAM63上に設けられた誤差電位差積分値1に積算する。そして、サンプリングループ回数nを1増加する。そして、ステップS230に進む。
【0054】
ステップS230では、サンプリングループ回数nがサンプリング上限数を超えたか否かを判定し、サンプリング上限数を超えていたときは、誤差電位差積分値1の算出が終了したものとして、ステップS240に進み(S230でY)、サンプリング上限数以下のときは、誤差電位差積分値1の算出途中として、ステップS210に戻る(S230でN)。
【0055】
ステップS240では、ステップS220で積算した誤差電位差積分値1を、EEPROM64上に設けられた誤差電位差積分値に格納する。そして、本フローチャートの処理を終了する。
【0056】
次に、上述したCPU61が実行する本発明に係る処理(ガス濃度検出処理)の一例を、図5に示すフローチャートを参照して、以下に説明する。
【0057】
上述した、比較回路部切換情報取得処理が終了した後、CPU61は、気体収容室内に検出対象ガスの濃度を検出する雰囲気(被検ガス)を充填した後、その処理をステップT110に進める。
【0058】
ステップT110では、本フローチャートの処理に用いられる、RAM63上に設けられたループ変数等を初期化する(サンプリングループ回数n=1、濃度電位差積分値=0)。そして、ステップT120に進む。
【0059】
ステップT120では、電圧供給源5に対して、ブリッジ回路2に低温駆動電圧を供給するための電圧制御信号を送信する。そして、ステップT130に進む。
【0060】
ステップT130では、感応素子11の温度及び補償素子12の温度が安定するとともに、感応素子11に検出対象ガスを吸着させるためのガス吸着期間が経過するまで(例えば、60秒)待つ。そして、ガス吸着期間が経過した後、ステップT140に進む。
【0061】
ステップT140では、電圧供給源5に対して、ブリッジ回路2に、高温駆動電圧を供給するための電圧制御信号を送信する。そして、ステップT150に進む。
【0062】
ステップT150では、当該サンプリングタイミング(即ち、サンプリングループ回数n)に対応する比較回路部切換情報格納領域[n]に格納された比較回路部20を特定する情報(即ち、比較回路部切換情報)を読み出す。そして、ステップT160に進む。
【0063】
ステップT160では、アナログスイッチ50に対して、ステップT150で読み出した情報によって特定される比較回路部20を計装アンプ6に接続するための切換制御信号を送信する。そして、ステップT170に進む。
【0064】
ステップT170では、計装アンプ6で増幅されるとともにA/Dコンバータ7でデジタル信号に変換された中点電位差Vcを、ガス濃度電位差として取得して、RAM63上に設けた濃度電位差積分値に積算する。その後、サンプリングループ回数nを1増加する。そして、T180に進む。
【0065】
ステップT180では、上述した所定のサンプリング間隔時間が経過するまで待つ。そして、サンプリング間隔時間が経過した後、ステップT190に進む。
【0066】
ステップT190では、サンプリングループ回数nがサンプリング上限数を超えたか否かを判定し、サンプリング上限数を超えていたときは、濃度電位差積分値の算出が終了したものとして、ステップT200に進み(T190でY)、サンプリング上限数以下のときは、濃度電位差積分値の算出途中として、ステップT150に戻る(T190でN)。
【0067】
ステップT200では、ステップT170で積算した濃度電位差積分値から、EEPROM64に格納された誤差電位差積分値を差し引いた値を算出し、ROM62上に予め格納された、電位差積分値及びガス濃度の関係についての変換テーブルに基づいて、当該算出した値からガス濃度を求め、このガス濃度についての情報を含む表示情報を生成して、表示装置に対して送信する。そして、再度ガス濃度を測定するため、ステップT110に戻る(フローチャート終了)。
【0068】
なお、上述したステップT150、T160が、請求項中の回路切換手段に相当する。また、上記では比較回路部切換情報取得処理及びガス濃度検出処理を別々に説明するものであったが、これら処理は別々に行われてもよく、又は、補正情報取得処理に連続してガス濃度検出処理を行ってもよい。
【0069】
次に、上述したガス濃度検出装置1における本発明に係る動作(作用)について説明する。
【0070】
ガス濃度検出装置1は、気体収容室内に検出対象ガスを含まない0ガス雰囲気を充填したのち、比較回路部切換情報取得処理のための初期化処理を実行する(S110)。そして、ブリッジ回路2に対して低温駆動電圧を供給し(S120、S130)、比較回路部20Aを計装アンプ6に接続した後(S140)、ブリッジ回路2に対して高温駆動電圧を供給して(S150)、所定のサンプリングタイミング毎に、中点電位差Vc(即ち、誤差電位差Ve)を取得するとともにRAM63に格納(記憶)する(S160〜S180)。そして、アナログスイッチ50を切り換えて、比較回路部20B、20Cを順次計装アンプ6に接続して、これら比較回路部20B、20Cについても、上記一連の誤差電位差Ve取得動作(S120〜S180)を行う。
【0071】
そして、複数の比較回路部20A、20B、20Cのそれぞれを用いて取得した誤差電位差Veについて、同一のサンプリングタイミングで取得した誤差電位差Veを互いに比較して、誤差電位差Veが0より大きく且つ最も小さい値となる比較回路部20を、当該サンプリングタイミングにおいて最も誤差電位差Veを小さくできる比較回路部20として、この比較回路部20を特定する情報(即ち、比較回路部切換情報)をEEPROM64に格納(記憶)する(S210)。このようにして、すべてのサンプリングタイミングについて、比較回路部切換情報を生成する。また、同時に誤差電位差積分値も生成する(S220)。
【0072】
次に、ガス濃度検出装置1は、気体収容室内に検出対象ガスの濃度を検出する雰囲気を充填したのち、ガス濃度検出処理のための初期化処理を実行する(T110)。そして、ブリッジ回路2に対して低温駆動電圧を所定のガス吸着期間供給して感応素子11に検出対象ガスを吸着させた後(T120、T130)、ブリッジ回路2に対して高温駆動電圧をサンプリングが行われる期間(即ち、ガス燃焼期間)供給して(T140)、所定のサンプリングタイミング毎に、EEPROM64から読み出した当該サンプリングタイミングに対応する比較回路部切換情報に基づいて(T150)、複数の比較回路部20A、20B、20Cのうち、誤差電位差Veが最も小さくなる比較回路部20を計装アンプ6に接続して(T160)、中点電位差Vcをガス濃度電位差として取得するとともに積算(即ち、積分)する(T170)。このようにして、すべてのサンプリングタイミングについて、上記ガス濃度電位差を取得、積分、及び、積算して、濃度電位差積分値を算出する。そして、最後に、濃度電位差積分値から誤差電位差積分値を差し引いた値を、変換テーブルと照らし合わせてガス濃度を求め、表示装置に表示する(T200)。
【0073】
図6に、上述した本発明に係るガス濃度検出装置1において測定した誤差電位差Ve(増幅率1倍)のグラフを示し、図7に、比較回路部20A、20B、20Cのうちいずれかひとつのみ備えた、従来の構成(図9)のガス濃度検出装置(順に従来構成A、B、Cという)において測定した誤差電位差Ve(増幅率1倍)のグラフを示す。また、図8に、本発明に係るガス濃度検出装置において測定した誤差電位差Veを最大電圧が4Vになるまで増幅したときのグラフと、従来構成Aのガス濃度検出装置において測定した誤差電位差Veを最大電圧が4Vになるまで増幅したときのグラフと、を示す。
【0074】
図6のグラフから、本発明に係るガス濃度検出装置1は、0〜10msでは比較回路部20A、11〜35msでは比較回路部20B、36〜180msでは比較回路部20C、181〜265msでは比較回路部20B、266〜400msでは比較回路部20Aが、順次切り換えられて計装アンプ6に接続されており、そのため、誤差電位差Veの最大値が20mV程度に抑えられていることがわかった。その一方で、図7のグラフから、従来構成Aのガス濃度検出装置では、誤差電位差Veの最大値が大きく、50mVを超えていることがわかり、また、従来構成B及び従来構成Cのガス濃度検出装置では誤差電位差Veの最大値は従来構成Aより若干低いものの、各素子の温度が安定する定常状態(概ね400ms以降)に達する前に誤差電位差Veが0mVになる区間が生じてしまい、つまり、過渡期間の一部のみしか正常に測定できないことがわかった。
【0075】
そして、計装アンプ6の後段に接続されたA/Dコンバータ7の最大入力電圧を4Vとしたとき、図8に示すように、本発明に係るガス濃度検出装置1では、計装アンプ6の増幅率を183倍まで設定できたのに対して、従来構成Aのガス濃度検出装置では、計装アンプ6の増幅率を73倍までしか設定できなかった。このことから、本発明によれば、従来のガス濃度検出装置より高い増幅率を設定することができるので、検出感度を向上できる。なお、実際に検出対象ガスの濃度を測定するときは、誤差電位差Veに濃度に応じた電圧が加わるので、これら増幅率より低い値が設定される。
【0076】
以上より、本発明によれば、ブリッジ回路2には、一対の固定抵抗器21、22間の抵抗値の比率が互いに異なる複数の比較回路部20(20A、20B、20C)と、複数の比較回路部20のうち1つの比較回路部20を計装アンプ6に接続するアナログスイッチ50と、が設けられ、そして、電圧供給源5によってブリッジ回路2に高温駆動電圧が供給されたあとの感応素子11及び補償素子12の温度が上昇する過渡期間において、予め設定された比較回路部切換情報に基づき、複数の比較回路部20のうち、感応素子11と補償素子12との温度上昇特性の差異によって生じる第1電圧と第2電圧との電位差(即ち、誤差電位差Ve)が最も小さくなる比較回路部20が計装アンプ6に接続されるように、アナログスイッチ50を制御するので、吸着燃焼式ガスセンサ回路部10と複数の比較回路部20とを組み合わせた複数のブリッジ回路2のうち、上記過渡期間における誤差電位差Veが0より大きく且つ最小となるブリッジ回路2を計装アンプ6に接続でき、そのため、計装アンプ6における増幅率をより高めることができ、検出感度を向上できる。また、ブリッジ回路2に複数の比較回路部20及びアナログスイッチ50を設けた簡易な回路で構成されるとともに、アナログスイッチ50に対する制御も簡易であるので、検出感度を向上できるガス濃度検出装置1を低コストで提供できる。さらに、吸着燃焼式ガスセンサの感応素子11と補償素子12との温度上昇特性を高精度で一致させる必要がないので、現状の素子が利用でき、さらに、コストを低減することができる。
【0077】
本実施形態では、ブリッジ回路2は、3つの比較回路部20を備えるものであったが、これに限らず、一対の固定抵抗値の比率が互いに異なる複数の比較回路部20であれば、その数は任意である。また、複数の比較回路部20の数が多いほど、上述した誤差電位差Veをより小さくすることが可能となる。
【0078】
また、本実施形態では、実測に基づいて、比較回路部切換情報を設定するものであったが、これに限らず、例えば、ブリッジ回路2について、コンピュータ上でシミュレーションを行った結果に基づいて比較回路部切換情報を求めて、事前にEEPROM64(又は、ROM62)に設定しておくなど、本発明の目的に反しない限り、ブリッジ回路2が備える複数の比較回路部20のうち、過渡期間において誤差電位差が最も小さくなる比較回路部20を計装アンプ6に接続できる切換情報であれば、その設定方法は任意である。
【0079】
また、本実施形態は検出対象ガスの濃度を検出するものであったが、これに限らず、本発明は、成分不明の被検ガスに含まれるガスの種別を検出するガス種別検出装置など、他の種類のガス検出装置に適用してもよい。
【0080】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 ガス濃度検出装置(ガス検出装置)
2 ブリッジ回路
5 電圧供給源
6 計装アンプ(増幅器)
10 吸着燃焼式ガスセンサ回路部
11 感応素子
12 補償素子
15 ガスセンサユニット
20、20A、20B、20C 比較回路部
21、21A、21B、21C 固定抵抗器
22、22A、22B、22C 固定抵抗器
50 アナログスイッチ(比較回路部切換器)
60 MPU
61 CPU(回路切換手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着燃焼式ガスセンサを用いたガス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来知られている接触燃焼式ガスセンサは、感応素子と補償素子を有し、検出対象となるガスを感応素子の触媒作用により燃焼させ、この燃焼熱を白金コイルの抵抗値変化として捉えるように構成されている。検出対象となるガスのうちトルエンや酢酸、エタノール等のように、極性が大きく吸着力の大きなガスは、低温駆動時に、ガス分子が感応素子の触媒表面に吸着し、高温駆動時に、吸着したガスが瞬時に燃焼すると共に接触燃焼反応も同時に起こるので、センサ出力は、短時間でピークに達しその後徐々に減少するピーク波形(山形波形)を生じる。一方、メタンや水素、一酸化炭素等の無極性または極性の小さいガスは、吸着力も小さいので上記のような現象は起こらず、センサ出力は、定常値で安定するまで徐々に増加していく。
【0003】
このように、トルエン等の特定種類のガスにおいて固有のピーク波形を呈することを利用して、接触燃焼式ガスセンサを用いてガス濃度の検出やガス種の分別などを行うことができる。このような特定種類のガスの吸着現象を利用する接触燃焼式ガスセンサは、吸着燃焼式ガスセンサとも呼ばれている。上述したような吸着燃焼式ガスセンサは、ガス濃度検出装置やガス種別検出装置などの種々のガス検出装置において用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
吸着燃焼式ガスセンサを備えた従来のガス検出装置の構成例を図9に示す。図9に示されるガス検出装置801は、検出対象ガスと感応する感応素子811及び感応素子811と直列に接続された検出対象ガスと感応しない補償素子812からなる吸着燃焼式ガスセンサ回路部810、並びに、吸着燃焼式ガスセンサ回路部810と並列接続されるとともに互いに直列接続された一対の固定抵抗器821、822からなる比較回路部820、で構成されたブリッジ回路802と、感応素子811の温度が検出対象ガスを吸着する低温となる低温駆動電圧、及び、感応素子811の温度が感応素子811に吸着した検出対象ガスを燃焼させる高温となる高温駆動電圧、をブリッジ回路802に順次供給する電圧供給源805と、感応素子811及び補償素子812間に生じる第1電圧V1と一対の固定抵抗器821、822間に生じる第2電圧V2とが入力されるように、吸着燃焼式ガスセンサ回路部810と比較回路部820とに接続されて、これら第1電圧V1と第2電圧V2との電位差(以下、「中点電位差Vc」という)を所定の増幅率で増幅する計装アンプ806と、計装アンプ860で増幅された中点電位差Vcをアナログ値からデジタル値に変換するA/Dコンバータ807と、A/Dコンバータ807によってデジタル値に変換された中点電位差Vcに基づいて、検出対象ガスの濃度を検出する周知のマイクロコンピュータ(MPU)860と、を備えている。ブリッジ回路802は、検出対象ガスを含まない雰囲気中において高温駆動電圧を供給されたときに、各素子の温度変化が収束した定常状態で平衡(即ち、中点電位差Vcが0)となるように、一対の固定抵抗器821、822の抵抗値が定められている。
【0005】
この中点電位差Vcは、感応素子811の抵抗値をRs、補償素子812の抵抗値をRr、固定抵抗器821の抵抗値をR1、固定抵抗器822の抵抗値をR2、ブリッジ回路2への供給電圧をVbrgとすると、次の式(1)で示される。
【0006】
Vc=((Rs/(Rs+Rr))−(R1/(R1+R2)))×Vbrg・・・(1)
【0007】
上記式(1)から明らかなように、中点電位差Vcは、値が固定される抵抗値R1、抵抗値R2及び供給電圧Vbrgの影響は受けず、つまり、中点電位差Vcは、温度変化に応じて値が変化する感応素子811の抵抗値Rs及び補償素子812の抵抗値Rrによって決定される。
【0008】
そして、吸着燃焼式ガスセンサ回路部810の感応素子811及び補償素子812は、供給電圧Vbrgが低温駆動電圧から高温駆動電圧に切り替わると温度上昇を開始するが、これら感応素子811と補償素子812とは、それぞれの熱容量や熱伝導特性、放熱特性などが異なるので、各素子の温度が安定した定常状態に至るまでの過渡状態の期間(過渡期間)における温度上昇カーブ、即ち、温度上昇特性が異なり、そのため、温度上昇に伴う抵抗値の変化に差異が生じて、過渡期間において、温度上昇特性の差異による中点電位差Vc、即ち、誤差電位差Veが生じてしまう(図10のグラフに示す)。このような各素子の温度上昇特性の差異によって生じる誤差電位差Veを防ぐために、各素子の製造方法の精度向上や選別等を行うことが考えられるが、完全に温度上昇特性を一致させることは不可能である。そして、このような吸着燃焼式ガスセンサは、高温駆動時の中点電位差Vcの変化(即ち、応答波形)に基づいてガス検出を行うので、上述したような、温度上昇特性の差異によって生じる誤差電位差Veが影響して、ガス検出の精度が低下してしまう。
【0009】
そこで、ガス検出装置801では、感応素子811及び補償素子812における温度上昇特性の差異によって生じる中点電位差Vc、即ち、誤差電位差Veの影響を回避するため、以下のようにして検出対象ガスの濃度を検出していた。
【0010】
まず、検出対象ガスを含まない雰囲気中において、ブリッジ回路802に低温駆動電圧を供給したのちに高温駆動電圧を供給したときの中点電位差Vc(即ち、誤差電位差Ve)を所定のサンプリング周期で計測し、この計測した複数の中点電位差Vcを積算して誤差電位差積分値を算出する。次に、検出対象ガスの濃度を検出する雰囲気中において、ブリッジ回路802に低温駆動電圧を供給したのちに高温駆動電圧を供給したときの中点電位差Vcを同様に所定のサンプリング周期で計測し、この計測した複数の中点電位差Vcを積算して濃度電位差積分値を算出する。そして、濃度電位差積分値から誤差電位差積分値を差し引いた値に基づいて、検出対象ガスの濃度を検出する。このようにして、温度上昇特性の差異によって生じる誤差電位差Veの影響を回避して、検出対象ガスの濃度検出の精度低下を防いでいた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−83950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した中点電位差Vcは微小電圧であるので、計装アンプ806において所定の増幅率で増幅されたあとに、後段のA/Dコンバータ807に入力される。一般的に、計装アンプはその最大出力電圧(通常は電源電圧と同じ又は若干低い電圧)が定められており、そのため、計装アンプ806が出力する電圧がこの最大出力電圧以下になるように、その増幅率が定められる。また同様に、A/Dコンバータについても、最大入力電圧が定められており、そのため、A/Dコンバータ807に入力される電圧がこの最大入力電圧以下になるように、計装アンプ806の増幅率が定められる。そして、計装アンプ806の増幅率が高いほど、微小電圧を大きな電圧に変換できるので、検出感度を向上できる。しかしながら、中点電位差Vcに含まれる上述した誤差電位差Veの値が大きいと、低い増幅率でも上記最大入力電圧または上記最大出力電圧に達してしまうので、計装アンプ806の増幅率を高めることが出来ず、検出対象ガスの検出感度の向上が望めなかった。
【0013】
本発明は、上記課題に係る問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、吸着燃焼式ガスセンサの感応素子及び補償素子における温度上昇特性の差異によって生じる誤差電位差を小さくして、検出対象ガスの検出感度を向上できるガス検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、図1の基本構成図に示すように、(a)検出対象ガスと感応する感応素子及び前記感応素子と直列に接続された前記検出対象ガスと感応しない補償素子からなる吸着燃焼式ガスセンサ回路部10、並びに、前記吸着燃焼式ガスセンサ回路部10と並列接続されるとともに互いに直列接続された一対の固定抵抗器からなる比較回路部20、を含むブリッジ回路2と、(b)前記感応素子の温度が前記検出対象ガスを吸着する低温となる低温駆動電圧、及び、前記感応素子の温度が前記感応素子に吸着した前記検出対象ガスを燃焼させる高温となる高温駆動電圧、を前記ブリッジ回路2に順次供給する電圧供給源5と、(c)前記感応素子及び前記補償素子間に生じる第1電圧と前記一対の固定抵抗器間に生じる第2電圧とが入力されるように前記吸着燃焼式ガスセンサ回路部10及び前記比較回路部20と接続されて、これら前記第1電圧と前記第2電圧との電位差を所定の増幅率で増幅する、増幅器6と、を有するガス検出装置1において、前記ブリッジ回路2には、前記一対の固定抵抗器間の抵抗値の比率が互いに異なる複数の前記比較回路部20と、前記複数の比較回路部20のうち1つの前記比較回路部20を前記増幅器6に接続する比較回路部切換器50と、が設けられ、そして、前記電圧供給源5によって前記ブリッジ回路2に前記高温駆動電圧が供給されたあとの前記感応素子及び前記補償素子の温度が上昇する過渡期間において、予め設定された比較回路部切換情報に基づき、前記複数の比較回路部20のうち、前記感応素子と前記補償素子との温度上昇特性の差異によって生じる前記第1電圧と前記第2電圧との電位差が所定の最低電圧以上で且つ最も小さくなる前記比較回路部20が前記増幅器6に接続されるように、前記比較回路部切換器50を制御する回路切換手段61aが設けられていることを特徴とするガス検出装置である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載された発明によれば、ブリッジ回路には、一対の固定抵抗器間の抵抗値の比率が互いに異なる複数の比較回路部と、複数の比較回路部のうち1つの比較回路部を増幅器に接続する比較回路部切換器と、が設けられ、そして、電圧供給源によってブリッジ回路に高温駆動電圧が供給されたあとの感応素子及び補償素子の温度が上昇する過渡期間において、予め設定された比較回路部切換情報に基づき、複数の比較回路部のうち、感応素子と補償素子との温度上昇特性の差異によって生じる第1電圧と第2電圧との電位差(即ち、誤差電位差)が所定の最低電圧以上で且つ最も小さくなる比較回路部が増幅器に接続されるように、比較回路部切換器を制御するので、吸着燃焼式ガスセンサ回路部と複数の比較回路部とを組み合わせた複数のブリッジ回路のうち、上記過渡期間における誤差電位差が所定の最低電圧以上で且つ最小となるブリッジ回路を増幅器に接続でき、そのため、誤差電位差を小さくして、増幅器における増幅率をより高めることができ、検出感度を向上できる。また、ブリッジ回路に複数の比較回路部及び比較回路部切換器を設けた簡易な回路で構成されるとともに、比較回路部切換器に対する制御も簡易であるので、検出感度を向上できるガス検出装置を低コストで提供できる。さらに、吸着燃焼式ガスセンサの感応素子と補償素子との温度上昇特性を高精度で一致させる必要がないので、現状の素子が利用でき、さらに、コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のガス検出装置の基本構成を示す図である。
【図2】本発明のガス検出装置の一実施形態であるガス濃度検出装置を示す構成図である。
【図3】(A)、(B)及び(C)は、それぞれ、図2のガス濃度検出装置が備える吸着燃焼式ガスセンサ回路のガスセンサユニットの平面図、背面図、及び、平面図におけるA−A線に沿う断面図である。
【図4】図2のガス濃度検出装置が備えるCPUが行う比較回路部切換情報取得処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】図2のガス濃度検出装置が備えるCPUが行うガス濃度検出処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】図2のガス濃度検出装置における誤差電位差(増幅率1倍)を示すグラフである。
【図7】従来のガス濃度検出装置における誤差電位差(増幅率1倍)を示すグラフである。
【図8】図2のガス濃度検出装置における誤差電位差及び従来のガス濃度検出装置における誤差電位差をA/Dコンバータの最大入力電圧まで増幅したグラフである。
【図9】従来のガス濃度検出装置の構成図である。
【図10】従来のガス濃度検出装置における誤差電位差のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るガス検出装置の一実施形態としてのガス濃度検出装置を、図2〜図8を参照して説明する。
【0018】
ガス濃度検出装置1は、図2に示すように、ブリッジ回路2と、電圧供給源5と、増幅器としての計装アンプ6と、A/Dコンバータ7と、マイクロコンピュータ60と、図示しない気体収容室と、図示しない表示装置と、を備えている。
【0019】
ブリッジ回路2は、吸着燃焼式ガスセンサ回路部10と、複数の比較回路部20(20A、20B、20C)と、比較回路部切換器としてのアナログスイッチ50と、を備えている。
【0020】
吸着燃焼式ガスセンサ回路部10は、ガスセンサユニット15を備えており、ガスセンサユニット15に設けられた感応素子11及び補償素子12が互いに直列に接続されて構成されている。
【0021】
ガスセンサユニット15は、図3(A)〜(C)に示すように、所定厚さ(例えば、400μm程度)のシリコン(Si)ウェハ41上に、所定厚さ(例えば、600nm程度)の酸化シリコン(SiO2)膜48c、所定厚さ(例えば、250nm程度)の窒化シリコン(SiN)膜48b、および所定厚さ(例えば、30nm程度)の酸化ハフニウム(HfO2)膜48aの絶縁薄膜が順次成膜され、多層絶縁膜が形成されている。
【0022】
この多層絶縁膜上に、感応素子11として、所定厚さ(例えば、250nm程度)の第1のヒータとしての白金(Pt)ヒータ42が形成されていると共に、この白金ヒータ42と熱的に接触するとともに、触媒物質として、例えば、検出対象ガスを吸着及び燃焼させるパラジウム(Pd)などの白金族を担持した酸化アルミニウム(Al2O3)からなる触媒層43が所定厚さ(例えば、1〜40μm程度)で形成されている。
【0023】
また、多層絶縁膜上には、補償素子12として、所定厚さ(例えば、250nm程度)の第2のヒータとしての白金(Pt)ヒータ44と、この白金ヒータ44と熱的に接触する酸化アルミニウム(Al2O3)のみからなる非触媒層45が所定厚さ(例えば、1〜40μm程度)で形成されている。
【0024】
また、図3(C)に示すように、シリコンウェハ41を異方性エッチングして、感応素子11及び補償素子12に対応する位置に凹部46、47を形成し、それにより、上述の各絶縁薄膜による薄膜ダイヤフラムDsおよびDrが形成されている。
【0025】
感応素子11及び補償素子12は、検出対象ガスを含まない雰囲気中において、後述する電圧供給源5によって低温駆動電圧及び高温駆動電圧が供給されたのちにそれらの温度変化が収束した定常状態では、感応素子11の白金ヒータ42と補償素子12の白金ヒータ44とが同一の抵抗値となるように形成されている。
【0026】
また、感応素子11は触媒層43を備えているとともに、補償素子12は非触媒層45を備えている(即ち、触媒を備えていない)ので、電圧供給源5によってブリッジ回路2、即ち、吸着燃焼式ガスセンサ回路部10に所定の低温駆動電圧が供給されると、感応素子11では検出対象ガスが触媒層43に吸着され、その一方で、補償素子12では検出対象ガスが非触媒層45に吸着されず、そして、電圧供給源5によって吸着燃焼式ガスセンサ回路部10に所定の高温駆動電圧が供給されると、感応素子11では触媒により検出対象ガスが燃焼し、その一方で、補償素子12では検出対象ガスが燃焼しない。即ち、感応素子11は検出対象ガスと感応し、補償素子12は検出対象ガスと感応しない。
【0027】
このため、感応素子11及び補償素子12は、検出対象ガスを含む雰囲気中において、電圧供給源5によって低温駆動電圧が供給されたのちに高温駆動電圧が供給されると、感応素子11に吸着した検出対象ガスが爆発的に燃焼する。すると、この燃焼エネルギーにより感応素子11の温度が補償素子12の温度より高くなり、感応素子11と補償素子12とのそれぞれに検出対象ガスの濃度に応じた温度差が生じて、この温度差によって感応素子11の白金ヒータ42と補償素子12の白金ヒータ44との抵抗値に差が生じる。そして、感応素子11と補償素子12とが直列に接続されているので、検出対象ガスの濃度に応じて、感応素子11と補償素子12との抵抗値の比率が変化することにより、これら感応素子11及び補償素子12間に生じる電圧(感応素子11及び補償素子12によって分圧された電圧、以下、「第1電圧V1」という)が変動する。第1電圧V1は、感応素子11の抵抗値をRs、補償素子12の抵抗値をRr、吸着燃焼式ガスセンサ回路部10に供給される電圧をVbrgとすると、次の式、
V1=(Rs/(Rs+Rr))×Vbrg[V]・・・(2)
で示される。
【0028】
吸着燃焼式ガスセンサ回路部10は、図示しない気体収容室内に設置されている。この気体収容室には、検出対象ガスを含まない0ガス雰囲気(エアベース)、及び、検出対象ガスの濃度を検出する雰囲気(被検ガス)が、後述するマイクロコンピュータ60の制御によって充填される。
【0029】
複数の比較回路部20(具体的には、3つの比較回路部20A、20B、20C)は、それぞれ互いに直列に接続された一対の固定抵抗器21、22を備えている。複数の比較回路部20のそれぞれは、上述した吸着燃焼式ガスセンサ回路部10と並列に接続されている。以下、複数の比較回路部20をそれぞれ区別して説明するときは、符号の末尾にA、B、Cを付して説明する。
【0030】
複数の比較回路部20は、各比較回路部20が備える一対の固定抵抗器21、22間の抵抗値の比率が互いに異なるように、それぞれの固定抵抗器21、22の抵抗値が定められている。換言すると、複数の比較回路部20のそれぞれは、電圧供給源5によってブリッジ回路2に電圧が供給されたとき、固定抵抗器21、22間に生じる電圧(固定抵抗器21、22によって分圧された電圧、以下、「第2電圧V2」という)が互いに異なるように、それぞれの固定抵抗器21、22の抵抗値が定められている。例えば、比較回路部20Aは、固定抵抗器21Aが10kΩ、固定抵抗器22Aが、10kΩ、比較回路部20Bは、固定抵抗器21Bが10.16kΩ、固定抵抗器22Bが、10kΩ、比較回路部20Cは、固定抵抗器21Cが10.33kΩ、固定抵抗器22Cが、10kΩ、に設定されている。上記各固定抵抗器の抵抗値は一例であり、ガス濃度検出装置の構成などに応じて適宜定められる。複数の比較回路部20は、上述した過渡期間において、誤差電位差Veを相殺又は小さくするため、比較回路部20A、20B、・・・、nと順次第2電圧V2が高くなっていくように設定されているのが望ましい。
【0031】
第2電圧V2は、固定抵抗器21の抵抗値をR1、固定抵抗器22の抵抗値をR2、比較回路部20に供給される電圧をVbrgとすると、次の式、
V2=(R1/(R1+R2))×Vbrg[V]・・・(3)
で示される。
【0032】
また、複数の比較回路部20のうち1つの比較回路部20(例えば、比較回路部20A)は、検出対象ガスを含まない雰囲気中において、ブリッジ回路2に電圧供給源5によって高温駆動電圧が供給されたときに、感応素子11の温度及び補償素子12の温度変化が収束した定常状態で平衡となるように、即ち、感応素子11及び補償素子12間に生じる第1電圧V1と一対の固定抵抗器21、22間に生じる第2電圧V2との電位差(以下、中点電位差Vc(Vc=V1−V2[V]・・・(4))という)が0となるように、一対の固定抵抗器21、22(例えば、一対の固定抵抗器21A、22A)の抵抗値が定められている。さらに、このような比較回路部20は、例えば、一対の固定抵抗器21、22間に可変抵抗器(半固定抵抗器やデジタルポテンショメータなど)を設けて、上記定常状態での平衡調整を可能とする構成としてもよい。また、固定抵抗器21、22は、複数の固定抵抗器を直列、並列、または、直列及び並列に組み合わせて構成してもよく、或いは、ガス濃度測定時に抵抗値を固定して用いるものであれば、例えば、平衡調整のためなどに抵抗値を変更できる、可変抵抗器であってもよい。
【0033】
ブリッジ回路2における補償素子12と複数の固定抵抗器22(22A、22B、22C)とを接続する信号線は、電圧供給源5に接続されている。ブリッジ回路2における感応素子11と複数の固定抵抗器21(21A、21B、21C)とを接続する信号線は、接地点(GND)に接続されている。
【0034】
アナログスイッチ50は、例えば、少なくとも3つの信号系統(チャネル)を備えた単極単投型(SPST)の周知の電子部品である。アナログスイッチ50の各信号系統の一端子S1、S2、S3(入力側)には、比較回路部20Aの一対の固定抵抗器21A、22A間(中点)の信号線、比較回路部20Bの一対の固定抵抗器21B、22B間(中点)の信号線、及び、比較回路部20Cの一対の固定抵抗器21C、22C間(中点)の信号線、がそれぞれ接続されている。つまり、各比較回路部20A、20B、20Cにおける第2電圧V2a、V2b、V2cが入力されている。また、アナログスイッチ50の各信号系統の他端子(出力側)は、出力端子Dに接続されている。アナログスイッチ50は、後述するMPU60からの切換制御信号に応じて、3つの信号系統のうち1つの信号系統のみオン(接続)し、他の2つの信号系統はオフ(切断)する。即ち、複数の比較回路部20のうちひとつの比較回路部20を接続する。なお、このようなアナログスイッチ以外にも、切換制御信号に応じて、入力された複数のアナログ信号のうち1つのアナログ信号を出力するセレクタ回路などを用いてもよい。
【0035】
電圧供給源5は、ブリッジ回路2に所定の電圧を供給する電圧供給回路である。電圧供給源5は、後述するMPU60に接続されるとともに、該MPU60からの電圧制御信号に応じて、感応素子11の温度が検出対象ガスを吸着する低温(例えば、200度)となる低温駆動電圧、及び、感応素子11の温度が感応素子11に吸着した検出対象ガスを燃焼させる高温(例えば、400度)となる高温駆動電圧、などのパルス状の供給電圧Vbrgをブリッジ回路2に供給する。
【0036】
計装アンプ6は、差動入力・シングルエンド出力の平衡入力アンプであり、同相信号除去比(CMRR)を大きくとれるという特徴を有する周知の増幅器である。計装アンプ6は、それぞれ高インピーダンスの一対の差動入力端子に入力された信号の電位差を、所定の増幅率で増幅して出力する。計装アンプ6の差動入力端子の一方(V+)には、吸着燃焼式ガスセンサ回路部10の感応素子11及び補償素子12間(中点)の信号線が接続されており、他方(V−)には、アナログスイッチ50の出力端子Dが接続されている。つまり、計装アンプ6は、吸着燃焼式ガスセンサ回路部10の中点の電位(即ち、第1電圧V1)と、複数の比較回路部20のうち1つの比較回路部20の中点の電位(即ち、第2電圧V2)と、が入力されて、これら第1電圧V1と第2電圧V2の電位差(即ち、中点電位差Vc)を、所定の増幅率で増幅して出力端子から出力する。計装アンプ6には出力可能な最大電圧(最大出力電圧)が定められており、計装アンプ6の増幅率は、中点電位差Vcを増幅したときに、この最大出力電圧を超えないように定められている。
【0037】
A/Dコンバータ7は、入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換して出力する周知のアナログ−デジタル変換器である。A/Dコンバータ7の入力部には、計装アンプ6において増幅された中点電位差Vcが入力される。また、A/Dコンバータ7の出力部は、MPU60に接続されており、デジタル信号に変換された中点電位差VcがMPU60に向けて出力される。また、A/Dコンバータ7には、入力可能な最大電圧(最大入力電圧)が定められており、この最大入力電圧を超えないように、計装アンプ6の増幅率が定められている。
【0038】
マイクロコンピュータ(MPU)60は、周知のように、予め定めたプログラムに従って各種の処理や制御などを行う中央演算処理装置(CPU)61、CPU61のためのプログラムや各種パラメータ(例えば、低温駆動電圧値、高温駆動電圧値、複数の比較回路部20の数、サンプリング上限数など)を格納した読み出し専用のメモリであるROM62、各種データを格納するとともにCPU61の処理作業に必要なエリア(例えば、ループ変数、誤差電位差格納領域、誤差電位差積分値1、濃度電位差積分値など)を有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM63、及び、電力供給が断たれた場合でも、格納された各種データの保持が可能であり、CPU61の処理作業に必要な各種格納エリア(例えば、比較回路部切換情報格納領域、誤差電位差積分値など)を有するEEPROM64等を備えている。CPU61は、ROM62に格納された各種プログラムを実行することにより、回路切換手段として機能する。
【0039】
MPU60は、図示しない入出力ポートや各種インタフェース機能を備えた外部接続部をさらに備えている。MPU60は、この外部接続部を介して、A/Dコンバータ7、電圧供給源5及びアナログスイッチ50と接続されている。MPU60は、A/Dコンバータ7からデジタル信号に変換された中点電位差Vcを受信して、この中点電位差Vcに基づいてガス濃度を検出する。MPU60は、処理に応じて、例えば、低温駆動電圧を所定のガス吸着期間供給した後、高温駆動電圧を所定のガス燃焼期間供給するように、電圧供給源5に向けて電圧制御信号を送信する。MPU60は、処理に応じて、適切な比較回路部20が計装アンプ6に接続されるように、アナログスイッチ50に向けて切換制御信号を送信する。また、MPU60は、この外部接続部を介して、図示しない表示装置に接続されており、例えば、検出した検出対象ガスの濃度に関する情報を含む表示制御信号を、該表示装置に向けて送信する。そして、表示装置は、この表示制御信号に応じた情報、即ち、検出対象ガスの濃度などを表示する。また、MPU60は、この外部接続部を介して、ポンプなどを備えた気体収容室に接続されており、処理に応じて各種気体を該気体収容室に充填する。
【0040】
次に、上述したCPU61が実行する本発明に係る処理(比較回路部切換情報取得処理)の一例を、図4に示すフローチャートを参照して、以下に説明する。
【0041】
ガス濃度検出装置1に電源が投入されると、CPU61は、気体収容室内に検出対象ガスを含まない0ガス雰囲気を充填した後、その処理をステップS110に進める。
【0042】
ステップS110では、本フローチャートの処理に用いられる、RAM63上に設けられたループ変数を初期化する(比較回路部切換ループ回数s=1、サンプリングループ回数n=1)。また、アナログスイッチ50に対して、複数の比較回路部20のうちひとつの比較回路部20(例えば、比較回路部20A)を計装アンプ6に接続するための切換制御信号を送信する。そして、ステップS120に進む。
【0043】
ステップS120では、電圧供給源5に対して、ブリッジ回路2に低温駆動電圧を供給するための電圧制御信号を送信する。そして、ステップS130に進む。
【0044】
ステップS130では、感応素子11の温度及び補償素子12の温度が安定するまで(温度安定期間、例えば、60秒)待つ。そして、温度安定期間が経過した後、ステップS140に進む。
【0045】
ステップS140では、アナログスイッチ50に対して、比較回路部切換ループ回数sに応じた比較回路部20(s=1のときは比較回路部20A、s=2のときは比較回路部20B、s=3のときは比較回路部20C)を計装アンプ6に接続するための切換制御信号を送信する。そして、ステップS150に進む。
【0046】
ステップS150では、電圧供給源5に対して、ブリッジ回路2に、高温駆動電圧を供給するための電圧制御信号を送信する。そして、ステップS160に進む。
【0047】
ステップS160では、計装アンプ6で増幅されるとともにA/Dコンバータ7でデジタル信号に変換された中点電位差Vcを、誤差電位差Veとして取得して、RAM63上に設けられた誤差電位差格納領域[s、n]に格納する。この誤差電位差格納領域[s、n]は二次元配列データ構造を有しており、比較回路部切換ループ回数s及びサンプリングループ回数nをインデックスとして、取得した誤差電位差Veの格納位置が指定される。例えば、比較回路部切換ループ回数s=1で、サンプリングループ回数n=3のときは、誤差電位差Veは誤差電圧格納領域[1、3]に格納される。その後、サンプリングループ回数nを1増加する。そして、ステップS170に進む。
【0048】
ステップS170では、所定のサンプリング間隔時間が経過するまで待つ。このサンプリング間隔時間とは、一例を挙げると、サンプリングが行われる期間(過渡期間、例えば、400ms)をROM62に格納された所定のサンプリング上限数(例えば、400回)で除した値(例えば、1ms)などが用いられる。サンプリング間隔時間は、概ね、数百μs〜数msの範囲で設定される。そして、サンプリング間隔時間が経過した後、ステップS180に進む。
【0049】
ステップS180では、サンプリングループ回数nがサンプリング上限数を超えたか否かを判定し、サンプリング上限数を超えていたときは、現在の比較回路部20における誤差電位差Veの取得が終了したものとして、比較回路部切換ループ回数sを1増加したのち、ステップS190に進み(S180でY)、サンプリング上限数以下のときは、現在の比較回路部20における誤差電位差Veの取得を継続するものとして、ステップS160に戻る(S180でN)。
【0050】
ステップS190では、比較回路部切換ループ回数sが、ROM62に格納された、ブリッジ回路2が備える複数の比較回路部20の数(即ち、3つ)を超えたか否かを判定し、比較回路部20の数を超えていたときは、複数の比較回路部20の全てにおいて誤差電位差Veの取得が終了したものとして、ステップS200に進み(S190でY)、比較回路部20の数以下のときは、まだ誤差電位差Veを取得していない比較回路部20が残っているものとして、ステップS120に戻る(S190でN)。
【0051】
ステップS200では、ループ変数等を初期化する(サンプリングループ回数n=1、誤差電位差積分値1=0)。そして、ステップS210に進む。
【0052】
ステップS210では、誤差電位差格納領域[s、n]においてサンプリングタイミングが同一(即ち、nが同一)のものの中から、誤差電位差Veが0より大きく且つ最も小さいものを選定し、この選定された誤差電位差格納領域[s、n]における比較回路部20を特定する情報(即ち、s)を、EEPROM64上に設けられた比較回路部切換情報格納領域[n]に格納する。この比較回路部切換情報格納領域[n]は、一次元配列データ構造を有しており、サンプリングループ回数nをインデックスとして、比較回路部20を示す情報の格納位置が指定される。一例(計装アンプ6の増幅率が1の場合)を挙げると、誤差電位差格納領域[1、35]=41mV、誤差電位差格納領域[2、35]=22mV、誤差電位差格納領域[3、35]=0mVのとき、比較回路部切換情報格納領域[35]に、誤差電位差Veが0より大きく且つ最も小さい「2」を格納する。そして、ステップS220に進む。なお、本実施形態においては、誤差電位差格納領域[s、n]においてサンプリングタイミングが同一(即ち、nが同一)のものの中から、誤差電位差Veが0より大きく且つ最も小さいものを選定するものであったが、これに限らず、例えば、各素子の経時劣化などに伴う抵抗値の変動等により誤差電位差Veが0を下回るのを防ぐために、所定の最低電圧以上(例えば、5mV以上など)で且つ最も小さいものを選定するようにしてもよい。
【0053】
ステップS220では、ステップS210で選定された誤差電位差格納領域[s、n]に格納されている誤差電位差VeをRAM63上に設けられた誤差電位差積分値1に積算する。そして、サンプリングループ回数nを1増加する。そして、ステップS230に進む。
【0054】
ステップS230では、サンプリングループ回数nがサンプリング上限数を超えたか否かを判定し、サンプリング上限数を超えていたときは、誤差電位差積分値1の算出が終了したものとして、ステップS240に進み(S230でY)、サンプリング上限数以下のときは、誤差電位差積分値1の算出途中として、ステップS210に戻る(S230でN)。
【0055】
ステップS240では、ステップS220で積算した誤差電位差積分値1を、EEPROM64上に設けられた誤差電位差積分値に格納する。そして、本フローチャートの処理を終了する。
【0056】
次に、上述したCPU61が実行する本発明に係る処理(ガス濃度検出処理)の一例を、図5に示すフローチャートを参照して、以下に説明する。
【0057】
上述した、比較回路部切換情報取得処理が終了した後、CPU61は、気体収容室内に検出対象ガスの濃度を検出する雰囲気(被検ガス)を充填した後、その処理をステップT110に進める。
【0058】
ステップT110では、本フローチャートの処理に用いられる、RAM63上に設けられたループ変数等を初期化する(サンプリングループ回数n=1、濃度電位差積分値=0)。そして、ステップT120に進む。
【0059】
ステップT120では、電圧供給源5に対して、ブリッジ回路2に低温駆動電圧を供給するための電圧制御信号を送信する。そして、ステップT130に進む。
【0060】
ステップT130では、感応素子11の温度及び補償素子12の温度が安定するとともに、感応素子11に検出対象ガスを吸着させるためのガス吸着期間が経過するまで(例えば、60秒)待つ。そして、ガス吸着期間が経過した後、ステップT140に進む。
【0061】
ステップT140では、電圧供給源5に対して、ブリッジ回路2に、高温駆動電圧を供給するための電圧制御信号を送信する。そして、ステップT150に進む。
【0062】
ステップT150では、当該サンプリングタイミング(即ち、サンプリングループ回数n)に対応する比較回路部切換情報格納領域[n]に格納された比較回路部20を特定する情報(即ち、比較回路部切換情報)を読み出す。そして、ステップT160に進む。
【0063】
ステップT160では、アナログスイッチ50に対して、ステップT150で読み出した情報によって特定される比較回路部20を計装アンプ6に接続するための切換制御信号を送信する。そして、ステップT170に進む。
【0064】
ステップT170では、計装アンプ6で増幅されるとともにA/Dコンバータ7でデジタル信号に変換された中点電位差Vcを、ガス濃度電位差として取得して、RAM63上に設けた濃度電位差積分値に積算する。その後、サンプリングループ回数nを1増加する。そして、T180に進む。
【0065】
ステップT180では、上述した所定のサンプリング間隔時間が経過するまで待つ。そして、サンプリング間隔時間が経過した後、ステップT190に進む。
【0066】
ステップT190では、サンプリングループ回数nがサンプリング上限数を超えたか否かを判定し、サンプリング上限数を超えていたときは、濃度電位差積分値の算出が終了したものとして、ステップT200に進み(T190でY)、サンプリング上限数以下のときは、濃度電位差積分値の算出途中として、ステップT150に戻る(T190でN)。
【0067】
ステップT200では、ステップT170で積算した濃度電位差積分値から、EEPROM64に格納された誤差電位差積分値を差し引いた値を算出し、ROM62上に予め格納された、電位差積分値及びガス濃度の関係についての変換テーブルに基づいて、当該算出した値からガス濃度を求め、このガス濃度についての情報を含む表示情報を生成して、表示装置に対して送信する。そして、再度ガス濃度を測定するため、ステップT110に戻る(フローチャート終了)。
【0068】
なお、上述したステップT150、T160が、請求項中の回路切換手段に相当する。また、上記では比較回路部切換情報取得処理及びガス濃度検出処理を別々に説明するものであったが、これら処理は別々に行われてもよく、又は、補正情報取得処理に連続してガス濃度検出処理を行ってもよい。
【0069】
次に、上述したガス濃度検出装置1における本発明に係る動作(作用)について説明する。
【0070】
ガス濃度検出装置1は、気体収容室内に検出対象ガスを含まない0ガス雰囲気を充填したのち、比較回路部切換情報取得処理のための初期化処理を実行する(S110)。そして、ブリッジ回路2に対して低温駆動電圧を供給し(S120、S130)、比較回路部20Aを計装アンプ6に接続した後(S140)、ブリッジ回路2に対して高温駆動電圧を供給して(S150)、所定のサンプリングタイミング毎に、中点電位差Vc(即ち、誤差電位差Ve)を取得するとともにRAM63に格納(記憶)する(S160〜S180)。そして、アナログスイッチ50を切り換えて、比較回路部20B、20Cを順次計装アンプ6に接続して、これら比較回路部20B、20Cについても、上記一連の誤差電位差Ve取得動作(S120〜S180)を行う。
【0071】
そして、複数の比較回路部20A、20B、20Cのそれぞれを用いて取得した誤差電位差Veについて、同一のサンプリングタイミングで取得した誤差電位差Veを互いに比較して、誤差電位差Veが0より大きく且つ最も小さい値となる比較回路部20を、当該サンプリングタイミングにおいて最も誤差電位差Veを小さくできる比較回路部20として、この比較回路部20を特定する情報(即ち、比較回路部切換情報)をEEPROM64に格納(記憶)する(S210)。このようにして、すべてのサンプリングタイミングについて、比較回路部切換情報を生成する。また、同時に誤差電位差積分値も生成する(S220)。
【0072】
次に、ガス濃度検出装置1は、気体収容室内に検出対象ガスの濃度を検出する雰囲気を充填したのち、ガス濃度検出処理のための初期化処理を実行する(T110)。そして、ブリッジ回路2に対して低温駆動電圧を所定のガス吸着期間供給して感応素子11に検出対象ガスを吸着させた後(T120、T130)、ブリッジ回路2に対して高温駆動電圧をサンプリングが行われる期間(即ち、ガス燃焼期間)供給して(T140)、所定のサンプリングタイミング毎に、EEPROM64から読み出した当該サンプリングタイミングに対応する比較回路部切換情報に基づいて(T150)、複数の比較回路部20A、20B、20Cのうち、誤差電位差Veが最も小さくなる比較回路部20を計装アンプ6に接続して(T160)、中点電位差Vcをガス濃度電位差として取得するとともに積算(即ち、積分)する(T170)。このようにして、すべてのサンプリングタイミングについて、上記ガス濃度電位差を取得、積分、及び、積算して、濃度電位差積分値を算出する。そして、最後に、濃度電位差積分値から誤差電位差積分値を差し引いた値を、変換テーブルと照らし合わせてガス濃度を求め、表示装置に表示する(T200)。
【0073】
図6に、上述した本発明に係るガス濃度検出装置1において測定した誤差電位差Ve(増幅率1倍)のグラフを示し、図7に、比較回路部20A、20B、20Cのうちいずれかひとつのみ備えた、従来の構成(図9)のガス濃度検出装置(順に従来構成A、B、Cという)において測定した誤差電位差Ve(増幅率1倍)のグラフを示す。また、図8に、本発明に係るガス濃度検出装置において測定した誤差電位差Veを最大電圧が4Vになるまで増幅したときのグラフと、従来構成Aのガス濃度検出装置において測定した誤差電位差Veを最大電圧が4Vになるまで増幅したときのグラフと、を示す。
【0074】
図6のグラフから、本発明に係るガス濃度検出装置1は、0〜10msでは比較回路部20A、11〜35msでは比較回路部20B、36〜180msでは比較回路部20C、181〜265msでは比較回路部20B、266〜400msでは比較回路部20Aが、順次切り換えられて計装アンプ6に接続されており、そのため、誤差電位差Veの最大値が20mV程度に抑えられていることがわかった。その一方で、図7のグラフから、従来構成Aのガス濃度検出装置では、誤差電位差Veの最大値が大きく、50mVを超えていることがわかり、また、従来構成B及び従来構成Cのガス濃度検出装置では誤差電位差Veの最大値は従来構成Aより若干低いものの、各素子の温度が安定する定常状態(概ね400ms以降)に達する前に誤差電位差Veが0mVになる区間が生じてしまい、つまり、過渡期間の一部のみしか正常に測定できないことがわかった。
【0075】
そして、計装アンプ6の後段に接続されたA/Dコンバータ7の最大入力電圧を4Vとしたとき、図8に示すように、本発明に係るガス濃度検出装置1では、計装アンプ6の増幅率を183倍まで設定できたのに対して、従来構成Aのガス濃度検出装置では、計装アンプ6の増幅率を73倍までしか設定できなかった。このことから、本発明によれば、従来のガス濃度検出装置より高い増幅率を設定することができるので、検出感度を向上できる。なお、実際に検出対象ガスの濃度を測定するときは、誤差電位差Veに濃度に応じた電圧が加わるので、これら増幅率より低い値が設定される。
【0076】
以上より、本発明によれば、ブリッジ回路2には、一対の固定抵抗器21、22間の抵抗値の比率が互いに異なる複数の比較回路部20(20A、20B、20C)と、複数の比較回路部20のうち1つの比較回路部20を計装アンプ6に接続するアナログスイッチ50と、が設けられ、そして、電圧供給源5によってブリッジ回路2に高温駆動電圧が供給されたあとの感応素子11及び補償素子12の温度が上昇する過渡期間において、予め設定された比較回路部切換情報に基づき、複数の比較回路部20のうち、感応素子11と補償素子12との温度上昇特性の差異によって生じる第1電圧と第2電圧との電位差(即ち、誤差電位差Ve)が最も小さくなる比較回路部20が計装アンプ6に接続されるように、アナログスイッチ50を制御するので、吸着燃焼式ガスセンサ回路部10と複数の比較回路部20とを組み合わせた複数のブリッジ回路2のうち、上記過渡期間における誤差電位差Veが0より大きく且つ最小となるブリッジ回路2を計装アンプ6に接続でき、そのため、計装アンプ6における増幅率をより高めることができ、検出感度を向上できる。また、ブリッジ回路2に複数の比較回路部20及びアナログスイッチ50を設けた簡易な回路で構成されるとともに、アナログスイッチ50に対する制御も簡易であるので、検出感度を向上できるガス濃度検出装置1を低コストで提供できる。さらに、吸着燃焼式ガスセンサの感応素子11と補償素子12との温度上昇特性を高精度で一致させる必要がないので、現状の素子が利用でき、さらに、コストを低減することができる。
【0077】
本実施形態では、ブリッジ回路2は、3つの比較回路部20を備えるものであったが、これに限らず、一対の固定抵抗値の比率が互いに異なる複数の比較回路部20であれば、その数は任意である。また、複数の比較回路部20の数が多いほど、上述した誤差電位差Veをより小さくすることが可能となる。
【0078】
また、本実施形態では、実測に基づいて、比較回路部切換情報を設定するものであったが、これに限らず、例えば、ブリッジ回路2について、コンピュータ上でシミュレーションを行った結果に基づいて比較回路部切換情報を求めて、事前にEEPROM64(又は、ROM62)に設定しておくなど、本発明の目的に反しない限り、ブリッジ回路2が備える複数の比較回路部20のうち、過渡期間において誤差電位差が最も小さくなる比較回路部20を計装アンプ6に接続できる切換情報であれば、その設定方法は任意である。
【0079】
また、本実施形態は検出対象ガスの濃度を検出するものであったが、これに限らず、本発明は、成分不明の被検ガスに含まれるガスの種別を検出するガス種別検出装置など、他の種類のガス検出装置に適用してもよい。
【0080】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 ガス濃度検出装置(ガス検出装置)
2 ブリッジ回路
5 電圧供給源
6 計装アンプ(増幅器)
10 吸着燃焼式ガスセンサ回路部
11 感応素子
12 補償素子
15 ガスセンサユニット
20、20A、20B、20C 比較回路部
21、21A、21B、21C 固定抵抗器
22、22A、22B、22C 固定抵抗器
50 アナログスイッチ(比較回路部切換器)
60 MPU
61 CPU(回路切換手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)検出対象ガスと感応する感応素子及び前記感応素子と直列に接続された前記検出対象ガスと感応しない補償素子からなる吸着燃焼式ガスセンサ回路部、並びに、前記吸着燃焼式ガスセンサ回路部と並列接続されるとともに互いに直列接続された一対の固定抵抗器からなる比較回路部、を含むブリッジ回路と、(b)前記感応素子の温度が前記検出対象ガスを吸着する低温となる低温駆動電圧、及び、前記感応素子の温度が前記感応素子に吸着した前記検出対象ガスを燃焼させる高温となる高温駆動電圧、を前記ブリッジ回路に順次供給する電圧供給源と、(c)前記感応素子及び前記補償素子間に生じる第1電圧と前記一対の固定抵抗器間に生じる第2電圧とが入力されるように前記吸着燃焼式ガスセンサ回路部及び前記比較回路部と接続されて、これら前記第1電圧と前記第2電圧との電位差を所定の増幅率で増幅する、増幅器と、を有するガス検出装置において、
前記ブリッジ回路には、前記一対の固定抵抗器間の抵抗値の比率が互いに異なる複数の前記比較回路部と、前記複数の比較回路部のうち1つの前記比較回路部を前記増幅器に接続する比較回路部切換器と、が設けられ、そして、
前記電圧供給源によって前記ブリッジ回路に前記高温駆動電圧が供給されたあとの前記感応素子及び前記補償素子の温度が上昇する過渡期間において、予め設定された比較回路部切換情報に基づき、前記複数の比較回路部のうち、前記感応素子と前記補償素子との温度上昇特性の差異によって生じる前記第1電圧と前記第2電圧との電位差が所定の最低電圧以上で且つ最も小さくなる前記比較回路部が前記増幅器に接続されるように、前記比較回路部切換器を制御する回路切換手段が設けられている
ことを特徴とするガス検出装置。
【請求項1】
(a)検出対象ガスと感応する感応素子及び前記感応素子と直列に接続された前記検出対象ガスと感応しない補償素子からなる吸着燃焼式ガスセンサ回路部、並びに、前記吸着燃焼式ガスセンサ回路部と並列接続されるとともに互いに直列接続された一対の固定抵抗器からなる比較回路部、を含むブリッジ回路と、(b)前記感応素子の温度が前記検出対象ガスを吸着する低温となる低温駆動電圧、及び、前記感応素子の温度が前記感応素子に吸着した前記検出対象ガスを燃焼させる高温となる高温駆動電圧、を前記ブリッジ回路に順次供給する電圧供給源と、(c)前記感応素子及び前記補償素子間に生じる第1電圧と前記一対の固定抵抗器間に生じる第2電圧とが入力されるように前記吸着燃焼式ガスセンサ回路部及び前記比較回路部と接続されて、これら前記第1電圧と前記第2電圧との電位差を所定の増幅率で増幅する、増幅器と、を有するガス検出装置において、
前記ブリッジ回路には、前記一対の固定抵抗器間の抵抗値の比率が互いに異なる複数の前記比較回路部と、前記複数の比較回路部のうち1つの前記比較回路部を前記増幅器に接続する比較回路部切換器と、が設けられ、そして、
前記電圧供給源によって前記ブリッジ回路に前記高温駆動電圧が供給されたあとの前記感応素子及び前記補償素子の温度が上昇する過渡期間において、予め設定された比較回路部切換情報に基づき、前記複数の比較回路部のうち、前記感応素子と前記補償素子との温度上昇特性の差異によって生じる前記第1電圧と前記第2電圧との電位差が所定の最低電圧以上で且つ最も小さくなる前記比較回路部が前記増幅器に接続されるように、前記比較回路部切換器を制御する回路切換手段が設けられている
ことを特徴とするガス検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−58963(P2011−58963A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209211(P2009−209211)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
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